説明

画像撮影装置

【課題】従来、例えば、圧延ロールの表面画像の撮影は、周囲に飛散する冷却水や鉄粉等が障害となって長期間に渡って良好な画像を得ることができなかったり、或いは、ノズルおよび撮影機器の占有容積の問題等により噴出する水の流れを安定させて良好な画像を得ることが困難であった。
【解決手段】撮影対象1に対して液体4を噴出する液体ノズル2と、前記液体ノズルの内部において前記液体に浸漬するように設けられ、該液体ノズルから前記撮影対象まで噴出される液体を介して該撮影対象の表面画像を取り込む画像取り込み手段3と、を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像撮影装置に関し、特に、噴出される液体を介して撮影対象の表面画像を撮影する画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、鉄鋼業において鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールは、圧延によって摩耗したりヒートクラックが発生するため、圧延ロールが使用限界に達するとロールの交換を行う必要がある。
【0003】
従来、この圧延ロールの交換は、圧延ロールの摩耗によるロールプロフィルの変形や、ヒートクラックによるロール表面の肌荒れが限界に達するまでの周期を経験的に予測して行われていた。しかしながら、圧延ロールの摩耗やロールプロフィルの変形は使用状況によって極端に異なる場合があるため、最適なタイミングで圧延ロールの交換を行うのは困難であった。
【0004】
そこで、従来、圧延ロールの表面を観察するために、圧延ロールに光を照射するライトガイド用の光ファイバーと、その照射された圧延ロールの表面画像を撮影するためのイメージガイド用光ファイバーとを設けた圧延ロールの観察装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、従来、ロール冷却水が散水されている状態で回転している圧延ロール表面の画像を得るために、圧延ロールに水を噴出する水柱形成ノズルの後部に、環状キセノンランプおよびCCDカメラが設けたハウジングボックスを取り付けて、ハウジングボックスの窓部と圧延ロールの表面との間に形成される水柱を通して圧延ロール表面を撮像する圧延ロールの光学式表面検査装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭64−015951号公報
【特許文献2】特開平05−010888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールは、通常、大量の冷却水をロールに吹き付けながら圧延するため、特許文献1に開示された圧延ロールの観察装置は、冷却水や鉄粉等が飛散した環境で撮影対象である圧延ロールの表面画像を撮影することになる。そのため、特許文献1の圧延ロールの観察装置は、周囲に飛散する冷却水や鉄粉等が障害となって、長期間に渡って良好な画像を得ることは難しいものと考えられる。
【0008】
また、特許文献2に開示された圧延ロールの光学式表面検査装置は、水柱形成ノズルがカメラや照明(撮影機器)の前方に設けられているため、撮影機器が撮影対象である圧延ロール表面から離れた位置になる。そのため、圧延ロールを照射する光量が不足になり、また、水柱形成ノズルおよび撮影機器の占有容積(長さ)が大きくなって、圧延ロール周りの狭い空間に設置することは困難である。また、占有容積を小さくするために、水柱形成ノズルの長さを短くすると、噴出する水の流れが安定せずに泡などが混入して、噴出水の後方からの撮影が難しくなる。
【0009】
なお、本明細書では、主として、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールを撮影対象とし、この圧延ロールに水を噴出して該圧延ロール表面の画像を撮影する装置を例として説明するが、本発明に係る画像撮影装置は、水ノズルから水を噴出しつつ鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールの表面を撮影する装置に限定されず、撮影対象に他の液体を噴出しつつその表面画像を撮影する装置に対して幅広く適用することができる。
【0010】
本発明は、鮮明な画像を撮影することが可能な画像撮影装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、撮影対象に対して液体を噴出する液体ノズルと、前記液体ノズルの内部において前記液体に浸漬するように設けられ、該液体ノズルから前記撮影対象まで噴出される液体を介して該撮影対象の表面画像を取り込む画像取り込み手段と、を備えることを特徴とする画像撮影装置が提供される。
そして、本発明の画像撮影装置において、前記画像取り込み手段は、前記液体ノズルの内部に一端が配置されたファイバー若しくはボアスコープと、前記液体ノズルの外部に延びる前記ファイバー若しくはボアスコープの他端に取り付けられたカメラと、を備えるように構成することができる。或いは、前記画像取り込み手段は、前記液体ノズルの内部に設けられた防液型のカメラを備えるように構成することもできる。
さらに、本発明の画像撮影装置において、さらに、前記撮影対象を照明する照明手段を備えるように構成してもよい。また、前記照明手段は、前記撮影対象に対して前記液体を噴出する前記液体ノズルの先端近傍に設けられた発光素子を備えるように構成することができ、或いは、前記撮影対象に対して前記画像取り込み手段の先端近傍から光を照射するように構成してもよい。
