説明

画像記録装置、及び画像記録装置の制御方法

【課題】インクミストによる装置内汚れをより正確に推定することができる画像記録装置及び画像記録装置の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る、インクを吐出して記録媒体に記録する画像記録装置は、インクの吐出量の情報を取得し、インクの吐出におけるインクの飛翔距離の情報を取得し、インクの吐出によって画像記録装置内に生じるインクミストの発生量を、吐出量の情報と飛翔距離の情報とに基づき推定し、画像記録装置内の清掃の要否を、推定したインクミスト発生量に基づき判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット画像記録装置、及び画像記録装置の制御方法に関し、特にインクミストによる機内汚れを推定する画像記録装置、及び画像記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置として、例えばインクジェット方式のフルライン型のカラー画像記録装置が知られている。このようなフルライン型のカラー画像記録装置では、例えばK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)の各色のインク毎に長尺の記録ヘッドを設けるか、又はKCMYの色毎に短尺の複数の記録ヘッドを設け、カラーの画像記録を行っている。なお、色毎に短尺の複数の記録ヘッドを設ける場合、複数の短尺記録ヘッドは記録媒体の搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に並べられている。
【0003】
このような長尺記録ヘッド又は複数の短尺記録ヘッドの対向位置には、記録媒体を搬送する搬送機構が設けられている。画像記録部は、例えば、上位装置から送信される記録データを含む記録指示情報(印刷ジョブ等)を受信し、この記録指示情報に基づいて、記録ヘッドからそれぞれKCMYの各色のインクを吐出し、画像記録部の直下を搬送される記録媒体に画像記録を行う。
【0004】
このような画像記録装置では、記録ヘッドから吐出されたインク滴が千切れてインクミストを発生し、発生したインクミストにより記録装置内汚れが発生することが知られている。そのため、所定量の汚れを検知し清掃を促す報知を行う必要がある。
【0005】
装置内汚れを検知する技術としては、例えば特許文献1が提案されている。この特許文献1は、インクの吐出量をカウントし、インクの吐出量が所定量を超えた場合にプラテンの清掃を促すメッセージを表示手段に表示させ、被記録材の汚れを防止する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−12282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の画像記録装置は、機内汚れを生じさせるインクミスト発生量がインク吐出量にのみ依存することを前提としており、実際に発生するインクミスト発生量との間での推定誤差が大きくなる虞がある。そのため、清掃を促すメッセージが表示されたとしても、機内が清掃を必要とするほど汚れていなかったり、又は清掃を促すメッセージが表示されていないにも関わらず機内汚れにより記録媒体を汚してしまう虞があった。
【0008】
本発明に係る一実施形態は、インクミストによる機内汚れをより正確に推定することができる画像記録装置及び画像記録装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る、インクを吐出して記録媒体に記録する画像記録装置は、インクの吐出量の情報を取得する吐出量情報取得部と、インクの吐出におけるインクの飛翔距離の情報を取得する飛翔距離情報取得部と、インクの吐出によって画像記録装置内に生じるインクミストの発生量を、吐出量の情報と飛翔距離の情報とに基づき推定するインクミスト発生量推定部と、画像記録装置内の清掃の要否を、インクミスト発生量推定部が推定したインクミスト発生量に基づき判定する判定部と、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係る、インクを吐出して記録媒体に記録する画像記録装置を制御するための方法は、インクの吐出量の情報を取得する吐出量情報取得ステップと、インクの吐出におけるインクの飛翔距離の情報を取得する飛翔距離情報取得ステップと、インクの吐出によって画像記録装置内に生じるインクミストの発生量を、吐出量の情報と飛翔距離の情報とに基づき推定するインクミスト発生量推定ステップと、画像記録装置内の清掃の要否を、インクミスト発生量推定ステップで推定したインクミスト発生量に基づき判定する判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、記録処理を行う記録条件に応じてインクミストによる機内汚れをより正確に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像記録装置1のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像記録装置1に含まれる構成要素の配置を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る制御部2により実行される画像記録装置1内の清掃の要否を判定する処理を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るインクミスト発生量の推定に用いられる、種別情報と、ギャップ距離と、補正情報とを含むテーブルの例である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るインクミスト発生量の推定に用いられる、種別情報と、ギャップ距離と、インクの種類毎に設定された補正情報とを含むテーブルの例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るいくつかの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、画像記録装置として、インクジェット方式のフルライン型画像記録装置を用いる例を説明する。
