説明

画像記録装置

【課題】枚葉性の向上および枚葉の安定化、ファーストプリントタイムの短縮、記録媒体の損傷防止、記録長の変動の防止等を図り、良好な画像記録を安定して行う画像記録装置を提供する。
【解決手段】画像記録装置は、装填部温度サンサと、露光部温度センサと、駆動制御装置とを備え、上記各温度センサの測定結果である、記録に供される記録媒体の温度に応じて、枚葉条件、搬送速度、および、操作搬送速度を最適化することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱現像感光材料、感光感熱記録材料、等の感熱記録材料を含む記録媒体に画像記録を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光感熱記録装置、感熱記録装置、電子写真プリンタ等の各種の画像記録装置が医療用途等の各種の用途に利用されている。このような画像記録装置は、乾式処理により画像記録を行うものであり、画像記録過程において溶液系処理化学薬品を使用する必要がなく、環境保全や省スペースの観点からも非常に有効である。
【0003】
これらの画像記録装置では、多くの場合、画像を記録される記録媒体は、カセット等の所定の収容容器に積層状態で装填される。ここから枚葉機構等が、記録媒体を1枚ずつ取り出し、所定の搬送経路を経て記録部に搬送し、記録部で画像を記録した後に、必要に応じて現像処理等の各種の処理を施して、画像が記録された状態で排出部に排出する。
また、記録部では、多くの場合、記録媒体を所定の方向に搬送(走査搬送)しつつ、この搬送方向と直交する主走査方向に画像を記録することにより、記録媒体に二次元的に画像を記録する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような画像記録装置で、高品質な画像記録を安定して行うためには、枚葉時に複数の記録媒体を搬送してしまう、いわゆる、複数枚葉を防止すること、記録媒体の損傷を防止すること、適正な走査搬送速度で記録媒体を搬送すること等が必要である。
これらを防止するために、画像記録装置においては、複数枚葉を防止する剥離機構を設ける、搬送経路に活性の良好な保護部材を設ける、走査搬送精度の向上等、各種の手段が講じられている。ところが、記録媒体の枚葉製、被損傷性、走査搬送速度は、様々な要因に影響を受け、やはり、これらの問題を完全に解決するには至っていない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録に供される記録媒体の温度に着目し、この温度に応じて枚葉条件、搬送速度、および、操作搬送速度を最適化することにより、枚葉性の向上および枚葉の安定化、ファーストプリントタイムの短縮、記録媒体の損傷防止、記録長の変動の防止等を図り、良好な画像記録を安定して行うことを可能にする画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、記録媒体を供給する供給部と、前記記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部で画像を記録された記録媒体を排出する排出部と、前記供給部から供給された前記記録媒体を前記排出部まで搬送する搬送部と、各部の駆動を制御する制御部と、画像記録装置内部の温度を測定する環境温度センサとを備え、前記制御部は、前記環境温度センサによる画像記録装置内部の温度測定結果に応じて、供給部から搬送部に至る各部の少なくとも一部における記録媒体の搬送条件を制御することを特徴とする画像記録装置を提供する。
【0007】
ここで、前記供給部は、所定の収容場所から前記記録媒体を取り出す枚葉手段を備え、前記制御部は、前記環境温度センサによる前記画像記録装置内部の温度測定結果に応じて、前記枚葉手段の動作を制御するのが好ましい。
【0008】
また、前記記録部は、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される記録媒体に画像を記録する記録手段とを備え、前記制御部は、前記環境温度センサによる前記画像記録装置内部の温度測定結果に応じて、前記搬送手段による搬送速度を制御するのが好ましい。
