説明

画像記録方法

【課題】 無溶剤型の放射線硬化型インク組成物を液体吐出ヘッドから吐出する場合において、液体吐出ヘッドのノズルプレート面における放射線硬化型インク組成物の撥液性を高めることにより、印刷時の吐出安定性を向上させることが可能な画像記録方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る画像記録方法は、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を有する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いる画像記録方法であって、前記液体吐出ヘッドから吐出される液体が、放射線硬化型インク組成物であり、前記放射線硬化型インク組成物の水酸基価が、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型インク組成物を備えたインクジェット記録装置を用いて行う画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、記録媒体に画像を記録する画像記録方法としては、電子写真方式、昇華型および溶融型熱転写方式、インクジェット記録方式等がある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電および露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になる等の問題がある。また、熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるためランニングコストが高く、且つ、廃材が出る等の問題がある。一方、インクジェット記録方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し記録媒体上に直接画像を記録するため、インクを効率的に使用することができ、ランニングコストが安い。しかも、騒音が少ない点で、画像記録方法として優れている。
【0003】
近年、紫外線、電子線その他の放射線の照射により硬化可能な無溶剤型の放射線硬化型インク組成物の開発が進められており、該放射線硬化型インク組成物をインクジェット記録方式に適用する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。放射線硬化型インク組成物を適用したインクジェット記録方式は、ガラス、金属、プラスチック基材等の非吸収基材への記録が可能であるため基材の適応範囲が広く、画像の耐擦性、硬化性および生産性の点で、従来の水性インクや溶剤インクよりも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−233976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無溶剤型の放射線硬化型インク組成物をインクジェット記録装置に適用する場合、液体吐出ヘッドのノズルプレート面における放射線硬化型インク組成物の撥液性が低下することにより、印刷時の吐出安定性が損なわれるという課題があった。
【0006】
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、無溶剤型の放射線硬化型インク組成物を液体吐出ヘッドから吐出する場合において、液体吐出ヘッドのノズルプレート面における放射線硬化型インク組成物の撥液性を高めることにより、印刷時の吐出安定性を向上させることが可能な画像記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る画像記録方法の一態様は、
ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を有する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いる画像記録方法であって、
前記液体吐出ヘッドから吐出される液体が、放射線硬化型インク組成物であり、
前記放射線硬化型インク組成物の水酸基価が、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることを特徴とする。
【0009】
適用例1によれば、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を有する液体吐出ヘッドから前記範囲の水酸基価を有する放射線硬化型インク組成物を吐出することで、ノズルプレート表面における放射線硬化型インク組成物の撥液性を高めることができ、ひいては印刷時の吐出安定性を向上させることができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1において、
前記ノズルプレート表面から1μm未満の領域に、シロキサン結合を有することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記放射線硬化型インク組成物は、4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートから選択される少なくとも1種を含有することができる。
【0012】
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記放射線硬化型インク組成物は、水酸基を有するエポキシアクリレートを含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態で使用可能なインクジェット記録装置の斜視図。
【図2】液体吐出ヘッドの一例を模式的に示す断面図。
【図3】ノズルプレート表面におけるフッ素樹脂膜の結合の概念図。
【図4】図1に示した活性放射線照射装置の正面図。
【図5】図4のA−A矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0015】
1.画像記録方法
本発明の一実施形態に係る画像記録方法は、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を有する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いる画像記録方法であって、前記液体吐出ヘッドから吐出される液体が放射線硬化型インク組成物であり、前記放射線硬化型インク組成物の水酸基価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることを特徴とする。なお、本発明において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
