説明

画像記録装置

【課題】インクにより記録媒体の膨張が発生してもインクの着弾位置をより正確に調節する。
【解決手段】複数のノズルが配列された複数の記録ヘッドからなるラインヘッドと、ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、ヘッドホルダを前記配列の方向である主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、記録媒体がラインヘッドの直下を複数回通過するように記録媒体を搬送する搬送機構と、を具備し、記録媒体がラインヘッドの直下を複数回通過する毎に、ヘッド移動機構によりヘッドホルダを主走査方向に移動させて、記録媒体に画像を記録する画像記録装置であり、ラインヘッドを構成している複数の記録ヘッドのうち、主走査方向の一端側に配置された記録ヘッドに配列されたノズルと、主走査方向の他端側に配置された記録ヘッドに配列されたノズルと、の主走査方向のノズル間距離を変化させるノズル間距離調整機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の短尺な記録ヘッドを並べて配置することにより1つの長尺な記録ヘッドを形成した画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録用紙等の記録媒体に対して記録処理(記録データの記録)をする画像記録装置として、例えば、ラインヘッド方式のインクジェットプリンタが知られている。このようなラインヘッド方式のインクジェットプリンタは、記録媒体が搬送される搬送方向(副走査方向)に直交する方向(主走査方向)に配列したノズル列が記録媒体の幅以上の長さを有する長尺の記録ヘッドからなるラインヘッド、又は記録媒体の幅に満たないノズル列を有する複数の短尺の記録ヘッドを主走査方向に互い違いに(千鳥状に)配置したラインヘッドを有する。ラインヘッドは、インク色毎に配設されており、また、インク色毎のノズル列は、副走査方向に所定の間隔に離間され、かつ記録媒体にノズルが対向するように配設されている。
【0003】
このようなインクジェットプリンタでは、記録媒体をラインヘッドのノズル列方向と略直交する方向に相対的に移動させるだけで、また、記録媒体をラインヘッドの直下に1回通過(1パス)させるだけで、記録媒体の一方の面全体への記録処理を行う。従って、このような画像記録装置は、迅速かつ簡単な動作で記録処理を行うことができる。
【0004】
このようなラインヘッド方式のインクジェットプリンタでは、記録媒体の幅方向(主走査方向)の画像解像度が記録ヘッドのノズルピッチに依存するため、高解像度化しにくいという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1には、ノズルピッチの間隔が比較的広い低解像度のラインヘッドで高解像度の出力を得るために、予め定められた量を移動可能なヘッド微小移動手段が設けられた画像記録装置が開示されている。これは、一般にマルチパスと呼ばれる方式であり、記録媒体がラインヘッドの直下の記録領域を複数回通過されて、1パス毎に記録ヘッドをノズルピッチ以下の微小移動させることで高解像度が得られる。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、マルチパスによる高解像度化に加えて、記録ヘッドの移動量の誤差を低減させるための微小移動機構が設けられた画像記録装置が開示されている。この画像記録装置では、記録ヘッドを移動させる粗動カムの移動誤差情報を予め取得して、その誤差情報に応じて微小移動機構を駆動させることによって、精度の高い記録ヘッドの移動機構を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−310049号公報
【特許文献2】特開2006−56120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
記録媒体に記録を行う際、記録ヘッドのノズルから記録媒体の表面に着弾したインクは、記録媒体の内部に浸透して定着するが、このとき、インクに含まれる水分などの溶剤が記録媒体に吸収されることによって、記録媒体が膨張(伸張)する。特に、ラインヘッド方式のインクジェットプリンタでは、記録媒体の幅方向にわたって一斉に記録するために、記録媒体に対するインクの打ち込み量が多く、急激に記録媒体が膨張(伸張)する。
【0009】
ラインヘッド方式のインクジェットプリンタの場合、副走査方向に色毎にラインヘッドが設けられている。このようなインクジェットプリンタでは、各色のラインヘッドが順次記録媒体に記録を行うため、記録媒体の搬送方向最上流側に位置されたラインヘッドにより記録を行った際、記録媒体が膨張(伸張)し、主走査方向の画素の長さ、言い換えれば主走査方向の画像の画素ピッチ(間隔)が変化してしまう。これにより、搬送方向下流側に位置するラインヘッドが記録する画像とのインクの着弾位置に色重ねのずれが生じ、画質の劣化が生じる。
【0010】
また、マルチパス記録を行う場合は、特定パスでの記録により記録媒体が膨張(伸張)し、特定パスで記録された画像の画素ピッチ及び主走査方向のライン長が、次のパスでの記録までに変化してしまう。これにより、パス間のインク着弾位置が乱れて、画質の劣化が生じる。
【0011】
特許文献1に記載の画像記録装置では、予め定められた量を移動する記録ヘッドの移動機構が設けられているため、記録媒体の膨張による着弾位置の変化に対応して記録ヘッドの移動量を調整することができない。
【0012】
また、特許文献2に記載の画像記録装置では、微小移動機構が設けられており、パス間での記録ヘッドの移動量の微調整が可能である。しかし、ラインヘッドは一体となって移動するため、ノズルピッチや主走査方向のラインヘッド長を変化させることはできず、パス間における記録媒体の膨張(伸張)に応じて着弾位置を合わせることができない。
【0013】
そこで、本発明は、記録媒体へのインク吐出により記録媒体の膨張(伸張)が発生しても、着弾位置をより正確に調整し、精度の高い画像記録を行う画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態は、複数のノズルが配列され、該ノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を記録する複数の記録ヘッドにより構成されたラインヘッドと、該ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、該ヘッドホルダを前記配列の方向である主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、前記記録媒体が前記ラインヘッドの直下を複数回通過するように前記記録媒体を搬送する搬送機構と、を具備し、前記記録媒体が前記ラインヘッドの直下を前記複数回通過する毎に、前記ヘッド移動機構により前記ヘッドホルダを前記主走査方向に移動させて、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、前記ラインヘッドを構成している複数の記録ヘッドのうち、前記主走査方向の一端側に配置された記録ヘッドに配列されたノズルと、前記主走査方向の他端側に配置された記録ヘッドに配列されたノズルと、の主走査方向のノズル間距離を変化させるノズル間距離調整機構を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、記録媒体へのインク吐出により記録媒体の膨張(伸張)が発生しても、着弾位置をより正確に調整し、精度の高い画像記録を行う画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、画像記録装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図2は、画像記録装置の構成を概略的に示す正面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る画像記録装置の画像記録部の構成を示す上面図である。