【0009】
また、前記搬送手段は、前記記録媒体の搬送経路を規定する凹部を有する支持台と、前記支持台の凹部に前記記録媒体を押圧し、かつ、前記凹部と共に前記記録媒体を挟持搬送する、搬送方向に離間して配置された2本のローラとを備え、前記記録部は、前記2本のローラ間において前記記録媒体に画像を記録するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像記録装置によれば、記録に供される記録媒体の温度に応じて枚葉条件、搬送速度、および、操作搬送速度を最適化することにより、枚葉性の向上および枚葉の安定化、ファーストプリントタイムの短縮、記録媒体の損傷防止、記録長の変動の防止等を図り、良好な画像記録を安定して行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像記録装置について添付の図面を参照して説明する。ここで、図1は本発明の画像記録装置10の概略構成図を示す。また、図2は、画像記録装置10の画像露光部24を示す概略構成図である。
【0012】
図1に示す画像記録装置(以下、記録装置とする)10は、湿式の現像処理を必要としない熱現像記録材料を用い、レーザ光からなる光ビームによる走査露光によって熱現像記録材料を露光して潜像を形成した後に、熱現像を行って可視像を得、その後常温まで冷却する装置である。この記録装置10は、基本的に、熱現像記録材料の搬送方向順に、熱現像記録材料供給部12と、画像露光部24と、熱現像部48と、冷却部58と、また、各部間には、熱現像記録材料を搬送する搬送手段18とを備えている。また、記録装置10は、制御系として駆動制御装置66と、装填部温度センサ68と、露光部温度センサ70とを備えている。
この記録装置10では、上段に画像露光部24と熱現像部48と冷却部58とを配置し、その下段に熱現像記録材料供給部12を配置した構成となっており、画像露光部24と熱現像部48とを隣接させた配置としている。
熱現像記録材料Fは、光ビーム(例えばレーザ光)によって画像記録(露光)し、その後、熱現像して発色させる記録材料である。
【0013】
熱現像記録材料供給部12は、枚葉手段15を構成する吸盤16が熱現像記録材料Fを吸着搬送し、供給ローラ対19、搬送ガイド20、および搬送ローラ対22等からなる搬送手段18を介して、熱現像記録材料Fの搬送方向の下流に位置する画像露光部24に供給する部分であり、三つの装填トレイ14a,14b,14cと、熱現像記録材料Fを搬送する枚葉手段15とを有する。また、三段構成となっている各装填トレイ14a,14b,14cの内部には、異なるサイズの熱現像記録材料F(例えば、B4サイズ、および半切サイズ等)が収容されている。上記熱現像記録材料Fは、通常、100枚等の所定単位の積層体(束)として熱現像記録材料供給部12の各段に装填される。
また、各装填トレイ14a,14b,14cには、装填部温度センサ68が設けられる。装填部温度センサ68は、各装填トレイ14a,14b,14cの温度を測定する温度センサである。
なお、装填トレイ14a,14b,14cは、特に区別しない場合において装填トレイ14とする。
【0014】
枚葉手段15は、熱現像記録材料Fを吸着する吸盤16と、吸盤16の移動機構や首振り機構、さらに熱現像記録材料Fを吸着するための吸気機構等を備え、装填トレイ14に収容されている熱現像記録材料Fの最上部に位置するものを吸盤16により吸着して持ち上げ、供給ローラ対19に搬送する。
【0015】
ここで、枚葉手段15は、熱現像記録材料Fを複数枚葉することの無いように、吸盤16で熱現像記録材料Fを持ち上げてから装填トレイ14上方で停止し、然る後に熱現像記録材料Fを供給ローラ対19に搬送する。この停止時間は、装填部温度センサ68による温度測定結果に応じて決定される。この点に関しては、後に詳述する。また、枚葉手段15は、駆動制御装置66によりその動作が制御される。
【0016】
