説明

画像表示装置および方法、並びにプログラム

【課題】観察対象の画像が平面視表示されている場合に、その画像に対応する立体視用画像の立体視観察を促す。
【解決手段】所定のコンテンツを表す画像を平面視表示させるとともに(#6)、複数の画像を付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、平面視表示される所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを付帯情報に基づいて判定し(#7)、立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に(#7;YES)、その判定の結果を報知する(#8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示技術に関するものであり、より詳細には、両眼視差の原理を用いた立体視表示下での画像の観察を促す技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
両眼視差の原理を用いた立体視表示技術が知られている。具体的には、この立体視表示技術は、同一の被写体を左右両眼に対応する異なる位置から撮像することによって左右各眼用の視差画像を生成し、生成された各眼用の視差画像を観察者の左右各眼に独立して与えるものである。これにより、観察者は、各視差画像中に表された被写体を奥行き感のある立体像として認識することができる。
【0003】
この立体視表示技術は、デジタルカメラやテレビ等の分野だけでなく、マンモグラフィ等の放射線診断機器や内視鏡検査装置等の医療分野でも利用されつつある。
【0004】
画像の立体視を行うためには専用の画像表示装置(以下、立体視用画像表示装置)が必要となる。立体視用画像表示装置としては、例えば、左右の各視差画像をハーフミラーによって重畳的に出力し、偏光フィルタ付きの眼鏡によって左右各眼に各視差画像を分離して出力する偏光フィルタ方式や、各視差画像を高速に切り替えて表示し、その切替えに同期して左右の視野を交互に遮蔽する液晶シャッターを有する眼鏡によって左右各眼に対応する視差画像のみを与えるフレーム・シーケンシャル方式等の特別な眼鏡を用いる方式のものが知られている。また、左右の各視差画像を空間的に分割して表示し、パララックスバリアやレンチキュラーレンズ等によって左右各眼に対応する視差画像のみを与えるようにした裸眼式のものも知られている。
【0005】
また、立体視表示用の各視差画像や平面視表示用の画像の画像データを含む画像ファイルの管理方式として、各画像データに関連づけた識別情報や、各画像ファイルの拡張子によって、その画像データや画像ファイルが立体視表示用のものであるか、平面視表示用のものであるかを識別する方式が知られている。この管理方式の下では、画像生成装置は、あるコンテンツに対して、立体視表示用の画像データと平面視表示用の画像データの両方を生成し、画像表示装置は、画像データの識別情報や画像ファイルの拡張子に基づいて適切な画像を読み込んで画像の表示を行うことができる。すなわち、立体視用画像表示装置では立体視表示用の各視差画像を読み込んで立体視表示を行い、立体視表示に対応していない通常の画像表示装置(以下、平面視用画像表示装置)では、平面視表示用の画像を読み込んで平面視表示を行うことができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−124768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の管理方式の下では、平面視用画像表示装置で画像の観察を行う観察者は、表示されている画像に対応する立体視用の視差画像が存在するかどうかを知ることができないため、その画像を立体視観察する機会を逸してしまうことが起こり得る。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、観察対象の画像が平面視表示されている場合であっても、その画像に対応する立体視用画像の立体視観察を促すことを可能にする画像表示装置および方法、並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像表示装置は、所定のコンテンツを表す画像を平面視表示する平面視表示手段を備えた装置に、複数の画像を該画像の付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、前記平面視表示される前記所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを前記付帯情報に基づいて判定する立体視可否判定手段と、該立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に、該判定の結果を報知する報知手段とを設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の画像表示方法は、コンピュータが、該コンピュータに接続された表示手段に、所定のコンテンツを表す画像を平面視表示させる方法であって、該コンピュータが実行する処理ステップには、複数の画像を該画像の付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、前記平面視表示される前記所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを前記付帯情報に基づいて判定するステップと、該立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に、該判定の結果を報知するステップとが含まれることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像表示プログラムは、コンピュータに接続された表示手段に所定のコンテンツを表す画像を平面視表示させる処理を該コンピュータに実行させるプログラムであって、該コンピュータに、複数の画像を該画像の付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、前記平面視表示される前記所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを前記付帯情報に基づいて判定するステップと、該立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に、該判定の結果を報知するステップとを実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明において、「付帯情報」には各画像が立体視表示用かどうかを識別する識別情報が含まれるようにし、その識別情報に基づいて前記判定を行うようにしてもよい。あるいは、「付帯情報」には画像の取得日時が含まれるようにし、前記平面視表示される画像の取得日時と所定の基準を満たす程度に近接する画像が存在する場合に、前記立体視表示するための画像が存在すると判定するようにしてもよい。
【0013】
本発明において、所定のコンテンツを表す画像の立体視表示と平面視表示の両方を可能に構成しておき、前記所定のコンテンツの平面視表示を行わせる平面視表示モードと、該所定のコンテンツの立体視表示を行わせる立体視表示モードとの選択を受け付けるようにし、平面視表示モードの場合に前記判定を行うようにしてもよい。
【0014】
なお、「画像記憶手段」は、本発明の画像表示装置や、本発明の方法、プログラムが実行されるコンピュータが備えていてもよいし、外部の画像保管装置であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の画像を付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、平面視表示される所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを付帯情報に基づいて判定し、立体視表示するための画像が存在すると判定された場合には、その判定の結果を報知することができるので、観察対象の画像が平面視表示されている場合であっても、その画像に対応する立体視用画像の立体視観察を促すことが可能になる。したがって、観察者に対して、立体視観察を行うための動機づけを与えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態となる医用画像表示装置が導入された医用画像診断システムの概略構成図
【図2】乳房画像撮影システムの概略構成図
【図3】乳房画像撮影装置のアーム部を示す概略断面図
【図4】乳房画像撮影システムのコンピュータ内部の概略構成と周辺機器等を示すブロック図
【図5】左右各目用の画像データが1つの画像ファイルに格納される場合のファイル構成の一例を表した図。
【図6】左右各目用の画像データが1つの画像ファイルに格納される場合の画像データベースの登録例を表した図
【図7】本発明の実施形態における医用画像表示装置の概略構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施形態における医用画像表示処理の流れを表すフローチャート
【図9】左右各目用の画像データが別個の画像ファイルに格納される場合のファイル構成の第1の例を表した図。
【図10】左右各目用の画像データが別個の画像ファイルに格納される場合の画像データベースの第1の登録例を表した図
【図11】左右各目用の画像データが別個の画像ファイルに格納される場合のファイル構成の第2の例を表した図。
【図12】左右各目用の画像データが別個の画像ファイルに格納される場合の画像データベースの第2の登録例を表した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、乳房のステレオ撮影で得られた画像の立体視表示を促す場合を例にして、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、視認しやすくするため、図中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0018】
図1は、本発明の実施形態となる医用画像診断システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ100と、画像保管サーバ200と、画像処理ワークステーション300とが、ネットワーク900を経由して、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等のプロトコルに基づいて通信可能な状態で接続されている。
【0019】
モダリティ100には、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表す画像の画像データを生成し、その画像データに後述の付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置が含まれる。具体例としては、フラットパネル型のX線検出器を用いたX線撮影装置や、CT、MRIなどが挙げられる。
【0020】
