説明

画像記録方法

【課題】 色材の種類によらずとも、耐湿性が高い画像が得られる画像記録方法を提供すること。
【解決手段】 染料を含有するインクを、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体に付与することで画像を記録する工程を有する画像記録方法であって、前記インクが更に、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有することを特徴とする画像記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法において、色材として染料を含有するインクを使用した場合に、得られた画像を高湿条件下に放置すると画質が低下する、即ち、画像の耐湿性が低いという課題がある。これは、高湿条件下に放置した場合に、記録媒体中に残存する水溶性有機溶剤が吸湿し、色材と共に記録媒体内部を移動することによって発生するものである。この課題を改善するために、耐湿性の高い構造を有する染料を含有するインクが検討されている(特許文献1)。特許文献1には、特定の構造のポリアゾ染料を含有するブラックインクが開示されている。また、インクに使用する染料の構造だけでなく、用いる水溶性有機溶剤にも着目して、耐湿性を改善する方法も検討されている(特許文献2)。特許文献2には、特定の色材と吸湿性が低く蒸発しやすい水溶性有機溶剤を含有するインクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−002271号公報
【特許文献2】特開2006−045542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献1及び2のような従来のインクを用いて記録した場合、画像の耐湿性は改善するものの十分なレベルではなかった。更に、従来の方法では耐湿性を改善させるためには、特定の染料を使用する必要があるため、色材の選択の自由度が低かった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、色材の種類によらずとも、耐湿性が高い画像が得られる画像記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる画像記録方法は、染料を含有するインクを、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体に付与することで画像を記録する工程を有し、前記インクが更に、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、色材の種類によらずとも、耐湿性が高い画像が得られる画像記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明の画像記録方法は、染料を含有するインクを、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体に付与することで画像を記録する工程を有し、前記インクが更に、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有することを特徴とする。尚、本明細書の記載において、C.I.とは、カラーインデックスの略語である。
【0009】
本発明者らが検討したところ、色材として染料を使用した場合に、耐湿性が得られないメカニズムは以下の通りである。まず、記録媒体中の水溶性有機化合物が大気中の水分を吸収し、水分を吸収した水溶性有機化合物に染料が溶解する。そして、染料が溶解した水溶性有機化合物が記録媒体中を移動することで、画質が低下するものである。本発明者らが、以上のメカニズムを元に検討を行ったところ、色材の種類によらずに、画像の耐湿性を改善するためには、水溶性有機化合物及び記録媒体の両方に着目する必要があるとの結論に至った。即ち、記録媒体中での移動度が小さい水溶性有機化合物を用いることに加えて、染料及び水溶性有機化合物の移動度を小さくするような記録媒体を用いることで、染料が水溶性有機化合物と共に記録媒体中を移動することが抑制され、吸湿による画質の低下がより生じにくくなることを見出した。
【0010】
そして、本発明者らが、上述した耐湿性の改善のための知見に基づき、種々の記録媒体及び水溶性有機化合物について検討を行った結果、本発明の構成に至ったものである。即ち、水溶性有機化合物として、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有するインクを用い、更に、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体に画像を形成する画像形成方法により、上記本発明の効果が達成される。このような効果が得られる理由について、以下に詳述する。
【0011】
種々の水溶性有機化合物について検討を行ったところ、糖化合物を用いると良好な結果が得られた。そこで、更に、種々の糖化合物について、検討を行ったところ、「炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物」(以下、「特定の糖化合物」とする)を用いるときに本発明の効果が得られることが分かった。前記特定の糖化合物は、吸湿性が高く、蒸発しにくい化合物であり、記録媒体中において、水分を吸収した状態で存在しやすい。そのため、前記特定の糖化合物の各分子は、それぞれのヒドロキシ基において、水分子と水素結合を形成するため、複数の分子が水分子を介した集合体として記録媒体中に存在することになる。この集合体は、ある程度の大きさを有するため、記録媒体中での移動度が非常に小さい。その結果、得られる画像の耐湿性が著しく向上するものと考えられる。
【0012】
一方、水溶性有機化合物の移動度を小さくするような記録媒体について、本発明者らが検討を行ったところ、種々ある記録媒体の中でもアルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体を用いることが重要であるとの結論に至った。この理由について、以下に詳細する。
【0013】
一般的に、記録媒体のインク受容層は、顔料とバインダーとを含有し、必要に応じて、その他の添加剤を適宜配合することで形成されている。インク受容層に用いられる顔料としては、一般に使用されている顔料を用いることができる。これらの顔料について、染料及び水溶性有機化合物の移動度の観点から検討を行ったところ、インク受容層に用いられる顔料としてアルミナ及び/又はアルミナ水和物を用いた場合に良好な結果が得られた。即ち、インク受容層にアルミナ及び/又はアルミナ水和物を含む記録媒体では、染料及び水溶性有機化合物の移動度が小さいことが分かった。これは、アルミナ及び/又はアルミナ水和物は、正電荷を持っており、染料と相互作用することで、染料の移動を抑制することができるためである。
【0014】
