説明

画像表示装置用光学部材

【課題】光学部材と透明保護部材の間に生じる気泡による外観上の不具合を抑制しうる光学部材を提供すること、及び、当該光学部材を使用することにより、前記外観不良が抑制された画像表示装置を提供すること。
【解決手段】光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層とを備え、さらに光学部材における接着剤層とは反対側に画像表示部を備える画像表示装置に使用される前記光学部材であって、下記(1)の条件を満たすことを特徴とする光学部材。
(1)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤10μlを前記光学部材の表面に滴下した後、5分放置した際における前記光学部材と前記評価用接着剤との接触角が55°以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層とを備え、さらに光学部材の接着剤層とは反対側に画像表示部を備える画像表示装置に使用される前記光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置において、液晶セルなどの画像表示部の視認側に、偏光板や、防眩フィルム、反射防止フィルムなどの光学部材を配置し、さらにそれらを保護するために接着剤層を介してガラス製等の透明保護部材を配置したものが知られている。この画像表示装置を作製する方法として、例えば、前記光学部材に接着剤を垂らして広げた後に前記透明保護部材を倒し込んで重ね合わせ、次いで接着剤を硬化させることによりそれらを一体化させる方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、使用する光学部材によっては、それに接着剤を垂らした際に接着剤が弾かれてしまうことがあり、その結果、光学部材と透明保護部材の間に気泡が生じてしまうことがあった。そこで、本発明の目的は、光学部材と透明保護部材の間に生じる気泡による外観上の不具合を抑制しうる光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況の下、本発明者らは鋭意検討したところ、イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む特定の接着剤を評価用接着剤として、光学部材における所定の接触角を評価したところ、該接触角が55°以下である光学部材によれば、本発明の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層とを備え、さらに光学部材における接着剤層とは反対側に画像表示部を備える画像表示装置に使用される前記光学部材であって、下記(1)の条件を満たすことを特徴とする光学部材を提供するものである。
(1)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤10μlを前記光学部材の表面に滴下した後、5分放置した際における前記光学部材と前記評価用接着剤との接触角が55°以下であること。
【0007】
また、本発明は、光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層とを備え、さらに光学部材の接着剤層とは反対側に画像表示部を備える画像表示装置であって、前記光学部材が下記(1)の条件を満たすことを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
(1)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤10μlを前記光学部材の表面に滴下した後、5分放置した際における前記光学部材と前記評価用接着剤との接触角が50°以下であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学部材と透明保護部材の間に生じる気泡による外観上の不具合を抑制しうる光学部材を提供することができ、さらに、当該光学部材を使用することにより、前記外観不良が抑制された画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明における画像表示装置の概念図である。
【図2】光学部材の最大せん断応力を測定する際に使用するサンプルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<光学部材>
本発明の光学部材は、画像表示装置の部材として使用されるものであり、該画像表示装置は、本発明の光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層を備え、さらに前記光学部材における接着剤層とは反対側に画像表示部を備えるものである。そして、本発明の光学部材は、特定の評価用接着剤により測定される接触角が所定値以下となるものである。このように、画像表示部の方から順に、画像表示部、光学部材、接着剤層、および透明保護部材を備える画像表示装置において、前記光学部材として所定値の接触角を示す本発明の光学部材を採用することにより、光学部材と透明保護部材との間に生じる気泡の発生を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の光学部材は、下記(1)の条件を満たすものである。
(1)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤10μlを前記光学部材の表面に滴下した後、5分放置した際における前記光学部材と前記評価用接着剤との接触角が55°以下であること。
【0012】