【図4】図4は、記録ユニットの主走査方向移動機構を概略的に示す側面図である。
【図5】図5(a)並びに図5(b)は、マルチパス記録時の記録ヘッドの移動及び記録された記録媒体を概略的に示す図である。
【図6】図6(a)乃至図6(d)は、マルチパス記録時に記録媒体に記録されるドットを示す図である。
【図7】図7(a)乃至図7(c)は、マルチパス記録時に記録媒体に記録されるドットの位置の補正を示す図である。
【図8】図8は、インクの打ち込みドロップ数及び記録媒体の種類に応じた補正テーブルである。
【図9】図9は、第1の実施形態における一連の画像記録動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2の実施形態における一連の画像記録動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第3の実施形態における記録ユニットの構成を示す上面図である。
【図12】図12は、第4の実施形態における記録ユニットの構成を示す上面図である。
【図13】図13は、第4の実施形態における記録ヘッドの配置を概略的に示す上面図である。
【図14】図14(a)乃至図14(d)は、第4の実施形態においてマルチパス記録時に記録媒体に記録されるドットの位置の補正を示す図である。
【図15】図15は、第5の実施形態における記録ユニットの構成を示す上面図である。
【図16】図16は、第5の実施形態における記録ユニットの移動角度を示す図である。
【図17】図17(a)並びに図17(b)は、第5の実施形態においてマルチパス記録時に記録媒体に記録されるドットの位置の補正を示す図である。
【図18】図18(a)乃至図18(c)は、第5の実施形態においてマルチパス記録時に記録媒体に記録されるドットの位置の補正を示す図である。の伸張によるドット位置の変化が生じた後に改善された着弾位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、記録媒体の搬送方向を副走査方向、この副走査方向に対し直交する方向を主走査方向と称する。
【0018】
まず、画像記録装置1の全体構成を、図1並びに図2を参照して説明する。
図1は、画像記録装置1の構成を概念的に示すブロック図である。また、図2は、画像記録装置1の構成を概略的に示す正面図である。
【0019】
画像記録装置1は、図1に示すように、搬送機構4と、画像記録部6と、制御部7と、給送トレイ9と、収納トレイ15と、クリーニング部25と、を有している。搬送機構4は、給送トレイ9に複数枚重なった状態で保持されている記録媒体8を1枚ずつ引き出して収納トレイ15に収納するまで、記録媒体8の搬送を行う。画像記録部6は、搬送機構4により記録媒体8が搬送される搬送経路上に設けられており、この搬送経路を通過する記録媒体8に画像記録を行う。制御部7は、搬送機構4及び画像記録部6を始めとして、画像記録装置1全体の制御を行う。この制御部7には、外部機器である上位装置20が通信可能に接続されている。クリーニング部25は、記録媒体8に安定して画像を記録するために、適宜、画像記録部6のクリーニングを行う。
【0020】
画像記録装置1の上述の各構成部について、詳しく説明する。
まず、給送トレイ9の構成について説明する。
給送トレイ9は、例えば、給送カセットで構成されており、内部に記録用紙などの記録媒体8を収容する。本実施形態では、給送トレイ9は、図2に示すように、画像記録装置1の最下部に配置されている。
【0021】
次に、搬送機構4の構成について説明する。
搬送機構4は、図1に示すように、給送駆動部10と、帯電ローラ2と、記録媒体検出部3と、搬送駆動部14と、ドラム11と、搬送情報生成部13と、除電器5と、剥離部12と、排出駆動部16と、を有している。また、搬送機構4は、図2に示すように、給送トレイ9から取り出された記録媒体8が収納トレイ15に収納されるまで、記録媒体8が、給送駆動部10、帯電ローラ2、ドラム11、剥離部12及び排出駆動部16の順に搬送される搬送経路を構成している。
【0022】
給送駆動部10は、記録媒体8の搬送経路の最上流側に、給送トレイ9に隣接して配置されている。この給送駆動部10は、例えば、給送ローラで構成されており、給送トレイ9内に収容された最上面の記録媒体8に当接して記録媒体8を1枚ずつ取り出し、下流側の搬送経路へと送り出す。
【0023】
帯電ローラ2は、ドラム11の外周面に対向して配置されている。この帯電ローラ2は、給送駆動部10により取り出された記録媒体8をドラム11の外周面に案内すると共に、記録媒体8に電荷を与えることで記録媒体8をドラム11の外周面に電気的に吸着させる。
【0024】
記録媒体検出部3は、記録媒体8の搬送経路において画像記録部6よりも上流側に、ドラム11の外周面に対向して設けられている。この記録媒体検出部3は、例えば、光学式の反射型センサ、又は静電容量型センサ等を有しており、記録媒体8の搬送方向(副走査方向)における、例えば、記録媒体8の先端と後端との少なくとも一方を検出する。また、記録媒体検出部3は、主走査方向に沿って配設された長尺のラインセンサを有し、記録媒体8の先端もしくは後端のみならず、主走査方向の記録媒体位置も検出可能な構成としても良い。記録媒体検出部3により検出された検出情報は、制御部7に送信される。
【0025】
ドラム11は、帯電ローラ2により案内された記録媒体8を巻き付けて保持搬送する。ドラム11は、中空アルミ円筒と両側面のフランジとを有しており、円筒表面は絶縁プラスチックコートされている。また、ドラム11自体は、スラスト方向(主走査方向)のガタが発生しないように構成されている。このドラム11は、ドラム11の回転軸によって、装置フレームに回転可能に軸支されており、この回転軸には、搬送駆動部14のモータが連結されている。この搬送駆動部14のモータを駆動させることによって、ドラム11は、図2に矢印で示した方向に一定速度で回転する。
【0026】
また、ドラム11は、ドラム11の相対的回転角を検出する搬送情報生成部13を有している。搬送情報生成部13は、例えば、ロータリエンコーダで構成されており、ドラム11が所定量回転する毎に、記録媒体8の搬送情報としてのパルス信号を生成して、制御部7へ出力する。従って、このパルス信号は、記録媒体8の搬送距離を示している。
【0027】
除電器5は、記録媒体8の搬送経路において、画像記録部6に対向しているドラム面よりも下流側に、ドラム11の外周面に対向して設けられている。この除電器5は、例えば、交流放電することで、記録媒体8に帯電した電荷を除去し、ドラム11に電気的に吸着された記録媒体8の吸着力をなくす(除電する)。
【0028】