図2は、本実施形態で用いられる、モダリティ100の一例となる乳房画像撮影システム100aの概略構成を示す図、図3は図2に示す乳房画像撮影システム100aのアーム部を図2の右方向から見た図、図4は図2に示す乳房画像撮影システム100aのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施形態の乳房画像撮影システム100aは、図2に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ8と、コンピュータ8に接続されたモニタ9および入力部7とを備えている。
【0022】
そして、乳房画像撮影装置10は、図2に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。なお、図3には、図2の右方向から見たアーム部13を示している。
【0023】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0024】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0025】
また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されており、基台11に対してアーム部13が回転したときでも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きとすることができる。
【0026】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接変換型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接変換型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。放射線画像検出器15から出力された放射線画像信号はAD変換されて放射線画像データとされる。
【0027】
放射線照射部16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電圧、管電流、時間、管電流時間積等)を制御するものである。
【0028】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0029】
コンピュータ8は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図4に示すような制御部8a、放射線画像記憶部8b、画像処理部8c、画像送信部8dが構成されている。
【0030】
制御部8aは、各種のコントローラ31〜34に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後で詳述する。放射線画像記憶部8bは、放射線画像検出器15によって取得された撮影角度毎の放射線画像データを記憶するものである。画像処理部8cは、放射線画像データに対して種々の画像処理を施すためのものである。画像送信部8dは、放射線画像データを画像保管サーバ200に送信するためのものである。
【0031】
入力部7は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、撮影者による撮影条件などの入力や操作指示の入力なども受け付けるものである。
【0032】
モニタ9は、コンピュータ8から出力された2つの放射線画像データを用いて、撮影方向毎の放射線画像をそれぞれ2次元画像として表示することにより、ステレオ画像を表示するように構成されたものである。
【0033】
ステレオ画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像データに基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。
【0034】
または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0035】
次に、本実施形態の乳房画像撮影システム100aの作用について説明する。
【0036】
最初に撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房Mが所定の圧力によって圧迫される。
【0037】
次に、入力部7おいて、2つの異なる撮影方向がなす角度(以下、輻輳角θという)および輻輳角θを構成する撮影角度θ'の組み合わせを含む種々の撮影条件が入力された後、撮影開始の指示が入力される。
【0038】
そして、入力部7において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影が行われる。具体的には、まず、制御部8aが、輻輳角θと輻輳角θを構成する撮影角度θ'の情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施の形態においては、撮影枚数を減らすべく2次元観察用の画像と立体視表示するための一方の画像とを兼ねるようにするため、このときの輻輳角θの情報としてθ=4°、輻輳角θを構成する撮影角度θ’の組み合わせとしてθ’=0°とθ’=4°の組み合わせが設定されているものとするが、これに限られるものではなく、撮影者は入力部7において任意の輻輳角θを設定可能である。なお、輻輳角θは小さすぎても大きすぎても適切な立体視を行なわせることが難しくなるため、4°以上15°以下に設定されることが望ましい。また、撮影角度θ’の組み合わせについても、一方の撮影角度θ’が他方の撮影角度θ’よりも小さいものである限り、特に限定されるものではない。なお、撮影角度θ’の組み合わせとしては、上記の一方の撮影角度θ’、すなわち2次元観察用の画像を撮影するための撮影角度θ’は0°とすることが望ましい。これは、放射線画像検出器15の正面から撮影した画像が、最も2次元観察に適しているからである。
【0039】