前記評価用接着剤は、光学部材の接触角を評価するための接着剤であり、必ずしも当該接着剤によって画像表示装置の接着剤層を構成しなくてもよい。この評価用接着剤は、前述したように、イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含むものである。なお、ここでいう光重合開始剤は、イルガキュア184など従来公知のものを採用することができる。評価用接着剤は、その他の添加物として、アセトン、2,4,6-トリメチル安息香酸の如き溶媒や、1−オクタンチオールの如き重合調整剤のほか、ジフェニルホスフィンを含むことができるが、実質的には、前記必須成分以外のほとんどの成分はイソプレン重合体から構成される。評価用接着剤は、このような組成で構成されるので、透明で粘性のあるものとなっている。
【0013】
本発明の光学部材は、その表面に前述した評価用接着剤を10μl滴下した後、5分間放置した際において、これらの接触角が55°以下となるものである。この接触角の測定は、評価用接着剤を使用しているものの、それ以外はいわゆる対水接触角と同様に測定することができ、例えば、DataPhysics社製のContact Angle System 「OCA30L」を用いて測定することができる。
【0014】
本発明の光学部材は、前記接触角が55°以下のものであり、これにより前述した気泡の発生を抑制することができる。かかる気泡発生を抑制するという観点から、接触角は50°以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の光学部材は、さらに下記(2)の条件を満たすものであることが好ましい。
(2)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤を前記光学部材の表面に塗布した後、硬化処理して接着剤層を形成したサンプルにおける前記接着剤層に対する前記光学部材の最大せん断応力が140N以上であること。
【0016】
ここで、光学部材の最大せん断応力の測定方法について、図2を参照しながら説明する。まず、評価用接着剤としては、前述したものと同様のものを使用する。次に、予めガラス板6に貼合しておいた光学部材1の表面に前記評価用接着剤を塗布した後、さらに接着剤を塗布した面にガラス板7を重ね合わせ、次いで活性エネルギー線を照射して硬化処理を行うことにより、光学部材1とガラス板7との間に接着剤層8を形成させ、測定用のサンプルを作製する。その後、このサンプルにおいて、ガラス板6とガラス板7とを相対する方向(図2中の矢印方向)、すなわち光学部材1から接着剤層8を引き剥がす方向に一定速度で応力をかけていき、観測された力の最大値が最大せん断応力となる。この最大せん断応力は、JIS K6868−2に準じて測定できるものである。この最大せん断応力を測定する装置として、例えば、島津製作所社製のオートクレープ(AG−1)などを使用することができる。このように測定される最大せん断応力が、前記(2)の条件で規定する光学部材の最大せん断応力を意味するものとなる。
【0017】
光学部材の最大せん断応力は、140N以上であることが好ましい。この最大せん断応力を140N以上にすることにより、光学部材と、接着剤を介して積層される透明保護部材との密着性が高まることになり、例えば、液晶TVのように透明保護部材が大きくなる画像表示装置においては、透明保護部材の自重による該部材のずれを防止することが可能となり、また、携帯情報端末のように持ち運び時に物理的な負荷がかかる画像表示装置においては、かかる物理的負荷による該部材のずれを防止することが可能となる。
【0018】
本発明の光学部材は、前述した特定の接触角を有する板状(プレート状)、シート状、フィルム状のものが挙げられるが、画像表示装置の構成部材として、シート状又はフィルム状のものが好ましい。中でも、防眩処理、反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理、プライマー処理されているものが好ましく、これらの処理が施されているフィルムとして、防眩フィルムや、光拡散フィルム、反射防止フィルム、偏光子保護フィルム又はそれを備える偏光板などが挙げられる。以下、これらについて説明する。
【0019】
防眩フィルムは、画像表示装置に防眩機能を付与するためのフィルムであり、例えば、透明基材フィルムの表面にいわゆる防眩面が形成されたものが挙げられる。ここでいう防眩面としては、例えば、(ア)透光性樹脂中に透光性微粒子を分散させることにより表面に所定の凹凸を形成した防眩層、(イ)透光性樹脂の表面に金型等により所定の凹凸を形成した防眩層、(ウ)透明基材フィルムの表面に直接所定の凹凸を形成した防眩面などが該当する。中でも、防眩性やその他の光学特性の観点から、前記(ア)、(イ)が好ましい。
【0020】
防眩フィルムに使用される透明基材フィルムとしては、適度な透明性と機械強度を有する樹脂フィルムであればよく、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)などのセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0021】
前記防眩層を構成する透光性樹脂は、透光性を有するものであればよく、例えば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの電離放射線硬化型樹脂の硬化物や、熱硬化型樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、金属アルコキシド系ポリマーなどが使用できる。なかでも、電離放射線硬化型樹脂の硬化物が好適である。