剥離部12は、その先端部が、ドラム11の外周面に対して、記録媒体8の厚みに最小限の余裕をもたせた僅かな間隙を有するようにして配置されている。この剥離部12は、除電器5により吸着力がなくなりドラム11上からわずかに浮き上がった記録媒体8をドラム11から剥離すると共に、収納トレイ15へ向かう搬送経路に記録媒体8を案内する。
【0029】
排出駆動部16は、例えば、排出ローラ対で構成されており、剥離部12によりドラム11から剥離された記録媒体8を挟持して、収納トレイ15へ排出する。
【0030】
次に、収納トレイ15について説明する。
収納トレイ15は、搬送機構4の搬送経路の下流側に設けられている。この収納トレイ15は、排出駆動部16により排出された記録媒体8を収納する。
【0031】
次に、画像記録部6について説明する。
画像記録部6は、図1に示すように、少なくとも1つの記録ユニット17−1〜17−nを有している(nは自然数)。また、各記録ユニット17−1〜17−nは、記録ヘッド18−1〜18−mを有している(mは、2以上の整数)。さらに、記録ユニット17−1〜17−nは、それぞれ、対応する記録ヘッド駆動部19−1〜19−nを有している。各記録ユニット17−1〜17−nの記録ヘッド18−1〜18−mには、図5(a)並びに図5(b)に示すように、インクを吐出する複数のノズル18aが所定のノズルピッチdで直線状に形成(配列)されており、対応する記録ヘッド駆動部19−1〜19−nによる駆動信号に従って、複数のノズル18aからインク滴を吐出して記録媒体8に画像を記録する。
【0032】
すなわち、画像記録時には、記録ヘッド駆動部19−1〜19−nは、制御部7から記録データ情報に基づいて送信された制御信号に従って、複数のノズル18aの各々を駆動させる駆動信号を、対応する記録ヘッド駆動部19−1〜19−nの記録ヘッド18−1〜18−mに出力する。
【0033】
次に、制御部7について説明する。
制御部7は、搬送機構4と画像記録部6とをそれぞれ制御して、記録媒体8への記録処理(画像記録)を行わせる。この制御部7は、制御機能及び演算機能を有する演算処理装置における、例えば、マイクロプロセッサユニット(MPU)を含む図示しない処理回路と、記憶部21と、記録ヘッド制御部22と、記録データ制御部23と、記録ユニット移動制御部24と、を少なくとも有している。
【0034】
記憶部21は、制御プログラムを記憶するリードオンリーメモリ(ROM)と、MPUのワークメモリとなるランダムアクセスメモリ(RAM)と、記録処理の指定情報を記憶しておく不揮発性メモリと、を有している。記憶部21は、制御プログラムを記憶していると共に、画像記録装置1の制御に関する設定値等と画像記録情報とを記憶しておく。記録ヘッド制御部22は、記憶部21から読み出した設定値に基づき記録ヘッド18−1〜18−mの制御を行う。なお、制御部7は、MPUが制御プログラムを記憶部21から読み出して実行することによって、画像記録装置1の各構成要素の制御を行い、記録ヘッド18−1〜18−mのインク吐出タイミングを制御する記録ヘッド制御部22としての機能を有する。
【0035】
記録ヘッド制御部22は、上位装置20からのジョブ情報に基づきインク吐出タイミングを制御し、記録媒体8に記録処理を行うときの副走査方向の記録位置を決定する制御を行う。
【0036】
記録データ制御部23は、上位装置20から受信した画像データを、ジョブ情報と、予め記憶部21に記憶されているジョブ情報に対応した設定値とに基づいて、記録処理可能な記録データへと変換する処理を行って、画像記録部6へ転送する。ここでの画像データ変換処理は、ノズル列毎のデータ分配やデータ位置合わせ、記録濃度変換などを含んでいる。
【0037】
上位装置20は、例えば、コンピュータであり、画像記録装置1に記録処理を行わせるユーザによって操作される。この上位装置20は、画像記録装置1の外部機器として、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)等を介して接続されている。上位装置20は、画像記録装置1に対し、記録処理に関する情報としてジョブ情報を通知する。ここで、ジョブ情報には、記録媒体8に対し記録処理を行う際の画像記録情報が含まれる。この画像記録情報には、記録媒体サイズ、記録速度、マルチパス記録回数、記録画像サイズ情報、解像度、濃度、色情報、上位装置20のメモリに保持した画像データのアドレス情報等が含まれる。
【0038】
また、上位装置20は、R(レッド)、G(グリーン)、及びB(ブルー)からなる多階調画像データを、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、及びY(イエロー)からなる画像記録装置1の出力可能な階調値に変換する擬似階調変換処理などの画像データ処理を行う。上位装置20は、この画像データを画像記録装置1へ転送する。
上位装置20から通知されたジョブ情報は、制御部7の記憶部21に記録される。
【0039】
記録ユニット移動制御部24は、後述するマルチパス記録を行う際に、パス記録の間に記録ユニット17を主走査方向に移動制御する。この移動量は、画像の解像度に応じて適宜設定する。
【0040】
次に、1枚の記録媒体8への一連の画像記録動作について説明する。
制御部7は、上位装置20からの記録処理開始の指示を受信すると、搬送機構4の搬送駆動部14を制御して、ドラム11の回転を開始させる。続いて、制御部7は、給送駆動部10を制御して、給送トレイ9内の記録媒体8を1枚ずつピックアップして、搬送機構4へ受け渡して搬送させる。
【0041】
搬送機構4へ受け渡された記録媒体8は、帯電ローラ2によって帯電され、ドラム11に吸着保持されて、ドラム11の回転に伴って搬送される。そして、記録媒体検出部3により、例えば、搬送経路上を搬送されている記録媒体8の先端が検出される。すると、記録媒体検出部3は、その先端を検出したことを示す先端エッジ信号を制御部7へ出力する。制御部7は、この先端エッジ信号を受信して、この信号を記録処理タイミングの生成のためのトリガ信号として利用する。
【0042】
制御部7は、記録ヘッド18−1〜18−mによるインク吐出を開始させるためのタイミング情報として、記録媒体検出部3の先端、後端位置検出位置から、例えば、記録ヘッド18−1〜18−mまでの距離に対応する、搬送情報生成部13で生成される搬送情報であるロータリエンコーダのパルス信号数値を、記憶部21に予め記憶している。
【0043】
制御部7は、記録媒体8の先端エッジ信号を受信した後、後のこのパルス信号を計数する。制御部7の記録ヘッド制御部22は、このパルス信号数値と、予め記憶している距離に対応するパルス信号数値との一致を検出する。そして、この一致を検出したタイミングで、制御部7が、画像記録部6の記録ヘッド駆動部19−1〜19−nを制御して記録ヘッド18−1〜18−mからインクを吐出させて、ドラム11上に吸着されている記録媒体8への記録処理を行わせる。
【0044】
この後、ジョブ情報に含まれるマルチパス記録回数Nに応じてドラム11をN回転させて、N回のマルチパス記録を行う。マルチパス記録については、後述する。
【0045】
このようにして記録処理された後の記録媒体8は、除電器5に対向する位置に搬送され、除電器5により電荷を除去されて、ドラム11への吸着力がなくなる。そして、剥離部12が、吸着力がなくなった記録媒体8をドラム11から剥離して、収納トレイ15に案内する。記録媒体8は、排出駆動部16に挟持されて搬送され、収納トレイ15に収納される。かくして、1枚の記録媒体8への一連の画像記録動作が終了する。
【0046】
