説明

画像撮影システム

【課題】 撮影手段の撮影タイミング周期がNTSC規格に準拠した略1/60秒である場合でも、東日本地域の商用交流電源に応じて点滅発光する照明手段を用いて撮影された画像がフィールド毎に輝度変化することを防止でき、結果、略1/100秒未満の短いシャッタースピードでも鮮明な撮影画像を撮影することができる画像撮影システムを提供すること。
【解決手段】 画像記憶手段に記憶される画像信号を撮影するための撮影タイミング信号を所定の撮影タイミング周期で繰り返し生成するタイミング生成手段と、そのタイミング生成手段により生成される撮影タイミング信号に合わせて撮影手段で生成される各フィールドの画像信号をnフィールド(但し、nは正の整数を表す。以下同じ。)置きに画像記憶手段に保存する画像選択手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム灯、水銀灯、蛍光灯等の各種の放電灯に代表される照明手段の照明光を用いて、撮影手段によって被撮影範囲の撮影を行う場合に、その照明手段の点滅発光に伴う撮影画像の輝度変化を防止できる画像撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ナトリウム灯、水銀灯、蛍光灯等の各種の放電灯に代表される照明装置は、商用交流電源からの給電を受けて点灯されるため、商用交流電源の交流信号(電圧信号や電流信号等を含む。以下同じ。)の周期的変化に応じて点滅発光する。
【0003】
例えば、東日本地域の商用交流電源は周波数が略50Hzであるため、これを電源とする照明装置はその2倍の略100Hzの周波数で点滅を繰り返している。これに対し、西日本地域の商用交流電源は周波数が略60Hzであるため、これを電源とする照明装置はその2倍の略120Hzの周波数で点滅を繰り返している。
【0004】
つまり、東日本地域では、照明装置の点滅周波数が略100Hzなので、照明装置がその逆数の略1/100秒周期で点滅発光を繰り返すこととなり、西日本地域では、照明装置の点滅周波数が略120Hzなので、照明装置がその逆数の略1/120秒周期で点滅発光を繰り返すこととなる。
【0005】
ここで、日本国内のビデオ撮影装置は、主に、NTSC規格に準拠した59.94Hzの周波数で撮影するものであり、そのシャッタータイミングの周期(以下「撮影タイミング周期」という。)が略1/60秒とされている。
【0006】
このため、主なビデオ撮影装置を用いて点滅発光する照明装置の照明光の下で撮影する場合は、ビデオ撮影装置のシャッタースピードを予め略1/120秒(≒8.33ミリ秒)程度、略1/100秒(≒10ミリ秒)程度、又は、更に長時間に設定して、撮像素子の受光時間を長くすることで、撮影画像のチラツキ(又は「フリッカー」ともいう。)を防止するという対策が講じられている。
【特許文献1】特開平9−247550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したようにビデオ撮影装置では、そのシャッタースピード、即ち、シャッター開放時間を長期化させることで撮影画像のフリッカーを防止するという方式を採用するため、高速移動する被写体、例えば、高速道路を移動する走行車両等を撮影する場合に、シャッター開放時間が長すぎて、走行車両の撮影画像がぼやけたり不鮮明となってしまうという問題点がある。このため、高速移動する被写体を撮影する場合は、ビデオ撮影装置のシャッタースピードを上記した略1/100秒よりも短い時間、例えば、略1/250秒〜1/500秒以下に設定又は調整可能であるものが求められる。
【0008】
