説明

画像表示装置

【課題】 蛍光体の温度変化に伴う、画像表示装置の画素が呈する色の色度の変動を低減する。
【解決手段】 副画素の各々は、電子が照射されることによって所定の色の光を発する蛍光体と、蛍光体に電子を照射する電子放出素子と、電子放出素子に直列に接続された負の抵抗温度特性を有する抵抗体と、を備えており、同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素のうち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、活性化エネルギーが大きい抵抗体を備える、又は抵抗体の材料が同じで抵抗値の大きい抵抗体を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像表示装置、特に蛍光体を、電子放出素子によって電子を照射して発光させる画像表示装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子を用いた画像表示装置では、電子放出素子の放出電流を安定化するために、抵抗体を各電子放出素子に直列に接続することが知られている(特許文献1、特許文献2)。また、電子放出素子に接続されるの抵抗体として、負の抵抗温度特性を有する材料が挙げられている(特許文献2)。
【0003】
一方、カラー発光が可能な多くの画像表示装置では、複数の異なる発光色、典型的にはそれぞれが、赤色、緑色及び、青色を呈する副画素からなる画素を複数配列して、夫々の副画素の輝度を変化させ、フルカラー表示を可能にしている。
【0004】
例えば、赤色、緑色、青色の発光色を呈する副画素を同時に所定の輝度比で発光させれば、画素を白色として表示させることもできる。しかしながら、白色を表示させようとした時に、赤色の発光色を呈する副画素の輝度が高いと、画素が呈する色は赤みがかった白色となり、色温度が低くなってしまう。同様に、青色の発光色を呈する副画素の輝度が高いと、画素が呈する色は青みがかった白色となり、色温度が上がってしまう。
【0005】
特許文献1には、赤・緑・青の各発光色の蛍光体に対応する電界放出アレイに接続された電極とカソード配線との間の抵抗層の距離を、同じ駆動電圧で駆動したときに所定の白色色度が得られるように決定する電界放出型表示装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、赤・緑・青の各発光色の蛍光体層を有する画素の白色発光時の色度が各画素で均一になるように、あらかじめ定められた抵抗値を有する色度補正用の抵抗体を各発光色毎に設けた蛍光画像表示装置が開示されている。
【特許文献1】特開平9−92131号公報
【特許文献2】特開2001−282179号公報
【特許文献3】特開平3−170999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一定の電子照射量であっても、蛍光体の輝度は蛍光体の温度によって変化する、即ち、蛍光体は輝度の温度特性を有する。さらに、蛍光体の種類(材料)によって、輝度の温度特性は異なる。従って、蛍光体の温度が変化すると、一定の電子照射量であっても、画素が呈する色の色度が変動してしまう。そこで本発明は、蛍光体の温度変化に伴う、画像表示装置の画素が呈する色の色度の変動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の画像表示装置は、互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素を少なくとも含む画素を複数有する画像表示装置であって、前記副画素の各々は、電子が照射されることによって所定の色の光を発する蛍光体と、該蛍光体に前記電子を照射する電子放出素子と、該電子放出素子に直列に接続された負の抵抗温度特性を有する抵抗体と、を備えており、同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素の各々が備えている、蛍光体の輝度の温度特性及び抵抗体の活性化エネルギーが、互いに異なっており、同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素のうち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、活性化エネルギーが大きい抵抗体を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像表示装置は、互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素を少なくとも含む画素を複数有する画像表示装置であって、前記副画素の各々は、電子が照射されることによって所定の色の光を発する蛍光体と、該蛍光体に前記電子を照射する電子放出素子と、該電子放出素子に直列に接続された負の抵抗温度特性を有する抵抗体と、を備えており、同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素の各々が備えている、蛍光体の輝度の温度特性が互いに異なっており、かつ、抵抗体が同一の材料であり、
同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素のうち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、抵抗値が大きい抵抗体を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
蛍光体の温度変化に伴う、画像表示装置の画素が呈する色の色度の変動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0012】
図1は本発明の画像表示装置の構成を示す模式図である。1(1a、1b、1c)は電子が照射されることによって、各々が所定の色に発光する蛍光体、2は蛍光体1に照射する電子を放出する電子放出素子、3(3a、3b、3c)は負の抵抗温度特性を有する抵抗体である。4は電子放出素子2及び抵抗体3に電圧を印加するための配線、5(5a、5b、5c)は配線4を介して電子放出素子2及び抵抗体3に印加する電圧を供給する駆動手段(具体的には、電圧を印加する手段)である。
【0013】
蛍光体1a、1b、1cは互いに発光色、及び、輝度の温度特性が異なり、抵抗体3a、3b、3cは、互いに活性化エネルギー、及び/又は、抵抗値が異なる。少なくとも、蛍光体1、電子放出素子2、抵抗体3とで副画素6(6a、6b、6c)を構成する。副画素6a、6b、6cは、互いに異なる蛍光体1a、1b、1c及び抵抗体3a、3b、3cと、互いに同等である電子放出素子2の組合せ(1aと2と3a、1bと2と3b、1cと2と3c)によって互いに異なる。副画素6において、少なくとも、画像表示装置が設置された環境温度が変化することによって、蛍光体1の温度と抵抗体3の温度が相関関係を有して変化する。
【0014】
3つ以上の副画素6a、6b、6cは、これらを一組として画素7を構成する。画素7は、典型的にはそれぞれが光の三原色である赤色、緑色、青色の発光色を呈する3つの副画素からなる。ただし、画素7は赤色、緑色、青色の発光色を呈する副画素に加え、これら以外の発光色(例えばこれらの色の補色)を呈する副画素を更に含んでいてもよい。また、画素7は赤色、緑色、青色の発光色を呈する副画素に加え、これらと同じ発光色を呈する副画素(例えば緑色)をさらに含んでいても良い。なお、この同じ発光色を呈する副画素の蛍光体が同じ輝度の温度特性を有していれば、それらの副画素の抵抗体の活性化エネルギー、及び/又は、抵抗値が異なることは必須ではない。以下、1つの画素7は3つの副画素6a、6b、6cから構成される場合を例にして説明する。
【0015】
1つの画素7が呈する色の色度及び輝度は、副画素の各々が呈する発光色の色度と輝度の組合せによって決定される。画素7を構成する副画素6a、6b、6cは、画像表示装置として使用されるときに、各々の副画素が呈する発光色が混合して観察されるように、隣り合って配置される。そのため、1つの画素内の副画素6a、6b、6cが備える蛍光体1a、1b、1cは同じ環境温度下にあるとみなすことができる。
【0016】
画像表示装置10は、画素7を複数配列することによって構成することができる。複数の画素7は、それを構成する副画素6、具体的には抵抗体3が、互いに異なっていてもよい。画像表示装置10には、文字情報や画像情報を含む静止画及び/又は動画を表示することができる。
【0017】
次に各構成要素について説明する。
【0018】
蛍光体の輝度の温度特性とは、同じ電子照射条件(電子線の電流値、エネルギー)において、蛍光体の温度が変化すると、輝度が変化することを意味する。本発明においては、蛍光体の温度が上昇するにつれて輝度が上昇する特性を正の輝度の温度特性と呼び、蛍光体の温度が上昇すると輝度が低下する特性を負の輝度の温度特性と呼ぶことにする。そして、同じ温度上昇に対して、輝度の上昇の割合が大きい蛍光体ほど、蛍光体の輝度の温度特性が大きいとし、同じ温度上昇に対して、輝度が低下する割合が大きい蛍光体ほど、蛍光体の輝度の温度特性が小さい、と定義する。例えば、低温時の輝度に対する高温時の輝度の百分率の値が大きい方が、蛍光体の輝度の温度特性が大きく、百分率の値が小さい方が、蛍光体の輝度の温度特性が小さい。以下、1画素内の蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性が1a<1b<1cの関係であるとして説明する。
