説明

画像記録装置、および、画像記録装置の防水構造

【課題】画像記録装置が備える押しボタンスイッチの操作性を損なうことなく、簡単な構成によって防水する。
【解決手段】記録媒体に画像を記録して、本体の前面に設けられた排出口から排出するプリンターにおいて、本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材21を備え、本体の上面21aに、押しボタンスイッチの操作子31が収められるスイッチ穴26が設けられ、スイッチ穴26の近傍に肉盗み穴21cが設けられ、スイッチ穴26および肉盗み穴21cを覆うウレタンエラストマー製のシート40が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する画像記録装置、および、この画像記録装置の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像記録装置において、操作パネルに防水性を持たせるため、撥水性を有するフィルムで覆った例が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2006−276480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の画像記録装置のように操作パネルをフィルムで覆った場合、操作パネルの操作性はフィルムの特性により強く制約される。すなわち、操作パネルを押圧しても、フィルムの弾性が許す範囲でしか操作できなくなり、例えば、耐久性に富む硬質なフィルムで操作パネルを覆った場合には、このフィルムが撓む量しか、操作時のストロークを確保できない。また、操作性を良くするため柔軟なフィルムを用いると、フィルムの耐久性を確保することが困難であった。このため、深く沈み込むタイプのスイッチ類にはフィルムによる防水構造を適用できず、パッキン等を用いた複雑な防水構造が用いられていた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、画像記録装置において、簡単な構造によって、良好な操作性を確保しながら、スイッチの防水を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に画像を記録して、本体の前面に設けられた排出口から排出する画像記録装置において、前記本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材を備え、前記本体の上面に、押しボタンスイッチの操作子が収められるスイッチ穴が設けられ、前記スイッチ穴の近傍に肉盗み穴が設けられ、前記スイッチ穴および前記肉盗み穴を覆うウレタンエラストマー製のシートが配設されたことを特徴とする画像記録装置を提供する。
この構成によれば、本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材を備えた構成において、押しボタンスイッチの操作子を収めるスイッチ穴および肉盗み穴をウレタンエラストマー製のシートによって覆うことで、操作子および肉盗み穴への液体の浸入を防止できるとともに、耐久性および可撓性に富むウレタンエラストマーのシートを用いることで、操作時のストローク量が大きい操作子であっても十分に押し込むことができ、良好な操作感で操作できる。これにより、画像記録装置が備える押しボタン式の操作子の操作性を損なうことなく、簡単な構成によって防水できる。また、ストローク量の大きい操作子を収容するためのスイッチ穴を設けた上面パネルを金型による成形で形成するために、ヒケ防止用の肉盗み穴を設けた構成において、スイッチ穴とともに肉盗み穴を容易に防水できるので、画像記録装置の加工性を損なうことなく、防水性を確保できる。そして、スイッチ穴が設けられた上面パネル部材は、画像記録装置本体の上面および背面の少なくとも一部を構成するものなので、スイッチ穴と肉盗み穴とを防水することによって、画像記録装置の上面全体を防水することができ、簡単な構成によって画像記録装置の防水性能を大幅に高めることができる。
【0005】
上記構成において、前記シートの裏面は、前記スイッチ穴の周囲に接着固定されるとともに、前記操作子の上面は前記シートの裏面に接離可能であっても良い。
この構成によれば、スイッチ穴にシートを接着により簡単に固定することができ、操作子の上面がシートの裏面に張り付いていないため、シートの伸縮が妨げられない。このため、シートが十分に伸縮可能であり、良好な操作性を確保できる。
【0006】