ところが、上記したように、日本国内のビデオ撮影装置は、主に、その撮影タイミング周期が略1/60秒であるため、東日本地域の略1/100秒周期で点滅発光を繰り返す照明装置の下では、略1/100秒未満の短いシャッタースピードで撮影する場合、その撮影画像が1フィールド毎に照明装置の点滅発光に伴って輝度変化を生じてチラツキを生じてしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、例えば、撮影手段の撮影タイミング周期が略1/60秒である場合でも、東日本地域の商用交流電源に応じて点滅発光する照明手段を用いて撮影された画像がフィールド毎に輝度変化することを防止でき、結果、東日本地域と西日本地域との双方で略1/100秒未満の短いシャッタースピードでも鮮明な撮影画像を撮影することができる画像撮影システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために請求項1の画像撮影システムは、商用交流電源の交流信号に応じて点滅発光する電灯等の照明手段からの照明光を受けている被撮影範囲を、撮影手段によって撮影するものであり、前記撮影手段により生成される画像信号を記憶して保存する画像記憶手段と、その画像記憶手段に記憶される画像信号を撮影するための撮影タイミング信号を所定の撮影タイミング周期で繰り返し生成するタイミング生成手段と、そのタイミング生成手段により生成される撮影タイミング信号に合わせて前記撮影手段で生成される各フィールドの画像信号をnフィールド(但し、nは正の整数を表す。以下同じ。)置きに前記画像記憶手段に保存する画像選択手段とを備えている。
【0011】
この請求項1の画像撮影システムによれば、撮影手段によって被撮影範囲が撮影される場合、その被撮影範囲に照明手段による照明光が照射される。この照明手段は、商用交流電源から給電されており、商用交流電源の交流信号の1/2倍の周期で点滅発光される。したがって、被撮影範囲にある被写体の輝度は、商用交流電源の周期の1/2倍周期で周期的に変化することとなる。
【0012】
ここで、撮影手段の撮影タイミング周期と商用交流電源の交流信号とが同期していると、撮影タイミング周期毎に生成される各フィールドの画像信号の輝度は、一定したものとなる。ところが、撮影手段の撮影タイミング周期と商用交流電源の交流信号とが非同期の場合は、撮影タイミング周期毎に生成される各フィールドの画像信号の輝度が、時系列順に毎に変化してしまう。
【0013】
ここで、図3に示す具体例を参照して、この各フィールドの画像信号の輝度が変化する現象について考察する。図3(a)は、周波数が60Hzの商用交流電源の交流電圧信号21を、図3(b)は、その60Hzの商用交流電源の交流電圧信号21に応じて点滅発光する電灯等の照明手段の輝度41を、図3(c)は、周波数が50Hzの商用交流電源の交流電圧信号23を、図3(d)は、その50Hzの商用交流電源の交流電圧信号23に応じて点滅発光する電灯等の照明手段の輝度42を、それぞれグラフ化して図示したものである。
【0014】
なお、図3では、輝度41,42の波形を簡略化のために正弦半波状として図示しているが、これらの実際の波形は、厳密な正弦半波状ではなく歪んだものであることが多い。また、図3において、縦方向に延びる1点鎖線は、撮影手段によって撮影される奇数フィールドの画像信号の撮影タイミング291,293,295を、縦方向に延びる点線は、撮影手段によって撮影される偶数フィールドの画像信号の撮影タイミング292,294,296を、それぞれ表したものである。
【0015】
図3に示すように、交流電圧信号21は略1/60秒周期で、輝度41はその2倍の略1/120秒周期で、交流電圧信号23は略1/50秒周期で、輝度42はその2倍の略1/100秒周期で、それぞれ変化している。かかる状況下で、撮影手段は、略1/60秒毎に繰り返す撮影タイミング291〜296毎に、1フィールド分の画像信号を順次撮影する。そして、この順次撮影された画像信号のうち、時系列上で相互に連続する2つの撮影タイミングで撮影された奇数フィールド及び偶数フィールドの2つの画像信号を合成することで1フレームの画像信号が取得される。
【0016】
具体的には、撮影タイミング291,292の各フィールドの画像信号が合成され、撮影タイミング293,294の各フィールドの画像信号が合成され、撮影タイミング295,296の各フィールドの画像が合成されることで、合計3フレームの画像信号(撮影画像)が取得できるのである。
【0017】
