画像記録方法および画像記録装置
【課題】セキュリティ画像を記録するためのクリアインクのドット密度を効率よく決定する。
【解決手段】テストパターンデータに従って、基準領域930および比較領域931〜934に同一の均一有色画像が記録され、比較領域931〜934の均一有色画像上に、ドット密度が異なる均一クリア画像が記録される。基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差および光沢度差が測定され、基準領域930に対して濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である比較領域が選択される。記録媒体9上に有色の保護対象画像を記録し、保護対象画像のセキュリティ領域上に、選択された比較領域におけるドット密度にて、クリアインクによるセキュリティ画像が記録される。
【解決手段】テストパターンデータに従って、基準領域930および比較領域931〜934に同一の均一有色画像が記録され、比較領域931〜934の均一有色画像上に、ドット密度が異なる均一クリア画像が記録される。基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差および光沢度差が測定され、基準領域930に対して濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である比較領域が選択される。記録媒体9上に有色の保護対象画像を記録し、保護対象画像のセキュリティ領域上に、選択された比較領域におけるドット密度にて、クリアインクによるセキュリティ画像が記録される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上にセキュリティ画像を記録する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録物の偽造防止のために、透かし等のセキュリティ画像を含むものが作成されている。特許文献1に開示されるインクジェットプリンタの吐出部は、有色インクの微小液滴を吐出する吐出機構、および、透明インクの微小液滴を吐出する吐出機構を備え、有色インクにより印刷媒体の有色画像印刷領域に有色画像が描画される。また、透明インクにより、印刷媒体上の有色画像が透明インクにより被覆されるとともに有色画像印刷領域の周囲の余白領域に暗号画像が描画される。インクジェットプリンタでは、有色画像の被覆および暗号画像の描画が、同一の吐出機構から吐出される透明インクにより行われることにより、有色画像の耐摩耗性の向上およびセキュリティの向上を、インクジェットプリンタの製造コストを低減しつつ実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−214928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有色画像上にクリアインクを吐出することにより、記録物を傾けて観察した場合にのみ認識可能となるセキュリティ画像を記録する手法を採用する場合、クリアインクの量が多いと、インクの滲みにより下地の画像の見た目の濃度が変わることがある。記録物上の有色画像およびセキュリティ画像が記録された部位と、有色画像のみが記録された部位との間の濃度差や色差が大きいと、記録物を視認する角度によらずセキュリティ画像が認識されてしまう。また、記録物上の有色画像およびセキュリティ画像が記録された部位と、有色画像のみが記録された部位との間の光沢度差が小さいと、記録物を傾けてもセキュリティ画像を認識することができない。このため、セキュリティ画像を記録する際には、濃度差や光沢度差等が好ましいものとなるように、記録媒体上に何度もセキュリティ画像を記録してクリアインクのドット密度やドットサイズを決定する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度またはドットサイズを効率よく決定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録方法であって、a)基準領域および複数の比較領域に同一の有色画像が記録された記録媒体を準備する工程と、b)前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクの微小液滴を吐出することにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像を記録する工程と、c)前記基準領域に対して予め定められた濃度差または色差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域を選択する工程と、d)記録媒体上に記録された有色の保護対象画像上に、前記c)工程にて選択された前記比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像を記録し、前記b)工程にて前記基準領域に均一クリア画像が記録された場合に、前記保護対象画像上の前記セキュリティ画像の記録領域以外の領域に、前記基準領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像を記録する工程とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録方法であって、前記基準領域および前記複数の比較領域に記録される有色画像が、均一有色画像である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録方法であって、有色インクの微小液滴を吐出する吐出部およびクリアインクの微小液滴を吐出する吐出部を有する画像記録装置により、前記a)工程において、前記基準領域および前記複数の比較領域に有色画像が記録され、前記b)工程において、前記複数の比較領域、または、前記基準領域および前記複数の比較領域に均一クリア画像が記録される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像記録方法であって、前記a)工程および前記b)工程が、実質的に並行して行われる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)およびb)工程が実行され、前記c)工程において、前記複数色または複数濃度の有色画像上に同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像が記録された共通の比較領域が選択される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)ないしc)工程が実行され、前記d)工程において、前記c)工程における複数の比較領域の選択結果に基づいて、前記保護対象画像の色または濃度に従ってドット密度およびドットサイズを変更しつつ前記セキュリティ画像が記録される。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録方法であって、前記クリアインクが水性インクである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録装置であって、少なくとも1つの有色インクおよびクリアインクの微小液滴を記録媒体に向けて吐出する複数の吐出部と、前記記録媒体を前記複数の吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体上に有色の保護対象画像を記録し、前記保護対象画像上に前記クリアインクによりセキュリティ画像を記録する制御部とを備え、前記制御部が、前記セキュリティ画像の記録の際の前記クリアインクのドット密度またはドットサイズを決定するためのテストパターンのデータを記憶し、前記制御部が、前記テストパターンのデータに従って前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、記録媒体上の基準領域および複数の比較領域に、有色インクにより、同一の有色画像が記録され、前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像が記録される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度またはドットサイズを効率よく決定することができる。請求項6の発明では、セキュリティ画像をより適切に記録することができる。請求項7の発明では、水性インクを用いることにより、クリアインクの量の微調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る画像記録装置を示す図である。
【図2】吐出部の底面図である。
【図3】画像記録装置の機能構成を示す図である。
【図4】画像を記録する流れを示す図である。
【図5】元画像データおよび閾値マトリクスを抽象的に示す図である。
【図6】記録物を示す図である。
【図7】記録物を示す図である。
【図8】クリアインクのドット密度を決定する流れを示す図である。
【図9】テストパターンを示す図である。
【図10】基準領域および比較領域の濃度および光沢度、並びに、基準領域に対する比較領域の濃度差および光沢度差を示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係る画像記録装置の制御部を示す図である。
【図12】基準領域および比較領域の濃度および光沢度、並びに、基準領域に対する比較領域の濃度差および光沢度差を示す図である。
【図13】第3の実施の形態に係る画像記録装置により記録されたテストパターンを示す図である。
【図14】テストパターンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット方式の画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、複数の記録媒体9上に画像を順次記録する枚様式の装置である。本実施の形態では、記録媒体9として記録紙が利用される。画像記録装置1により、記録媒体9上に人物画やイラスト等の多階調の有色画像である保護対象画像、および、保護対象画像上に記録された無色のセキュリティ画像を含む記録物が出力される。
【0017】
画像記録装置1は、複数の吐出口からインクの微小液滴を記録媒体9に向けて吐出するヘッド21、図1中の(+Y)方向に記録媒体9をヘッド21に対して相対的に移動する移動機構22、複数の記録媒体9を保持するとともに複数の記録媒体9を移動機構22に順次供給する供給部23、画像が記録された記録媒体9を回収する回収部26、および、これらの構成を制御する制御部を備える。画像記録装置1では、記録媒体9の(+Y)方向への相対移動に同期して、ヘッド21からのインクの吐出が、制御部により制御されることにより、記録媒体9上に保護対象画像が記録され、保護対象画像上にセキュリティ画像が記録される。なお、図1中のX方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直であり、Z方向が上下方向に対応する。以下の説明では、(+Y)方向を「移動方向」という。
【0018】
移動機構22は、記録媒体9の移動方向に沿って配列されるとともに図示省略のモータに接続された2個のベルトローラ222、2個のベルトローラ222に掛けられたベルト223、ベルト223上に取り付けられた複数のテーブル221、および、リニアモータ機構224を備える。移動機構22では、ベルトローラ222が反時計回りに回転することにより、テーブル221が周回軌道に沿って高速にて移動する。画像の記録時には、1枚の記録媒体9を保持したテーブル221がベルト223から取り外され、リニアモータ機構224により精度良く移動方向に移動する。そして、画像の記録が終了すると、テーブル221はベルト223に再度取り付けられる。
【0019】
ヘッド21は、前処理部212、5個の吐出部211、並びに、前処理部212および各吐出部211の(+Y)側に配置される6個のヒータ213を備える。前処理部212、5個の吐出部211および6個のヒータ213は移動方向に配列される。前処理部212は、画像が記録される前の記録媒体9に透明な前処理剤を塗布する。5個の吐出部211はそれぞれ、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)およびY(イエロ)の各有色インク並びにクリアインクを吐出する。クリアインクは水性インクである。ヒータ213は、記録媒体9に熱風を吹き付けることにより、記録媒体9上に吐出された有色インクおよびクリアインクを乾燥させる。
【0020】