なお、以上の説明では、ドラム11への記録媒体8の吸着手段として、帯電ローラ2を用いたが、例えば、ドラム11の円周に複数の貫通穴を設け、ドラム11内を負圧にして記録媒体8をドラム11の外周面に吸着させるようにしてもよい。
【0047】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置1の画像記録部6の構成について、図3並びに図4を参照して詳しく説明する。
【0048】
図3は、第1の実施形態における画像記録部6の記録ユニット17の構成を示す上面図である。なお、図3では、例えば、4色のインクに対応する態様として、C、K、M、Yの色毎の記録ユニット17−1〜17−4が配設されている。すなわち、図3では、記録ユニット17及び対応する記録ヘッド駆動部19の総数は、n=4である。また、図3では、1つの記録ユニット17を構成している記録ヘッド18の総数は、1つの記録ユニット17あたり6個の記録ヘッド18−1〜18−6を搭載し、各記録ユニット17−1〜17−4が同じく6個の記録ヘッド18−1〜18−6を配置しているので、m=6×4=24である。また、図4は、画像記録装置1を記録媒体8の搬送方向からから見た(図2におけるクリーニング部25側から見た)側面図である。
【0049】
記録ユニット17−1〜17−4の構成は同一であるため、以下では、1つの記録ユニット17−1のみについて説明し、記録ユニット17−2〜17−4についての説明は省略する。
【0050】
記録ユニット17−1は、6個の記録ヘッド18−1〜18−6を有している。記録ヘッド18−1〜18−6は、図3に示すように、主走査方向の端部が隣接する記録ヘッド同士で互いに副走査方向に重なるように千鳥状に(互い違いに)配置され、主走査方向において記録可能な全域にわたって途切れなく記録可能な配置とすることでラインヘッドを構成している。
【0051】
また、記録ユニット17−1の各記録ヘッド18−1〜18−6は、図4に示すように、ドラム11の外周面に対向して、記録媒体8の幅方向(主走査方向)に配置されている。ドラム11に吸着された記録媒体8は、記録ユニット17−1に対向して搬送される。簡略化のため、図4では1つの記録ユニット17−1のみを示しているが、他の記録ユニット17−2〜17−4も同様に、ドラム11の周方向に並んで配置されている。
【0052】
図4に示すように、記録ヘッド18−1〜18−3及び記録ヘッド18−4〜18−6は、付勢部材である2つのバネ27−1、27−2で一体的に連結されるヘッドホルダ26−1、26−2にそれぞれに保持されている。
【0053】
本実施形態において、これらヘッドホルダ26−1、26−2は、1ライン分の長さを有するヘッドホルダを2つに分割したヘッドホルダであり、各ヘッドホルダ26−1、26−2が、複数のグループに分割された記録ヘッドをグループ毎に保持している。以下では、記録ヘッド18−1〜18−3を第1の記録ヘッドグループ、記録ヘッド18−4〜18−6を第2の記録ヘッドグループと称する。また、これらヘッドホルダ26−1及び26−2は、図示しない装置フレームに、装置フレームに対して主走査方向にスライド可能に取り付けられている。
【0054】
さらに、主走査方向における連結されたヘッドホルダ26−1及び26−2のそれぞれの外端部には、偏心カム28−1及び28−2が当接している。これら偏心カム28−1及び28−2は、図4に示すように、それぞれ、ステッピングモータ29−1及び29−2に連結されており、ステッピングモータ29−1及び29−2の駆動によって回転する。ヘッドホルダ26−1及び26−2は、それぞれ、偏心カム28−1及び28−2により独立して主走査方向に移動可能である。
【0055】
バネ27−1及び27−2は、ヘッドホルダ26−1と26−2とが互いに離れる方向に付勢する付勢部材である。偏心カム28−1もしくは28−2がヘッドホルダ26−1もしくは26−2から退避する主走査方向に移動したとき、バネ27−1及び27−2の付勢力により偏心カム28−1又は28−2に当接した状態を維持しながら、ヘッドホルダ26−1及び26−2がそれぞれ偏心カム28−1及び28−2に連動して主走査方向に移動する。すなわち、偏心カム28−1、28−2は、記録ユニット17−1(ヘッドホルダ26−1、26−2)を主走査方向にノズルピッチd以下の距離だけ移動させるヘッド移動機構として動作する。マルチパス記録時におけるこの主走査方向の移動については、後述する。
【0056】
各記録ユニット17−1〜17−4は、図3に示すように、記録媒体8の搬送方向である副走査方向に沿って離間して配設されている。これら記録ユニット17−1〜17−4は、搬送経路の前後に配設された位置に対応したタイミングで、搭載している記録ヘッド18−1〜18−24をそれぞれ駆動させることで、記録媒体8への記録処理を行う。
【0057】
記録媒体検出部3で記録媒体8が検出されてから記録ヘッド18−1〜18−24の各々に達するまでの記録媒体8の移動距離は、搬送情報生成部13により搬送情報として生成される。この搬送情報は、搬送情報生成部13によって生成される、記録媒体8の搬送距離に応じたパルス信号数である。このパルス信号を、例えば、600dpiに相当する距離(≒42μm)などの間隔で発生するように設定することで、記録するドットの配置間隔を決定することができる。
【0058】
記録ヘッド駆動部19−1〜19−nは、上位装置20からの記録情報に基づきノズルを選択し、選択したノズルを、制御部7の記録ヘッド制御部22が生成するインク吐出タイミング制御信号により決定されるタイミングで駆動してインク吐出を行わせる。
【0059】
制御部7の記録ユニット移動制御部24は、上位装置20から送信される画像データ及び解像度等の情報から記録媒体8に対する記録処理の位置を決定して、所望の座標に移動されるように、ヘッドホルダ26−1及びヘッドホルダ26−2の移動方向及び距離を決定し、ヘッド移動機構の駆動部としてのステッピングモータ29−1及び29−2に回転指示を与える。
【0060】
記録ユニット17−2〜17−4も、記録ユニット17−1と同様に、記録ユニット移動制御部24の指示により、独立したヘッドホルダ26−3〜26−8がそれぞれ主走査方向に移動する構成となっている。
【0061】
次に、本実施形態のマルチパス記録動作について、図5(a)並びに図5(b)を参照して説明する。
ここで、マルチパス記録とは、解像度をp倍(pは2以上の整数)にするために、つまりノズルピッチdのp倍の密度で画像を記録する(補間記録する)ために、1回目(1パス目)の画像記録後、記録ユニットをd/pだけ主走査方向に移動させて画像を記録し、以下、記録ユニットの移動と画像記録とを繰り返して、ノズルピッチ以上の高解像度の画像記録を行う方式である。
【0062】
以下では、p=2として、2倍の解像度を得る補間記録について説明する。
ドラム11に吸着されて記録ユニット17−1に対向した位置に搬送された記録媒体8には、ドラム11の1回転目に1パス目の記録が行われる。1パス目の記録においては、図5(a)に示すように、主走査方向にノズルピッチdに等しい間隔でインク滴によるドットが記録される。
【0063】
他の記録ユニット17−2〜17−4の同様の動作によって記録媒体8に4色分の記録が行われた後、記録媒体8がドラム11に吸着されたままドラム11がもう1回転して、再び記録ユニット17−1〜17−4に対向する位置に搬送される。そして、記録媒体8への1パス目の記録終了後、記録媒体8が再び記録ユニット17に対向する位置に搬送されるよりも前に、記録ユニット移動制御部24によって、ノズルピッチdの半分となるd/2相当の距離だけ、ヘッド移動機構により、記録ユニット17−1〜17−4が主走査方向に移動される。そして、図5(b)に示すように、同一の記録媒体8に2パス目の記録が行われる。