ここで、図3(a)及び図3(b)に示すように、照明手段が交流電圧信号21に基づいて点灯されるときに、各撮影タイミング291〜296は、略1/120秒周期で変化する輝度41の最大値とほぼ毎回一致している。このことは、照明手段の電源となる交流電圧信号21の周期が撮影手段による撮影タイミング周期T1と一致しているときには、シャッタースピードが略1/100秒未満の短い場合でも、フリッカーが発生することなく、撮影タイミング291〜296のどこでも撮影画像の輝度を一定に保持しつつ撮影することができることを意味している。
【0018】
これに対し、図3(c)及び図3(d)に示すように、照明手段が交流電圧信号22に基づいて点灯される場合に、その照明手段の輝度42と撮影手段の撮影タイミング291〜296とを比較すると、撮影タイミング毎に輝度42の値が変動している。これは、照明手段の電源となる交流電圧信号23の周期が撮影手段による撮影タイミング周期T1と不一致となるときに、シャッタースピードが略1/100秒未満の短いものだと、撮影タイミング291〜296の各タイミングで画像信号の輝度が変動するフリッカーが発生し、撮影画像の再生時にチラツキが生じることを意味しているのである。
【0019】
ところが、照明手段の交流電源周波数が略50Hzの場合に、その照明手段の輝度42の最大値と撮影タイミング291〜296との関係に注視すると、撮影タイミング291及び294、撮影タイミング292及び295、又は、撮影タイミング293及び296はそれぞれ輝度42の値が略一致しており、全体として撮影タイミング周期T1の3倍の周期(≒3/60秒)置きに、その輝度42が同じ値を示していることが確認さ
れる。
【0020】
しかも、撮影タイミング291と撮影タイミング294とにそれぞれ着目すると、略60Hzの商用交流電源で点灯される照明手段の輝度41と、略50Hzの商用交流電源で点灯される照明手段の輝度42とがいずれも高輝度レベルの範囲にあるタイミングに同期していることも確認できる。
【0021】
したがって、以上の点を鑑みれば、たとえ撮影手段の撮影タイミング周期と照明手段に給電する商用交流電源の交流信号の周期とが異なっていても、所定の撮影タイミング周期で繰り返し撮影していれば、照明手段の輝度がn回置きに一定となるタイミングがあるため、その照明手段の輝度が一定となるタイミングに合わせて画像信号を保存すれば、保存された画像信号は全て一定の輝度で撮影されるものとなる。
【0022】
そこで、この請求項1の画像撮影システムでは、撮影手段に対する撮影を指令する撮影タイミング信号が、タイミング生成手段によって、所定の撮影タイミング周期で繰り返し生成されると、その撮影タイミング信号に応じて撮影手段によって各フィールドの画像信号が順次生成され、その各フィールドの画像信号が画像選択手段によってnフィールド置きに画像記憶手段に保存される。
【0023】
例えば、撮影タイミング周期が略1/60秒で、商用交流電源の交流信号の周期が略1/50秒である場合、照明手段は交流信号の周期の1/2倍の略1/100秒周期で点滅発光を繰り返すこととなり、従来の方式であれば、フリッカーが発生する状況である。ところが、かかる場合には、「n」の値を正の整数である「3」の倍数に設定すれば、略1/60秒周期で撮影された画像信号が3フィールド、6フィールド、9フィールド・・・のいずれか置きに画像選択手段によって画像記憶手段に保存され、その結果、画像選択手段に記憶される画像信号の輝度が一定化されるのである。
【0024】
請求項2の画像撮影システムは、請求項1の画像撮影システムにおいて、商用交流電源から出力される交流信号を検出し、その交流信号の1/2周期又は1周期に同期した検出信号を繰り返し生成する交流電源検出手段と、その交流電源検出手段による検出信号をマスク処理により間引くことで、その検出信号を元の周期より長い周期に変換する周期変換手段と、その周期変換手段により周期変換された検出信号のタイミングから所定の遅延時間が経過するまで、前記タイミング生成手段による撮影タイミング信号の生成タイミングを遅延させる遅延手段とを備えており、その遅延時間の長さを調節することによって、前記タイミング生成手段による撮影タイミング信号を、前記照明手段の輝度が高輝度レベルとなるタイミングに同期させるものである。
【0025】