そして、前記照明手段は、前記画像取り込み手段の先端近傍に設けられた発光素子を備えるように、若しくは、前記液体ノズルの外部に設けられた照明装置からの光を前記画像取り込み手段の先端近傍に伝える光ファイバーを備えるように構成することができる。
なお、上記の画像撮影装置において、前記撮影対象は、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールであり、且つ、前記液体は、水であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体ノズル,画像取り込み手段および照明手段をコンパクトに構成し、且つ、液柱を安定して形成できるようにしたので、鮮明な画像を撮影することが可能な画像撮影装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る画像撮影装置の全体構成を概略的に示す図であり、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールの表面画像を撮影するものを示している。図1において、参照符号1は圧延ロール、2は水ノズル(水柱形成ノズル)、3は画像取り込み手段、そして、4は噴出水(水柱)を示している。
【0014】
図1に示されるように、本発明に係る画像撮影装置は、圧延ロール1に対して水(4)を噴出する水ノズル2、および、水ノズル2の内部に設けられた画像取り込み手段3を有している。画像取り込み手段3は、水ノズル2から圧延ロール1まで噴出される水柱(噴出水)4を介して圧延ロール1の表面画像を取り込む。
【0015】
図1において、参照符号51は、例えば、水ノズル2の噴出口22の近傍に設けられたLED等の発光素子や電球に対して電力を供給するための照明用電源、或いは、水ノズル2の内部に設けられた画像取り込み手段3に設けられた光ファイバーに対して直接光を入力する照明装置を示している。
【0016】
また、参照符号52は、水ノズル2の内部に設けられた画像取り込み手段3に配置されたカメラで撮影された圧延ロール1の表面の画像を表示および記録する画像表示・記録装置、或いは、水ノズル2の内部に設けられた画像取り込み手段3に配置されたファイバースコープ(または、ボアスコープ)の一端(対物レンズ側)で入力した圧延ロール1の表面の画像をその他端に設けられたカメラで撮影すると共に、その画像を表示および記録する装置を示している。なお、参照符号53は、水ノズル2の導入口21から水を供給するための水供給装置を示している。
【実施例】
【0017】
以下、本発明に係る画像撮影装置の実施例を、添付図面を参照して詳述する。
図2は本発明に係る画像撮影装置の一実施例の要部を概略的に示す図であり、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールの表面画像を撮影するものを示している。図2において、参照符号1は圧延ロール、2は水ノズル、3は画像取り込み手段、そして、4は噴出水を示している。
【0018】
図2に示されるように、本実施例の画像取り込み手段3は、水ノズル2内に設けられた防水型のカメラ31(防水容器に収納されたカメラ)を備え、このカメラ31により撮影された画像を、ケーブル33を介して図1に示す画像表示・記録装置52に供給する。また、ケーブル33は、例えば、水ノズル2内に設けられた防水型のカメラ31の先端、すなわち、カメラ31を収納する防水容器の先端(画像取り込み手段3の先端)近傍に設けられた照明装置(LED等の発光素子)3aに対して、図1の照明用電源52からの電力を供給するようになっている。このように、水ノズル2内に照明装置3aを設けることにより、例えば、冷却水や鉄粉等の飛散による照明光量の低下を回避することができる。
【0019】
なお、照明装置としては、例えば、カメラ31の防水容器の先端ではなく、水ノズル2の先端近傍にLED等の発光素子(照明装置)32を設け、この照明装置32に対して照明用電源52からの電力を、ケーブル33を介して供給してもよい。ここで、照明装置32は、例えば、リング形状とされ、水ノズル2の内側から噴出水4を介して圧延ロール1を照明するようになっている。なお、照明装置32は、例えば、水ノズル2における導入口21から噴出口22への水の流れを乱さないようなテーパ形状とされている。また、これらの照明装置3aおよび32は、両方とも使用することも可能である。さらに、発光素子としてはLEDではなく、キセノン電球等を使用してもよいのはいうまでもない。
【0020】
ここで、本実施例の具体的な実験例としては、例えば、内径が25mmで長さが150mmの水ノズル2、外形が15mmの防水型CCDカメラで構成した防水型のカメラ31、および、水ノズル2の先端近傍にリング状に配置したLEDで構成した照明装置32を適用した。また、圧延ロール1と水ノズル2の先端との距離は、約40mmに設定し、水ノズル2から噴出する水は、18℃で毎分20リットルを供給し、そして、圧延ロール1の回転の周速度を毎分0〜300mで実施したところ、安定した水柱が形成されて圧延ロール1の鮮明な表面画像を撮影することができた。
【0021】
以上において、本実施例の画像撮影装置を、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールの表面画像の撮影に適用した場合、カメラ31は、水ノズル2内の流水によって常に冷却されるため、圧延ロール(鋼板)1からの熱によるダメージを回避することができる。また、液体ノズル(水ノズル)2により撮影対象(圧延ロール)1に噴出する液体も水に限定されるものではなく、例えば、適用される撮影対象の種類や、他の機能(撮影対象の洗浄や潤滑等)も同時に発揮させるために油等の液体を使用することもできる。
【0022】