搬送手段18は、供給ローラ対19と、熱現像記録材料Fの搬送経路を規定する搬送ガイド20と、搬送ガイド20に沿って配設され、熱現像記録材料Fを搬送する搬送ローラ対22と、搬送ローラ対22の駆動源である図示しないモータとを有する。搬送手段18は、熱現像記録材料供給部12、画像露光部24、熱現像部48、および冷却部58の各部の間、また、冷却部58から排出トレイ48の間において、熱現像記録材料Fの搬送を行う。
供給ローラ対19は、各装填部にそれぞれ配置され、枚葉手段15により1枚ずつ取り出された熱現像記録材料Fを搬送ローラ対22に受け渡すものである。なお、搬送ローラ対22は、駆動制御装置66によりその回転速度を制御される。また、搬送手段18による熱現像記録材料Fの搬送速度は、装填部温度センサ68による温度測定結果に応じて決定される。この点に関しては、後に詳述する。
【0017】
図2には、記録装置10の画像露光部24が示されている。
画像露光部24は、熱現像記録材料供給部12から搬送手段18にて搬送されてきた熱現像記録材料Fに対してレーザ光Lを主走査方向に走査露光しつつ、主走査方向に略直行する副走査方向(すなわち、搬送方向)に搬送することで、熱現像記録材料Fに潜像を形成するものである。
画像露光部24は、レーザ照射手段26と、副走査搬送手段40とを備えている。レーザ照射手段26は、別途用意された記録画像に応じて変調したレーザ光を照射し、熱現像記録材料Fを走査(主走査)する。このとき、副走査搬送手段40によって熱現像記録材料を副走査方向に移動させる。
また、画像露光部24は、画像露光部温度センサ70を備えている。画像露光部温度センサ70は、画像露光部近傍の温度を測定する温度センサである。
【0018】
レーザ光照射手段26は、レーザ光源28と、レーザ光源28を駆動する記録制御装置30と、シリンドリカルレンズ32と、光偏光器であるポリゴンミラー34と、fθレンズ36と、シリンドリカルミラー38とを備えている。
なお、レーザ光照射手段26には、これ以外にもレーザ光源28から出射された光ビームを成形するコリメータレンズやビームエキスパンダ、面倒れ補正光学系、光路調整用ミラー等、公知の光ビーム走査露光装置に配置される各種光学系部材が必要に応じて配置される。
【0019】
記録制御装置30は、記録画像に応じてレーザ光源28を変調してレーザ光を出射させる。レーザ光源28から出射されたレーザ光Lは、ポリゴンミラー34によって主走査方向に偏向され、fθレンズ35によって所定の記録位置で結像するように調光され、シリンドリカルミラー38によって光路を選択されて所定の記録位置に、所定の入射角度で入射される。すなわち、画像露光部24は、熱現像記録材料Fの法線方向と副走査方向(搬送方向)に平行な面内で、所定の入射角度で以って熱現像記録材料Fに向けてレーザ光Lを照射する。
【0020】
副走査搬送手段40は、照射するレーザ光の主走査ラインを挟んで、軸線がこの走査ラインに対して略平行に配置された二本の駆動ローラ42,44と、熱現像記録材料Fを所定の搬送経路で支持し、かつ、駆動ローラ42,44と共に熱現像記録材料Fを挟持搬送する支持板46とを備えている。この支持板46には、駆動ローラ42,44と支持台46との間に挿入される熱現像記録材料Fの撓みによる弾性反発力を受け止める、略水平な面からなる押し当て部46aが設けられている。また、支持板46は、押し当て部46aとの境界部分で屈曲して接続された傾斜面であるスロープ部46bを有する。副走査搬送手段40は、押し当て部46aとスロープ部46bとを有する凹部と、駆動ローラ42,44とで、熱現像記録材料Fを挟持搬送する。
ところで、スロープ部46bと押し当て部46aとの交差角度φは、0°〜45°の範囲に設定されている。0°より大きな交差角度φで屈曲させた傾斜面は、少なくとも搬送方向上流側に設けてあればよい。
【0021】
駆動ローラ42は、図示しないモータ等の駆動手段の動力を、歯車やベルト等の伝達手段を介して受け、図2の時計回り方向へ回転するように構成されている。なお、この駆動ローラ42と同一構成の駆動ローラ44は、押し当て部46aとスロープ部46bとの境界位置に設けられている。
【0022】
