画像記録媒体、画像記録媒体の製法および画像形成装置
【課題】簡単な構成で、保存性が良好で、かつ写真調の光沢画像を得ることができる画像記録媒体、画像記録媒体の製法、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも一部が透明で該透明部21aにおける画像が形成される側の表面が透明粘着層で覆われている第1のシート状媒体21の前記透明粘着層の表面に基画像20M(図2(a))に対し反転している反転画像21mを形成した後(図2(b))、非透明で前記反転画像とは異なる色の第2のシート状媒体22(図2(c))を、前記反転画像を含む前記透明粘着層に重ねて一体化して作製する(図2(d))。
【解決手段】少なくとも一部が透明で該透明部21aにおける画像が形成される側の表面が透明粘着層で覆われている第1のシート状媒体21の前記透明粘着層の表面に基画像20M(図2(a))に対し反転している反転画像21mを形成した後(図2(b))、非透明で前記反転画像とは異なる色の第2のシート状媒体22(図2(c))を、前記反転画像を含む前記透明粘着層に重ねて一体化して作製する(図2(d))。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真調の画像を得ることができる画像記録媒体、画像記録媒体の製法および該製法に用いる複写機、複合機、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光沢のある写真画質の画像を得る等のために、各種試みがなされている。
(A)画像形成装置の例として、少なくとも1つの像担持体上から複数の色の異なるカラートナー像が多重に転写される中間転写体と、透明トナーを現像する透明トナー現像手段と、中間転写体上に形成されたカラートナー像及び透明トナー像を転写材上に転写する第2の転写手段と、転写材上に形成されたカラートナー像及び透明トナー像を転写材に定着する定着手段等を備えたカラー画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
当該従来例では、光沢を出すための特殊なトナーを用いていて、用紙上に通常の画像形成を実施した後、定着部に行く前に全面に透明なトナーを均一に形成し、定着することで高い光沢性を得る。しかしこの技術は通常の現像装置の他に透明トナーで現像するための透明トナー現像装置を必要とすることや、画像部と非画像部でのトナー厚みの違いにより定着部への負荷が高い等の課題がある。
【0003】
(B)記録媒体の例として、支持体の一方の面にトナー受像層、他方の面にバック層を有する電子写真用受像シートを挙げ、支持体が、基体の片面又は両面に熱可塑性樹脂層を有し、トナー受像層側の最表面層及びパック層側の最表面層におけるバインダーが、ガラス転移温度(Tg)が20〜80度Cであるソープフリー型水分散性ポリマーであり、かつ、トナー受像層側及びバック層の少なくともいずれかが高分子系帯電防止剤を含有するものがある(例えば特許文献2参照)。
これは、光沢を出すために特殊な記録媒体を用いるもので、用紙の表や裏に熱可塑性樹脂層を設け、画像を通常に定着した後でさらに圧力と熱を加えることで表面の均一な光沢を実現する。しかしこの技術は特許文献2で開示する特殊な定着装置と併せて効果が実現できるものであり、構成やコスト、消費電力等の点で課題がある。
【0004】
(C)定着手段として第一定着手段と第二定着手段の複数の定着手段を備えた画像形成装置の例がある(例えば特許文献3参照)。この従来技術は、未定着トナー像を保持した記録シートを定着する第一の定着手段と、第一の定着手段により定着された記録シートをさらに定着する第二の定着手段を設け、第一の定着手段だけで定着するモードと、第一の定着装置および第二の定着装置とで定着するモードを選択可能にしたものであるが、上記(B)におけると同様に構成やコスト、消費電力等の点で課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−341623号公報
【特許文献2】特開2004−191678号公報
【特許文献3】特開2003−270991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な構成で、保存性が良好で、かつ写真調の光沢画像を得ることができる画像記録媒体、画像記録媒体の製法、画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため請求項1にかかる発明は、第1のシート状媒体と第2のシート状媒体とが一体化されてなる画像記録媒体であって、前記第1のシート状媒体は少なくとも一部に透明部を有し、この透明部の画像が形成された面が透明粘着層からなるとともに、この透明粘着層の表面に形成された画像が反転画像であり、前記第2のシート状媒体は前記反転画像の色とは異なる色の非透明材からなり、前記第1のシート状媒体の前記反転画像を含む該透明粘着層に該第2のシート状媒体が重ねて一体化されてなる画像記録媒体とした。
請求項2にかかる発明は、少なくとも一部が透明で該透明部における画像が形成される側の表面が透明粘着層で覆われている第1のシート状媒体の前記透明粘着層の表面に反転画像を形成した後、非透明で前記反転画像とは異なる色の第2のシート状媒体を、前記反転画像を含む前記透明粘着層に重ねて一体化して画像記録媒体を作製することとした。
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体の紫外線域波長の光の透過率を50パーセント以下とした。
請求項4にかかる発明は、請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に対する反転像の形成を転写で行い、反転像が形成された前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて画像記録媒体を作製することとした。
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に前記圧力と共に熱を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて画像記録媒体を作製することとした。
請求項6にかかる発明は、請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクジェット方式の射出されるインクで行なうこととした。
請求項7にかかる発明は、請求項6に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化することとした。
請求項8にかかる発明は、請求項6又は7に記載の画像記録媒体の製法において、前記インクとして粘着性を有しているものを用いることとした。
請求項9にかかる発明は、請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用する静電記録方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成を転写で行なうこととした。
請求項10にかかる発明は、請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用するインクジェット方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクで行なうこととした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で、保存性が良好で、かつ写真調の光沢画像を得る画像記録媒体、画像記録媒体の製法および画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]画像記録媒体および製法の概要
本発明の画像記録媒体は、第1のシート状媒体と第2のシート状媒体とが一体化されてなる。第1のシート状媒体は少なくとも一部に透明部を有し、この透明部の画像が形成される側の面が透明粘着層からなる。
【0010】
図1に第1のシート状媒体(以下、記録媒体という。)21について透明部と非透明部の割合が異なる各種例を示す。図1(a)に示す記録媒体21は図1(b)と同様、透明部21aが非透明部21bよりも小さく、図1(b)に示す記録媒体21は透明部21aが非透明部21bよりも大きく、図1(c)に示す記録媒体21は透明部21aと非透明部21bとが等しく、図1(d)に示す記録媒体21は全部が透明部21aである。これら記録媒体21の後述する画像形成装置における搬送方向はx、yの何れでも選択できる。
これら各パターンの記録媒体21について透明部21aの画像形成される側の面は透明な粘着層からなる。かつ、この透明部21aの粘着層は非透明部21bにまで及んでいる。但し、この粘着層の粘着力は画像形成装置におけるローラ搬送、画像形成過程においてローラなどから受ける程度の圧力ではローラなどの加圧部材に粘着しないものとする。
【0011】
これらの記録媒体21のパターンの中、透明部21aが非透明部21bよりも小さい図1(a)に示す記録媒体21について、図2を参照しつつ光沢画像の年賀状を製作する場合で画像記録媒体の製法を説明する。図2において記録媒体21には、透明部21aおよび非透明部21bの片側全面に粘着層が形成されている。
【0012】
図1(a)は文字やイラストなどからなるカラーの基画像20Mを示す。基画像20Mは、原稿に記載されているものを用いるか、或いは、ハードディスクなど記憶手段に記憶されたデータでもよい。
【0013】
例えば後述する画像形成装置を用いて、図1(b)に示すように、この基画像20Mに基づく記録画像21mを反転像にして記録媒体21の透明部21aの表面に形成された透明粘着層の表面に形成する。
次に、図1(c)に示すように記録媒体21と同じ大きさの不透明な第2のシート状媒体(以下、重ね媒体という。)22を準備する。重ね媒体22の片面22aは最終的な画像記録媒体の裏となる面であり、「他の片面22b」は図では表示上の理由から模様が付された如く示されているが実際には白色である。この面は記録画像21mの背景地肌となる面であるので、記録画像21mとの識別を妨げないのがよいからである。尤も、記録画像21mとは異なる色を好みに応じて選択することは自由である。