【0014】
フルライン型画像記録装置では、記録ヘッド(ノズル列)がインク色毎に、記録媒体を搬送する方向(副走査方向)に所定の間隔に離間して配設されている。記録ヘッドは、インク吐出のための複数のノズルを配列したものであり、副走査方向に対して直交する方向(主走査方向)に記録媒体の幅以上の長さに亘ってノズルが配設されている。また、フルライン型画像記録装置では、各色の記録ヘッドの複数のノズルからインクを記録媒体に向けて吐出することで所望の文字や画像の記録処理を高速に行うことができる。
【0015】
図1は、一実施形態に係る画像記録装置1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、画像記録装置1は、制御部2、画像記録部3、給送部4、搬送部5、昇降部6、収納部7、表示部21、及び操作部25を含んでいる。
【0016】
制御部2は、例えばMPU(Micro Processor Unit:演算処理装置)等を含み、制御機能及び演算機能を有する。制御部2は記憶部8を含む。
【0017】
記憶部8は、例えば、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、MPUが作業用記憶領域として使用するRAM(Random Access Memory)、及び画像記録装置1の制御に関する各種設定値等を記憶する不揮発性メモリ等を含む。記憶部8は、本発明に係る一実施形態では、装置内の清掃の要否を判定するための閾値の情報と、並びに記録媒体の種類に関する種別情報、吐出されるインクの飛翔距離に関する情報、及びインクミストの発生量を補正するための補正情報とを対応付けたテーブルとを格納している。
【0018】
また、制御部2は、例えばROMに記憶されている制御プログラムを実行することで、例えば、種別情報取得部9、ギャップ距離調整部10、飛翔距離情報取得部11、吐出量情報取得部12、インクミスト発生量推定部13、積算部14、判定部15、及び通知部16として機能し得る。
【0019】
種別情報取得部9は、例えば上位装置20から受信される記録指示情報、又は記録媒体を給送した給送部4についての情報等に基づいて、記録媒体の種類に関する情報(種別情報)を取得する。ギャップ距離調整部10は、取得した記録媒体の種別情報に基づいて昇降部6の駆動を制御し、それによって画像記録部3と搬送部5との間の距離を調整する。吐出量情報取得部12は、記録ヘッド18から吐出されるインクの吐出量の情報を取得する。飛翔距離情報取得部11は、記録ヘッド18から記録媒体22へと吐出されるインクの飛翔距離の情報を取得する。飛翔距離情報取得部11は飛翔距離の情報として、例えば画像記録部3と搬送部5との間のギャップ距離の情報を取得する。インクミスト発生量推定部13は、吐出量情報取得部12によって取得された吐出量の情報を、後述する補正情報により補正してインクミスト発生量を取得する。積算部14は、インクミスト発生量推定部13によって推定されたインクミスト発生量の積算処理を行い、積算インクミスト発生量を取得する。判定部15は、積算インクミスト発生量を、記憶部8に格納されている所定の閾値と比較することで、装置内の清掃の要否を判定する。通知部16は、判定部15において清掃が必要であると判定された場合に、出力信号を出力する。これらの機能については、図3及び図4を参照して詳細に後述する。
【0020】
なお、上記の制御部2がプログラムを実行することによって実装される機能部(例えば、ギャップ距離調整部10及び判定部15等)は、ソフトウェアではなくハードウェアで、例えば、制御部2の演算処理装置によって制御される信号処理回路として構成されてもよい。
【0021】
画像記録部3は、複数のノズルからなる記録ヘッド(ノズル列)18と、個々のノズルを個別に駆動してインクを吐出させる記録ヘッド駆動部17とを含む。ノズルは搬送部5により搬送されてきた記録媒体22にインクを吐出して記録を行なう。
【0022】
給送部4は、記録媒体22を積載し、搬送部へと記録媒体22を給送する。搬送部5は、給送部4から給送された記録媒体22を、画像記録部3によって吐出されるインクが届く位置へと搬送し、その後、収納部7へと搬送する。収納部7は、搬送部5により搬送されてきた記録媒体22を収納する。
【0023】
操作部25は、制御部2と接続されており、例えば、画像記録処理の実行指示等のユーザーによる入力操作を受け付けて、それを制御部2へと伝える。また、一実施形態においては、操作部25は、ユーザーからの清掃終了の入力操作も受け付ける。
【0024】
表示部21は、制御部2と接続されており、制御部2の制御に従って、例えば、画像記録装置の状態等の情報を表示する。また、一実施形態においては、表示部21は、清掃を促すメッセージを表示し、ユーザーに装置内が汚れていることを報知する。
【0025】
昇降部6は、ギャップ距離調整部10(制御部2)による制御に従って搬送部5を昇降し、それによって画像記録部3と搬送部5との間の距離が調整される。
【0026】
図1において、画像記録装置1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の上位装置20と接続されている。一実施形態では、画像記録装置1は、上位装置20から記録指示情報を受信し、受信した記録指示情報に従って記録媒体への記録処理を実行する。
【0027】
しかしながら、画像記録装置は必ずしも上位装置と接続されている必要は無く、別の実施形態では、例えば、画像記録装置にFlashメモリ等の記憶媒体が接続され、記憶媒体に格納されているデータに基づいて記録指示情報が生成され記録処理が実行されてもよい。
【0028】
記録指示情報は、画像記録装置1に記録媒体に対する記録処理を指示するデータであり、例えば印刷ジョブ等であり得る。記録指示情報が、複数の記録媒体に対する記録処理を指示するデータである場合には、1つの記録指示情報で複数の記録媒体に対して記録処理が実行される。
【0029】
図2は、一実施形態に係る画像記録装置1に含まれる構成の配置を示す図である。図2において図1と対応する構成には同一の符号を付した。
