説明

画像記録装置

【課題】ジャム処理後の開放された搬送路を簡単に復帰させることができる安価な機構を備えた画像記録装置の提供。
【解決手段】搬送路21は、第1パス22と第2パス23とを備える。第2パス23は、ガイド50、51によって区画される。ガイド51は、第2パス23の下側壁面を構成する。ガイド51は支軸53に懸架され、自重により垂下可能である。給紙カセット15が装着されることによりガイド51が給紙カセット15に下から支持される。給紙カセット15が抜かれることによりガイド51が垂下し、第2パス23が開放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送路に沿って搬送されるシートに記録部が画像を記録する画像記録装置に関し、特に、ジャム処理の際に搬送路が開放される構造を備えた画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からシート(典型的には記録用紙)に画像を記録する画像記録装置が提供されている。そのような画像記録装置の中にはシートの第1面(典型的には表面)及び第2面(典型的には裏面)の両面に画像を記録することができるものもある(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に開示された画像記録装置は、装置本体に挿入されたシートカセットからシートが引き出され、当該シートは第1端(典型的には先端)を先頭として第1搬送路に沿って搬送方向第1向きに送られる。この第1搬送路を臨むように記録部が設けられており、この記録部は、シートの第1面に所定の画像を記録する。このシートは、搬送ローラによってさらに同向きに沿って搬送され、その後に当該搬送ローラが逆転することによっていわゆるスイッチバックされる。これにより、当該シートは搬送方向第2向きに搬送されて第2搬送路に送られる。第2搬送路に送られたシートは、第2端(典型的には後端)を先頭として再び上記記録部に送られ、第2面に画像が記録される。
【0003】
シートが搬送路に沿って搬送されるときに、さまざまな理由によりいわゆるジャムが発生することはよく知られており、ジャムが発生したときはこれを速やかに処理する必要がある。ジャム処理の便宜のための工夫は、従来から種々知られており、たとえば特許文献1に開示された画像記録装置では、ユーザーが一旦シートトレイを取り外し、搬送路を区画するガイド部材を手動操作することにより、ジャムが生じた搬送路が開放されるようになっている。このように搬送路が開放されることにより、ユーザーはジャム処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−265091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ジャム処理が終了した後には、ユーザーは、上記開放された搬送路を元の状態に復帰させる作業をしなければならず、ユーザーにとってジャム処理は非常に煩わしいものであった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ジャム処理後の開放された搬送路を簡単に復帰させることができる機構を備えた画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、筐体と、当該筐体の挿抜口から挿抜可能に設けられ、搬送路に給送されるシートを保持するシートカセットと、上記筐体に設けられ、上記搬送路に沿って送られるシートに画像を記録する記録部と、上記筐体に設けられた支軸に回動可能に支持され、当該支軸を中心に回動することにより、上記搬送路を区画する壁面の一部を形成する第1姿勢と、上記壁面の一部を開放し略垂下状態の第2姿勢と、上記壁面の一部を開放し上記挿抜口に向く第3姿勢との間で姿勢変化可能な搬送路区画部材とを備える。当該搬送路区画部材は、上記筐体からシートカセットが抜かれている状態では上記第2姿勢となっており、上記第2姿勢の状態から、上記挿抜口へ挿入されるシートカセットに押圧されることにより上記第1姿勢まで回動するように構成される。
【0008】
