説明

画像表示装置

【課題】 電子放出素子を用いた画像表示装置の輝度を向上させる。
【解決手段】 電子放出素子34を備えるリアプレート41と、透明基板43と、透明基板43上に形成された透明なアノード電極44と、アノード電極44上に形成された蛍光体粒子を含有する蛍光体層45と、を備えるフェースプレート46と、を有する画像表示装置であって、蛍光体粒子の平均粒径が500nm以下であり、フェースプレート46は、電子放出素子43から放出された電子が蛍光体層45を照射して発光した光を透明基板43側に取り出すための光取り出し手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に、電子放出素子を用いた平面型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線を用いたディスプレイとして、これまでカソードレイチューブ(CRT)が用いられてきた。CRTでは、電子銃から放出された電子線をアノード電極で加速しながら蛍光体に照射し、蛍光体を発光させることにより画像表示を行う。一般に、CRTに用いられる蛍光体としては、粒径が数μm程度の蛍光体粒子が用いられていた。
【0003】
一方、電子放出素子を用いた平面型画像表示装置として、電界放出型ディスプレイ(FED)の開発が進められている。FEDもCRTと同様に、電子放出素子から放出された電子をアノード電極で加速しながら蛍光体に照射し、蛍光体を発光させることにより画像表示を行う。しかしながら、FEDではCRTに比べて、アノード電極に高いアノード電圧を印加することが難しい。そのため、CRTで用いられるような粒径が数μm程度の蛍光体をFEDに用いた場合、十分な発光輝度を得ることが難しい。
【0004】
そこで、FEDの蛍光体としてナノ粒子の蛍光体を用いる構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−177156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子放出素子を用いた画像表示装置の輝度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、電子放出素子と、透明基板と、前記透明基板上に設けられた、蛍光体粒子を含有する蛍光体層と、前記透明基板と前記蛍光体層との間に設けられた透明なアノード電極と、を備え、前記電子放出素子から放出された電子が前記蛍光体層を照射する画像表示装置であって、前記蛍光体粒子の平均粒径が500nm以下であり、前記蛍光体層の屈折率が前記アノード電極の屈折率よりも低く、前記透明基板の前記蛍光体層が設けられた面とは反対の面と、前記蛍光体層との間に、屈折率が互いに異なる材料が交互に配置された構造を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像表示装置は、電子放出素子と、透明基板と、前記透明基板上に設けられた、蛍光体粒子を含有する蛍光体層と、前記透明基板と前記蛍光体層との間に設けられた透明なアノード電極と、を備え、前記電子放出素子から放出された電子が前記蛍光体層を照射する画像表示装置であって、前記蛍光体粒子の平均粒径が500nm以下であり、前記蛍光体層と前記アノード電極との間に、前記蛍光体層よりも屈折率が低い層を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像表示装置は、電子放出素子を備えるリアプレートと、透明基板と、該透明基板上に形成された透明なアノード電極と、該アノード電極上に形成された蛍光体粒子を含有する蛍光体層と、を備えるフェースプレートと、を有する画像表示装置であって、前記蛍光体粒子の平均粒径が100nm以下であり、前記フェースプレートは、前記電子放出素子から放出された電子が前記蛍光体層を照射して発光した光を前記基板側に取り出すための光取出し手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子放出素子を用いた画像表示装置の輝度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像表示装置の構造の一例を示す斜視図である。
【図2】フェースプレートの構造の一例を示す図である。
【図3】フォトニック結晶構造の平面図である。
【図4】フェースプレートの構造の一例を示す図である。
【図5】ナノ粒子蛍光体の粒度分布を示す図である。
【図6】発光輝度の測定結果を示す図である。