【0030】
図2において、画像記録装置1は画像記録部3、給送部4、搬送部5、昇降部6、収納部7、及び記録媒体検出部19を含んでいる。なお、図2では、例えば、制御部2、表示部21、操作部25等は省略されている。
【0031】
画像記録部3は、記録処理においてインクを吐出する複数のノズルを含む少なくとも1つの記録ヘッド18と、制御部2からの駆動指示に従ってノズルを個別に駆動する記録ヘッド駆動部17とを備えている。また、画像記録部3には、搬送部材5aからの記録媒体22の浮きを押さえる押えローラ26も配設されている。
【0032】
給送部4は、記録媒体22を積載する給送トレイ4aと、記録媒体22を搬出する給送ローラ4bとを備えている。給送部4は、制御部2からの指示に従って給送ローラ4bを駆動し、記録媒体22を搬送部5へと搬出する。
【0033】
記録媒体検出部19は、搬送部5において画像記録部3よりも上流に設けられ、給送部4により搬送部5に搬出された記録媒体22の副走査方向の先端及び/又は後端位置を検出する。記録媒体検出部19は、例えば光学式の反射型センサをその一部分に備えて構成され得る。記録媒体検出部19は、記録媒体22の先端及び/又は後端を検出すると、検出信号を制御部2へと通知する。
【0034】
搬送部5は、搬送部材5a、搬送駆動部5b、搬送従動部5c、及び搬送情報生成部5dを含む。搬送部材5aは例えば搬送ベルト等で構成され、給送部4により給送された記録媒体22を載置搬送する。搬送駆動部5b及び搬送従動部5cは例えばローラ等であり得る。搬送駆動部5bは搬送従動部5cと共に、制御部2からの駆動指示に従って搬送部材5aを回転駆動し、それによって記録媒体22は搬送部材5aを載置搬送される。搬送部5は、給送部4から給送された記録媒体22を、画像記録部3によって吐出されるインクが届く位置へと搬送し、その後、収納部7へと搬送する。
【0035】
また、搬送従動部5cには搬送情報生成部5dが備えられている。搬送情報生成部5dは、例えばロータリーエンコーダ等であり、搬送従動部5cの回転運動と同期したパルス信号を出力する。従って、このパルス信号は搬送部材5aにより搬送される記録媒体22の搬送距離を示す情報である(以降、搬送情報と称する)。
【0036】
制御部2は、記録媒体検出部19から出力された検出信号と、搬送情報生成部5dから出力される搬送情報とに基づいて、画像記録部3のノズルからインクを吐出するタイミングを決定する。制御部2は記録媒体22が記録媒体検出部19により検出された時点からの搬送情報生成部5dから出力される記録媒体22の搬送情報を取得し、記録媒体22が記録ヘッド18と対向する位置に搬送されるタイミングで記録ヘッド駆動部17を制御して記録ヘッド18からインクを吐出させ、記録処理を行う。
【0037】
収納部7は排紙ローラ7aと収納トレイ7bとを含む。画像記録部3によって記録処理が行われた記録媒体22は、搬送部5によって収納部7へと搬送され、排紙ローラ7aによって装置外に排出されて収納トレイ7bに収納される。
【0038】
昇降部6はモータ23、搬送部5を昇降するワイヤ24、及び不図示のギャップ調整機構を含んでいる。モータ23には本例においてはブラシレスモータが使用されるが、パルスモータ等の各種モータが使用されてもよい。搬送部5にはワイヤ24が取り付けられており、モータ23を駆動してワイヤ24の長さを調節することで、搬送部5が図示した矢印方向に昇降される。昇降部6がギャップ距離調整部10(制御部2)の制御に従って搬送部5を昇降させることで、画像記録部3と搬送部5との間のギャップ距離が調整される。
【0039】
ギャップ距離調整部10及び昇降部6によるギャップ距離の調整は、一実施形態においては種別情報取得部9によって取得された記録媒体22の種別情報に応じて行われる。画像記録装置1は、様々な種類の記録媒体22に対して記録処理を実行し得るが、記録媒体22はそれぞれ種類に応じて厚み、形状、及び材質等が異なる。
【0040】
このような多様な種類の記録媒体に対して、同一のギャップ距離を用いて記録処理を実行すると、例えば、ノズルと搬送部材5aとの間の距離が近過ぎたり、押えローラ26と搬送部材5aとの間の距離が近過ぎたりすること等に起因して、搬送部5を搬送中に記録媒体22が詰まってしまう虞がある。そのため、本発明に係るいくつかの実施形態では、画像記録装置1に昇降部6が備えられており、ギャップ距離調整部10が記録媒体の種類に応じて昇降部6を駆動して搬送部5が昇降されるため、様々な種類の記録媒体22を搬送する場合にも、搬送中の記録媒体による詰まり等の発生が抑えられている。
【0041】
記録媒体22とは、画像記録装置1によって画像が記録されるものであり、例えば、紙、布、シール、及びフィルム等を含む。記録媒体22には、例えば、サイズ(例えば、はがきサイズ、A4サイズ、A5サイズ、B4サイズ等)、記録媒体の材質(例えば、普通紙、及び写真用の光沢紙等)、厚み(例えば普通紙、厚紙、及び封筒等)、形状(例えば普通紙、及び封筒等)などの点で異なる様々な種類の記録媒体が含まれる。
【0042】
一実施形態においては、種別情報取得部9による記録媒体22の種類の特定は、種別情報に基づいて行われる。種別情報とは記録媒体22の種類に関する情報であり、例えば以下の方法で記録処理の対象である記録媒体の種別情報が取得される。
【0043】
一実施形態において、画像記録装置1は複数の給送部4を備えており、それぞれの給送部4に異なる種類の記録媒体22が積載されているものとする。また、画像記録装置1の記憶部8には、給送部4とその給送部4に積載されている記録媒体22の種別情報とを対応付けたテーブルを格納しておく。このように構成すると、種別情報取得部9は、記録処理に際して記録媒体22を給送した給送部4を特定することで、その給送部4と対応付けられた記録媒体22の種別情報を、記憶部8に格納されたテーブルを参照し取得することができる。ギャップ距離調整部10は、種別情報取得部9が取得した種別情報に基づいてギャップ距離を取得し、その取得した距離へとギャップ距離を調整する。
【0044】
