説明

画像解析

本発明の第1の態様は、遺伝毒性学スクリーニングの装置(100)に関する。装置(100)は、画像を分析するプロセッサ(114)を含む。プロセッサ(114)は、画像中のターゲット細胞を識別する識別モジュール(115)と、例えば小核など、1以上の表現型に従って識別された細胞を分類する動的に変更可能なクラシファイヤモジュール(116)とを提供するように構成される。プロセッサ(114)は、分類された細胞にそれぞれの信頼測定値を割り当てるスコアリングモジュール(117)を提供するようにも構成される。本発明の様々な態様及び実施形態を使用して、例えば、自動ハイスループットスクリーニング(HTS)薬剤分析を実行する時の改善された信頼性及び正確さを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には画像解析に関する。具体的には、本発明は、様々な画像でみられることのある表現型(例えば小核など)の存在を識別するための改善された自動画像解析装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光プローブ技術、落射蛍光顕微鏡の自動化及び画像解析における最近の進歩が相俟って、ハイコンテントスクリーニング(HCS)が複合毒性の査定における有用なツールになることが可能になった。例えば、インビトロでの小核(MN)の検出を、生体モニターのための遺伝子毒性の試験、変異誘発性試験として、及びDNA修復の熟練を査定するのに使用することができる[参考文献1]。
【0003】
現在、薬剤遺伝子毒性単位は、規制上の要件によって支配され、インビトロ小核試験は、高いコストが既に発生している後期開発薬剤に重大な影響を及ぼす可能性がある。例えば、FDA/ICHは、現在、i)細菌における遺伝子突然変異の試験(Amesなど)、ii)哺乳類の細胞を用いる染色体損傷の細胞遺伝学的評価を伴うインビトロ試験(通常は、MN又は染色体異常アッセイ、MNを、マウスのリンパ腫アッセイの前兆として使用することができる)又はインビトロマウスリンパ腫アッセイ、及びiii)囓歯目造血細胞を使用する染色体損傷に関するインビボ試験(インビボ骨髄マウスMN)を必要とする。したがって、インビトロMNは、さらなる下流毒性試験及び臨床試験への参入、リード化合物のモディフィケーション又は薬物の撤退に関する判断に影響する可能性がある。
【0004】
規制認可の対象になるグループは、ガイドラインを厳守し、遵守と検出感度及び特異性における高い信頼とを保証するために複数の遺伝子毒性アッセイを統合する。化合物は、疑わしい可能性がある場合であっても遺伝子毒性の証拠があり、相互作用機構の知識がない場合には、進められない。MNスコアリングの正確さ及び精度は、慎重を要する特定の解決策を提供するために主要なものである。
【0005】
様々な従来のシステム[参考文献2、3]は、スクリーニングプロセスを用いてそのようなグループの助けとなることができるが、より最新の従来のシステム及び方法[参考文献4]は、様々な画像特徴が例えば小核であるか否かを分類する助けとするために専門家ユーザの入力に非常に依存する可能性がある。
【0006】
生体試料を分類する他の自動システムが、従来技術で知られている。Lee他[参考文献5]は、コンピュータと遊離細胞を識別するための高速処理フィールドプロセッサとを含む自動顕微鏡システムを記述している。Long他[参考文献6]は、生細胞を自動的に認識するアルゴリズムに関係する。この文書は、3以上のクラスのうちの1つに属する物体を識別し、局所化する方法であって、それぞれが物体のうちの1つにマッピングされるベクトルを導出することを含み、ベクトルのそれぞれがN次元空間からの要素である、方法を開示する。この方法は、ECOC技術を用いて生成されたトレーニングセットを使用して、CISS技術を用いて1組の2進クラシファイヤをトレーニングすることを含む。Rutenberg[参考文献7]は、子宮頸部スミア分析の速度及び正確さを高める自動細胞学的試料分類のシステム及び方法を記述している。しかし、上記のシステム及び方法のすべて[参考文献5、6、及び7]は、分類が予め規定された判断基準に基づくという意味で「予めトレーニング」され、したがって、これらのシステム及び方法は、使用と共に改善されることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/088574号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、従来のデバイス及び技術に関連する上述の欠点を念頭において考案された。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様によれば、遺伝毒性学スクリーニングの装置が提供される。この装置は、画像中のターゲット細胞を識別する識別モジュールと、1以上の表現型に従って識別された細胞を分類するクラシファイヤモジュールと、分類された細胞にそれぞれの信頼測定値を割り当てるスコアリングモジュールとを提供するように構成されたプロセッサを含む。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、1以上の表現型に従って画像中の細胞を分類する方法が提供される。この方法は、画像中の候補ターゲット細胞を識別し、1以上の表現型に従って識別されたターゲット細胞を分類し、分類された細胞をスコアリングすることを含んでなる。