【0016】
以下、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物、インクジェット記録装置についてこの順に説明し、インクジェット記録装置と併せて画像記録方法についても説明する。
【0017】
1.1.放射線硬化型インク組成物
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、必須成分として重合性化合物を含有し、必要に応じて光重合開始剤、顔料、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤等をさらに含有してもよい。
【0018】
1.1.1.重合性化合物
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、水酸基価を30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下とする観点から、分子内に水酸基を有する重合性化合物を含有することが好ましい。分子内に水酸基を有する重合性化合物の中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、脂環式構造を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート、水酸基含有エポキシ(メタ)アクリレート等がより好ましい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートという記載は、アクリレートまたはメタクリレートを示す。
【0019】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
脂環式構造を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
水酸基含有エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジまたはポリエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシアクリレートが挙げられる。このようなエポキシ(メタ)アクリレートは、市販品として入手することができ、例えば、DA−111、DA−141、DA−212、DA−250、DA−314、DA−721、DA−722、DA−911M、DA−920、DA−931、DM−201、DM−811、DM−832、DM−851(以上、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、前記例示した重合性化合物以外の、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、ウレタン系オリゴマー、アミノ(メタ)アクリレート、N−ビニル化合物等の重合性化合物を含有してもよい。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、トリメチロールプロパンフォルマルモノ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記例示した単官能(メタ)アクリレートの中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。フェノキシエチル(メタ)アクリレートは、良好な硬化性を有すると共に、光重合開始剤の良好な溶剤として機能するからである。また、低粘度であるため、光硬化型インク組成物の粘度をインクジェット記録方式に適した低い値(20℃/5mPa・s以上50mPa・s以下)に調整しやすいといった利点もある。フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0025】
また、単官能(メタ)アクリレートとして、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する単官能アクリレートを用いることが好ましい。このような脂環式構造を有する単官能アクリレートは、嵩高い脂環式構造を有することで、記録媒体上に記録した画像に強靱性を付与することができ、これにより該画像の耐擦性を向上させることができるからである。また、低粘度であるため、光硬化型インク組成物の粘度をインクジェット記録方式に適した低い値(20℃/5mPa・s以上50mPa・s以下)に調整しやすいといった利点もある。脂環式構造を有する単官能アクリレートの含有量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して25質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0026】
二官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えばアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン等が挙げられる。また、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートとしては、例えばジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
なお、重合性化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを用いた場合には、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートは、架橋剤として機能して、記録媒体上に記録した画像の膜強度を向上させることができる。特に、脂環式構造を有するジ(メタ)アクリレートは、嵩高い分子構造を有するので、より効果的に画像の膜強度を向上させることができる。
【0028】
三官能アクリレートとしては、特に制限されないが、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
ウレタン系オリゴマーとしては、例えばポリオールと、ポリイソシアネートおよびポリハイドロキシ化合物と、の付加反応により生じるオリゴマーが挙げられる。ウレタン系オリゴマーとは、分子中にウレタン結合とラジカル重合可能な不飽和二重結合とを一以上有するものであって、相対分子質量(分子量と同義である。)の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2回ないし20回程度の繰り返し構造をもつ中程度の大きさの相対分子質量を有する分子をいう。ウレタン系オリゴマーとしては、市販されているCN963J75、CN964、CN965、CN966J75(いずれもSARTOMER社から入手可能)等を用いることができる。