【0019】
蛍光体の単位時間あたりの輝度Lは、例えば、次の式(1)で表される。
【0020】
L=κ(I×Vγ・・・(1)
ここで、κは蛍光体の発光効率、γは蛍光体のガンマ特性である。Iは単位時間あたりに電子放出素子2から放出される電子の量を表す放出電流である。蛍光体1の近傍に設けられた公知のアノードの電位V(詳細には、電子放出点とアノードの電位の電位差)であり、電子のエネルギーに対応する。なお、単純には電子放出素子2から放出された電子の全てが蛍光体に照射されるとみなすことができる。このうち、少なくとも発光効率κが蛍光体1の温度に依存するので、放出電流Iが一定である条件では、輝度Lは温度特性を有すると言える。なお、アノードの電位Vは温度によって変化せず、各副画素6間でも同一の値と仮定して、本発明においては一定である。
【0021】
電子放出素子2は、スピント型、表面伝導型、MIM型、MIS型等、カソードとゲートに電圧が生じることによってカソードから電子を放出する素子であれば特に限定されることはないが、特には電界放出素子が好ましい。電子放出素子2に生じる電圧(素子電圧)と、単位時間あたりに電子放出素子2が放出する電子の量(放出電流)には、電子放出素子の種類に応じた電流電圧特性がある。
【0022】
例えば、スピント型や表面伝導型の電子放出素子では、放出電流Iは、F−N(Fowler−Nordheim)式に基づいて、以下の電流電圧特性の式(2)で表される。
【0023】
=η×I=η×aVexp(−b/V)・・・(2)
ここで、Iは電子放出素子2(詳細には、電子放出素子2のカソード)に流れる電流(素子電流)、ηはη=I/Iの関係にあって、電子放出素子2の効率(電子放出効率)を表す。a、bは電子放出素子2に固有の係数で、Vは電子放出素子2(詳細には、電子放出素子2のカソードとゲート)に生じる電圧(素子電圧)である。
【0024】
続いて、抵抗体3について説明する。抵抗体3は、電子放出素子2に直列に接続されている。抵抗体3は1つの電子放出素子2のカソードに直列に接続されていればよい。駆動手段5及び配線4によって電子放出素子2及び抵抗体3に印加される電圧V(駆動電圧)について説明する。駆動電圧Vが印加されると、抵抗値Rを有する抵抗体3によって電圧降下が生じ、降下した電圧に応じた素子電圧Vが電子放出素子2に生じる。すなわち、素子電圧Vは以下の式(3)で表される。
=V−RI・・・(3)
従って、式(2)及び式(3)により、駆動電圧Vと、抵抗体3の抵抗値R、電子放出素子2の放出電流Iには、以下の式(4)で表される関係がある。
=η×a(V−RIexp{−b/(V−RI)}・・・(4)
この式(4)を満たすI、I、V、Rは、式(2)と、式(3)を変形した以下の式(3’)
=(V−V)/R・・・(3’)
と、をプロットすることにより求めることができる。
【0025】
電子放出素子を用いた画像表示装置は、副画素間で、電子放出特性にバラツキが生じる場合がある。この問題を克服するために、各電子放出素子2には抵抗体3が直列に接続される。即ち、電子放出素子2の電流電圧特性のバラツキに対して、抵抗体3によって素子電流Iを制限することによって、特性のバラツキを低減することができる。実用的には、抵抗体2の抵抗値は100Ω以上10GΩ以下の範囲にあることが好ましい。そして、典型的な画像表示装置の構成において、この抵抗値を得ようとすれば、抵抗体3は負の抵抗温度特性を有する。
【0026】
抵抗体3が有する負の抵抗温度特性とは、抵抗体の温度が上昇すると抵抗値が低下する特性を言う。この負の抵抗温度特性は、典型的には次のような指数関数である式(5)で近似できる。
R=Rexp{(E/k)×(1/T’−1/T’)}・・・(5)
式(5)において、Rは抵抗体の温度T’(K)における抵抗値(Ω)、Rは抵抗体の温度T’(K)における抵抗値(Ω)、Eは材料の活性化エネルギー(eV)、kはボルツマン定数(8.617×10−5(eV/K))である。一般に、E/kはB定数と呼ばれる。
【0027】
活性化エネルギーEは抵抗温度特性の変化の大きさを表し、活性化エネルギーが大きいほど温度が上昇した時の抵抗値の低下量が大きい。活性化エネルギーEは抵抗体3の材料によって異なるが、実用的な範囲としては0.05eV以上、1eV以下である。
【0028】
また、抵抗値Rは抵抗体を構成する材料の温度T’における、体積抵抗率ρ(Ωm)、電流が流れる方向の長さl、電流が流れる方向に垂直な面の断面厚みt、電流が流れる方向に垂直な面の断面幅wによって、以下の式(6)で表される。
=ρtw/l・・・(6)
抵抗値Rが大きいほど、温度が上昇した時の抵抗値の低下量が大きい。
【0029】
本発明は、蛍光体の輝度の温度特性が小さい副画素ほど、蛍光体の温度が上昇した時の放出電流を大きくすることで、蛍光体の輝度の温度特性の違いに起因する、画素が呈する色の色度の変動を抑制することを要旨とする。第1の実施形態では、1画素内の蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性が1a<1b<1cの関係であるとしたとき、抵抗体の材料の活性化エネルギーを、3a>3b>3cとする。すなわち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、活性化エネルギーの大きい抵抗体を備える。第2の実施形態では、1画素内の蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性が1a<1b<1cの関係であるとしたとき、抵抗体の材料を同一の材料として、抵抗値を3a>3b>3cとする。すなわち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、抵抗値が大きい抵抗体を備える。第1の実施形態及び第2の実施形態の詳細は後述する。
【0030】
配線4及び駆動手段5について説明する。図1に示すように、複数の副画素6に対してそれぞれ独立した駆動手段5と配線4によって電圧を印加するように構成しても良い。副画素6が2次元状に配列されている場合には、配線4は、図2(a)又は(b)に示すような、マトリクス配線を用いることが好ましい。その場合には、図2(a)に示すように、行方向の各副画素に共通の、複数の行方向配線である第1の配線4aと、列方向の各発行素子に共通の、複数の列方向配線である第2の配線4bと、を用いて駆動する方法(単純マトリクス配線)を用いることができる。
【0031】
図2(b)に示すように、各副画素毎にTFT等のトランジスタ4cを設けてゲート配線である第3の配線4dの複数によってトランジスタ4cをON/OFFして副画素6を駆動する方法(アクティブマトリクス配線)を用いてもよい。トランジスタ4cは副画素6の電子放出素子2側に接続しても、抵抗体3側に接続してもよい。
【0032】
なお、これら配線4a、4b、4dの少なくとも1つを、複数の配線が等電位となるように構成した共通電極としてもよい。また、配線4の一部が副画素6の一部と共通の部材であってもよい。
【0033】
配線4に接続される駆動手段(電圧印加手段)5としては、定電圧源とみなせるものを用いる。本発明は、副画素の構成要素の温度変化によらず駆動電圧が一定とみなせる場合に、作用効果を得ることができる。逆に、定電流源であると、副画素の構成要素の温度変化に対して常に一定の素子電流、放出電流が流れることになり、本発明の作用効果は得られない。さらに、概して定電流源は定電圧源に比べて構造が複雑であり、高価になりがちである。
なお、ここでいう定電圧源とは、電圧値を変化させようとしない場合、つまり、負荷(駆動電圧/素子電流)の変動に対して、出力する電圧が一定であるという意味である。ただし、この定電圧源が出力する電圧の値(波高値)、及び/又は、電圧の印加時間(パルス幅)を、表示する画像に応じて積極的に変調することを排除するものではない。むしろ、電圧印加手段5は、表示する画像に応じて駆動電圧を変調する変調回路を備えることは好ましい。また、電圧印加手段5は、駆動する副画素6を選択するための走査回路を備えることが好ましい。
【0034】
次に、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態について、詳細に述べる。
【0035】
(第1の実施形態)
1つの画素が3つの副画素で構成された場合を例にして第1の実施形態を説明する。第1の実施形態では、1画素内の蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性が1a<1b<1cの関係であるとしたとき、抵抗体の材料の活性化エネルギーを、3a>3b>3cとする。すなわち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、活性化エネルギーの大きい抵抗体を備える。
【0036】
図3に蛍光体の輝度の温度特性の一例を示す。図3では、蛍光体温度Tにおける蛍光体1a、1b、1cの輝度を基準値Lとして、このときの輝度に対する、Tより高い蛍光体温度Tでの各蛍光体の輝度の相対値L2a、L2b,L2cを示している。ここで、放出電流は温度TからTに変化しても変わらないと仮定する。蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性はそれぞれ線ALT(点線)、線BLT(一点鎖線)、線CLT(破線)で表されるように、1a<1b<1cの関係がある。この例では蛍光体1a、1bは負の輝度の温度特性を有しており、蛍光体1cは正の輝度の温度特性を有している。この例とは異なり、蛍光体1cが負の輝度の温度特性を有していてもよいし、蛍光体1a、1bが正の輝度の温度特性を有していてもよいことは言うまでも無い。なお、図3では、簡単の為に輝度の温度特性は、直線で表しているが、これに限定されるものではなく、温度が上昇すると輝度(発光効率)の変化が飽和する場合もある。