図2は、吐出部211の底面図である。吐出部211の底面には、それぞれがインクの微小液滴を記録媒体9に向けて(図1中の(−Z)方向に)吐出する複数の吐出口210が設けられる。複数の吐出口210は、数個単位で図2における右斜め下方向へと並ぶ。なお、図2では吐出口210の配列を簡略化して示しており、実際には、吐出部は多数の吐出ユニットの集合体であり、多数の吐出口210が様々な態様にて配列されてよい。複数の吐出口210の全体では、吐出口210は記録媒体9の移動方向に垂直かつ記録媒体9の記録面に平行な方向であるX方向に配列された状態となっている。以下、X方向を、吐出口210の「配列方向」と呼ぶ。吐出部211では、圧電素子により吐出口210からの微小液滴の吐出が実現されるが、他の手法により微小液滴を吐出する吐出部が採用されてもよい。
【0021】
前処理部212および吐出部211は、吐出口210の配列方向に関して記録媒体9上の印刷領域の全体に亘って(ここでは、記録媒体9の幅方向の全体に亘って)設けられており、移動機構22による記録媒体9のヘッド21に対する1回の相対移動により(すなわち、記録媒体9が移動方向へと移動してヘッド21の下方を1回通過するのみで)、記録媒体9への網点画像の記録が完了する(いわゆる、ワンパス印刷が行われる)。
【0022】
図3は、画像記録装置1の機能構成を示すブロック図である。制御部3は、各種演算を行う演算部4、および、ヘッド21や移動機構22等の各構成を制御する本体制御部10を備える。演算部4は、画像メモリ41、複数のマトリクス記憶部42、比較器43(ハーフトーン化回路)、および、テストパターン生成部46を備える。画像メモリ41は、保護対象画像を示す保護対象画像データ411、セキュリティ画像を示すセキュリティ画像データ412、および、テストパターンデータ413を記憶する。以下、保護対象画像データ411およびセキュリティ画像データ412をまとめて「元画像データ」という。また、元画像データに含まれるCMYKの有色の成分および無色の成分をまとめて「色成分」という。
【0023】
複数のマトリクス記憶部42は、複数の色成分について閾値マトリクスをそれぞれ記憶する。閾値マトリクスは、複数の閾値の2次元配列にて構成される。なお、マトリクス記憶部42は、SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。比較器43は、元画像データと閾値マトリクスとを色成分毎に比較する比較部である。比較器43は、演算部4がプログラムを実行することによりソフトウェアとして実現されてもよい。本体制御部10は、移動機構22による記録媒体9のヘッド21に対する相対移動を制御する移動制御部102、および、記録媒体9の相対移動に同期してヘッド21の複数の吐出口からのインクの吐出を制御する吐出制御部101を備える。
【0024】
テストパターン生成部46は、テストパターンデータ413を生成する。テストパターンデータ413は、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度の決定に用いられる(詳細については後述)。テストパターン生成部46は、演算部4がプログラムに従って演算処理を実行することにより実現される機能である。
【0025】
次に、画像記録装置1が画像を記録する動作の詳細について図4を参照しつつ説明する。画像記録装置1では、外部のコンピュータから演算部4の画像メモリ41に元画像データが入力されて記憶される。
【0026】
図5は、元画像データ70および閾値マトリクス710を抽象的に示す図である。元画像データ70および閾値マトリクス710のそれぞれでは、X方向に対応する行方向(図5中にてx方向として示す。)、および、行方向に垂直な列方向(図5中にてy方向として示す。)に複数の画素または複数の要素が配列されている。以下の説明では、元画像データの各色成分は0〜255の階調範囲にて表現されるものとする。
【0027】
元画像データ70が画像メモリ41に記憶されると、保護対象画像データがC,M,Y,Kの各色に分版され、比較器43にて分版された画像データを閾値マトリクス710と比較することにより、各色成分の網点画像データが生成される。さらに、比較器43にてセキュリティ画像データ412を閾値マトリクス710と比較することにより、セキュリティ画像データ412に対応する網点画像データが生成される(ステップS11)。実際には、比較器43に、C,M,Y,Kの各色の画像データおよびセキュリティ画像データ412に対応する複数の比較部が用意され、C,M,Y,Kの各色の画像データおよびセキュリティ画像データ412に対して網点化処理が並行して行われる。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0028】
元画像データ70の網点化、すなわち、ハーフトーン化の際には、図5に示すように元画像データ70が示す全体の領域を同一の大きさの多数の領域に分割してハーフトーン化の単位となる繰り返し領域71が設定される。各マトリクス記憶部42は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス710を記憶している。そして、概念的には元画像データ70の各繰り返し領域71と各色成分の閾値マトリクス710とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の当該色成分の階調値(画素値)と閾値マトリクス710の対応する閾値とが比較されることにより、記録媒体9上のその画素の位置に記録(当該色のドットの形成)を行うか否かが決定される。
【0029】
実際には、図3の比較器43が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて画像メモリ41から元画像データ70の1つの画素の階調値が色成分毎に読み出される。一方、アドレス発生器では元画像データ70中の当該画素に相当する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、各色成分の閾値マトリクス710における1つの閾値が特定されてマトリクス記憶部42から読み出される。そして、画像メモリ41からの階調値とマトリクス記憶部42からの閾値とが比較器43にて色成分毎に比較されることにより、各色成分の2値の出力画像データにおけるその画素の位置(アドレス)の値が決定される。したがって、一の色成分に着目した場合に、図5に示す多階調の元画像データ70において、階調値が閾値マトリクス710の対応する閾値よりも大きい位置には、例えば、値「1」が付与され(すなわち、ドットが置かれ)、残りの画素には値「0」が付与され(すなわち、ドットは置かれず)、2値の出力画像データが当該色成分の網点画像データとして生成される。
【0030】
元画像データ70において最初に記録される部分(例えば、最も(+y)側の複数の繰り返し領域71)の網点画像データ(の部分)が生成されると、移動制御部102が移動機構22を制御することにより記録媒体9のヘッド21に対する相対移動が開始される(図4:ステップS12)。また、吐出制御部101により、網点画像データに従って各色のインクの吐出が制御される。元画像データ70において次に記録される部分の網点画像データが生成されると、記録媒体9の相対移動に同期して複数の吐出口210から各色のインクがさらに吐出される。このように、上記ハーフトーン化処理(網点画像データの生成処理)を行いつつ、記録媒体9の相対移動に並行して複数の吐出口210から各色のインクの吐出が制御される。
【0031】
元画像データにおいて最後に記録される部分の網点画像データに基づいて吐出口210からインクが吐出されると、保護対象画像にセキュリティ画像を重ねた網点画像の記録が完了する(ステップS13,S14)。その後、記録媒体9が回収部26に回収され、記録媒体9を移動させる動作が停止する(ステップS15)。
【0032】
図6は、画像記録装置1から出力された記録物90を正面から見た図であり、図7は、記録物90を斜めから見た図である。記録物90では、記録媒体9上に保護対象画像921が記録され、保護対象画像921上にセキュリティ画像922が記録されている。図6および図7では、保護対象画像921上のドット密度が50%のブラックのチント領域にセキュリティ画像922が記録される。セキュリティ画像922は、所定のドット密度のクリアインクにて記録されており、保護対象画像921上のセキュリティ画像922が記録される領域(クリアインクと重なる領域であり、以下、「セキュリティ領域」という。)と周囲の領域との間における濃度差が小さく、かつ、光沢度差が大きい。ここで、ドット密度とは、全画素位置であるドットが描画可能な位置のうちインクが吐出される位置の割合をいう。濃度差が小さいことにより、セキュリティ領域と周囲の領域との間における濃度の不連続な変化が認識されない。したがって、図6に示すように、記録物90を正面から観察した場合は、セキュリティ画像922は認識されない。
【0033】
また、光沢度差が大きいことにより、図7に示すように、記録物90を斜めから観察した場合に、保護対象画像921上にセキュリティ画像922が光沢感を有するように浮き上がって認識される。このように、記録物90に、特殊な用具を用いずに視認可能なセキュリティ画像922を記録する、いわゆる、オバート技術により、正確な複製や偽造が困難となり、保護対象画像921のセキュリティを向上することができる。
【0034】
次に、セキュリティ画像のドット密度を決定する手法について図8を参照しつつ説明する。まず、テストパターン生成部46がテストパターンデータ413を生成し、テストパターンデータ413が画像メモリ41に記憶される。そして、テストパターンデータ413が網点化され、、記録媒体9の移動を制御しつつ複数の吐出口210からのインクの吐出が制御されることにより、テストパターンが記録媒体9上に記録される。
【0035】
図9は、テストパターン91を例示する図である。テストパターン91には、予め、基準領域930と複数の比較領域931〜934とが設定されている。テストパターン91の記録では、画像記録装置1により記録媒体9上における基準領域930および比較領域931〜934に、ブラックインクの微小液滴が吐出され、ブラックのチント画像、すなわち、ドット密度が一定の画像(以下、「均一有色画像」と呼ぶ。)が記録される。これらの領域には同一の均一有色画像が記録される(ステップS21)。
【0036】
続いて、比較領域931〜934にクリアインクの微小液滴が吐出され、均一有色画像上にクリアインクによるチント画像、すなわち、ドット密度が一定の画像(以下、「均一クリア画像」と呼ぶ。)が記録される(ステップS22)。比較領域931〜934における均一クリア画像のドット密度は、互いに異なり、順に、10%、20%、30%、40%である。本実施の形態では、クリアインクのドットサイズは一定であるものとする。
【0037】
画像記録装置1では、均一有色画像を記録する工程と、均一クリア画像を記録する工程とは、ヘッド21によりほぼ同時に、または、部分的に並行して行われる。すなわち、実質的に並行して行われる。
【0038】
テストパターン91が出力されると、市販の濃度計を用いて基準領域930および比較領域931〜934の濃度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差が求められる。また、市販の光沢度計を用いて基準領域930および比較領域931〜934の光沢度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の光沢度差が求められる。なお、光沢度計にて基準領域930および比較領域931〜934を測定する際には、例えば、テストパターン91に入射する入射光とテストパターン91の記録面に垂直な法線とのなす角である入射角、および、テストパターン91から反射して受光部に入射する反射光と上記法線とのなす角である受光角が60度に設定される。もちろん、光沢度の測定方法として他の方法が採用されてもよい。
【0039】
図10は、基準領域930および比較領域931〜934の濃度および光沢度、並びに、基準領域930に対する比較領域931〜934の濃度差および光沢度差を例示する図である。一般に、濃度が異なる2つの領域を有する記録物において、反射濃度計に基づく濃度差が0.05以下である場合、人間の視覚により、当該2つの領域を判別することができない。また、クリアインクを塗布した領域と塗布されていない領域とが存在する記録物において、この2つの領域の光沢度計に基づく光沢度差が5以上であることにより、記録物を傾けて視認した場合に当該2つの領域を判別することができる。
【0040】
したがって、濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度にてセキュリティ画像922を記録すると、記録物90を正面から観察した場合に保護対象画像921のみが認識され、記録物90を傾けて観察した場合に保護対象画像921およびセキュリティ画像922が認識されることになる。
【0041】
図10の例では、均一有色画像のドット密度が50%であり、均一クリア画像のドット密度が20%である場合に、濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である。この結果に基づいて、複数の比較領域931〜934から図9の中央の比較領域932が選択され(ステップS23)、比較領域932の均一クリア画像のドット密度が、セキュリティ画像922のドット密度として決定される。選択可能な比較領域の数が複数である場合は、そのうちの1つが選択される。例えば、最も光沢度差が大きい比較領域が選択される。