また、前記本体の上面は、前記画像記録装置の設置面に対し、前記本体の前面側が高く背面側が低い傾斜面であり、前記肉盗み穴は、前記スイッチ穴よりも下方に位置する構成としても良い。
この場合、スイッチ穴と、このスイッチ穴より下方に位置して、液体が流れる場合の下流側に位置する肉盗み穴を、シートによって容易に、かつ確実に防水できる。
さらに、前記押しボタンスイッチは、前記画像記録装置の電源のオンとオフとを切り替えるための電源スイッチであっても良い。
この場合、電源スイッチを簡単かつ交換等の修理が容易な構造によって防水できる。また、誤操作を防止するため深い押し込み量に設定されることが多い電源スイッチに対応して、操作性を損なうことなく、防水構造を適用できる。
【0007】
また、本発明は、記録媒体に画像を記録して、本体の前面に設けられた排出口から排出する画像記録装置の防水構造であって、前記本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材に、前記本体の上面に相当する位置に、押しボタンスイッチの操作子が収められるスイッチ穴が設けられ、前記スイッチ穴の近傍に肉盗み穴が設けられており、前記スイッチ穴および前記肉盗み穴を覆うウレタンエラストマー製のシートが配設されたことを特徴とする画像記録装置の防水構造を提供する。
この構成によれば、本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材を備えた構成において、押しボタンスイッチの操作子を収めるスイッチ穴および肉盗み穴をウレタンエラストマー製のシートによって覆うことで、操作子および肉盗み穴への液体の浸入を防止できるとともに、耐久性および可撓性に富むウレタンエラストマーのシートを用いることで、操作時のストローク量が大きい操作子であっても十分に押し込むことができ、良好な操作感で操作できる。これにより、画像記録装置が備える押しボタン式の操作子の操作性を損なうことなく、簡単な構成によって防水できる。また、ストローク量の大きい操作子を収容するためのスイッチ穴を設けた上面パネルを金型による樹脂成形で形成するため、ヒケ防止用の肉盗み穴を設けた構成において、スイッチ穴とともに肉盗み穴を容易に防水できるので、画像記録装置の加工性を損なうことなく、防水性を確保できる。そして、上面パネル部材は画像記録装置本体の上面および背面の少なくとも一部を構成するものなので、スイッチ穴と肉盗み穴とを防水することによって、画像記録装置の上面全体を防水することができ、簡単な構成によって画像記録装置の防水性能を大幅に高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像記録装置が備える押しボタンスイッチの操作性を損なうことなく、簡単な構成によって防水できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係るサーマルプリンター1を示す斜視図である。
画像記録装置としてのサーマルプリンター1(以下、プリンター1という)は、感熱紙をロール状に巻いたロール紙(図示略)を記録媒体とし、発熱素子を備えた記録ヘッド(図示略)により、ロール紙に文字を含む画像を記録するプリンターである。
本実施形態では、一例として、飲食店等の厨房で用いられ、料理等の注文に応じて厨房内の調理者等に注文内容を知らせるチケット伝票を記録及び出力する、いわゆるキッチンプリンターであるプリンター1について説明する。
【0010】
プリンター1の本体ケース10(本体)は、図1に示すように、プリンター1の前面を構成する前面パネル11および前面上部パネル12と、略箱形のケースカバー20とを組み合わせて構成される。前面パネル11、前面上部パネル12およびケースカバー20は、いずれも樹脂の成形品である。プリンター1の前面には、プリンター1によって画像が記録されたロール紙を排出する排紙口16が開口し、この排紙口16の上に前面上部パネル12が配置され、排紙口16の下に前面パネル11が配置される。
前面パネル11は、プリンター1の前面に開閉可能に取り付けられ、前面パネル11の側方には解除レバー13が設けられている。解除レバー13の操作によって前面パネル11は前側に開き、プリンター1の内部においてロール紙を収容するロール紙収容部(図示略)が露出する。従って、ユーザーは、解除レバー13を操作して前面パネル11を開くことで、ロール紙を本体ケース10内に装填できる。
また、前面上部パネル12は、プリンター1の前面上部から、プリンター1の上面の前部に跨って配置される。前面上部パネル12は、排紙口16の上部に位置してロール紙を切断するカッター機構(図示略)を覆うカバーである。