【0030】
アミノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、市販されているCN371、CN373、CN384、CN386、CN501、CN549、CN550、CN551(SARTOMER社から入手可能)、EBECRYL7100(ダイセル・サイテック社より入手可能)等を用いることができる。
【0031】
N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0032】
以上例示した重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。重合性化合物の含有量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。重合性化合物の含有量が20質量%以上であると、記録媒体上に記録した画像の硬化性が良好となる。一方、重合性化合物の含有量が20質量%未満であると、記録媒体上に記録した画像の硬化性が不十分となる場合がある。
【0033】
1.1.2.光重合開始剤
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、さらに光重合開始剤を含有してもよい。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等の公知の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤やチオキサントン系光重合開始剤が好ましい。
【0034】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい理由は、光を吸収することよって分子内開裂する光開裂型の光重合開始剤であるからである。すなわち、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤には、光開裂の前後で発色団の構造が大きく変化するため吸収の変化が大きく、フォトブリーチング(光退色)と呼ばれる吸収の減少が認められる。また、吸収がUV領域からVL領域まで及ぶにもかかわらず黄変が起こりにくく、内部硬化にも優れている。このため、透明な厚膜や隠蔽力の大きい顔料入り塗膜に対して特に好ましい。
【0035】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドは、前述した重合性化合物との相溶性に優れている点でより好ましい。市販されている商品としては、DAROCUR TPO(商品名、チバ・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0036】
また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の中でも、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドは、広域な吸光特性を有する点でより好ましい。市販されている商品としては、IRGACURE 819(商品名、チバ・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0037】
チオキサントン系光重合開始剤が好ましい理由は、三重項励起状態から他の光重合開始剤へエネルギーを与えるエネルギー移動型増感剤として作用するからである。また、光開裂後の反応系内に残存する酸素と反応して系内の酸素の濃度を下げる作用があるからである。酸素濃度が下がる分だけ、ラジカル重合阻害の程度が低減できるので、表面硬化性を改善することができる。市販されている商品としては、KAYACURE DETX(商品名、日本化薬株式会社製、2,4−ジエチルチオキサントン)が挙げられる。
【0038】
さらに、アシルフォスフィン系光重合開始剤とチオキサントン系光重合開始剤とを併用してもよい。アシルフォスフィン系光重合開始剤とチオキサントン系光重合開始剤とを併用することによりそれぞれの特性を最大限に引き出すことが可能となる。
【0039】
光重合開始剤の含有量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。1質量%未満であると、光重合開始剤の機能が発揮されない場合があり、記録媒体上に記録した画像の硬化性が不十分となることがある。一方、20質量%を超えても、硬化反応を開始させる効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
【0040】
1.1.3.顔料および分散剤
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、そのままでもいわゆるクリアインクとして機能することができるが、さらに顔料を含有してもよい。本実施の形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。一方、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
【0041】
本実施の形態で使用可能な顔料の具体例のうち、カーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7が挙げられ、例えば、三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、さらに、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0042】
また、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物をイエローインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0043】
また、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物をマゼンタインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0044】
また、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物をシアンインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、16、22、60等が挙げられる。
【0045】
また、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物をグリーンインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、8、36等が挙げられる。