この構成によれば、ジャム処理等のために、シートカセットが筐体の挿抜口から抜かれると、搬送路区画部材は支軸を中心に回動して第2姿勢となる。すなわち、搬送路区画部材は、搬送路を区画する壁面の一部を開放して略垂下状態となる。その後、ユーザーが搬送路区画部材を第2姿勢から第3姿勢に回動させると、挿抜口から搬送路が見えるようになるため、搬送路にあるシートをユーザーが挿抜口から取り除くことが可能となる。シートが取り除かれた後は、ユーザーがシートカセットを筐体に挿入するだけにより、搬送路区画部材が第1姿勢となる。すなわち、搬送路区画部材は、シートカセットに押圧されて支軸を中心に回動し、搬送路を区画する壁面の一部を形成する。
【0009】
(2) 上記搬送路区画部材は、上記シートカセットが上記筐体から抜かれると、自重のみにより上記第2姿勢まで回動するように構成されているのが好ましい。
【0010】
この構成では、搬送路区画部材を第1姿勢から第2姿勢に回動させるための構造がきわめて簡単である。
【0011】
(3) 上記搬送路区画部材は、上記筐体に挿入されたシートカセットに下方から当接支持されることにより上記第1姿勢に位置決めされるように構成されているのが好ましい。
【0012】
この構成では、シートカセットが搬送路区画部材を位置決めするので、位置決め機構が簡単である。
【0013】
(4) 上記搬送路は、上記記録部に対向して上記シートを搬送方向へ搬送する第1パスと、当該第1パスにおいて上記記録部によって記録された上記シートを、当該第1パスの上記記録部よりも上記搬送方向の上流側へ再度案内する第2パスとを備えていてもよい。上記搬送路区画部材は、上記第2パスを区画する鉛直方向下側の壁面を形成するように構成されているのが好ましい。
【0014】
(5) 上記第1パスから上記第2パスへ上記シートを搬送する、正転及び逆転可能なスイッチバックローラ対がさらに設けられていてもよい。上記支軸は、上記スイッチバックローラ対の回転軸と共用されているのが好ましい。
【0015】
(6) 上記シートカセットは、上記シートが載置される底部、当該底部に立設された側壁部及び上記シートが給送される向きに傾倒された前壁部と、上記シートの最大積載量を規定する積載規制部材とを備えていてもよい。そして、上記シートカセットが挿抜される際に上記側壁部に上方から当接することにより円滑な挿抜動作をアシストするアシスト部材がさらに設けられており、当該アシスト部材の上記挿抜方向抜脱向き前側端は、上記筐体の背面側基準位置(典型的には、筐体の背面)から上記挿抜方向抜脱向きに距離Laの位置に設定されているのが好ましい。この場合において、上記シートカセットにシートが満載された状態における当該シートの先端と上記前壁部先端との間の上記挿抜方向の距離をLb、上記背面基準位置と上記支軸との間の上記挿抜方向の距離をLcとしたとき、La>Lc−Lbの関係が成立している。
【0016】
この構成では、上記アシスト部材が設けられているので、シートカセットの挿抜作業がより円滑なものとなる。
【0017】
ところで、シートカセットが筐体に挿抜可能であることから、当該シートカセットが筐体に対して確実に挿入されていない状態、典型的には、筐体から若干引き抜かれて上記アシスト部材との係合が解除された状態(以下、「不完全装着状態」と称す。)が生じ得る。さらに、搬送路区画部材は上記支軸に支持されているから、上記不完全装着状態において搬送路区画部材が垂下した状態となることがある。その場合、仮にユーザーがシートカセットに上方から押さえつけるような力を加えた場合、当該シートカセットに積載されたシートが搬送路区画部材に相対的に圧接され、当該搬送路区画部材が損傷を受けるおそれがある。
【0018】
しかし、上記アシスト部材は、上記距離Laで表される位置に配置され、上記距離Lb及び距離Lcとの間にLa>Lc−Lbの関係があるから、上記不完全装着状態が生じている場合であっても、シートカセットの前壁部先端が搬送路区画部材よりも挿抜方向抜脱向き前側に位置するときは、上記圧接が回避される。また、上記不完全装着状態において、搬送路区画部材が上記シートカセットの前壁部先端と積載されたシートの先端との間に位置するときは、搬送路区画部材が上記前壁部に接触するが、当該前壁部が前述のように傾倒しているから、搬送路区画部材は、上記前壁部の傾斜面に接触し、当該傾斜面に沿って回動される。すなわち、上記圧接が回避される。なお、シートカセットが筐体から若干引き抜かれた状態であっても、シートカセットがアシスト部材と係合している場合は、当該アシスト部材によってシートカセットの上下方向の変位が規制され、上記圧接は生じない。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、開放された搬送路が復帰されるための特別の機構は不要であり、ジャム処理終了後にユーザーが上記シートカセットを筐体に再び挿入するだけで上記搬送路が復帰する。したがって、ユーザーにとって簡単にジャム処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、複合機10のプリンタ部11の構造を模式的に示す図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の要部拡大図である。