上記副走査搬送手段40の構成において、スロープ部46bの先端から熱現像記録材料Fが進入すると、支持板46と駆動ローラ42との間に熱現像記録材料Fの先端が入り込む。このとき、支持板46の押し当て部46aとスロープ46bとが所定の角度φで屈曲されているため、熱現像記録材料Fがスロープ部46bから押し当て部46aに移るときに撓み、この撓みにより熱現像記録材料自身に弾性反発力が発生する。この弾性反発力により、熱現像記録材料Fと駆動ローラ42との間に摩擦力が生じ、駆動ローラ42から熱現像記録材料Fへ確実に搬送駆動力が伝達され、熱現像記録材料Fが走査搬送される。
【0023】
そして、スロープ部46bおよび駆動ローラ42により、支持板46からの熱現像記録材料Fを次工程へと搬出する際においても、熱現像記録材料Fの屈曲による弾性反発力により駆動ローラ44との間で摩擦力が生じ、確実に搬送されるようになる。
また、押し当て部46aにおいては、熱現像記録材料Fの弾性反発力によって熱現像記録材料Fが押し当て部46aに押し付けられて、熱現像記録材料Fの上下方向のばたつきが抑制される。
なお、駆動ローラ42,44は、駆動制御装置66により駆動を制御される。また、駆動ローラ42,44による熱現像記録材料Fの走査搬送速度は、露光部温度センサ70の温度測定結果に応じて決定される。この点に関しては、後に詳述する。
【0024】
画像露光部24の下流側には、画像(潜像)を記録された熱現像記録材料Fを加熱することで潜像を可視像に変換する熱現像部48が配設される。熱現像部48は、熱現像記録材料Fを搬送する複数のローラ50と、複数のローラ50に沿って湾曲形勢され、搬送中の熱現像記録材料Fを過熱するプレートヒータ52a,52b,52cと、複数のローラ50を回転駆動する歯車54とを有する。
【0025】
記録装置10の最上部には、熱現像部48に連接して冷却部58が配設される。冷却部58は、冷却プレート46から成り、熱現像部48で過熱され、搬出ローラ対56によって冷却部58に搬送される熱現像記録材料Fを、触れても火傷しない程度の温度まで冷却する。冷却された熱現像記録材料Fは、排出ローラ対60によって記録装置10の上面部である排出トレイ48に排出される。
【0026】
記録装置10の制御系について説明する。記録装置10は、制御系として、駆動制御装置66と、装填部温度センサ68と、画像露光部温度センサ70とを備える。
【0027】
装填部温度センサ68は、熱現像記録材料Fが収容される装填トレイ14近傍の温度を測定する温度センサである。ここで、装填トレイ14近傍の温度は、通常、装填トレイ14に収容されている熱現像記録材料Fの温度と同等である。本発明の記録装置10では、装填トレイ14近傍の温度を測定することで装填トレイ14に収容されている熱現像記録材料Fの温度を知見している。
また、画像露光部温度センサ70は、画像露光部24近傍の温度を測定する温度センサである。ここで、画像露光部24近傍の温度は、通常、画像露光時の熱現像記録材料Fの温度と同等である。本発明の記録装置10では、画像露光部24近傍の温度を測定することで画像露光時の熱現像記録材料Fの温度を知見している。
【0028】
装填部温度センサ68および画像露光部温度センサ70は、駆動制御装置66と接続されており、これら装填部温度センサ68および画像露光部温度センサ70による測定結果(装置内部の温度から知見される熱現像材料Fの温度)は、駆動制御装置66に送信される。なお、装填部温度センサ68および画像露光部温度センサ70としては公知の温度センサを用いればよい。
【0029】
駆動制御装置66は、装填部温度センサ68から送られた温度測定結果に応じて、枚葉手段15における熱現像記録材料Fの枚葉条件(停止時間および停止時の振動)、搬送手段18による熱現像記録材料Fの搬送速度を決定し、また、画像露光部温度センサ70による温度測定結果に応じて、記録時の操作搬送速度を決定し、これに応じて駆動するように対応する部位に指示を出す。
すなわち本発明は、装置内部の温度=画像記録に供される記録媒体の温度に着目し、装置内部の温度に応じて、枚葉条件、搬送手段18による搬送速度、操作搬送速度等を決定することにより、複数枚葉の防止や枚葉時間の短縮、熱現像記録材料の損傷防止、記録長の変動防止等を図り、良好な画像記録を安定して行うことを実現している。