【0037】
例えば、蛍光体1aが赤色、蛍光体1bが緑色、蛍光体1cが青色の発光色をそれぞれ呈するとする。副画素6a、6b、6cの電子放出素子2が、温度によらず一定の放出電流となるように駆動すると、蛍光体の温度が上昇すると、青色が強くなり、緑色、赤色が弱くなる。従って、画素7が呈する色は青みがかった色に変化してしまい、色温度が高くなる。
【0038】
そこで、蛍光体1cの輝度の温度特性を基準にして、温度が変化しても画素が呈する色の色度が一定になるような、蛍光体1a及び1bの輝度比を色度表より求める。温度が上昇すると蛍光体1cの輝度がより強くなるので、1a、1bの輝度をさらに強くすることによって色度の変動を低減する。
【0039】
以下、説明を簡単にするために、各副画素の温度Tにおける放出電流を、各副画素の温度Tにおける放出電流に対する相対値として説明する。
【0040】
ここで、基準値と相対値について説明する。条件Pにおける3つの実際の値x,y,zの比がX:Y:Zであって、条件Pにおける3つの実際の値x,y,zの比がX:Y:Zであるとする。条件Pにおけるx,y,zを基準値Sとしたとき、条件Pにおける相対値はそれぞれ、SX/X、SY/SY、SZ/Zで定義される。条件P、Pとは具体的には蛍光体温度のことである。値x、y、zとは具体的には放出電流や素子電圧、素子電流のことである。
【0041】
図4(a)は、蛍光体1a、1b、1cの温度(横軸)がTからTに変化した場合の、副画素6a、6b、6cの放出電流(縦軸)の相対的な関係を示す。図4(a)では、副画素6a、6b、6cの各々の、温度Tにおける放出電流の値を基準値Ie11としたものである。そして、温度Tにおける副画素6a、6b、6cの放出電流の相対値は、それぞれ、Ie12a、Ie12b、Ie12cである。
【0042】
ここで、温度Tにおける各画素の放出電流の相対値Ie12a、Ie12b、Ie12cの比は、Tにおける各副画素の放出電流を基準値Ie11とした時の各副画素の発光輝度比と、温度Tにおける各副画素の発光輝度比が変わらないように設定される。また、副画素には負の抵抗温度特性を有する抵抗体3が備わっているので、温度上昇による抵抗体の抵抗値低下を考慮して、Ie11<Ie12a、Ie11<Ie12b、Ie11<Ie12cとなっている。
【0043】
線AIT1(点線)、BIT1(一点鎖線)、CIT1(破線)が副画素6a、6b、6cにそれぞれ対応している。なお、図4(a)の線AIT1、BIT1、CIT1上の黒丸は温度Tにおける各副画素の放出電流の基準値、白丸は温度Tにおける各副画素の放出電流の相対値を表している。
【0044】
図4(b)は、図4(a)で表した放出電流(縦軸)を得るために必要な素子電圧及び駆動電圧(横軸)を表す図である。この図4(b)には、上記式(2)を表す線FN(実線)と、上記式(3’)を表す線WIV11(二点鎖線)、AIV12(太い点線)、BIV12(太い一点鎖線)、CIV12(太い破線)を示している。
【0045】
駆動電圧と抵抗体の抵抗値を定めれば、素子電圧Vと放出電流Iは一意に決まる。駆動電圧は温度によって変化しないことを前提とすれば、放出電流Iは、抵抗体の抵抗値Rによって決定される。抵抗値は、上記式(3’)にて、変数Vの係数(詳細には係数の絶対値)である1/Rの逆数で表される。言い換えれば、線WIV11、AIV12、BIV12、CIV12の各々の傾き(詳細には傾きの絶対値)の逆数が抵抗値である。
【0046】
線WIV11は、温度Tにおいて、副画素6の放出電流の基準値Ie11とするために必要な、駆動電圧V、素子電圧の基準値Vf11、及び抵抗体3の抵抗値の基準値R11を表す。抵抗体3の抵抗値の基準値R11は線WIV11の傾きと対応している。
【0047】
線AIV12は、温度Tにおいて、副画素6aの放出電流を、基準値Ie11に対する相対値Ie12aとして実現するために必要な、素子電圧の相対値Vf12a、及び抵抗体3aの抵抗値の相対値R12aを表す。抵抗体3aの抵抗値の相対値R12aは線AIV12の傾きと対応している。駆動電圧Vは温度TでもTでも変化しない。
【0048】
同様に、線BIV12は、温度Tにおいて、副画素6bの放出電流を、基準値Ie11に対する相対値Ie12bとして実現するために必要な、素子電圧の相対値Vf12b、及び抵抗体3bの抵抗値の相対値R12bを表す。抵抗体3bの抵抗値の相対値R12bは線BIV12の傾きと対応している。駆動電圧Vは温度TでもTでも変化しない。
【0049】
線CIV12は、温度Tにおいて、副画素6cの放出電流を、基準値Ie11に対する相対値Ie12cとして実現するために必要な、素子電圧の相対値Vf12c、及び抵抗体3cの抵抗値の相対値R12cを表す。抵抗体3cの抵抗値の相対値R12cは線CIV12の傾きと対応している。駆動電圧Vは温度TでもTでも変化しない。
【0050】
なお、図4(b)の線FN上の黒丸は温度Tにおける素子電圧と放出電流の関係、白丸は温度T2における素子電圧と放出電流の関係を表している。
【0051】
本発明は、蛍光体の輝度の温度特性が小さい副画素ほど、蛍光体の温度がTからTに上昇した時の放出電流を相対的に大きくすることで、蛍光体の輝度の温度特性の違いに起因する色度の変動を抑制することを要旨とする。
【0052】
蛍光体の輝度の温度特性が小さい副画素ほど蛍光体温度Tにおける放出電流を大きくするためには、図4(b)において、AIV12、BIV12、CIV12の傾き(詳細には傾きの絶対値)を、この順で大きくすれば良い。図5に、蛍光体の温度がTにおける抵抗体3a、3b、3cの抵抗値を基準値R11としたときの、抵抗温度特性を表す線ART1(点線)、BRT1(一点鎖線)、CRT1(破線)を示す。なお、図5の線ART1、BRT1、CRT1上の黒丸は温度Tにおける抵抗体の抵抗値、白丸は温度Tにおける各抵抗体の抵抗値を表している。T’は、蛍光体1の温度がTの時の抵抗体3の温度、T’は、蛍光体1の温度がTの時の抵抗体3の温度T’である。蛍光体の温度と抵抗体の温度とが一致している(T=T’、T=T’)ことは好ましい。しかしながら、一致していなくても、先に述べたように、駆動電圧が一定の場合、蛍光体温度の変化は環境温度の変化が支配的であるので、抵抗値の温度も環境温度によって同じように変化する。一致しない場合には、蛍光体温度と抵抗体温度及び環境温度との関係を予め考慮しておく。
【0053】
抵抗体3a、3b、3cの材料の活性化エネルギーEaは3a>3b>3cとなっている。そのため、上記式(5)によれば、抵抗体3の温度T’における抵抗値の基準値R11に対する、抵抗体温度T’のときの抵抗体3a、3b、3cの抵抗値の相対値R12a、R12b、R12cは、R11>R12c>R12b>R12aとなる。従って、図4(b)において、各線の傾きは、WIV11:1/R11、AIV12:1/R12a、BIV12:1/R12b、CIV12:1/R12cであるから、各線の傾きはWIV11<CIV12<BIV12<AIV12が達成される。
【0054】
従って、蛍光体温度TからTに上昇した時に、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、放出電流が増加する割合が大きくなり、画素が呈する色の色度の変動を低減することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
1つの画素が3つの副画素で構成された場合を例にして第2の実施形態を説明する。第2の実施形態では、1画素内の蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性が1a<1b<1cの関係であるとしたとき、抵抗体の材料を同一の材料として、抵抗値を3a>3b>3cとする。すなわち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、抵抗値が大きい抵抗体を備える。第1の実施形態では、1つの画素内の抵抗体の活性化エネルギーを異ならせたが、第2の実施形態では、1つの画素内の各副画素6の抵抗体の材料は同じである。1つの画素内の各副画素6の抵抗体を同一の材料で形成すれば、抵抗体の活性化エネルギーは同じになる。さらに、製造プロセスを簡単にすることが可能になる。
【0056】
蛍光体1a、1b、1cの輝度の温度特性は第1の実施形態と同じで、図3に表したものである。以下、第1の実施形態同様、説明を簡単にするために、各副画素の温度Tにおける放出電流を、温度Tにおける放出電流に対する相対値として説明する。
図6(a)は第1の実施形態で説明した図4(a)と同様に、蛍光体1a、1b、1cの温度(横軸)がTからTに変化した場合の、副画素6a、6b、6cの放出電流(縦軸)の相対的な関係を示す。図6(a)では、副画素6a、6b、6cの温度Tにおける放出電流を基準値Ie21としたものである。
【0057】