この請求項2の画像撮影システムによれば、請求項1の画像撮影システムと同様に作用する上、交流電源検出手段によって、商用交流電源の交流信号が検出され、その検出結果に基づいて、その交流信号の1/2周期又は1周期に同期した検出信号が、繰り返し生成される。つまり、元々の検出信号は、商用交流電源の交流信号の1/2周期又は1周期に等しい周期となるように、交流電源検出手段によって生成される。
【0026】
このような周期を有する検出信号には、周期変換手段によってマスク処理が施される。周期変換手段によるマスク処理では、例えば、所定の時間幅を有するマスク信号を生成し、そのマスク信号の立ち上がり期間中に検出信号を無効化することによって、この検出信号が元々の周期よりも長周期でオンオフされる信号列に作り変えられる。
【0027】
この変換後の検出信号のタイミングに合わせて、遅延手段によって、そのタイミングから所定時間分だけ、タイミング生成手段による撮影タイミング信号の生成が遅延される。このとき、遅延手段による遅延時間の長さを調整すれば、タイミング生成手段による撮影タイミング信号の生成タイミングを、照明手段の輝度が高輝度レベルとなるタイミングに同期させることができる。
【0028】
請求項3の画像撮影システムは、請求項1又は2の画像撮影システムにおいて、前記タイミング生成手段は、前記撮影タイミング信号の生成に合わせて、前記撮影タイミング周期をn倍した周期を有する選択タイミング信号を繰り返し生成するものであり、前記画像選択手段は、前記タイミング生成手段による選択タイミング信号の生成に合わせて前記撮影手段で生成される1フィールド分の画像信号を、前記画像記憶手段へ保存する動作を実行するものである。
【0029】
この請求項3の画像撮影システムによれば、請求項1又は2の画像撮影システムと同様に作用する上、タイミング生成手段は、撮影タイミング信号を繰り返し生成することで撮影手段による撮影動作を繰り返し実行させるとともに、撮影タイミング周期のn倍の周期を有する選択タイミング信号を、撮影タイミング信号に同期するように繰り返し生成する。すると、この選択タイミング信号の生成タイミングに合わせて撮影手段で生成された1フィールド分の画像信号が、画像選択手段によって画像記憶手段に保存される。この結果、撮影手段により撮影された画像信号がnフィールド置きに画像記憶手段に保存される。
【0030】
請求項4の画像撮影システムは、請求項1から3のいずれかの画像撮影システムにおいて、前記画像選択手段によって前記画像記憶手段に記憶された画像信号を外部装置へ出力する画像出力手段とを備えている。よって、画像記憶手段に記憶されている画像信号を、例えば、ディスプレイなどの表示装置へ出力することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の画像撮影システムによれば、撮影手段によって画像信号を高速シャッタースピードで撮影するとき、その撮影手段の撮影タイミング周期が照明手段の商用交流電源の交流周期と異なる場合でも、点滅発光する照明手段の輝度変化周期とは関係なく、輝度レベルが一定の画像信号を画像記憶手段に保存することができ、かかる画像記憶手段に記憶される画像信号を読み出して再生することで、撮影画像の輝度のチラツキを防止できるという効果がある。
【0032】
例えば、撮影手段の撮影タイミング周期が略1/60秒であって、東日本地域の商用交流電源に応じて点滅発光する照明手段を用いて画像を撮影する場合でも、その撮影された各フィールドの画像信号の輝度変化を防止することができ、結果、略1/100秒未満の短いシャッタースピードでも鮮明な撮影画像を撮影できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である画像撮影システム1の電気的構成を示したブロック図である。図1に示すように、この画像撮影システム1は、主に、撮影装置2と、画像信号入力回路3と、電源センサ4と、タイミング生成回路5と、画像選択回路6と、画像メモリ7と、画像出力回路8とを備えている。
【0034】