なお、枚葉条件および搬送手段18による搬送速度は、画像記録に供される熱現像記録材料Fを供給する装填トレイ14に対応する装填部温度センサ68による温度測定結果に応じて決定されるのは言うまでもない。
【0030】
ここで、図示例の記録装置10において、枚葉手段15は、熱現像記録材料Fを複数枚葉することの無いように、吸盤16で熱現像記録材料Fを持ち上げてから一旦停止した後、供給ローラ対19に搬送する。この停止時間(一旦停止してから搬送するまでの時間)は、2枚以上の熱現像記録材料Fが、吸盤16によって持ち上げられた際に、1枚の熱現像記録材料Fを残して剥離するのに要する時間である。
【0031】
ここで、熱現像記録材料Fは、その温度に応じてヤング率が変動する。このヤング率の変動によって、吸盤16で熱現像記録材料Fを吸着して持ち上げた時の熱現像記録材料Fの剥離性(枚葉安定性)が変動する。すなわち、複数枚葉を防止するのに必要な停止時間の長さは、熱現像記録材料Fの温度に応じて変化する。
従って、記録装置10では、上記停止時間を、熱現像記録材料Fの温度に応じて決定し、この決定した停止時間だけ吸盤16を停止させて、然る後に熱現像記録材料Fを供給ローラ対19に搬送する。これにより、複数枚葉を防止することができ、さらに、枚葉動作に要する時間を最適化することができる。
【0032】
記録装置10では、実験やシミュレーション等の方法を用いて予め作成した、熱現像記録材料Fの温度と停止時間の最適値とを対応させるLUTが、駆動制御装置66に記憶されている。
装填部温度センサ68を用いて、枚葉動作開始直前の装填トレイ14近傍の温度、つまり熱現像記録材料Fの温度を測定する。駆動制御装置66は、その温度測定結果から上記LUTとを用いて最適な停止時間を決定し、その決定した停止時間だけ枚葉手段15が停止した後に熱現像記録材料Fを供給ローラ対19へ搬送するように制御信号を送信する。
あるいは、LUTにかえて、熱現像記録材料Fの温度をパラメータとして、最適な搬送速度を算出する演算式を用いてもよい。
【0033】
また、記録装置10は、熱現像記録材料Fを吸着し持ち上げている吸盤16を振動させることにより、複数枚の熱現像記録材料Fが持ち上げられた際の、熱現像記録材料Fの剥離を促進して枚葉動作に費やす時間を短縮することができる。
そのために、記録装置10においては、吸盤16によって熱現像記録材料Fを持ち上げた後、吸盤16を振動させる。ここで、この振動による剥離性は、熱現像記録材料Fのヤング率=熱現像記録材料Fの温度で変化する。具体的には、熱現像記録材料Fの温度が比較的高温の時は、ヤング率が下がって(ヤング率は、例えば、32℃で3,800MPa)剥離性が低下し、振動時間を比較的長くする必要があるという傾向がある。逆に、熱現像記録材料Fが比較的低温の時は、ヤング率が上がって(ヤング率は、例えば、13℃で5,600MPa)剥離性が向上し、振動時間を比較的短くすることができるという傾向がある。
これに応じて、吸盤16により複数枚持ち上げられた熱現像記録材料Fをより早く剥離させるために、熱現像記録材料Fの温度に応じて決定する振幅および振動数ならびに振動時間等の振動条件で吸盤16を振動させる。
【0034】
この振動条件を決定するために、予め、実験やシミュレーション等の方法によって作成した、熱現像記録材料Fの温度と、振幅、振動数および振動時間等の振動条件とを対応させるLUTを駆動制御装置66に記憶している。
駆動制御装置66は、このLUTと、装填部温度センサ68の測定値である熱現像記録材料Fの温度とを用いて上記振動条件の最適値を決定し、枚葉手段15に制御信号を送信する。枚葉手段15は、持ち上げた複数枚の熱現像記録材料Fに上記振動条件で振動を与え、この複数枚の熱現像記録材料Fから1枚を残して剥離させた後に供給ローラ対19へと搬送する。
【0035】
上述のようにして、装填トレイ14から1枚ずつ取り出された熱現像記録材料Fは、供給ローラ対19から搬送ローラ対22に供給され、搬送手段18によって画像露光部24まで搬送され、画像露光部24で画像記録され、熱現像部48で熱現像され、搬送手段18により冷却部58を経て排出ローラ対60まで搬送される。