【0046】
また、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物をオレンジインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ51、66等が挙げられる。
【0047】
また、本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物をホワイトインクとする場合に使用可能な顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0048】
本実施の形態で使用可能な顔料の平均粒子径は、好ましくは10nm以上350nm以下の範囲であり、より好ましくは50nm以上250nm以下の範囲である。
【0049】
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物に添加し得る顔料の添加量は、放射線硬化型インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。
【0050】
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、前述した顔料の分散性を高める目的で分散剤を添加してもよい。本実施の形態で使用可能な分散剤としては、Solsperse3000、5000、9000、12000、13240、17000、24000、26000、28000、36000(以上、LUBRIZOL社製)、ディスコールN−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N―520(以上、第一工業製薬株式会社製)等の高分子分散剤が挙げられる。
【0051】
1.1.4.界面活性剤
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。本実施の形態で使用可能な界面活性剤としては、好ましくはシリコーン系界面活性剤であり、より好ましくはポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性シリコーンである。具体的には、ポリエステル変性シリコーンとしては、BYK−347、同348、BYK−UV3500、同3510、同3530(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしては、BYK−348、BYK−3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
1.1.5.重合禁止剤
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。本実施の形態で使用可能な重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール等が挙げられる。
【0053】
1.1.6.物性
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物の水酸基価は、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。放射線硬化型インク組成物の水酸基価が前記範囲にあると、少なくとも一部にフッ素を有するノズルプレート表面に対する放射線硬化型インク組成物の撥液性が高くなり、これにより印刷時における液体吐出ヘッドからの吐出安定性を向上させることができる。水酸基価が30mgKOH/g未満であると、少なくとも一部にフッ素を有するノズルプレート表面に対する放射線硬化型インク組成物の撥液性が低下する傾向がある。一方、水酸基価が250mgKOH/gを超えても、同様に撥液性が低下する傾向がある。
【0054】
本発明において、「水酸基価」とは、放射線硬化型インク組成物1g中に含まれる水酸基含有化合物の水酸基をアセチル化させた後、生成した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(単位は、mgKOH/g)のことをいう。
【0055】
本発明における水酸基価は、下記式(1)により計算で求めた値である。
水酸基価(mgKOH/g)=(放射線硬化型インク組成物1g中の水酸基含有化合物のモル数)×(水酸基含有化合物1分子中の水酸基数)×(水酸化カリウム1モルの分子量) …(1)
【0056】
なお、放射線硬化型インク組成物中に複数種類の水酸基含有化合物が含まれている場合には、それぞれの水酸基含有化合物ごとに上記式(1)によって水酸基価を求め、得られた値の和を放射線硬化型インク組成物の水酸基価とする。
【0057】
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは5〜50mPa・sであり、より好ましくは20〜40mPa・sである。放射線硬化型インク組成物の20℃における粘度が前記範囲にあると、ノズルから放射線硬化型インク組成物が適量吐出され、放射線硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【0058】
本実施の形態に用いられる放射線硬化型インク組成物の20℃における表面張力は、好ましくは20mN/m以上30mN/m以下である。放射線硬化型インク組成物の20℃における表面張力が前記範囲にあると、放射線硬化型インク組成物が撥液処理されたノズルに濡れにくくなる。これにより、ノズルから放射線硬化型インク組成物が適量吐出され、放射線硬化型インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0059】
1.2.インクジェット記録装置
図1は、本実施の形態で使用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。図1に示したインクジェット記録装置20は、記録媒体Pを副走査方向SSに送るモーター30と、プラテン40と、放射線硬化型インク組成物を微少粒径にしてヘッドノズルから噴射して記録媒体Pに吐出する記録ヘッドとしての液体吐出ヘッド52と、該液体吐出ヘッド52を搭載したキャリッジ50と、キャリッジ50を主走査方向MSに移動させるキャリッジモーター60と、液体吐出ヘッド52によって放射線硬化型インク組成物を吐出した記録媒体P上のインク付着面に活性放射線を照射する一対の活性放射線照射装置90A、90Bとを備えている。
【0060】
キャリッジ50は、キャリッジモーター60に駆動される牽引ベルト62によって牽引され、ガイドレール64に沿って移動する。