このようにして、ノズルピッチdの2倍の解像度の補間記録を行うことが可能となる。
【0064】
例えば、ノズルピッチdが300dpiに相当する間隔(≒85μm)とすれば、記録画像は、2パスのマルチパス記録によって、主走査方向に600dpi(≒42μm)で記録可能となる。同様に、1回あたりの主走査方向移動量をノズルピッチのd/p、1枚あたりの記録回数をp回とすることで、ノズルピッチのp倍の解像度の補間記録を行うことが可能である。
【0065】
次に、マルチパス記録でのインクドットの着弾位置と記録媒体8の伸張とについて、図6(a)乃至図6(d)を参照して説明する。図6(a)乃至図6(d)においても、2パスのマルチパス記録を参照して説明する。
以下の説明では、記録媒体8の主走査方向中心位置から主走査方向の画像記録が可能な両端部のノズルまでの距離(以下、中心−端部ノズル間距離と称する)をLとする。
【0066】
図6(a)は、1パス目の画像記録が終了した後にドットが記録された位置を示している。記録されたドットは、ノズルピッチdで等間隔に並んでいる。図6(b)は、2パス目の画像記録が終了した後にドットが記録された位置を示しており、ここでは、記録媒体8の伸張がないと仮定している。記録ユニット17は、1パス目と2パス目との間にノズルピッチdの半分である距離e=d/2だけ主走査方向に移動され、1パス目で記録されたドットの中間に2パス目のドットが記録されている。
【0067】
しかし、記録媒体8は、インクを吸収することで伸張し、1パス目で記録されたドットは、2パス目にはわずかに移動している。図6(c)は、1パス目で記録されたドットの位置が、記録媒体8が伸張することでわずかにずれた状態を示している。このように、記録媒体8は、インクに含まれる水分を吸収することにより伸張することが確認されている。また、記録媒体8の伸張の大きさは、記録時のインクの打ち込み量と記録媒体8の性質に依存することが実験結果から判明している。特に、記録媒体8の種類に関して、コピー用紙などの普通紙ではインク滴による伸張が起きやすく、また、フィルムや特殊なコーティングを施した用紙では伸張はほとんど起きない傾向にある。実験によれば、インク打ち込み量が6.7nl/mmの場合、ある普通紙では約0.03%、A4用紙の297mmでは、90μmの膨張(伸張)が発生した。また、実験によれば、記録媒体8の伸張は中央から両側に向かって発生した。
【0068】
記録媒体8の主走査方向中心位置から主走査方向の画像記録が可能な両端部のノズルによって記録されたドットまでの距離(以下、中心−端部ノズルドット間距離と称する)は、1パス目の記録直後には、図6(a)に示すように、Lである。しかし、2パス目に至る時点での、中心−端部ノズルドット間距離は、インクの吸収により距離αだけ伸張し、図6(c)に示すように、L+αとなっている。
【0069】
図6(d)は、記録媒体8が伸張した後に2パス目の記録処理が行われたドットの位置を示している。1パス目と2パス目で記録されたドットの間隔はeであり、記録媒体8の中心近辺では記録媒体8の伸張の影響をほとんど受けていない。しかし、記録媒体8の一端側(図6(d)における左側)では、記録媒体8が伸張したことにより、1パス目と2パス目で記録されたドットの間隔はe+αとなっており、所望のドット位置から距離αだけ誤差が生じている。同様に、記録媒体8の他端側(図6(d)における右側)では、1パス目と2パス目で記録されたドットの間隔はe−αとなっており、所望のドット位置から距離αだけ誤差が生じている。
【0070】
記録媒体8にドットが不均一に記録された場合、ドットの重なりによる濃度の上昇より、隙間による濃度の下降が顕著に現れるため、巨視的に見た場合の濃度が下がる傾向にある。図6(d)に示されるように、記録媒体8の中心のドットが均一に、かつ、両端部のドットが不均一に記録されることで、この記録媒体8は、端部に近づくほど濃度が低下する状態となっている。
【0071】
次に、本実施形態における、マルチパス記録での記録媒体8の伸張によるドット位置の補正について、図7(a)乃至図7(c)を参照して説明する。
【0072】
図7(a)は、1パス目の画像記録が終了した後にドットが記録された位置を示している。記録されたドットは、ノズルピッチdで等間隔に並んでいる。図7(b)は、1パス目で記録されたドットの位置が、記録媒体8が伸張することでわずかにずれた状態を示している。記録媒体8の中心−端部ノズルドット間距離は、1パス目の記録直後には、図7(a)に示すように、中心−端部ノズル間距離Lに等しい。しかし、2パス目に至る時点での、中心−端部ノズルドット間距離は、インクの吸収により距離αだけ伸張し、図7(b)に示すように、L+αとなっている。
【0073】
図7(c)は、2パス目の画像記録が終了した後にドットが記録された位置を示している。記録ユニット17は、6つの記録ユニット17−1〜17−6が一体的に構成されている場合、1パス目と2パス目の間にノズルピッチdの半分の距離であるe=d/2だけ移動される。
【0074】
本実施形態では、記録ユニット17は、第1の記録ヘッドグループを保持している第1のヘッドホルダ26−1と、第2の記録ヘッドグループを保持している第2のヘッドホルダ26−2とに分割されており、それぞれのヘッドホルダ26−1及び26−2は、偏心カム28−1、28−2からなるヘッド移動機構を兼ねたノズル間距離調整機構により、互いに独立して主走査方向に移動可能である。一方のヘッドホルダ26−1は、1パス目と2パス目との間に、ノズルピッチdの半分の距離であるe=d/2から記録媒体8の片側伸張量であるαのさらに半分のα/2だけ補正された距離である、e−α/2だけ主走査方向に移動する。つまり、ステッピングモータ29−1は、偏心カム28−1がe−α/2の距離だけ移動する量を、1パス目と2パス目との間に回転される。同様に、他方のヘッドホルダ26−2は、1パス目と2パス目との間にノズルピッチdの半分の距離であるe=d/2から記録媒体8の片側伸張量であるαのさらに半分のα/2だけ補正された距離である、e+α/2だけ主走査方向に移動する。
【0075】
このような動作により、ノズル間距離調整機構が、ヘッドホルダ26−1に保持されている第1の記録ヘッドグループのうち、ヘッドホルダ26−1の主走査方向の一端側に配置された記録ヘッド18−1、18−3に配列されたノズルと、記録ヘッド18−2に配列されたノズルとのノズル間距離を変化させて、各パスのインク着弾位置をより正確に調整し、精度の高い画像記録を行うことができる。ヘッドホルダ26−2に保持されている第2の記録ヘッドグループに関しても同様である。
【0076】
記録媒体8の伸張量は、インク及び記録媒体8の特性とインクの打ち込み量とに依存している。そのため、インク及び記録媒体8の組み合わせ特性とインクの打ち込み量とに応じて第1のヘッドホルダ26−1と第2のヘッドホルダ26−2の移動量をそれぞれどの程度移動するかを工場出荷時に予め調整し、記録データ生成部にテーブル等で記憶しておけば、インク打ち込み量に応じて最適な位置での画像記録を行うことができる。
【0077】
図8は、補正テーブルの一例である。インクの打ち込み量は、記録データ生成部で記録した画像データから記録ドロップ数を算出することにより求めることができる。
