説明

画像解析装置、画像解析システム、画像解析プログラム、及び、画像解析方法

【課題】 重なっている複数の細胞等の画像から適切な境界線が得られない。
【解決手段】 画像解析装置は、対象領域を含む画像が格納された画像記憶部と、画像記憶部の画像から、対象領域の形状がくびれている部分の対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出手段と、検出された結合部内の点を始点として対象領域を切断する切断経路を抽出し、切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した切断経路を出力する切断経路生成手段と、切断経路で分割された対象領域の画像を出力する出力手段、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置、画像解析システム、画像解析プログラム、及び、画像解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Watershed法により、複数の細胞が重なっている輪郭上で、くびれている部分を個々の細胞の境界として認識し、単一の細胞ごとを検出することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、濃度勾配に基づいて細胞輪郭を抽出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−079196
【特許文献2】特開2008−146278
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、重なっている複数の細胞の境界線をどのように抽出するかを開示していない。従って、当該技術によって適切な境界線が得られない。特許文献2の技術は細胞の境界線を抽出する技術ではなく、上記の課題を解決しない。
【0006】
本発明は、上記の課題等を解決するための、画像解析装置、画像解析システム、画像解析プログラム、及び、画像解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態の画像解析装置は、対象領域を含む画像が格納された画像記憶部と、前記画像記憶部の画像から、前記対象領域の形状がくびれている部分の前記対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出手段と、検出された前記結合部内の点を始点として前記対象領域を切断する切断経路を抽出し、前記切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した前記切断経路を出力する切断経路生成手段と、前記切断経路で分割された前記対象領域の画像を出力する出力手段、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態の画像解析プログラムは、対象領域を含む画像が格納された画像記憶部を備えたコンピュータに、前記画像記憶部の画像から、前記対象領域の形状がくびれている部分の前記対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出処理と、検出された前記結合部内の点を始点として前記対象領域を切断する切断経路を抽出し、前記切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した前記切断経路を出力する切断経路生成処理と、前記切断経路で分割された前記対象領域の画像を出力する出力処理、を実行させる。
【0009】
本発明の一実施形態の画像解析方法は、対象領域を含む画像が格納された画像記憶部を備えたコンピュータが、前記画像記憶部の画像から、前記対象領域の形状がくびれている部分の前記対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出工程と、検出された前記結合部内の点を始点として前記対象領域を切断する切断経路を抽出し、前記切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した前記切断経路を出力する切断経路生成工程と、前記切断経路で分割された前記対象領域の画像を出力する出力工程、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像解析装置は、対象領域の画像を適切な切断経路で分割できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態における画像解析システム131の構成を示すブロック図である。