そして、温度Tにおける副画素6a、6b、6cの放出電流の相対値は、それぞれ、Ie22a、Ie22b、Ie22cである。ここで、Ie22a、Ie22b、Ie22cは、Tにおける各副画素の放出電流を所定の値(ここでは、それぞれが、基準値Ie21として表される)とした時の輝度比と同じ輝度比となるように設定される。線AIT2(点線)、BIT2(一点鎖線)、CIT2(破線)が副画素6a、6b、6cにそれぞれ対応している。なお、線AIT2、BIT2、CIT2上の黒丸は温度Tにおける各副画素の放出電流の基準値、白丸は温度Tにおける各副画素の放出電流の相対値を表している。
【0058】
図6(b)は、図6(a)で表した放出電流(縦軸)を得るために必要な素子電圧及び駆動電圧(横軸)を表す図である。この図7(b)には、上記式(2)を表す線FNと、上記式(3’)を表す線AIV21(点線)、BIV21(一点鎖線)、CIV21(破線)、AIV22(太い点線)、BIV22(太い一点鎖線)、CIV22(太い破線)を示している。
【0059】
駆動電圧Vと抵抗体の抵抗値Rを定めれば、素子電圧Vと放出電流Iは一意に決まる。駆動電圧Vは温度によって変化しないことを前提とすれば、放出電流Iは、抵抗体の抵抗値Rによって決定される。抵抗値は、上記式(3’)にて、変数Vの係数の絶対値である1/Rの逆数で表される。言い換えれば、線WIV11、AIV12、BIV12、CIV12の各々の傾きの絶対値の逆数が抵抗値である。
【0060】
線AIV21は、温度Tにおいて、副画素6aの電子放出素子2の放出電流の基準値Ie21とするために必要な、駆動電圧V2a、素子電圧の基準値Vf21、及び抵抗体3aの抵抗値R22aを表す。抵抗体3aの抵抗値の基準値R21aは、線AIV21の傾きと対応している。
【0061】
同様に、線BIV21は、温度Tにおいて、副画素6bの電子放出素子2の放出電流の基準値Ie21とするために必要な、駆動電圧V2b、素子電圧の基準値Vf21、及び抵抗体3bの抵抗値R22bを表す。抵抗体3bの抵抗値の基準値R21bは、線BIV21の傾きと対応している。
【0062】
線CIV21は、温度Tにおいて、副画素6cの電子放出素子2の放出電流の基準値Ie21とするために必要な、駆動電圧V2b、素子電圧の基準値Vf21、及び抵抗体3cの抵抗値R22cを表す。抵抗体3cの抵抗値の基準値R21cは、線CIV21の傾きと対応している。
【0063】
ここでは、放出電流を基準値としており、抵抗値がR22a>R22b>R22cであるので、駆動電圧はV2a>V2b>V2cとしている。
【0064】
また、線AIV22は、温度Tにおいて副画素6aの電子放出素子2の放出電流を、基準値Ie21に対する相対値Ie22aとするために必要な素子電圧の相対値Vf22a、及び抵抗体3aの抵抗値の相対値R22aを表す。抵抗体3aの抵抗値の相対値R22aは、線AIV22の傾きと対応している。駆動電圧V2aは温度TでもTでも変化しない。
【0065】
同様に、線BIV22は、温度Tにおいて副画素6bの電子放出素子2の放出電流を、基準値Ie21に対する相対値Ie22bとするために必要な素子電圧の相対値Vf22b、及び抵抗体3bの抵抗値の相対値R22bを表す。抵抗体3bの抵抗値の相対値R22bは、線BIV22の傾きと対応している。駆動電圧V2bは温度TでもTでも変化しない。
【0066】
線CIV22は、温度Tにおいて副画素6cの電子放出素子2の放出電流を、基準値Ie21に対する相対値Ie22cとするために必要な素子電圧の相対値Vf22c、及び抵抗体3cの抵抗値の相対値R22cを表す。抵抗体3cの抵抗値の相対値R22cは、線CIV22の傾きと対応している。駆動電圧V2cは温度TでもTでも変化しない。
【0067】
なお、図6(b)の線FN上の黒丸は温度Tにおける素子電圧と放出電流の関係、白丸は温度Tにおける素子電圧と放出電流の関係を表している。
【0068】
本発明は、蛍光体の輝度の温度特性が小さい副画素ほど、蛍光体温度がTからTに上昇した時の放出電流を大きくすることで、蛍光体の輝度の温度特性の違いに起因する画素が呈する色の色度の変動を抑制することを要旨とする。
【0069】
蛍光体の輝度の温度特性が小さい副画素ほど駆動電圧Tにおける放出電流を大きくするためには、図6(b)において、線AIV21、BIV21、CIV21の傾きに対して、線AIV22、BIV22、CIV22の傾きをこの順で大きくすれば良い。
【0070】
図7に、抵抗体3a、3b、3cの抵抗値を3a>3b>3cとしたときの、抵抗温度特性を表す線ART2、BRT2、CRT2を示す。なお、図7の線ART2、BRT2、CRT2上の黒丸は温度Tにおける各抵抗体の抵抗値、白丸は温度Tにおける各抵抗体の抵抗値を表している。T’は、蛍光体1の温度がTの時の抵抗体3の温度、T’は、蛍光体1の温度がTの時の抵抗体3の温度T’である。蛍光体の温度と抵抗体の温度とが一致している(T=T’、T=T’)ことは好ましい。しかしながら、一致していなくても、先に述べたように、駆動電圧が一定の場合、蛍光体の温度変化は環境温度の変化が支配的であるので、抵抗値の温度も環境温度によって同じように変化する。
【0071】
抵抗体3a、3b、3cの材料は同一であるため、その活性化エネルギーEも同じである。そして、上記式(5)によれば、温度Tにおける各抵抗体の抵抗値の基準値1cと温度Tにおける各抵抗体の抵抗値の相対値の関係はR21a>>>R22a、R21b>>R22b、R21c>R22cという関係になる。
図6(b)における、温度Tにおける各線の傾きは、AIV21:1/R21a、BIV21:1/R21b、CIV21:1/R21cである。温度Tにおける各線の傾きの絶対値は、AIV22:1/R22a、BIV22:1/R22b、CIV22:1/R22cである。従って、図6(b)において、温度Tになったときの各線の傾きは、CIV22<BIV22<AIV22が達成される。
【0072】
従って、蛍光体温度TからTに上昇した時に、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、放出電流が増加する割合が大きくなり、画素が呈する色の色度の変動を低減することができる。
【0073】
以上、第1及び第2の実施形態にて述べてきた作用によって、蛍光体の温度がTからTに上昇したとき、画素が呈する色の色度の変動を低減できることが理解される。また、蛍光体の温度がTからTに低下した場合にも、上昇した場合と同様の作用によって、画素が呈する色の色度の変動を低減できることは明らかである。
【0074】
、T、Tは実用的には画像表示装置を使用する環境温度(通常、室温である)の範囲に応じて設定することが好ましい。また、本発明の画像表示装置では、蛍光体1に電子が照射されことにより、蛍光体1自体が発熱し、蛍光体の温度は多くの場合、環境温度より高くなる。画像表示装置の構成にもよるが、数10Kは高くなる場合が多い。したがって、T、T、Tは環境温度に蛍光体1の発熱による温度を加味して決定することが好ましい。
【0075】
ここまで、説明を簡単にするために、温度Tにおける素子電流を基準値Ie11やIe21を用いて説明してきた。Tにおける副画素6a、6b、6cの放出電流の比は、適宜設定すればよい。1画素内の各副画素の放出電流が同じになるようにしてもよい。具体的には、第1の実施形態ではTにおいて抵抗体3a、3b、3cの抵抗値を同じにして駆動電圧も同じにすればよい。抵抗体3a、3b、3cの抵抗値を異ならせて、駆動電圧も異ならせてもよいが、この場合には、抵抗体の抵抗値を3a>3b>3cとすることが好ましい。第2の実施形態では、駆動電圧の実際の値を6a>6b>6cとすればよい。
【0076】
また、Tにおける副画素6a、6b、6cの放出電流の比を、例えば画素7が所望の色温度の白色を呈するように、放出電流を異ならせてもよい。具体的には、第1の実施形態では、Tにおいて抵抗体3a、3b、3cの抵抗値を同じにして、駆動電圧を異ならせればよい。Tにおいて抵抗体3a、3b、3cの抵抗値を異ならせて、駆動電圧を同じにしてもよいが、この場合には、抵抗体の抵抗値を3a>3b>3cとすることが好ましい。第2の実施形態においては、駆動電圧を同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
【0077】
このように、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明を逸脱しない範囲において、様々に変形が可能である。
【0078】
つづいて、本発明の画像表示装置を、具体的な構成例に基づいて説明する。図8は、典型的なフラットパネル型の画像表示装置10の模式図である。図8のX方向の左側では、画像表示装置10の構成要素を説明し、右側では構成要素のブロックを説明する。
【0079】
11はフェースプレートで、複数種類の蛍光体14(14a、14b、14c)を備える。
フェースプレート11には、蛍光体14a、14b、14cの間に、遮光部材13が設けられている。また、フェースプレート11はアノード15を備えている。
【0080】
12はリアプレートで、20は電子放出素子である。リアプレート12は複数の電子放出素子20を備える。また、リアプレート12は抵抗体22a、22b、22cをそれぞれ複数備える。図10、図11を用いて後述する構成によって、抵抗体22a、22b、22cは、電子放出素子20と直列に接続されている。また、リアプレート12には、電子放出素子20及び抵抗体22の他に、それを駆動するための電極や配線4が設けられている。
【0081】
