説明

画像表示装置、およびリブ形成方法

【課題】リブの破壊が生じる可能性を抑える。
【解決手段】画像表示装置は、内部が減圧される気密容器を構成し、互いに対向して配された第1の基板1および第2の基板10と、第1の基板と第2の基板との間に設けられ、気密容器を内部から支えるスペーサ7と、を備える。第2の基板には、発光部材9の各列を挟んで直線状に形成され、発光部材の高さよりも高い複数のリブ13,14が形成されている。スペーサが、複数のリブが延在する第1の方向と交差する第2の方向に延在し、第1の方向において互いに隣接する発光部材間に位置している。複数のリブは2以上の第1のリブ13と少なくとも1つの第2のリブ14とを含み、第1のリブ13は、スペーサと交差する部分に、第2の方向に幅広で、第2のリブの、スペーサと交差する部分の高さよりも高い幅広部15を有している。互いに隣接する第1のリブ13の間に第2のリブ14が少なくとも1つ配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出素子を用いた画像表示装置に関し、画像表示装置を構成する基板の上にリブを形成するリブ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子を備えた画像表示装置として、電子放出素子が設けられたリアプレートと、電子放出素子から放出された電子の照射により発光する発光部材が設けられたフェースプレートとを備えているものがある。電子放出素子は、リアプレートやフェースプレートなどから構成される薄い気密容器(真空容器)内で動作されることから、気密容器は耐大気圧構造を必要とする。大面積かつ薄型の画像表示装置を作成する際には、重量やコストの観点から、耐大気圧用のスペーサが、リアプレートとフェースプレートとの間に支柱として配置されている。
【0003】
このようなスペーサの例が、特開平02−299136号公報(特許文献1)に開示されている。また、スペーサの位置ずれや変形等による、フェースプレートの蛍光面(発光部材が設けられた面)への損傷を防ぐため、特開2000−348651号公報(特許文献2)では、フェースプレートに形成され、蛍光面より突出した複数のリブが設けられている。この画像表示装置は、直線状の均一な幅のリブがスペーサと当接する構造を有している。このようなリブによって、スペーサはフェースプレートの蛍光面と直接接触しないため、スペーサに多少の位置ずれや変形が生じても、電子放出素子や蛍光面が損傷されることが無く、画像表示装置の組立も容易になる。
【0004】
また、発光部材へ再突入する後方散乱電子の数を低減するため、特表2000−500613号公報(特許文献3)では、発光部材より約20〜200μm高くした散乱シールド(リブ)を設けられた構造が記載されている。このように、リブは、耐大気圧用のスペーサと当接するだけでなく、蛍光体(発光部材)へ再突入する後方散乱電子の数を低減する散乱シールドとして機能も担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−299136号公報
【特許文献2】特開2000−348651号公報
【特許文献3】特表2000−500613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スペーサと、フェースプレートに形成されたリブとが当接する構成において、リブの高さが均一であれば、スペーサから受ける荷重を全てのリブで分散させることができる。しかし、所望の高さにリブを形成しようとしても、リブにはある程度の高さのばらつきが生じてしまう。したがって、スペーサは、高さの高いリブのみと当接することがある。このような高さばらつきを有するリブとスペーサとを当接させて画像表示装置を組み立てる際に、スペーサの位置ずれや変形等によってリブに対してせん断力が加えられると、リブの高さのばらつきに応じてせん断力にもばらつきが生じる。少数のリブの高さが高くなった場合などでは、スペーサと当接したリブに生じるせん断応力が大きくなり、リブが破壊する可能性もある。
【0007】