アームコントローラ31において、制御部8aから出力された輻輳角θの情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、この輻輳角θの情報に基づいて、アーム部13を検出面15aに垂直な方向に対して4°傾く撮影角度θ'となる制御信号を出力する。
【0040】
アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が4°回転する。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32に対して撮影条件に応じた量の放射線の照射を行うよう制御信号を出力するとともに、検出器コントローラ33に対して放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から撮影条件に応じた量の放射線が照射され、乳房Mを撮影角度θ'が4°の方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像データが読み出され、画像処理部8cによって所定の画像処理が行われた後、放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、撮影角度θ'が4°の放射線画像データは、立体視表示するための一方の画像としてのみに用いられるものとなる。
【0041】
続いて、アームコントローラ31は、アーム部13が撮影台14に垂直な方向となるよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を検出面15aに垂直な方向とする撮影角度θ'が0°となる制御信号を出力する。
【0042】
アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が検出面15aに対して垂直な方向となる。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32に対して撮影条件に応じた量の放射線の照射を行うよう制御信号を出力するとともに、検出器コントローラ33に対して放射線画像の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から撮影条件に応じた量の放射線が照射され、乳房Mを撮影角度θ'が0°の方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出される。撮影が終了すると圧迫板18を移動させて乳房Mの圧迫を解除するとともに、検出器コントローラ33によって放射線画像データが読み出され、画像処理部8cによって所定の画像処理が行われた後、放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、撮影角度θ'が0°の放射線画像データは、2次元観察用の画像と立体視表示するための一方の画像とを兼ねるものとなる。
【0043】
次に、画像送信部8dは、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶された2つの放射線画像データを、図5に例示したファイル構造の画像ファイルに格納し、画像保管サーバ200に送信する。送信される画像ファイルには、図5に示したとおり、ヘッダ、左目用画像データ、右目用画像データが、この順に格納されている。ヘッダには、ファイルのフォーマットを識別するファイル種別、画像を識別する画像ID、患者を識別する患者ID、検査を識別する検査ID、撮影日時、モダリティ、撮影部位、撮影方向等の、画像データに関連づけられる付帯情報が含まれる。ここで、ファイル種別は、図5に示したようなファイル構造の定義が関連づけられたものである。したがって、後述の画像表示処理等を行うプログラムでは、ファイル種別の値毎にファイル構造が定義されており、そのプログラムの実行時には、まず、ファイル種別の値が読み取られ、その値に応じたファイル構造で、ファイル内のデータが読み取られる。また、各目用の画像データには、画像データ識別子が付加されている。図5の例では、この画像データ識別子は、左右どちらの目用の画像データであるかを識別する「L」または「R」と、各目用の画像データが複数ある場合のための連番とからなる。すなわち、1つの画像IDは1つの画像ファイルを識別し、その画像IDによって識別される画像ファイル中に、画像データ識別子によって識別される左右各目用の画像データが格納されている。
【0044】
なお、乳房画像撮影システム100aにおいて、ユーザからステレオ画像表示が要求された際には、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶された2つの放射線画像データが放射線画像記憶部8bから読み出された後、所定の信号処理が施されてモニタ9に出力され、モニタ9において、乳房Mのステレオ画像が表示される。
【0045】
また、ユーザから2次元画像表示が要求された際には、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶された2つの放射線画像データのうち撮影角度θ'が0°の放射線画像データが放射線画像記憶部8bから読み出された後、所定の信号処理が施されてモニタ9に出力され、モニタ9において、乳房Mの2次元画像が表示される。
【0046】
画像保管サーバ200は、モダリティ100で取得された医用画像データや画像処理ワークステーション300での画像処理によって生成された医用画像の画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0047】