フェースプレート11とリアプレート12とは電子放出素子20と蛍光体14が対向するように配置されている。16は両プレート間の空間を真空に保った外囲器を構成する枠部である。また、17はフェースプレート11及びリアプレート12との間に配置され、これらのプレート間の距離を保持すると同時に耐大気圧構造体として働くスペーサ(板状、柱状、リブなどの部材)である。
【0082】
電子放出素子20から放出された電子は、フェースプレート11をアノード15を正電位(例えば、+5以上、+15kV以下)にすることにより加速され、所定のエネルギーを持って蛍光体14の各々に照射され、蛍光体14を励起発光させる。蛍光体の発光は、表示面であるフェースプレート側から観察することができる。
【0083】
このように、蛍光体14を備えるフェースプレート11と電子放出素子20を備えるリアプレート12とは、対向して配置され、その間は真空(好ましくは1×10−5Pa以下)に保たれている。そのため、表示面として露出されたフェースプレート11に備えられた蛍光体14の温度変化は、照射条件が一定の場合、画像表示装置10が設置される環境の温度変化が主な要因である。そのため、リアプレート12上に設けられた抵抗体22も環境温度の変化にともなって温度が変化するため、本発明の作用効果が得られる。
【0084】
蛍光体14aと電子放出素子20と抵抗体22a、蛍光体14bと電子放出素子20と抵抗体22b、蛍光体14cと電子放出素子20と抵抗体22cの組合せがそれぞれ、副画素6a、6b、6cを構成している。
【0085】
そして、隣接する副画素6a、6b、6cとで画素7を構成する。このため、少なくとも、1つの画素内の各副画素の構成要素の温度は、互いに同じであるとみなすことができる。
【0086】
画像表示装置10には画素7が複数設けられており、図8ではその一部を示している。図8では画素7は2つしか示していないが、画像表示装置10には多数の画素を備えていることが好ましい。例えば、HDTV規格の画像表示装置として用いる場合には、例えば縦1080、横1920個の200万個以上の画素7が配列される。
【0087】
又、外囲器の外側に不図示の駆動手段を備えることによって、画像表示装置10を駆動する。画像表示装置10は不図示の筐体に収められる。筐体の中に、表示する画像信号を処理するための信号処理手段をさらに備えていることが好ましい。また、テレビジョン放送を受信するためのチューナーや、画像信号を記録しておくための記憶手段、外部から得られる画像・文字情報を画像信号に変換するデコーダー、の少なくともいずれかをさらに備えることもできる。
【0088】
図9に、複数の蛍光体が設けられたフェースプレート11の構成を示す。図9において、蛍光体14a、14b、14cは、14aが赤色、14bが緑色、14cが青色の光を発する。蛍光体14a、14b、14cをフェースプレート11上に2次元状にそれぞれ複数配置することで、表示面を形成する。
【0089】
蛍光体14の材料の一例として、赤色に発光する蛍光体14aとしては、SrTiO:Pr,Y:Eu、YS:Eu、(Y,Gd)BO:Eu等が挙げられる。緑色に発光する蛍光体14bとしては、Zn(Ga,Al):Mn、Y(Al,Ga)12:Tb、YSiO:Tb、ZnS:Cu,Al、ZnSiO:Mn等が挙げられる。青色に発光する蛍光体14cとしては、YSiO:Ge、ZnGa、ZnS:Ag,Cl、GaN:Zn、BaMgAl1017:Eu等が挙げられる。
【0090】
図9では、蛍光体14a、14b、14cはこの順でX方向に繰り返して配列されており、Y方向では同じ色を呈する蛍光体が配列されているが、これに限定されること無く、様々な変形が可能である。
【0091】
遮光部材13は典型的には遮光部材は黒色の部材からなり、フェースプレートを区分けし、光を外部に放射するための開口を複数有するブラックマトリクスである。開口の形状は、図9のように長方形であってもよいし、円形又は楕円形であってもよいし、多角形であってもよい。ブラックマトリクス13は、各色の蛍光体14a、14b、14cの間及びY方向の各画素間を分離するように配置される。ブラックマトリクス13は表示画像のコントラストを向上させる効果や、外光を吸収し表示面での反射を抑制する効果を有している。蛍光体14a、14b、14cは、ブラックマトリクスの開口によって画定された領域の、少なくとも内側に設けられる。したがって、1つの副画素を構成する蛍光体は、ブラックマトリクス13によって画定された領域に存在する蛍光体として明確に認識することができる。
【0092】
フェースプレート11上には導電層であるアノード15が設けられる。アノード15は、蛍光体14の上(リアプレート側:−z側)に設けてもよいし、蛍光体14の下(フェースプレート側:+z側)に設けてもよい。リアプレート12側に設ける場合には、アノード15を金属を材料にして、光反射膜として用いることが好ましい。フェースプレート11側に設ける場合には、アノード15を可視光に対して透明な膜とすべきである。蛍光体14よりも外側(+z側)には、副画素の発光色の色純度を高めるためのカラーフィルター(不図示)を設けることも好ましい。カラーフィルターは開口内の領域の、蛍光体14と基板との間に設けることが好ましい。
【0093】
図8に示したリアプレート12に設けられた複数の電子放出素子と電子放出素子に直列に接続された抵抗体の関係を図10及び図11を用いて詳細に説明する。図10では、図8におけるリアプレート12の電子放出素子20として、表面伝導型の電子放出素子20を示している。図10において、20は表面伝導型の電子放出素子、22a、22b、22cは抵抗体、23はX方向に延びた第1の配線、24はY方向に延びた第2の配線である。複数の電子放出素子20は同じ特性を有するものとして形成されるが、実際には特性にバラツキを生じる場合もある。配線は、第1の配線23と第2の配線24とからなり、第1の配線23と第2の配線24とを異なる電位にすることによって、その電位差に応じた電圧が電子放出素子20に供給される。すなわち、単純マトリクス配線である。第1の配線23は駆動するX行を選択する走査信号を伝送する走査配線であり、第2の配線24は素子に印加される情報信号を伝送する情報配線である。
【0094】
リアプレート12には、電子放出素子20がN×M個形成さる。N×M個の電子放出素子20は、M本のX方向配線23とN本のY方向配線24により単純マトリクス配線される。図10では3×3の9個の電子放出素子20の部分のみを示している。
【0095】
図11に1つの副画素の電子放出素子20と抵抗体22(22a、22b、22c)及び、それを駆動するための配線等の詳細な構成を示す。電子放出素子20は、電子放出膜21と、走査信号素子電極25、情報信号素子電極26からなる。電子放出膜21には間隙210が設けられている。走査信号素子電極25を低電位(例えば、0V以下、−20V以上)、情報信号素子電極26を高電位(例えば、0V以上、+10V以下)にすることにより、電子放出膜21の間隙210に電界が生じ、電子が放出される。すなわち、走査信号素子電極25に接続された側の電子放出膜21がカソードとして機能し、情報信号素子電極26に接続された側の電子放出膜21がゲートとして機能する。
【0096】
抵抗体22の一端部は電子放出素子20と直列に接続されている。走査信号素子電極25、及び情報信号素子電極26は、低抵抗な接続部材であり、抵抗体22の一端部と電子放出素子20、及び電子放出素子20と第2の配線24との接続を容易にする形状となっている。抵抗体22の他端部は第一の配線23と、延長配線27を介して、直列に接続されている。延長配線27も低抵抗な接続部材であり、抵抗体22と第1の配線23との接続を容易にする形状となっている。
【0097】
28は、第1の配線23と第2の配線24とが交差する部分の絶縁性を確保するための絶縁層であり、延長配線27と第1の配線23の間の一部にも設けられている。電子放出素子20に抵抗体22を介して接続された延長配線27は、絶縁層28に設けられたコンタクトホール29によって、第1の配線23と接続されている。
【0098】
抵抗体22について説明する。先に述べたように、抵抗体22の抵抗値は100Ω以上であることが好ましい。電子放出素子は基本的に微細加工プロセスで作製されるため、抵抗体も薄膜(膜厚が10μm未満)であることが好ましい。この場合、上記の抵抗値を得ようとすれば、体積抵抗率が10−3Ωm以上或いは1μm厚でシート抵抗が1kΩ/□の材料であることが好ましい。
【0099】
一般的に、体積抵抗率が大きい材料は半導体が多く、負の抵抗温度特性を有する場合が多い。特に、t、wを小さくして高い抵抗値を得ようとする場合、体積抵抗率ρを大きくすることになる。一般的に、体積抵抗率が大きい材料は活性化エネルギーが高く、温度上昇に伴う体積抵抗率の低下が大きい。抵抗体の材料として、例えば、Siやa−Si、Si−C、TaN、アモルファスカーボン、DLC、サーメット、シリサイド、酸化物半導体、窒化物半導体、ATO(アンチモン含有酸化ススズ)、SnO2、WGeON、PtAlN、AlN、ZnO等の様々な材料を用いることが出来る。また、これらの材料から複数の材料を選択して、複数の材料を積層させるなど、抵抗体を異なる材料からなる複数の部分で構成することもできる。上記した材料は、半導体的な特性をもつものが多く、負の抵抗温度特性を有する。例えば、活性化エネルギーEは、AuSiONでは0.05eV程度、PtAlNでは0.1eV程度、TaNでは0.14eV程度、WGeONでは0.3eV程度、a−Siでは0.8eV程度である。また、これらの材料はその成膜条件(例えば、組成比)を適宜選択することによって、所望の体積抵抗率を得ることができる。薄膜抵抗体の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法等の真空系成膜の他に、スピンコート法、スプレー法等が用いられる。