【0078】
次に、第1の実施形態における一連の画像記録動作について、図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る画像記録装置1による画像記録の実行のために制御部7が行う制御処理を示すフローチャートである。図9に示した処理は、制御部7の不図示の不揮発性メモリに予め記憶させておいた制御プログラムをMPUが読み出して実行することにより実現される。
【0079】
まず、制御部7が、記録処理を行うパス数Nを1パス目(すなわち、N=1)に設定する(ステップS1)。次に、制御部7からの制御信号を受信した記録ヘッド駆動部19−1〜19−nが、対応する記録ヘッド18−1〜18−mに駆動信号を送信して、同期信号に同期してNパス目の画像記録を行う(ステップS2)。そして、制御部7が、最終パスの画像記録が終了したか否かを判断する(ステップS3)。
【0080】
ステップS3において、画像記録処理が行われたパスが最終パスであったならば(YES)、制御部7は、各ヘッドホルダ26−1、26−2を初期位置へと移動させる(ステップS4)。そして、制御部7は、記録処理を行うパス数Nを再び1パス目(すなわち、N=1)に設定して(ステップS5)、画像記録を続ける。さらに、制御部7は、最終ページの画像記録が終了したか否かを判断する(ステップS6)。ステップS6において、最終ページの画像記録が終了したと判断されたならば(YES)、制御部7は、処理を終了する。ステップS6において、最終ページの画像記録が終了していないと判断されたならば(NO)、制御部7は、ステップS2に戻り処理を継続する。
【0081】
ステップS3において、最終パスの画像記録が終了していないと判断されたならば(NO)、制御部7は、画像記録処理が行われたNパス目の画像データから記録ドロップ数を算出して、インク打ち込み量を算出する(ステップS7)。そして、制御部7は、テーブルから打ち込み量に応じた各ヘッドホルダ26−1、26−2の移動量を取得する(ステップS8)。さらに、制御部7は、取得した各々のヘッドホルダの移動量に応じて各ヘッドホルダ26−1、26−2を移動する(ステップS9)。そして、制御部7は、次に記録処理を行うパス数Nを1増加して(つまり、N=N+1)(ステップS10)、ステップS2に戻り処理を継続する。
【0082】
以上の処理を行うことにより、本実施形態の画像記録装置は、マルチパス記録による高解像度化を実現すると共に、記録ユニット全体を移動した場合に記録媒体8の伸張によって生じるドット位置の誤差αが、記録ユニットを2つのヘッドホルダに分割し、独立して移動させることで、ドット位置の誤差をα/2に抑えることができ、かくして、濃度ムラの少ない画像記録が可能な画像記録装置を提供することができる。
【0083】
なお、本実施形態では、1つの記録ユニット17−1を2つのヘッドホルダ26−1、26−2で分割して保持しているが、ヘッドホルダの数はこれに限定されるものではなく、2以上の自然数Q個のヘッドホルダに分割してもよい。その場合のドット位置の誤差は、α/Qになる。
【0084】
また、本実施形態では、C、K、M、Yの4色の記録ユニット17−1〜17−4を有する画像記録部6について説明したが、記録ユニットの数はこれに限定されるものではなく、1つの記録ユニット17−1のみを有し、単色の画像を記録する画像記録部6を有する構成であってもよい。
【0085】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について、図10を参照して説明する。
第2の実施形態では、画像記録装置1の基本構成は第1の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。以下では、本実施形態において、第1の実施形態と異なる構成及び動作について説明する。
【0086】
本実施形態では、記録媒体検出部3は、例えば、主走査方向に沿って配設された長尺の接触型イメージセンサ(CIS)であり、記録媒体8の先端及び後端の副走査方向の位置を検出する機能に併せて、主走査方向の両端を検出する機能も有している。上述のように、記録媒体8は、ドットの形成により主走査方向に伸縮するので、この記録媒体検出部3は、主走査方向の画像解像度程度の検出精度を有することが好ましい。
【0087】
図10は、本実施形態に係る画像記録装置1による画像記録の実行のために制御部7が行う制御処理を示すフローチャートである。
【0088】
まず、制御部7が、記録処理を行うパス数Nを1パス目(すなわち、N=1)に設定する(ステップS11)。次に、制御部7が、記録媒体検出部3により、記録媒体8の主走査方向の両端を検出する(ステップS12)。そして、制御部7が、同期信号に同期してNパス目の画像記録を行う(ステップS13)。さらに、制御部7が、最終パスの画像記録が終了したか否かを判断する(ステップS14)。
【0089】
ステップS14において、画像記録処理が行われたパスが最終パスであったならば(YES)、制御部7は、各ヘッドホルダ26−1、26−2を初期位置へと移動させる(ステップS15)。そして、制御部7は、記録処理を行うパス数Nを再び1パス目(すなわち、N=1)に設定して(ステップS16)、画像記録を続ける。さらに、制御部7は、最終ページの画像記録が終了したか否か判断する(ステップS17)。ステップS17において、最終ページの画像記録が終了したと判断されたならば(YES)、制御部7は、処理を終了する。ステップS17において、最終ページの画像記録が終了していないと判断されたならば(NO)、制御部7は、ステップS13に戻り処理を継続する。
【0090】
ステップS14において、最終パスの画像記録が終了していないと判断されたならば(NO)、制御部7は、再び記録媒体8の主走査方向の両端の位置を検出する(ステップS18)。さらに、制御部7は、ステップS12にて検出された記録媒体8の端部位置と、ステップS18にて検出された記録媒体8の端部位置とから、主走査方向への記録媒体8の伸張量を算出する(ステップS19)。
【0091】
次に、制御部7は、算出された記録媒体8の伸張量から各ヘッドホルダ26−1、26−2の移動量を算出する(ステップS20)。次に、制御部7は、算出された各ヘッドホルダ26−1、26−2の移動量に応じて、各ヘッドホルダ26−1、26−2を移動させる(ステップS21)。そして、制御部7は、次に記録処理を行うパス数Nを1増加して(つまりN=N+1)(ステップS22)、ステップS13に戻り処理を継続する。
【0092】
以上のような処理により、主走査方向の記録媒体の端部位置を検出し、主走査方向の記録媒体の伸張量を算出することで、インクの打ち込み量と記録媒体の種類とから図8に示すようなテーブルを用いて伸張量を推定する手段と比較してより正確に記録媒体の伸張量を求めることができ、かくして、さらに濃度ムラの少ない画像記録が可能な画像記録装置を提供することができる。
【0093】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について、図11を参照して説明する。
第3の実施形態では、画像記録装置1の基本構成は第1の実施形態と同様であり、記録ユニット17の構成が第1の実施形態と異なっている。
【0094】
図11は、本実施形態における画像記録部6の記録ユニット17−1の構成を示す上面図である。ここでは、1つの記録ユニット17−1のみを示すが、他の記録ユニットも同様に構成され、図3と同様に、副走査方向に沿って離間して配設されている。