【0011】
本発明のある種の態様及び実施形態は、本発明の前述の第1及び第2の態様に従う装置又は方法を提供するのに必要な様々な機能を実施するようにデータ処理装置を構成する様々なコンピュータプログラム製品をも提供する。
【0012】
下でさらに詳細に説明するように、本発明の様々な態様及び実施形態は、ある画像で検出される偽陰性識別の個数を実質的に減らすことによって、例えばHCSでの、自動特徴識別の正確さを改善することができる。例えば、潜在的に有毒な薬剤化合物を示す小核を検出するために画像をスクリーニングする時に、そのような偽陰性読みは、潜在的に有用な化合物が誤りによってさらなる試験から除外されることを意味する可能性がある。したがって、偽陰性識別の個数の削減は、非常に望ましい。
【0013】
本発明の様々な態様及び実施形態を、これから添付図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による遺伝毒性学的スクリーニングの装置を示す図である。
【図2】本発明の様々な態様及び実施形態による、1以上の表現型に従って画像中の細胞を分類する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明の実施形態による遺伝毒性学的スクリーニングの装置100を示す。遺伝毒性学的スクリーニングは、例えば、処理された細胞の画像内に存在する可能性がある、小核などの1以上の表現型の存在又は不在を識別することによって提供することができる。装置100を、例えば、自動ハイコンテントスクリーニング(HCS)及び/又はハイスループットスクリーニング(HTS)に使用することもできる。小核は、染色質を含み、細胞の主核とは別々で細胞の主核に付加的な、遅滞(染色体分離中のより遅い運動性)染色体断片又は遅滞染色体全体によって有糸分裂(又は減数分裂)の終期中に作られる、小さい核である。
【0016】
装置100は、明瞭さのために概略的に図示されているが、光120aを作るための光源102を含む。光120aは、集光レンズ104によってテストプレート108に焦点を合わせられる。テストプレート108は、結像されるウェル又はスポット109のアレイを含むことができる。集光レンズ104は、テストプレート108の焦点面内に光120bの焦点を合わせることができる。テストプレート108を、消費可能な製品として提供することができ、スポット109は、あるタイプの細胞(例えば、哺乳類の細胞)と相互作用することのできる様々な材料を含むことができる。
【0017】
様々な実施形態で、テストプレート108は、装置100内でテストプレート108を位置合せする助けとするために設けられる1以上の基準マーカー(図示せず)を含むことができる。例えば、1以上の有色色素を、スポット109内に提供することができる。そのような有色色素を、装置100内のテストプレート108の相対位置決めに関するデータを導出するために様々なイメージングシステムによって識別することができる。例えば、装置100は、英国バッキンガムシア州Little ChalfontのGE Healthcare Life Sciences社が市販する、テストプレート108を結像するために4つの色チャネルを使用することができるGE In−Cell Analyzer 1000(登録商標)を含むことができる。したがって、1つの色チャネルは、装置100内のテストプレート108の位置決めに関するデータを入手するために、様々なスポット109内に提供された着色された基準マーカーを結像することに専用とすることができる。
【0018】
装置100は、検出器システム112及び変換機構(図示せず)をも含む。変換機構は、テストプレート108に対して相対的に光120bの焦点を移動する(例えば、xy平面内でテストプレート108を移動することによって)ように構成される。これは、個々のスポット109のそれぞれから複数の画像を獲得することを可能にする。さらに、変換機構を、例えばスポット109を焦点に持ってくるために、図1に示されたz方向でテストプレート108を移動するように動作可能とすることもできる。
【0019】
ある種の実施形態について、一時に1つのスポットだけが結像される。獲得される画像は、細胞及び亜細胞の形態を解像するのに十分な倍率を有する。現在のGE In−Cell Analyzer 1000(登録商標)を用いると、これは、20倍対物レンズの使用を必要とする場合があり、この対物レンズの視野は、単一のスポットよりわずかに小さい。しかし、本発明の様々な方法は、より低倍率の結像について、例えば4〜6スポット/画像を結像するために4倍対物レンズを使用するGE In−Cell Analyzer 1000(登録商標)上でも働くはずである。
【0020】