【0100】
第1の実施形態で説明したように、抵抗体22a、22b、22cの活性化エネルギーを異ならせるには、抵抗体に用いる材料、又は材料の組成比、を所望の活性化エネルギーが得られるようにそれぞれ選択すればよい。また、抵抗体を複数の材料を組み合わせた構造体とする場合には、複数の材料の構成比率を変えることによっても活性化エネルギーを異ならせることもできる。
【0101】
一方、第2の実施形態で説明したように、同一の材料を用いて抵抗体22a、22b、22cを形成し、これらの抵抗値を異ならせるには、式(6)に基づいて、22a、22b、22cでその形状(例えば、幅、長さ、厚み)を異ならせることによって達成される。抵抗体を蛇行した形状にする、抵抗体の一部にスリットを設ける、ことによって実質的に幅や長さ異ならせてもよい。あるいは、電極や配線との接触面積を異ならせても良い。第1の実施形態において、温度Tにおける抵抗値を異ならせる場合でも同様の方法を採用することができる。
【0102】
図9において、フェースプレート11の蛍光体14a、14b、14cに記されたアドレス(A−1〜A−6、B−1〜3、C−1〜3)は図10におけるアドレス(A−1〜A−6、B−1〜3、C−1〜3)に対応している。この図9のアドレスと図10のアドレスとが一致するように、フェースプレート11とリアプレート12が対向配置され、上述の外囲器である画像表示装置が構成される。したがって、1つ目の画素は副画素A−1と副画素B−1と副画素C−1とから構成される。2つ目の画素は副画素A−2と副画素B−2と副画素C−2とから構成される。3つ目の画素は副画素A−3と副画素B−3と副画素C−3とから構成される。
【0103】
以下に具体的な実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明がこれら実施例の形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0104】
図8に示すような画像表示装置の各構成部材の作製方法について説明する。[フェースプレート作製]
まず、フェースプレート11の作製方法を、図8及び図9を用いて説明する。図8において、13はブラックマトリクス、14a、14b、14cは異なる発光色の蛍光体である。
【0105】
(ブラックマトリクス形成)
フェースプレート11の基板にはPD−200を用い、その表面に黒色顔料ペーストをスクリーン印刷し、ベーキングしてブラックマトリクス13を形成した。ブラックマトリクス13の開口はX方向に3072個、Y方向に768個形成した。ブラックマトリクス13の開口のX方向の幅は150μm、Y方向の幅は300μmとした。また、ブラックマトリクス13のX方向の幅は50μm、Y方向の幅は300μmとした。
【0106】
(蛍光体形成)
蛍光体は、CRTの分野で用いられる赤、緑、青の3原色のP22蛍光体を用いた。P22蛍光体は、蛍光体14aが赤色のYS:Eu、14bが緑色のZnS:Cu,Al、14cが青色のZnS:Agである。P22蛍光体の輝度の温度特性を図12に示す。図12では、蛍光体温度T=298Kを基準値(100%)とした時の、蛍光体温度373Kまでの相対輝度変化を表している。また、P22蛍光体のガンマ特性をあらわす値γは、蛍光体14a(赤色)が0.85、14b(緑色)が0.67、14c(青色)が0.75である。
【0107】
各蛍光体材料のペーストを、ブラックマトリクス13の開口の内側にスクリーン印刷し、ベーキングして蛍光体14a、14b、14cを形成した。
【0108】
(アノード形成)
次に、蛍光体14a、14b、14cの表面を、CRTの分野で慣用されるフィルミング法で平滑化処理し、その上にAlを100nmの厚さで真空蒸着することで、アノード15としてメタルバックを形成した。
【0109】
以上のようにして、フェースプレート11を作製した。
【0110】
[リアプレート作製]
次に、本実施例に用いるリアプレート12の作製方法について説明する。図8における電子放出素子20の配列の代表的な方式には、図2(a)で示したような、電子放出素子20の一対の素子電極にそれぞれX方向配線、Y方向配線を接続した単純マトリクス配置が挙げられる。
【0111】
図10にリアプレート12の一部分の平面図を示す。リアプレート12には、電子放出素子20が3072×768個形成されている。前記3072×768個の電子放出素子20は、3072本のX方向配線23と768本のY方向配線24により単純マトリクス配線されている。
【0112】
本実施例では、図8に示すリアプレート12の電子放出素子20として図11に示す構成の電子放出素子20を用いた。リアプレート12の電子放出素子20とその周辺の配線の作製方法について説明を行う。ここでは、1素子について説明するが、X方向配線23とY方向配線を共通として、複数の電子放出素子20とその周辺の配線をそれぞれ同時に形成することができる。
【0113】
(素子電極形成工程)
2.8mm厚のガラス基板PD−200(旭硝子社製)を用意し、さらにこのガラス基板上に膜厚200nmのSiO膜を塗布形成した。上記ガラス基板上に、膜厚5nmのTi膜と、20nmのPt膜をこの順で成膜した。次に、フォトリソグラフィー技術によって上記Pt/Ti膜をパターニングして、走査信号素子電極25と情報信号素子電極26とを形成した。これら素子電極25、26の体積抵抗率は2.5×10−7(Ωm)であった。また、走査信号素子電極25は、後述する工程で電子放出膜21と接続する電極の幅は20μm、抵抗体22と接続する電極幅は10μmとした。
【0114】
(抵抗体形成工程)
次に抵抗体22a、22b、22cをこの順で形成した。抵抗体は、その活性化エネルギーが22a>22b>22cとなるように設定した。また、活性化エネルギーは、蛍光体温度T、T、Tが環境温度+25℃、抵抗体温度T’、T’、T’が環境温度+15℃であるとして設定した。
【0115】
抵抗体の抵抗値は、本実施例では、抵抗体材料の体積抵抗率が同じになるように抵抗体材料の組成比を選択することにより、抵抗体22a、22b、22cの形状を同じにした。このようにすることにより、蛍光体と抵抗体以外の構成を1つの画素の各副画素で異ならせることが無いため、副画素間の発光特性のバラツキに与える影響を低減することができる。また、同じフォトマスクを用いれば、製造コストを低減することもできる。
【0116】
まず、W、Geのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、WGeON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)によって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体22aを形成した。WGeON膜の活性化エネルギーは0.3eV、抵抗体温度T’=315Kにおける体積抵抗率は75Ωmであった。膜厚を50nmとして抵抗体温度T’=315Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0117】
次に、Pt、Alのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、PtAlON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIEによって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体22bを形成した。PtAlON膜の活性化エネルギーは0.1eV、300Kにおける体積抵抗率は75Ωmであった。膜厚を50nmとして300Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0118】
最後に、Au、Siのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、AuSiON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIEによって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体22bを形成した。AuSiON膜の活性化エネルギーは0.05eV、抵抗体温度T’=315Kにおける体積抵抗率は75Ωmであった。膜厚を50nmとして、抵抗体温度T’=315Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0119】
(情報信号配線及び延長配線形成)
銀ペーストを用い、スクリーン印刷法を用いて情報信号配線24及び延長配線27を形成した。情報信号配線24の厚さは約10μm、幅は20μmとした。
【0120】
(絶縁層形成工程)
後工程で形成する走査信号配線23の下に、絶縁性ペーストを用いたスクリーン印刷法により厚さ30μm、幅200μmの絶縁層28を形成した。絶縁層28には、延長配線27と重なる領域の一部に開口部29を設けた。
【0121】
(走査信号配線形成)
銀ペーストを用い、スクリーン印刷法により厚さ10μm、幅150μmの走査信号配線23を、上記絶縁層28上に形成した。なお、当該工程で外部駆動回路への引き出し配線、引き出し端子も同様に形成した(不図示)。