リブの強度を確保するには、リブの幅を大きくすることも考えられるが、発光部材などを配置するエリアの制限上、リブの幅を広くすることには制限がある。また、エリアの制限を解消するため、幅の狭いリブを設けると、この幅の狭いリブにスペーサが当接されたときに、リブの破壊の可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、リブの破壊が生じる可能性を抑えることが可能な画像表示装置を提供することにある。また、画像表示装置を構成する基板(フェースプレート)にリブを容易に形成するリブ形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の画像表示装置は、内部が減圧される気密容器を構成し、互いに対向して配された第1の基板および第2の基板と、第1の基板の内面に設けられた電子放出素子と、第2の基板の内面に複数の列からなるマトリクス状に設けられ、電子放出素子から放出された電子の照射により発光する複数の発光部材と、第1の基板と第2の基板との間に設けられ、気密容器を内部から支えるスペーサと、を備えている。第2の基板には、発光部材の各列を挟んで直線状に形成され、発光部材の高さよりも高い複数のリブが形成されている。スペーサは、複数のリブが延在する第1の方向と交差する第2の方向に延在し、第1の方向において互いに隣接する発光部材間に位置している。複数のリブは2以上の第1のリブと少なくとも1つの第2のリブとを含み、第1のリブは、スペーサと交差する部分に、第2の方向に幅広で、かつ第2のリブの、スペーサと交差する部分の高さよりも高い幅広部を有している。互いに隣接する第1のリブの間に第2のリブが少なくとも1つ配されている。
【0010】
本発明のリブ形成方法は、基板の上に、一定幅の直線状のリブと、前記直線状のリブの高さよりも高く、幅の広い幅広部を有する直線状のリブと、を形成する方法に関する。リブ形成方法は、基板の上に光硬化性樹脂およびガラス成分を含有するフォトペーストを一定の膜厚で塗布するステップと、フォトペーストに、直線状の複数の露光パターンを形成する露光ステップと、露光パターンの全てを一括して現像および焼成し、直線状のリブを形成するステップと、を含む。複数の露光パターンは、少なくとも1つの第1の露光パターンと少なくとも1つの第2の露光パターンとを含む。第1の露光パターンは、該第1の露光パターンが延在する第1の方向と交差する第2の方向に幅広な幅広露光部を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像表示装置によれば、スペーサとリブとが強く接触する部分において、リブの幅が広くなっているため、リブのせん断に対する強度を上げることができる。これにより、スペーサとリブとを当接させたときに、耐大気圧スペーサの位置ずれや変形等およびリブの高さのばらつきに起因するリブの破壊の可能性が低下する。
【0012】
また、本発明のリブ形成方法によれば、基板の上に、一定幅の直線状のリブと、直線状のリブの高さよりも高く、幅の広い幅広部を有する直線状のリブと、を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における画像表示装置の分解斜視図である。
【図2】フェースプレートに形成されたリブの形状を示す概略図である。
【図3】フェースプレートの製造方法を説明するための概略図である。
【図4】実施例1におけるフェースプレートに形成されたリブの形状を示す概略図である。
【図5】実施例2におけるフェースプレートに形成されたリブの形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明の画像表示装置は、CRT(Cathode Ray Tube)、FED(Field Emission Display)などの電子線表示装置や、プラズマ表示装置に好適に適用できる。特に、FEDは、真空容器を構成するフェースプレートとリアプレートとの間の間隔がスペーサによって規定されているため、本発明が適用される好ましい形態となっている。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における画像表示装置の分解斜視図である。画像表示装置は、リアプレート(第1の基板)1と、フェースプレート(第2の基板)10と、リアプレート1とフェースプレート10との間に位置するスペーサ7と、を備えている。リアプレート1とフェースプレート10とは、互いに対向して配され、内部が減圧される気密容器を構成している。具体的には、気密容器は、リアプレート1とフェースプレート10と枠部材6とによって構成されている。枠部材6は、リアプレート1およびフェースプレート10と別個の部材であっても良く、リアプレート1またはフェースプレート10と一体に形成された部分であっても良い。
【0016】