ここで、記録装置10において熱現像記録材料Fの搬送を行う際に、駆動制御装置66は、熱現像記録材料Fの温度に応じて、その表面に傷が生じることのない最適な搬送速度を決定し、この決定した搬送速度で熱現像記録材料Fが搬送されるように、搬送手段18による搬送速度を制御する。
【0036】
熱現像記録材料Fは、その温度に応じてヤング率が変動するのは既に述べた。熱現像記録材料Fのヤング率が大きいほど、その変形による弾性反発力が大きくなるために搬送ローラ対22と熱現像記録材料F間の摩擦力が大きくなり、熱現像記録材料F表面に傷が生じ易くなる。従って、熱現像記録材料F表面の傷の発生を抑制するためには、ヤング率が高い、つまり比較的低温の場合は搬送速度を小さくする必要があるという傾向がある。逆に、ヤング率の値が小さい、つまり比較的高温の場合は搬送速度を大きくすることが出来るという傾向がある。
【0037】
記録装置10では、予め、実験やシミュレーション等により作成した、熱現像記録材料F表面の傷の発生を抑制できる最適な搬送速度と熱現像記録材料Fの温度とを対応させるLUTを作成し、このLUTを駆動制御装置66に記憶している。駆動制御装置66は、このLUTを用いて搬送速度を決定する。
すなわち、先ず、装填部温度センサ68を用いて熱現像記録材料Fの温度を計測して駆動制御装置66に送り、駆動制御装置66が、上記LUTと熱現像記録材料Fの温度とから搬送速度を決定し、搬送ローラ対22が決定した搬送速度で熱現像記録材料Fを搬送するように搬送ローラ対の駆動源であるモータ(図示省略)の回転速度を決定し制御信号を送信する。
なお、LUTにかえて、熱現像記録材料Fの温度をパラメータとして、最適な搬送速度を算出する演算式を用いてもよい。
【0038】
前述のように、搬送ガイド20を介して画像露光部24に搬送された熱現像記録材料Fは、副搬送手段28の駆動ローラ42,44との回転により副走査方向に搬送されつつ、レーザ照射手段26により走査露光される。
ここで、既に述べたが、熱現像記録材料Fがスロープ部46bから押し当て部46aに移るときに撓み、この撓みにより発生する熱現像記録材料F自身の弾性反発力により、熱現像記録材料Fと駆動ローラ42,44との間に摩擦力が生じ、駆動ローラ42,44から熱現像記録材料Fへ確実に搬送駆動力が伝達され、熱現像記録材料Fが搬送される。熱現像記録材料Fは、温度に応じてヤング率が変化し、これに応じて摩擦力の変化が生じる。つまり、搬送時に熱現像記録材料Fが副走査方向(搬送方向)に受ける力は温度に応じて変化する。
【0039】
ところで、熱現像記録材料をローラ等による摩擦力を利用して搬送するような場合、一般的に、熱現像記録材料の搬送方向の滑りが生じる。さらに、上述したように温度に応じて摩擦力が変化するため、温度変化を考慮せずに所定の搬送速度で搬送するような場合はその滑りの量が温度に応じて変化し、記録長の変動が生じるという問題があった。
図示例の記録装置10は、熱現像記録材料Fの滑りを抑制して記録長の変動を防止するために、温度に応じて搬送速度を決定する。
【0040】
図示例の記録装置10では、予め、実験やシミュレーション等の方法を用いて、熱現像記録材料の温度と、正確な記録長を実現できる最適な搬送速度とを対応させるLUTを作成し、駆動制御装置66に上記LUTを記憶している。
駆動制御装置66は、露光部温度センサ70の測定値である記録時の熱現像材料Fと上記LUTとから搬送速度を決定する。次に、駆動制御装置66は、決定した搬送速度で熱現像記録材料Fを搬送するために駆動ローラ42,44の駆動源であるモータ(図示省略)の回転速度を決定し、モータを駆動する制御信号を送信する。
なお、LUTにかえて、熱現像記録材料Fの温度をパラメータとして、最適な搬送速度を算出する演算式をもちいてもよい。
【0041】
なお、搬送手段18の搬送ローラ対22の駆動源であるモータ、および駆動ローラ42,44の駆動源であるモータの駆動制御は、駆動パルスの設定やクロック周波数の設定によって行えばよい。
本発明の記録装置10は、基本的に、以上のように構成されるものである。
【0042】
以下、本発明の記録装置10の作用について説明する。