また、前面パネル11の下部には、プリンター1の動作状態(電源のオン/オフ、エラーの有無、紙の残り状態等)に応じて点灯/点滅するLEDを備えた表示部14、および、ロール紙の送りをユーザーが指示するためのフィードボタン15が設けられている。
【0011】
一方、ケースカバー20は、プリンター1の上面および背面上部を構成する上面パネル部材21と、プリンター1の背面下部を構成する背面パネル部材22と、プリンター1の底面を構成する底面パネル部材23とによって構成される。
プリンター1の上面において、上面パネル部材21は、前面上部パネル12と付き合わされる。上面パネル部材21と前面上部パネル12との境界に形成される溝17の底は、上面パネル部材21側では閉止されており、前面上部パネル12側では図示しないパッキンにより防水されている。
【0012】
上面パネル部材21の上面21aは、溝17後端からプリンター1の背面にかけて、プリンター1の設置面に対して傾斜する傾斜面であり、プリンター1の前面側が高く、背面側が低くなっている。上面パネル部材21の背面21bおよび背面パネル部材22は、設置面に対してほぼ垂直な平面を構成する。
また、上面21aの前端近傍の側部には、プリンター1の電源のオンとオフとを切り替える電源スイッチ30が設けられている。電源スイッチ30は、所定量のストロークで押し込み操作される押しボタンスイッチであり、この電源スイッチ30が押し込まれる毎に、プリンター1の電源のオンとオフとが切り替わる。
電源スイッチ30の近傍には、上面パネル部材21を金型により成形加工する際に生じる板厚のヒケを防止するため、肉盗み穴21cが形成されている。肉盗み穴21cは上面パネル部材21の上面21aを貫通する穴であり、電源スイッチ30よりもプリンター1の背面の側に複数並んで形成されている。
【0013】
図2は、電源スイッチ30の近傍を示す平面図である。
上面21aには、電源スイッチ30を収容するため、平面視で略矩形に開口するスイッチ穴26が形成されており、このスイッチ穴26の中に、スイッチ穴26よりもわずかに小さい略矩形状に形成された操作子31が配設されている。操作子31は、電源スイッチ30の操作部であり、プリンター1の電源をオン/オフするために押圧操作される。
上述のように、プリンター1は厨房で用いられるため、水や各種のソース等の粘性の高い液体が電源スイッチ30に浸入する可能性があり、特に、指等に付着した液体が、電源スイッチ30を操作する際に浸入することが考えられる。このため、プリンター1の電源スイッチ30には、電源スイッチ30への液体の浸入を防止するシート40が貼り付けられている。
【0014】
シート40は、電源スイッチ30および肉盗み穴21cを覆う略長方形のシートである。シート40は、ウレタンエラストマー製であり、ウレタンエラストマーの特徴である耐水性、柔軟性、弾性、耐久性、機械的強度、耐油性および耐候性等に優れた特性を備えている。このため、シート40越しに電源スイッチ30を押圧操作すると、特に強い力を加えなくてもシート40が撓んで電源スイッチ30を必要量押し込むことができ、操作子31を操作できる。
ここで、シート40に用いるウレタンエラストマーとしては、ポリエステル系、ポリエーテル系のいずれを用いてもよく、詳細な組成やメーカー等は任意である。
このシート40は、突起等が形成されていない平坦なシートであるが、電源スイッチ30が存在することを指の触覚で知ることができるように、表面に凹凸を設けてもよい。
また、シート40は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。本実施形態では半透明のシート40を用いているので、操作位置、すなわち操作子31の位置を示す押圧位置表示40aが印刷されている。シート40の透明度が高い場合には、押圧位置表示40aをシート40の裏面側に印刷すれば、使用に伴う印刷の劣化を防止できる。また、透明なシート40を用いた場合にはシート40を透過して操作子31の存在が見えるので、操作子31の上面に、操作位置の目安となる記号等を付しておいてもよい。
【0015】
図3は、図2のA−A´断面図であり、図4は、図2のB−B´断面図である。これら図3及び図4は、いずれも、電源スイッチ30が操作されていない状態を示す。
これらの断面図に示すように、上面パネル部材21には凹部が設けられ、この凹部がスイッチ穴26となっている。スイッチ穴26には、操作子31と、操作子31を下方から支持する弾性部材32とが配設されている。弾性部材32は、操作子31と、スイッチ穴26の底部25との間に介装されており、操作子31を下方から支持する。操作子31が押圧された場合には、弾性部材32の弾性によって操作子31が下方に押し込まれ、操作子31への押圧力が解除されると、弾性部材32が復元して操作子31を元の位置まで上昇させる。