【図2】画像解析装置121の動作フローチャートである。
【図3】結合部検出手段103の動作フローチャートである。
【図4】画像記憶部106に格納された画像情報111の一例である。
【図5】結合部検出手段103による重み付けの例を説明する図である。
【図6】検出された結合部の例である。
【図7】結合部検出手段103による曲率半径の算出例を説明する図である。
【図8】生成過程にある切断経路(部分経路)の例を示す図である。
【図9】部分経路の近傍領域の例を示す図である。
【図10】出力手段105が出力する切断経路で分割された画像の例を示す図である。
【図11】第2の実施形態における画像解析システム131の構成を示すブロック図である。
【図12】画像解析装置121の基本的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0013】
本実施形態にかかる画像解析装置121は、重なっている複数の細胞や細胞核の画像から個々の細胞核等の境界線を抽出して、当該画像を細胞核等の単位に分割することを目的とする。画像解析装置121は、複数の種子、分子、微生物等の粒状物が重なって撮影された画像から個々の種子等の境界線を抽出して、当該画像を割することも可能である。
【0014】
以下の説明に於いて、画像解析装置121が解析する画像は、DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)等によって細胞核が染色されたグレースケール画像であるとする。染色された細胞核の画像であれば、それ以外の染色手法で染色した細胞核の画像、あるいは他の撮影方法で撮影した画像であっても構わない。また、入力画像が細胞核ではなく細胞のものであっても構わない。
【0015】
図1は、本実施形態における画像解析システム131の構成を示すブロック図である。また、図2は、画像解析装置121の動作フローチャートである。
【0016】
図1によれば、画像解析システム131は、例えば、ネットワーク124を介して相互に接続された画像解析装置121と端末123を包含する。両者は、ネットワーク124を介さず直接接続されていても良い。また、両者は1体1の接続関係になくても良い。
【0017】
画像解析装置121は、画像入力手段101と、領域抽出手段102と、結合部検出手段103と、切断経路生成手段104と、出力手段105、画像記憶部106を備えている。
【0018】
画像入力手段101、領域抽出手段102、結合部検出手段103、切断経路生成手段104および出力手段105は、論理回路装置としてハードウェアで実現されていても良い。画像入力手段101、領域抽出手段102、結合部検出手段103、切断経路生成手段104または出力手段105は、コンピュータ122である画像解析装置121のプロセッサが、メモリ上の画像解析プログラム107を実行することで実現されても良い。
【0019】
画像記憶部106は、画像解析装置121が読み書き可能なディスク装置等の記憶装置である。画像記憶部106は、画像情報111、領域配列112、境界線配列113、重み配列114を格納する。
【0020】
画像情報111は、画像解析装置121が入力した細胞核等の画像の画像データである。領域配列112、境界線配列113、重み配列114は、画像データの各画素に対応する配列要素を包含する配列データである。領域配列112、境界線配列113、重み配列114は、例えば、座標(x、y)(x、yは自然数)の画素に対して、添え字を(x、y)とする配列要素を有する。
【0021】
以下、図1を参照しながら、図2に示すフローチャートに従って画像解析装置121の動作を説明する。
【0022】
画像入力手段101は、端末123等から画像データを読み込んで画像記憶部106に画像情報111として格納する(ステップA1)。この画像データは、例えば、DAPI染色法等を用いて細胞核が明瞭に染色されたグレースケール画像である。読み込む画像データはRGBカラー画像であってもよい。RGBカラー画像の場合、例えば、画像入力手段101は、画像データをR、G、Bの各チャネルに分解し、細胞核が画像化されているチャネルをグレースケール画像として画像記憶部106に格納する。