撮影装置2は、例えば一般的なビデオカメラで構成されており、ナトリウム灯、水銀灯、蛍光灯その各種の放電灯(以下単に「放電灯」という。)11の照明光が照射される被撮影範囲を撮影するものである。この撮影装置2は、撮影タイミング周期T1で撮影を行うものであって、外部入力される撮影タイミング信号に合わせて(以下「同期して」ともいう。)撮影可能に形成されている。また、撮影タイミング信号は、NTSCビデオ信号の同期信号に準拠したものである。
【0035】
画像信号入力回路3は、撮影装置2で順次生成される画像信号が入力されるものであり、A/Dコンバーター及びビデオデコーダーなどの機能を備えている。電源センサ4は、放電灯11に給電を行う電源である商用交流電源10と接続されており、この商用交流電源10の交流電圧信号から一定のタイミングを検出するためのセンサである。
【0036】
具体的に、この電源センサ4は、例えばフォトカプラなど電子機器で構成されており、商用交流電源10の電圧信号が負値から正値に反転するタイミング(以下「電圧立ち上がりタイミング」ともいう。)を検出することで、その交流電圧信号の1周期に同期した検出信号を生成して、タイミング生成回路5へ出力するものである。
【0037】
なお、電源センサ4は、商用交流電源10の交流電圧信号が0V(ボルト)になるタイミングを検出することで、商用交流電源10の交流電圧信号の1/2周期を検出するものであっても良い。また、電源センサ4は、商用交流電源10の交流電圧信号が最大値又は最小値となるタイミングの一方又は双方を検出することで、その交流電圧信号の1/2周期又は1周期を検出するものであっても良い。
【0038】
タイミング生成回路5は、電源センサ4からの検出信号に基づいて、撮影装置2に対して撮影を指令するための撮影タイミング信号を生成し、その撮影タイミング信号を撮影装置2へ繰り返し出力するものである。よって、撮影装置2は、この撮影タイミング信号に同期した画像信号を順次生成し、その画像信号を画像信号入力回路3へ順次出力する。
【0039】
また、タイミング生成回路5は、撮影タイミング信号とは別個に選択タイミング信号を繰り返し生成し、その選択タイミング信号の画像選択回路6へ繰り返し出力するものでもある。この選択タイミング信号は、画像選択回路6に対して画像信号の保存を指令する信号であり、この選択タイミング信号が立ち上がっているときに画像選択回路6へ入力中の画像信号が画像メモリ7へ保存される。
【0040】
また、この選択タイミング信号は、n回置きに撮影タイミング信号と同期する信号であり、この撮影タイミング信号についての撮影タイミング周期T1をn倍(但しnは正の整数を表す。以下同じ。)した周期T2(=n×T1)を有している。またさらに、タイミング生成回路5の内部には、周期変換回路5aと、遅延回路5bと、リセット回路5cと、内部カウンタ5dとが設けられている。
【0041】
周期変換回路5aは、電源センサ4から入力される検出信号(以下「電源検出信号」ともいう。)にマスク処理を施して電源検出信号を間引くことで、その電源検出信号を元の周期より長い周期T3を有する検出信号(以下「電源同期信号」という。)の信号列に変換するものである。
【0042】
具体的に、この周期変換回路5aで実行されるマスク処理は、所定の時間幅T4を有するマスク信号を生成し、そのマスク信号の立ち上がり期間中にタイミング生成回路5へ入力される電源検出信号を無効化する。このマスク処理によって、電源検出信号は、その元々の周期よりも長周期でオンオフされる電源同期信号の信号列へと作り変えられる。
【0043】
遅延回路5bは、周期変換回路5aで生成される電源同期信号の立ち上がりタイミングから所定時間(以下「遅延時間」という。)Tdが経過するまで、撮影タイミング信号及び選択タイミング信号の同時生成タイミングを遅延させるものである(図2参照)。また、この遅延回路5bは、遅延時間Tdの長さを調節可能に形成されており、この遅延時間Tdを調整することによって、撮影タイミング信号を、放電灯11の輝度が高輝度レベルとなるタイミングに同期させることができる。
【0044】
この結果、選択タイミング信号に基づいて画像メモリ7に保存される画像信号は、放電灯11の輝度が高輝度レベルにある時点で撮影されたものとなり、かかる高輝度で撮影された画像信号を常に画像メモリ7に保存することができることとなる。