【0122】
(電子放出部形成工程)
インクジェット塗布装置により有機パラジウム含有溶液をドット径が50μmとなるように調整して上記素子電極25、26間に付与した。その後、空気中で加熱焼成処理を施し、厚みが最高で10nmの酸化パラジウム(PdO)膜を得た。
【0123】
水素ガスを含む雰囲気下で上記酸化パラジウム膜に通電処理した。これにより、酸化パラジウムを還元してパラジウムからなる電子放出膜21を形成すると同時に、該電子放出膜21の一部に亀裂を形成した。
【0124】
次いで、が1.3×10−4Paである雰囲気で上記電子放出膜21に通電処理(活性化処理)を施し、カーボン膜を堆積させた。これにより間隙210を有する電子放出素子20が得られた。
【0125】
[表示パネル作製]
最後に、図8に示すように、作製したフェースプレート11とリアプレート12との周縁部に枠部16を配置し、プレート間の距離をスペーサ17により2mmに維持して真空中で封止した。以上のような工程により、画素数1024×768、画素ピッチ600×600μmのフラットパネル型の表示パネルを得た。
【0126】
[評価]
画像表示パネルに駆動手段5である公知の駆動装置を接続して、画像表示装置を構成した。駆動装置によって、1つの画素内の各副画素に接続された走査信号配線23に−17.5Vを、情報信号配線24に+10Vを同時に印加し、1画素内の各副画素を同時に同じ放出電流となるように駆動させた。このときの素子電流はどの副画素も100μAであった。また、高圧端子を通じて、フェースプレート11のメタルバック15には+10kVの電圧を印加した。なお、このときの環境温度は300Kで、フェースプレート11の温度は325K、リアプレート12の温度は315Kであった。これにより各副画素は同時に発光し、画素は白色を呈した。また、表示画面内で明るさのムラは確認されなかった。この駆動条件で、色彩輝度計(BM−7/(株)トプコン製)を用いて、色温度を測定したところ、およそ12000Kであった。環境試験室にて、環境温度を280K(7℃)から320K(47℃)まで変化させたときの、色温度の変化を図13に示す。環境温度280〜320Kにおいて、色温度はおよそ12000〜14000Kの範囲で変化した。300Kより低温においては、色温度はほとんど変化せず、およそ12000Kだった。
【実施例2】
【0127】
実施例2は、各副画素の抵抗体22a、22b、22cを同一の材料を用いて、抵抗体の抵抗値を22a>22b>22cとしたものである。抵抗体の抵抗値は、蛍光体温度T、T、Tが環境温度+25℃、抵抗体温度T’、T’、T’が環境温度+15℃であるとして設定した。
【0128】
実施例1の[リアプレート作製]の(抵抗体形成工程)以外は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0129】
(抵抗体形成)
抵抗体22aと22bは同時に形成した。
【0130】
W、Geのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、WGeON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)によって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体22a、22b、22cを形成した。WGeON膜の活性化エネルギーは0.3eV、300Kにおける体積抵抗率は75Ωmであった。抵抗体22aは、WGeON膜の膜厚を50nmとして、実施例1と同じ形状とした。抵抗体温度T’=315Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。抵抗体22bは、WGeON膜の膜厚を50nmとして、延長配線27との接触面積を抵抗体22aの6倍とした。抵抗体温度T’=315Kにて2.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0131】
次に、抵抗体22cを抵抗体22a、22bと同様にして形成したが、WGeON膜の膜厚は500nmとした。抵抗体温度T’=315Kにて2.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0132】
[評価]
実施例1と同様に画像表示装置を構成した。駆動装置によって、1つの画素内の各副画素に接続された走査信号配線23に−17.5Vを印加した。抵抗体22aを備える副画素に接続された情報信号配線24には+10Vを印加した。同時に、抵抗体22bを備える副画素に接続された情報信号配線24には+8.5Vを印加した。同時に、抵抗体22cが接続された情報信号配線24にも+8.5Vを印加した。このときの素子電流はどの副画素も100μAであった。なお、このときの環境温度は300Kで、蛍光体14が設けられたフェースプレートの温度は325K、抵抗体22が設けられたリアプレート12の温度は315Kであった。
【0133】
これにより各副画素は同時に発光し、画素は実施例1とほぼ同様の白色を呈した。色彩輝度計(BM−7/(株)トプコン製)を用いて、色温度を測定したところ、およそ12000Kであった。この駆動条件で、環境試験室にて、環境温度を280K(7℃)から320K(47℃)まで変化させたときの、色温度の変化を図13に示す。環境温度280〜320Kにおいて、色温度はおよそ12000〜13000Kの範囲で変化した。
【0134】
<比較例>
比較例として、実施例1のリアプレートの抵抗体形成工程において、各副画素の抵抗体の全てに、実施例1の抵抗体22cと同じAuSiON膜を用いた。実施例1における抵抗体22と延長配線27の接触面積の1.5倍の接触面積とした。AuSiON膜の活性化エネルギーは0.05eV、抵抗体温度T’=315Kにおける体積抵抗率は75Ωmであった。膜厚を50nmとして、走査抵抗体温度T’=315Kにて1×10Ωの抵抗値が得られた。抵抗体形成工程以外の画像表示パネルの作製工程は実施例1と同じである。
【0135】
作製した画像表示パネルに駆動手段5である公知の駆動装置を接続して、画像表示装置を構成した。駆動装置によって、1つの画素内の各副画素に接続された走査信号配線23に−16Vを、情報信号配線24に+17Vを同時に印加し、1画素内の各副画素を同時に同じ放出電流となるように駆動させた。また、高圧端子を通じて、フェースプレート11のメタルバック15には+10kVの電圧を印加した。このときの素子電流はどの副画素も100μAであった。なお、このときの環境温度は300Kで、フェースプレート11の温度は325K、リアプレート12の温度は315Kであった。これにより各副画素は同時に発光し、画素は実施例1及び実施例2とほぼ同じ白色を呈した。また、表示画面内で明るさのムラは確認されなかった。この駆動条件で、色彩輝度計(BM−7/(株)トプコン製)を用いて、色温度を測定したところ、およそ12000Kであった。環境試験室にて、環境温度を280K(7℃)から320K(47℃)まで変化させたときの、色温度の変化を図16に示す。環境温度280〜320Kにおいて、色温度はおよそ9000〜16000Kの範囲で変化した。
【実施例3】
【0136】
実施例3は、リアプレート12の電子放出素子20として、積層型の表面伝導型電子放出素子を用いたものである。1つのまた、実施例1、2の抵抗体22a、22b、22cの代わりに抵抗体42a、42b、42cを用いた。実施例1、実施例2とは[フェースプレート作製]と[表示パネル作製]は共通であるので、[リアプレート作製]について説明する。なお、本実施例の表面伝導型電子放出素子の代表的な製法及び特性は、特開2001−167693、特開2001−229809号公報に開示されている。
【0137】
図13は本実施例の電子放出素子を拡大した模式図である。図13(a)は上面からみた平面図、図13(b)は図13(a)におけるE−E’線での断面図である。図13中、41は抵抗体42を介してカソード電極35に電気的に接続された短冊状のカソードであり、その一部は絶縁層39の側壁面上に設けられている。43はゲート電極36に電気的に接続された短冊状のゲート、44は段差側壁において絶縁層40の側壁面をゲート電極36の側壁面及び絶縁層39の側壁面に比べて内部に凹むように後退させたリセス部である。45は電子放出に必要な電界が形成される間隙(カソード41からゲート43までの最短距離)である。以下、リアプレートの作製方法について述べる。
【0138】
[リアプレート作製]
(走査信号配線及びカソード電極形成工程)
まず、ガラス基板33上にフォトリソグラフィー技術によりCuの配線を形成し、走査信号配線34とした(図14(a))。次にTaN膜を形成、パターニングを行ってカソード電極35を形成した(図14(b))。
【0139】
(ゲート電極及びリセス部形成工程)
次に、基板33上に、絶縁層39としてSiN膜を膜厚で500nm形成した。その上に、絶縁層40としてSiO膜を膜厚で30nm形成した。更にその上にゲート電極36としてTaN膜を膜厚で40nm形成した。その後、TaN膜をゲート電極36の所定の形状にパターニングした(図15(a))。次にフォトリソグラフィー技術によって絶縁層39、40を所定の形状に加工した(図15(b))。その後、絶縁層40をエッチングしてリセス部44を形成した(図15(c))。
【0140】
(情報信号配線形成工程)
次に、Cu膜を形成、パターニングを行って情報信号配線37を形成した(図14(d))。