【0023】
端末123は、例えば、光源、励起フィルタ、バリアフィルタ、CCDカメラ、対眼レンズ、対物レンズ、ダイクロックミラー等を包含する装置である。
【0024】
図4は、画像記憶部106に格納された画像情報111の一例である。本画像情報111は複数の細胞核等の画像領域(対象領域)を包含している。以下に示すように、本発明の画像解析装置121は、このように対象領域の形状が非円形で大きさも多様性があり、かつ互いに密着したような場合であっても、個々の細胞核等の輪郭抽出が可能である。
【0025】
領域抽出手段102は、画像において高輝度値を持った領域で表示されている細胞核等の領域である対象領域を抽出して領域配列112に格納する(ステップA2)。領域抽出手段102は、対象領域を抽出する為に、例えば以下の方法を用いることができる。
【0026】
領域抽出手段102は、画像情報111の核画素に対して、輝度の値に基づいてクラスタリングを行い、各画素を輝度の高い領域と輝度の低い領域に分離する。領域抽出手段102は、例えば、輝度の高い領域に分類された画素は細胞核内部に属する領域と見なす。領域抽出手段102は、クラスタリングの手法として、例えば、k-means法や、Expectation-Maximization(EM)アルゴリズム等を用いる。このような手法は公知であり、例えば特開2003−303344に詳細な方法が記載されている。
【0027】
領域抽出手段102は、抽出した領域を保持する為に、例えば、画像の幅(Wと記す)と高さ(Hと記す)と同じ大きさの2次元配列である領域配列112に細胞内領域を1、細胞外領域を0としてラベル付け(値を格納)する。あるいは、同手段は、W×Hの大きさを持つ1次元配列に、画像上の座標が(x、y)で与えられる点が細胞内領域に属するならば1を、細胞外領域に属するするならば0を、1次元配列のi = y×w + x 番目の要素にラベル付けすればよい。ラベルの値は、0や1に限定される必要はなく、細胞内領域と細胞外領域が区別できるならば何でもよい。
画像情報111と領域配列112は一体に構成しても良い。即ち、画像情報111の画素情報が、細胞内領域と細胞外領域の区別情報も併せて有する構成としても良い。この点は、境界線配列113、重み配列114についても同様である。
なお、入力した画像情報111に於いて、細胞内領域と細胞外領域の区別が明確である場合は、領域抽出手段102及び領域配列112は不要である。
【0028】
結合部検出手段103は、領域配列112等を参照して、細胞核等同士が結合している結合部を検出する(ステップA3)。
【0029】
図3は、結合部検出手段103の動作フローチャートである。図3に示すように、結合部検出手段103は、画像記憶部106から領域配列112を読み込んで(ステップB1)、細胞核等の領域(対象領域)の境界線を抽出して境界線配列113に格納する(ステップB2)。
【0030】
結合部検出手段103は、例えば領域配列112から細胞核領域内に属する点p特定して、その8近傍(左右、上下、右上、左上、左下、右下)の各点が細胞核領域内の点であるか、あるいは細胞核領域外の点であるかを調べる。同手段は、点pの近傍に1個以上の細胞核領域外に属する点があれば、点pを境界線上にあると判断して抽出する。同手段は、細胞核領域内部にある点すべてについて上述の処理を行い、細胞核領域の境界線を得る。
【0031】
同手段は、得られた境界線の情報を画像記憶部106に境界線配列113として格納する。同手段は、例えば、境界線に属する画素に対応する、境界線配列113の配列要素に1を、境界線上でない画素に対応する配列要素に0を格納する。格納する値は、0や1に限定される必要はなく、境界線上か否かが区別できるならば何でもよい。以降、画像解析装置121は、境界線配列113を参照して境界線を認識する。
【0032】
次に、結合部検出手段103は、得られた境界線に属する各点で、長さdの外向き法線を算出し(ステップB3)、境界線に属する点pから、法線方向に距離dだけ離れた点qを中心として、その点の近傍領域に重みを付与する(ステップB4)。dの値は、例えば、画像解析装置121のシステムパラメータ値である。
【0033】