【0061】
キャリッジ50のホームポジション(図1の右側の位置)には、停止時に液体吐出ヘッド52のノズル面を密閉するためのキャッピング装置80が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ50がこのキャッピング装置80の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置80が自動的に上昇して、液体吐出ヘッド52のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャリッジ50の位置決め制御は、例えば、このキャッピング装置80の位置にキャリッジ50を正確に位置決めするために行われる。
【0062】
図1に示した液体吐出ヘッド52は、3色以上のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色ごとに多数のヘッドノズルが備えられている。かかる液体吐出ヘッド52が搭載されるキャリッジ50には、前記液体吐出ヘッド52の他に、液体吐出ヘッド52に供給される黒色インクを収容したブラックインク容器としてのブラックカートリッジ54と、液体吐出ヘッド52に供給されるカラーインクを収容したカラーインクとしてのカラーインクカートリッジ56とが搭載されている。各カートリッジ54、56に収容されているインクは、前述した放射線硬化型インク組成物である。
【0063】
液体吐出ヘッド52は、ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を有していれば特に制限されない。本発明において「ノズルプレート表面」とは、ノズルプレートの少なくとも一方の面の性質を変化させるために物理的または化学的に処理された膜をも含む。図2は、液体吐出ヘッドの一例を模式的に示す断面図である。図2に示した液体吐出ヘッド152は、ノズルプレート110、圧力室基板112、振動板114、圧電素子116等の主要部材から構成されている。ノズルプレート110上には、圧力室基板112が設けられており、圧力室基板112によって仕切られることで圧力室118が形成される。圧力室基板112上には、可撓性を有する振動板114が設けられており、振動板114が撓むことで圧力室118の内部圧を瞬間的に高めることができるようになっている。振動板114上には、圧力室118に対応する位置に圧電素子116が設けられている。圧電素子116は、カバー120で全体を覆われている。
【0064】
圧力室基板112には、インクをヘッド内部へ導入する図示しないインク導入口が設けられている。このインク導入口は、図示しないインク溜まりと接続しており、このインク溜まりにおいてインクを溜めることができるように形成されている。また、インク溜まりは流路122を介して圧力室118と連通しており、圧力室118のインク吐出側はノズルプレート110に設けられたインク吐出口124と接続している。
【0065】
ノズルプレート110の材質は、特に制限されず、ステンレス鋼(例えばSUS等)、ポリイミド等を用いることができる。ノズルプレート110の材質がステンレス鋼の場合には、ノズルプレート110の表面およびインク吐出口124の内部表面にシリコーン材料をプラズマ重合することによりプラズマ重合膜126が形成される。プラズマ重合膜126の原料としては、シリコーン油、ジメチルポリシロキサン等のアルコキシシランが挙げられる。具体的な商品としては、TSF451(ジーイー東芝シリコーン株式会社製)、SH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0066】
また、プラズマ重合膜126の表面には撥液性を有するフッ素樹脂膜128が形成されている。このフッ素樹脂膜128は、フッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシシランの単分子膜であることが好ましい。フッ素を含む長鎖高分子鎖としては、分子量が1000以上の、パーフルオロアルキル鎖、パーフルオロポリエーテル鎖等が挙げられる。この長鎖高分子鎖を有するアルコキシシランとしては、例えば前記例示した長鎖高分子鎖を有するシランカップリング剤等が挙げられる。このシランカップリング剤としては、例えばヘプタトリアコンタフルオロイコシルトリメトキシシラン等が挙げられ、市販品としてはオプツールDSX(商品名、ダイキン工業株式会社製)、KY−130(商品名、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。なお、ノズルプレート110の材質がポリイミドの場合には、プラズマ重合膜126を形成せずにノズルプレート110上に直接フッ素樹脂膜128を形成してもよい。
【0067】
図3は、プラズマ重合膜126の表面に形成されたフッ素樹脂膜128の概念図である。ノズルプレート110をフッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシシラン溶液に浸漬させると、ノズルプレート110上のプラズマ重合膜126の表面にフッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシシランの重合したフッ素樹脂膜128が形成される。このフッ素樹脂膜128のケイ素原子は、酸素原子を介してプラズマ重合膜126と結合(いわゆるシロキサン結合)する。そのため、フッ素を含む長鎖高分子鎖128aは、表面側に位置することになる。このとき、フッ素樹脂膜128の状態は、ケイ素原子が三次元的に結合し、フッ素を含む長鎖高分子鎖同士が複雑に絡み合った状態となっている。このため、フッ素樹脂膜128は高密度な状態となり、フッ素樹脂膜128にインクが浸透しにくくなる。このような液体吐出ヘッド152は、単分子膜のフッ素樹脂膜128を有しているため、ノズルプレート110の最表面から1μm未満の領域にはシロキサン結合を有していることになる。
【0068】
また、ノズルプレート110の表面にNiイオンとフッ素樹脂との共析メッキ膜を形成することで、ノズルプレート110表面の少なくとも一部にフッ素を有するようにしてもよい。
【0069】
ノズルプレート110表面の少なくとも一部にフッ素を有する液体吐出ヘッド152によれば、ノズルプレート110表面に対する前述の放射線硬化型インク組成物の撥液性が高くなり、これにより印刷時における液体吐出ヘッドからの吐出安定性を向上させることができる。
【0070】
以上に説明したようなインクジェット記録装置20を使用することにより、記録媒体上に前述の放射線硬化型インク組成物を安定して吐出することができる。記録媒体としては、特に制限されないが、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等のプラスチック類およびこれらの表面が加工処理されているもの、ガラス、コート紙等が挙げられる。