【図7】(a)蛍光体層の屈折率と発光輝度の関係、(b)蛍光体粒子の充填率と蛍光体層の屈折率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
(画像表示装置の構造)
本実施形態にかかる電子放出素子を有する画像表示装置について、図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる画像表示装置の構造の一例を示す斜視図であり、その内部構造を示すために一部を切り欠いて示している。図中、1は基板、32は走査配線、33は変調配線、34は電子放出素子である。41は基板1を固定したリアプレート、46はガラス基板43の内面にアノード電極44と蛍光体層45が形成されたフェースプレートである。42は支持枠であり、この支持枠42にリアプレート41、フェースプレート46がフリットガラス等を介して取り付けられ、外囲器47を構成している。ここで、リアプレート41は主に基板1の強度を補強する目的で設けられるため、基板1自体で十分な強度を持つ場合には、別体のリアプレート41は不要である。また、フェースプレート46とリアプレート41との間に、スペーサとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持たせた構成とすることもできる。
【0014】
m本の走査配線32は、端子Dx1,Dx2,…Dxmと接続されている。n本の変調配線33は、端子Dy1,Dy2,…Dynと接続されている(m,nは、共に正の整数)。これらm本の走査配線32とn本の変調配線33との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に絶縁している。
【0015】
高圧端子はアノード電極44に接続され、例えば数kVの直流電圧が供給される。これは電子放出素子から放出される電子に蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。電子放出素子から放出され、加速された電子を蛍光体層45に照射し、蛍光体層45を発光させることにより画像表示を行う。
【0016】
(フェースプレートの構造)
図2は、本実施形態にかかるフェースプレートの構造の一例を示す図である。
【0017】
本実施形態に係るフェースプレートは、透明基板としてのガラス基板43に、蛍光体層45が発光した光をガラス基板43側に取り出すための光取出し手段が設けられている。光取出し手段の詳細な構造については後述する。ガラス基板43の上には、ITO等の透明電極からなるアノード電極44が設けられている。アノード電極44上には、蛍光体層45が設けられている。蛍光体層45は多数の蛍光体粒子を含有している。蛍光体層45の詳細な構成については後述する。また、隣り合う蛍光体層の間にはブラックマトリクス48が設けられている。
【0018】
(蛍光体層)
次に、本実施形態にかかる蛍光体粒子の製造方法について説明する。蛍光体粒子の平均粒径は500nm以下である。蛍光体粒子はナノ粒子であることが好ましい。本実施形態におけるナノ粒子の平均粒径は100nm以下のものである。なお、本発明において、「平均粒径」は、中位径(メジアン径、すなわち粒度分布の中央値D50)によって定義され、球相当径に基づく粒度分布(粒径分布)から統計的に求められる値である。粒度分布は、動的光散乱法を用いて計測する。また、蛍光体層45の屈折率はエリプソメトリーによって測定される値である。即ち、蛍光体層45の屈折率は、蛍光体層45を構成する蛍光体粒子の屈折率(蛍光体材料固有の屈折率)ではなく、多数の蛍光体粒子が集合して構成される蛍光体層45の全体としての実効的な屈折率である。
【0019】
蛍光体粒子の製造には、固相法、液相法、噴霧熱分解法、気相法などの方法を用いることができる。
【0020】
固相法は、原料粉末を混合し、高温条件で加熱して焼成したものをボールミル等で微粉砕して蛍光体粒子を形成する。液相法は、共沈法、ゾルゲル法などの液相反応を利用して蛍光体粒子を形成するものである。噴霧熱分解法は、原料溶液を噴霧して液滴化したのち、キャリアガス中でヒーターによって加熱し、溶媒の蒸発及び原料の熱分解により蛍光体粒子を形成するものである。気相法は、気相反応を利用して蛍光体粒子を形成するものであり、キャリアガスに浮遊させた蛍光体原料をプラズマ等の熱源による加熱域を通過させて急速に加熱、冷却することで、蛍光体粒子を形成する方法である。
【0021】
赤色に発光する蛍光体のナノ粒子は、例えば、Y、Gd等の酸化物を母体とし、この母体にEu、Zn等の付活剤金属を添加してなるものである。Yの無機塩又はGdの無機塩と、Euの無機塩及びZnの無機塩と、有機酸とを溶媒に溶解又は分散させる。その後、得られた溶液又は分散液を加熱してゲル化させる(ゾルゲル法)。その後、例えば大気中で焼成する。