結合部検出手段103は例えば以下のように重みを付与する。同手段は、重み配列114の全配列要素の値を0で初期化し、次に点qの近傍領域、例えば点qを中心とした半径rの円内に含まれる各点に対して、一様に重み定数を加算する。同手段は、これを境界線に属する点について距離rの間隔で行う。重み定数の値は、例えば1.0等を用いればよいが、これに限定するものではなくその他の正の数を用いてもよい。また、距離rは、例えば標的とする結合部分の曲率半径程度の大きさにするとよい。
【0034】
結合部検出手段103は、境界線から法線方向にdだけ離れた細胞核領域外の点qを中心として、qからの距離の関数を用いて重みを付与してもよい。距離の関数は、例えば以下のGauss関数である。


【0035】
ここで、rは重みを付与する点と点qとの距離、σは重みの広がり(距離に応じた重みの変化量)を制御するパラメータである。重みを、Gauss関数を用いて付与することによって、重みの大きな点が明確に得られるという利点がある。ここでσの値は、例えばr/3の値であるが、その他の値でも良い。
【0036】
また、距離の関数は、例えば以下のコーシー分布であっても良い。


【0037】
ここで、rは重みを付与する点と点qとの距離、σは重みの広がりを制御するパラメータ、πは円周率である。σの値は、例えばr/2の値であればよいが、その他の値でも良い。
【0038】
細胞核同士が結合している部位の近傍においては、境界線が内側にへこんでいる場合が多い。このような方法で境界線近傍に重みを付与することによって、結合している部位を同定することが可能となる。結合している部位の大きさは細胞核自体の大きさにはあまり影響されないため、結合部検出手段103は、細胞核の大きさの変動が大きい場合においても、結合している部位を安定して検出することが可能である。
【0039】
図5は、結合部検出手段103による重み付けの例を説明する図である。図5は、細胞核内領域501、境界線例502、法線の始点503(上述の点p)を示す。図5は更に、法線方向に距離dだけ離れた細胞核外点504(上述の点q)、細胞核外点504から距離r以内にある点から成る重みを付与する領域505(点qの近傍領域)、法線ベクトルの先端が重なり合って、重みが大きくなる領域506の例を示す。
【0040】
次に、結合部検出手段103は、重み配列114の各配列要素の値を参照しながら、所定の重み閾値以上の重みを持つ点rを抽出する(ステップB5)。同手段は、重み閾値以上の重みを持つ点rが1個以上あるかどうかを調べ(ステップB6)、1個もない場合(ステップB6でN)は結合部の数0を切断経路生成手段104に出力して(ステップB9)終了する。
【0041】
重み閾値以上の重みを持つ点rが1個以上ある場合(ステップB6でY)、点rから距離L以内に存在する境界線の区間(結合部)を抽出する(ステップB7)。Lの値は、例えば上述した距離dよりも大きな1.5dまたは2dの値とするが、その他のdより大きな値でもよい。
【0042】
次に結合部検出手段103は、抽出された結合部が所与の条件を満たしているどうかを調べ、条件を満たす境界線の区間が1個もない場合(ステップB8でN)は、結合部の数0を切断経路生成手段104に出力して(ステップB9)終了する。条件を満たす結合部が1個以上あるならば、結合部検出手段103は、結合部を境界線配列113に記録して、その数を切断経路生成手段104に出力して(ステップB10)終了する。
【0043】
ここで用いる結合部抽出の条件は、例えば境界線の区間の長さがL以上であることであるが、それ以外の閾値を用いても良い。また、結合部検出手段103は、結合部に属する画素に対応する境界線配列113の配列要素に、結合部であることを示す値(例えば2)を格納(ラベル付け)することで、結合部を境界線配列113に記録する。
【0044】
図6は検出された結合部の例である。図6は、検出された結合部601と、結合部の検出領域602(点rの近傍領域)を示す。同図に於いて、結合部の検出領域602は、重みの最も強い点rを中心とする半径2dの円である。図6から分かるように、細胞核同士が結合した部分は、法線尖端が重なり合って重みの値が大きくなる。したがって、結合部検出手段103は、重みの大きい点の近傍を調べることにより、細胞核同士が結合した部分を検出することができる。
【0045】
結合部検出手段103は、境界線近傍の外部に重みを付与する方法に代えて、結合部を抽出する基準として、例えば境界線の区間の曲率半径Rを用いても良い。曲率半径Rは下記式によって算出できる。


【0046】