或いは別の実施形態においては、種別情報取得部9は、上位装置20から受信した記録指示情報から、それに含まれる記録媒体の種別情報を取得してもよい。例えば、ユーザーは上位装置20から画像記録装置1に記録処理を指示する際に、上位装置にインストールされている画像記録装置1のドライバを介して、記録に用いる記録媒体の種類を指定する。画像記録装置1のドライバは、指定された記録媒体の種類を種別情報へと変換し、種別情報は記録指示情報に含められて画像記録装置1へと送信される。そのため、種別情報取得部9は、受信した記録指示情報から、それに含まれる記録媒体22の種別情報を取得することが可能である。ギャップ距離調整部10は、種別情報取得部9が取得した種別情報に基づいてギャップ距離を取得し、その取得した距離へとギャップ距離を調整する。
【0045】
上記の例において、記録媒体の種類と調整されるギャップ距離との間の関係は、概ね記録媒体の厚みに応じて決定される。即ち、記録媒体22の厚みが厚くなると、ギャップ距離も長い距離に設定される傾向にある。しかしながら、記録媒体の種類とギャップ距離との関係は、記録媒体の厚みによる違いにのみ依存するものではなく、記録媒体の材質や形態にも影響される。
【0046】
例えば、記録媒体が封筒である場合、空気等がその2重構造の内側に入り込むことによって封筒が膨らみ、封筒自体が有する本来の厚みよりも厚くなってしまう可能性がある。このような場合には、その膨らみの要因を考慮してより長いギャップ距離に設定される。ギャップ距離は、例えば記録媒体が搬送路で詰まってしまう等の弊害を引き起こさないように、記録媒体の種類を考慮して設定される。
【0047】
以下、本発明に係る第1の実施形態を説明する。第1の実施形態では、インクミスト発生量の推定に吐出を行う際のギャップ距離の差が考慮される。
【0048】
記録ヘッドから吐出されたインク滴は、飛翔距離が長くなると千切れてインクミストを発生する可能性が高くなる。そのため、ギャップ距離が広くなるとインクミストの発生割合も高くなる。従って、画像記録装置1が昇降部6を備え、ギャップ距離が調整される場合にはインク滴の飛翔距離が変化するので、インクミスト発生量の推定をインクの吐出量にのみ基づいて行うと、推定に誤差が生じる。
【0049】
第1の実施形態は、この問題に対処するものであり、インクミスト発生量の推定に、ギャップ距離の変化に伴うインクミストの発生割合の変化が補正により反映されるため、それによって推定誤差が抑制される。
【0050】
第1の実施形態に係る画像記録装置1の装置内の清掃の要否を判定する処理を図3を参照して説明する。図3で図解した処理は制御部2で実行される。なお、このような処理を制御部2に実行させるために、プログラムを作成して、それを記憶部8に記憶させておき、制御部2がそのプログラムを読み出して実行することで、このような処理を実行するように構成してもよい。
【0051】
図3に示されるフローは、画像記録装置1が記録指示情報を受信すると開始する。制御部2は記録指示情報を受信すると、ステップS1において、記録指示情報に含まれる種別情報を取得する。そして、制御部2は取得した種別情報を用いて記憶部8に記憶された図4のテーブルを参照する。図4のテーブルは、記録媒体の種類を表す種別情報と、画像記録部3と搬送部5との間のギャップ距離、及び補正情報とを対応付けるテーブルである(詳細な説明は後述する)。このテーブルを参照することで、制御部2は記録指示情報から取得した種別情報に対応するギャップ距離の情報を取得する。制御部2は、昇降部6を制御して、取得したギャップ距離の情報に示される距離にギャップ距離を調整する。
【0052】
ステップS2において、制御部2は、記録指示情報に従って記録ヘッド駆動部17を制御し、記録媒体への記録処理を実行するとともに、その記録処理において吐出したインクの吐出量を計数する。
【0053】
記録処理が終了すると、ステップS3において、次の記録媒体に対する記録処理を指示するデータが記録指示情報に含まれているか否かが判定される。
【0054】
記録指示情報に、次の記録媒体に対する記録処理を指示するデータが含まれておらず、記録指示情報によって指示される全ての記録処理が終了している場合には、ステップS3はYesと判定され、フローはステップS4へと進む。
【0055】
一方、記録指示情報に、次の記録媒体に対する記録処理を指示するデータが含まれており、まだ記録指示情報によって指示される全ての記録処理が終了していない場合には、ステップS3はNoと判定され、フローはステップS2へと戻り、次の記録媒体に対する記録処理と、その記録処理で使用されたインクの吐出量の計数とが行われる。
【0056】
この様にして、ステップS2とS3の処理により、記録指示情報で指示される全ての記録処理が終了するまで、記録処理と、その記録処理で使用された吐出量の計数とが実行される。なお、ステップS2において計数されるインクの吐出量の情報は記録処理の度に積算される。従って、ステップS4で利用されるインクの吐出量の情報は、1つの記録指示情報で指示される全ての記録処理を実行するために使用されたインクの吐出量の情報である。
【0057】
上記のインク吐出量の情報は、第1の実施形態においては、ノズルから吐出されるインクの吐出ドロップ数である。制御部2は、ノズルから吐出されるインクの吐出ドロップ数を、例えば以下のように計数する。
【0058】
例えば、記録ヘッド18の記録可能な解像度が400dpi(dot/inch)(主走査及び副走査方向とも)であるとする。この解像度をdot/mmで表記すると、約15.7dot/mmである。記録媒体をA4サイズと仮定すると用紙サイズは、210×297mmであるため、A4サイズの記録媒体に対して400dpiの記録ヘッドの解像度で記録を行う場合には、
主走査方向1ラインには、210×15.7=3297≒3300dot
副走査方向1ラインには、297×15.7=4662.9≒4700dot
のドットが存在する。従って、この記録ヘッドを用いてA4サイズ用紙1面に記録を行なう場合には、最大で約1550万ドットのインクが吐出される。
【0059】