【0022】
このYの無機塩、Gdの無機塩としては、焼成の際に分解して酸化物となり得る化合物であれば良く、例えば、硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、塩化物や臭化物等)等を挙げることができる。
【0023】
また、Eu及びZnの無機塩としては、例えば硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、塩化物や臭化物等)等を挙げることができる。
【0024】
緑色に発光する蛍光体のナノ粒子は、Y、Gd等の酸化物を母体とし、この母体にTb、Zn等の付活剤金属を添加してなるものである。Yの無機塩又はGdの無機塩と、Tbの無機塩及びZnの無機塩と、有機酸とを溶媒に溶解又は分散させる。その後、得られた溶液又は分散液を加熱してゲル化させる。その後、例えば大気中で焼成する。
【0025】
このYの無機塩、Gdの無機塩は、焼成の際に分解して酸化物となり得る化合物であればよく、例えば、硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、塩化物や臭化物等)等を挙げることができる。
【0026】
また、Tbの無機塩、Znの無機塩としては、焼成により付活剤金属としてのTb、Znを生成するものであればよく、硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、塩化物や臭化物等)等が挙げられる。
【0027】
青色に発光する蛍光体のナノ粒子は、Y、Gd等の酸化物を母体とし、この母体にTm、Bi、Zn等の付活剤金属を添加してなるものである。Yの無機塩又はGdの無機塩と、Tmの無機塩、Biの無機塩及びZnの無機塩と、有機酸とを溶媒に溶解又は分散させる。その後、得られた溶液又は分散液を加熱してゲル化させる。その後、例えば大気中で焼成する。
【0028】
このYの無機塩、Gdの無機塩は、焼成の際に分解して酸化物となり得る化合物であれば良く、例えば硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、塩化物や臭化物等)等を挙げることができる。
【0029】
また、Tm、Bi及びZnの無機塩としては、例えば硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、塩化物や臭化物等)等を挙げることができる。
【0030】
(光取出し手段)
光取出し手段として、本実施形態では図2の(a)に示すように、フォトニック結晶構造50を用いる。フォトニック結晶構造は、互いに屈折率の異なる材料が交互に配置された構造である。フォトニック結晶構造は、互いに屈折率の異なる材料が周期的に配列されていることが好ましい。以下、フォトニック結晶構造50の製造方法について説明する。
【0031】
まず、石英基板の上にレジスト膜を塗布する。石英基板の屈折率は1.46である。その後、露光装置を用いて露光、現像し、図3に示すように、2次元正方格子状の微細孔パターンを形成する。pは微細孔のピッチであり、wは微細孔の孔径である。このレジストをマスクとして、反応性イオンエッチング法(RIE法)により、微細孔を2次元正方格子状に形成する。その後、レジスト剥離液にてレジスト膜を剥離する。次に、四塩化チタンを用いて化学気相蒸着法(CVD法)によりTiO膜を堆積する。TiO膜の屈折率は石英基板より高く、2.2である。その後、アニールを行う。次に、化学機械研磨法(CMP法)により、表面研磨を行う。このようにして、フォトニック結晶構造50が設けられた透明基板43を形成する。
【0032】
次に、透明基板43の上(フォトニック結晶構造50の上)に透明なアノード電極44を形成する。透明なアノード電極44としては、ITO膜やZnO膜、SnO膜等の透明導電膜を堆積して形成する。上記した透明導電膜の屈折率は典型的には1.8〜2.2の範囲である。その後、アノード電極44の上に蛍光体層45を形成する。蛍光体層45の屈折率はアノード電極44よりも低くする。換言すれば、アノード電極44の屈折率は蛍光体層45の屈折率よりも高いことになる。蛍光体層45の屈折率を、蛍光体粒子の充填率を制御することにより設定することもできる。
【0033】