【0095】
1色のインクに対応する記録ユニット17−1は、6個の記録ヘッド18−1〜18−6を有している。これら記録ヘッド18−1〜18−6は、第1の実施形態と同様に、ラインヘッドを構成している。また、記録ヘッド18−1〜18−3を含む第1の記録ヘッドグループ及び記録ヘッド18−4〜18−6を含む第2の記録ヘッドグループは、それぞれ、ヘッドホルダ26−1及び26−2により保持されている。
【0096】
本実施形態では、ヘッドホルダ26−1とヘッドホルダ26−2とは、その主走査方向の端部が、ヘッドホルダサブ移動機構としての圧電素子30により連結されている。この圧電素子30は、記録ユニット移動制御部24からの指示により変形することで、ヘッドホルダ26−1とヘッドホルダ26−2との主走査方向の相対位置を制御する。
【0097】
ヘッドホルダ26−1は、圧電素子30が配置されている主走査方向の一端側と対向している他端側で、偏心カム28−1と当接している。また、ヘッドホルダ26−2は、圧電素子が配置されている主走査方向の一端側と対向している他端側で、バネ27−1と連結されている。これにより、ヘッドホルダ26−1は、ヘッドホルダ26−2との主走査方向の相対位置を維持した状態で、記録ユニット移動制御部24からの指示により主走査方向へ移動可能である。
【0098】
以上の構成によれば、マルチパスの画像記録による解像度を高めるための比較的大きな記録ユニットの主走査方向への移動は、ヘッド移動機構としての偏心カムを使用し、記録媒体の伸張に応じた比較的小さな記録ユニットの主走査方向への移動は、ヘッドホルダサブ移動機構としての圧電素子を使うことにより、より精度良く濃度ムラの少ない画像記録が可能な画像記録装置を提供することができる。
【0099】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について、図12乃至図14を参照して説明する。
第4の実施形態でも、画像記録装置1の基本構成は第1の実施形態と同様であり、記録ユニット17の構成が第1の実施形態と異なっている。
【0100】
図12は、本実施形態における画像記録部6の記録ユニット17−1の構成を示す上面図である。ここでは、1つの記録ユニット17−1のみを示すが、他の記録ユニットも同様に構成され、図3と同様に、副走査方向に沿って離間して配設されている。
【0101】
本実施形態では、1つのヘッドホルダ26−1が、複数の記録ヘッド18−1〜18−6を、主走査方向の端部が隣接する記録ヘッド同士で互いに副走査方向に重なるような千鳥状の配置で保持している。さらに、ヘッドホルダ26−1には、主走査方向の一端側にヘッド移動機構としての偏心カム28−1が当接しており、また、他端側には付勢部材であるバネ27−1が連結されている。このような構成により、ヘッドホルダ26−1は、偏心カム28−1により主走査方向に移動可能である。また、偏心カム28−1がヘッドホルダ26−1より退避する方向に移動したとき、ヘッドホルダ26−1が偏心カム28−1に連動し、当接された状態を維持して主走査方向に移動する。
【0102】
さらに、記録ヘッド18−1〜18−6の一端側には、それぞれ、ノズル間距離調整機構としての偏心カム31−1〜31−6が当接されており、各記録ヘッド18−1〜18−6は主走査方向に微小移動可能である。また、記録ヘッド18−1〜18−6の他端側には、それぞれ、付勢部材である板バネ32−1〜32−6が連結されている。板バネ32−1は、ヘッドホルダ26−1と連結され付勢されており、偏心カム31−1が記録ヘッド18−1より退避する方向に移動した時に記録ヘッド18−1が偏心カム31−1に連動し、当接された状態を維持して移動するように構成されている。
記録ヘッド18−2〜18−6と、偏心カム31−2〜31−6と、板バネ32−2〜32−6の構成は、それぞれ記録ヘッド18−1と、偏心カム31−1と、板バネ32−1の構成と同一であるため、説明は省略する。
【0103】
以上の構成によれば、記録ユニット17−1は、ヘッドホルダ26−1がヘッド移動機構により主走査方向に移動可能であるのに加え、偏心カム31−1〜31−6からなるノズル間距離調整機構により、各記録ヘッド18−1〜18−6が独立して主走査方向に微小量だけ移動可能である。
なお、ここでは、ノズル間距離調整機構として偏心カムが使用されているが、例えば、圧電素子のような異なる種類のアクチュエータを使用してもよい。
【0104】
各色の記録ユニット17−1〜17−4は、搬送経路の前後に配設された位置に対応したタイミングで記録ヘッド18−1〜18−24を各々駆動させることで、記録媒体8への記録処理を行う。
【0105】
図13は、第4の実施形態における各記録ヘッド18−1〜18−6の配置を概略的に示す上面図である。
距離Lは、記録ヘッド18−1〜18−6による主走査方向の記録可能範囲の中心位置から、記録ヘッド18−1〜18−6による主走査方向の記録可能範囲の両端部位置までの距離とする。
【0106】
記録ヘッド18−1〜18−6は、図13に示されるように、隣接する記録ヘッド(例えば、記録ヘッド18−1と記録ヘッド18−2)間で主走査方向に互いにL/3の距離だけ離れた位置に配置されている。
【0107】
次に、第4の実施形態における、マルチパス記録での記録媒体8の伸張によるドット位置の補正について、図14(a)乃至図14(d)を参照して説明する。図14(a)乃至図14(d)は、ドットの位置の誤差が最も顕著に表れる記録ヘッド18−6により吐出されたドットの位置を示している。
【0108】
図14(a)は、1パス目の画像記録が終了した後にドットが記録された位置を示している。図14(b)は、1パス目で記録されたドットの位置が、記録媒体8が伸張することでわずかにずれた状態を示している。記録媒体8の主走査方向の画像記録が可能な最端部のノズルによって記録されたドットは、記録媒体8の伸張により2パス目に至る時点では、記録媒体8の端部方向へ距離αだけずれた位置となっている。同様に、記録ヘッド18−6の中心のノズルにより記録されたドットと、記録ヘッド18−6の一端側(図12並びに図13における左側)のノズルにより記録されたドットは、2パス目に至る時点では、記録媒体8の端部方向へ、それぞれ、距離5α/6及び距離2α/3だけずれた位置となっている。
【0109】
図14(c)は、複数の記録ヘッド18−1〜18−6が個々に主走査方向に移動することなく、ヘッドホルダ26−1全体を主走査方向に移動させて2パス目の記録処理を行ったときのドットの位置を示している。ヘッドホルダ26−1は、1パス目の記録処理の後、主走査方向にノズルピッチdの半分の距離であるe=d/2だけ移動して記録処理され、2パス目で記録処理されるドットは、1パス目で記録されたドットの位置から距離eだけ離れたところに位置する。ただし、1パス目で記録されたドットは、2パス目の記録処理までに記録媒体8が伸張することで、位置がずれ、記録媒体8上に1パス目で記録されたドットと2パス目で記録されたドットとの距離は、eとはわずかに異なる距離となっている。
【0110】
具体的には、記録ヘッド18−6によって記録されたドットは、記録媒体8の端部に近い側においては、1パス目と2パス目で距離e−αだけ離れている。また、記録ヘッド18−6の中央部で記録されたドットは、1パス目と2パス目で距離e−(5α/6)だけ、記録ヘッド18−6の記録媒体8の中央部に近い側の端部で記録処理されたドットは、1パス目と2パス目で距離e−(2α/3)だけ離れている。