リアプレート1の内面(気密容器の内側の面)には、複数の電子放出素子5が設けられている。電子放出素子5としては、冷陰極電子放出素子を用いることができる。リアプレート1には、画像信号に応じて各電子放出素子5を駆動するためのマトリクス配線(X方向配線3,Y方向配線4)2が形成されている。フェースプレート10の内面には、電子放出素子5から放出された電子が照射されることにより発光する複数の発光部材(蛍光体画素)9が設けられている。発光部材9は、フェースプレート10上に形成された不図示のブラックマトリクスの開口部に設けられ、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体によって塗り分けられている。
【0017】
電子放出素子5および発光部材9は、それぞれ、複数の列からなるマトリクス状に配されている。フェースプレート10には、発光部材9の各列を挟んで直線状に配された複数のリブ13,14が形成されている。この凸状のリブ13,14は、発光部材9の高さよりも高く、発光部材9よりもリアプレート1側に突出している。リブ13,14は、一方向(図中のY方向)に沿って延びている。
【0018】
スペーサ7は、リブ13,14と交差する方向(図中のX方向)に延びている。スペーサ7は、リアプレート1とフェースプレート10との間に設けられ、気密容器を内部から支え、気密容器に加えられる大気圧に耐える。スペーサ7は、Y方向において互いに隣接する発光部材間に位置している。
【0019】
図2は、フェースプレート10に形成されたリブ13,14の形状を示している。図2(a)は、フェースプレート10の、リアプレート1と対向する面から見た概略平面図である。図2(b)は図2(a)のA−A’線に沿った概略断面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B’線に沿った概略断面図であり、図2(d)は図2(a)のC−C’線に沿った概略断面図である。図2において、符号7がスペーサ、符号13および14がリブ、符号9が蛍光体画素である。
【0020】
本実施形態において、複数のリブ13,14は、Y方向に延びており、X方向に並んで配置されている。リブには、幅広部15を有するリブ(以下、「第1のリブ」と呼ぶ。)13と幅広部15を有していないリブ(以下、「第2のリブ」と呼ぶ。)14との2種類がある。本実施形態では、第2のリブ14は、一定の幅で直線状に延在している。第1のリブ13は、第2のリブ14と実質的に同じ幅で直線状に延在する一般部12と、スペーサ7が延在する方向(X方向)に幅広に形成された幅広部15とを有している。幅広部15は、第1のリブ13の、スペーサ7と交差する部分に形成されている。幅広部15は、第1のリブ13が延びている方向(Y方向)に周期的に形成されていることが好ましい。第1のリブ13および第2のリブ14は、後方散乱電子が蛍光体画素9へ再突入すること(ハレーション)を防止または抑制する散乱シールドの機能を担っている。
【0021】
第1のリブ13の幅広部15の高さは、第2のリブ14、特に第2のリブの、スペーサ7と交差する部分の高さよりも高くなっている。また、本実施形態では、幅広部15の高さは、一般部(幅広部15では無い部分)12よりも高くなっている。例えば、第2のリブ14の高さが200μmの場合、幅広部15は第2のリブ14よりも約2〜10μm高いことが好ましい。
【0022】
第1のリブ13の幅広部15は、スペーサ7と当接させるべき部分であり、スペーサ7は、他のリブ部分12、14より高くなっている幅広部15と接する。一方、第2のリブ14は、幅広部15よりも低いため、スペーサ7と当接しない。本実施形態では、第1のリブ13の幅広部15は、一般部12や第2のリブ14よりも耐せん断強度(せん断に対する強度)が高いため、スペーサ7との当接に対して、十分に強い耐せん断強度を有する。また、リブの高さにある程度の高さのばらつきが生じたとしても、幅広部15がスペーサ7を支えるため、耐せん断強度の弱い第2のリブ14はスペーサ7と当接しない、もしくは弱い力でスペーサ7と当接する。したがって、スペーサ7の位置ずれや変形等によってリブに対してせん断力が加えられたとしても、リブの破壊の可能性は低減される。
【0023】
一般的に、リブの耐せん断強度を向上させるには、リブ13、14の幅を太くするか、あるいはリブ13、14の高さを低くする必要がある。しかしながら、全てのリブ13、14の幅を太くしようとすると、リブ13、14間の間隔が狭くなるため、リブ13、14間に設けられる発光部材9のサイズが小さくなり、発光部材9から発せられた光の輝度が低下してしまう。また、リブ13、14の高さを低くしようとすると、電子散乱をシールドする機能が低下し、ハレーションが生じ易く、画像表示装置の性能が低下することがある。