【0042】
その後、画像記録装置1により、記録媒体9上に保護対象画像921が記録されるとともに、保護対象画像921上に、クリアインクによりドット密度が20%のセキュリティ画像922が記録される(ステップS24)。なお、記録物において、セキュリティ画像の認識が容易でない場合は、他の候補となっている比較領域が選択され、再度、保護対象画像およびセキュリティ画像の記録が実行される。
【0043】
以上、第1の実施の形態に係る画像記録装置1およびセキュリティ画像のドット密度の決定作業について説明したが、ドット密度の決定作業では、基準領域930および複数の比較領域931〜934を有するテストパターン91を記録して、予め定められた濃度差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域が選択される。そして、選択された比較領域に記録された均一クリア画像のドット密度にて、セキュリティ画像922が記録される。このように、基準領域930および複数の比較領域931〜934を有するテストパターン91を作成することにより、セキュリティ画像922を記録する際のクリアインクのドット密度を効率よく決定することができる。
【0044】
基準領域930および比較領域931〜934に記録される有色画像が、均一有色画像であることにより、濃度および光沢度の測定が容易となる。画像記録装置1では、有色インクを吐出する吐出部211およびクリアインクを吐出する吐出部211を有することから、セキュリティ画像を含む画像およびテストパターン91を短時間にて記録することができる。
【0045】
画像記録装置1では、予め設定された複数の比較領域931〜934を含む1つの大きな領域に均一有色画像を記録し、比較領域931〜934に均一クリア画像が記録されてもよい。この場合、記録媒体9上の比較領域以外の領域が基準領域として利用される。また、複数の比較領域は隣接してもよい。他の実施の形態においても同様である。
【0046】
第1の実施の形態では、ドット密度に代えて、記録媒体9上に描画されるクリアインクのドットサイズを調整することにより、保護対象画像921上に適切なセキュリティ画像922が記録されてもよい。クリアインクのドットサイズの決定作業の流れは、上述のドット密度の決定作業の流れとほぼ同様である。
【0047】
まず、テストパターン生成部46により、テストパターンデータ413が生成され、テストパターンデータ413に従って記録媒体9にテストパターン91が記録される。このとき、基準領域930および比較領域931〜934に同一の均一有色画像が記録され、比較領域931〜934の均一有色画像上に均一クリア画像が記録される(ステップS21,S22)。比較領域931〜934の均一クリア画像のドット密度は同じであり、ドットサイズは互いに異なる。
【0048】
次に、基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差および光沢度差が測定され、基準領域930に対する濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である比較領域が選択される(ステップS23)。その後、記録媒体9上に記録された保護対象画像921上に、選択された比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度およびドットサイズにて、セキュリティ画像922が記録される(ステップS24)。
【0049】
以上のように、基準領域930および複数の比較領域931〜934を有するテストパターン91を作成することにより、セキュリティ画像922におけるクリアインクのドットサイズを効率よく決定することができる。画像記録装置1では、クリアインクに水性インクが用いられる。これにより、吐出されるインク量の微調整が可能となり、より適切なセキュリティ画像の記録が実現される。
【0050】
第1の実施の形態では、セキュリティ画像922のドット密度およびドットサイズが異なる複数の比較領域から、基準領域に対して予め定められた濃度以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域を選択することにより、選択された比較領域中の均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像922が記録されてもよい。例えば、均一クリア画像におけるクリアインクの濃度(ここでの濃度は、画像データが示す濃度をいう。)が同一であっても、ドット密度が高くドットサイズが小さいものと、ドット密度が低くドットサイズが大きいものとをテストパターン91に含めることにより、より適切なセキュリティ画像922の記録条件を容易に見いだすことが可能となる。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0051】
さらに、濃度差に代えて、または、濃度差に加えて、市販の測色計を用いて基準領域に対する比較領域の色差が測定されてもよい。色差としては、国際照明委員会(CIE)が規定するCIE1976の色差式により求められる値が用いられる。一般に、色差が異なる2つの領域を有する記録物において、色差が1.0以下である場合、人間の視覚により当該2つの領域を判別することができない。そこで、ステップS23において、色差が1.0以下(または、色差が1.0以下かつ濃度差が0.05以下)であり、さらに光沢度差が5以上である比較領域が選択され、ステップS24においてこの比較領域のドット密度およびドットサイズにてセキュリティ画像が記録される。このような作業によっても、適切なセキュリティ画像の記録が実現される。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0052】
図11は、第2の実施の形態に係る画像記録装置1の制御部3を示す図である。制御部3の画像メモリ41には、保護対象画像を被覆するための均一クリア画像のデータが記憶されている。以下、当該均一クリア画像を「クリアコーティング画像」といい、クリアコーティング画像のデータを「クリアコーティングデータ416」という。演算部4は、マスキング部44および合成部45をさらに備える。これらは、ハードウェアとして設けられてもよく、演算部4がプログラムを実行することにより実現されてもよい。図11では、テストパターン生成部46の図示を省略している。画像記録装置1の他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、同様の構成には同符号を付している。また、保護対象画像の記録動作も第1の実施の形態と同様である。
【0053】
第2の実施の形態では、保護対象画像上のセキュリティ画像以外の領域が、均一なクリアコーティング画像にて覆われる。すなわち、セキュリティ画像とクリアコーティング画像とを合成したクリア画像が、保護対象画像上に記録される。以下、この合成された画像を「合成セキュリティ画像」と呼ぶ。
【0054】
合成セキュリティ画像を記録するための網点画像データが生成される際には、まず、マスキング部44に、クリアコーティングデータ416およびセキュリティ画像データ412が読み出され、クリアコーティング画像のセキュリティ画像(の0よりも大きい画素値を有する領域)と重なる領域にマスキング処理が施される。具体的には、クリアコーティング画像において、セキュリティ画像と重なる領域の画素の画素値がクリアインクの吐出の休止(OFF)を示す値(例えば、画素値「0」)に変更される。
【0055】
比較器43にて、マスキング処理が施されたクリアコーティングデータ416を網点化して網点画像データ(以下、「第1網点画像データ」という。)が生成される。また、比較器43では、第1網点画像データの生成に並行して、セキュリティ画像データ412に対応する網点画像データ(以下、「第2網点画像データ」という。)が生成される。合成部45では、第1網点画像データと第2網点画像データとが合成され、合成セキュリティ画像を示すデータが生成される。
【0056】
第1網点画像データと第2網点画像データの合成では、対応する画素の論理和が当該画素の位置における画素値とされる。これにより、保護対象画像のセキュリティ領域にセキュリティ画像が記録され、セキュリティ領域以外の領域にクリアコーティング画像が記録される。
【0057】
以下の説明では、第1の実施の形態で挙げた例と同様に、保護対象画像のセキュリティ領域はドット密度が50%のブラックのチント領域に含まれるものとする。また、クリアコーティングとして保護対象画像上にドット密度が10%のクリアコーティング画像が記録されるものとする。以下のテストパターンの説明では、図9の符号を参照する。
【0058】
セキュリティ画像のドット密度を決定する際には、まず、テストパターン生成部46によりテストパターンデータ413が生成され、テストパターンデータ413に基づいて、図9と同様に、記録媒体9上の基準領域930および複数の比較領域931〜934にドット密度が50%であるブラックの均一有色画像が記録される(ステップS21)。これらの均一有色画像は同一である。続いて、基準領域930および複数の比較領域931〜934上にドット密度が異なる均一クリア画像が記録される(ステップS22)。基準領域930上の均一クリア画像は、保護対象画像上に記録されるクリアコーティング画像と同じ10%のドット密度である。比較領域931〜934上の均一クリア画像のドット密度は、順に、20%、30%、40%、50%である。本実施の形態では、クリアインクのドットの大きさは一定であるものとする。以下、比較領域931〜934上の均一クリア画像を基準領域930上の均一クリア画像と区別するときは「比較クリア画像」という。
【0059】
基準領域930および比較領域931〜934上に均一有色画像および均一クリア画像が記録されると、基準領域930および比較領域931〜934の濃度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差が求められる。さらに、基準領域930および比較領域931〜934の光沢度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の光沢度差が求められる。
【0060】
図12は、基準領域930および比較領域931〜934の濃度および光沢度、並びに、基準領域930に対する比較領域931〜934の濃度差および光沢度差を例示する図である。比較クリア画像のドット密度が30%である場合に、濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である。したがって、複数の比較領域931〜934から比較領域932が選択され(ステップS23)、比較領域932の比較クリア画像のドット密度が、セキュリティ画像のドット密度として決定される。
【0061】
その後、画像記録装置1により、記録媒体9上に、保護対象画像が記録されるとともに、保護対象画像上に合成セキュリティ画像が記録される。すなわち、保護対象画像のセキュリティ領域上にドット密度が30%であるセキュリティ画像が記録され、セキュリティ領域以外の領域にドット密度が10%であるクリアコーティング画像が記録される(ステップS24)。
【0062】
画像記録装置1の上記動作および作業により、保護対象画像がクリアコーティング画像に覆われる場合であっても、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度を効率よく決定することができる。
【0063】
第2の実施の形態においても、セキュリティ画像を記録する際の適切なドットサイズが決定されてよい。クリアインクのドットサイズの決定作業は、第1の実施の形態にて説明した作業に準じたものとなる。すなわち、テストパターン91として、基準領域930および複数の比較領域931〜934に均一有色画像が記録され、その上にドット密度が同じであり、ドットサイズの異なる均一クリア画像が記録される。基準領域930に記録される均一クリア画像のドット密度およびドットサイズは、保護対象画像上のクリアコーティング画像のものと同じである。
【0064】
そして、基準領域930に対して予め定められた濃度差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上となる比較領域が選択され、選択された比較領域の均一クリア画像と同じドット密度およびドットサイズにて保護対象画像上にセキュリティ画像が記録される。また、基準領域930の均一クリア画像と同じドット密度およびドットサイズにてセキュリティ領域以外の領域にクリアコーティング画像が記録される。
【0065】
第2の実施の形態においても、複数の比較領域にドット密度およびドットサイズが異なる複数の比較クリア画像が記録されてもよい。
【0066】