【0045】
リセット回路5cは、電源同期信号のタイミングに合わせてリセット信号を生成するものであり、このリセット信号のタイミングに合わせて内部カウンタ5dのカウント信号がリセットされる。内部カウンタ5dは、上記した撮影タイミング信号及び選択タイミング信号を生成する場合に、そのカウント信号がタイミング生成回路5によって参照されるものであり、撮影タイミング信号と選択タイミング信号とを一定のタイミングに同期させるために用いられる。
【0046】
画像選択回路6は、タイミング生成回路5で生成される選択タイミング信号に合わせて、画像信号入力回路3から出力されてくる画像信号を画像メモリ7に1フィールド分保存する動作を実行するものである。このとき、画像選択回路6が画像メモリ7に保存する1フィールド分の画像信号は、この画像選択信号に画像信号の保存を指令した選択タイミング信号と同時にタイミング生成回路5で生成された撮影タイミング信号によって撮影されたものである。
【0047】
画像メモリ7は、上記したように画像選択回路6によって選択された画像信号を格納保存するための記憶媒体であり、例えば、SDRAMなどのデータを書換可能な揮発性メモリで構成されている。画像出力回路8は、画像メモリ7に格納されているた画像信号を読み出して、ディスプレイ12へ出力するためのものである。この画像出力回路8によって、画像メモリ7に記憶されている画像信号は、撮影画像としてディスプレイ12に再生表示される。
【0048】
次に、図2を参照して、上記のように構成された画像撮影システム1の動作について説明する。図2は、商用交流電源10の交流周波数が60Hz又は50Hzである場合における、画像撮影システム1の動作例を示したタイミングチャートである。
【0049】
ここで、図2は、周波数が60Hzの商用交流電源10の交流電圧信号21と、その交流電圧信号21を検出した電源センサ4の電源検出信号22と、周波数が50Hzの商用交流電源10の交流電圧信号23と、その交流電圧信号23を検出した電源センサ4の電源検出信号24と、周期変換回路5aで生成されるマスク信号25と、周期変換回路5aで変換された電源同期信号26と、リセット回路5cで生成されるリセット信号27と、内部カウンタ5dのカウント信号28と、タイミング生成回路5で生成される撮影タイミング信号29と、タイミング生成回路5で生成される選択タイミング信号30とを、それぞれ図示したものである。
【0050】
ここで、図2では、60Hzの交流電圧信号21と50Hzの交流電圧信号23とを便宜上併記しているが、当然のことながら、実際の被撮影範囲に照明光を照射する放電灯11に対して給電する商用交流電源10は、これら交流電圧信号のいずれか一方に相当するものである。
【0051】
なお、図2に示す動作例は、電源センサ4によって交流電圧信号21又は23が負値から正値に変化するタイミング21a(図中の●印)又はタイミング23a(図中の○印)を検出することで交流電圧信号21又は23の1周期を検出したものであって、撮影タイミング周期T1を略1/60秒とし、倍数nの値を3とし、故に、選択タイミング周期T2が略3/60秒となり、電源同期信号の周期T3を略6/60秒とし、マスク信号25の時間幅T4を略5.0/60秒を超えかつ略6/60秒未満とし、遅延時間Tdを略1/60秒の1/4倍である略1/240秒としたものである。
【0052】
図2に示すように、商用交流電源10の交流電圧信号21,23のように周波数が60Hz又は50Hzのいずれの場合であっても、交流電圧信号21又は23の1周期毎に到来する立ち上がりタイミング21a又は23aに同期して、電源検出信号22又は24が電源センサ4によって繰り返し出力される。この電源検出信号22又は24が立ち上がると、それと同時に、マスク信号25が立ち上がり、その後、略5.5/60秒の間、電源センサ4から出力される電源検出信号22又は24が無効化される。
【0053】