【0071】
記録媒体上に吐出された放射線硬化型インク組成物に対して、活性放射線を照射することにより、該放射線硬化型インク組成物が硬化されて、記録媒体上に画像を記録することができる。図4は、図1に示した活性放射線照射装置90A(図4の190Aに相当)、90B(図4の190Bに相当)の正面図である。図5は、図4のA−A矢視図である。
【0072】
図1、図4および図5に示すように、活性放射線照射装置190A、190Bは、キャリッジ50の移動方向に沿った両側端にそれぞれ取り付けられている。
【0073】
図4に示すように、液体吐出ヘッド52の向かって左側に取り付けられた活性放射線照射装置190Aは、キャリッジ50が右方向(図4の矢印B方向)に移動する右走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して活性放射線照射を行う。一方、液体吐出ヘッド52の向かって右側に取り付けられた活性放射線照射装置190Bは、キャリッジ50が左方向(図4の矢印C方向)に移動する左走査時に、記録媒体P上に吐出されたインク層196に対して活性放射線照射を行う。
【0074】
各活性放射線照射装置190A、190Bは、キャリッジ50に取り付けられて、活性放射線光源192をそれぞれ1個ずつ整列支持した筐体194と、活性放射線光源192の発光および消灯を制御する(図示しない)活性放射線光源制御回路とを備えている。図4および図5に示すように、活性放射線照射装置190A、190Bには、活性放射線光源192がそれぞれ1個ずつ設けられているが2個以上設けてもよい。活性放射線光源192としては、LEDまたはLDのいずれかを使用することが好ましい。これにより、活性放射線光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、フィルター等の装備のために活性放射線光源が大型化することを回避することができる。また、フィルターによる吸収で出射された活性放射線強度が低下することがなく、放射線硬化型インク組成物を効率良く硬化させることができる。
【0075】
また、各活性放射線光源192は、出射される波長が同じものでもよいし、異なっていてもよい。活性放射線光源192としてLEDまたはLDを使用する場合、出射される活性放射線の発光ピーク波長は350〜430nm程度の範囲のいずれかとすればよい。
【0076】
以上に説明した活性放射線照射装置190A、190Bによれば、図4に示すように、液体吐出ヘッド52からの吐出で記録媒体P上に付着させたインク層196に対して、液体吐出ヘッド52近傍の記録媒体P上を照射する活性放射線光源192により活性放射線192aが照射され、インク層196の表面および内部を硬化させることができる。
【0077】
活性放射線の照度は、記録媒体P上に付着させたインク層196の厚さにより異なるため厳密には特定できず、適宜好ましい条件を選択するものではあるが、前述した光硬化型インク組成物を用いているので、10〜2000mW/cm程度の照度で十分に硬化させることができる。
【0078】
インクジェット記録装置20によれば、放射線硬化型インク組成物の粘度が低く、インク層の膜厚が比較的薄いフルカラー印刷時においても、記録媒体P上に吐出された複数の活性放射線硬化型インク組成物を滲みや色混じりという不具合を生じることなく、良好に硬化させることができる。
【0079】
なお、インクジェット記録装置20の構成は、前述した記録ヘッド、キャリッジおよび光源等の構成に限定されるものではなく、本実施の形態に係るインクジェット記録方法の趣旨に基づいて種々の形態を採用することができる。
【0080】
2.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
2.1.放射線硬化型インク組成物の調製
2.1.1.顔料分散液の調製
表1に示す成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散液を得た。分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間を2〜4時間とした。
【0082】
【表1】

【0083】
ここで、表1にて使用した顔料、分散剤および重合性化合物は、以下の通りである。
・ホワイト顔料(石原産業株式会社製、二酸化チタン)
・シアン顔料(チバ・ジャパン株式会社製、商品名「IRGALITE BLUE GLO」、ピグメントブルー15:3)
・分散剤A(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−168」)
・分散剤B(LUBRIZOL社製、商品名「Solsperse36000」)
・重合性化合物(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコートD192」、フェノキシエチルアクリレート)
【0084】
2.1.2.放射線硬化型インク組成物の調製
表2〜表3に示す成分を撹拌混合溶解し、インク製造例1〜23の放射線硬化型インク組成物を得た。
【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
なお、表2〜表3において使用した、重合性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤を以下に示す。
(1)重合性化合物
・N−ビニルカプロラクタム(BASF社製、商品名「N−ビニルカプロラクタム」)
・ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社製、商品名「EBECRYL IRR214K」)
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート192D」)
・4−ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「4−HBA」)
・1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成株式会社、商品名)
・DA−722(商品名、ナガセケムテックス株式会社、[ヘキサハイドロフタル酸タイプ]エポキシアクリレート)
・DA−250(商品名、ナガセケムテックス株式会社、[ビスフェノールAタイプ]エポキシアクリレート)
・DA−931(商品名、ナガセケムテックス株式会社、[プロピレングリコールタイプ]エポキシアクリレート)
(2)光重合開始剤