次に、セキュリティ画像のドット密度を決定する他の手法を第3の実施の形態として説明する。第3の実施の形態における画像記録装置の構造は、第1の実施の形態と同様である。図13は、第3の実施の形態におけるテストパターン92を示す図である。テストパターン92は、保護対象画像のセキュリティ領域に複数の色や複数の濃度の領域が存在する場合に用いられる。
【0067】
テストパターン92では、複数の色および複数のドット密度の均一有色画像と複数のドット密度の均一クリア画像との組み合わせが、表形式となっている。テストパターン92の左欄には、均一有色画像の色およびドット密度が表示され、上欄には均一クリア画像のドット密度が表示される。本実施の形態では、クリアインクのドットサイズは一定であるものとする。
【0068】
テストパターン92では、左欄の右側に基準領域が設けられ、各基準領域の右側に複数の比較領域が設けられる。基準領域および比較領域には、対応する左欄に示す色およびドット密度の均一有色画像が記録される。比較領域には、均一有色画像上に、上欄に示すドット密度の均一クリア画像が記録される。
【0069】
左欄には、ドット密度が10%、20%・・・100%であるCMYKの各色、および、各色のドット密度が10%、20%・・・100%であるCMYKの混色が表示される。図13では、ドット密度が10%および100%となる各色の均一有色画像が記録された基準領域および比較領域のみを例示している。後述の図14においても同様である。上欄には、クリアインクのドット密度が10%、20%、30%、40%であることが表示される。
【0070】
テストパターン92が出力されると、、第1の実施の形態と同様に、基準領域および比較領域の濃度および光沢度が測定される。そして、各比較領域における基準領域に対する濃度差および光沢度差が取得される。このときの基準領域は、各比較領域の左側に位置するものである。さらに、予め定められた濃度差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上の比較領域が、各基準領域に対応して選択される。図13では、選択された比較領域を太い破線にて囲って示している。テストパターン92の記録および測定作業により、実質的に、複数の色および複数の濃度の有色画像のそれぞれに対して、図8のステップS21〜S23が実行される。以下、選択された比較領域を「選択比較領域」という。
【0071】
保護対象画像のセキュリティ領域上にセキュリティ画像が記録される際には、比較領域の上記選択結果に基づいて、セキュリティ領域の色および濃度に従ってセキュリティ画像のドット密度が変更される(ステップS24)。具体的には、セキュリティ領域の各位置の色および濃度に最も近い色および濃度を有する均一有色画像を含む選択比較領域が特定され、この位置に選択比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度にて描画が行われる。これにより、セキュリティ画像がより適切に記録される。
【0072】
図14は、他のテストパターン93を示す図である。テストパターン93は、比較領域上の均一クリア画像のドット密度がさらに細かく設定されるという点を除いて図13のテストパターン92と同様である。テストパターン93が出力されると、ステップS23において、まず、基準領域のうち、セキュリティ領域に含まれる複数の色および濃度に最も近いものが幾つか選択され、選択された各基準領域に対応する比較領域から、基準領域に対して濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上であるものが全て選択される。
【0073】
次に、選択された全ての比較領域から、同じドット密度にて均一クリア画像が記録された共通の比較領域がさらに選択される。図14では、ドット密度が20%である均一クリア画像を有する比較領域が選択された様子を、太い破線にて示している。なお、図14ではドット密度が20%の全ての比較領域が選択された様子を示しているが、既述のように、実際には、選択対象となる均一有色画像は幾つかに絞られてよい。比較領域をこのように選択することにより、セキュリティ領域の全ての色や濃度に対して適切な濃度差および光沢度差となる一定のドット密度が容易に決定される。
【0074】
図13および図14では、ドット密度が一定であるものとして説明したが、既述のように、複数の比較領域における均一クリア画像は、ドットサイズが互いに異なるものであってもよい。また、均一クリア画像は、ドット密度およびドットサイズが互いに異なるものであってもよい。図13の場合は、複数の比較領域の選択結果に従って、セキュリティ領域上にドット密度またはドットサイズを変更しつつセキュリティ画像が記録される。図14の場合は、選択された共通の比較領域の均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像が記録される。
【0075】
図13および図14では、C,M,Y,Kおよびこれらの混色が左欄に示されているが、セキュリティ領域に存在する色や濃度のみが左欄に設けられてよい。また、セキュリティ領域の色や濃度が未定の場合は、様々な色や濃度が左欄に設けられることが好ましい。この場合、テストパターン生成部46は不要となり、テストパターンとして予め定められたものが画像メモリ413に記憶される。予めセキュリティ領域の色やその濃度が判っている場合に、これらを反映した均一有色画像を生成するための情報やクリアコーティング画像の情報がテストパターン生成部46に入力され、テストパターン生成部46にてテストパターンデータ413が生成される。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0077】
上記実施の形態では、均一有色画像が基準領域および比較領域に記録された記録媒体9が画像記録装置1により実質的に準備されるが、別の画像記録装置により均一有色画像のみが記録された記録媒体9が準備され、画像記録装置1により、基準領域や比較領域の有色画像上に均一クリア画像が記録されてもよい。
【0078】
基準領域に対する比較領域の濃度差、色差および光沢度差の閾値は、保護対象画像のセキュリティ領域の色やその濃度に応じて適宜変更されてよい。
【0079】
第2の実施の形態では、セキュリティ画像データ412およびマスキング処理後のクリアコーティングデータ416を合成した後に、比較器43にて合成後の画像データを網点化して網点画像データが生成されてよい。セキュリティ画像のドット密度は、クリアコーティング画像よりも小さくてもよい。セキュリティ画像の光沢度は、クリアコーティング画像よりも大きくても小さくてもよい。
【0080】
上記第3の実施の形態では、複数の均一有色画像として、ドットサイズが互いに異なるものが用いられてもよく、ドット密度およびドットサイズが互いに異なるものが用いられてもよい。また、複数の均一有色画像として、同一濃度の複数の色の均一画像のみ、または、特定の色の複数の濃度の均一画像のみが利用されてもよい。なお、ここでの均一画像の濃度とは、記録媒体9上における単位面積当たりの有色インクのドットの占有面積を指す。
【0081】
画像記録装置1では、吐出部211の各吐出ヘッドのX方向の幅が記録媒体9のX方向の幅よりも小さく、吐出部211のX方向への往復移動と記録媒体9の(+Y)方向への移動とが並行して行われることにより、記録媒体9に対する記録が行われてもよい。また、移動機構22は、必ずしも記録媒体9を移動する機構である必要はなく、例えば、吐出部211を移動することにより、記録媒体9を吐出部211に対して相対的に移動する機構であってもよい。
【0082】
クリアインクは、水性インク以外に紫外線硬化インクや、溶剤インク、固体インクであってもよい。セキュリティ画像は、企業のロゴマークや紋様であってもよく、所定の文字情報や数値情報を表すバーコードやQRコード等のコードパターンや、片仮名等の文字列であってもよい。
【0083】
セキュリティ画像は、クリアインクの多階調のドット(すなわち、複数種類のサイズのドット)により描画されてよい。保護対象画像についても同様である。保護対象画像は、カラーの画像である必要はなく、1つの有色インクによる画像であってもよい。記録媒体9は、フィルム等の撥液性を有するシート状の基材や、プラスチックにて形成される板状の部材等であってもよい。また、連続紙であるいわゆるウェブに対して記録が行われてもよい。
【0084】
テストパターンでは、濃度差や色差を測定する際に問題とならない程度であれば、均一有色画像に代えて複数の色や濃度を含む画像が用いられてもよい。
【0085】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0086】
1 画像記録装置
3 制御部
9 記録媒体
22 移動機構
91〜93 テストパターン
211 吐出部
921 保護対象画像
922 セキュリティ画像
930 基準領域
931〜934 比較領域
S11〜15,S21〜24 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上にセキュリティ画像を記録する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録物の偽造防止のために、透かし等のセキュリティ画像を含むものが作成されている。特許文献1に開示されるインクジェットプリンタの吐出部は、有色インクの微小液滴を吐出する吐出機構、および、透明インクの微小液滴を吐出する吐出機構を備え、有色インクにより印刷媒体の有色画像印刷領域に有色画像が描画される。また、透明インクにより、印刷媒体上の有色画像が透明インクにより被覆されるとともに有色画像印刷領域の周囲の余白領域に暗号画像が描画される。インクジェットプリンタでは、有色画像の被覆および暗号画像の描画が、同一の吐出機構から吐出される透明インクにより行われることにより、有色画像の耐摩耗性の向上およびセキュリティの向上を、インクジェットプリンタの製造コストを低減しつつ実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−214928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有色画像上にクリアインクを吐出することにより、記録物を傾けて観察した場合にのみ認識可能となるセキュリティ画像を記録する手法を採用する場合、クリアインクの量が多いと、インクの滲みにより下地の画像の見た目の濃度が変わることがある。記録物上の有色画像およびセキュリティ画像が記録された部位と、有色画像のみが記録された部位との間の濃度差や色差が大きいと、記録物を視認する角度によらずセキュリティ画像が認識されてしまう。また、記録物上の有色画像およびセキュリティ画像が記録された部位と、有色画像のみが記録された部位との間の光沢度差が小さいと、記録物を傾けてもセキュリティ画像を認識することができない。このため、セキュリティ画像を記録する際には、濃度差や光沢度差等が好ましいものとなるように、記録媒体上に何度もセキュリティ画像を記録してクリアインクのドット密度やドットサイズを決定する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度またはドットサイズを効率よく決定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録方法であって、a)基準領域および複数の比較領域に同一の有色画像が記録された記録媒体を準備する工程と、b)前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクの微小液滴を吐出することにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像を記録する工程と、c)前記基準領域に対して予め定められた濃度差または色差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域を選択する工程と、d)記録媒体上に記録された有色の保護対象画像上に、前記c)工程にて選択された前記比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像を記録し、前記b)工程にて前記基準領域に均一クリア画像が記録された場合に、前記保護対象画像上の前記セキュリティ画像の記録領域以外の領域に、前記基準領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像を記録する工程とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録方法であって、前記基準領域および前記複数の比較領域に記録される有色画像が、均一有色画像である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録方法であって、有色インクの微小液滴を吐出する吐出部およびクリアインクの微小液滴を吐出する吐出部を有する画像記録装置により、前記a)工程において、前記基準領域および前記複数の比較領域に有色画像が記録され、前記b)工程において、前記複数の比較領域、または、前記基準領域および前記複数の比較領域に均一クリア画像が記録される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像記録方法であって、前記a)工程および前記b)工程が、実質的に並行して行われる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)およびb)工程が実行され、前記c)工程において、前記複数色または複数濃度の有色画像上に同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像が記録された共通の比較領域が選択される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)ないしc)工程が実行され、前記d)工程において、前記c)工程における複数の比較領域の選択結果に基づいて、前記保護対象画像の色または濃度に従ってドット密度およびドットサイズを変更しつつ前記セキュリティ画像が記録される。