画像データベースは、図6に一例を示したように、画像ID、患者ID、検査ID、撮影日時、モダリティ、撮影部位、撮影方向等からなるインデックス情報と、画像データが格納されている画像ファイル名(パス、アドレス)とが関連づけられた表形式のデータ構造とすることができる。また、本実施形態では、図6の画像ID=「0000100」のレコードは、乳房画像撮影システムで上記のステレオ撮影を行うことによって得られた、図5に示したファイル構成の画像ファイルの情報を表しているものとする。
【0048】
画像処理ワークステーション300は、本発明の医用画像表示装置として機能する。読影者からの要求に応じて、モダリティ100や画像保管サーバ200から取得した医用画像データに対して画像処理(画像解析を含む)を行い、生成された画像をディスプレイモニタに平面視表示させるコンピュータであり、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーティングシステム等がインストールされたものである。本発明の医用画像表示処理は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムを実行することによって実現される。また、このプログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。なお、本実施形態の医用画像診断システムには、乳房画像撮影システム100aに接続されたモニタ9と同様の立体視表示可能なディスプレイモニタを備えた画像処理ワークステーション(図示なし)もネットワーク900に接続されているものとする。
【0049】
図7は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる医用画像表示処理に関連する部分を示すブロック図である。図に示すように、本実施形態における医用画像表示処理は、患者ID入力受付部51、画像リスト取得部52、表示画像選択受付部53、表示画像取得部54、画像表示制御部55、立体視可否判定部56、メッセージ表示制御部57によって実現される。また、患者ID(PID)、画像リスト(IDXn)、選択された表示対象画像のリスト情報(IDXN)、表示対象の画像ファイル(IMGN)は、各々、上記各処理部によって、画像処理ワークステーション3の所定のメモリ領域に対して読み書きされるデータである。なお、nはリスト情報の各行を識別する添え字、Nはリスト情報から表示対象として選択された画像のリスト行の添え字である。
【0050】
次に、本発明の実施形態となる医用画像表示処理の流れに沿って、上記各処理部の処理内容の詳細について説明する。図8は、本実施形態における医用画像表示処理ソフトウェアの実行下でのユーザの操作や、演算処理、表示処理等の流れを示したフローチャートである。
【0051】
まず、患者ID入力受付部51は、所定の患者ID入力用のユーザインターフェースを提示し、キーボードやマウス等による患者IDの入力操作を受け付け、入力された患者ID(PID)を所定のメモリ領域に格納する(#1)。
【0052】
画像リスト取得部52は、入力された患者ID(PID)をメモリ領域から読み込み、この患者ID(PID)を、画像リスト情報を取得するための検索要求として、画像保管サーバ200に送信する。画像保管サーバ200は、受信した患者ID(PID)を検索キーとして画像データベースの検索を行い、その患者ID(PID)の画像のインデックス情報(IDXn)を取得し、要求元の画像処理ワークステーション300に送信する。画像リスト取得部52は、患者ID(PID)の画像のインデックス情報(IDXn)を受信し、所定のメモリ領域に格納する(#2)。
【0053】
表示画像選択受付部53は、受信したインデックス情報(IDXn)をメモリ領域から読み込み、インデックス情報(IDXn)をリスト表示する(#3)。例えば、患者ID入力受付部51によって患者ID「AB12345」が入力された場合、図6に例示された画像データベースの登録例では、画像ID「0000100」と「0000101」の行の撮影日時、モダリティ、撮影部位、撮影方向が画像処理ワークステーション300のディスプレイモニタにリスト表示される。ここで、図5の画像ファイルの構成の場合、1つの画像IDに対して複数の画像データが対応しうるが、上記リスト表示では、画像ID毎に1行のリストとして表示されるので、観察者は、立体視表示用の画像データの存在を認識することができない。
【0054】
表示画像選択受付部53は、例えば、画像ID「0000100」を表すリスト行をマウスでクリックする等の、表示画像の選択操作を受け付け、選択された表示画像を特定するインデックス情報(IDXN)を所定のメモリ領域に格納する(#4)。
【0055】
表示画像取得部54は、選択された表示画像のインデックス情報(IDXN)をメモリ領域から読み込み、このインデックス情報(IDXN)を、表示対象の画像の画像ファイルを取得するための検索要求として、画像保管サーバ200に送信する。画像保管サーバ200は、受信したインデックス情報(IDXN)を検索キーとして画像データベースの検索を行い、そのインデックス情報(IDXN)に関連づけられた画像ファイル(IMGN;この例では「IXR00001」)を取得し、要求元の画像処理ワークステーション300に送信する。表示画像取得部54は、選択されたインデックス情報(IDXN)に関連づけられた画像ファイル(IMGN)を受信し、所定のメモリ領域に格納する(#5)。
【0056】
画像表示制御部55は、受信した画像ファイル(IMGN)をメモリ領域から読み込み、画像処理ワークステーション300のディスプレイモニタに平面視表示する(#6)。ここで、画像ファイル(IMGN)に複数の画像データが含まれている場合、画像表示制御部55は、予め定められた条件に基づいて、平面視表示対象の画像データを選択する。具体的には、先頭の画像データを選択するようにしてもよいし、画像データ識別子が特定の値(図5の例では「L1」)のものを選択するようにしてもよい。また、画像ファイル中の付帯情報として、各画像データの撮影角度の情報を格納するようにし、画像表示制御部55は、この撮影角度が所定の条件を満たす画像データを、平面視表示対象の画像データとして選択するようにしてもよい。この場合、例えば、撮影角度が0°に最も近い画像データを選択するようにしてもよい。