【図4】図4は、給紙カセット15の挿抜の要領を模式的に示す図である。
【図5】図5は、給紙カセット15が抜脱される際の問題点を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ本発明の好ましい実施形態が説明される。
【0022】
[複合機の概略構成]
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【0024】
同図が示すように、複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備えており、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。したがって、スキャナ部12の詳細な構成の説明は省略される。
【0025】
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11の正面側に開口13(請求項に記載された「挿抜口」に相当)が形成されている。この開口13を通じて給紙カセット14及び給紙カセット15(請求項に記載された「シートカセット」に相当)がプリンタ部11に装着される。給紙カセット14、15は、定形の矩形の記録用紙16(請求項に記載された「シート」に相当)を保持することができる(図2参照)。この記録用紙16は、給紙カセット14又は給紙カセット15からプリンタ部11内へ選択的に供給される。プリンタ部11へ供給された記録用紙16は、記録部17(図2参照)によって画像が記録された後に給紙カセット15の上面18に排出される。この上面18は、排紙トレイ18として機能する。なお、本実施形態では2種類の給紙カセット14、15が設けられているが、給紙カセット14が省略されていてもよい。
【0026】
複合機10は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。プリンタ部11は、この外部情報機器から受信した印刷データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、記録用紙16に画像を記録する。複合機10の正面上部に操作パネル19が設けられている。操作パネル19は、各種情報を表示するディスプレイ及び情報の入力を受け付ける入力キーを備えている。複合機10は、操作パネル19から入力された指示情報又は外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいて動作する。
【0027】
[プリンタ部概説]
【0028】
以下、図2及び図3が参照されつつ、プリンタ部11の構成が説明される。なお、これらの図では、説明の簡略化のために給紙カセット14の図示が省略されている。
【0029】
図2が示すように、プリンタ部11は、筐体20を有し、この筐体20に給紙トレイ15及び記録部17その他の機能部品が配置されている。筐体29内に給紙トレイ15から引き出された記録用紙16が搬送される搬送路21が形成されている。この搬送路21は、後述される第1パス22及び第2パス23を備えている。これにより、当該複合機10は、記録用紙16を表裏反転して表裏両面に画像を記録することができるようになっている。具体的には、給紙トレイ15から引き出された記録用紙16は、第1端(たとえば先端)を先頭として第1パス22に沿って搬送され、第1面(たとえば表面)に画像が記録される。もし裏面にも画像が記録される場合は、当該記録用紙16は、第2端(後端)を先頭として第1パス22から第2パス23へスイッチバックされ、再び第1パス22へ戻される。これにより、当該記録用紙16は表裏反転され、記録部17によって裏面に画像が記録される。
【0030】
[用紙搬送系]
【0031】
第1パス22は、給紙トレイ15から排紙トレイ18へ至る経路である。給紙トレイ15から排紙トレイ18へ向かう搬送方向第1向きに沿って、上流側から順に中間ローラ対24、PFローラ対25、記録部17、EXローラ対27及びSBローラ対28(請求項に記載された「スイッチバックローラ対」に相当)が配置されている。