このマスク処理によって、マスク信号25が立ち上がっている期間中の電源検出信号22又は24が間引かれた信号列、即ち、周期T3(≒6/60秒)で繰り返し立ち上がる電源同期信号26が生成される。また、この電源同期信号26は、放電灯11に給電する商用交流電源10の周波数が60Hz又は50Hzのいずれの場合にも、その交流電圧値が双方一致するタイミング(以下「有効タイミング」という。)31に同期して立ち上がるものである。
【0054】
一方、このようにして生成された電源同期信号26が立ち上がると、それと同時にリセット回路5cでリセット信号27が生成される。このリセット回路5cによるリセット信号27の生成は、電源同期信号26が立ち上がる毎に繰り返され、結果、内部カウンタ5dのカウント信号28は、電源同期信号26に同期して、周期T3(≒6/60秒)で繰り返しリセットされることとなる。
【0055】
タイミング生成回路5は、内部カウンタ5dのカウント信号28を参照することで、撮影タイミング信号29を撮影タイミング周期T1で生成するとともに、この撮影タイミング信号29のタイミングに合わせて、撮影タイミング周期T1の3倍に等しい選択タイミング周期T2で選択タイミング信号30を生成する。
【0056】
ここで、このタイミング生成回路5による撮影タイミング信号29及び選択タイミング信号30の生成タイミング32は、電源同期信号26の有効タイミング31から遅延時間Tdが経過するまで遅延される。この結果、選択タイミング信号30の立ち上がりタイミングが、放電灯11の輝度が高輝度レベルとなるタイミングに同期するように調整されるのである。
【0057】
以上、図2に例示した画像撮影システム1の動作によれば、撮影タイミング信号29の立ち上がりに同期して撮影装置2による撮影が実行され、その撮影された各フィールドの画像信号が画像信号入力回路3を経て画像選択回路6へ入力される。このとき、画像選択回路6には、そこへ入力中の画像信号の撮影を指令した撮影タイミング信号29と同時に立ち上げられた選択タイミング信号30も入力されており、この選択タイミング信号30の入力があることで、画像選択回路6へ入力中の画像信号が画像メモリ7に書き込み保存される。
【0058】
この結果、画像メモリ7には、放電灯11の高輝度タイミングで撮影された画像信号が、略6/60秒を1/6倍した周期毎に順次保存されることとなる。つまり、画像メモリ7には、撮影装置2によって略1/60秒周期で順次撮影された画像信号が、3フィールド置きに略3/60秒周期で順次保存される。このように動作することで、画像撮影システム1は、西日本地域又は東日本地域のいずれに関わらず、商用交流電源10の周波数に対応して点滅発光する放電灯11下においても輝度レベルが安定した撮影を実現できるのである。
【0059】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0060】
例えば、上記した図2に示した本実施例の動作例では、撮影タイミング周期T1が略1/60秒である場合に選択タイミング周期T2を略3/60秒とすることで、画像選択回路6に入力される画像信号を3回置き(3フィールド置き)に画像メモリ7に書き込み保存したが、かかる選択タイミング周期Tは必ずしもこれに限定されるものではない。
【0061】
仮に、撮影タイミング周期T1に3の公倍数(例えば、6,9,12,15・・・)を乗じた値を選択タイミング周期T2の値として、画像選択回路6に入力される画像信号を6,9,12,15・・・回置き(6,9,12,15・・・フィールド置き)に画像メモリ7に書き込み保存するようにしても良い。
【0062】
また、上記した図2に示した本実施例の動作例では、マスク信号の時間幅T4を略5.0/60秒を超えかつ略6/60秒未満としたが、かかるマスク信号の時間幅T4の値は、あくまでも、電源センサ4により交流電圧信号の1周期を検出する場合に適当なものであり、例えば、電源センサ4により交流電圧信号の1/2周期を検出する場合は、マスク信号の時間幅T4の値を略5.5/60秒を超えかつ略6/60秒未満としても良い。即ち、マスク信号の時間幅T4の値の設定は、有効タイミングに同期したタイミングで電源同期信号の立ち上がるように調整すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例である画像撮影システムの電気的構成を示したブロック図である。