ここでΔθは、曲率半径を求めようとする境界線に属する点から、両側にΔs/2ずつ離れた2点の法線ベクトルの角度の差異(両法線ベクトルがなす角)である。Δsの値は、上述した法線ベクトルの長さdの2倍である2d程度であるが、その他の値を用いても良い。また、結合部を抽出するための条件は、曲率半径の大きさが標的とする細胞核同士が結合した部分の曲率半径値の近傍(所定範囲内)であることである。ここで、標的とする細胞核同士が結合した部分の曲率半径値や範囲の幅は、システムパラメータとして与えられる。
【0047】
図7は結合部検出手段103による曲率半径の算出例を説明する図である。図7は、曲率半径の算出点701、同点から両側にΔs/2離れた近傍点702を示す。この場合、結合部検出手段103は、所与の大きさの曲率半径を持つ境界線の区間をそのまま結合部として境界線配列113に記録する。
【0048】
切断経路生成手段104は、結合部検出手段103から結合部の個数を受け取り、当該個数が1以上であれば(ステップA4でY)、細胞同士が結合している部分の切断経路の始点を設定する(ステップA5)。切断経路生成手段104は、例えば、結合部の中間点を切断経路の始点とする。
【0049】
次に切断経路生成手段104は、ステップA5で設定した切断経路の始点から、切断経路を生成しながら延長する(ステップA6)。同部は、切断経路の延長を例えば次にように行う。まず同手段は、ステップA5で設定した各始点から、N個の方向に長さsの部分経路を生成し、生成した部分経路の尖端が、他の結合部の始点から出発した部分経路と交差して閉じた経路(切断経路)が構成されているか調べる(ステップA7)。同手段は、各始点から出発した部分経路が閉じているならば、切断経路を境界線配列113に記録する(ステップA8)。切断経路生成手段104は、切断経路に属する画素に対応する境界線配列113の配列要素に、切断経路であることを示す値(例えば3)を格納することで、切断経路を境界線配列113に記録する。
【0050】
図8は、生成過程にある切断経路(部分経路)の例を示す図である。図8は、異なる2つの切断経路の始点801から延長されている2つの部分経路802を示している。
【0051】
切断経路生成手段104は、部分経路の公差を判断するために部分経路に近傍領域(経路近傍領域)を設けても良い。切断経路生成手段104は、各部分経路に属する画素の近傍の画素に対応する境界線配列113の配列要素に、部分経路の始点ごとに異なる数値や記号を格納することによって経路近傍を設ける。切断経路生成手段104は、異なる部分経路の経路近傍領域が重なる場合に、当該2つの部分経路の公差を検出する。
【0052】
経路近傍領域を設けることにより、切断経路生成手段104は、切断経路の生成途中である部分経路が他の部分経路の近傍に到達したことを検出できるようになり、無用な経路探索を行わずに済む。
【0053】
図9は、部分経路の近傍領域(経路近傍領域)の例を示す図である。図9は、ある結合部に属する点を始点として生成された第1の部分経路の経路近傍領域901と、他の結合部に属する点を始点として生成された第2の部分経路の経路近傍領域902を示す。このように、始点の異なる部分経路の経路近傍領域に重複部分が出来た場合に、切断経路生成手段104は2つの部分経路を接合して切断経路とする。
【0054】
切断経路生成手段104は、生成途中の部分経路を評価(後述)して、その評価値の高い部分経路だけを選択して切断経路の生成を続行してもよい。このようにして、部分経路を間引きすることにより、切断経路生成手段104は効率的な切断経路の生成が可能となる。
【0055】
切断経路生成手段104は、生成された複数の切断経路を評価(後述)して、評価値に基づいて適切な切断経路を選択する(ステップA9)。切断経路生成手段104は、選択しなかった切断経路を境界線配列113から削除する。削除は、例えば選択しなかった切断経路に属する画素に対応する配列要素の値を初期値に戻すことにより行う。
【0056】
切断経路生成手段104は、与えられた切断経路または部分経路に対して、評価値を算出する。切断経路生成手段104は、例えば切断経路等に属する画素の輝度値を用いることができる。


【0057】
ここで、Ijは切断経路等に属するj番目の点における画素の輝度値である。細胞核同士が密着している部分は一般に輝度が小さな値となっている。したがって、切断経路等に属する画素の輝度値の和が小さければ、当該切断経路等は、正しい切断経路等である可能性が高い。そこで、切断経路生成手段104は、上記E1の小さな切断経路等に対して、高い評価値を与える。