【0141】
(短冊部形成)
その後、電子ビーム蒸着法を用いてモリブデン(Mo)膜を作製、フォトレジストを塗布、露光、現像を行った後、所定の形状にカソード41とゲート43を加工した(図15(d))。カソード41、ゲート43の幅は3μmとし、短冊数は50本×2列=100本形成した。断面TEM観察により、間隙45は約8nmが得られた。
【0142】
(抵抗体形成工程)
最後に、フォトリソグラフィー技術を用いて所定のパターンの抵抗体42を形成した(図15(e))。抵抗体42の幅はカソード41と同じ3μm、抵抗体42の膜厚は200nmとした。抵抗体は短冊と同じ数の50個×2列=100個形成した。
【0143】
詳細には、抵抗体42a、42b、42cをこの順で形成した。図13、図15では抵抗体42とのみ表示するが、実際には抵抗体42は抵抗体42a、42b、42cの3種類がある。抵抗体42aは赤色に発光する蛍光体14aを備える副画素6a、抵抗体42bは緑色に発光する蛍光体14bを備える副画素6b、抵抗体42cは青色に発光する蛍光体14cを備える副画素6c、にそれぞれ備えられる。抵抗体の活性化エネルギー及び抵抗値の設定方法は実施例1と同様である。実施例1は1つの副画素の電子放出素子の数は1個であるが、本実施例では100個であるので、1つの抵抗体の抵抗値は実施例1の100倍である。1つの副画素の抵抗体として走査信号配線34と情報信号配線37との間の抵抗体42の合成抵抗は、実施例1と同じになる。
【0144】
まず、W、Geのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、WGeON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)によって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体42aを形成した。WGeON膜の活性化エネルギーは0.3eV、抵抗体温度T’=315Kにおける体積抵抗率は0.15Ωmであった。なお、WGeON膜の組成比は実施例1とは異なる組成比とした。膜厚を200nmとして抵抗体温度T’=315Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0145】
次に、Pt、Alのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、PtAlON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIEによって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体42bを形成した。PtAlON膜の活性化エネルギーは0.1eV、315Kにおける体積抵抗率は0.15Ωmであった。なお、PtAlON膜の組成比は実施例1とは異なる組成比とした。膜厚を200nmとして抵抗体温度T’=315Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0146】
最後に、Au、Siのターゲットを用いて、窒素と微量の酸素雰囲気中でスパッタを行い、AuSiON膜を形成した。その後、一連のフォトリソグラフィー工程と、RIEによって、所定のパターンを形成、レジストを剥離して、抵抗体42cを形成した。AuSiON膜の活性化エネルギーは0.05eV、抵抗体温度T’=315Kにおける体積抵抗率は0.15Ωmであった。なお、AuSiON膜の組成比は実施例1とは異なる組成比とした。膜厚を200nmとして、抵抗体温度T’=315Kにて1.5×10Ωの抵抗値が得られた。
【0147】
[評価]
画像表示パネルに駆動手段5である公知の駆動装置を接続して、画像表示装置を構成した。駆動装置によって、1つの画素内の各副画素に接続された走査信号配線34に−17.5Vを、情報信号配線37に+10Vを同時に印加し、1画素内の各副画素を同時に同じ放出電流となるように駆動させた。また、高圧端子を通じて、フェースプレート11のメタルバック15には+10kVの電圧を印加した。本実施形態では1つの副画素には100個の抵抗体が設けられているが、1副画素の合成抵抗値は実施例1と同じであり、定量的にほぼ同じ駆動条件である。なお、このときの環境温度は300Kで、フェースプレート11の温度は325K、リアプレート12の温度は315Kであった。これにより各副画素は同時に発光し、画素は実施例1と同様の白色を呈した。環境試験室にて環境温度を変化させて、画素の色温度を測定したが、実施例1と同様に環境温度が変化しても色温度の変化は小さいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の画像表示装置を表す模式図。
【図2】(a)単純マトリクス配線、(b)アクティブマトリクス配線を表す模式図。
【図3】蛍光体の輝度の温度特性を表す図。
【図4】第1の実施形態の(a)蛍光体の温度と放出電流の関係を表す図、(b)電子放出素子の素子電圧と放出電流を表す図。
【図5】第1の実施形態の抵抗体の抵抗温度特性を示す図。
【図6】第2の実施形態の(a)蛍光体の温度と放出電流の関係を表す図、(b)電子放出素子の素子電圧と放出電流を表す図。
【図7】第2の実施形態の抵抗体の抵抗温度特性を示す図。
【図8】フラットパネル型の画像表示装置の断面模式図。
【図9】フェースプレートの一部の平面模式図。
【図10】リアプートの一部の平面模式図。
【図11】1つの副画素の表面伝導型の電子放出素子と抵抗体の構成を示す模式図。
【図12】P22蛍光体の輝度の温度特性。
【図13】実施例3の表面伝導型の電子放出素子と抵抗体の構成を示す(a)平面図、及び、(b)断面図。
【図14】実施例3の電子放出素子と配線の製造工程を示す図。
【図15】実施例3の電子放出素子の製造工程を示す図。
【図16】実施例1、2と比較例1の評価結果を示す図。
【符号の説明】
【0149】
1、1a、1b、1c 蛍光体
2 電子放出素子
3、3a、3b、3c 抵抗体
6、6a、6b、6c 副画素
7 画素
10 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素を少なくとも含む画素を複数有する画像表示装置であって、
前記副画素の各々は、電子が照射されることによって所定の色の光を発する蛍光体と、該蛍光体に前記電子を照射する電子放出素子と、該電子放出素子に直列に接続された負の抵抗温度特性を有する抵抗体と、を備えており、
同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素の各々が備えている、蛍光体の輝度の温度特性及び抵抗体の活性化エネルギーが、互いに異なっており、
同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素のうち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、活性化エネルギーが大きい抵抗体を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素を少なくとも含む画素を複数有する画像表示装置であって、
前記副画素の各々は、電子が照射されることによって所定の色の光を発する蛍光体と、該蛍光体に前記電子を照射する電子放出素子と、該電子放出素子に直列に接続された負の抵抗温度特性を有する抵抗体と、を備えており、
同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素の各々が備えている、蛍光体の輝度の温度特性が互いに異なっており、かつ、抵抗体が同一の材料であり、
同じ画素に含まれ互いに異なる発光色を呈する3つ以上の副画素のうち、輝度の温度特性が小さい蛍光体を備える副画素ほど、抵抗値が大きい抵抗体を備えていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々は赤色、緑色、青色の発光色を呈する3つの副画素を含み、前記蛍光体の輝度の温度特性は、
赤色の光を発する蛍光体が、緑色の光を発する蛍光体より小さく、該緑色の光を発する蛍光体が、青色の光を発する蛍光体より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記抵抗体の抵抗値が、300Kにおいて、100Ω以上10GΩ以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記抵抗体の体積抵抗率が、300Kにおいて、10−3Ωm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素の各々の前記副画素が備える前記蛍光体を有する1つのフェースプレートと、前記複数の画素の各々の前記副画素が備える前記電子放出素子及び前記抵抗体を有する1つのリアプレートと、を対向して配置してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
定電圧源の電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−123338(P2010−123338A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294592(P2008−294592)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】