【0032】
第1パス22は、給紙トレイ15から上方へ向かって湾曲しながらUターンする所謂Uターンパスを形成している。中間ローラ対24は、第1パス22が湾曲している箇所に配置されている。PFローラ対25は、第1パス22が湾曲し終わった箇所に配置されている。第1パス22は、湾曲してUターンした後は直線状の所謂ストレートパスを形成している。このストレートパスに、記録部17、EXローラ対27及びSBローラ対28がそれぞれ配置されている。中間ローラ対24、PFローラ対25及びEXローラ対27は、第1パス22において記録用紙16を搬送方向第1向きへ搬送する。SBローラ対28は、第1パス22と第2パス23との間に形成された分岐口よりも搬送方向第1向き下流側に配置されている。SBローラ対28は、正転又は逆転することにより、第1パス22において記録用紙16を搬送方向第1向き又は当該向きと反対の搬送方向第2向きへ選択的に搬送する。
【0033】
第1パス22に沿ってEXローラ対27とSBローラ対28との間にスイッチバックフラップ26が設けられている。このスイッチバックフラップ26は、回動中心軸52に回動可能に支持されている。この回動中心軸52は、EXローラ対27とSBローラ対28との間の下流位置29(すなわち、上記分岐口)よりもEXローラ対27側(搬送方向第2向き下流側)に配置されている。このため、スイッチバックフラップ26が図2が示すように第1パス22に対して平行な姿勢となったときは、記録用紙16が第1パス22に沿って搬送方向第1向きに案内される。また、スイッチバックフラップ26が回動中心軸を中心に下方へ回動(同図において時計回りに回動)したときは、記録用紙16がスイッチバックされる際に回動傾斜して記録用紙16の第2端側を第2パス23の方へ矯正する。
【0034】
第2パス23は、第1パス22から分岐して再び第1パス22へ通じている。具体的には、第2パス23は、EXローラ対27とSBローラ対28との間の下流位置29と、給紙トレイ15と中間ローラ対24との間の上流位置30とを接続している。この下流位置29に第1パス22から第2パス23へ分岐する分岐口が形成されている。第2パス23の途中にDXローラ対31が配置されている。DXローラ対31は、第2パス23において記録用紙16を上記分岐口(下流位置29)から上流位置30へ向かって搬送する。
【0035】
第2パス23に沿ってガイド50及びガイド51(請求項に記載された「搬送路区画部材」に相当)が配置されている。本実施形態では、第2パス23は、図2が示すように、上記分岐口(下流位置29)から斜め下方に延びている。ガイド50は、SBローラ対28とDXローラ対31との間に配置され、第2パス23の上壁面の一部を形成している。
【0036】
ガイド51は、ガイド50と対向配置され、SBローラ対28とDXローラ対31との間において第2パス23の下壁面(鉛直方向下側の壁面)の一部を形成している。ガイド51は、支軸53に回動自在に支持されている。本実施形態では、ガイド51は、支軸53に懸架されており、ガイド51は、自重により垂下することができる。また、本実施形態では、支軸53は、スイッチバックローラ対28の回転軸により構成されている。すなわち、支軸53は、上記回転軸と共用されている。もっとも、当該回転軸とは別にガイド51を懸架する軸が設けられていてもよい。
【0037】
ガイド51は、支軸53を中心に時計回りに回転することにより、図2が示すように第2パス23の下壁面の一部を区画する。また、ガイド部材51が支軸53を中心に反時計回りに回転することにより、図3が示すように、第2パス23を開放すると共にさらに給紙カセット15の抜脱向き(矢印44の方向右向き)に回動することができる。
【0038】
本実施形態では、ガイド51は自重により支軸53を中心に回動するが、ガイド51は、支軸53を中心に反時計回りに回動するように付勢されていてもよい。この付勢手段の具体的構造はさまざまであるが、典型的には、ねじりコイルバネが支軸53とガイド51との間に介在される。
【0039】
給紙ローラ32は、給紙トレイ15の上側に配置されている。給紙ローラ32は、アーム33の先端側に回動可能に設けられている。アーム33の基端側は軸34を軸として回動可能に設けられている。アーム33が軸34を中心に回動することにより、給紙ローラ32が給紙トレイ15に対して接離する方向へ移動する。アーム33は、給紙ローラ32の重量により、給紙トレイ15へ近づく向きへ回動される。これにより、給紙トレイ15に積層状態で載置された複数枚の記録用紙16のうち最上位の記録用紙16に給紙ローラ32が接触する。