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録方法であって、前記クリアインクが水性インクである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録装置であって、少なくとも1つの有色インクおよびクリアインクの微小液滴を記録媒体に向けて吐出する複数の吐出部と、前記記録媒体を前記複数の吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体上に有色の保護対象画像を記録し、前記保護対象画像上に前記クリアインクによりセキュリティ画像を記録する制御部とを備え、前記制御部が、前記セキュリティ画像の記録の際の前記クリアインクのドット密度またはドットサイズを決定するためのテストパターンのデータを記憶し、前記制御部が、前記テストパターンのデータに従って前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、記録媒体上の基準領域および複数の比較領域に、有色インクにより、同一の有色画像が記録され、前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像が記録される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度またはドットサイズを効率よく決定することができる。請求項6の発明では、セキュリティ画像をより適切に記録することができる。請求項7の発明では、水性インクを用いることにより、クリアインクの量の微調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る画像記録装置を示す図である。
【図2】吐出部の底面図である。
【図3】画像記録装置の機能構成を示す図である。
【図4】画像を記録する流れを示す図である。
【図5】元画像データおよび閾値マトリクスを抽象的に示す図である。
【図6】記録物を示す図である。
【図7】記録物を示す図である。
【図8】クリアインクのドット密度を決定する流れを示す図である。
【図9】テストパターンを示す図である。
【図10】基準領域および比較領域の濃度および光沢度、並びに、基準領域に対する比較領域の濃度差および光沢度差を示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係る画像記録装置の制御部を示す図である。
【図12】基準領域および比較領域の濃度および光沢度、並びに、基準領域に対する比較領域の濃度差および光沢度差を示す図である。
【図13】第3の実施の形態に係る画像記録装置により記録されたテストパターンを示す図である。
【図14】テストパターンの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット方式の画像記録装置1の構成を示す図である。画像記録装置1は、複数の記録媒体9上に画像を順次記録する枚様式の装置である。本実施の形態では、記録媒体9として記録紙が利用される。画像記録装置1により、記録媒体9上に人物画やイラスト等の多階調の有色画像である保護対象画像、および、保護対象画像上に記録された無色のセキュリティ画像を含む記録物が出力される。
【0017】
画像記録装置1は、複数の吐出口からインクの微小液滴を記録媒体9に向けて吐出するヘッド21、図1中の(+Y)方向に記録媒体9をヘッド21に対して相対的に移動する移動機構22、複数の記録媒体9を保持するとともに複数の記録媒体9を移動機構22に順次供給する供給部23、画像が記録された記録媒体9を回収する回収部26、および、これらの構成を制御する制御部を備える。画像記録装置1では、記録媒体9の(+Y)方向への相対移動に同期して、ヘッド21からのインクの吐出が、制御部により制御されることにより、記録媒体9上に保護対象画像が記録され、保護対象画像上にセキュリティ画像が記録される。なお、図1中のX方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直であり、Z方向が上下方向に対応する。以下の説明では、(+Y)方向を「移動方向」という。
【0018】
移動機構22は、記録媒体9の移動方向に沿って配列されるとともに図示省略のモータに接続された2個のベルトローラ222、2個のベルトローラ222に掛けられたベルト223、ベルト223上に取り付けられた複数のテーブル221、および、リニアモータ機構224を備える。移動機構22では、ベルトローラ222が反時計回りに回転することにより、テーブル221が周回軌道に沿って高速にて移動する。画像の記録時には、1枚の記録媒体9を保持したテーブル221がベルト223から取り外され、リニアモータ機構224により精度良く移動方向に移動する。そして、画像の記録が終了すると、テーブル221はベルト223に再度取り付けられる。
【0019】
ヘッド21は、前処理部212、5個の吐出部211、並びに、前処理部212および各吐出部211の(+Y)側に配置される6個のヒータ213を備える。前処理部212、5個の吐出部211および6個のヒータ213は移動方向に配列される。前処理部212は、画像が記録される前の記録媒体9に透明な前処理剤を塗布する。5個の吐出部211はそれぞれ、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)およびY(イエロ)の各有色インク並びにクリアインクを吐出する。クリアインクは水性インクである。ヒータ213は、記録媒体9に熱風を吹き付けることにより、記録媒体9上に吐出された有色インクおよびクリアインクを乾燥させる。
【0020】
図2は、吐出部211の底面図である。吐出部211の底面には、それぞれがインクの微小液滴を記録媒体9に向けて(図1中の(−Z)方向に)吐出する複数の吐出口210が設けられる。複数の吐出口210は、数個単位で図2における右斜め下方向へと並ぶ。なお、図2では吐出口210の配列を簡略化して示しており、実際には、吐出部は多数の吐出ユニットの集合体であり、多数の吐出口210が様々な態様にて配列されてよい。複数の吐出口210の全体では、吐出口210は記録媒体9の移動方向に垂直かつ記録媒体9の記録面に平行な方向であるX方向に配列された状態となっている。以下、X方向を、吐出口210の「配列方向」と呼ぶ。吐出部211では、圧電素子により吐出口210からの微小液滴の吐出が実現されるが、他の手法により微小液滴を吐出する吐出部が採用されてもよい。
【0021】
前処理部212および吐出部211は、吐出口210の配列方向に関して記録媒体9上の印刷領域の全体に亘って(ここでは、記録媒体9の幅方向の全体に亘って)設けられており、移動機構22による記録媒体9のヘッド21に対する1回の相対移動により(すなわち、記録媒体9が移動方向へと移動してヘッド21の下方を1回通過するのみで)、記録媒体9への網点画像の記録が完了する(いわゆる、ワンパス印刷が行われる)。
【0022】
図3は、画像記録装置1の機能構成を示すブロック図である。制御部3は、各種演算を行う演算部4、および、ヘッド21や移動機構22等の各構成を制御する本体制御部10を備える。演算部4は、画像メモリ41、複数のマトリクス記憶部42、比較器43(ハーフトーン化回路)、および、テストパターン生成部46を備える。画像メモリ41は、保護対象画像を示す保護対象画像データ411、セキュリティ画像を示すセキュリティ画像データ412、および、テストパターンデータ413を記憶する。以下、保護対象画像データ411およびセキュリティ画像データ412をまとめて「元画像データ」という。また、元画像データに含まれるCMYKの有色の成分および無色の成分をまとめて「色成分」という。
【0023】
複数のマトリクス記憶部42は、複数の色成分について閾値マトリクスをそれぞれ記憶する。閾値マトリクスは、複数の閾値の2次元配列にて構成される。なお、マトリクス記憶部42は、SPM(Screen Pattern Memory)とも呼ばれる。比較器43は、元画像データと閾値マトリクスとを色成分毎に比較する比較部である。比較器43は、演算部4がプログラムを実行することによりソフトウェアとして実現されてもよい。本体制御部10は、移動機構22による記録媒体9のヘッド21に対する相対移動を制御する移動制御部102、および、記録媒体9の相対移動に同期してヘッド21の複数の吐出口からのインクの吐出を制御する吐出制御部101を備える。
【0024】
テストパターン生成部46は、テストパターンデータ413を生成する。テストパターンデータ413は、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度の決定に用いられる(詳細については後述)。テストパターン生成部46は、演算部4がプログラムに従って演算処理を実行することにより実現される機能である。
【0025】
次に、画像記録装置1が画像を記録する動作の詳細について図4を参照しつつ説明する。画像記録装置1では、外部のコンピュータから演算部4の画像メモリ41に元画像データが入力されて記憶される。
【0026】
図5は、元画像データ70および閾値マトリクス710を抽象的に示す図である。元画像データ70および閾値マトリクス710のそれぞれでは、X方向に対応する行方向(図5中にてx方向として示す。)、および、行方向に垂直な列方向(図5中にてy方向として示す。)に複数の画素または複数の要素が配列されている。以下の説明では、元画像データの各色成分は0〜255の階調範囲にて表現されるものとする。
【0027】
元画像データ70が画像メモリ41に記憶されると、保護対象画像データがC,M,Y,Kの各色に分版され、比較器43にて分版された画像データを閾値マトリクス710と比較することにより、各色成分の網点画像データが生成される。さらに、比較器43にてセキュリティ画像データ412を閾値マトリクス710と比較することにより、セキュリティ画像データ412に対応する網点画像データが生成される(ステップS11)。実際には、比較器43に、C,M,Y,Kの各色の画像データおよびセキュリティ画像データ412に対応する複数の比較部が用意され、C,M,Y,Kの各色の画像データおよびセキュリティ画像データ412に対して網点化処理が並行して行われる。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0028】
元画像データ70の網点化、すなわち、ハーフトーン化の際には、図5に示すように元画像データ70が示す全体の領域を同一の大きさの多数の領域に分割してハーフトーン化の単位となる繰り返し領域71が設定される。各マトリクス記憶部42は1つの繰り返し領域71に相当する記憶領域を有し、この記憶領域の各アドレス(座標)に閾値が設定されることにより閾値マトリクス710を記憶している。そして、概念的には元画像データ70の各繰り返し領域71と各色成分の閾値マトリクス710とを重ね合わせ、繰り返し領域71の各画素の当該色成分の階調値(画素値)と閾値マトリクス710の対応する閾値とが比較されることにより、記録媒体9上のその画素の位置に記録(当該色のドットの形成)を行うか否かが決定される。
【0029】
実際には、図3の比較器43が有するアドレス発生器からのアドレス信号に基づいて画像メモリ41から元画像データ70の1つの画素の階調値が色成分毎に読み出される。一方、アドレス発生器では元画像データ70中の当該画素に相当する繰り返し領域71中の位置を示すアドレス信号も生成され、各色成分の閾値マトリクス710における1つの閾値が特定されてマトリクス記憶部42から読み出される。そして、画像メモリ41からの階調値とマトリクス記憶部42からの閾値とが比較器43にて色成分毎に比較されることにより、各色成分の2値の出力画像データにおけるその画素の位置(アドレス)の値が決定される。したがって、一の色成分に着目した場合に、図5に示す多階調の元画像データ70において、階調値が閾値マトリクス710の対応する閾値よりも大きい位置には、例えば、値「1」が付与され(すなわち、ドットが置かれ)、残りの画素には値「0」が付与され(すなわち、ドットは置かれず)、2値の出力画像データが当該色成分の網点画像データとして生成される。