【0024】
本実施形態では、第1のリブ13は2以上存在し、互いに隣接する第1のリブ13の間に、少なくとも1つの第2のリブ14が配されている。これにより、幅広部15が形成されたリブ13同士が隣り合うことが無いため、発光部材9を配するエリアを確保しつつ、スペーサ7に当接する幅広部15の強度を向上させることができる。
【0025】
耐せん断強度を向上させるためには、全てのリブに幅広部15を形成し、幅広部15の幅をできるだけ広くすれば良い。しかし、隣接するリブ間の距離が一定である場合、全てのリブに幅広部15を形成することには限界がある。なぜなら、幅広部15の幅が、リブ間の距離よりも小さい範囲にすることしかできないからである。ところが、幅広部15を有する第1のリブ同士の間に、1つまたは2つの第2のリブ14を配することで、幅広部15の幅をより広くすることが可能である。これにより、隣接するリブ間距離を一定とした条件下においても、耐せん断強度を最大限に向上させることができる。特に、スペーサ7が延在する方向における幅広部15の幅は、同方向における発光部材9間の距離よりも大きくすることも可能である。
【0026】
上述したように、第2のリブ14よりも幅広部15を高くすることにより、第2のリブ14にスペーサ7を当接させないようにし、耐せん断強度の強い幅広部15にスペーサ7を保持する機能を分担させた。ただし、リブ13、14には、ある程度の高さのばらつきが生じることがある。そのため、本発明では、第1のリブ13は、スペーサ7に当接させるべく形成した幅広部15を有してはいるが、結果的に、全ての幅広部15がスペーサ7に当接しなくても良いものとする。同様に、第2のリブ14は、スペーサ7に当接させないように形成したものではあるが、結果的に、スペーサ7に当接することがあっても良い。この場合でも、より突出した幅広部15によって、スペーサ7から第2のリブ14に加えられる力(せん断力)が弱められるため、第2のリブ14の破壊の虞は低減される。
【0027】
第1のリブ13の幅広部15の幅は、第1のリブ13の数、耐せん断強度や圧縮強度に応じて決定されることが好ましい。リブの耐せん断強度(曲げ強度)は、リブの根元に掛かる応力に逆比例する。したがって、リブの耐せん断強度(曲げ強度)は、リブの幅の二乗に比例し、リブ1つあたりに与えられるせん断荷重の大きさとリブの高さに反比例する。第1のリブ13の1つあたりに与えられるせん断荷重は、リブ13,14の全数に対する、第1のリブ13の数の割合の逆数倍になる。例えば、全リブのうちの半分が第1のリブ13である場合、全てのリブ13、14がスペーサ7に接する場合と比較して、1つあたりのせん断荷重は2倍になる。また、全リブ13,14のうちの3分の1が第1のリブ13である場合、1つあたりのせん断荷重は3倍になる。よって、全てのリブが幅広部15を有しておらず、かつ全てのリブがスペーサ7と接する場合よりリブの耐せん断強度を向上させるためには、幅広部15の幅を、次のようにすることが好ましい。つまり、全リブに対する第1のリブ13の数の割合をRとすると、第1のリブ13の幅広部15の幅を、第2のリブ14の、スペーサ7と交差する部分のX方向における幅の(1/R)1/2倍以上にすればよい。
【0028】
例えば、第1のリブ13の数が全リブの数の半分の場合、幅広部15の幅を第2のリブ14の幅の21/2倍以上にし、第1のリブ13の数が全リブの数の3分の1の場合、幅広部15の幅を第2のリブ14の幅の31/2倍以上にすることが好ましい。これにより、幅広部を有していないリブのみで構成された全てのリブがスペーサに接する場合と比較して、1つあたりのリブ(幅広部)に加えられる耐せん断強度を向上させることができる。
【0029】
一方、リブの圧縮強度は、リブとスペーサとの当接面積に比例する。この当接面積は、第1のリブの幅広部15の幅、スペーサ7の幅、第1のリブの数の積に比例する。1つまたは2つの第2のリブ14ごとに第1のリブ13を配することで、耐せん断強度を従来のものより向上させる程度の幅広部15の幅を確保しつつ、圧縮強度を十分に保つことができる。
【0030】
次に、基板の上にリブを形成するリブ形成方法について、図3を用いて説明する。図3は、画像表示装置を構成する基板(フェースプレート)にリブを形成する方法を示している。まず、蛍光体画素9が設けられる部分に開口部が形成された所定のパターンのブラックマトリクス16が形成されたガラス基板10を準備する(図3(a)参照)。ガラス基板10は、例えばソーダライム系ガラス(例えば、旭硝子株式会社製のPDP用ガラス基板PD200)を用いることができる。