【0040】
記録部17は、第1パス22の上側に配置されたキャリッジ35と下側に配置されたプラテン36とを有する。キャリッジ35は、インクジェット記録ヘッド37を搭載している。このインクジェット記録ヘッド37は、プラテン36と対向配置されている。搬送方向第1向きと直交する方向(紙面に垂直な方向)にキャリッジ35が往復道されるとき、インクジェット記録ヘッド37からプラテン36に向かって微小なインク滴が選択的に吐出される。吐出されたインク滴は、プラテン36に支持されつつ搬送方向第1向きに送られる記録用紙16に着弾する。このように、記録用紙16の搬送と、キャリッジ35の往復動とが交互に繰り返されることにより、記録用紙16に所望の画像が記録される。
【0041】
[給紙カセット]
【0042】
給紙カセット15は、複数の記録用紙16を保持する。給紙カセット15は、複合機10の背面側(図2における左側)の一部が開口された容器状に形成されている。記録用紙16は、給紙カセット15の内部空間に積層状態で保持される。給紙カセット15は、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙16を収容することができる。給紙カセット22の上面18は、複合機10の正面側(図2における右側)に形成されており、前述のように排紙トレイ18を構成している。
【0043】
給紙カセット15は、トレー状に形成されており、底部38、側壁部39及び前壁部40を備えたカセット本体41と、カセット本体41への記録用紙16の最大積載量43(図2における二点鎖線)を規定する積載規制部材42とを有する。底部38は、矩形の平板からなり、この底部38上に記録用紙16が載置される。側壁部39は、底部38と一体的に形成され、底部38の一対の側縁にそれぞれ立設されている。前壁部40は、底部38の前縁に連続し、一対の側壁部39と連結されている。この前壁部40は、図2が示すように記録用紙16が搬送される向きに傾倒している。したがって、給紙ローラ32によって給紙カセット14から送り出された記録用紙16は、第1端が前壁部40の内面に案内されるように上方へ案内され、第1パス22に進入する。積載規制部材42は、上記側壁部39に取り付けられており、記録用紙16が最大積載量43まで積載されたときに最上位の記録用紙16に当接する。これにより、記録用紙16が最大積載量を超えて給紙カセット15に積載されることはない。
【0044】
給紙カセット15は、筐体20に対して矢印44の方向に沿って挿抜される。図2は、給紙カセット15が筐体20に挿入された状態を示しているが、図3は、給紙カセット15が筐体20から抜脱された状態を示している。図3が示すように、筐体20に給紙カセット15の挿抜を案内するアシスト部材45が固定されている。このアシスト部材45は、同図が示すように略L字状に形成されており、給紙カセット15の側壁部39に当接するようになっている。具体的には、アシスト部材45は、側壁部39と当接する当接面46を備えている。そして、給紙カセット15が挿抜される際に、側壁部39の上面47に当接面46が上方から当接する。なお、アシスト部材45が側壁部39の上面47に上方から当接する面(当接面46)を有するならば、アシスト部材45の外形形状は特に限定されない。
【0045】
本実施形態では、アシスト部材45は、筐体20の所定位置に配置されている。すなわち、アシスト部材45の前側端(上記当接面46の端部)54は、筐体20の壁面55(請求項に記載された「背面基準位置」に相当)と矢印44の方向に距離Laだけ離れている。また、上記ガイド51を支持する支軸53は、上記壁面55と矢印44の方向に距離Lcだけ離れている。さらに、給紙カセット15の前壁部40が前述のように傾斜しているから、給紙カセット15に記録用紙16が積載された状態で、記録用紙16の先端48は、前壁部40の先端49に対して矢印44の方向にずれる。したがって、記録用紙16が給紙カセット15に満載されたとき、すなわち、最大積載量43まで積載されたときは、最上位の記録用紙16の先端は、前壁部40の先端に対して挿抜方向(矢印44の方向)に距離Lbだけずれる。そして、本実施形態では、上記各距離La、Lb、Lcの間に、La<Lc−Lbの関係が成立している。この関係が成立することによる作用効果については後述される。