また、操作子31の下部は、底部25に形成された孔25aを貫通している。操作子31の直下には、基板37に実装された操作検出部33が配置され、操作子31が押し込まれた場合には操作子31の下端が操作検出部33に接近し、或いは接触する。操作検出部33は、操作子31の接近または接触を検出するスイッチ式センサーであって、この操作検出部33の検出状態に応じて、基板37に実装された制御装置(図示略)により、プリンター1の電源のオン/オフが切り替えられる。
【0016】
スイッチ穴26の周縁部には、上面21aより一段窪んだ段差部21dが形成されている。この段差部21dは、シート40が無い状態で操作子31を押圧操作しやすくするための段差であり、図2に示すようにスイッチ穴26の周囲を囲むように形成されている。シート40を配設するにあたって、段差部21dには、上面21aとの高さの差を減らすためにスペーサー35が貼り付けられ、上面21aとスペーサー35の上面とは略面一となっている。
シート40は、両面粘着テープ36によって、上面21aに固定されている。両面粘着テープ36は合成樹脂製のフィルムの両面に粘着剤を付加したもので、両面粘着テープ36は、スイッチ穴26および肉盗み穴21cの周囲と、スペーサー35の上面とに貼り付けられ、これらの面とシート40とを接着固定する。
【0017】
ところで、電源スイッチ30が押圧されていない状態では、操作子31の上面と段差部21dの上面とは略同一の高さに位置し、操作子31の上面は上面21aおよびシート40から離れて一段下方に位置している。また、図3の側面視においては、操作子31の上面は上面21aの傾斜に合わせて傾斜し、シート40よりも一段下方に位置している。
そして、両面粘着テープ36は、操作子31の上面を避けて配設されており、操作子31の上面とシート40とは接着されておらず、接離可能であり、操作子31の非操作時には、操作子31とシート40とは離れている。
上述したように、シート40は柔軟性及び弾性に優れているものであるから、大きく伸縮させることが可能であるが、このシート40を別の部材に貼り付けた場合、貼り付けられた部分の伸縮性は別の部材の伸縮性に制限される。これに対し、シート40が他の部材に貼り付けられていない部分では、シート40が持つ本来の伸縮性が発揮される。つまり、本実施形態では、シート40に対して大きな面積を有する操作子31の上面をシート40に固定しないようにすることで、シート40を大きく伸縮させることが可能な状態としている。これにより、シート40を設けても、電源スイッチ30の操作時に必要な押圧力の増大を防ぐことができる。
この構成において、シート40は、肉盗み穴21c及びスイッチ穴26の周囲を囲むように接着固定されているので、外部から肉盗み穴21c及びスイッチ穴26への液体の浸入を防止できる。
なお、両面粘着テープ36の粘着材に、糊残りが生じにくいものを使用すれば、シート40を交換または除去の際に上面21aに付着した糊を取り除く手間を省くことができ、作業性が良い。
【0018】
本実施の形態では、シート40の材料として、柔軟で可撓性が高いウレタンエラストマーを用いたため、操作子31の操作に要するストローク量が比較的大きくてもシート40を撓ませて十分に押し込むことができ、操作子31を良好な操作感で操作できる。また、ウレタンエラストマーは高強度であり、かつ、耐久性に優れているため、電源スイッチ30の繰り返しの操作に耐えることができ、さらに、耐油性に優れているため、油が使用される厨房等で用いる防水部材として好適である。
操作子31を大きくストロークさせなければ電源スイッチ30の切替えが実行されない構成とすれば、ユーザーが誤ってプリンター1に接触した場合等、意図せず電源スイッチ30が押圧されたときに電源のオン/オフが切り替わらないので、誤操作を防止できる。このような構成において、本実施形態のシート40は、操作性を損なうことなく容易に防水構造を実現できる手段として、有用である。また、1枚のシート40を貼り付けて電源スイッチ30および肉盗み穴21cを覆った構成であるため、容易に防水構造を実現でき、シート40の交換等の修理が容易である。また、防水パッキンを用いて電源スイッチ30を防水する構造とした場合には、防水パッキンと操作子31との間に浸入した液体等が固化して操作を妨げるおそれがあるが、本実施の形態では、シート40で電源スイッチ30を覆っているため、液体等が電源スイッチ30内に浸入しないので、電源スイッチ30の操作性を常に良好な状態に保つことができる。