【0031】
次に、ガラス基板10上にリブ用のペースト17を一定の膜厚で全面塗布する(図3(b)参照)。リブ用のペースト17は、少なくともガラス成分および光硬化性樹脂を含有するフォトペーストを用いることができる。ペースト17は、溶媒や開始剤などを含んでいても良い。リブ用のペースト17の塗布方法としては、スクリーン印刷、スリットコーター等があるが、ハレーションを抑止するために必要なリブの高さ(約20〜200μm)を考慮すると、スリットコーターが適している。
【0032】
次に、フォトペースト17に、直線状の複数の露光パターン14,15を形成する(露光ステップ)。ここで、それぞれの露光パターン14,15は、後にリブとして残留する部分であるため、上記の対応するリブ部分と同一の符号を付している。具体的には、第2のリブおよび第1のリブの一般部のみに対応するパターン14,12を露光した後(図3(c)参照)、さらに第1のリブの幅広部のみに対応する幅広露光部15を露光(図3(d)参照)する。つまり、複数の露光パターンのうちの少なくとも1つの第1の露光パターン13は、露光パターンが延在する第1の方向と交差する第2の方向に幅広な幅広露光部15を有し、第2の露光パターン14は当該第2の方向に一定幅である。なお、第2のリブおよび第1のリブの一般部に対応するパターン14,12の露光と、幅広部に対応する幅広露光部15の露光とは、どちらを先に行っても良い。
【0033】
その後、露光パターンの全てを一括して現像および焼成する。具体的には、現像によって、リブ用のペースト17の、不要な部分を除去する(図3(e)参照)。現像後、焼成することで、基板10の上にリブが形成される(図3(f)参照)。
【0034】
リブの高さの違いは焼成時に生じるが、この高さ違いは第1のリブの幅広部(幅広露光部)15と、第1のリブの一般部(第1の露光部の幅広露光部以外の部分)12または第2のリブ(第2の露光部)14との収縮量の差を利用している。幅広部15は、体積が大きいため収縮量が大きく、幅広部以外の一般部12または第2のリブ14は収縮量が小さい。従って、幅広部15と一般部12とが連結された状態で同時に収縮した場合には、収縮量が大きい幅広部15の方へペースト17が移動する。これによりペースト17が変形し、リブ13、14に高さの違いが生じる。つまり、リブ13、14の収縮量の差を利用することで、第1のリブの幅広部15を、一般部12および第2のリブ14よりも高くすることができる。
【0035】
リブ13,14の収縮は、焼成時にペースト17中の樹脂が分解され、空洞が発生し、ガラス転移温度以上になったガラス成分がその空洞を埋めることで生ずると考えられる。そこで、収縮量を調節するため、ペースト17中の樹脂量を多くし、焼成温度よりガラス転移温度が十分低いガラス成分を用いることが好ましい。これにより、幅広部15の収縮量を大きくし、リブの高さ違いを生じさせることができる。例えば、ペースト17固形分中の樹脂量を30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の組成比にすると良い。また、ガラス成分としては、低軟化点成分としての硼珪酸ガラスを多く含有させることが望ましい。このように、複数の露光パターンを一括して現像、焼成することで、容易に、リブに所望の高さの違いを形成することができる。
【0036】
上記露光ステップにおいて、幅広露光部15と、幅広露光部以外の露光部とを別々に露光し、幅広露光部15の露光量を、それ以外の露光部の露光量より大きくしても良い。これにより、樹脂の架橋度合、硬化する量を変化させ、焼成時に分解される樹脂量に差を与えて、リブの高さを調整することも可能である。幅広部15の架橋度合が大きいと、現像時に溶出する樹脂量が少なくなり、幅広部15には多くの樹脂が残る。逆に、一般部12および第2のリブ14は幅広部15よりも架橋度合が小さいため、現像時に溶出する樹脂量が多くなり、残る樹脂量は少なくなる。従って、焼成時には、多くの樹脂が残る幅広部15の収縮量が大きく、少ない樹脂量が残る一般部12および第2のリブ14の収縮量は小さくなる。この方法により、さらにリブの高さの違いを生じさせることが可能である。
【0037】