【0022】
電離放射線硬化性樹脂としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート等が挙げられる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。
【0023】
電離放射線硬化型樹脂のうち、紫外線硬化型樹脂を用いる場合、通常、光重合開始剤が添加される。光重合開始剤は、使用する樹脂に応じて適宜選択される。光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類等が用いられる。
【0024】
熱硬化型樹脂の硬化物としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できる。
【0026】
金属アルコキシド系ポリマーとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックス等を使用することができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのアルコキシシランを、加水分解、脱水縮合により無機系または有機無機複合系マトリックスとすることができる。
【0027】
透光性樹脂として電離放射線硬化型樹脂の硬化物を用いる場合は、透明基材フィルムに塗布、乾燥した後に紫外線や電子線等の電離放射線照射する必要がある。また、透光性樹脂として熱硬化型樹脂の硬化物、金属アルコキシド系ポリマーを用いる場合は、塗布、乾燥した後に加熱を要することがある。
【0028】
透光性微粒子としては、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等の有機微粒子、及び炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等の無機微粒子等が挙げられ、これらの中の1種又は2種類以上を混合して使用することができる。なお、所望の防眩性やその他の光学特性を得るためには、透光性微粒子の種類、粒子径、屈折率、含有量などを適宜調整すればよい。
【0029】
防眩層の表面に金型などにより凹凸を形成する場合には、かかる金型として板状のものやロール状のものを使用することができる。
【0030】
これら防眩層を形成するには、透光性樹脂を形成する樹脂材料(電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、金属アルコキシド)や透光性微粒子を含有する塗工液を、透明基材フィルムの表面に塗工した後、必要に応じて金型を使用して硬化処理を行う。塗工液の塗工方法については、従来公知の方法を採用することができ、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などを用いることができる。
【0031】
次いで、電離放射線及び/又は熱により塗膜を硬化させる。電離放射線種は特に制限されるものではなく、透光性樹脂の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
【0032】
光拡散フィルムは、画像表示装置の視野角拡大等を目的とし、画像表示部からの光を拡散させるものであり、例えば、透明基材フィルムの表面に、透光性樹脂中に透光性微粒子を分散させた光拡散層を有するものが挙げられる。ここで、透明基材フィルム、透光性樹脂、透光性微粒子としては、先の防眩フィルムにおいて例示されたものと同様のものを使用することができる。光拡散層として構成する場合には、所望の光拡散性を付与する観点から、透明基材フィルムの種類、透光性樹脂の種類、透光性微粒子の種類、粒子径、屈折率、含有量、光拡散層の厚みなどを適宜調整すればよい。
【0033】
反射防止フィルムは、画像表示装置表面に入射される外光の反射を防止して、画像表示装置の表示品位を高めるためのフィルムであり、例えば、透明基材フィルムの外側に低屈折率層を有するものである。また、かかる透明基材フィルムと低屈折率層との間に、ハードコート層や、高屈折率層、中屈折率層を設けることもでき、最外層に耐擦傷性を付与するためのハードコート層を設けてもよい。
【0034】
ここでいう透明基材フィルムとしては、先の防眩フィルムにおいて例示したフィルムと同様のフィルムを使用することができる。
【0035】
低屈折率層は、バインダーマトリクス及び無機微粒子を含むものが挙げられる。バインダーマトリクスを形成する材料としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂及び重合開始剤を含む混合物に電離放射線を照射することにより、重合、硬化して得られるものや、アルコキシシランの加水分解物を脱水縮合して得られるものが挙げられる。
【0036】
電離放射線硬化型樹脂、重合開始剤としては、先の防眩フィルムにおいて例示したものと同様のものを使用することができる。一方、無機微粒子としては、例えば、LiF(屈折率1.4)、MgF(屈折率1.4)、3NaF・AlF(屈折率1.4)、AlF(屈折率1.4)、Na3AlF6(屈折率1.33)などの低屈折微粒子や、中空シリカ微粒子などが挙げられる。
【0037】
ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂及び重合開始剤を含む混合物に電離放射線を照射することにより、重合、硬化して形成することができる。電離放射線硬化性樹脂や重合開始剤としては、先に例示したものと同様のものを使用することができる。
【0038】