制御部2は上位装置20から記録指示情報を受信すると、画像記録装置1に備えられた記録ヘッド18で記録可能な解像度(ここでは400dpi)に合わせて記録指示情報からビットマップデータを生成する。そして、生成したビットマップデータに基づいて、制御部2は上記に例示したA4サイズの記録媒体上の約1600万ドットのうちでどのドットに吐出を行なうかを記録ヘッド駆動部17介して制御する。そのため、吐出を行なう際に生成されたビットマップデータから、その記録処理で記録媒体に吐出される吐出ドロップ数を計数することが可能である。この様にして、制御部2は記録指示情報で指示された全ての記録処理を実行するために使用されたインクの吐出ドロップ数を取得し(ステップS2〜S3)、フローはステップS4へと進む。
【0060】
ステップS4において、制御部2は、ステップS1で調整したギャップ距離の情報を取得する。制御部2は、例えば、記憶部8に記憶された図4に示されるテーブル(図4についての説明は後述する)を参照して、ステップS1と同じ様に種別情報からギャップ距離の情報を取得してもよく、或いは、別の実施形態では、ステップS1において取得したギャップ距離の情報を記憶部8に記憶しておき、制御部2は記憶部8からそのギャップ距離の情報を取得してもよい。
【0061】
制御部2は取得したギャップ距離の情報を用いて、図4のテーブル(図4についての説明は後述する)を参照し、ギャップ距離の情報に対応する補正情報を取得する。制御部2は、取得した補正情報を、ステップS2〜S3において取得したインクの吐出量の情報(吐出ドロップ数)に乗じることで補正を行ない、補正した値をインクミスト発生量として保持する(ステップS4)。
【0062】
ステップS5において、制御部2は記憶部8に記録された前回の清掃後からの積算インクミスト発生量を読み出す。そして、読み出した積算インクミスト発生量に、ステップS4において推定したインクミスト発生量を加算することで、積算インクミスト発生量を更新し、記憶部8に記憶する。
【0063】
ステップS6において、制御部2は記憶部8に記憶された所定の閾値を読み出す。そして、読み出した所定の閾値と、ステップS5において更新した積算インクミスト発生量とを比較し、積算インクミスト発生量が閾値を超えたか否かが判定される。
【0064】
この閾値の値は、積算インクミスト発生量がこの閾値を超えると装置内が汚れており清掃が必要であることを表し、積算インクミスト発生量がこの閾値を下回れば装置内はそれほど汚れておらず清掃が不要となるような値に定められている。
【0065】
閾値の値は、ユーザーが清掃を行なう負担を減らすために可能な限り高い値に設定することが好ましいが、その一方で、記録を行なった際の装置内の汚れによる記録媒体の汚染を防ぐために、経験則的に見積もられた記録媒体の汚染が引き起こされてしまうほど装置内が汚れる吐出ドロップ数の最大値から適度なマージンを差し引いた値に設定されてもよい。
【0066】
ステップS6において、積算インクミスト発生量が閾値以下である場合は、装置内がインクミストの発生によって清掃が必要なほど汚れてはいないことを表し、Noと判定され受信された本ジョブは終了となる。
【0067】
一方、ステップS6において、積算インクミスト発生量が閾値を超えている場合は、装置内がインクミストの発生により許容できないレベルで汚れていることを表し、Yesと判定されフローはステップS7へと進む。
【0068】
ステップS7において、制御部2は通知のための出力信号を出力し、表示部21に清掃を促すメッセージを表示させることでユーザーに報知を行う。そのため、画像記録装置1のユーザーは表示部21に表示されたメッセージを見ることで、画像記録装置1の装置内がインクミストの発生により許容できないレベルで汚れていることを知ることができ、装置内を清掃する等の対応を取ることができる。
【0069】
なお、この清掃を促す報知は、表示部21を介したものに限定されるものでは無く、例えば、音による報知、上位装置への警告メールの送信等であってもよい。或いは、画像記録装置1に自動で装置内の清掃を行う機能が備えられている場合には、ステップS6でYesと判定されると、そのまま自動で装置内の清掃を行っても良い。この場合には、ステップS7及びS8の処理は省略されてもよい。
【0070】
ステップS8において、制御部2は操作部25から清掃終了を示す信号が入力されるまで待機する(ステップS8がNo)。
【0071】
ステップS8において操作部25から清掃終了を示す信号が入力されると(ステップS8がYes)、ステップS9へと進み、制御部2は記憶部8に記憶されている積算インクミスト発生量を初期値(例えば“0”)にリセットした後に、受信された本ジョブは終了となる。
【0072】
以上で述べたように、第1の実施形態では、画像記録装置1は、ギャップ距離の変化によるインクミストの発生割合の変化をインクミストの発生量の推定に反映させるために、補正情報を用いて補正を行なっている。そのため、インクミストの発生量が、単にインクの吐出ドロップ数によって推定される場合と比べ、より正確に推定することができる。従って、画像記録装置1の装置内の清掃のタイミングをより正確に見積もることが可能となり、装置内が清掃の必要があるほど汚れていないにもかかわらず清掃を促す報知を行なってしまうことや、装置内が汚れており清掃する必要がある場合にも報知がなされず、装置内の汚れにより記録媒体が汚染されてしまうことが防止される。
【0073】
なお、図3のフローにおいて、ステップS1の種別情報を取得する処理では、制御部2は種別情報取得部9として機能する。ステップS1の種別情報に対応するギャップ距離にギャップ距離を調整する処理では、ギャップ距離調整部10として機能する。ステップS2〜S3のインク吐出量の情報(第1の実施形態ではインクの吐出ドロップ数)を計数する処理では、制御部2は吐出量情報取得部12として機能する。ステップS4における、ギャップ距離の情報の取得では、制御部2は飛翔距離情報取得部11として機能し、得られたギャップ距離に対応する補正情報を図4のテーブルから取得して吐出量の情報に乗じる処理では、インクミスト発生量推定部13として機能する。ステップS5における、積算インクミスト発生量を更新する処理では、制御部2は積算部14として機能する。ステップS6における、清掃の要否を判定する処理では、制御部2は判定部15として機能する。ステップS7における通知のための出力信号の出力処理では、制御部2は通知部16として機能する。