【0014】
次に、図1(c)における重ね媒体22を「その他の片面22b」が図1(b)の記録画像20mに対面するようにして重ねる。さらに重なり部を加圧し、また必要に応じて加熱することにより、重ね媒体22を粘着剤層に接着して記録媒体21と一体化する。この一体化されたシートを裏返せば、図1(d)に示すように、光沢画像を有する画像記録媒体ができる。
【0015】
つまり、透明部21dに相当する重なり部22cでは透明部21aを透かして基画像21mと同じ正像(ミラー像でない像)を見ることができる。また、図1(b)に示す不透明部21bの裏面は図1(d)に示す余白部22dとなり、ここには手書きなどで後から必要な情報を記入可能である。
【0016】
なお、図1(c)に示した重ね媒体22を用いずに、透明部と非透明部との境界部O−Oで透明部21aを折り返すことにより該透明部に非透明部21bを重ねることによっても、光沢画像を得ることができる。この場合には、非透明部21bの中透明部21aと対面する側の面は基画像21mとは異なる色にしておくことはもちろんである。
【0017】
こうして製作された画像記録媒体の断面は、画像部は透明部21aで覆われるので画像の保存性が良好で、かつ透明部21aの表面が光沢を有することもあって写真調の光沢画像として見ることができる。また、反転像は既存の画像形成装置で簡単に作成できるので、容易に実施可能である。
【0018】
記録媒体21として、紫外線の透過率の低い性質を持つ材料を用いることで、直射日光にさらされる環境下に本発明で得られる画像記録媒体を置いても(例えば、外に貼られるポスターや看板など)、トナーによって形成された画像や非透明媒体の紫外線によるダメージを抑えることができる。透明粘着性記録媒体の紫外線の透過率は、50パーセント以下なら十分な効果が得られるが、低ければ低いほど効果は大きい。
【0019】
[2]反転像の形成手段
基画像20Mを反転した記録画像20mを透明粘着剤層上に形成する手段として、2通りある。1つは転写方式であり、所謂電子写真法における静電転写の技術が適用された画像形成装置でトナー像を転写する方法であり、他はインクジェット方式の画像形成装置でインク像を形成する方法である。
【0020】
[3]転写方式
[3・1]転写方式における写真調画像の形成プロセス1
図3は全部が透明部21cからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセス、図4は一部が透明部21c、残部が非透明部21bからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセスをそれぞれ示す。図3において、透明部21cの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。図4では、透明部21cおよび非透明部21bの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。
【0021】
工程1
記録媒体21を画像形成装置の給紙部にセットする(図3(a)、図4(a))。
ここで、少なくとも、一部分が透明の記録媒体21を画像形成装置に通紙するという条件を、該画像形成装置に設定する方法としては、ユーザーが予め給紙手段の設定で指示する方法や、特定サイズの透明領域を予め装置に登録しておく方法等がある。
【0022】
工程2
画像形成領域が確定された後、少なくともこの確定された透明部21aに画像が形成されると判断した際には、予め装備された画像反転機能により自動的に画像を反転させてトナーtによる反転画像を透明部21cに形成する(図3(b)、図4(b))。
【0023】
工程3
その後、別途設けた給紙系から重ね媒体22を記録媒体21の搬送タイミングに合わせて送り出し、反転画像が形成された記録媒体21の粘着層上に重ね媒体22を密着させる(図3(c)、図4(c))。
【0024】
工程4
トナー画像を挟んで密着させられた記録媒体21と重ね媒体22を、非加熱で圧力のみ加える定着部を通過させ、反転画像が形成された記録媒体21と重ね媒体22とを接着して一体化する(図3(d)、図4(d))。
この手法で得られた画像を記録媒体21の透明部21aであって粘着層の無い側の面(粘着層が設けられている面の反対面)から矢印Aで示すように方向で見ると、図1(d)に示したように、基画像と同じ正像を見ることができ、簡単に写真調画像を作製することができた。画像形成面は透明部の下にあり、重ね部材22と透明部21aとで挟まれているので外部から印刷面を直接傷つけることがなくなる為に保存性が良好となっている。
【0025】
この転写方式における写真調画像の形成プロセス1の例では、定着過程に熱を用いず、記録媒体21と重ね媒体22とを粘着層を介して圧力のみで接着と定着を同時に行うので、定着過程が簡素化される。また、画像形成装置において、定着過程で熱を用いないので、大幅な電力消費量の削減を達成できる。
【0026】
上記図3、4における非加熱定着の方式では、モノクロ画像形成装置では問題ないが、カラー画像形成装置において問題を生ずる。図5(a)に示したように記録媒体21の透明粘着層21cにイエロートナーとマゼンタトナーによるカラー画像を形成して重ね媒体22を重ね、熱を使わず圧力のみで定着(接着)する場合を以下に例示する。
【0027】
この場合、図5(b)に示すように、イエロートナーとマゼンタトナーとが溶融せず、混ざり合わないために発色せず、かつ、記録媒体21と重ね媒体22との接着面にトナーが厚く存在するとその部位の接着力が弱くなり、保存性が低下する。そこで、以下のようにカラー画像を形成する場合に圧力と熱を加えるようにするとこの問題は解消した。
【0028】
[3・2]転写方式における写真調画像の形成プロセス2
図6(a)に示したように記録媒体21の透明粘着層21cにイエロートナーとマゼンタトナーによるカラー画像を形成して重ね媒体22を重ねた後、熱と圧力を加えて定着(接着)する場合を以下に例示する。
【0029】
この場合、図6(b)に示すように、イエロートナーとマゼンタトナーとが溶融し、混ざり合い赤(R)に発色する。かつ、トナーが溶融することにより複数トナーが混じり合うようになった。さらに、定着過程に圧力だけでなく、熱も加えることで、トナーが溶融し、溶融したトナーが透明媒体と非透明媒体の接着機能を果たすようになり、 透明媒体の粘着層にトナーが厚く転写された個所においても、非透明媒体との強い接着性を確保できるようになり、前記非加熱定着時のように、透明媒体粘着層にトナーが厚く転写されるとその部分の非透明媒体との接着性が弱くなるという問題も解決した。
【0030】
[3・3]転写方式の画像形成装置
図7は一般的な電子写真方式の画像形成装置の構成である。
<構成の説明>
この画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するため4つの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kを備える。尚、Y、M、C、Kの色順は、一例であり、他の並び順であっても構わない。
【0031】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと、帯電手段、現像手段、クリーニング手段を備えている。また、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの配置は、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの回転軸が平行になるように且つ転写紙移動方向に所定のピッチで配列するように設定されている。
【0032】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの上方には、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面にレーザー光を走査しながら照射する光書込ユニット3が、下方には転写紙を担持して各画像形成ユニットの転写部を通過するように搬送する転写搬送ベルト60を有するベルト駆動装置として転写ユニット6が配置されている。
【0033】
転写搬送ベルト60の外周面には、ブラシローラとクリーニングブレードから構成されたクリーニング装置85が接触するように配置されている。このクリーニング装置85により転写搬送ベルト60上に付着したトナー等の異物が除去される。
【0034】
転写ユニット6の側方にはベルト定着方式の定着ユニット7、排紙トレイ8等が備えられている。画像形成装置下部には、転写紙100が載置された給紙カセット4a、4bを備えている。また、画像形成装置側面から手差しで給紙を行う手差しトレイMFが備えられている。この他,トナー補給容器TCが備えられ、図示していない廃トナーボトル、両面・転写ユニット、電源ユニットなども二点鎖線で示したスペースSの中に備えられている。
【0035】
現像手段としての現像装置10Y、10M、10C、10Kは、いずれも同様の構成からなり、それらは使用するトナーの色のみが異なる二成分現像方式の現像装置10Y、10M、10C、10Kであり、トナーと磁性キャリアからなる現像剤が収容されている。
【0036】
現像装置10Y、10M、10C、10Kは感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kに対向した現像ローラ、現像剤を搬送・攪拌するスクリュー、トナー濃度センサ等から構成される。現像ローラは外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。トナー濃度センサの出力に応じて、トナー補給装置よりトナーが補給される。
【0037】
<画像形成の流れ>