高屈折率層を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、無機材料及び有機材料を用いることができる。無機材料として、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム錫(以後、ITOとも称する。)等の微粒子が挙げられる。また、このような高屈折率層を形成することで帯電防止性能を付与することも可能となる。
【0039】
偏光板は、ポリビニルアルコールからなる偏光子と、それを保護するための偏光子保護フィルムから構成される。本発明の光学部材は、前述した接触角を満たすものであれば、偏光板であってもよいし、偏光子保護フィルムであってもよい。偏光子保護フィルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)などのセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられるが、かかる樹脂の表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、プライマー処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理などの易接着処理されたものであるのが好ましい。なかでも、前述した最大せん断応力の点から、易接着処理されたポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0040】
本発明の光学部材は、その表面にレベリング剤などによる防汚処理が施されていないものが好ましい。防汚処理が施されていると、前述した光学部材の接触角が大きくなってしまう傾向がある。
【0041】
<透明保護部材>
透明保護部材は、画像表示装置の視認側の最表面に配置される透明な部材であり、画像表示装置を物理的に保護するためのものである。かかる透明保護部材としては、汎用されているガラス板を使用することができる。
【0042】
<接着剤>
ここでいう接着剤は、本発明の光学部材と、前記透明保護部材とを介在するためのものであり、従来から使用されている接着剤と同様のものを使用することもできる。中でも、アクリル系樹脂、テルペン系水素添加樹脂、キシレン系樹脂、ブタジエン重合体およびイソプレン重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーと、(メタ)アクリレート系モノマーと、光重合開始剤とを含有するものが好ましい。
【0043】
前記アクリル系樹脂としては、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系(メタ)アクリレートのエステル化物などが好ましい。一方、前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらの化合物は単独で用いてもよく、または2種類以上を用いてもよい。
【0044】
接着剤には、その他、光重合開始剤、溶剤、重合調整剤などを含有することができる。
【0045】
なお、ここでいう接着剤として、前述した評価用接着剤を使用することもできる。
【0046】
本発明の光学部材と透明保護部材との間に接着剤層を形成する方法としては、たとえば、当該光学部材の表面に接着剤を塗布した後、当該面に透明保護部材を重ね合わせ、次いで活性エネルギー線を照射して硬化処理を行う方法が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、なかでも、紫外線が好ましい。
【0047】
<画像表示装置>
かくして、本発明の光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在する接着剤層を備えるユニットを作製することができる。そして、当該光学部材の接着剤層とは反対側に画像表示部を備えることにより、画像表示装置とすることができる。ここで、本発明にかかる画像表示装置の概念図である図1を参照しながら、画像表示装置について説明する。図1に示すとおり、画像表示装置5は、画像表示部4、光学部材1、接着剤層3及び透明保護部材2をこの順で備えるものである。ここで、透明保護部材2の方が、画像表示装置5の視認側となり、画像表示部1の方が画像表示装置5における光源側(図示せず)となる。
【0048】
画像表示部1としては、例えば、液晶パネル、ELパネル、PDPなどが挙げられる。
【0049】
画像表示装置5が、液晶表示装置の場合には、画像表示部4の光源側に、リア側偏光板、プリズムシート、光拡散シート、バックライト装置(いずれも図示せず)がさらに配置される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0051】
<評価用接着剤>
ガスクロマトグラフィー法により以下のとおり分析される評価用接着剤を使用した。
主成分:イソプレン重合体
ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート:14重量%
ベンジルメタクリレート:8重量%
メチルメタクリレート:2重量%
光重合開始剤(イルガキュア184):0.2重量%
その他添加物:(メタ)アクリレート系モノマー0.8重量%、アセトン、2,4,6−トリメチル安息香酸、1−オクタンチオール、ジフェニルホスフィン(これら化合物は、ガスクロマトグラフィー分析においてピークとしては観測されるものの、定量限界以下のものであった。)
【0052】
<接触角の測定>
測定対象とするフィルム状の光学部材の表面に、前記評価用接着剤5mlを滴下した後、5分間放置し、次いで、当該光学部材と当該評価用接着剤との接触角をDataPhysics社製のContact Angle System 「OCA30L」を用いて測定した。