開口絞り106が、適宜、光源102と検出器システム112との間に設けられ、そのサイズは、可変とすることができる。例えば、様々な異なるサイズの可動開口を、定位置に回転させることができ、或いは、連続可変絞りタイプのダイアフラムを設けることができる。画像コントラストを、開口絞り106の開口設定を変更することによって制御することができる。
【0021】
開口絞り106を通過する焦点を合わされた光120bは、透過結像モードで標本テストプレート108を通過する。個々のスポット109に隣接する材料に関係する画像情報によって変調された放たれる光120cは、対物レンズ110によって集められ、検出器システム112上に焦点を合わされ120d、そのスポット109のオリジナル画像を形成するのに使用される。
【0022】
本発明の方法の様々な実施形態は、使用される結像モーダリティと独立であり、例えば、本発明の方法の様々な実施形態は、透過ジオメトリ又は反射ジオメトリと共に動作することができる。GE In−Cell Analyzer 1000(登録商標)結像について、エピフロレッセンスモードを使用することができ、基準マーカースポットと細胞からの分析信号との両方が、異なる励起波長及び放出波長で結像される。しかし、原理的に、展開される結像モードが干渉しないならば、展開される結像モードの混合を妨げるものはない。例えば、基準マーキングに非蛍光色素を使用し、反射率又は透過ジオメトリでの吸収によって基準マーカーを検出すると同時に、エピフロレッセンスによって分析信号を検出することが、可能であるはずである。
【0023】
検出器システム112は、テストプレート108から複数の画像を獲得するように動作可能である。例えば、それぞれが異なるスポット109又は異なる時点の同一スポット109を表す複数の画像を入手することができる。したがって、隣接するスポット109の間の差又は同一スポット109内で発生する時間的変化を分析することができる。
【0024】
検出器システム112は、プロセッサ114にも動作可能に結合され、プロセッサ114は、画像を処理するように動作可能である。画像の解析を使用して、遺伝毒性学スクリーニングを提供することができる。もちろん、そのような画像を、装置100自体によって生成することができ、或いは、ストレージから供給され、かつ/又は遠隔位置(図示せず)からプロセッサ114に送信されるものとすることができる。
【0025】
プロセッサ114は、画像中のターゲット細胞を識別する識別モジュール115、1以上の表現型に従って識別された細胞を分類するクラシファイヤモジュール116、及び分類された細胞にそれぞれの信頼測定値を割り当てるスコアリングモジュール117を提供するように構成される。
【0026】
識別モジュール115は、画像で識別された1組のターゲット細胞を提供するために、多数の細胞の画像を含む可能性があるすべての画像から個々の細胞画像をセグメント化する。例えば、パターン認識技術又はしきい値処理技術を使用することができる[参考文献1、8、9]。細胞を、セグメント化し、マルチパラメトリック細胞データを提供することができる。
【0027】
クラシファイヤモジュール116は、個々の識別された細胞の内容を分析する。細胞画像の内容を試験して、1以上の表現型の存在又は不在を判定することができる。この実施形態では、クラシファイヤモジュール116は、初期の所定の分類方式に従って、小核の存在又は不在について細胞画像をチェックする。初期分類方式は、例えば、新しいGE In−Cell 1000(登録商標)装置の一部として提供され、出荷されるトレーニングアルゴリズムの適用に従って判定することができる[参考文献10]。
【0028】
初期分類を、分類判断基準の所定の組を使用して提供することができ、細胞に、例えばグラフィカルクラスタ法又はマルチセル法を用いて注釈を付けることができる。
【0029】
さらに、クラシファイヤモジュール116は、動的に変更可能である。例えば、クラシファイヤモジュール116を、実行時に分析されるしきい値及び/又は表現型など、様々な判断基準を変更するように動作可能とすることができる。そのような動的に適合可能なクラシファイヤモジュール116は、これによって、非常に望ましくない偽陰性の発生を減らすために細胞画像を再分類するために経時的に進化することができる。さらに、クラシファイヤモジュール116は、ある種のユーザ入力、例えば細胞画像の偽陽性分類が行われたとユーザが判定する場合に応答して、その挙動を自動的にさらに適合させることができる。
【0030】
スコアリングモジュール117は、特定の結像された細胞が1以上のターゲット表現型を有することの信頼の度合を示すスコアを生成する。この実施形態では、スコアリングモジュール117は、正準変量解析(CVA)を適用し、それぞれの分類された細胞のそれぞれの信頼測定値を判定するように動作可能である[参考文献11]。しかし、一般に、信頼レーティングをCVAなしで定義することができる。例えば、K−NN法を、未知のパターンを分類する時に使用することができ、この方法は、トレーニングセットから最も近いパターンを探し、投票を配置する。例えば、K=5であり、3つのクラス(A、B、C)がある場合に、5つの近傍の間でA=1、B=2、C=2のスコアを得たパターンについて、分類は、問題がある(例えば、B又はC)。この場合に、距離尺度を適用することができる。しかし、一般に、問題のあるパターンは、パラメータ空間内の対応するクラスタの周辺に位置し、CVAの使用は、これがクラスタ内分離のジオメトリを最適化するのを助けるので有利である。