【0046】
[給紙カセットの挿抜動作]
【0047】
図2ないし図4が示すように、給紙カセット15が筐体20から抜かれると(図3(a)参照)、給紙カセット15がガイド51から離反する。これにより、ガイド51が支軸53を中心に回動し、第2パス23の一部が開放される。このときのガイド51の姿勢が請求項に記載された「第2姿勢」に相当する。また、給紙カセット15が筐体20に挿入されると、給紙カセット15の所定部がガイド51に当接し、このガイド51が給紙カセット15に押圧されて支軸53を中心に回動する。これにより、開放されていた第2パス23が閉じられ、第2パス23が再び区画される。このときのガイド51の姿勢が請求項に記載された「第1姿勢」に相当する。
【0048】
すなわち、ガイド51は、第2パス23を区画する壁面の一部を形成しており、給紙カセット15の挿抜によって第2パス23を開閉する。しかも、図4が示すように、給紙カセット15が抜かれた状態で、ガイド51は、さらに給紙カセット15の抜脱向き(矢印44の方向右向き)に回動することが可能である(図図(b)参照)。同図(b)において二点鎖線で示されたガイド51の姿勢が請求項に記載された「第3姿勢」に相当する。
【0049】
したがって、たとえばジャム処理の際に、給紙カセット15が筐体20の開口13(図1参照)から抜かれると、ガイド51は支軸53を中心に回動して第2姿勢となる。すなわち、ガイド51は、第2パス23を区画する鉛直方向下側の壁面の一部を開放して略垂下状態となる。さらに、ユーザーは、上記開口13から手を挿入してガイド51を複合機10の前面側へ回動させることができる(図4(b)参照)。これにより、ガイド51は第2姿勢から第3姿勢に変位し、ユーザーは、上記開口13から第2パス23が見えるようになる。その結果、ユーザーは、第2パス23にある記録用紙16に対して、複合機10の後方からではなく前方の開口13からアクセスして取り除くことができる。
【0050】
記録用紙16が取り除かれた後は、ユーザーは、給紙カセット15を筐体20に挿入する。図4が示すように、給紙カセット15が筐体20に挿入されることだけにより、ガイド51が第1姿勢に復帰する。すなわち、ガイド51は、給紙カセット15に押圧されて支軸53を中心に回動し、第2パス23を区画する壁面の一部を形成する。
【0051】
この複合機10では、開放された第2パス23が復帰されるために特別の機構が採用されておらず、ジャム処理終了後にユーザーが給紙カセット15を筐体20に再び挿入するだけで第2パス23が復帰する。したがって、ユーザーにとって簡単にジャム処理を行うことができる。
【0052】
本実施形態では、給紙カセット15が筐体20から抜かれると、ガイド51は、自重のみにより第2姿勢まで回動して第2パス23を開放するので、ガイド51を第2姿勢へ変化させるための回動機構がきわめて簡単である。
【0053】
また、ガイド51は、筐体20に挿入された給紙カセット15に下方から持ち上げられるように支持され、第1姿勢に位置決めされる。すなわち、給紙カセット15がガイド51を位置決めすることにより第2パス23が区画されるので、ガイド51の駆動装置が不要であり、ガイド51を回動させる機構が簡単である。
【0054】
さらに、本実施形態では、図3が示すように、アシスト部材45が設けられているので、給紙カセット15の挿抜作業はより円滑なものとなる。その一方で、給紙カセット15が筐体20に対して不完全装着状態となったとき、図5が示すような不具合が生じる可能性がある。つまり、同図が示すように、給紙カセット15が不完全装着状態であれば、もしユーザーが給紙カセット15を上方から押さえつけてしまった場合、垂下したガイド51が給紙カセット15に積載された記録用紙16に相対的に圧接され、ガイド51が破壊ないし損傷を受けるおそれがある。
【0055】
しかし、本実施形態では、上記距離La、Lb及びLcとの間にLa<Lc−Lbの関係があるから、給紙カセット15が不完全装着状態であったとしても上記不具合は生じない。なぜなら、給紙カセット15の前壁部40の先端49がガイド51よりも外側、すなわち矢印44の方向右側に位置するときは、給紙カセット15はガイド51と接触せずに上記圧接が回避される。また、ガイド51が給紙カセット15の前壁部40の先端49と積載された記録用紙16の先端48との間に位置するときは、ガイド51が前壁部40の内面に接触するが、前壁部40が前述のように傾倒しているから、ガイド51は前壁部40に沿って回動し、上記圧接が回避される。なお、給紙カセット15が筐体20から若干引き抜かれた状態であっても、給紙カセット15がアシスト部材45と係合している場合は、アシスト部材45によって給紙カセット15の上下方向の変位が規制されるので、上記圧接は生じない。