先ず、帯電ローラに図示しない電源より所定の電圧が印加されて、対向する感光体ドラム表面11Y、11M、11C、11Kを帯電する。所定の電位に帯電した感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面には、引き続いて光書込ユニット3により画像データに基づくレーザー光が走査され、静電潜像が書き込まれる。静電潜像を担持した感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面が現像装置10Y、10M、10C、10Kに到達すると、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向配置される現像ローラにより、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面の静電潜像にトナーが供給されてトナー像が形成される。
【0038】
上記の動作が感光体ユニット2Y、2M、2C、2K全てに同様にして所定のタイミングで行われ、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面にはそれぞれ所定のトナー色のトナー像が形成される。
【0039】
転写紙100は、給紙カセット4a、4bもしくは手差しトレイMFのいずれかから搬送され、レジストローラ5に到達したところで一端停止する。そして、感光体ユニット2Y、2M、2C、2Kの上記の画像形成動作にタイミングを合わせて、転写紙100がレジストローラ5により送り出され、転写搬送ベルト60によって搬送されながら、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上のトナー像が順次転写されていく。
【0040】
この転写紙100へのトナー像の転写は、転写搬送ベルト60を挟んで各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向配置されている一次転写ローラ67Y、67M、67C、67Kから、図示しない電源により感光体ドラム11Y、11M、11C、11上のトナーの極性と逆の極性の電圧が印加されることで行われる。
【0041】
そして、感光体ドラム11Kとの対向位置を通過し、4色のトナー像が重ね合わされた転写紙100は、引き続いて定着ユニット7に搬送され、熱と圧力を受けて画像を定着される。定着後、転写紙100は切り換え爪Gにより進路を選択されて矢印Cに沿う横方向、或いは矢印Bに沿う排紙トレイ8に向かう。
【0042】
本例に用いた画像形成装置は特別にこの構成を特徴としているわけではなく、例えば感光体ドラムの配置が4連タンデム方式でなくリボルバー方式である場合や、カラー画像形成装置でなくモノクロ画像形成装置である場合、書き込み方式としてレーザーではなくLEDを使用する場合、現像手段として2成分ではなく1成分である場合でも構わない。
【0043】
この画像形成装置で本発明の写真調画像を形成する場合には、転写紙100に代えて前記した記録媒体21を使用する。透明部21aに反転カラートナー画像が形成された記録媒体21は最後の転写が行なわれる感光体ドラム11Kの転写部を通過した後、定着ユニット7に至る前に、図示しない給紙手段から送り出される重ね媒体22と重ねられ、定着ユニット7に至る。定着ユニット7において加熱、加圧定着され一体化された画像記録媒体は排紙トレイ8に排出される。
【0044】
カラー画像形成装置でなく、ブラックトナーなどによる単色の画像形成装置で本発明の写真調画像を形成する場合においては、定着ユニットは加熱、加圧方式でもよいが、加圧のみで定着する方式でもよい。
【0045】
<反転像の形成手順>
本例の画像形成装置による透明部21aへの画像形成は画像形成装置に付帯して設けられた制御部のプログラムで実行され、記録媒体の透明部に対する画像形成を含め、図8に示す手順で行われる。つまり、ステップP−1で写真調プリントモードの選択がないと判断されればステップP−2へ進み、プリントすべき画像選択と、印刷指示がなされる。次に、ステップP−3で当該画像形成装置への印刷出力指示がなされる。ステップP−4で印刷目的に沿った用紙(記録媒体)の搬送と、印刷指示に沿った解像度、位置への画像形成が実行される。
【0046】
ステップP−1で写真調プリント選択があると判断されれば、ステップP−5へ進み、プリントすべき画像選択と、印刷指示がなされる。ステップP−6で少なくとも一部に透明部を有する記録媒体が給紙カセット等にセットされているか否かのチェックが行われ、NOならばステップP−7でエラーメッセージを表示する。YESならステップP−8へ進み、透明部のサイズに合わせて、透明部21aに形成される画像のサイズを拡大、縮小等して調整する。
【0047】
ステップP−9で透明部21aに裏表の反転画像を形成するべく、反転画像が形成されるように画像データを処理する。ステップP−10で画像が透明部21aと合うように画像書き出し位置を調整する。以下、ステップP−3へ続く。
このようにして、制御部により、記録媒体の透明部に、基画像を反転させた画像形成が行われる。
[4]インクジェット方式
[4・1]インクジェット方式における写真調画像の形成プロセス
図9は全部が透明部21cからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセス、図10は一部が透明部21c、残部が非透明部21bからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセスをそれぞれ示す。図9において、透明部21cの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。図10では、透明部21cおよび非透明部21bの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。
【0048】
工程1
記録媒体21を画像形成装置の給紙部にセットする(図9(a)、図10(a))。
ここで、少なくとも、一部分が透明の記録媒体21を画像形成装置に通紙するという条件を、該画像形成装置に設定する方法としては、ユーザーが予め給紙手段の設定で指示する方法や、特定サイズの透明領域を予め装置に登録しておく方法等がある。
【0049】
工程2
画像形成領域が確定された後、少なくともこの確定された透明部21aに画像が形成されると判断した際には、予め装備された画像反転機能により自動的に画像を反転させてインクkによる反転画像を透明部21cに形成する(図9(b)、図10(b))。
【0050】
工程3
その後、別途設けた給紙系から重ね媒体22を記録媒体21の搬送タイミングに合わせて送り出し、反転画像が形成された記録媒体21の粘着層上に重ね媒体22を密着させる(図9(c)、図10(c))。
【0051】
工程4
トナー画像を挟んで密着させられた記録媒体21と重ね媒体22に、圧力をかけることにより、反転画像が形成された記録媒体21と重ね媒体22とを接着して一体化する(図9(d)、図10(d))。
この手法で得られた画像を記録媒体21の透明部21aであって粘着層の無い側の面(粘着層が設けられている面の反対面)から矢印Aで示すように方向で見ると、図1(d)に示したように、基画像と同じ正像を見ることができ、簡単に写真調画像を作製することができた。画像形成面は透明部の下にあり、重ね部材22と透明部21aとで挟まれているので外部から印刷面を直接傷つけることがなくなる為に保存性が良好となっている。
【0052】
この例では、作像方式にインクジェット方式を用いているため,画像形成装置の本体価格が安く、個人ユーザーや一般家庭などにも、安易に、保存性が良好な写真調の画像を得ることができる。
【0053】
通常のインクジェットプリンタなどの画像形成装置では、記録媒体21の透明部21aにインクkが多く吐出されると、その部分が重ね媒体22との接着性が弱くなる傾向にある。そこで、インクk自体に粘着性を持たせた粘着性のあるインクを用いることで、インク自体も記録媒体21と重ね部材22との接着機能を果たすようになり、記録媒体21の粘着層にインクが多く吐出された部位においても、重ね部材22との強い接着性を確保できるようになった。高粘着性インクの一例としては、(株)リコーの「ジェルジェットプリンター」のインクを挙げることができる。
【0054】
[4・2]インクジェット方式の画像形成装置
インクジェット方式で画像を形成する画像形成装置の例を図11、12を参照しつつ説明する。
この画像形成装置は図示しない対向する側面間に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ104でタイミングベルト105を介して図12で矢印E方向(主走査方向)に移動走査する。
【0055】
このキャリッジ103には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド107を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク液吐出方向を下方に向けて装着している。なお、記録ヘッド107を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエーターを用いたものを使用している。
【0056】
また、キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色のインクを供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108は図示しないインク供給チューブを介してメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
【0057】
この例では、サブタンク108と記録ヘッド107で液滴吐出装置を構成しているが、記録ヘッド107を液滴吐出ヘッドで構成し、別途サブタンク108を設ける構成とすることもできるし、あるいは、サブタンクを用いないでインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
【0058】
一方、給紙カセット110などの用紙積載部(圧板)111上に積載した用紙112を給紙するための給紙部として、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)113および給紙ローラ113に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114を備え、この分離パッド114は給紙ローラ113側に付勢されている。