【図2】商用交流電源の交流周波数が60Hz又は50Hzである場合における、画像撮影システムの動作例を示したタイミングチャートである。
【図3】(a)は、周波数が60Hzの商用交流電源の電圧を、(b)は、その60Hzの商用交流電源の交流信号に応じて点滅発光する電灯等の照明手段の輝度を、(c)は、周波数が50Hzの商用交流電源の電圧を、(d)は、その50Hzの商用交流電源の交流信号に応じて点滅発光する電灯等の照明手段の輝度を、それぞれ図示したものである。
【符号の説明】
【0064】
1 画像撮影システム
2 撮影装置(撮影手段)
4 電源センサ(交流電源検出手段)
5 タイミング生成回路(タイミング生成手段)
5a 周期変換回路(周期変換手段)
5b 遅延回路(遅延手段)
6 画像選択回路(画像選択手段)
7 画像メモリ(画像記憶手段)
8 画像出力回路(画像出力手段)
10 商用交流電源
11 放電灯(照明手段)
13 ディスプレイ(外部装置)
21 交流電圧信号(60Hz)(交流信号)
22 電源検出信号(60Hz)(元の検出信号)
23 交流電圧信号(50Hz)(交流信号)
24 電源検出信号(50Hz)(元の検出信号)
25 マスク信号
26 電源同期信号(周期変換後の検出信号)
29 撮影タイミング信号
30 選択タイミング信号
T1 撮影タイミング周期
Td 遅延時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源の交流信号に応じて点滅発光する電灯等の照明手段からの照明光を受けている被撮影範囲を、撮影手段によって撮影する画像撮影システムにおいて、
前記撮影手段により生成される画像信号を記憶して保存する画像記憶手段と、
その画像記憶手段に記憶される画像信号を撮影するための撮影タイミング信号を所定の撮影タイミング周期で繰り返し生成するタイミング生成手段と、
そのタイミング生成手段により生成される撮影タイミング信号に合わせて前記撮影手段で生成される各フィールドの画像信号をnフィールド(但し、nは正の整数を表す。以下同じ。)置きに前記画像記憶手段に保存する画像選択手段とを備えていることを特徴とする画像撮影システム。
【請求項2】
商用交流電源から出力される交流信号を検出し、その交流信号の1/2周期又は1周期に同期した検出信号を繰り返し生成する交流電源検出手段と、
その交流電源検出手段による検出信号をマスク処理により間引くことで、その検出信号を元の周期より長い周期に変換する周期変換手段と、
その周期変換手段により周期変換された検出信号のタイミングから所定の遅延時間が経過するまで、前記タイミング生成手段による撮影タイミング信号の生成タイミングを遅延させる遅延手段とを備えており、
その遅延時間の長さを調節することによって、前記タイミング生成手段による撮影タイミング信号を、前記照明手段の輝度が高輝度レベルとなるタイミングに同期させるものであることを特徴とする請求項1の画像撮影システム。
【請求項3】
前記タイミング生成手段は、前記撮影タイミング信号の生成に合わせて、前記撮影タイミング周期をn倍した周期を有する選択タイミング信号を繰り返し生成するものであり、
前記画像選択手段は、前記タイミング生成手段による選択タイミング信号の生成に合わせて前記撮影手段で生成される1フィールド分の画像信号を、前記画像記憶手段へ保存する動作を実行するものであることを特徴とする請求項1又は2の画像撮影システム。
【請求項4】
前記画像選択手段によって前記画像記憶手段に記憶された画像信号を外部装置へ出力する画像出力手段とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−124299(P2009−124299A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294156(P2007−294156)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【出願人】(504275786)株式会社松浦電弘社 (5)
【Fターム(参考)】