本実施形態のように、光取出し手段としてフォトニック結晶構造50を用いる場合、フォトニック結晶構造による輝度の増大効果は、蛍光体層45の屈折率によって影響を受ける。蛍光体層45の屈折率がアノード電極44の屈折率より高い場合、蛍光体層45で生じた光束は、蛍光体層45とアノード電極44の界面で全反射し、フォトニック結晶構造50に入射しない光束が生じる。このため、発光輝度が低下することが考えられる。これに対して、蛍光体層45の屈折率がアノード電極44の屈折率より低い場合、蛍光体層45で生じた光束は、蛍光体層45とアノード電極44の界面でほとんど全反射することなく光取出し構造50に入射し、さらに空気中に取出される。従って輝度を増大することができる。
【0034】
そして、蛍光体層45に平行な面内で互いに屈折率の異なる材料が交互に配置された構造を用いたフォトニック結晶構造50により、蛍光体層45で発光した光を、より多く透明基板43側に取り出すことが可能となる。ここでは、フォトニック結晶構造50を透明基板43に設けた形態を説明したが、図2の(b)に示すように、アノード電極44に設けても良い。または、図2の(c)に示すように、アノード電極44と透明基板43との間に、互いに異なる材料50aと50bとで構成されたフォトニック結晶構造50を設けても良い。つまり、フォトニック結晶構造50は、透明基板43の外面(蛍光体層45が設けられた面(内面)とは反対の面)と、蛍光体層45との間に設ければよい。特に、図2の(c)に示したように、アノード電極44と透明基板43との間に、基板43の材料とも、アノード電極44の材料とも異なり、互いに異なる材料50aと50bとで構成されたフォトニック結晶構造50を設けるのが好適である。
【0035】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、光取出し手段としてフォトニック結晶構造50を用いたが、本実施形態では、低屈折率層を用いる点が異なる。その他の構成については第1の実施形態と同様であるため、低屈折率層を用いた光取出し手段について、以下に説明する。
【0036】
(光取出し手段)
光取出し手段として、本実施形態では図4に示すように、アノード電極44と蛍光体層45の間に、蛍光体層45よりも屈折率が低い層である、低屈折率層51を設ける。このとき、蛍光体層45の膜厚は十分薄くする。蛍光体層45の膜厚は、蛍光体層45の発光波長を、蛍光体層45の屈折率で割った値以下が好ましく、蛍光体層45の発光波長の1/2(半波長)を、蛍光体層45の屈折率で割った値以下であることがより好ましい。また、低屈折率層51の屈折率はアノード電極44よりも低くすることが好ましい。
【0037】
蛍光体層45の膜厚が、蛍光体層45の発光波長に対して十分に小さければ、蛍光体層45と低屈折率層51との界面での入射及び反射に幾何光学的な近似が適用されなくなる。したがって、低屈折率層51よりも高屈折率な蛍光体層45で発光した光束は、蛍光体層45と低屈折率層51との界面での全反射によって妨げられることなく低屈折率層51に侵入する。さらにこの光束が低屈折率層51からアノード電極44と基板43を介して、基板43の外面から出射する際には、光束は、あたかも低屈折率層51内で発光したように振舞う。そのため、基板43と空気との界面での全反射によって基板43の外面からの出射が妨げられる光束を、減少させることができ、高輝度化を達成できる。
【0038】
この形態は、蛍光体層45の屈折率が、アノード電極44よりも高い場合に、特に効果的であるが、蛍光体層45の屈折率が、アノード電極44よりも低い場合にも効果がある。
【0039】
低屈折率層51は、低屈折率材料をアノード電極44上にスピンコート法により形成することができる。低屈折率材料は、例えば、撥水性を有するヘキサメチルジシロキサンやヘキサメチルジシラザン等を含有した低比誘電率物質液のような疎水性多孔質シリカ材料が挙げられる。この他に、シリカ化合物、チタン化合物、スズ化合物、インジウム化合物、及びジルコニウム化合物等の無機材料、並びにアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、及びエポキシ樹脂等の有機材料を用いることもできる。これらは単独でも、又は2種以上を組み合わせて用いても良い。スピンコート後には焼成を行い、低屈折材料以外の成分を蒸発して除去する。
【実施例1】
【0040】
(蛍光体のナノ粒子)
ゾルゲル法を用いて、赤色に発光するY:Euのナノ粒子を作製した。図5は、本実施例の蛍光体粒子の粒度分布を測定した結果である。平均粒径は30nmのナノ粒子であった。蛍光体粒子の粒度分布及び平均粒径は、ゼータサイザーナノZS(シスメックス株式会社製)を用いて測定した。
【0041】
ゾルゲル法により得られたナノ粒子をボールミルに入れ、溶媒分散処理を行った。溶媒としてIPA(イソプロピルアルコール)を用い、分散剤としてアクリル系分散剤を用いた。
【0042】