【0053】
<最大せん断応力の測定>
予めガラス板に貼合しておいた光学部材の表面に、前記評価用接着剤を塗布した後、さらに接着剤を塗布した面にガラス板を重ね合わせた。ここで、応力をかける方向の接着剤塗布膜の長さを約12.5mmとし、接着剤塗布膜の厚みを約150μmになるように調整した。
次いで、UV照射装置(シンコー化学製)を用い、積算光量5000mJ/cm2として紫外線を照射して、前記接着剤を硬化させて接着剤層を形成した。
このように作製された測定用のサンプルに対し、島津製作所社製のオートクレープ(AG−1)を使用して、ガラス板同士を相対する方向、すなわち光学部材から接着剤層を引き剥がす方向に一定速度(5mm/min)で応力をかけていき、最大せん断応力を求めた。
【0054】
<気泡発生の評価>
光学部材と透明保護部材との間における気泡の有無について、以下のとおり評価した。
まず、透明保護部材としてガラス板を使用した。次に、光学部材と透明保護部材との間に介在させる接着剤層を形成するための接着剤として、前記評価用接着剤を転用することとした。
具体的には、縦9cm×横9cmの光学部材の表面中央部に接着剤を塗布した後、ガラス板を重ね合わせ、接着剤の広がり具合を評価した。気泡のかみこみなく接着剤が良好に広がっていたものを○とし、一部気泡がかみこみ、接着剤がうまく広がっていないものを×とした。なお、ガラス板を重ね合わせた段階で気泡のかみこみなく接着剤が良好に広がっていると、その後、硬化処理しても良好な外観を有するものなり、他方、気泡がかみこんでしまうと、その後、硬化処理を行っても気泡は残存して外観不良となる。
【0055】
<サンプル評価1>
以下の構成を有するフィルム状の光学部材(サンプルNo.1〜12)について、接触角、最大せん断応力を評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
(サンプルNo.1)
・トリアセチルセルロース(以下、TAC)基材フィルムの上に、主にペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、DPHA)から形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。
【0057】
(サンプルNo.2)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETAから形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。
【0058】
(サンプルNo.3)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、IPDIから形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。該光学部材の表面をTOF−SIMSにより分析したところ、フッ素系化合物の存在は確認されなかった。
【0059】
(サンプルNo.4)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、有機シロキサンから形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。
【0060】
(サンプルNo.5)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)から形成されるハードコート層を有するフィルム状の光学部材。
【0061】
(サンプルNo.6)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、DPHA、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート(以下、TAIC)、IPDIから形成されるハードコート層を有するフィルム状の光学部材。
【0062】
(サンプルNo.7)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、DPHA、IPDI、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMA)から形成され、かつ、帯電防止剤が含有されている防眩層を有するフィルム状の光学部材。
【0063】
(サンプルNo.8)
・TAC基材フィルムの上に帯電防止層を有し、さらにその上に、主にPETA、DPHA、IPDI、HEMA、TAICから形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。該光学部材の表面をTOF−SIMSにより分析したところ、パーフルオロポリエーテルの存在が確認された。
【0064】
(サンプルNo.9)
・TAC基材フィルムの上に帯電防止層を有し、さらにその上に、主にPETA、DPHA、IPDI、HEMA、TAICから形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。該光学部材の表面をTOF−SIMSにより分析したところ、パーフルオロポリエーテルの存在が確認された。
【0065】
(サンプルNo.10)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、IPDIから形成される防眩層を有するフィルム状の光学部材。該光学部材の表面をTOF−SIMSにより分析したところ、パーフルオロポリエーテルの存在が確認された。
【0066】
(サンプルNo.11)