【0059】
そして、この給紙部から給紙された用紙112を記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部として、用紙112を静電吸着して搬送するための搬送ベルト121と、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのカウンターローラ122と、略鉛直上方に送られる用紙112を略90度方向転換させて、搬送ベルト121上に倣わせるための搬送ガイド123と、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢された先端加圧コロ125とを備えている。また、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ126を備えている。
【0060】
ここで、搬送ベルト121は無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132およびタイミングローラ133を介して搬送ローラ127が回転されることで、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト121の裏面側には記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。
【0061】
また、図12に示すように、搬送ローラ127の軸にはスリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134およびセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
【0062】
帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nの荷重をかけている。また、キャリッジ103の前方側には、図2に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール142を設け、キャリッジ103の前面側にはエンコーダスケール142のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ143を設け、これらによって、キャリッジ103の主走査方向位置(ホーム位置)を検出するためのエンコーダ144を構成している。
【0063】
さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部と、排紙ローラ152および排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニット161が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット161は搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト121との間に給紙する。
【0064】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部(用紙積載部111)から用紙112はガイド115で案内され、搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、さらに先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125で搬送ベルト121に押し付けられ、略90度、搬送方向を転換される。
【0065】
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。
【0066】
このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、該用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
【0067】
そこで、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の記録を行う。記録信号又は用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
【0068】
なお、本発明にかかる画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ、複写装置およびこれらの複合機などにも適用することができる。また、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液滴吐出ヘッドや液滴吐出装置、或いはこれらを備える画像形成装置にも適用することができる。
【0069】
この画像形成装置で本発明の写真調画像を形成する場合には、用紙112に代えて前記した記録媒体21を使用する。透明部21aに記録ヘッド107より吐出されるインクkにより反転カラートナー画像が形成された記録媒体21は記録ヘッド107を通過した後、排紙コロ153に至る前に、図示しない給紙手段から送り出される重ね媒体22と重ねられ、排紙ローラ152と排紙コロ153とのニップ圧により加圧されて一体化され、排紙トレイ8に排出される。
【0070】
<反転像の形成手順>
本例の画像形成装置による透明部21aへの画像形成は画像形成装置に付帯して設けられた制御部のプログラムで実行され、記録媒体の透明部に対する画像形成を含め、転写方式の画像形成装置について既に説明した図8に示す手順に準じて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)乃至(d)はそれぞれ少なくとも一部に透明部を有する第1のシート状媒体(記録媒体)を例示した平面図である。
【図2】(a)乃至(d)は写真調画像を有する記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図3】(a)乃至(d)はトナー像転写方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図4】(a)乃至(d)はトナー像転写方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図5】(a)、(b)は熱を使わず圧力だけで定着、接着する方式における画像記録媒体の製作手順およびその問題点を説明した図である。
【図6】(a)、(b)は熱と圧力定着、接着する方式における画像記録媒体の製作手順およびその利点を説明した図である。
【図7】転写方式の画像形成装置の構成の概略を例示した図である。
【図8】画像形成装置に付帯して設けられた制御部における画像形成プロセスを説明した流れ図である。
【図9】(a)乃至(d)はインクジェット方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図10】(a)乃至(d)はインクジェット方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図11】インクジェット方式の画像形成装置の側面図である。
【図12】図11に示したインクジェット方式の画像形成装置の要部平面図である。
【符号の説明】
【0072】
20M 基画像
20m 記録画像
21 第1のシート状媒体(記録媒体)
21a 透明部
21b 非透明部
21c 透明粘着層
22 第2のシート状媒体(重ね媒体)
22c 重なり部
22d 余白部
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真調の画像を得ることができる画像記録媒体、画像記録媒体の製法および該製法に用いる複写機、複合機、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光沢のある写真画質の画像を得る等のために、各種試みがなされている。
(A)画像形成装置の例として、少なくとも1つの像担持体上から複数の色の異なるカラートナー像が多重に転写される中間転写体と、透明トナーを現像する透明トナー現像手段と、中間転写体上に形成されたカラートナー像及び透明トナー像を転写材上に転写する第2の転写手段と、転写材上に形成されたカラートナー像及び透明トナー像を転写材に定着する定着手段等を備えたカラー画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
当該従来例では、光沢を出すための特殊なトナーを用いていて、用紙上に通常の画像形成を実施した後、定着部に行く前に全面に透明なトナーを均一に形成し、定着することで高い光沢性を得る。しかしこの技術は通常の現像装置の他に透明トナーで現像するための透明トナー現像装置を必要とすることや、画像部と非画像部でのトナー厚みの違いにより定着部への負荷が高い等の課題がある。
【0003】
(B)記録媒体の例として、支持体の一方の面にトナー受像層、他方の面にバック層を有する電子写真用受像シートを挙げ、支持体が、基体の片面又は両面に熱可塑性樹脂層を有し、トナー受像層側の最表面層及びパック層側の最表面層におけるバインダーが、ガラス転移温度(Tg)が20〜80度Cであるソープフリー型水分散性ポリマーであり、かつ、トナー受像層側及びバック層の少なくともいずれかが高分子系帯電防止剤を含有するものがある(例えば特許文献2参照)。
これは、光沢を出すために特殊な記録媒体を用いるもので、用紙の表や裏に熱可塑性樹脂層を設け、画像を通常に定着した後でさらに圧力と熱を加えることで表面の均一な光沢を実現する。しかしこの技術は特許文献2で開示する特殊な定着装置と併せて効果が実現できるものであり、構成やコスト、消費電力等の点で課題がある。
【0004】
(C)定着手段として第一定着手段と第二定着手段の複数の定着手段を備えた画像形成装置の例がある(例えば特許文献3参照)。この従来技術は、未定着トナー像を保持した記録シートを定着する第一の定着手段と、第一の定着手段により定着された記録シートをさらに定着する第二の定着手段を設け、第一の定着手段だけで定着するモードと、第一の定着装置および第二の定着装置とで定着するモードを選択可能にしたものであるが、上記(B)におけると同様に構成やコスト、消費電力等の点で課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−341623号公報