【0031】
したがって、この実施形態では、CVAを使用して、初期トレーニング及び/又は画像データの任意の注釈に基づいて、パラメータ選択を最適化し、クラスの分離を最大化することができる。CVA分析結果を、各個々の細胞が初期プロセスによって分類された特定のクラスに属することの信頼性を示す信頼レーティングの形で報告することができる。
【0032】
適宜、ユーザに、例えば、記述子のユーザ定義の組に従って簡単には分類されない細胞、あるユーザ定義のしきい値より小さい信頼レーティングを有する細胞、又は小核スコアリングの場合に例えば小核を潜在的に含む細胞などの特定のクラス内のすべての細胞など、「疑わしい」細胞を強調するオプションを与えることができる。
【0033】
システム100は、すべての疑わしい細胞にフラグを立て、ユーザ又は他のプロセッサのいずれかに検証(例えば、再注釈付け)を要求することができる。例えば、そのような細胞の画像が、クラスの視覚的なユーザ説明のためにディスプレイ上に「ポップアップ」することができる。システム100を、例えば生物学的プロトコルの変化があるかスループットの必要が低い場合に、識別された細胞画像の完全な再注釈付けを許可するように動作可能とすることもできる。さらに、検証は、細胞の再分類及び/又は代替クラスの定義をもたらすことができる。
【0034】
後から供給されるトレーニング情報を、分類ルーチンに組み込んで、改善された信頼を有するよりよく情報を与えられた判断を容易にすることができる。そのようなルーチンを、高められた特異性と感度との両方を有する常に改善される判断を提供するアルゴリズム内で実施することができる。したがって、そのようなアルゴリズムは、同一の細胞に1回を超えてフラグを立てる必要が全くないものとすることができ、したがって、全体的な処理速度も、経時的に向上する。
【0035】
様々な態様で、「未知」データにオーバーレイされたトレーニングセットデータの視覚化は、処理の効率の査定並びに事前定義のクラスに対応するトレーニングデータ内のデータセットの周囲の「低いレーティング」のパターンの分布の分析からの様々な薬剤の効果の識別を助けることができる。使用可能な手動スコアリングを伴う未知データの提示の場合に、例えば、一致するマトリックスを、オンザフライで及び/又は手動分類と教師あり学習分類との間の相関を定義する後注釈付け段階として計算することができる。
【0036】
この実施形態のある種の変形形態で、プロセッサ114は、さらに、他の同様のプロセッサとデータを交換するように動作可能であり、スコアリングモジュール117は、それぞれのプロセッサの複数のスコアリングモジュールによって提供される対応する信頼スコアレーティングから、それぞれの分類された細胞のそれぞれのコンセンサス信頼測定値を導出するように動作可能である。
【0037】
ネットワーク化されたプロセッサを使用することによって、例えば、多数の異なる適応学習システムの組み合わされた経験を、自動的に組み合わせて、様々な表現型を識別する際の正確さをさらに改善することができる。そのような経験に、例えば、特定の寄与する機械がどれほど長く動作していたのか、特定の機械がどれほど多くの別々の画像解析を実行したのか、どれほど多くの変更又は再分類が初期トレーニング以降に特定の機械について適用されたのかなどに従って、判定された誘因毎に個々のスコアから組み合わされた総合スコアにおいて重みを付けることができる。
【0038】
したがって、ある種の実施形態で、プロセッサ114は、サーバデバイスとして働き、必ずしも同一のトレーニングデータを用いてトレーニングされていないリモートデバイスに要求及び画像データを送信することができる。次に、プロセッサ114は、その局所化された画像データの分類に関するコンセンサススコアを判定し、これによって、注目の様々な表現型を分類する時の改善された信頼スコアリング及び正確さを提供するように動作可能である。そのような分析を、特定のユーザ入力又は命令の必要なしに、自動的に実行することができる。
【0039】
集計されたスコアを、異なるプロセッサによる1以上の同一画像の分析の加重平均として生成することができる。データを、プロセッサの間で、例えば、特定の詳細な情報がシステムのリモートユーザ又は他のネットワークユーザからアクセス可能になることを防ぐために仮想プライベートネットワーク(VPN)上で又はセキュアソケットレイヤ(SSL)チャネルを使用してインターネットを介して匿名で、送信することができる。
【0040】