図3は本発明に係る画像撮影装置の他の実施例の要部を概略的に示す図であり、画像取り込み手段3を水ノズル2の内部に一端が配置されたファイバースコープ34、および、そのファイバースコープ34の他端に取り付けられたカメラ35(図1におけるカメラを含む画像表示・記録装置52に対応)で構成したものである。なお、本実施例において、ファイバースコープ34としては、ボアスコープを適用することもできる。
【0023】
さらに、図3に示されるように、ファイバースコープ34に対して、例えば、画像を撮影するための光ファイバーの周囲に照明光を伝えるための光ファイバーを設け、この照明光伝達用光ファイバーに対して図1の照明装置51からの光を供給し、圧延ロール1の表面を照明するようになっている。なお、図2を参照して説明したように、水ノズル2の先端近傍に照明装置32を設けるように構成することもできる。
【0024】
以上、説明したように、本発明に係る画像撮影装置の各実施例によれば、機構が簡単でコンパクトとすることができ、また、水ノズルのパイプ長を長くすることが可能なため、安定した水柱を形成して鮮明な画像を撮影することができる。さらに、照明装置を撮影対象の近く(前方)に配置することで少ない光量で撮影対象を明るく照らすことができ、また、液体ノズル中に照明装置(LED素子や光伝達用光ファイバー)を設けることで照明装置前の汚れや曇り等による光量の低下を回避することもできる。そのうえ、液体ノズルを流れる液体による冷却効果や、液体ノズルから噴出する液体によるさらなる機能を実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、主として、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールに対して水を噴出して該圧延ロール表面の画像を撮影するために使用されるが、これに限定されるものではなく、様々な撮影対象に対して液体を噴出しつつその撮影対象の表面画像を撮影する画像撮影装置として幅広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る画像撮影装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明に係る画像撮影装置の一実施例の要部を概略的に示す図である。
【図3】本発明に係る画像撮影装置の他の実施例の要部を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 圧延ロール
2 液体ノズル(水ノズル)
3 画像取り込み手段
4 噴出水(水柱)
21 導入口
22 噴出口
31,35 カメラ
32 照明装置(発光素子)
33 ケーブル
34 ファイバースコープ(光ファイバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象に対して液体を噴出する液体ノズルと、
前記液体ノズルの内部において前記液体に浸漬するように設けられ、該液体ノズルから前記撮影対象まで噴出される液体を介して該撮影対象の表面画像を取り込む画像取り込み手段と、を備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像撮影装置において、前記画像取り込み手段は、
前記液体ノズルの内部に一端が配置されたファイバー若しくはボアスコープと、
前記液体ノズルの外部に延びる前記ファイバー若しくはボアスコープの他端に取り付けられたカメラと、を備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像撮影装置において、前記画像取り込み手段は、
前記液体ノズルの内部に設けられた防液型のカメラを備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像撮影装置において、さらに、
前記撮影対象を照明する照明手段を備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像撮影装置において、前記照明手段は、前記撮影対象に対して前記液体を噴出する前記液体ノズルの先端近傍に設けられた発光素子を備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の画像撮影装置において、前記照明手段は、前記撮影対象に対して前記画像取り込み手段の先端近傍から光を照射することを特徴とする画像撮影装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像撮影装置において、前記照明手段は、前記画像取り込み手段の先端近傍に設けられた発光素子を備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項8】
請求項6に記載の画像撮影装置において、前記照明手段は、前記液体ノズルの外部に設けられた照明装置からの光を前記画像取り込み手段の先端近傍に伝える光ファイバーを備えることを特徴とする画像撮影装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像撮影装置において、前記撮影対象は、鋼板の熱間圧延機で使用する圧延ロールであり、且つ、前記液体は、水であることを特徴とする画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−155536(P2007−155536A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352071(P2005−352071)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】