【0074】
ここで、ステップS6の判定で使用される積算インクミスト発生量の閾値の設定についての一実施形態を説明する。図4において、ギャップ距離:0.8mmには補正情報:1.0が対応付けられているため、ギャップ距離:0.8mmで計数された吐出ドロップ数は、積算インクミスト発生量に直接加算される。従って、装置内が清掃を必要とするほど汚染されているか否かを判定するために用いる積算インクミスト発生量の閾値の設定にギャップ距離:0.8mmを用いることは都合がよい。
【0075】
ギャップ距離:0.8mmにおいて、例えば、ベタ塗画像の記録を連続的に行ない、そのベタ塗画像の記録において吐出されるインクの吐出ドロップ数と、画像記録装置1内の汚れ具合とをモニタする。これにより、画像記録装置1内の汚れにより記録媒体が汚染されることのない吐出ドロップ数の最大値を経験則的に見積もることが可能である。
【0076】
この様にして見積もった吐出ドロップ数の最大値が積算インクミスト発生量の閾値として設定され得る。或いは、別の実施形態では、装置内の汚れによる記録媒体の汚染をより確実に防ぐために、見積もった吐出ドロップ数の最大値から適度にマージンとなる値を差し引いて積算インクミスト発生量の閾値の値が設定されてもよい。
【0077】
次に、図4について説明する。図4のテーブルでは、記録媒体の種別情報と、ギャップ距離の情報と、吐出ドロップ数を補正しインクミスト発生量を得るための補正情報とが対応付けられている。種別情報とは、記録媒体の種類に関する情報であり、例えば図4では、普通紙、厚紙1、厚紙2、及び封筒等が記載されている。ギャップ距離の情報とは、ギャップ距離調整部10が昇降部6を制御することで調整される画像記録部3と搬送部5との間の距離の情報であり、例えば図4では、0.8mm、1.2mm、2.0mm、及び3.0mm等の値が記載されている。補正情報は、第1の実施形態においては、インクミスト発生量の推定に、ギャップ距離の変化に伴うインクミストの発生割合の変化を反映させるように、吐出ドロップ数を補正するための情報である。
【0078】
本実施形態においては、補正情報は、インクの吐出により発生する、インクミスト発生量のそれぞれのギャップ距離の間での相対的比率を表している(図4の補正情報:1.0、1.2、1.5、2.0)。即ち、図4において、ギャップ距離:0.8mmには補正情報:1.0が、ギャップ距離:2.0mmには補正情報:1.5が対応付けて記載されているが、これはギャップ距離:0.8mmと比較して、ギャップ距離:2.0mmではインクミストの発生割合が1.5/1.0で、1.5倍高いことを示している。
【0079】
本発明に係るいくつかの実施形態において、補正情報とは、インクミスト発生量の推定値をより正確な値へと近づけるように補正するための情報である。この様な補正情報は、例えば、積算インクミスト発生量の閾値を定めるために用いた記録条件でのインクミストの発生量(発生割合)を1とした時のその他の記録条件下でのインクミストの発生量(発生割合)の相対比として定めることができる。
【0080】
補正情報を定める例として、第1の実施形態の図4に示す補正情報の値は、例えば、積算インクミスト発生量の閾値を求める場合と同じ様に、それぞれのギャップ距離において吐出ドロップ数と装置内の汚染具合とをモニタし、それぞれのギャップ距離における閾値の値を見積もる。この閾値の値は、インクミスト発生量(発生割合)と相関を有する値であるため、見積もられたそれぞれの閾値の値の相対比率を用いて補正情報を定めることが可能である。例えば、ギャップ距離0.8における吐出ドロップ数の閾値の値が15億ドロップであり、一方、ギャップ距離2.0における吐出ドロップ数の閾値が10億ドロップであった場合には、15億/10億=1.5と補正情報を定めることができる。これはギャップ距離:0.8mmと比較して、ギャップ距離:2.0mmではインクミストの発生量(発生割合)が1.5倍高いことを示している。
【0081】
なお、第1の実施形態において、積算インクミスト発生量の閾値の値及び補正情報の値を、吐出ドロップ数と装置内の汚染具合とをモニタすることで見積もる例を述べたが、これらの値を定める方法は、これに限定されるものではなく、様々な方法で定めることができる。
【0082】
例えば、閾値の値は、ユーザーの経験に基づいたり、画像記録装置1の利用の状態に合わせて変更されることも考えられる。
【0083】
また、第1の実施形態では、記録媒体の種別情報を上位装置から受信した記録指示情報から取得する例を述べたが、これに限定されるものではなく、記録媒体の種別情報は、様々な方法で取得され得る。例えば、制御部2は、記録処理に際して記録媒体22を給送した給送部4の情報から、その給送部4と対応付けられた記録媒体22の種別情報を取得してもよい。
【0084】
以降の第2の実施形態では、ギャップ距離の変化以外の別の要因に起因するインクミスト発生量の推定誤差を補正する例を述べる。第2の実施形態は、第1の実施形態と類似した処理を含むため、図3を用いて説明する。
【0085】
第2の実施形態において、図3の処理は画像記録装置1が記録指示情報を受信すると開始する。制御部2は記録指示情報を受信すると、ステップS1において、第1の実施形態と同じように、制御部2は記録処理に用いられる記録媒体の種別情報を取得し、取得した種別情報に基づいて図5のテーブルを参照して対応するギャップ距離の情報を取得する。制御部2は取得したギャップ距離の情報に示される距離へとギャップ距離を調整する。
【0086】
ステップS2及びS3において、制御部2は、第1の実施形態と同じように、記録処理毎にインクの吐出ドロップ数を計数し、1つの記録指示情報で指示される全ての記録処理の吐出ドロップ数を積算する。しかしながら、第2の実施形態では、吐出ドロップ数が、インクの色毎に計数される点で第1の実施形態と異なる。
【0087】
一般に、インクは色等の種類が異なると、それに含まれる組成が異なるため粘性等の性質も変わってくる。そして、その性質の違いにより、異なる種類のインクは異なるインクミストの発生割合を有する。