更に、本発明者らは、記録媒体中での移動度が小さい水溶性有機化合物、並びに、染料及び水溶性有機化合物の移動度を小さくするような記録媒体を組合せた画像記録方法について検討を行った。即ち、インク受容層の主成分としてアルミナ及び/又はアルミナ水和物を含む記録媒体に対して、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有するインクを用いて画像を記録した。その結果、それぞれを単独で用いた場合からは、予想できない程の、高い耐湿性の画像が得られた。以上のメカニズムのように、各構成が相乗的に効果を及ぼし合うことによって、本発明の効果を達成することが可能となる。
【0015】
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法は、染料を含有するインクを、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体に付与することで画像を記録する工程を有し、前記インクが更に、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有することを特徴とする。本発明においては、インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出する方式の画像記録方法が好ましい。また、インクに熱エネルギーを作用させて記録ヘッドから吐出させる方式の画像記録方法が特に好ましい。以下、本発明の画像記録方法に用いる記録媒体及びインクについて説明する。
【0016】
<記録媒体>
本発明の画像記録方法に用いる記録媒体は、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する。具体的には、支持体と、その支持体の少なくとも一方の面上に、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体であることが好ましい。
【0017】
(1)インク受容層
本発明におけるインク受容層は、顔料としてアルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有する。また、バインダーを含むことが好ましい。本発明におけるインク受容層は、例えば、顔料、バインダーに加えて、必要に応じて、その他の添加剤を適宜配合した塗工液を支持体上に塗工することで形成できる。
【0018】
(アルミナ、アルミナ水和物)
本発明において、インク受容層は、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有する。アルミナ水和物としては、例えば、下記一般式により表されるものを好適に利用できる。
Al3−n(OH)2n・mH
(上記式中、nは0、1、2又は3を表し、mは0以上10以下、好ましくは0以上5以下の数を表す。ただし、mとnは同時に0にはならない。)
【0019】
mHOは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数又は整数でない値をとることができる。また、アルミナ水和物を加熱するとmは0となることもあり得る。上記アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型が知られており、これらの中でいずれの結晶構造のアルミナ水和物も使用可能である。これらの中で好適なアルミナ水和物は、X線回折法による分析でベーマイト構造又は非晶質を示すアルミナ水和物である。具体例としては、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報及び特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。また、アルミナ水和物としては、市販品のアルミナ水和物Disperal HP14(サソール製)などを用いることができる。
【0020】
尚、アルミナ、アルミナ水和物以外に、更に、その他の顔料を含有してもよい。その他の顔料としては、一般に使用されている水に不溶又は難溶性の顔料を用いることができる。
【0021】
本発明においては、インク受容層に含まれる全ての顔料のうち、30質量%以上100質量%以下が、アルミナ及び/又はアルミナ水和物であることが好ましい。30質量%より小さいと、上述した耐湿性の向上効果が十分に得られない場合がある。
【0022】
(バインダー)
本発明において、インク受容層は、バインダーを含有することができる。バインダーとしては、上記アルミナ及び/又はアルミナ水和物を結着し、支持体上に被膜を形成する能力のある材料であって、かつ、本発明の効果を損なわないものであれば、何れも利用することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0023】
(添加剤)
本発明において、インク受容層は、必要に応じて以下の添加剤を含むことができる。具体的には、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料、pH調整剤などが挙げられる。
【0024】
(2)支持体
本発明における支持体は、紙等の不透明材料からなる支持体を用いることができる。紙からなる支持体には、澱粉、ポリビニルアルコール等でのサイズプレスを原紙上に施したものも含まれる。
【0025】
<インク>
以下、本発明の画像記録方法に用いるインクを構成する各成分について、それぞれ説明する。
【0026】
(1)糖化合物
本発明において、インクは炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有する。本発明において、使用することができる糖化合物としては、単糖類及びその脱水縮合物、糖アルコールが挙げられる。ここで、単糖類の脱水縮合物とは、「単糖類2分子以上が脱水縮合により、グリコシド結合した化合物」を意味する。また、糖アルコールとは、「単糖類又は単糖類の脱水縮合物のアルデヒド基及びケトン基を還元した化合物」を意味する。糖化合物は立体異性体を有するものが多く存在するが、D体でもL体でもよい。
【0027】
炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物は、具体的には以下の通りである。例えば、単糖類としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、セドヘプツロース、コリオース、フルクトフラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、タロピラノースなどが挙げられる。単糖類の脱水縮合物としては、例えば、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、ソホロース、トレハロース、イソトレハロース、スクロース、イソサッカロースなどが挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトール、ボレミトール、ペルセイトール、マルチトールなどが挙げられる。これらの糖化合物は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、これらの中でも、ソルビトール、ガラクトース及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0028】