ある種の変形形態では、追加の処理が、相対的に低優先順位のバックグラウンドタスクとして分散プロセッサによってリモートで実行される。これは、ローカルに動作する個々のプロセッサに不当に重荷を与えることなく、分散処理システムのすべてのユーザが集合経験から利益を得ることを可能にし、すべてのネットワーク化されたプロセッサの処理能力が改善された分類スコアリグを提供することを可能にする。例えば、特定の会社、研究施設、大学などの別個の機械を、グローバルネットワークを形成するために施設内で又は外部でのいずれかでお互いへリンクすることができる。
【0041】
さらに、プロセッサ114を、スポットプレート108に対して相対的に光源102の焦点位置を移動するために並進機構(図示せず)を制御するように構成することができる。プロセッサ114を、例えば、識別モジュール115、クラシファイヤモジュール116、及びスコアリングモジュール117のうちの1以上を実施するために適当にプログラムされた従来のコンピュータシステムの一部として提供することができ、或いは、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、適当に構成されたファームウェアなどによって提供することができる。
【0042】
したがって、本発明の様々な実施形態を使用して、薬剤毒性を示す微小核形成イベントを検出するために細胞をスクリーニングすることができる。改善された分類は、潜在的に有毒な薬剤化合物のスクリーニング及び識別を改善する。そのような改善されたスクリーニングは、自動初期スクリーニングプロセスで検出される偽陰性の数を除去することによって、様々な化合物、例えば人間モデル又は動物モデルに対して試験される必要がある薬剤化合物を試験する必要を減らすことができる。
【0043】
ある種の実施形態では、上で説明した装置100を使用して、図2に関連して下で説明する次の方法を実施することができる。
【0044】
図2に、本発明の様々な態様及び実施形態による、1以上の表現型に従って画像中の細胞を分類する方法200を示す。方法200を、例えば、画像内に示された細胞表現型の自動分類及びスコアリングのために適用することができる。
【0045】
クラスを、最初に定義することができ、トレーニング及び/又は注釈を、クラス定義を洗練するために適用することができる。例えば、クラスタ及び/又はビジュアルマルチセル注釈を使用することができる。したがって、例えばCVA及びプロットを使用して、クラシファイヤを構築して、パラメータ選択及びクラス区別を最適化することができる。
【0046】
方法200は、画像中の候補ターゲット細胞を識別する第1段階202を含む。次に、第2段階204で、方法200は、例えば小核などの1以上の表現型に従って、識別されたターゲット細胞の分類を適用し、その後、次の段階206で、分類された細胞をスコアリングする。
【0047】
ある種の実施形態で、第1段階202は、パターン認識を使用して候補ターゲット細胞を識別し、セグメント化することを必要とする。例えば、細胞を、マルチパラメトリック細胞データを作るためにセグメント化し、分析することができる[参考文献8、10、12、13]。
【0048】
段階204で、様々なパターン認識技術[参考文献9、14]を使用して、分類を実行することができる。例えば、線形及び二次の判別式分析、ニューラルネットワーク、K最近近傍、サポートベクトルクラシファイヤ、ツリーベースの方法などの教師あり技術及び/又はk−平均法、自己編成マップ(self-organised maps)などの教師なし法を使用することができる。
【0049】
ある種の実施形態で、段階204は、複数のプロセッサによって提供される対応する信頼スコアレーティングからそれぞれの分類された細胞のそれぞれのコンセンサス信頼測定値を導出することを含む。したがって、協調分類及び/又はスコアリングを、表現型判定の全体的な正確さをさらに改善するために適用することができる。
【0050】
段階206で、複数の技術を使用してスコアリングを提供することもできる。例えば、分類された細胞のスコアリングを、それぞれの分類された細胞毎に信頼レーティングを定義するために正準変量解析(CVA)を使用することによって行うことができる。CVAは、全体的に、Tofallis[参考文献11]によって説明される。
【0051】
特定の特徴空間内のデータの特定のグループ化(クラスタ化)を考慮して、CVA法は、クラスタ化依存座標変換を適用する[参考文献15]。結果の有効座標は、オリジナルの特徴空間と同一の次元数を有するが、最大のクラスタ間分離を提供する(すなわち、様々なパターンのクラスタ内距離を最小化し、クラスタ間距離を最大化する)。
【0052】
CVAを、記述の選択を最適化し、初期トレーニング/注釈データセットに基づくクラスの分離を最大化するために適用することもできる。その後、信頼レーティングが、画像中の細胞毎に、初期分類プロセスによってその細胞が分類される特定のクラスにその細胞が属することの信頼性を示すために判定される。
【0053】
例えば、分類されたパターンPの1つの単純な信頼レーティング(ConfidenceRating)は、「winner」クラスと他のクラスの中でそれに次に最も近いクラスとの決定関数g(P)の間の差であり、
【0054】
【数1】