次に、インクジェット法に適した粘度と表面張力を付与するため、BCA(ブチルカルビトールアセテート)にて溶媒置換を行い、蛍光体のナノ粒子を含有したインクジェット用インクを調製した。
【0043】
(光取出し手段)
本実施例では、光取出し手段としてフォトニック結晶構造50を形成した。
【0044】
まず、図3に示すように、石英基板に2次元正方格子状の微細孔パターンを形成した。微細孔のピッチpは1700nm、微細孔の孔径wは920nm、微細孔の深さは880nmとした。石英基板の屈折率は1.46であった。
【0045】
次に、四塩化チタンを用いて化学気相蒸着法(CVD法)によりTiO膜を堆積した。TiO膜の屈折率は、2.2であった。その後、アニールを行った。
【0046】
次に、化学機械研磨法(CMP法)により表面研磨を行った。表面研磨を行った後の微細孔深さdは670nmであった。
【0047】
(フェースプレート)
上述したフォトニック結晶構造50を有する基板43の上に、スパッタ法を用いてアノード電極44としてITO膜を250nm堆積した。ITO膜の屈折率は1.9であった。
【0048】
次に、ITO膜の表面に、インクジェット法を用いて、上述した蛍光体のナノ粒子を含有したインクジェット用インクを吐出した。その後、550℃にて1時間、焼成を行った。焼成後の蛍光体層45の厚さは820nmであった。また、エリプソメーターVASE(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製)によって、焼成後の蛍光体層45の屈折率を測定したところ、1.3であった。
【0049】
このように形成したフェースプレートの表面と断面を走査電子顕微鏡にて観察した。その結果、蛍光体層45中では、粒径100nm以下の蛍光体粒子、すなわちナノ粒子が凝集していることが確認された。また、ナノ粒子間には明瞭な空隙が確認された。インクジェット用インクの吐出液滴に含まれる蛍光体粒子の質量、インクの吐出量、触針式段差計により測定した焼成後の蛍光体層の厚さから蛍光体粒子の充填率を求めたところ、38%であった。また、別途、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて焼成後の蛍光体層のイットリウム原子数を測定し、上述の蛍光体層の厚さを用いて密度に換算する方法によっても測定したところ、上記した算出方法によって得た38%と良い一致を示した。
【0050】
(画像表示装置)
上述したように形成したフェースプレート46、電子放出素子を有するリアプレート41、支持枠42を用いて、画像表示装置を形成した。電子放出素子としては、表面伝導型電子放出素子を用いた。
【0051】
(輝度測定)
このように形成した画像表示装置の発光輝度を測定した。
【0052】
画像表示装置内の真空度は1×10−6Paであり、アノード電極44には10kVのアノード電圧を印加した。電子放出素子にはパルス幅20μsec、パルス周波数100Hzの駆動パルスを印加し、電子放出素子34から電子を放出した。このパルス電流密度は4.1mA/cmであった。
【0053】
このようにして蛍光体層を発光させた発光輝度の測定結果を図6に示す。横軸は波長(nm)を示しており、縦軸は発光強度を示している。発光強度の値は、後述する比較例1における発光強度の最大値を基準とした相対値で示してある。
【0054】
本実施例における発光強度の最大値は、後述する比較例1における発光強度の最大値の2.1倍となった。
【0055】
(比較例1)
比較例1は、実施例1における光取出し手段としてのフォトニック結晶構造50を形成しなかった点が異なる。すなわち、フェースプレート46は、石英基板にフォトニック結晶構造50を形成することなく、石英基板の上にITO膜を形成した点が実施例1とは異なる。その他の構成については、実施例1と同様である。
【0056】
このように形成した画像表示装置の発光輝度を測定した結果を図6に示す。本比較例では、光取出し手段を設けなかったため、発光輝度が実施例1の場合を大きく下回った。
【実施例2】
【0057】
実施例1の画像表示装置について、アノード電極44の屈折率を1.8として、蛍光体層45の屈折率を変化させた場合の発光輝度の変化をシミュレーションにより求めた。シミュレーション結果を図7(a)に示す。蛍光体層45の屈折率が1.3から1.7までは、屈折率が増加すると発光輝度が増加している。一方、アノード電極44の屈折率である1.8を超えると、逆に発光輝度が低下していることが分かる。このように、蛍光体層45の屈折率はアノード電極44の屈折率より低いことが好ましい。なお、ここでは、発光輝度が最大になる蛍光体層45の屈折率(1.7)と、アノード電極44の屈折率(1.8)との差が0.1であるが、この差はフォトニック結晶構造や、アノード電極44の屈折率の違いによって異なってくる。