次に、リブ13,14が形成されたフェースプレート10を用いて画像表示装置を製造する方法について説明する。まず、フェースプレート10上のブラックマトリクス16の開口部に発光部材9を形成する。その後、発光部材9の上に、メタルバック(不図示)を形成する。そして、電子放出素子5を備えたリアプレート1を準備し、スペーサ7を介して、リアプレート1とフェースプレート10とを対向配置し、内部が気密にされた気密容器を構成する。
【実施例1】
【0038】
図4は、第1の実施例におけるフェースプレートの構成を示している。図4(a)はフェースプレートの平面図である。図4(b)は図4(a)のA−A’線に沿った断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−B’線に沿った断面図であり、図4(d)は図4(a)のC−C’線に沿った断面図である。
【0039】
図4では、幅広部15を有する第1のリブ13と、幅広部を有していない第2のリブ14とが交互に配されている。これらのリブ13、14は、蛍光体画素9の各列を挟んで両側に形成されており、蛍光体画素9の列数に応じた数だけ形成されている。
【0040】
図4において、符号7がスペーサ、符号13が第1のリブ、符号14が第2のリブ、符号15が蛍光体画素である。第1のリブ13の幅広部15は1列の蛍光体画素内の隣接画素間に位置し、周期的に15個存在している。幅広部15は、リブが延びる方向と平行な方向(X方向)に幅広になっている。実施例1では、画像表示装置は、スペーサを25本有している。
【0041】
本実施例の各部の寸法は下記の通りである。第1のリブ13の幅広部15の頂部の幅は125μm、一般部の頂部の幅は55μm、第2のリブ14の頂部の幅は55μmである。また、第1のリブ13の幅広部15の底部の幅は170μm、一般部の底部の幅は78μm、第2のリブ14のリブ底部の幅は78μmである。そして、第1のリブ13の幅広部15の高さは205μm、一般部の高さは196μm、第2のリブ14の高さは200μmである。第1のリブ13と第2のリブ14との間の距離は、リブ頂部間の距離で表すと、幅広部15と一般部12との間が120μm、一般部12と一般部12との間が155μmである。蛍光体画素9の寸法は、X方向が106μm、Y方向が250μmである。第1のリブ13の幅広部15の幅は、リブ頂部および底部ともに、第2のリブ14の幅の2倍以上(頂部:2.27倍、底部:2.18倍)になっている。このように、圧縮強度、耐せん断強度ともに、従来のリブ構造より向上する条件となっている。圧縮強度及び耐せん断強度の実測値は後程記載する。
【0042】
第1のリブ13幅広部15の高さは、第1のリブ13の一般部12及びX方向に隣接する第2のリブ14より高くなっている。第1のリブ13は、スペーサ7と当接させるべきリブであり、スペーサ7は、他のリブ部分12、14より高くなっている複数の幅広部15のうちのいくつかまたは全部と接する。また、第1のリブ13は、後方散乱電子の蛍光体への再突入を防止し、ハレーションを減少させる役割も担っている。第2のリブ14は、スペーサ7と当接はしないが、後方散乱電子の蛍光体への再突入を防止し、ハレーションを減少させる役割を担っている。
【0043】
次に、本実施例のリブ形成方法を説明する。リブ形成方法は上記方法と同一であり、以下では各工程における条件を記載する。ガラス基板10に、硼珪酸ガラス粉末入りのペースト(東レ社製:感光性ペーストTPR−8100)をスリットコーターで厚さ476μmで全面塗布する。95℃、60分乾燥後、プロキシ露光を行う。1回目の露光では、一定の幅で直線的に延びる露光部分(幅広露光部以外の部分)のみをGap450μm、露光量290mJ/cm2で露光する。2回目の露光では、幅広露光部15のみをGap450μm、露光量350mJ/cm2で露光する。2度の露光完了後、110℃、7分間ベークする。そして、0.5wt%の炭酸ナトリウム現像液で390秒現像し、180秒間水洗して、不要なペースト部分を取り除く。現像後、580℃、28分間焼成を行う。焼成後の形状は上記リブの寸法になった。
【0044】
本実施例で形成したリブの耐せん断強度は下記手法を用いて測定した。基板のX方向を地面に対して垂直にし、リブ14,15の側面が上を向くようにする。リブ頂部へ、針や刃のような先端が尖っている圧子を当てる。そして、圧子を垂直に下降させリブ頂部へ荷重を掛けていき、リブ破壊が生じた際の荷重の値を耐せん断強度とした。上記方法で耐せん断強度を測定すると、従来の構造の一定幅のリブでは耐せん断強度が0.25Nであることに対し、本実施例の幅広部15のリブでは耐せん断強度は0.85Nであった。このように、従来例のものより耐せん断強度が向上している。なお、従来のリブ構造の耐せん断強度測定結果を下記(比較例1)に記載する。