ここで、kは、クラスの走行インデックスであり、winnerは、「winner」クラスのインデックスである。
【0055】
図示の実施形態では、方法200は、適宜、例えば周期的に及び/又はイベント駆動の時に、分類されスコアリングされた細胞を再分類する追加段階208を含む。例えば動的に進化する適応学習システムの一部として細胞表現型分類の正確さが経時的に改善することを方法200が可能にするように、重要な変化が初期トレーニングデータセットに対して発生する時に、再分類を提供することができる。そのようなシステムは、例えば、イベント駆動ユーザ入力及び/又は自動入力に応答して自動的に進化することができる。
【0056】
分類されスコアリングされた細胞の再分類は、分類されたターゲット画像区域に方法200によって最初に適用されたスコアリングのユーザ重み付けに応答して学習アルゴリズムトレーニングデータセットを変更することによって、細胞を再分類することを含むことができる。例えば、特定の細胞を、各細胞の信頼値を提供すること、所定のしきい値判断基準を適用することによって再分類を必要とする細胞を選択すること、細胞のアイデンティティを視覚的に適宜検証することによって、選択し、再分類することができる。その後、検証されたすべての細胞を、学習アルゴリズムクラシファイヤに組み込んで、その速度及び正確さを改善することができる。
【0057】
方法200を使用して、変化が様々な画像の間で発生したかどうかを判定することができる。例えば、方法200を使用して、経時的に薬剤によって誘導された影響を検出することができる。これらの影響は、適格とされ得る/定量化可能とすることができ、サイズパラメータの変化、壊死、有糸分裂(細胞分裂)その他などの現象及びプロセスを含むことができる。
【0058】
方法200を、例えば薬剤分析のためのハイスループットスクリーニング(HTS)などでの、自動画像解析に使用することができる。使用される画像は、顕微鏡画像などの細胞データを含むことができる。
【0059】
方法200を、以前に格納された、送信されたなどの画像又は「オンザフライ」で獲得でき処理できる画像に適用することができる。方法200を、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちの1以上を含むプロセッサを使用して実施することができる。例えば、プロセッサは、従来のパーソナルコンピュータ(PC)、ASIC、DSP、その他を使用することができ、かつ/又は、装置は、方法200を実施するためにアップグレードされたGE社のIn−Cell Miner(登録商標)ソフトウェアパッケージを使用するGE In−Cell Analyzer 1000(登録商標)を含むことができる。本明細書で説明するように、追加の機能性を、方法200を実施する様々な実施形態によって提供することもできる。
【0060】
本発明の様々な実施形態で、方法200を、様々なソフトウェアコンポーネントを使用する装置によって実施することができる。そのようなソフトウェアコンポーネントを、例えばインターネットを介して装置に送信される、アップグレードの形で装置に提供することができる。
【0061】
複数のユーザ(例えば、人間及び/又はリモート機械)が例えば分類された細胞をスコアリングすることによってトレーニングデータを提供できるようにするために、複数のユーザが装置に接続することを可能にする、本発明のある種の実施形態を提供することができる。そのような実施形態は、結果の正確さにおける信頼の専門家によって評価された度合を用いて個々の装置がすばやくトレーニングされることを可能にする。さらに、そのような実施形態は、必ずしも、分析される結果を共有することを必要とするのではなく、単に、例えば分類スコアなどの形のトレーニングデータを共有することを必要とし、前者は、しばしば商業的に非常に取扱いに注意を要するが、後者はそうではない可能性がある。このようにして、より正確でより高速の自動スクリーニングを、機密の分析固有研究データを危険にさらさずに提供することができる。さらに、この技術によって、より万能の調和的な分類ができる可能性が高く、この調和的な分類は、例えば、規制試験ガイドラインにもかかわらず、主観的解釈、スコアラ間の差、及び時間的な影響がグループの間及び長い時間期間にわたる結果の系統的な差につながるFDA規制された環境で、特に有益である可能性がある[参考文献16、17]。
【0062】
本発明を、様々な実施形態に関連して説明したが、当業者は、多数の異なる実施形態及び変形形態が可能であることに気付くであろう。そのような変形形態及び実施形態のすべてが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれることが意図されている。
【0063】
参考文献一覧
1. 国際公開第2007/063290号(GE Healthcare UK Limited)
2. 米国特許第3,824,393号(Brain)
3. 米国特許第5,989,835号(Dunlay)
4. Metafer MSearchTM available from MetaSystemsTM, Robert-Bosch-Strasse 6, D-68804, Altlussheim, Germany