【0057】
一方、画像の平面視表示と同時に、立体視可否判定部56が、受信した画像ファイル(IMGN)中に立体視表示のための各視差画像が含まれているかどうかを判定する(#7)。具体的には、ファイル種別として、立体視表示用の画像ファイルであることを表す値が定義されている実施形態では、立体視可否判定部56は、ファイル種別の値に基づいて上記判定を行うことができる。また、図5に例示したファイル構造であれば、立体視可否判定部56は、画像データ識別子に「L」を含む画像データと「R」を含む画像データとがファイル内に含まれていれば立体視可能と判定してもよい。
【0058】
立体視可否判定部56が立体視可能と判定した場合(#7;YES)、メッセージ表示制御部57が、その旨を表すメッセージ(例えば、「この画像は、立体視対応ディスプレイで立体視表示が可能です。」)をディスプレイモニタに表示する(#8)。なお、メッセージの代わりにその旨を表すアイコン等を表示してもよいし、上記メッセージを音声出力してもよいし、その旨を表す効果音等を出力するようにしてもよい。また、これらの出力を複数組み合わせて行ってもよい。一方、立体視可否判定部56が立体視可能ではないと判定した場合(#7;NO)、上記メッセージの出力を行わずに画像表示処理を終了する。
【0059】
以上のように、本実施形態は、立体視用の複数の視差画像が1つの画像ファイルに格納される形態であり、立体視可否判定部56が、平面視表示対象の画像ファイル中に、立体視表示用の複数の視差画像が含まれているかどうかを、ファイル種別あるいは画像データ識別子に基づいて判定する。これにより、複数の画像を付帯情報と関連づけて記憶する画像保管サーバ200の中に、平面視表示された所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかが、付帯情報に基づいて判定されたことになる。そして、立体視表示するための画像が存在すると判定された場合には、メッセージ表示制御部57が、その判定の結果を報知することができる。したがって、観察対象の画像が平面視表示されている場合であっても、その画像に対応する立体視用画像の立体視観察を促すことによって、観察者に対して、立体視表示可能なディスプレイモニタを備えた画像処理ワークステーション(図示なし)で立体視観察を行うための動機づけを与えることが可能になる。
【0060】
上記実施形態では、左右の視差画像のうちの一方を平面視表示するようにしていたが、画像ファイル中に、これらの視差画像とは別に、平面視表示用の画像データを、平面視表示用画像であることを表す画像データ識別子(例えば「2D」)と関連づけてさらに格納するようにしてもよい。この場合、画像表示制御部55は、画像データ識別子が平面視表示用画像であることを表す値の画像データを画像ファイル中から読み込み、平面視表示を行えばよい。
【0061】
なお、本発明は、立体視用の複数の視差画像が別個の画像ファイルに格納される形態であってもよい。図9は、この場合のファイル構成の一例を表したものであり、図10は、この場合の画像データベースの登録例を表したものである。図に示したように、この例では、立体視可否判定部56は、各ファイルのヘッダに含まれる画像IDの枝番に基づいて、立体視用の視差画像が存在するかどうかを判定することができる。すなわち、画像IDの数字部分(図では「0000100」)が同じ値で、枝番が「L」の画像と「R」の画像が存在する場合には、立体視用の視差画像が存在すると判定することができる。
【0062】
また、図11のファイル構成、図12の画像データベースの登録例に示したように、立体視用の複数の視差画像が別個の画像ファイルに格納されるだけでなく、画像ファイルのヘッダ(付帯情報)には、立体視用の視差画像であることを明示的に識別する情報が存在しない場合であっても、立体視の可否を判定することは可能である。具体的には、立体視可否判定部56は、同一患者ID、同一モダリティ、同一撮影部位、同一撮影方向で、撮影日時の差が所定の閾値以下(例えば3分以下)のすべてを満たす2つの画像が存在する場合、これらの画像が立体視表示用に撮影されたものであると判断し、立体視可能であると判定すればよい。図12の画像データベースの登録例では、画像ID「0000100」と「0000101」の画像データが、立体視表示に撮影された複数の視差画像データであると判定される。
【0063】
また、上記実施形態は、平面視表示用の画像処理ワークステーションに本発明を適用した例となっているが、立体視表示可能なディスプレイモニタ(立体視ディスプレイ)を備えた画像処理ワークステーションに本発明を適用することも考えられる。具体的には、立体視ディスプレイに左右各目用の視差画像を表示させる立体視表示モードと、立体視ディスプレイに、一方の視差画像のみ、または、平面視表示用の画像を表示させる平面視表示モードとを観察者が選択できるようにしておき、平面視表示モードで画像を表示させる場合に、上記実施形態を実装すればよい。そして、立体視可否判定部56が立体視表示するための画像が存在すると判定した場合には、メッセージ表示制御部57が、「この画像は、立体視対応ディスプレイで立体視表示が可能です。立体視表示モードに切り替えますか?」のようなメッセージを出力するようにすればよい。さらに、このメッセージに応答するためのユーザインターフェース(例えば、「はい」「いいえ」のボタン)を提示し、観察者による選択操作を受け付けるようにし、立体視表示モードに切り替える旨の選択が行われた場合には、立体視ディスプレイに左右各目用の視差画像を表示させるようにすればよい。