【0045】
本実施例で形成したリブの圧縮強度は下記手法を用いて測定した。圧縮強度は微小圧縮試験機(島津製作所製:MCT−W500)による圧縮破壊試験によって測定した。リブ直上から直径φ=50μmの平坦な圧子を降下させ、リブに圧縮荷重を印加しリブを破壊させる。そのリブ破壊が生じた際の荷重の値を圧縮強度とした。上記方法で圧縮強度を測定すると、従来の構造の一定幅のリブの圧縮強度が1500MPaであることに対し、本実施例の幅広部15の圧縮強度は1500MPa以上(測定機の上限値以上)であり、従来例のものより圧縮強度が向上している。従来のリブ構造の圧縮強度測定結果を下記(比較例1)に記載する。
【0046】
本実施例1のリブを有するフェースプレート10と電子放出素子5を有すリアプレート1、スペーサ7を用いて画像表示装置を組み立て、リブ13,14の破壊の有無を確認した。画像表示装置の組み立ては下記手法を用いた。リアプレート1上にスペーサ7と枠部材6を接合材で固定する。そして、スペーサ7が固定されたリアプレート1とフェースプレート10とを、電子放出素子5と発光部材9が対面するようにアライメントする。このとき、スペーサ7とフェースプレート10の第1のリブの幅広部15とが接するように配置する。枠部材6に封着材を塗布し、封着材を加熱溶融し、フェースプレート10の周縁部とリアプレート1を接合する。そして、リアプレート1に設けられた不図示の排気管から内部を排気することで、内部を真空状態にした気密容器を構成することができる。
【0047】
その後、再度加熱し封着材を溶融させ、気密容器を分解し、リブ13,14の破壊の状況の確認を行った。その結果、本実施例1のリブ構造を形成することで、リブのせん断に対する強度をさらに上げることができ、スペーサ7とリブ13,14との当接時に、リブの破壊が生じないことを確認した。このことにより、より高精細なディスプレイでの設計自由度が生まれることにもなる。
【0048】
(比較例1)
従来のリブ構造は、均一な幅の直線状のリブが等間隔で並んだ構造になっている。リブ頂部の幅は55μm、リブ−リブ間距離は、リブ頂部間の距離として表すと155μmとなっている。このリブの耐せん断強度は、上記測定方法で測定すると0.25Nであった。また、このリブの圧縮強度は、上記測定方法で測定すると1500MPaであった。
【実施例2】
【0049】
実施例1では、蛍光体画素9および画素ともに等間隔である例を説明したが、画素間のピッチは不均一であっても構わない。不均一なピッチによる実施例を以下で述べる。
【0050】
本発明の実施例2のリブ形状を図5に示す。図5は、幅広部15を有する2つの第1のリブ13の間に、幅広部15を有していない第2のリブ14が2つ存在している構成を示している。図5(a)はフェースプレートの平面図である。図5(b)は図5(a)のA−A’断面図であり、図5(c)は図5(a)のB−B’断面図であり、図5(d)は図5(a)のC−C’断面図である。本実施例の第1のリブ13および第2のリブ14の各部の寸法は、概ね実施例1と同じである。以下に相違点のみ記載する。第1のリブ13の幅広部15の頂部の幅は160μm、底部の幅は225μmである。また、第1のリブ13と第2のリブ14との間の距離は、頂部間の距離で表すと、幅広部−一般部、一般部−一般部ともに120μmである。この実施例では、X方向の画素ピッチが不均一になっている。第1のリブ13の幅広部15の幅は、リブ頂部、底部ともに第2のリブ14の幅の約3倍(頂部:2.91倍、底部:2.88倍)になっている。圧縮強度は従来のリブ構造(比較例1)と同等となっており、耐せん断強度は従来のリブ構造より向上する条件となっている。圧縮強度及び耐せん断強度の実測値は後述する。第1のリブ13の幅広部15の高さは、第1のリブ13の一般部12及びX方向に隣接する第2のリブ14の高さより高くなっている。第1のリブ13は、スペーサ7との当接させるべきリブであり、スペーサ7は他のリブ部分12,14より高くなっている幅広部15のいくつかまたは全部と接する。また、第1のリブ13は、後方散乱電子の蛍光体画素9への再突入を防止し、ハレーションを減少させる役割も担っている。第2のリブ14は、スペーサ7と当接はしないが、後方散乱電子の蛍光体画素9への再突入を防止し、ハレーションを低減させる役割を担っている。
【0051】