【0088】
第2の実施形態は、第1の実施形態で考慮したインクの飛翔距離の違いによるインクミストの発生割合の違いに加えて、インクの性質の違いによるインクミストの発生割合の違いも考慮するために、各インクの種類毎に吐出ドロップ数が計数される。第2の実施形態においては、インクの種類として色の異なるC、M、Y、Kの4種類のインクを用いる例を述べる。
【0089】
ステップS2及びS3において、C、M、Y、Kの各色のインク毎に吐出ドロップ数を計数した後、フローはステップS4へと進む。ステップS4において、各色のインク毎に計数された吐出ドロップ数には、図5に示される各色のインク毎に用意された補正情報が乗算される。図5では、図4と同じ様に種別情報とギャップ距離とが対応付けられているが、補正情報に関してはインクの種類に応じて個別に設定されており、インクの性質の違いにより生じるインクミストの発生量の差が相対的な比率として表されている。
【0090】
ステップS4において、制御部2は各色のインク毎の吐出ドロップ数に、図5において、種別情報に基づいて取得したギャップ距離の情報と、吐出したインクの種類との双方に対応付けられた補正情報を乗じることで補正を行う。制御部2は、得られた各色のインク毎の補正された吐出ドロップ数を足し合わせることで、1つの記録指示情報により指示される記録処理で発生するインクミスト発生量を算出する。
【0091】
ステップS5において、制御部2は記憶部8に記録された前回の清掃後からの積算インクミスト発生量を読み出す。そして、読み出した積算インクミスト発生量に、ステップS4において取得したインクミスト発生量を加算することで、積算インクミスト発生量を更新して、記憶部に記憶する。ステップS6以降の処理については第1の実施形態と同様に実行される。
【0092】
第2の実施形態では、インクの種類毎に、インクの飛翔距離と、補正情報との対応関係が設定されているため、インクの性質の違いも装置内の清掃の要否を判定する上で考慮される。そのため、例えば、特定の色のインクに偏って記録処理が実行され続けた場合にも、インクの性質の違い起因するインクミストの発生量の推定誤差が抑制される。
【0093】
なお、第2の実施形態では、インクミストの発生割合に対する、飛翔距離の変化による影響と、インクの種類の違いによる影響との双方を考慮するように図5のテーブルを構成したが、インクの種類に起因するインクミストの発生割合の変化のみを考慮するように図5のテーブルを構成してもよい。
【0094】
更に、上記したインクの飛翔距離及びインクの種類以外にも様々な要因でインクミストの発生割合は変化し得る。
【0095】
例えば、温度及び湿度等が変化する状況で画像記録を行う場合には、温度又は湿度の変化によりインクの状態(粘度等)等も変化するため、インクミストの発生量も変わってくる。このような場合には、温度又は湿度と、温度変化又は湿度変化に起因するインクミストの発生割合の変化をインクミスト発生量の推定に反映させるような補正情報とを対応付けたテーブルを用意することで、温度又は湿度が変化する場合にもより正確にインクミストの発生量を推定できる。
【0096】
或いは、記録処理が高頻度で行われる場合と、低頻度で行われる場合とでは記録ヘッドに掛かる負担が異なり、それに起因してインクミストの発生割合が異なってくる。このような場合には、例えば、1週間当たりの使用頻度と、使用頻度の違いによるインクミストの発生割合の変化をインクミスト発生量の推定に反映させるような補正情報とを対応づけたテーブルを用意することで、使用頻度の差に起因するインクミストの発生割合の変化にも対応できる。
【0097】
この様にして本発明のいくつかの実施形態を利用することで、インクミストの発生割合を変化させる上記以外の他の要因に対しても、補正して装置内の汚れ具合をより適切に見積もることが可能となる。
【0098】
これらのインクミストの発生割合を変化させる様々な要因に対する補正は適宜組み合わせられて実行され得る(例えば、飛翔距離に起因した補正と、温度に起因した補正とを組み合わせる等)。また、インクミストの発生割合を変化させる様々な要因に対する補正を組み合わせる場合には、例えば図5に示したように、個々の記録条件下で個別に補正情報を定めてもよいが、要因毎に補正情報の値を定めるテーブルを用意し、記録処理に際して補正が必要な要因の補正情報を掛け合わせることで、インクミスト発生量の補正に用いる補正情報を生成してもよい。例えば、或る記録条件において、飛翔距離に起因した補正情報の値が1.2であり、温度に起因した補正情報の値が1.4であった場合には、1.2x1.4=1.68で、1.68を飛翔距離と温度の双方に起因したインクミスト発生量(発生割合)の変化を補正する値として用いてもよい。
【0099】
なお、上記の第1及び第2の実施形態では、インクの飛翔距離の情報として、昇降部6により調整されたギャップ距離を用いる例を述べたが、インクの飛翔距離の情報はこれに限定されるものではなく、例えば、レーザー距離計等を用いて測定された、搬送部材5aと画像記録部3との間の距離がインクの飛翔距離の情報として用いられてもよい。
【0100】
また、上記のいくつかの実施形態では、インクの吐出量の情報として、記録ヘッドから吐出されたインクの吐出ドロップ数を用いる例を述べたが、インクの吐出量の情報はこれに限定されるものではなく、例えば、インクを記録ヘッドへと供給するインクカードリッジの重量をモニタし、インクカートリッジの重さの変化から記録処理に使用されたインクの吐出量を取得してもよい。
【0101】
更に別の実施形態として、画像記録装置1が、例えば階調を増やすため等の理由で、記録ヘッドから吐出される1ドット当りのインクの吐出量を変動させる機能を備えている場合には、図3のステップS2における吐出量の計数は、単に吐出ドロップ数を数えるのではなく、階調間での吐出量の量比を各ドロップに乗じたのちに計数することで、本発明のいくつかの実施形態を、この様な吐出量を変動させる画像記録装置1に対しても有効に適用することができる。
【0102】