【0058】
また、切断経路生成手段104は、切断経路の滑らかさに基づいて評価値を算出することも可能である。経路の滑らかさを評価する為に、切断経路生成手段104は例えば次のような関数を用いることが出来る。


【0059】
ここで、v、aは、それぞれ切断経路等のj番目の点における1次微分、2次微分であり、α、βはそのパラメータである。α、βは、例えば画像解析装置121のシステムパラメータとして与えられる。この場合、切断経路生成手段104は、上記E2の小さな切断経路等に対してより高い評価値を与える。これによって、過度に折れ曲がった切断経路等は評価値が低くなり、切断経路生成手段104は滑らかな切断経路等を選択するようになる。
【0060】
切断経路生成手段104は、上記E1とE2の組み合わせから評価値を算出することもできる。


【0061】
ここでc1、c2は結合パラメータであり、画像解析装置121のシステムパラメータ等として与えられる。切断経路生成手段104は、このE3を小さくするような切断経路等に対して高い評価値を与える。これによって切断経路生成手段104は、正確に細胞同士を分離し、より滑らかな切断経路を得ることが出来るようになる。
【0062】
最後に出力手段105は、境界線配列113に記録されている切断経路で切断された画像情報111を端末123に出力する(ステップA10)。出力手段105は、例えば、切断経路に属する画素の色彩を変えて画像情報111を出力する。
【0063】
図10は、出力手段105が出力する切断経路で分割された画像の例を示す図である。図10は、細胞核の結合した部分に適切な切断経路が得られ、個々の細胞核の形状や大きさの定量化が可能な細胞核領域の分割がなされていることを示している。
【0064】
本実施形態の画像解析装置121は、細胞核等の重なり合った画像を適切な細胞核等単位に分離が可能である。その理由は、結合部検出手段103が、例えば、細胞の大きさによる変化をあまり受けない細胞間結合部のへこみの大きさや曲率に基づいて、細胞間結合部を検出するからである。更に、切断経路生成手段104が、分離する際の切断経路の候補を評価して、評価値に基づいて適切な切断経路を選択するからである。
【0065】
さらに、実施形態の画像解析装置121は、細胞核等の画像の安定的な細胞核等の分離が可能である。その理由は、生成中の切断経路に経路近傍領域を設け、経路同士が正しく結合されることを容易にするからである。
【0066】
図11は、第2の実施形態における画像解析システム131の構成を示すブロック図である。本実施形態では、画像解析装置121は、画像入力手段101と領域抽出手段102を備えていない。端末123が画像入力手段101と領域抽出手段102を備える。
【0067】
端末123の送信手段109は、入力した画像情報と当該画像情報から作成した領域配列を画像解析装置121に送信する。画像解析装置121の受信手段108は、端末123から送信された画像情報と領域配列を画像記憶部106に格納する。他の点に於いて、本実施形態の画像解析システム131は、第1の実施形態と同じである。
【0068】
本実施形態の画像解析システム131は、画像解析装置121と端末123との間で適切な負荷分散をはかることが出来る。その理由は、端末123の領域抽出手段102が領域抽出処理を実施するからである。
【0069】
図12は、画像解析装置121の基本的構成を示す図である。画像解析装置121は、画像情報111が格納された画像記憶部106と、結合部検出手段103と、切断経路生成手段104と、出力手段105を備える。
【符号の説明】
【0070】
101 画像入力手段
102 領域抽出手段
103 結合部検出手段
104 切断経路生成手段
105 出力手段
106 画像記憶部
107 画像解析プログラム
108 受信手段
109 送信手段
111 画像情報
112 領域配列
113 境界線配列
114 重み配列
121 画像解析装置
122 コンピュータ
123 端末
124 ネットワーク
131 画像解析システム
501 細胞核内領域
502 境界線例
503 法線の始点
504 細胞核外点
505 重みを付与する領域
506 重みが大きくなる領域
601 検出された結合部
602 結合部の検出領域
701 曲率半径の算出点
702 Δs/2離れた近傍点