【特許文献2】特開2004−191678号公報
【特許文献3】特開2003−270991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な構成で、保存性が良好で、かつ写真調の光沢画像を得ることができる画像記録媒体、画像記録媒体の製法、画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため請求項1にかかる発明は、第1のシート状媒体と第2のシート状媒体とが一体化されてなる画像記録媒体であって、前記第1のシート状媒体は少なくとも一部に透明部を有し、この透明部の画像が形成された面が透明粘着層からなるとともに、この透明粘着層の表面に形成された画像が反転画像であり、前記第2のシート状媒体は前記反転画像の色とは異なる色の非透明材からなり、前記第1のシート状媒体の前記反転画像を含む該透明粘着層に該第2のシート状媒体が重ねて一体化されてなる画像記録媒体とした。
請求項2にかかる発明は、少なくとも一部が透明で該透明部における画像が形成される側の表面が透明粘着層で覆われている第1のシート状媒体の前記透明粘着層の表面に反転画像を形成した後、非透明で前記反転画像とは異なる色の第2のシート状媒体を、前記反転画像を含む前記透明粘着層に重ねて一体化して画像記録媒体を作製することとした。
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体の紫外線域波長の光の透過率を50パーセント以下とした。
請求項4にかかる発明は、請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に対する反転像の形成を転写で行い、反転像が形成された前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて画像記録媒体を作製することとした。
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に前記圧力と共に熱を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて画像記録媒体を作製することとした。
請求項6にかかる発明は、請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクジェット方式の射出されるインクで行なうこととした。
請求項7にかかる発明は、請求項6に記載の画像記録媒体の製法において、前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化することとした。
請求項8にかかる発明は、請求項6又は7に記載の画像記録媒体の製法において、前記インクとして粘着性を有しているものを用いることとした。
請求項9にかかる発明は、請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用する静電記録方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成を転写で行なうこととした。
請求項10にかかる発明は、請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用するインクジェット方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクで行なうこととした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で、保存性が良好で、かつ写真調の光沢画像を得る画像記録媒体、画像記録媒体の製法および画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]画像記録媒体および製法の概要
本発明の画像記録媒体は、第1のシート状媒体と第2のシート状媒体とが一体化されてなる。第1のシート状媒体は少なくとも一部に透明部を有し、この透明部の画像が形成される側の面が透明粘着層からなる。
【0010】
図1に第1のシート状媒体(以下、記録媒体という。)21について透明部と非透明部の割合が異なる各種例を示す。図1(a)に示す記録媒体21は図1(b)と同様、透明部21aが非透明部21bよりも小さく、図1(b)に示す記録媒体21は透明部21aが非透明部21bよりも大きく、図1(c)に示す記録媒体21は透明部21aと非透明部21bとが等しく、図1(d)に示す記録媒体21は全部が透明部21aである。これら記録媒体21の後述する画像形成装置における搬送方向はx、yの何れでも選択できる。
これら各パターンの記録媒体21について透明部21aの画像形成される側の面は透明な粘着層からなる。かつ、この透明部21aの粘着層は非透明部21bにまで及んでいる。但し、この粘着層の粘着力は画像形成装置におけるローラ搬送、画像形成過程においてローラなどから受ける程度の圧力ではローラなどの加圧部材に粘着しないものとする。
【0011】
これらの記録媒体21のパターンの中、透明部21aが非透明部21bよりも小さい図1(a)に示す記録媒体21について、図2を参照しつつ光沢画像の年賀状を製作する場合で画像記録媒体の製法を説明する。図2において記録媒体21には、透明部21aおよび非透明部21bの片側全面に粘着層が形成されている。
【0012】
図1(a)は文字やイラストなどからなるカラーの基画像20Mを示す。基画像20Mは、原稿に記載されているものを用いるか、或いは、ハードディスクなど記憶手段に記憶されたデータでもよい。
【0013】
例えば後述する画像形成装置を用いて、図1(b)に示すように、この基画像20Mに基づく記録画像21mを反転像にして記録媒体21の透明部21aの表面に形成された透明粘着層の表面に形成する。
次に、図1(c)に示すように記録媒体21と同じ大きさの不透明な第2のシート状媒体(以下、重ね媒体という。)22を準備する。重ね媒体22の片面22aは最終的な画像記録媒体の裏となる面であり、「他の片面22b」は図では表示上の理由から模様が付された如く示されているが実際には白色である。この面は記録画像21mの背景地肌となる面であるので、記録画像21mとの識別を妨げないのがよいからである。尤も、記録画像21mとは異なる色を好みに応じて選択することは自由である。
【0014】
次に、図1(c)における重ね媒体22を「その他の片面22b」が図1(b)の記録画像20mに対面するようにして重ねる。さらに重なり部を加圧し、また必要に応じて加熱することにより、重ね媒体22を粘着剤層に接着して記録媒体21と一体化する。この一体化されたシートを裏返せば、図1(d)に示すように、光沢画像を有する画像記録媒体ができる。
【0015】
つまり、透明部21dに相当する重なり部22cでは透明部21aを透かして基画像21mと同じ正像(ミラー像でない像)を見ることができる。また、図1(b)に示す不透明部21bの裏面は図1(d)に示す余白部22dとなり、ここには手書きなどで後から必要な情報を記入可能である。
【0016】
なお、図1(c)に示した重ね媒体22を用いずに、透明部と非透明部との境界部O−Oで透明部21aを折り返すことにより該透明部に非透明部21bを重ねることによっても、光沢画像を得ることができる。この場合には、非透明部21bの中透明部21aと対面する側の面は基画像21mとは異なる色にしておくことはもちろんである。
【0017】
こうして製作された画像記録媒体の断面は、画像部は透明部21aで覆われるので画像の保存性が良好で、かつ透明部21aの表面が光沢を有することもあって写真調の光沢画像として見ることができる。また、反転像は既存の画像形成装置で簡単に作成できるので、容易に実施可能である。
【0018】
記録媒体21として、紫外線の透過率の低い性質を持つ材料を用いることで、直射日光にさらされる環境下に本発明で得られる画像記録媒体を置いても(例えば、外に貼られるポスターや看板など)、トナーによって形成された画像や非透明媒体の紫外線によるダメージを抑えることができる。透明粘着性記録媒体の紫外線の透過率は、50パーセント以下なら十分な効果が得られるが、低ければ低いほど効果は大きい。
【0019】
[2]反転像の形成手段
基画像20Mを反転した記録画像20mを透明粘着剤層上に形成する手段として、2通りある。1つは転写方式であり、所謂電子写真法における静電転写の技術が適用された画像形成装置でトナー像を転写する方法であり、他はインクジェット方式の画像形成装置でインク像を形成する方法である。
【0020】
[3]転写方式
[3・1]転写方式における写真調画像の形成プロセス1
図3は全部が透明部21cからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセス、図4は一部が透明部21c、残部が非透明部21bからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセスをそれぞれ示す。図3において、透明部21cの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。図4では、透明部21cおよび非透明部21bの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。
【0021】
工程1
記録媒体21を画像形成装置の給紙部にセットする(図3(a)、図4(a))。
ここで、少なくとも、一部分が透明の記録媒体21を画像形成装置に通紙するという条件を、該画像形成装置に設定する方法としては、ユーザーが予め給紙手段の設定で指示する方法や、特定サイズの透明領域を予め装置に登録しておく方法等がある。
【0022】
工程2
画像形成領域が確定された後、少なくともこの確定された透明部21aに画像が形成されると判断した際には、予め装備された画像反転機能により自動的に画像を反転させてトナーtによる反転画像を透明部21cに形成する(図3(b)、図4(b))。