・IRGACURE 819(商品名、チバ・ジャパン株式会社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)
・DAROCUR TPO(商品名、チバ・ジャパン株式会社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)
・KAYACURE DETX(商品名、日本化薬株式会社製、2,4−ジエチルチオキサントン
(3)界面活性剤
・BYK−UV3500(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン)
(4)重合禁止剤
・p−メトキシフェノール(商品名、関東化学株式会社製)
【0088】
表2〜表3には、得られた放射線硬化型インク組成物の水酸基価を併せて記載した。なお、放射線硬化型インク組成物の水酸基価は、上記計算式(1)により計算した値である。
【0089】
2.2.評価試験
2.2.1.撥液性評価方法
まず、ノズルプレート(以下、「NP」ともいう)が異なる5種類の液体吐出ヘッドを用意した。使用したNPの特徴は、以下の通りである。
・NP1(NP基板としてSUSを用いており、表面処理を行っていないもの)
・NP2(NP基板としてポリイミドを用いており、表面処理を行っていないもの)
・NP3(NP基板としてSUSを用いており、NP表面にNiイオンとフッ素樹脂との共析メッキ膜を形成したもの)
・NP4(NP基板としてSUSを用いており、NP表面にシリコーン材料をプラズマ重合することによりプラズマ重合膜を形成した後、フッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシシランでフッ素樹脂膜を形成したもの。)
・NP5(NP基板としてポリイミドを用いており、NP表面にフッ素を含む長鎖高分子鎖を有するアルコキシシランでフッ素樹脂膜を形成したもの。)
【0090】
次いで、用意したノズルのノズルプレート面へ得られた放射線硬化型インク組成物を随時滴下し、ブチル製ゴムワイプにより3000回ワイピングした。評価基準は、以下の通りである。
「A」:ワイピング3000回後のノズルプレート上にインクがない。
「B」:ワイピング3000回後のノズルプレート上にインクが残留。
【0091】
2.2.2.吐出安定性評価方法
まず、前記5種類のNPをそれぞれ備えたインクジェットプリンターPX−5000(セイコーエプソン株式会社製)を用意した。各インクジェットプリンターを用いて、解像度720×720dpi、液滴重量10ng、環境温度40℃の条件で、「2.1.2.放射線硬化型インク組成物の調製」によって得られた放射線硬化型インク組成物をPETフィルム上にベタパターン画像とする印刷を48時間連続で行った。このときのドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生を目視により観察した。評価基準は、以下の通りである。
「A」:ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生が100回未満。
「B」:ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛散の発生が100回以上。
【0092】
2.3.評価結果
上記の撥液性評価方法および吐出安定性評価方法に基づいて、表4〜表8に記載の実験例1〜実験例54を行った。その結果を表4〜表8に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

【0098】
表4〜表8に記載の実験例1〜実験例54によれば、ノズルプレートの少なくとも一部にフッ素を有するNP3、NP4、NP5のいずれか1種と、水酸基価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の放射線硬化インク組成物と、を使用することにより、撥液性評価および吐出安定性評価の結果が良好となることが明確となった。
【0099】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0100】
20…インクジェット記録装置、30…モーター、40…プラテン、50…キャリッジ、52(152)…液体吐出ヘッド(記録ヘッド)、54…ブラックインクカートリッジ、56…カラーインクカートリッジ、60…キャリッジモーター、62…牽引ベルト、64…ガイドレール、80…キャッピング装置、90A(190A)、90B(190B)…活性放射線照射装置、110…ノズルプレート、112…圧力室基板、114…振動板、116…圧電素子、118…圧力室、120…カバー、122…流路、124…吐出口、126…プラズマ重合膜、128…フッ素樹脂膜、128a…フッ素を含む長鎖高分子鎖、192…活性放射線光源、192a…活性放射線、194…筐体、196…インク層、P…記録媒体、PS…圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルプレート表面の少なくとも一部にフッ素を有する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いる画像記録方法であって、
前記液体吐出ヘッドから吐出される液体が、放射線硬化型インク組成物であり、
前記放射線硬化型インク組成物の水酸基価が、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、画像記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ノズルプレート表面から1μm未満の領域に、シロキサン結合を有する、画像記録方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記放射線硬化型インク組成物は、4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートから選択される少なくとも1種を含有する、画像記録方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記放射線硬化型インク組成物は、水酸基を有するエポキシアクリレートを含有する、画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−235477(P2011−235477A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107019(P2010−107019)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】