【符号の説明】
【0056】
10・・・複合機
11・・・プリンタ部
15・・・給紙カセット
16・・・記録用紙
17・・・記録部
20・・・筐体
21・・・搬送路
22・・・第1パス
23・・・第2パス
28・・・SBローラ対
29・・・下流位置(分岐口)
38・・・底部
39・・・側壁部
40・・・前壁部
41・・・カセット本体
42・・・積載規制部材
43・・・最大積載量
44・・・矢印(挿抜方向)
45・・・アシスト部材
46・・・当接面
47・・・上面
48・・・先端
49・・・先端
51・・・ガイド
52・・・回動中心軸
53・・・支軸
54・・・前側端
55・・・壁面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
当該筐体の挿抜口から挿抜可能に設けられ、搬送路に給送されるシートを保持するシートカセットと、
上記筐体に設けられ、上記搬送路に沿って送られるシートに画像を記録する記録部と、
上記筐体に設けられた支軸に回動可能に支持され、当該支軸を中心に回動することにより、上記搬送路を区画する壁面の一部を形成する第1姿勢と、上記壁面の一部を開放し略垂下状態の第2姿勢と、上記壁面の一部を開放し上記挿抜口に向く第3姿勢との間で姿勢変化可能な搬送路区画部材とを備え、
当該搬送路区画部材は、
上記筐体からシートカセットが抜かれている状態では上記第2姿勢となっており、上記第2姿勢の状態から、上記挿抜口へ挿入されるシートカセットに押圧されることにより上記第1姿勢まで回動する画像記録装置。
【請求項2】
上記搬送路区画部材は、上記シートカセットが上記筐体から抜かれると、自重のみにより上記第2姿勢まで回動する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記搬送路区画部材は、上記筐体に挿入されたシートカセットに下方から当接支持されることにより上記第1姿勢に位置決めされる請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記搬送路は、上記記録部に対向して上記シートを搬送方向へ搬送する第1パスと、当該第1パスにおいて上記記録部によって記録された上記シートを、当該第1パスの上記記録部よりも上記搬送方向の上流側へ再度案内する第2パスとを有し、
上記搬送路区画部材は、上記第2パスを区画する鉛直方向下側の壁面を形成するように構成されている請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記第1パスから上記第2パスへ上記シートを搬送する、正転及び逆転可能なスイッチバックローラ対がさらに設けられており、
上記支軸は、上記スイッチバックローラ対の回転軸と共用されている請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記シートカセットは、上記シートが載置される底部、当該底部に立設された側壁部及び上記シートが給送される向きに傾倒された前壁部と、上記シートの最大積載量を規定する積載規制部材とを備え、
上記シートカセットが挿抜される際に上記側壁部に上方から当接することにより円滑な挿抜動作をアシストするアシスト部材がさらに設けられており、
当該アシスト部材の上記挿抜方向抜脱向き前側端は、上記筐体の背面側基準位置から上記挿抜方向抜脱向きに距離Laの位置に設定されており、
上記シートカセットにシートが満載された状態における当該シートの先端と上記前壁部先端との間の上記挿抜方向の距離をLb、上記背面基準位置と上記支軸との間の上記挿抜方向の距離をLcとしたとき、La>Lc−Lbの関係が成立している請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1318(P2012−1318A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138101(P2010−138101)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】