801 切断経路の始点
802 部分経路
901 第1の部分経路の経路近傍領域
902 第2の部分経路の経路近傍領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域を含む画像が格納された画像記憶部と、
前記画像記憶部の画像から、前記対象領域の形状がくびれている部分の前記対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出手段と、
検出された前記結合部内の点を始点として前記対象領域を切断する切断経路を抽出し、前記切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した前記切断経路を出力する切断経路生成手段と、
前記切断経路で分割された前記対象領域の画像を出力する出力手段、を備えた画像解析装置。
【請求項2】
前記境界線に属する点pを起点とする外向き法線上で、点pからの距離が所定距離である点qの位置を算出し、点qの近傍領域の各座標に、座標に依存しない一定重みまたは付与される座標と前記点qとの距離に依存する重みを付与し、複数の点pに基づいて付与された各座標の重みの合計値が所定の重み閾値以上の点rの近傍に存在する前記境界線の区間を前記結合部として抽出する前記結合部検出手段を備える、請求項1の画像解析装置。
【請求項3】
曲率半径が所定値範囲内の前記境界線の区間を前記結合部として抽出する前記結合部検出手段を備える、請求項1または2の画像解析装置。
【請求項4】
複数の始点から所定数方向に所定距離ずつ部分経路を延長し、2つの部分経路の近傍領域が重複したときに前記2つの部分経路の交差を検出して、交差した前記2つの部分経路を接合して前記切断経路を抽出する前記切断経路生成手段を備えた、請求項1乃至3の何れかの画像解析装置。
【請求項5】
部分経路の延長時に、前記部分経路上の前記画像の画素の輝度に基づいて前記部分経路の評価値を算出し、前記評価値が閾値より低い場合、当該部分経路の延長を中止する前記切断経路生成手段を備えた、請求項1乃至4の何れかの画像解析装置。
【請求項6】
部分経路の延長時に、前記部分経路の滑らかさに基づいて前記部分経路の評価値を算出し、前記評価値が閾値より低い場合、当該部分経路の延長を中止する前記切断経路生成手段を備えた、請求項1乃至5の何れかの画像解析装置。
【請求項7】
前記画像を入力する画像入力手段と、
入力された前記画像から前記対象領域を抽出して、前記画像と前記領域の情報を前記画像記憶部に格納する領域抽出手段、を備える請求項1乃至6の何れかの画像解析装置。
【請求項8】
前記画像と前記領域の情報を受信して前記画像記憶部に格納する受信手段を備える、請求項1乃至7の何れかの画像解析装置と、
前記画像を入力する画像入力手段と、入力された前記画像から前記対象領域を抽出して、前記画像と前記領域の情報を前記画像解析装置に送信する送信手段を備える画像入力装置を包含する画像解析システム。
【請求項9】
対象領域を含む画像が格納された画像記憶部を備えたコンピュータに、
前記画像記憶部の画像から、前記対象領域の形状がくびれている部分の前記対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出処理と、
検出された前記結合部内の点を始点として前記対象領域を切断する切断経路を抽出し、前記切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した前記切断経路を出力する切断経路生成処理と、
前記切断経路で分割された前記対象領域の画像を出力する出力処理、を実行させる画像解析プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータに、
前記境界線に属する点pを起点とする外向き法線上で、点pからの距離が所定距離である点qの位置を算出し、点qの近傍領域の各座標に、座標に依存しない一定重みまたは付与される座標と前記点qとの距離に依存する重みを付与し、複数の点pに基づいて付与された各座標の重みの合計値が所定の重み閾値以上の点rの近傍に存在する前記境界線の区間を前記結合部として抽出する前記結合部検出処理を実行させる、請求項9の画像解析プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータに、