5. 米国特許第6,134,354号(Lee et al.)
6. 国際公開第2006/055413号(Long et al.)
7. 国際公開第91/15826号(Rutenberg)
8. GE Healthcare, “Multi Target Analysis Module for IN Cell Analyzer 1000," Product User Manual Revision A, Chapter 6, 2006
9. K. Fukunaga, “Introduction to Statistical Pattern Recognition," Second Edition, Academic Press Inc., 1990, ISBN 0122698517
10. GE Healthcare, “Multi Target Analysis Module for IN Cell Analyzer 1000," Product User Manual Revision A, Chapter 7, 2006
11. C. Tofallis, “Model Building with Multiple Dependent Variables and Constraints," The Statistician, Vol. 48, No. 3, pp. 371-378, 1999
12. 国際公開第2004/088574号(Amersham Biosciences UK Ltd)
13. B. Soltys, Y. Alexandrov, D. Remezov, M. Swiatek, L. Dagenais, S. Murphy and A. Yekta, “Learning Algorithms Applied to Cell Subpopulation Analysis in High Content Screening," http://www6.gelifesciences.com/aptrix/upp00919.nsf/Content/WD:Scientific+Post(285564266-B653)
14. T. Hastie, J. Friedman and R. Tibshirani, “The Elements of Statistical Learning: Data Mining, Inference, and Prediction," Edition 9, Springer, 2007, ISBN 0387952845
15. D. M. Hawkins (Ed), “Topics in Applied Multivariate Analysis," National Research Institute for Mathematical Sciences, National Research Institute for Mathematical Sciences (South Africa), Cambridge University Press, 1982, ISBN 0521243688, p. 205
16. M. Fenech, S. Bonassi, J. Turner, et al, “Intra- and Inter-Laboratory Variation in the Scoring of Micronuclei and Nucleoplasmic Bridges in Binucleated Human Lymphocytes," Results of an International Slide-scoring Exercise by the HUMN project, Mutat. Res. (2003a), 534, 45-64
17. B. Patino-Garcia, J. Hoegel, D. Varga, M. Hoehne, I. Michel, S. Jainta, R. Kreienberg, C. Maier and W. Vogel, “Scoring Variability of Micronuclei in Binucleated Human Lymphocytes in a Case-control Study," Mutagenesis, 21(3):191-7, May 2006
【符号の説明】
【0064】
100 装置
102 光源
104 集光レンズ
106 開口絞り
108 テストプレート
109 スポット
110 対物レンズ
112 検出器システム
114 プロセッサ
115 識別モジュール
116 クラシファイヤモジュール
117 スコアリングモジュール
120a 光
120b 光
120c 光
200 方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動遺伝毒性学スクリーニングの装置(100)であって、プロセッサ(114)を備え、前記プロセッサ(114)が、
画像中のターゲット細胞を識別する識別モジュール(115)と、
1以上の表現型に従って前記識別された細胞を分類する動的に変更可能なクラシファイヤモジュール(116)と、