・TAC基材フィルムの上に、主にPETA、DPHA、IPDIから形成され、かつ、帯電防止剤が含有されている防眩層を有するフィルム状の光学部材。該光学部材の表面をTOF−SIMSにより分析したところ、パーフルオロポリエーテルの存在が確認された。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例および比較例
サンプルNo.3について、前述した気泡発生の評価を行ったところ、気泡のかみこみなく接着剤が良好に広がっていた。一方、サンプルNo.9について、前述した気泡発生の評価を行ったところ、一部気泡がかみこみ、接着剤がうまく広がっていなかった。
【0069】
<サンプル評価2>
PET基材フィルムの表面に、接触角25°、最大せん断応力が160Nとなるように易接着処理することが可能であった。
【0070】
前記光学部材について前述した気泡発生の評価を行えば、気泡のかみこみなく接着剤が良好に広がることが期待される。
【0071】
参考例
TAC基材フィルムの最大せん断応力は55Nであった。
【符号の説明】
【0072】
1:光学部材
2:透明保護部材
3:接着剤層
4:画像表示部
5:画像表示装置
6、7:ガラス板
8:評価用接着剤から形成される接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層とを備え、さらに光学部材における接着剤層とは反対側に画像表示部を備える画像表示装置に使用される前記光学部材であって、下記(1)の条件を満たすことを特徴とする光学部材。
(1)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤10μlを前記光学部材の表面に滴下した後、5分放置した際における前記光学部材と前記評価用接着剤との接触角が55°以下であること。
【請求項2】
さらに、下記(2)の条件を満たす請求項1に記載の光学部材。
(2)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤を前記光学部材の表面に塗布した後、硬化処理して接着剤層を形成したサンプルにおける前記接着剤層に対する前記光学部材の最大せん断応力が140N以上であること。
【請求項3】
シート状又はフィルム状である請求項1又は2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記接着剤層に介在される側の面に防眩処理、反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び易接着処理のうち少なくとも1種の処理が施されている請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材。
【請求項5】
前記接着剤層に介在される側の面に防汚処理が施されていない請求項1〜4のいずれかに記載の光学部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学部材からなる偏光子保護フィルム。
【請求項7】
請求項5に記載の偏光子保護フィルムと、偏光子とを備える偏光板。
【請求項8】
光学部材と、透明保護部材と、これらの間に介在した接着剤層とを備え、さらに光学部材の接着剤層とは反対側に画像表示部を備える画像表示装置であって、前記光学部材が下記(1)の条件を満たすことを特徴とする画像表示装置。
(1)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤10μlを前記光学部材の表面に滴下した後、5分放置した際における前記光学部材と前記評価用接着剤との接触角が55°以下であること。
【請求項9】
光学部材が、さらに下記(2)の条件を満たす請求項8に記載の画像表示装置。
(2)イソプレン重合体を主成分とし、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート14重量%、ベンジルメタクリレート8重量%、メチルメタクリレート2重量%及び光重合開始剤0.2重量%を含む評価用接着剤を前記光学部材の表面に塗布した後、硬化処理して接着剤層を形成したサンプルにおける前記接着剤層に対する前記光学部材の最大せん断応力が140N以上であること。
【請求項10】
前記光学部材及び前記透明保護部材の間に介在した接着剤層が、アクリル系樹脂、テルペン系水素添加樹脂、キシレン系樹脂、ブタジエン重合体およびイソプレン重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーと、(メタ)アクリレート系モノマーと、光重合開始剤とを含有する接着剤が硬化処理して形成されたものである請求項8又は9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記アクリル系樹脂が、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系(メタ)アクリレートのエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記(メタ)アクリレート系モノマーが、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項10又は11に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−47929(P2012−47929A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189176(P2010−189176)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】