本発明において、インクに用いる糖化合物は、炭素数が12以上であることが好ましい。また、ヒドロキシ基数が8以上であることが好ましい。本発明者らの検討によると、炭素数が12以上かつヒドロキシ基数が8以上である糖化合物を用いた場合、耐湿性がより向上することを確認した。したがって、上記例示した糖化合物の中でも、トレハロースを用いることがより好ましい。また、炭素数は20以下、ヒドロキシ基数が15以下であることが好ましい。
【0029】
本発明において、インク中の糖化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上であることが好ましい。更には、20.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の糖化合物の含有量(質量%)が、染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.5倍以上20.0倍以下であることが好ましい。尚、本発明においては、質量比率を算出する際の成分の含有量は、インク全質量を基準としたものである。
【0030】
(2)染料
本発明において、インクに用いる染料は、インクに使用可能なものであれば、公知の染料でも、新規に合成された染料でも使用することができる。中でも特に、発色性は高いが耐湿性が低いような水溶性染料を用いた場合に、本発明の効果がより顕著に得られる。そのような水溶性染料としては、トリフェニルメタン骨格を有する水溶性染料、キサンテン骨格を有する水溶性染料、アゾ骨格を有する水溶性染料、アントラピリドン骨格を有する水溶性染料などが挙げられる。
【0031】
(トリフェニルメタン骨格を有する水溶性染料)
本発明において、トリフェニルメタン骨格とは、下記一般式(1)で表される構造である。
【0032】
【化1】

【0033】
トリフェニルメタン骨格を有する水溶性染料としては、C.I.アシッドブルー1、3、7、9、20、22、25、29、40、41、45、74、80、83、90、92、93、119、129、147などが挙げられる。これらの中でも、C.I.アシッドブルー3及びC.I.アシッドブルー9から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。更には、C.I.アシッドブルー9を用いることがより好ましい。
【0034】
(キサンテン骨格を有する水溶性染料)
本発明において、キサンテン骨格とは、下記一般式(2)で表される構造である。
【0035】
【化2】

【0036】
キサンテン骨格を有する水溶性染料としては、C.I.アシッドレッド51、52、87、91、92、93、94、95、98、289などが挙げられる。これらの中でも、C.I.アシッドレッド52及びC.I.アシッドレッド289から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。更には、C.I.アシッドレッド289を用いることがより好ましい。
【0037】
(アゾ骨格を有する水溶性染料)
アゾ骨格を有する水溶性染料としては、C.I.ダイレクトイエロー8、12、27、28、33、44、50、86、132、173;C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29;C.I.フードイエロー3;C.I.アシッドレッド6、8、13、14、26、32、35、42、89、106、114、115、134、145、249、265;C.I.ダイレクトレッド2、4、23、24、46、75、83;C.I.ダイレクトオレンジ26、29、102などが挙げられる。これらの中でも、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトイエロー132から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0038】
(アントラピリドン骨格を有する水溶性染料)
本発明において、アントラピリドン骨格とは、下記一般式(3)で表される構造である。
【0039】
【化3】

【0040】
アントラピリドン骨格を有する水溶性染料としては、C.I.アシッドレッド80、82、83、143などが挙げられる。これらの中でも、C.I.アシッドレッド80及びC.I.アシッドレッド82から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0041】
(染料の含有量)
本発明のインクに用いる染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。更には、5.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。染料の含有量が、0.1質量%より小さいと、発色性が十分に得られない場合がある。15.0質量%より大きいと、インクジェット方式で吐出した際に耐固着性などが十分に得られない場合がある。尚、インクに複数種の染料を用いる場合、上記の含有量は合計の値である。
【0042】
(3)水性媒体
本発明の画像記録方法に用いるインクには、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。更には、10.0質量%以上50.0質量%以下であることがより好ましい。水溶性有機溶剤としては、従来、インクに一般的に用いられているものを何れも用いることができる。例えば、アルコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素原子数が2乃至6のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
【0043】
(4)その他の添加剤
本発明の画像記録方法に用いるインクは、上記の成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体など、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。更に、本発明のインクは必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び樹脂などの種々の添加剤を含有してもよい。
【0044】
<その他のインク>