記録装置10において、記録開始の指示が出されると、駆動制御装置64は、装填部温度センサ68による熱現像記録材料Fの温度測定結果から、前記LUTを用いて、次に行う画像記録に供される熱現像記録材料Fを搬送する枚葉手段15の前記停止時間や、枚葉手段15を振動させる際の前記振動条件を決定し、決定した停止時間や振動条件で枚葉手段15を駆動制御する制御信号を枚葉手段15に送信する。
【0043】
上記作用と並行して、駆動制御装置64は、装填部温度センサ68による熱現像記録材料Fの温度測定結果から、熱現像記録材料Fの温度と搬送手段18の搬送ローラ対22等により搬送される熱現像記録材料Fの最適な搬送速度とを対応させるLUTを用いて搬送速度を決定する。駆動制御装置66は、熱現像記録材料Fが決定した搬送速度で搬送されるように、搬送手段18の供給ローラ対19および搬送ローラ対22の駆動源であるモータ(図示省略)に制御信号を送信する。
【0044】
さらに、上記作用と並行して、駆動制御装置64は、露光部温度センサ70による温度測定結果から、画像記録時の熱現像記録材料Fの温度と副走査搬送手段による搬送速度の最適値とを対応させるLUTを用いて副走査搬送速度を決定し、この決定した副走査搬送速度で副走査搬送手段40が熱現像記録材料Fを搬送するように、副走査搬送手段40に制御信号を送信する。
【0045】
このようにして枚葉条件、搬送手段18による搬送速度、操作搬送速度を決定したら、枚葉手段15は、装填トレイ14内の熱現像材料Fを吸着して持ち上げ、上記決定した停止時間だけ停止し、かつ、停止中に決定した振動条件で振動した後に、熱現像記録材料Fを搬送手段18の供給ローラ対19に供給する。
搬送手段18は、供給ローラ対19および搬送ローラ対22を用いて搬送ガイド20に沿って、上記決定した搬送速度で、熱現像記録材料Fを副走査搬送手段40に搬送する。
熱現像記録材料Fの先端が副走査搬送手段40の駆動ローラ42に至るが、駆動ローラ42は最初は停止しており、熱現像記録材料Fはここで一旦停止して位置決めされる。熱現像記録材料Fは、位置決めが完了した後、駆動ローラ42,44により、上記決定した副走査搬送速度で走査搬送される。
【0046】
熱現像記録材料Fは、駆動ローラ42,44により副走査方向に搬送されながら、レーザ照射手段26から画像情報に応じて変調されたレーザ光Lが主走査方向に照射される。レーザ光Lが照射された熱現像記録材料Fには、潜像として画像が形成される。
画像が形成された熱現像記録材料Fは、熱現像部48に搬送される。
熱現像部48では、熱現像記録材料Fは、ローラ50で搬送されながらプレートヒータ52a,52b,52cから付与される熱によって加熱現像されて、潜像が顕像に変換される。
次に、加熱現像された熱現像記録材料Fは、冷却部58に搬送され、冷却された後、排出トレイ48に排出される。
【0047】
以上の例は、本発明を、感光性熱現像記録材料を用いる画像記録装置に利用した例であるが、本発明は、これには限定されず、感熱記録材料を用いる感熱記録装置、インクジェットプリンタ、電子写真プリンタ等の各種の画像記録装置に利用可能である。
中でも特に、PET等のプラスチックフィルムをベースにして画像形成層を形成してなる、いわゆるフィルム感材(感光材料や感熱材料)は、ヤング率の変動に起因する枚葉性、被損傷性、搬送安定性の変化が大きいので、医療用途に用いられる感熱記録装置や感光性熱現像記録材料を用いる画像記録装置のように、フィルム感材を用いる画像記録装置には、本発明が好適に利用可能である。
【0048】
また、図示例においては、好ましい態様としては、温度測定結果に応じて、枚葉手段15の動作制御、搬送手段18による搬送速度の制御、および、画像記録時における走査搬送速度の制御を行っているが、本発明は、これに限定されず、上記制御のうち1つのみ、あるいは2以上を行うものであってもよい。
【0049】
例えば、記録装置10は、熱現像部48から冷却部58の間に装置内部の温度を測定する温度センサを備え、この温度センサの測定結果に応じて、熱現像部48から排出トレイ62まで搬送手段18により搬送される熱現像材料Fの搬送速度を決定するように構成されてもよい。記録装置10は、上記温度センサにより熱現像部48と冷却部58間の温度を測定することで、熱現像部48で熱現像された熱現像記録材料Fの温度を知見し、この温度測定結果に応じて搬送速度を決定することにより、熱現像記録材料F表面の傷の発生を抑制することができ、良好な画像記録を行うことができる。