【0030】
元画像データ70において最初に記録される部分(例えば、最も(+y)側の複数の繰り返し領域71)の網点画像データ(の部分)が生成されると、移動制御部102が移動機構22を制御することにより記録媒体9のヘッド21に対する相対移動が開始される(図4:ステップS12)。また、吐出制御部101により、網点画像データに従って各色のインクの吐出が制御される。元画像データ70において次に記録される部分の網点画像データが生成されると、記録媒体9の相対移動に同期して複数の吐出口210から各色のインクがさらに吐出される。このように、上記ハーフトーン化処理(網点画像データの生成処理)を行いつつ、記録媒体9の相対移動に並行して複数の吐出口210から各色のインクの吐出が制御される。
【0031】
元画像データにおいて最後に記録される部分の網点画像データに基づいて吐出口210からインクが吐出されると、保護対象画像にセキュリティ画像を重ねた網点画像の記録が完了する(ステップS13,S14)。その後、記録媒体9が回収部26に回収され、記録媒体9を移動させる動作が停止する(ステップS15)。
【0032】
図6は、画像記録装置1から出力された記録物90を正面から見た図であり、図7は、記録物90を斜めから見た図である。記録物90では、記録媒体9上に保護対象画像921が記録され、保護対象画像921上にセキュリティ画像922が記録されている。図6および図7では、保護対象画像921上のドット密度が50%のブラックのチント領域にセキュリティ画像922が記録される。セキュリティ画像922は、所定のドット密度のクリアインクにて記録されており、保護対象画像921上のセキュリティ画像922が記録される領域(クリアインクと重なる領域であり、以下、「セキュリティ領域」という。)と周囲の領域との間における濃度差が小さく、かつ、光沢度差が大きい。ここで、ドット密度とは、全画素位置であるドットが描画可能な位置のうちインクが吐出される位置の割合をいう。濃度差が小さいことにより、セキュリティ領域と周囲の領域との間における濃度の不連続な変化が認識されない。したがって、図6に示すように、記録物90を正面から観察した場合は、セキュリティ画像922は認識されない。
【0033】
また、光沢度差が大きいことにより、図7に示すように、記録物90を斜めから観察した場合に、保護対象画像921上にセキュリティ画像922が光沢感を有するように浮き上がって認識される。このように、記録物90に、特殊な用具を用いずに視認可能なセキュリティ画像922を記録する、いわゆる、オバート技術により、正確な複製や偽造が困難となり、保護対象画像921のセキュリティを向上することができる。
【0034】
次に、セキュリティ画像のドット密度を決定する手法について図8を参照しつつ説明する。まず、テストパターン生成部46がテストパターンデータ413を生成し、テストパターンデータ413が画像メモリ41に記憶される。そして、テストパターンデータ413が網点化され、、記録媒体9の移動を制御しつつ複数の吐出口210からのインクの吐出が制御されることにより、テストパターンが記録媒体9上に記録される。
【0035】
図9は、テストパターン91を例示する図である。テストパターン91には、予め、基準領域930と複数の比較領域931〜934とが設定されている。テストパターン91の記録では、画像記録装置1により記録媒体9上における基準領域930および比較領域931〜934に、ブラックインクの微小液滴が吐出され、ブラックのチント画像、すなわち、ドット密度が一定の画像(以下、「均一有色画像」と呼ぶ。)が記録される。これらの領域には同一の均一有色画像が記録される(ステップS21)。
【0036】
続いて、比較領域931〜934にクリアインクの微小液滴が吐出され、均一有色画像上にクリアインクによるチント画像、すなわち、ドット密度が一定の画像(以下、「均一クリア画像」と呼ぶ。)が記録される(ステップS22)。比較領域931〜934における均一クリア画像のドット密度は、互いに異なり、順に、10%、20%、30%、40%である。本実施の形態では、クリアインクのドットサイズは一定であるものとする。
【0037】
画像記録装置1では、均一有色画像を記録する工程と、均一クリア画像を記録する工程とは、ヘッド21によりほぼ同時に、または、部分的に並行して行われる。すなわち、実質的に並行して行われる。
【0038】
テストパターン91が出力されると、市販の濃度計を用いて基準領域930および比較領域931〜934の濃度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差が求められる。また、市販の光沢度計を用いて基準領域930および比較領域931〜934の光沢度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の光沢度差が求められる。なお、光沢度計にて基準領域930および比較領域931〜934を測定する際には、例えば、テストパターン91に入射する入射光とテストパターン91の記録面に垂直な法線とのなす角である入射角、および、テストパターン91から反射して受光部に入射する反射光と上記法線とのなす角である受光角が60度に設定される。もちろん、光沢度の測定方法として他の方法が採用されてもよい。
【0039】
図10は、基準領域930および比較領域931〜934の濃度および光沢度、並びに、基準領域930に対する比較領域931〜934の濃度差および光沢度差を例示する図である。一般に、濃度が異なる2つの領域を有する記録物において、反射濃度計に基づく濃度差が0.05以下である場合、人間の視覚により、当該2つの領域を判別することができない。また、クリアインクを塗布した領域と塗布されていない領域とが存在する記録物において、この2つの領域の光沢度計に基づく光沢度差が5以上であることにより、記録物を傾けて視認した場合に当該2つの領域を判別することができる。
【0040】
したがって、濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度にてセキュリティ画像922を記録すると、記録物90を正面から観察した場合に保護対象画像921のみが認識され、記録物90を傾けて観察した場合に保護対象画像921およびセキュリティ画像922が認識されることになる。
【0041】
図10の例では、均一有色画像のドット密度が50%であり、均一クリア画像のドット密度が20%である場合に、濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である。この結果に基づいて、複数の比較領域931〜934から図9の中央の比較領域932が選択され(ステップS23)、比較領域932の均一クリア画像のドット密度が、セキュリティ画像922のドット密度として決定される。選択可能な比較領域の数が複数である場合は、そのうちの1つが選択される。例えば、最も光沢度差が大きい比較領域が選択される。
【0042】
その後、画像記録装置1により、記録媒体9上に保護対象画像921が記録されるとともに、保護対象画像921上に、クリアインクによりドット密度が20%のセキュリティ画像922が記録される(ステップS24)。なお、記録物において、セキュリティ画像の認識が容易でない場合は、他の候補となっている比較領域が選択され、再度、保護対象画像およびセキュリティ画像の記録が実行される。
【0043】
以上、第1の実施の形態に係る画像記録装置1およびセキュリティ画像のドット密度の決定作業について説明したが、ドット密度の決定作業では、基準領域930および複数の比較領域931〜934を有するテストパターン91を記録して、予め定められた濃度差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域が選択される。そして、選択された比較領域に記録された均一クリア画像のドット密度にて、セキュリティ画像922が記録される。このように、基準領域930および複数の比較領域931〜934を有するテストパターン91を作成することにより、セキュリティ画像922を記録する際のクリアインクのドット密度を効率よく決定することができる。
【0044】
基準領域930および比較領域931〜934に記録される有色画像が、均一有色画像であることにより、濃度および光沢度の測定が容易となる。画像記録装置1では、有色インクを吐出する吐出部211およびクリアインクを吐出する吐出部211を有することから、セキュリティ画像を含む画像およびテストパターン91を短時間にて記録することができる。
【0045】
画像記録装置1では、予め設定された複数の比較領域931〜934を含む1つの大きな領域に均一有色画像を記録し、比較領域931〜934に均一クリア画像が記録されてもよい。この場合、記録媒体9上の比較領域以外の領域が基準領域として利用される。また、複数の比較領域は隣接してもよい。他の実施の形態においても同様である。
【0046】
第1の実施の形態では、ドット密度に代えて、記録媒体9上に描画されるクリアインクのドットサイズを調整することにより、保護対象画像921上に適切なセキュリティ画像922が記録されてもよい。クリアインクのドットサイズの決定作業の流れは、上述のドット密度の決定作業の流れとほぼ同様である。
【0047】
まず、テストパターン生成部46により、テストパターンデータ413が生成され、テストパターンデータ413に従って記録媒体9にテストパターン91が記録される。このとき、基準領域930および比較領域931〜934に同一の均一有色画像が記録され、比較領域931〜934の均一有色画像上に均一クリア画像が記録される(ステップS21,S22)。比較領域931〜934の均一クリア画像のドット密度は同じであり、ドットサイズは互いに異なる。
【0048】
次に、基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差および光沢度差が測定され、基準領域930に対する濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である比較領域が選択される(ステップS23)。その後、記録媒体9上に記録された保護対象画像921上に、選択された比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度およびドットサイズにて、セキュリティ画像922が記録される(ステップS24)。
【0049】
以上のように、基準領域930および複数の比較領域931〜934を有するテストパターン91を作成することにより、セキュリティ画像922におけるクリアインクのドットサイズを効率よく決定することができる。画像記録装置1では、クリアインクに水性インクが用いられる。これにより、吐出されるインク量の微調整が可能となり、より適切なセキュリティ画像の記録が実現される。
【0050】
第1の実施の形態では、セキュリティ画像922のドット密度およびドットサイズが異なる複数の比較領域から、基準領域に対して予め定められた濃度以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域を選択することにより、選択された比較領域中の均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像922が記録されてもよい。例えば、均一クリア画像におけるクリアインクの濃度(ここでの濃度は、画像データが示す濃度をいう。)が同一であっても、ドット密度が高くドットサイズが小さいものと、ドット密度が低くドットサイズが大きいものとをテストパターン91に含めることにより、より適切なセキュリティ画像922の記録条件を容易に見いだすことが可能となる。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0051】
さらに、濃度差に代えて、または、濃度差に加えて、市販の測色計を用いて基準領域に対する比較領域の色差が測定されてもよい。色差としては、国際照明委員会(CIE)が規定するCIE1976の色差式により求められる値が用いられる。一般に、色差が異なる2つの領域を有する記録物において、色差が1.0以下である場合、人間の視覚により当該2つの領域を判別することができない。そこで、ステップS23において、色差が1.0以下(または、色差が1.0以下かつ濃度差が0.05以下)であり、さらに光沢度差が5以上である比較領域が選択され、ステップS24においてこの比較領域のドット密度およびドットサイズにてセキュリティ画像が記録される。このような作業によっても、適切なセキュリティ画像の記録が実現される。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0052】