上記したいくつかの実施形態では、画像記録装置1がプリンタ装置である場合を例にとり説明した。しかしながら、本発明に係る画像記録装置1はプリンタ装置に限られず、複写機やスキャナー等を含む所謂複合機であってもよい。
【0103】
さらに、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、付随する特許請求の範囲によって定義される、本発明の趣旨と範囲に含まれる全ての変形形態、均等物、および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、本発明は、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、本発明に係る種々の実施形態を成すことができることが理解されよう。或いは、本発明は、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除して実施され得ることが当業者には理解されよう。
【符号の説明】
【0104】
1 画像記録装置
2 制御部
3 画像記録部
4 給送部
4a 給送トレイ
4b 給送ローラ
5 搬送部
5a 搬送部材
5b 搬送駆動部
5c 搬送従動部
5d 搬送情報生成部
6 昇降部
7 収納部
7a 排紙ローラ
7b 収納トレイ
8 記憶部
9 種別情報取得部
10 ギャップ距離調整部
11 飛翔距離情報取得部
12 吐出量情報取得部
13 インクミスト発生量推定部
14 積算部
15 判定部
16 通知部
17 記録ヘッド駆動部
18 記録ヘッド
19 記録媒体検出部
20 上位装置
21 表示部
22 記録媒体
23 モータ
24 ワイヤ
25 操作部
26 押えローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録媒体に記録する画像記録装置であって、
前記インクの吐出量の情報を取得する吐出量情報取得部と、
前記インクの吐出における該インクの飛翔距離の情報を取得する飛翔距離情報取得部と、
前記インクの吐出によって前記画像記録装置内に生じるインクミストの発生量を、前記吐出量の情報と前記飛翔距離の情報とに基づき推定するインクミスト発生量推定部と、
前記画像記録装置内の清掃の要否を、前記インクミスト発生量推定部が推定したインクミスト発生量に基づき判定する判定部と、
を含む画像記録装置。
【請求項2】
前記インクの飛翔距離の情報と、インクの飛翔距離の変化によるインクミストの発生割合の変化に合わせて前記吐出量の情報を補正するための補正情報との対応関係が示されているテーブルを格納する記憶部を更に含み、
前記インクミスト発生量推定部は、前記飛翔距離情報取得部が取得した飛翔距離の情報に対応付けられている補正情報を前記テーブルから取得し、該補正情報と前記吐出量の情報とに基づいてインクミストの発生量を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが吐出したインクが届く位置に前記記録媒体を搬送する搬送部と、
を更に含み、
前記飛翔距離の情報は、前記記録ヘッドと前記搬送部との間のギャップ距離の情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体の種類に関する情報を取得する種別情報取得部と、
前記ギャップ距離を、前記種別情報取得部により取得された前記記録媒体の種類に関する情報に応じて調整するギャップ距離調整部と、を更に含み、
前記飛翔距離情報取得部は、前記記録媒体の種類に関する情報に応じて調整される前記ギャップ距離の情報を前記飛翔距離の情報として取得することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記吐出量情報取得部よって取得される前記吐出量の情報は、前記記録ヘッドにより前記記録媒体に吐出されるインクの吐出ドロップ数であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前回の前記清掃の後からの、前記インクミスト発生量推定部で推定されたインクミストの発生量を積算して積算インクミスト発生量を算出する積算部を更に含み、
前記判定部は、前記積算インクミスト発生量が所定の閾値よりも大きい場合に、清掃が必要であると判定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記画像記録装置は、前記画像記録装置に接続された上位装置から受信される記録指示情報に基づいて前記記録媒体への記録を実行し、
前記種別情報取得部は、前記記録指示情報から前記記録媒体の種類に関する情報を取得することを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項8】
それぞれが異なる種別の記録媒体を前記搬送部に給送する複数の記録媒体給送部を更に含み、
前記種別情報取得部は、前記複数の記録媒体給送部のうちで前記給送を行なった記録媒体給送部を特定し、該特定した記録媒体給送部に対応する前記記録媒体の種類に関する情報を取得することを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記判定部が清掃が必要であると判定した場合に所定の通知を出力する通知部を更に含む請求項1から10のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
インクを吐出して記録媒体に記録する画像記録装置を制御するための方法であって、
前記インクの吐出量の情報を取得する吐出量情報取得ステップと、
前記インクの吐出における該インクの飛翔距離の情報を取得する飛翔距離情報取得ステップと、
前記インクの吐出によって前記画像記録装置内に生じるインクミストの発生量を、前記吐出量の情報と前記飛翔距離の情報とに基づき推定するインクミスト発生量推定ステップと、
前記画像記録装置内の清掃の要否を、前記インクミスト発生量推定ステップで推定したインクミスト発生量に基づき判定する判定ステップと、
を含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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