前記分類された細胞にそれぞれの信頼測定値を割り当てるスコアリングモジュール(117)と
を提供するように構成されている、装置(100)。
【請求項2】
前記1以上の表現型が、それぞれの識別された細胞内に存在する可能性がある小核を含む、請求項1記載の装置(100)。
【請求項3】
スコアリングモジュール(117)が、正準変量解析(CVA)を適用し、それぞれの分類された細胞の前記それぞれの信頼測定値を判定するように動作可能である、請求項1又は請求項2記載の装置(100)。
【請求項4】
前記プロセッサ(114)が、他の同様のプロセッサとデータを交換するようにさらに動作可能であり、前記スコアリングモジュール(117)が、それぞれのプロセッサの複数のスコアリングモジュールによって提供される対応する信頼スコアレーティングからそれぞれの分類された細胞のそれぞれのコンセンサス信頼測定値を導出するように動作可能である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項5】
前記クラシファイヤモジュール(116)が、前記分類されスコアリングされた細胞を動的に再分類するようにさらに動作可能である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項6】
前記クラシファイヤモジュール(116)が、前記分類されたターゲット細胞に適用される前記スコアリングを再重み付けしたことに応答して学習アルゴリズムトレーニングデータセットを変更することによって、前記分類されスコアリングされた細胞を再分類するようにさらに動作可能である、請求項5記載の装置(100)。
【請求項7】
前記クラシファイヤモジュール(116)が、複数のユーザからの入力に応答して細胞を分類及び/又は再分類するために動的に変更可能である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項8】
1以上の表現型に従って画像中の細胞を自動的に分類する方法(200)であって、
画像中の候補ターゲット細胞を識別し(202)、
1以上の表現型に従って前記識別されたターゲット細胞を動的に分類し(204)、
前記分類された細胞をスコアリングすること(206)
を含んでなる方法(200)。
【請求項9】
前記1以上の表現型が小核を含む、請求項8記載の方法(200)。
【請求項10】
画像中の候補ターゲット細胞を識別すること(202)が、パターン認識によってターゲット細胞を識別することを含む、請求項8又は請求項9記載の方法(200)。
【請求項11】
前記分類された細胞のスコアリング(206)が、それぞれの分類された細胞毎に信頼レーティングを定義するために正準変量解析(CVA)を使用することを含む、請求項8乃至請求項10のいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項12】
前記識別されたターゲット細胞を分類すること(204)が、複数のプロセッサによって提供される対応する信頼スコアレーティングからそれぞれの分類された細胞のそれぞれのコンセンサス信頼測定値を導出することを含む、請求項8乃至請求項11のいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項13】
前記分類されスコアリングされた細胞を後から再分類する追加段階(208)をさらに含む、請求項8乃至請求項12のいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項14】
前記分類されスコアリングされた細胞の再分類(208)が、前記分類されたターゲット細胞に適用された前記スコアリングを再重み付けしたことに応答して学習アルゴリズムトレーニングデータセットを変更することによって、前記細胞を再分類することを含む、請求項13記載の方法(200)。
【請求項15】
複数のユーザからの入力に応答して細胞の分類判断基準及び/又は再分類判断基準を変更することを含む、請求項8乃至請求項14のいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項16】
請求項8乃至請求項15のいずれか1項記載の方法(200)を実施するためのデータ処理装置を構成するコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−529020(P2012−529020A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513601(P2012−513601)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057651
【国際公開番号】WO2010/139697
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(398048914)ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】