【0058】
蛍光体層45の屈折率(実効的な屈折率)は、蛍光体粒子の屈折率(蛍光体材料の固有の屈折率)に依存する。しかしながら、本発明の蛍光体層45は、平均粒径が500nm以下の蛍光体粒子を用いているために、蛍光体粒子の粒度分布、インク濃度、分散条件、焼成条件等を調整して、蛍光体層45の充填率を変化させることにより制御が可能である。
【0059】
画像表示装置に通常用いられる蛍光体粒子の屈折率は1.6〜2.6程度であるが、アノード電極44より屈折率の高い蛍光体粒子については、充填率を制御して蛍光体層45の屈折率をアノード電極44の屈折率より低くすることが好ましい。
【0060】
実施例1に例示した、材料固有の屈折率が1.9であるY:Euと、他の一般的な蛍光体である、材料固有の屈折率が2.4であるZnSについて、蛍光体層45における蛍光体粒子の充填率と蛍光体層45の屈折率の関係を、Bruggmanの式により算出した結果を図7(b)に示す。
なおBruggmanの式は、
【0061】
【数1】

【0062】
で表される。ここで、εは層の実効的な誘電率、εは物質aの誘電率、fは物質aの層中における体積分率、εは物質bの誘電率、fは物質bの層中における体積分率である。物質aを蛍光体粒子、物質bを真空、fを蛍光体粒子の蛍光層中における充填率、fを蛍光体層の空隙率(f=1−f)、蛍光体粒子の透磁率を1とすることにより、蛍光体層の屈折率が、√εとして求められる。材料固有の屈折率は、f=0としたものと一致する。
【0063】
図7(b)から理解されるように、Yの蛍光体粒子を用いる場合には、蛍光体層45の充填率を90%未満とすることで、蛍光体層45の屈折率を1.8以下とすることができる。特に、図7(a)のように、発光輝度が最大になる1.7とするには、充填率を80%程度にすればよい。
【0064】
また、ZnSの蛍光体粒子を用いる場合には、充填率を60%未満にすることで、蛍光体層45の屈折率を1.8以下とすることができる。特に、図7(a)で発光輝度が最大になる1.7とするには、充填率を50%程度にすればよい。
【0065】
ここでは、アノード電極44の屈折率を1.8とした例を用いたが、アノード電極44の屈折率が1.8以上であって、蛍光体粒子の屈折率が2.4以下の場合には、蛍光体層45の充填率を60%未満とすればよい。充填率を60%未満とすることで、蛍光体層45の屈折率をアノード電極44の屈折率よりも小さくすることができる。例えば、実施例1のように、アノード電極44として、ITO(屈折率1.9)を用い、蛍光体粒子としてZnSを用いる場合には、蛍光体粒子の充填率を70%未満とすればよい。
【0066】
このように、図7(a)、(b)から、蛍光体層45における蛍光体粒子の充填率を小さくすることで、蛍光体層45の屈折率をアノード電極44の屈折率よりも低い所望の屈折率にすることができ、その結果、画像表示装置の発光輝度を高くすることができることがわかる。
【実施例3】
【0067】
(ナノ粒子蛍光体)
実施例1と同様に、ゾルゲル法を用いて、赤色に発光するY:Euのナノ粒子を作製した。平均粒径は30nmである。
【0068】
ゾルゲル法により得られたナノ粒子をボールミルに入れ、溶媒分散処理を行った。溶媒としてIPA(イソプロピルアルコール)を用い、分散剤としてアクリル系分散剤を用いた。
【0069】
次に、インクジェット法に適した粘度と表面張力を付与するため、BCA(ブチルカルビトールアセテート)にて溶媒置換を行い、蛍光体のナノ粒子を含有したインクジェット用インクを調製した。
【0070】
(フェースプレート)
まず、石英基板43の上に、スパッタ法を用いてITO膜44を250nm堆積した。ITO膜の屈折率は1.9であった。
【0071】
次に、ITO膜44の上に、スピンコート法により、後述する蛍光体層よりも屈折率の低い低屈折率層51を形成した。低屈折率層51には、原料の疎水性多孔質シリカ材料として、ヘキサメチルジシロキサンやヘキサメチルジシラザンを含有した低比誘電率物質液を用いた。形成された低屈折率層51の屈折率は1.2であった。
【0072】
続いて、低屈折率層51の表面に、インクジェット法を用いて、上述した蛍光体粒子を含有したインクジェット用インクを吐出した。その後、550℃にて1時間、焼成を行い、蛍光体層45を形成した。焼成後の蛍光体層45の厚さは150nmであった。
【0073】