図11は、第2の実施の形態に係る画像記録装置1の制御部3を示す図である。制御部3の画像メモリ41には、保護対象画像を被覆するための均一クリア画像のデータが記憶されている。以下、当該均一クリア画像を「クリアコーティング画像」といい、クリアコーティング画像のデータを「クリアコーティングデータ416」という。演算部4は、マスキング部44および合成部45をさらに備える。これらは、ハードウェアとして設けられてもよく、演算部4がプログラムを実行することにより実現されてもよい。図11では、テストパターン生成部46の図示を省略している。画像記録装置1の他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、同様の構成には同符号を付している。また、保護対象画像の記録動作も第1の実施の形態と同様である。
【0053】
第2の実施の形態では、保護対象画像上のセキュリティ画像以外の領域が、均一なクリアコーティング画像にて覆われる。すなわち、セキュリティ画像とクリアコーティング画像とを合成したクリア画像が、保護対象画像上に記録される。以下、この合成された画像を「合成セキュリティ画像」と呼ぶ。
【0054】
合成セキュリティ画像を記録するための網点画像データが生成される際には、まず、マスキング部44に、クリアコーティングデータ416およびセキュリティ画像データ412が読み出され、クリアコーティング画像のセキュリティ画像(の0よりも大きい画素値を有する領域)と重なる領域にマスキング処理が施される。具体的には、クリアコーティング画像において、セキュリティ画像と重なる領域の画素の画素値がクリアインクの吐出の休止(OFF)を示す値(例えば、画素値「0」)に変更される。
【0055】
比較器43にて、マスキング処理が施されたクリアコーティングデータ416を網点化して網点画像データ(以下、「第1網点画像データ」という。)が生成される。また、比較器43では、第1網点画像データの生成に並行して、セキュリティ画像データ412に対応する網点画像データ(以下、「第2網点画像データ」という。)が生成される。合成部45では、第1網点画像データと第2網点画像データとが合成され、合成セキュリティ画像を示すデータが生成される。
【0056】
第1網点画像データと第2網点画像データの合成では、対応する画素の論理和が当該画素の位置における画素値とされる。これにより、保護対象画像のセキュリティ領域にセキュリティ画像が記録され、セキュリティ領域以外の領域にクリアコーティング画像が記録される。
【0057】
以下の説明では、第1の実施の形態で挙げた例と同様に、保護対象画像のセキュリティ領域はドット密度が50%のブラックのチント領域に含まれるものとする。また、クリアコーティングとして保護対象画像上にドット密度が10%のクリアコーティング画像が記録されるものとする。以下のテストパターンの説明では、図9の符号を参照する。
【0058】
セキュリティ画像のドット密度を決定する際には、まず、テストパターン生成部46によりテストパターンデータ413が生成され、テストパターンデータ413に基づいて、図9と同様に、記録媒体9上の基準領域930および複数の比較領域931〜934にドット密度が50%であるブラックの均一有色画像が記録される(ステップS21)。これらの均一有色画像は同一である。続いて、基準領域930および複数の比較領域931〜934上にドット密度が異なる均一クリア画像が記録される(ステップS22)。基準領域930上の均一クリア画像は、保護対象画像上に記録されるクリアコーティング画像と同じ10%のドット密度である。比較領域931〜934上の均一クリア画像のドット密度は、順に、20%、30%、40%、50%である。本実施の形態では、クリアインクのドットの大きさは一定であるものとする。以下、比較領域931〜934上の均一クリア画像を基準領域930上の均一クリア画像と区別するときは「比較クリア画像」という。
【0059】
基準領域930および比較領域931〜934上に均一有色画像および均一クリア画像が記録されると、基準領域930および比較領域931〜934の濃度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の濃度差が求められる。さらに、基準領域930および比較領域931〜934の光沢度が測定され、基準領域930に対する各比較領域931〜934の光沢度差が求められる。
【0060】
図12は、基準領域930および比較領域931〜934の濃度および光沢度、並びに、基準領域930に対する比較領域931〜934の濃度差および光沢度差を例示する図である。比較クリア画像のドット密度が30%である場合に、濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上である。したがって、複数の比較領域931〜934から比較領域932が選択され(ステップS23)、比較領域932の比較クリア画像のドット密度が、セキュリティ画像のドット密度として決定される。
【0061】
その後、画像記録装置1により、記録媒体9上に、保護対象画像が記録されるとともに、保護対象画像上に合成セキュリティ画像が記録される。すなわち、保護対象画像のセキュリティ領域上にドット密度が30%であるセキュリティ画像が記録され、セキュリティ領域以外の領域にドット密度が10%であるクリアコーティング画像が記録される(ステップS24)。
【0062】
画像記録装置1の上記動作および作業により、保護対象画像がクリアコーティング画像に覆われる場合であっても、セキュリティ画像を記録する際のクリアインクのドット密度を効率よく決定することができる。
【0063】
第2の実施の形態においても、セキュリティ画像を記録する際の適切なドットサイズが決定されてよい。クリアインクのドットサイズの決定作業は、第1の実施の形態にて説明した作業に準じたものとなる。すなわち、テストパターン91として、基準領域930および複数の比較領域931〜934に均一有色画像が記録され、その上にドット密度が同じであり、ドットサイズの異なる均一クリア画像が記録される。基準領域930に記録される均一クリア画像のドット密度およびドットサイズは、保護対象画像上のクリアコーティング画像のものと同じである。
【0064】
そして、基準領域930に対して予め定められた濃度差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上となる比較領域が選択され、選択された比較領域の均一クリア画像と同じドット密度およびドットサイズにて保護対象画像上にセキュリティ画像が記録される。また、基準領域930の均一クリア画像と同じドット密度およびドットサイズにてセキュリティ領域以外の領域にクリアコーティング画像が記録される。
【0065】
第2の実施の形態においても、複数の比較領域にドット密度およびドットサイズが異なる複数の比較クリア画像が記録されてもよい。
【0066】
次に、セキュリティ画像のドット密度を決定する他の手法を第3の実施の形態として説明する。第3の実施の形態における画像記録装置の構造は、第1の実施の形態と同様である。図13は、第3の実施の形態におけるテストパターン92を示す図である。テストパターン92は、保護対象画像のセキュリティ領域に複数の色や複数の濃度の領域が存在する場合に用いられる。
【0067】
テストパターン92では、複数の色および複数のドット密度の均一有色画像と複数のドット密度の均一クリア画像との組み合わせが、表形式となっている。テストパターン92の左欄には、均一有色画像の色およびドット密度が表示され、上欄には均一クリア画像のドット密度が表示される。本実施の形態では、クリアインクのドットサイズは一定であるものとする。
【0068】
テストパターン92では、左欄の右側に基準領域が設けられ、各基準領域の右側に複数の比較領域が設けられる。基準領域および比較領域には、対応する左欄に示す色およびドット密度の均一有色画像が記録される。比較領域には、均一有色画像上に、上欄に示すドット密度の均一クリア画像が記録される。
【0069】
左欄には、ドット密度が10%、20%・・・100%であるCMYKの各色、および、各色のドット密度が10%、20%・・・100%であるCMYKの混色が表示される。図13では、ドット密度が10%および100%となる各色の均一有色画像が記録された基準領域および比較領域のみを例示している。後述の図14においても同様である。上欄には、クリアインクのドット密度が10%、20%、30%、40%であることが表示される。
【0070】
テストパターン92が出力されると、、第1の実施の形態と同様に、基準領域および比較領域の濃度および光沢度が測定される。そして、各比較領域における基準領域に対する濃度差および光沢度差が取得される。このときの基準領域は、各比較領域の左側に位置するものである。さらに、予め定められた濃度差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上の比較領域が、各基準領域に対応して選択される。図13では、選択された比較領域を太い破線にて囲って示している。テストパターン92の記録および測定作業により、実質的に、複数の色および複数の濃度の有色画像のそれぞれに対して、図8のステップS21〜S23が実行される。以下、選択された比較領域を「選択比較領域」という。
【0071】
保護対象画像のセキュリティ領域上にセキュリティ画像が記録される際には、比較領域の上記選択結果に基づいて、セキュリティ領域の色および濃度に従ってセキュリティ画像のドット密度が変更される(ステップS24)。具体的には、セキュリティ領域の各位置の色および濃度に最も近い色および濃度を有する均一有色画像を含む選択比較領域が特定され、この位置に選択比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度にて描画が行われる。これにより、セキュリティ画像がより適切に記録される。
【0072】
図14は、他のテストパターン93を示す図である。テストパターン93は、比較領域上の均一クリア画像のドット密度がさらに細かく設定されるという点を除いて図13のテストパターン92と同様である。テストパターン93が出力されると、ステップS23において、まず、基準領域のうち、セキュリティ領域に含まれる複数の色および濃度に最も近いものが幾つか選択され、選択された各基準領域に対応する比較領域から、基準領域に対して濃度差が0.05以下であり、かつ、光沢度差が5以上であるものが全て選択される。
【0073】
次に、選択された全ての比較領域から、同じドット密度にて均一クリア画像が記録された共通の比較領域がさらに選択される。図14では、ドット密度が20%である均一クリア画像を有する比較領域が選択された様子を、太い破線にて示している。なお、図14ではドット密度が20%の全ての比較領域が選択された様子を示しているが、既述のように、実際には、選択対象となる均一有色画像は幾つかに絞られてよい。比較領域をこのように選択することにより、セキュリティ領域の全ての色や濃度に対して適切な濃度差および光沢度差となる一定のドット密度が容易に決定される。
【0074】
図13および図14では、ドット密度が一定であるものとして説明したが、既述のように、複数の比較領域における均一クリア画像は、ドットサイズが互いに異なるものであってもよい。また、均一クリア画像は、ドット密度およびドットサイズが互いに異なるものであってもよい。図13の場合は、複数の比較領域の選択結果に従って、セキュリティ領域上にドット密度またはドットサイズを変更しつつセキュリティ画像が記録される。図14の場合は、選択された共通の比較領域の均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像が記録される。
【0075】
図13および図14では、C,M,Y,Kおよびこれらの混色が左欄に示されているが、セキュリティ領域に存在する色や濃度のみが左欄に設けられてよい。また、セキュリティ領域の色や濃度が未定の場合は、様々な色や濃度が左欄に設けられることが好ましい。この場合、テストパターン生成部46は不要となり、テストパターンとして予め定められたものが画像メモリ413に記憶される。予めセキュリティ領域の色やその濃度が判っている場合に、これらを反映した均一有色画像を生成するための情報やクリアコーティング画像の情報がテストパターン生成部46に入力され、テストパターン生成部46にてテストパターンデータ413が生成される。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0077】
上記実施の形態では、均一有色画像が基準領域および比較領域に記録された記録媒体9が画像記録装置1により実質的に準備されるが、別の画像記録装置により均一有色画像のみが記録された記録媒体9が準備され、画像記録装置1により、基準領域や比較領域の有色画像上に均一クリア画像が記録されてもよい。
【0078】
基準領域に対する比較領域の濃度差、色差および光沢度差の閾値は、保護対象画像のセキュリティ領域の色やその濃度に応じて適宜変更されてよい。