【0064】
上記の実施形態や変形例はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。また、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、画像リスト取得部52が、画像リストの表示に必要の付帯情報のみを画像保管サーバ200から取得するようにしているが、画像データも同時に取得するようにしてもよい。この場合、表示画像取得部54は、画像保管サーバ200にアクセスせずに、画像リスト取得部52が取得した画像データから表示画像を取得すればよい。
【0066】
また、上記実施形態では、人体の乳房を被写体としているが、頭部や胸部(心臓、肺)等の他の部位を被写体としてもよい。また、内視鏡画像であってもよい。さらに、デジタルカメラで得られた写真画像やテレビ用の映像であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
7 入力部
8 コンピュータ
8a 制御部
8b 放射線画像記憶部
8c 画像処理部
8d 画像送信部
9 モニタ
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
31 アームコントローラ
32 放射線源コントローラ
33 検出器コントローラ
34 圧迫板コントローラ
51 患者ID入力受付部
52 画像リスト取得部
53 表示画像選択受付部
54 表示画像取得部
55 画像表示制御部
56 立体視可否判定部
57 メッセージ表示制御部
100 モダリティ
100a 乳房画像撮影システム
200 画像保管サーバ
300 画像処理ワークステーション
900 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のコンテンツを表す画像を平面視表示する平面視表示手段を備えた画像表示装置であって、
複数の画像を該画像の付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、前記平面視表示される前記所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを前記付帯情報に基づいて判定する立体視可否判定手段と、
該立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に、該判定の結果を報知する報知手段とをさらに備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記付帯情報は、各画像が立体視表示用かどうかを識別可能な識別情報を含むものであり、
前記立体視可否判定手段は、該識別情報に基づいて前記判定を行うものであることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記付帯情報は、前記画像の取得日時を含むものであり、
前記立体視可否判定手段は、前記平面視表示される画像の取得日時と所定の基準を満たす程度に近接する画像が存在する場合に、前記立体視表示するための画像が存在すると判定するものであることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記所定のコンテンツを表す画像を立体視表示する立体視表示手段と、
前記所定のコンテンツの平面視表示を行わせる平面視表示モードと、該所定のコンテンツの立体視表示を行わせる立体視表示モードとの選択を受け付ける表示モード選択受付手段とをさらに備え、
前記立体視可否判定手段は、該平面視表示モードの場合に前記判定を行うものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の画像表示装置。
【請求項5】
コンピュータが、該コンピュータに接続された表示手段に、所定のコンテンツを表す画像を平面視表示させる画像表示方法であって、該コンピュータが実行する処理ステップには、
複数の画像を該画像の付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、前記平面視表示される前記所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを前記付帯情報に基づいて判定するステップと、
該立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に、該判定の結果を報知するステップとが含まれることを特徴とする画像表示方法。
【請求項6】
コンピュータに接続された表示手段に所定のコンテンツを表す画像を平面視表示させる処理を該コンピュータに実行させる画像表示プログラムであって、該コンピュータに、
複数の画像を該画像の付帯情報と関連づけて記憶する画像記憶手段の中に、前記平面視表示される前記所定のコンテンツを立体視表示するための画像が存在するかどうかを前記付帯情報に基づいて判定するステップと、
該立体視表示するための画像が存在すると判定された場合に、該判定の結果を報知するステップとを実行させることを特徴とする画像表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−175633(P2012−175633A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38372(P2011−38372)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】