【0050】
なお、本発明に係る画像記録装置(記録装置)10は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0051】
本発明の画像記録装置によれば、使用する記録媒体の温度に応じて、枚葉条件、搬送速度、および、記録時の走査搬送速度を最適化することにより、枚葉性の向上および枚葉安定化、ファーストプリントタイムを短縮、記録媒体の損傷防止、記録長の変動の防止等を実現し、良好な画像記録を安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る画像記録装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す画像記録装置の画像露光部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
10 画像記録装置(記録装置)
12 熱現像記録材料供給部
14 装填部
15 枚葉手段
16 吸盤
18 搬送手段
19 供給ローラ対
20 搬送ガイド
22 搬送ローラ対
24 画像露光部
26 レーザ照射手段
28 レーザ光源
30 記録制御装置
32 シリンドリカルレンズ
34 ポリゴンミラー
36 fθレンズ
38 シリンドリカルミラー
40 副走査搬送手段
42,44 駆動ローラ
44 支持板
46a 押し当て部
46b スロープ部
48 熱現像部
50 ローラ
52 プレートヒータ
54 歯車
56 搬出ローラ対
58 冷却部
60 排出ローラ対
62 排出トレイ
64 電源/制御部
66 駆動制御装置
68 装填部温度センサ
70 露光部温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を供給する供給部と、前記記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部で画像を記録された記録媒体を排出する排出部と、前記供給部から供給された前記記録媒体を前記排出部まで搬送する搬送部と、各部の駆動を制御する制御部と、画像記録装置内部の温度を測定する環境温度センサとを備え、
前記制御部は、前記環境温度センサによる画像記録装置内部の温度測定結果に応じて、供給部から搬送部に至る各部の少なくとも一部における記録媒体の搬送条件を制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記供給部は、所定の収容場所から前記記録媒体を取り出す枚葉手段を備え、
前記制御部は、前記環境温度センサによる前記画像記録装置内部の温度測定結果に応じて、前記枚葉手段の動作を制御する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記記録部は、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される記録媒体に画像を記録する記録手段とを備え、
前記制御部は、前記環境温度センサによる前記画像記録装置内部の温度測定結果に応じて、前記搬送手段による搬送速度を制御する請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記記録媒体の搬送経路を規定する凹部を有する支持台と、
前記支持台の凹部に前記記録媒体を押圧し、かつ、前記凹部と共に前記記録媒体を挟持搬送する、搬送方向に離間して配置された2本のローラとを備え、
前記記録部は、前記2本のローラ間において前記記録媒体に画像を記録する請求項1〜3のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−31138(P2007−31138A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221427(P2005−221427)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】