【0023】
工程3
その後、別途設けた給紙系から重ね媒体22を記録媒体21の搬送タイミングに合わせて送り出し、反転画像が形成された記録媒体21の粘着層上に重ね媒体22を密着させる(図3(c)、図4(c))。
【0024】
工程4
トナー画像を挟んで密着させられた記録媒体21と重ね媒体22を、非加熱で圧力のみ加える定着部を通過させ、反転画像が形成された記録媒体21と重ね媒体22とを接着して一体化する(図3(d)、図4(d))。
この手法で得られた画像を記録媒体21の透明部21aであって粘着層の無い側の面(粘着層が設けられている面の反対面)から矢印Aで示すように方向で見ると、図1(d)に示したように、基画像と同じ正像を見ることができ、簡単に写真調画像を作製することができた。画像形成面は透明部の下にあり、重ね部材22と透明部21aとで挟まれているので外部から印刷面を直接傷つけることがなくなる為に保存性が良好となっている。
【0025】
この転写方式における写真調画像の形成プロセス1の例では、定着過程に熱を用いず、記録媒体21と重ね媒体22とを粘着層を介して圧力のみで接着と定着を同時に行うので、定着過程が簡素化される。また、画像形成装置において、定着過程で熱を用いないので、大幅な電力消費量の削減を達成できる。
【0026】
上記図3、4における非加熱定着の方式では、モノクロ画像形成装置では問題ないが、カラー画像形成装置において問題を生ずる。図5(a)に示したように記録媒体21の透明粘着層21cにイエロートナーとマゼンタトナーによるカラー画像を形成して重ね媒体22を重ね、熱を使わず圧力のみで定着(接着)する場合を以下に例示する。
【0027】
この場合、図5(b)に示すように、イエロートナーとマゼンタトナーとが溶融せず、混ざり合わないために発色せず、かつ、記録媒体21と重ね媒体22との接着面にトナーが厚く存在するとその部位の接着力が弱くなり、保存性が低下する。そこで、以下のようにカラー画像を形成する場合に圧力と熱を加えるようにするとこの問題は解消した。
【0028】
[3・2]転写方式における写真調画像の形成プロセス2
図6(a)に示したように記録媒体21の透明粘着層21cにイエロートナーとマゼンタトナーによるカラー画像を形成して重ね媒体22を重ねた後、熱と圧力を加えて定着(接着)する場合を以下に例示する。
【0029】
この場合、図6(b)に示すように、イエロートナーとマゼンタトナーとが溶融し、混ざり合い赤(R)に発色する。かつ、トナーが溶融することにより複数トナーが混じり合うようになった。さらに、定着過程に圧力だけでなく、熱も加えることで、トナーが溶融し、溶融したトナーが透明媒体と非透明媒体の接着機能を果たすようになり、 透明媒体の粘着層にトナーが厚く転写された個所においても、非透明媒体との強い接着性を確保できるようになり、前記非加熱定着時のように、透明媒体粘着層にトナーが厚く転写されるとその部分の非透明媒体との接着性が弱くなるという問題も解決した。
【0030】
[3・3]転写方式の画像形成装置
図7は一般的な電子写真方式の画像形成装置の構成である。
<構成の説明>
この画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するため4つの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kを備える。尚、Y、M、C、Kの色順は、一例であり、他の並び順であっても構わない。
【0031】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと、帯電手段、現像手段、クリーニング手段を備えている。また、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの配置は、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの回転軸が平行になるように且つ転写紙移動方向に所定のピッチで配列するように設定されている。
【0032】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの上方には、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの表面にレーザー光を走査しながら照射する光書込ユニット3が、下方には転写紙を担持して各画像形成ユニットの転写部を通過するように搬送する転写搬送ベルト60を有するベルト駆動装置として転写ユニット6が配置されている。
【0033】
転写搬送ベルト60の外周面には、ブラシローラとクリーニングブレードから構成されたクリーニング装置85が接触するように配置されている。このクリーニング装置85により転写搬送ベルト60上に付着したトナー等の異物が除去される。
【0034】
転写ユニット6の側方にはベルト定着方式の定着ユニット7、排紙トレイ8等が備えられている。画像形成装置下部には、転写紙100が載置された給紙カセット4a、4bを備えている。また、画像形成装置側面から手差しで給紙を行う手差しトレイMFが備えられている。この他,トナー補給容器TCが備えられ、図示していない廃トナーボトル、両面・転写ユニット、電源ユニットなども二点鎖線で示したスペースSの中に備えられている。
【0035】
現像手段としての現像装置10Y、10M、10C、10Kは、いずれも同様の構成からなり、それらは使用するトナーの色のみが異なる二成分現像方式の現像装置10Y、10M、10C、10Kであり、トナーと磁性キャリアからなる現像剤が収容されている。
【0036】
現像装置10Y、10M、10C、10Kは感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kに対向した現像ローラ、現像剤を搬送・攪拌するスクリュー、トナー濃度センサ等から構成される。現像ローラは外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。トナー濃度センサの出力に応じて、トナー補給装置よりトナーが補給される。
【0037】
<画像形成の流れ>
先ず、帯電ローラに図示しない電源より所定の電圧が印加されて、対向する感光体ドラム表面11Y、11M、11C、11Kを帯電する。所定の電位に帯電した感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面には、引き続いて光書込ユニット3により画像データに基づくレーザー光が走査され、静電潜像が書き込まれる。静電潜像を担持した感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面が現像装置10Y、10M、10C、10Kに到達すると、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向配置される現像ローラにより、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面の静電潜像にトナーが供給されてトナー像が形成される。
【0038】
上記の動作が感光体ユニット2Y、2M、2C、2K全てに同様にして所定のタイミングで行われ、感光体ドラム11Y、11M、11C、11K表面にはそれぞれ所定のトナー色のトナー像が形成される。
【0039】
転写紙100は、給紙カセット4a、4bもしくは手差しトレイMFのいずれかから搬送され、レジストローラ5に到達したところで一端停止する。そして、感光体ユニット2Y、2M、2C、2Kの上記の画像形成動作にタイミングを合わせて、転写紙100がレジストローラ5により送り出され、転写搬送ベルト60によって搬送されながら、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11K上のトナー像が順次転写されていく。
【0040】
この転写紙100へのトナー像の転写は、転写搬送ベルト60を挟んで各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向配置されている一次転写ローラ67Y、67M、67C、67Kから、図示しない電源により感光体ドラム11Y、11M、11C、11上のトナーの極性と逆の極性の電圧が印加されることで行われる。
【0041】
そして、感光体ドラム11Kとの対向位置を通過し、4色のトナー像が重ね合わされた転写紙100は、引き続いて定着ユニット7に搬送され、熱と圧力を受けて画像を定着される。定着後、転写紙100は切り換え爪Gにより進路を選択されて矢印Cに沿う横方向、或いは矢印Bに沿う排紙トレイ8に向かう。
【0042】
本例に用いた画像形成装置は特別にこの構成を特徴としているわけではなく、例えば感光体ドラムの配置が4連タンデム方式でなくリボルバー方式である場合や、カラー画像形成装置でなくモノクロ画像形成装置である場合、書き込み方式としてレーザーではなくLEDを使用する場合、現像手段として2成分ではなく1成分である場合でも構わない。
【0043】
この画像形成装置で本発明の写真調画像を形成する場合には、転写紙100に代えて前記した記録媒体21を使用する。透明部21aに反転カラートナー画像が形成された記録媒体21は最後の転写が行なわれる感光体ドラム11Kの転写部を通過した後、定着ユニット7に至る前に、図示しない給紙手段から送り出される重ね媒体22と重ねられ、定着ユニット7に至る。定着ユニット7において加熱、加圧定着され一体化された画像記録媒体は排紙トレイ8に排出される。
【0044】
カラー画像形成装置でなく、ブラックトナーなどによる単色の画像形成装置で本発明の写真調画像を形成する場合においては、定着ユニットは加熱、加圧方式でもよいが、加圧のみで定着する方式でもよい。
【0045】
<反転像の形成手順>
本例の画像形成装置による透明部21aへの画像形成は画像形成装置に付帯して設けられた制御部のプログラムで実行され、記録媒体の透明部に対する画像形成を含め、図8に示す手順で行われる。つまり、ステップP−1で写真調プリントモードの選択がないと判断されればステップP−2へ進み、プリントすべき画像選択と、印刷指示がなされる。次に、ステップP−3で当該画像形成装置への印刷出力指示がなされる。ステップP−4で印刷目的に沿った用紙(記録媒体)の搬送と、印刷指示に沿った解像度、位置への画像形成が実行される。