【0019】
また、上面パネル部材21は、金型による樹脂成形によって、上面21a及び背面21bを含む全体が同時に成形される。この樹脂成形の際、上面パネル部材21は、背面21bを下側として、底部25を含む上面21aの内側形状に対応した金型を、図3中に矢印Xで示す方向、すなわち、背面21bの面に対して略垂直に、上に離型して製造される。このため、上面21aの裏面は、金型を矢印Xの方向に移動できる形状でなくてはならず、金型が入り込んで移動できなくなるような凹部を形成することができないので、スイッチ穴26の横に周囲板厚よりも厚い厚肉部29が形成される。この厚肉部29は機能的な意味を持たず、スイッチ穴26の底部25を樹脂成形するために生じてしまう箇所である。厚肉部29は、樹脂成形された上面21aが冷却される際に、周辺の部分よりも温度が下がりにくいので、外観面の板厚のヒケを生じやすい。そこで、プリンター1においては、厚肉部29に肉盗み穴21cを設け、外観面に生ずる板厚のヒケを防止している。
【0020】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、上面パネル部材21を備えた構成において、押しボタン式の操作子31を収めるスイッチ穴26および肉盗み穴21cをウレタンエラストマー製のシート40によって覆うことで、操作子31および肉盗み穴21cへの液体の浸入を防止できるとともに、耐久性および可撓性に富むウレタンエラストマーのシート40を用いることで、操作時のストローク量が大きい操作子31であっても十分に押し込むことができ、良好な操作感で操作できる。これにより、プリンター1が備える操作子31の操作性を損なうことなく、簡単な構成によって防水できる。また、上面パネル部材21を金型による樹脂成形で形成するためにヒケ防止用の肉盗み穴21cを設けた構成において、スイッチ穴26とともに肉盗み穴21cを容易に防水できるので、プリンター1の加工性を損なうことなく、防水性を確保できる。そして、スイッチ穴26と肉盗み穴21cが設けられた上面パネル部材21は、本体10の上面および背面を構成するので、スイッチ穴26と肉盗み穴21cとを防水することで、プリンター1の上面全体を防水することができ、簡単な構成によってプリンター1の防水性能を大幅に高めることができる。
【0021】
また、スイッチ穴26にシート40を接着により簡単に固定することができ、操作子31の上面がシート40の裏面に張り付いていないため、シート40の伸縮が妨げられない。このため、シート40が十分に伸縮可能であり、良好な操作性を確保できる。
また、樹脂成型時に厚肉部29が形成される部分に肉盗み穴21cを設けても、シート40によってスイッチ穴26とともに肉盗み穴21cを防水できる。
さらに、プリンター1の設置面に対して斜面となっている上面21aにおいて、スイッチ穴26よりも下方に位置する肉盗み穴21cを、シート40によってスイッチ穴26と一緒に覆うことで、液体が流れる場合の下流側に位置する肉盗み穴21cを、スイッチ穴26と同時に、シート40によって容易に、かつ確実に防水できる。
さらに、電源スイッチ30を簡単かつ交換等の修理が容易な構造によって防水できる。また、誤操作を防止するため深い押し込み量に設定されることが多い電源スイッチに対応して、操作性を損なうことなく、防水構造を適用できる。
なお、上記実施形態においては、上面パネル部材21の上面21aにシート40を貼り付けた構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シート40の厚みに相当する凹部を設けて、この凹部にシート40を納めた構成としてもよい。
本実施形態の変形例として、電源スイッチ30の周囲に、シート40を貼り付けるための凹部51を設けた構成を、図5に示す。この図5に示す変形例において上記実施の形態と同様の部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
変形例の構成では、上面21aには、シート40が納められるサイズの、略矩形の凹部51が形成されている。この凹部51は、スイッチ穴26の周縁部を、上面21aより一段窪んだ高さに凹ませた部分である。凹部51の深さは、シート40の厚みと略同一になっている。
この凹部51にシート40を嵌め込むように貼り付けた場合、シート40が上面21aより高くならず、シート40の縁部40bが上面21aに突出しない。このため、シート40の縁部40bに物等が引っ掛かってシート40が剥がれてしまうことを防止でき、長期間にわたって快適に使用できる。