なお、本実施例のリブ形成方法は実施例1と同じである。本実施例で形成したリブの耐せん断強度は0.85Nであり、従来のリブ構造より耐せん断強度が向上している。耐せん断強度の測定方法は実施例1と同じ方法を用いた。また、圧縮強度は1500MPaであり、従来のリブ構造と同等である。
【0052】
本実施例の画像表示装置組み立て、分解方法は実施例1と同じである。本実施例2のリブを形成することで、リブのせん断に対する強度をさらに上げることができ、スペーサ7とリブとの当接時に、リブの破壊が生じないことを確認した。このことにより、より高精細なディスプレイでの設計自由度が生まれることにもなる。
【符号の説明】
【0053】
1 第1の基板(リアプレート)
7 スペーサ
9 発光部材
10 第2の基板(フェースプレート)
12 第1のリブの一般部
13 第1のリブ
14 第2のリブ
15 第1のリブの幅広部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が減圧される気密容器を構成し、互いに対向して配された第1の基板および第2の基板と、
前記第1の基板の内面に設けられた電子放出素子と、
前記第2の基板の内面に複数の列からなるマトリクス状に設けられ、前記電子放出素子から放出された電子の照射により発光する複数の発光部材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられ、前記気密容器を内部から支えるスペーサと、を備え、
前記第2の基板には、前記発光部材の各列を挟んで直線状に形成され、前記発光部材の高さよりも高い複数のリブが形成されており、
前記スペーサは、前記複数のリブが延在する第1の方向と交差する第2の方向に延在し、前記第1の方向において互いに隣接する前記発光部材間に位置している、画像表示装置であって、
前記複数のリブは2以上の第1のリブと少なくとも1つの第2のリブとを含み、前記第1のリブは、前記スペーサと交差する部分に、前記第2の方向に幅広で、かつ前記第2のリブの、前記スペーサと交差する部分の高さよりも高い幅広部を有しており、互いに隣接する前記第1のリブの間に前記第2のリブが少なくとも1つ配されている、画像表示装置。
【請求項2】
前記第1のリブ同士の間には、1つまたは2つの前記第2のリブが配されている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第2の方向における前記幅広部の幅は、前記第2の方向において互いに隣接する前記発光部材間の長さ以上である、請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記複数のリブの全数に対する前記第1のリブの数の割合をRとしたとき、前記第2の方向における前記幅広部の幅は、前記第2のリブの、前記スペーサと交差する部分の前記第2の方向における幅の(1/R)1/2倍以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記電子放出素子が冷陰極電子放出素子である、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
基板の上に、一定幅の直線状のリブと、前記直線状のリブの高さよりも高く、幅の広い幅広部を有する直線状のリブと、を形成するリブ形成方法であって、
前記基板の上に光硬化性樹脂およびガラス成分を含有するフォトペーストを一定の膜厚で塗布するステップと、
前記フォトペーストに、直線状の複数の露光パターンを形成する露光ステップと、
前記露光パターンの全てを一括して現像および焼成して、直線状のリブを形成するステップと、を含み、
前記複数の露光パターンは、少なくとも1つの第1の露光パターンと少なくとも1つの第2の露光パターンとを含み、前記第1の露光パターンは、該第1の露光パターンが延在する第1の方向と交差する第2の方向に幅広な幅広露光部を有している、リブ形成方法。
【請求項7】
前記露光ステップでは、前記幅広露光部と、前記幅広露光部以外の露光部とを、別々に露光し、
前記幅広露光部の露光量を、前記幅広露光部以外の露光部の露光量よりも大きくする、請求項6に記載のリブ形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−222443(P2011−222443A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93162(P2010−93162)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】