曲率半径が所定値範囲内の前記境界線の区間を前記結合部として抽出する前記結合部検出処理を実行させる、請求項9または10の画像解析プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、
複数の始点から所定数方向に所定距離ずつ部分経路を延長し、2つの部分経路の近傍領域が重複したときに前記2つの部分経路の交差を検出して、交差した前記2つの部分経路を接合して前記切断経路を抽出する前記切断経路生成処理を実行させる、請求項9乃至11の何れかの画像解析プログラム。
【請求項13】
前記コンピュータに、
部分経路の延長時に、前記部分経路上の前記画像の画素の輝度に基づいて前記部分経路の評価値を算出し、前記評価値が閾値より低い場合、当該部分経路の延長を中止する前記切断経路生成処理を実行させる、請求項9乃至12の何れかの画像解析プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータに、
部分経路の延長時に、前記部分経路の滑らかさに基づいて前記部分経路の評価値を算出し、前記評価値が閾値より低い場合、当該部分経路の延長を中止する前記切断経路生成処理を実行させる、請求項9乃至13の何れかの画像解析プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータに、
前記画像を入力する画像入力処理と、
入力された前記画像から前記対象領域を抽出して、前記画像と前記領域の情報を前記画像記憶部に格納する領域抽出処理、を実行させる請求項9乃至14の何れかの画像解析プログラム。
【請求項16】
対象領域を含む画像が格納された画像記憶部を備えたコンピュータが、
前記画像記憶部の画像から、前記対象領域の形状がくびれている部分の前記対象領域の境界線の区間(結合部)を抽出する結合部検出工程と、
検出された前記結合部内の点を始点として前記対象領域を切断する切断経路を抽出し、前記切断経路の評価値を算出し、当該評価値に基づいて選択した前記切断経路を出力する切断経路生成工程と、
前記切断経路で分割された前記対象領域の画像を出力する出力工程、を有する画像解析方法。
【請求項17】
前記コンピュータが、
前記境界線に属する点pを起点とする外向き法線上で、点pからの距離が所定距離である点qの位置を算出し、点qの近傍領域の各座標に、座標に依存しない一定重みまたは付与される座標と前記点qとの距離に依存する重みを付与し、複数の点pに基づいて付与された各座標の重みの合計値が所定の重み閾値以上の点rの近傍に存在する前記境界線の区間を前記結合部として抽出する前記結合部検出工程を有する、請求項9の画像解析方法。
【請求項18】
前記コンピュータが、
曲率半径が所定値範囲内の前記境界線の区間を前記結合部として抽出する前記結合部検出工程を有する、請求項9または10の画像解析方法。
【請求項19】
前記コンピュータが、
複数の始点から所定数方向に所定距離ずつ部分経路を延長し、2つの部分経路の近傍領域が重複したときに前記2つの部分経路の交差を検出して、交差した前記2つの部分経路を接合して前記切断経路を抽出する前記切断経路生成工程を有する、請求項9乃至11の何れかの画像解析方法。
【請求項20】
前記コンピュータが、
部分経路の延長時に、前記部分経路上の前記画像の画素の輝度に基づいて前記部分経路の評価値を算出し、前記評価値が閾値より低い場合、当該部分経路の延長を中止する前記切断経路生成工程を有する、請求項9乃至12の何れかの画像解析方法。
【請求項21】
前記コンピュータが、
部分経路の延長時に、前記部分経路の滑らかさに基づいて前記部分経路の評価値を算出し、前記評価値が閾値より低い場合、当該部分経路の延長を中止する前記切断経路生成工程を有する、請求項9乃至13の何れかの画像解析方法。
【請求項22】
前記コンピュータが、 前記画像を入力する画像入力工程と、
入力された前記画像から前記対象領域を抽出して、前記画像と前記領域の情報を前記画像記憶部に格納する領域抽出工程、を有する請求項9乃至14の何れかの画像解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−224875(P2010−224875A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71522(P2009−71522)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】