【0022】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されない。例えば、上記実施の形態では、縦長の本体10を有するプリンター1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、横長あるいは平たい本体を有するプリンターにおいても適用可能である。また、ウレタンエラストマー製のシート40によって、スイッチ穴26、肉盗み穴21c及びこれらの周囲を覆う構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スイッチ穴26及び肉盗み穴21cを含む、より広い範囲をシート40によって覆う構成としてもよく、例えば、溝17よりも前までシート40によって覆う構成としてもよい。また、電源スイッチ30における操作子31やスイッチ穴26の形状、操作子31のストローク量、段差部21dの深さなどは任意であり、上面パネル部材21によって本体10の上面全部と背面全部を構成してもよく、この上面パネル部材21がプリンター1の前面まで跨る構成とすることもでき、その他のプリンター1の細部構成についても任意に変更可能であることは勿論である。また、本発明は、サーマルプリンターに限定されず、インクジェット式やドットインパクト式、熱昇華型等の各種方式プリンター及びプリンター以外の画像記録装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した実施の形態に係るプリンターを示す斜視図である。
【図2】電源スイッチの近傍を示す平面図である。
【図3】図2のA−A´断面図である。
【図4】図2のB−B´断面図である。
【図5】変形例における電源スイッチの近傍を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…プリンター(画像記録装置)、10…本体ケース(本体)、16…排紙口、21…上面パネル部材、21a…上面、21b…背面、21c…肉盗み穴、30…電源スイッチ、31…操作子、32…弾性部材、33…操作検出部、40…シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録して、本体の前面に設けられた排出口から排出する画像記録装置において、
前記本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材を備え、
前記本体の上面に、押しボタンスイッチの操作子が収められるスイッチ穴が設けられ、前記スイッチ穴の近傍に肉盗み穴が設けられ、前記スイッチ穴および前記肉盗み穴を覆うウレタンエラストマー製のシートが配設されたこと、
を特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記シートの裏面は、前記スイッチ穴の周囲に接着固定されるとともに、前記操作子の上面は前記シートの裏面に接離可能であること、
を特徴とする請求項1記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記本体の上面は、前記画像記録装置の設置面に対し、前記本体の前面側が高く背面側が低い傾斜面であり、
前記肉盗み穴は、前記スイッチ穴より下方に位置すること、を特徴とする請求項1または2記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記押しボタンスイッチは、前記画像記録装置の電源のオンとオフとを切り替えるための電源スイッチであること、
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を記録して、本体の前面に設けられた排出口から排出する画像記録装置の防水構造であって、
前記本体の上面および背面の少なくとも一部を構成する上面パネル部材に、前記本体の上面に相当する位置に、押しボタンスイッチの操作子が収められるスイッチ穴が設けられ、前記スイッチ穴の近傍に肉盗み穴が設けられており、前記スイッチ穴および前記肉盗み穴を覆うウレタンエラストマー製のシートが配設されたこと、
を特徴とする画像記録装置の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149378(P2010−149378A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329385(P2008−329385)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】