このように形成したフェースプレートの表面と断面を走査電子顕微鏡にて観察した。その結果、粒径100nm以下のナノ粒子が凝集していることが確認された。また、ナノ粒子間には明瞭な空隙が確認された。インクジェット用インクの吐出液滴に含まれる蛍光体粒子の質量、インクの吐出量、焼成後の蛍光体層45の厚さから蛍光体粒子の充填率を求めたところ、38%であった。また、焼成後の蛍光体層45の屈折率は1.3であった。
【0074】
(画像表示装置)
上述したように形成したフェースプレート46、電子放出素子を有するリアプレート41、支持枠42を用いて、画像表示装置を形成した。電子放出素子としては、表面伝導型電子放出素子を用いた。
【0075】
(輝度測定)
このように形成した画像表示装置の発光輝度を測定した。
【0076】
画像表示装置内の真空度は1×10−6Paであり、アノード電極44には10kVのアノード電圧を印加した。電子放出素子にはパルス幅20μsec、パルス周波数100Hzの駆動パルスを印加し、電子放出素子34から電子を放出した。このパルス電流密度は4.1mA/cmであった。
【0077】
このようにして赤色に発光する蛍光体層を発光させた発光輝度を測定すると、比較例1よりも高い発光強度が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0078】
34 電子放出素子
41 リアプレート
44 アノード電極
45 蛍光体層
46 フェースプレート
50 フォトニック結晶構造
51 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出素子と、透明基板と、前記透明基板上に設けられた、蛍光体粒子を含有する蛍光体層と、前記透明基板と前記蛍光体層との間に設けられた透明なアノード電極と、を備え、前記電子放出素子から放出された電子が前記蛍光体層を照射する画像表示装置であって、
前記蛍光体粒子の平均粒径が500nm以下であり、前記蛍光体層の屈折率が前記アノード電極の屈折率よりも低く、
前記透明基板の前記蛍光体層が設けられた面とは反対の面と、前記蛍光体層との間に、屈折率が互いに異なる材料が交互に配置された構造を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
電子放出素子と、透明基板と、前記透明基板上に設けられた、蛍光体粒子を含有する蛍光体層と、前記透明基板と前記蛍光体層との間に設けられた透明なアノード電極と、を備え、前記電子放出素子から放出された電子が前記蛍光体層を照射する画像表示装置であって、
前記蛍光体粒子の平均粒径が500nm以下であり、
前記蛍光体層と前記アノード電極との間に、前記蛍光体層よりも屈折率が低い層を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記蛍光体粒子の屈折率が前記アノード電極の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記蛍光体層の膜厚は、前記蛍光体層の発光波長を、前記蛍光体層の屈折率で割った値以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記蛍光体粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
電子放出素子を備えるリアプレートと、
透明基板と、該透明基板上に形成された透明なアノード電極と、該アノード電極上に形成された蛍光体粒子を含有する蛍光体層と、を備えるフェースプレートと、を有する画像表示装置であって、
前記蛍光体粒子の平均粒径が100nm以下であり、
前記フェースプレートは、前記電子放出素子から放出された電子が前記蛍光体層を照射して発光した光を前記基板側に取り出すための光取出し手段を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
前記光取出し手段は、前記透明基板に設けられたフォトニック結晶構造であることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記光取出し手段は、前記蛍光体層と前記透明基板との間に設けられた、前記蛍光体層よりも屈折率の低い層であることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−114069(P2010−114069A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217327(P2009−217327)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】