【0079】
第2の実施の形態では、セキュリティ画像データ412およびマスキング処理後のクリアコーティングデータ416を合成した後に、比較器43にて合成後の画像データを網点化して網点画像データが生成されてよい。セキュリティ画像のドット密度は、クリアコーティング画像よりも小さくてもよい。セキュリティ画像の光沢度は、クリアコーティング画像よりも大きくても小さくてもよい。
【0080】
上記第3の実施の形態では、複数の均一有色画像として、ドットサイズが互いに異なるものが用いられてもよく、ドット密度およびドットサイズが互いに異なるものが用いられてもよい。また、複数の均一有色画像として、同一濃度の複数の色の均一画像のみ、または、特定の色の複数の濃度の均一画像のみが利用されてもよい。なお、ここでの均一画像の濃度とは、記録媒体9上における単位面積当たりの有色インクのドットの占有面積を指す。
【0081】
画像記録装置1では、吐出部211の各吐出ヘッドのX方向の幅が記録媒体9のX方向の幅よりも小さく、吐出部211のX方向への往復移動と記録媒体9の(+Y)方向への移動とが並行して行われることにより、記録媒体9に対する記録が行われてもよい。また、移動機構22は、必ずしも記録媒体9を移動する機構である必要はなく、例えば、吐出部211を移動することにより、記録媒体9を吐出部211に対して相対的に移動する機構であってもよい。
【0082】
クリアインクは、水性インク以外に紫外線硬化インクや、溶剤インク、固体インクであってもよい。セキュリティ画像は、企業のロゴマークや紋様であってもよく、所定の文字情報や数値情報を表すバーコードやQRコード等のコードパターンや、片仮名等の文字列であってもよい。
【0083】
セキュリティ画像は、クリアインクの多階調のドット(すなわち、複数種類のサイズのドット)により描画されてよい。保護対象画像についても同様である。保護対象画像は、カラーの画像である必要はなく、1つの有色インクによる画像であってもよい。記録媒体9は、フィルム等の撥液性を有するシート状の基材や、プラスチックにて形成される板状の部材等であってもよい。また、連続紙であるいわゆるウェブに対して記録が行われてもよい。
【0084】
テストパターンでは、濃度差や色差を測定する際に問題とならない程度であれば、均一有色画像に代えて複数の色や濃度を含む画像が用いられてもよい。
【0085】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0086】
1 画像記録装置
3 制御部
9 記録媒体
22 移動機構
91〜93 テストパターン
211 吐出部
921 保護対象画像
922 セキュリティ画像
930 基準領域
931〜934 比較領域
S11〜15,S21〜24 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録方法であって、
a)基準領域および複数の比較領域に同一の有色画像が記録された記録媒体を準備する工程と、
b)前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクの微小液滴を吐出することにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像を記録する工程と、
c)前記基準領域に対して予め定められた濃度差または色差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域を選択する工程と、
d)記録媒体上に記録された有色の保護対象画像上に、前記c)工程にて選択された前記比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像を記録し、前記b)工程にて前記基準領域に均一クリア画像が記録された場合に、前記保護対象画像上の前記セキュリティ画像の記録領域以外の領域に、前記基準領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像を記録する工程と、
を備えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録方法であって、
前記基準領域および前記複数の比較領域に記録される有色画像が、均一有色画像であることを特徴とする画像記録方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像記録方法であって、
有色インクの微小液滴を吐出する吐出部およびクリアインクの微小液滴を吐出する吐出部を有する画像記録装置により、前記a)工程において、前記基準領域および前記複数の比較領域に有色画像が記録され、前記b)工程において、前記複数の比較領域、または、前記基準領域および前記複数の比較領域に均一クリア画像が記録されることを特徴とする画像記録方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録方法であって、
前記a)工程および前記b)工程が、実質的に並行して行われることを特徴とする画像記録方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、
複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)およびb)工程が実行され、前記c)工程において、前記複数色または複数濃度の有色画像上に同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像が記録された共通の比較領域が選択されることを特徴とする画像記録方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、
複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)ないしc)工程が実行され、前記d)工程において、前記c)工程における複数の比較領域の選択結果に基づいて、前記保護対象画像の色または濃度に従ってドット密度およびドットサイズを変更しつつ前記セキュリティ画像が記録されることを特徴とする画像記録方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録方法であって、
前記クリアインクが水性インクであることを特徴とする画像記録方法。
【請求項8】
記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録装置であって、
少なくとも1つの有色インクおよびクリアインクの微小液滴を記録媒体に向けて吐出する複数の吐出部と、
前記記録媒体を前記複数の吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、
前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体上に有色の保護対象画像を記録し、前記保護対象画像上に前記クリアインクによりセキュリティ画像を記録する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記セキュリティ画像の記録の際の前記クリアインクのドット密度またはドットサイズを決定するためのテストパターンのデータを記憶し、
前記制御部が、前記テストパターンのデータに従って前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、記録媒体上の基準領域および複数の比較領域に、有色インクにより、同一の有色画像が記録され、前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像が記録されることを特徴とする画像記録装置。
【請求項1】
記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録方法であって、
a)基準領域および複数の比較領域に同一の有色画像が記録された記録媒体を準備する工程と、
b)前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクの微小液滴を吐出することにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像を記録する工程と、
c)前記基準領域に対して予め定められた濃度差または色差以下であり、かつ、予め定められた光沢度差以上である比較領域を選択する工程と、
d)記録媒体上に記録された有色の保護対象画像上に、前記c)工程にて選択された前記比較領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにてセキュリティ画像を記録し、前記b)工程にて前記基準領域に均一クリア画像が記録された場合に、前記保護対象画像上の前記セキュリティ画像の記録領域以外の領域に、前記基準領域に記録された均一クリア画像と同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像を記録する工程と、
を備えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録方法であって、
前記基準領域および前記複数の比較領域に記録される有色画像が、均一有色画像であることを特徴とする画像記録方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像記録方法であって、
有色インクの微小液滴を吐出する吐出部およびクリアインクの微小液滴を吐出する吐出部を有する画像記録装置により、前記a)工程において、前記基準領域および前記複数の比較領域に有色画像が記録され、前記b)工程において、前記複数の比較領域、または、前記基準領域および前記複数の比較領域に均一クリア画像が記録されることを特徴とする画像記録方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録方法であって、
前記a)工程および前記b)工程が、実質的に並行して行われることを特徴とする画像記録方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、
複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)およびb)工程が実行され、前記c)工程において、前記複数色または複数濃度の有色画像上に同じドット密度かつ同じドットサイズにて均一クリア画像が記録された共通の比較領域が選択されることを特徴とする画像記録方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録方法であって、
複数色または複数濃度の有色画像のそれぞれに関して前記a)ないしc)工程が実行され、前記d)工程において、前記c)工程における複数の比較領域の選択結果に基づいて、前記保護対象画像の色または濃度に従ってドット密度およびドットサイズを変更しつつ前記セキュリティ画像が記録されることを特徴とする画像記録方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録方法であって、
前記クリアインクが水性インクであることを特徴とする画像記録方法。
【請求項8】
記録媒体上にセキュリティ画像を記録する画像記録装置であって、
少なくとも1つの有色インクおよびクリアインクの微小液滴を記録媒体に向けて吐出する複数の吐出部と、
前記記録媒体を前記複数の吐出部に対して相対的に移動する移動機構と、
前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、前記記録媒体上に有色の保護対象画像を記録し、前記保護対象画像上に前記クリアインクによりセキュリティ画像を記録する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記セキュリティ画像の記録の際の前記クリアインクのドット密度またはドットサイズを決定するためのテストパターンのデータを記憶し、
前記制御部が、前記テストパターンのデータに従って前記複数の吐出部および前記移動機構を制御することにより、記録媒体上の基準領域および複数の比較領域に、有色インクにより、同一の有色画像が記録され、前記複数の比較領域の有色画像上に、または、前記基準領域および前記複数の比較領域の有色画像上に、クリアインクにより、互いに異なるドット密度またはドットサイズの均一クリア画像が記録されることを特徴とする画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−206263(P2012−206263A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71584(P2011−71584)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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