本発明の画像記録方法においては、フルカラーの画像などを記録するために、複数の異なる色調のインクを組み合わせて用いることができる。異なる色調のインクとしては、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク、及びブルーインクなどが挙げられる。また、これらのインクと実質的に同じ色調を有する、所謂淡インクを更に組み合わせて用いることもできる。これらのインク又は淡インクの色材は、公知の染料であっても、新規に合成された色材であっても用いることができる。尚、複数のインクのうち、少なくとも1つのインクが本発明の構成を満たしていればよいが、複数のインク全てが、本発明の構成を満たすことが特に好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。尚、明細書及び表中の略称は以下の通りである。
AB9:C.I.アシッドブルー9
AB3:C.I.アシッドブルー3
AR289:C.I.アシッドレッド289
AR52:C.I.アシッドレッド52
AR80:C.I.アシッドレッド80
AR82:C.I.アシッドレッド82
DY132:C.I.ダイレクトイエロー132
DY86:C.I.ダイレクトイエロー86
【0046】
<記録媒体の用意>
(記録媒体I)
記録媒体Iは以下の方法で作製した。まず、低密度ポリエチレン70部、高密度ポリエチレン20部、及び酸化チタン10部を含む樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を、坪量155g/mの支持体の両面に、25g/mとなるように塗布することで、樹脂で被覆された支持体を得た。更に、この支持体の片面に、アルミナ水和物及びポリビニルアルコール(バインダー)を主成分としたインク受容層を形成し、記録媒体Iを得た。
【0047】
(記録媒体II)
記録媒体IIとして、キヤノン写真用紙・光沢プロフェッショナルPR−101(キヤノン製)を用いた。記録媒体IIは、アルミナ及びアルミナ水和物を含有するインク受容層を有する記録媒体である。
【0048】
(記録媒体III)
記録媒体IIIとして、PM写真用紙<光沢>(エプソン製)を用いた。記録媒体IIIのインク受容層は、アルミナ及びアルミナ水和物の何れも含有しない。記録媒体IIIは、シリカを含有するインク受容層を有する記録媒体である。
【0049】
<インクの調製>
表1に示す染料及び糖化合物を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.20μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。
【0050】
<画像の耐湿性の評価>
上記で得られた各インクをインクカートリッジに充填し、上記インクジェット記録装置PIXUS iP8600(キヤノン製)に装着した。そして、表1に記載した記録媒体に対し、1mm×1mmの記録部(記録デューティが100%の記録部)と1mm×1mmの非記録部を交互に配した市松模様の画像(30mm×30mm)を、それぞれのインクについて2つずつ記録した。このときの記録条件は、温度:23℃、相対湿度:55%、記録密度:2,400dpi×1,200dpi、1滴あたりの吐出量:2.5pLとした。尚、本実施例においては、上記インクジェット記録装置を用いて、解像度600dpi×600dpiで1/600インチ×1/600インチの単位領域に2.5pLの体積のインクを8滴付与する条件を、記録デューティが100%であると定義するものである。そして、得られた一方の画像(画像1)を、温度:23℃、相対湿度:55%の環境で48時間放置した。もう一方の画像(画像2)は、温度:23℃、相対湿度:55%の環境で48時間放置した後、更に、温度:30℃、相対湿度:80%の環境で72時間放置した。通常の湿度条件下に放置された画像1と比較したときに、高湿条件下に放置された画像2に滲みが発生するかを目視で観察し、画像の耐湿性を評価した。画像の耐湿性の評価基準は下記の通りである。尚、下記の評価基準において、AA〜Bが好ましいレベルとし、Cは許容できないレベルとした。評価結果を表1に示す。
AA:画像1と比較して、画像2には滲みがなかった
A:画像1と比較して、画像2にはほとんど滲みがなかった
B:画像1と比較して、画像2には滲みがみられたが、許容できるレベルであった
C:画像1と比較して、画像2には明らかな滲みがみられた。
【0051】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料を含有するインクを、アルミナ及びアルミナ水和物の少なくとも何れかを含有するインク受容層を有する記録媒体に付与することで画像を記録する工程を有する画像記録方法であって、
前記インクが更に、炭素数が6以上かつヒドロキシ基数が5以上である糖化合物を含有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記染料が、トリフェニルメタン骨格を有する水溶性染料、キサンテン骨格を有する水溶性染料、アゾ骨格を有する水溶性染料、及びアントラピリドン骨格を有する水溶性染料から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記糖化合物が、ソルビトール、ガラクトース及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記トリフェニルメタン骨格を有する水溶性染料が、C.I.アシッドブルー3及びC.I.アシッドブルー9から選ばれる少なくとも1種を含む請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記キサンテン骨格を有する水溶性染料が、C.I.アシッドレッド52及びC.I.アシッドレッド289から選ばれる少なくとも1種を含む請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記アゾ骨格を有する水溶性染料が、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトイエロー132から選ばれる少なくとも1種を含む請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項7】
前記アントラピリドン骨格を有する水溶性染料が、C.I.アシッドレッド80及びC.I.アシッドレッド82から選ばれる少なくとも1種を含む請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記画像を記録する工程において、前記インクがインクジェット方式の記録ヘッドから吐出される請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像記録方法。


【公開番号】特開2012−250435(P2012−250435A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124587(P2011−124587)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】