【0046】
ステップP−1で写真調プリント選択があると判断されれば、ステップP−5へ進み、プリントすべき画像選択と、印刷指示がなされる。ステップP−6で少なくとも一部に透明部を有する記録媒体が給紙カセット等にセットされているか否かのチェックが行われ、NOならばステップP−7でエラーメッセージを表示する。YESならステップP−8へ進み、透明部のサイズに合わせて、透明部21aに形成される画像のサイズを拡大、縮小等して調整する。
【0047】
ステップP−9で透明部21aに裏表の反転画像を形成するべく、反転画像が形成されるように画像データを処理する。ステップP−10で画像が透明部21aと合うように画像書き出し位置を調整する。以下、ステップP−3へ続く。
このようにして、制御部により、記録媒体の透明部に、基画像を反転させた画像形成が行われる。
[4]インクジェット方式
[4・1]インクジェット方式における写真調画像の形成プロセス
図9は全部が透明部21cからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセス、図10は一部が透明部21c、残部が非透明部21bからなる記録媒体21に対する画像形成のプロセスをそれぞれ示す。図9において、透明部21cの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。図10では、透明部21cおよび非透明部21bの画像転写面全面に透明粘着層21cが形成されている。
【0048】
工程1
記録媒体21を画像形成装置の給紙部にセットする(図9(a)、図10(a))。
ここで、少なくとも、一部分が透明の記録媒体21を画像形成装置に通紙するという条件を、該画像形成装置に設定する方法としては、ユーザーが予め給紙手段の設定で指示する方法や、特定サイズの透明領域を予め装置に登録しておく方法等がある。
【0049】
工程2
画像形成領域が確定された後、少なくともこの確定された透明部21aに画像が形成されると判断した際には、予め装備された画像反転機能により自動的に画像を反転させてインクkによる反転画像を透明部21cに形成する(図9(b)、図10(b))。
【0050】
工程3
その後、別途設けた給紙系から重ね媒体22を記録媒体21の搬送タイミングに合わせて送り出し、反転画像が形成された記録媒体21の粘着層上に重ね媒体22を密着させる(図9(c)、図10(c))。
【0051】
工程4
トナー画像を挟んで密着させられた記録媒体21と重ね媒体22に、圧力をかけることにより、反転画像が形成された記録媒体21と重ね媒体22とを接着して一体化する(図9(d)、図10(d))。
この手法で得られた画像を記録媒体21の透明部21aであって粘着層の無い側の面(粘着層が設けられている面の反対面)から矢印Aで示すように方向で見ると、図1(d)に示したように、基画像と同じ正像を見ることができ、簡単に写真調画像を作製することができた。画像形成面は透明部の下にあり、重ね部材22と透明部21aとで挟まれているので外部から印刷面を直接傷つけることがなくなる為に保存性が良好となっている。
【0052】
この例では、作像方式にインクジェット方式を用いているため,画像形成装置の本体価格が安く、個人ユーザーや一般家庭などにも、安易に、保存性が良好な写真調の画像を得ることができる。
【0053】
通常のインクジェットプリンタなどの画像形成装置では、記録媒体21の透明部21aにインクkが多く吐出されると、その部分が重ね媒体22との接着性が弱くなる傾向にある。そこで、インクk自体に粘着性を持たせた粘着性のあるインクを用いることで、インク自体も記録媒体21と重ね部材22との接着機能を果たすようになり、記録媒体21の粘着層にインクが多く吐出された部位においても、重ね部材22との強い接着性を確保できるようになった。高粘着性インクの一例としては、(株)リコーの「ジェルジェットプリンター」のインクを挙げることができる。
【0054】
[4・2]インクジェット方式の画像形成装置
インクジェット方式で画像を形成する画像形成装置の例を図11、12を参照しつつ説明する。
この画像形成装置は図示しない対向する側面間に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ104でタイミングベルト105を介して図12で矢印E方向(主走査方向)に移動走査する。
【0055】
このキャリッジ103には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド107を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク液吐出方向を下方に向けて装着している。なお、記録ヘッド107を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエーターを用いたものを使用している。
【0056】
また、キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色のインクを供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108は図示しないインク供給チューブを介してメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
【0057】
この例では、サブタンク108と記録ヘッド107で液滴吐出装置を構成しているが、記録ヘッド107を液滴吐出ヘッドで構成し、別途サブタンク108を設ける構成とすることもできるし、あるいは、サブタンクを用いないでインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
【0058】
一方、給紙カセット110などの用紙積載部(圧板)111上に積載した用紙112を給紙するための給紙部として、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)113および給紙ローラ113に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114を備え、この分離パッド114は給紙ローラ113側に付勢されている。
【0059】
そして、この給紙部から給紙された用紙112を記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部として、用紙112を静電吸着して搬送するための搬送ベルト121と、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのカウンターローラ122と、略鉛直上方に送られる用紙112を略90度方向転換させて、搬送ベルト121上に倣わせるための搬送ガイド123と、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢された先端加圧コロ125とを備えている。また、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ126を備えている。
【0060】
ここで、搬送ベルト121は無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132およびタイミングローラ133を介して搬送ローラ127が回転されることで、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト121の裏面側には記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。
【0061】
また、図12に示すように、搬送ローラ127の軸にはスリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134およびセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
【0062】
帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nの荷重をかけている。また、キャリッジ103の前方側には、図2に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール142を設け、キャリッジ103の前面側にはエンコーダスケール142のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ143を設け、これらによって、キャリッジ103の主走査方向位置(ホーム位置)を検出するためのエンコーダ144を構成している。
【0063】
さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部と、排紙ローラ152および排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニット161が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット161は搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト121との間に給紙する。
【0064】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部(用紙積載部111)から用紙112はガイド115で案内され、搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、さらに先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125で搬送ベルト121に押し付けられ、略90度、搬送方向を転換される。
【0065】
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。
【0066】
このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、該用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
【0067】
そこで、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の記録を行う。記録信号又は用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
【0068】
なお、本発明にかかる画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ、複写装置およびこれらの複合機などにも適用することができる。また、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液滴吐出ヘッドや液滴吐出装置、或いはこれらを備える画像形成装置にも適用することができる。
【0069】
この画像形成装置で本発明の写真調画像を形成する場合には、用紙112に代えて前記した記録媒体21を使用する。透明部21aに記録ヘッド107より吐出されるインクkにより反転カラートナー画像が形成された記録媒体21は記録ヘッド107を通過した後、排紙コロ153に至る前に、図示しない給紙手段から送り出される重ね媒体22と重ねられ、排紙ローラ152と排紙コロ153とのニップ圧により加圧されて一体化され、排紙トレイ8に排出される。
【0070】
<反転像の形成手順>
本例の画像形成装置による透明部21aへの画像形成は画像形成装置に付帯して設けられた制御部のプログラムで実行され、記録媒体の透明部に対する画像形成を含め、転写方式の画像形成装置について既に説明した図8に示す手順に準じて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)乃至(d)はそれぞれ少なくとも一部に透明部を有する第1のシート状媒体(記録媒体)を例示した平面図である。
【図2】(a)乃至(d)は写真調画像を有する記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図3】(a)乃至(d)はトナー像転写方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図4】(a)乃至(d)はトナー像転写方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図5】(a)、(b)は熱を使わず圧力だけで定着、接着する方式における画像記録媒体の製作手順およびその問題点を説明した図である。
【図6】(a)、(b)は熱と圧力定着、接着する方式における画像記録媒体の製作手順およびその利点を説明した図である。
【図7】転写方式の画像形成装置の構成の概略を例示した図である。
【図8】画像形成装置に付帯して設けられた制御部における画像形成プロセスを説明した流れ図である。
【図9】(a)乃至(d)はインクジェット方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図10】(a)乃至(d)はインクジェット方式により写真調画像を有する画像記録媒体を作製する手順を段階的に説明した図である。
【図11】インクジェット方式の画像形成装置の側面図である。
【図12】図11に示したインクジェット方式の画像形成装置の要部平面図である。
【符号の説明】
【0072】
20M 基画像
20m 記録画像
21 第1のシート状媒体(記録媒体)
21a 透明部
21b 非透明部
21c 透明粘着層
22 第2のシート状媒体(重ね媒体)
22c 重なり部
22d 余白部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシート状媒体と第2のシート状媒体とが一体化されてなる画像記録媒体であって、
前記第1のシート状媒体は少なくとも一部に透明部を有し、この透明部の画像が形成された面が透明粘着層からなるとともに、この透明粘着層の表面に形成された画像が反転画像であり、
前記第2のシート状媒体は前記反転画像の色とは異なる色の非透明材からなり、前記第1のシート状媒体の前記反転画像を含む該透明粘着層に該第2のシート状媒体が重ねて一体化されてなることを特徴とする画像記録媒体。
【請求項2】
少なくとも一部が透明で該透明部における画像が形成される側の表面が透明粘着層で覆われている第1のシート状媒体の前記透明粘着層の表面に反転画像を形成した後、非透明で前記反転画像とは異なる色の第2のシート状媒体を、前記反転画像を含む前記透明粘着層に重ねて一体化して作製することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体の紫外線域波長の光の透過率が50パーセント以下であることを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に対する反転像の形成を転写で行い、反転像が形成された前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて作製することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に前記圧力と共に熱を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて作製することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクジェット方式の射出されるインクで行なうことを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項7】
請求項6に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の画像記録媒体の製法において、
前記インクが粘着性を有していることを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項9】
請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用する静電記録方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成を転写で行なうことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用するインクジェット方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクで行なうことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
第1のシート状媒体と第2のシート状媒体とが一体化されてなる画像記録媒体であって、
前記第1のシート状媒体は少なくとも一部に透明部を有し、この透明部の画像が形成された面が透明粘着層からなるとともに、この透明粘着層の表面に形成された画像が反転画像であり、
前記第2のシート状媒体は前記反転画像の色とは異なる色の非透明材からなり、前記第1のシート状媒体の前記反転画像を含む該透明粘着層に該第2のシート状媒体が重ねて一体化されてなることを特徴とする画像記録媒体。
【請求項2】
少なくとも一部が透明で該透明部における画像が形成される側の表面が透明粘着層で覆われている第1のシート状媒体の前記透明粘着層の表面に反転画像を形成した後、非透明で前記反転画像とは異なる色の第2のシート状媒体を、前記反転画像を含む前記透明粘着層に重ねて一体化して作製することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体の紫外線域波長の光の透過率が50パーセント以下であることを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に対する反転像の形成を転写で行い、反転像が形成された前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて作製することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に前記圧力と共に熱を加えて両シート状媒体を接着して一体化すると共に画像を定着させて作製することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクジェット方式の射出されるインクで行なうことを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項7】
請求項6に記載の画像記録媒体の製法において、
前記第1のシート状媒体に前記第2のシート状媒体を重ね、重なり部分に圧力を加えて両シート状媒体を接着して一体化することを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の画像記録媒体の製法において、
前記インクが粘着性を有していることを特徴とする画像記録媒体の製法。
【請求項9】
請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用する静電記録方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成を転写で行なうことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項2又は3の何れかに記載の画像記録媒体の製法に使用するインクジェット方式の画像形成装置であって、前記第1のシート状媒体に対する反転画像の形成をインクで行なうことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−26407(P2008−26407A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196028(P2006−196028)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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