【0111】
図14(d)は、1パス目の記録処理の後、ヘッドホルダ26−1を主走査方向に距離eだけ移動させ、さらに、記録ヘッド18−6を主走査方向に距離−(5α/6)だけ移動させて2パス目の記録処理を行ったときの1パス目及び2パス目のドットの記録位置を示している。1パス目及び2パス目で記録されたドットの距離は、記録ヘッド18−6の中央では、距離eだけ離れており、また、記録ヘッド18−6の両端部では、それぞれ、距離e−(α/6)及び距離e+(α/6)だけ離れている。
【0112】
その他の記録ヘッド18−1〜18−5は、記録ヘッド18−6と同様に、1パス目と2パス目との間に、各記録ヘッド18−1〜18−5の中心におけるドットの位置が距離eだけ離れた位置に記録されるように移動される。
【0113】
記録媒体8の伸張量は、インク及び記録媒体8の特性とインクの打ち込み量とに依存している。そのため、第1の実施形態と同様に、これらに応じた調整量を予め設定しておけば、インク打ち込み量に応じて最適な補正を行うことができる。
【0114】
以上のように、ヘッドホルダ26−1を1パス目と2パス目の間にノズルピッチdの半分である距離e=d/2だけ移動させて、さらに、記録媒体8の伸張による1パス目の記録ドットの移動に応じた量だけ、各記録ヘッド18−1〜18−6を移動させることにより、最大でαであった記録媒体8の伸張量である記録位置の誤差をα/6まで低減させることができる。
【0115】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態の構成について、図15乃至図18を参照して説明する。
第5の実施形態でも、画像記録装置1の基本構成は第1の実施形態と同様であり、記録ユニット17の構成が第1の実施形態と異なっている。
【0116】
図15は、本実施形態における画像記録部6の記録ユニット17−1の構成を示す上面図である。ここでは、1つの記録ユニット17−1のみを示すが、他の記録ユニットも同様に構成され、図3と同様に、副走査方向に沿って離間して配設されている。
【0117】
本実施形態においても、第4の実施形態と同様に、1つのヘッドホルダ26−1が、複数の記録ヘッド18−1〜18−6を、主走査方向の端部が隣接する記録ヘッド同士で互いに副走査方向に重なるような千鳥状の配置で保持している。さらに、ヘッドホルダ26−1には、主走査方向の一端側にヘッド移動機構としての偏心カム28−1が当接しており、また、他端側にバネ27−1が連結されている。
【0118】
本実施形態では、ヘッドホルダ26−1には、副走査方向の一端側に、ヘッドホルダ回動部材としての偏心カム33−1が当接されており、また、他端側に、付勢部材であるバネ27−2が取り付けられている。ヘッドホルダ26−1は、このヘッドホルダ26−1に設けられた回動軸34によって、主走査方向及び副走査方向により構成される平面上を回動可能である。
【0119】
ヘッドホルダ26−1は、バネ27−2を介して図示しない本体フレームと連結され付勢されており、偏心カム33−1がヘッドホルダ26−1より退避する方向に移動したときにヘッドホルダ26−1が偏心カム33−1に連動し、当接された状態を維持して移動するように構成されている。つまり、本実施形態では、偏心カム28−1、33−1からなるノズル間距離調整機構が設けられている。
【0120】
次に、第5の実施形態における記録ユニット17−1の角度調整について、図16並びに図17を参照して説明する。
1回の記録処理で最も多くのインクを記録媒体8に記録処理した場合に、記録媒体8が伸張し、記録媒体8の中心−端部ノズルドット間距離の変化量は、αmaxで表され、これは、予め実験により求められている。
【0121】
本実施形態では、図16並びに図17に示すように、ヘッドホルダ26−1が記録媒体8の搬送方向(副走査方向)に直交する線から予めθmaxの角度だけ傾けられた状態で、1パス目の記録処理が行われる。θmaxは、記録媒体8の中心−端部ノズル間距離Lと、上述の最大の伸張量αmaxとにより、以下の式で求められる。
θmax=cos−1(L/(L+αmax)) (式1)
記録媒体8の中心−端部ノズルドット間距離は、1パス目の記録直後には、中心−端部ノズル間距離Lに等しい。しかし、2パス目に至る時点での、中心−端部ノズルドット間距離は、インクの吸収により距離だけα伸張し、L+αとなっている。
【0122】
ヘッドホルダ26−1は、1パス目の記録処理の後、主走査方向にノズルピッチdの半分である距離e=d/2だけ移動する。さらに、本実施形態では、ヘッドホルダ26−1は、1パス目の記録処理の後、記録媒体8の中心−端部ノズルドット間距離がL+αとなるように回動される。
【0123】
2パス目の記録処理が行われる際に、主走査方向からヘッドホルダ26−1の角度θ1は、以下の式で表される。
θ1=cos−1((L+α)/(L+αmax)) (式2)
すなわち、1パス目と2パス目との記録処理の間に、ヘッドホルダ26−1は、θ2=θmax−θ1の角度だけ回動される。
【0124】
次に、第5の実施形態におけるドット位置の誤差について、図16乃至図18(c)を参照して説明する。
1パス目の記録時において、ヘッドホルダ26−1が角度θmax傾いた状態で画像記録が行われる。図17(a)では、角度θmaxとドット位置とを図16に対応させて示しているが、実際には、ヘッドホルダ26−1の角度に応じてノズル毎の記録タイミングが調整されるので、図18(a)に示すように、記録媒体8には、主走査方向に水平となるように1パス目の記録が行われる。図18(a)では、記録媒体8の中心−端部ノズル間距離はLとなっている。
【0125】
図18(b)は、1パス目で記録されたドットの位置が、記録媒体8が伸張することでわずかにずれた状態を示している。記録媒体8の中心−端部ノズルドット間距離は、1パス目の記録直後には、上述のように中心−端部ノズル間距離Lに等しい。しかし、2パス目に至る時点での、中心−端部ノズルドット間距離は、インクの吸収により距離αだけ伸張し、L+αとなっている。
【0126】
2パス目の記録時において、ヘッドホルダ26−1は、1パス目と2パス目との間にノズルピッチdの半分である距離e=d/2だけ移動されている。さらに、ヘッドホルダ26−1は、角度θmaxから角度θ1に回動される。そして、2パス目の画像記録が行われる。図17(b)では、角度θ1とドット位置とを図16に対応させて示しているが、実際には、ヘッドホルダ26−1の角度に応じてノズル毎の記録タイミングが調整されるので、図18(c)に示すように、記録媒体8には、主走査方向に水平となるように2パス目の記録が行われる。
【0127】
図18(b)における記録媒体8の中心−端部ノズルドット間距離は、L+αとなっている。また、1パス目と2パス目とで記録されたドットの位置は、記録媒体8における主走査方向の位置によらず一律に距離eとなっている。
これにより、記録媒体8の伸張によって発生した、最大でαであった1パス目と2パス目とのドットの形成位置の誤差が解消され、良好な画像記録を行うことができる。
【0128】
なお、上述の実施形態においては、ヘッドホルダを微小移動させる手段としてカムを挙げたが、これに限らず、リニアアクチュエータを用い、ヘッドホルダを主走査方向に微小移動させてもよい。
【0129】
また、上述の実施形態においては、マルチパス方式を用いたラインヘッド方式のインクジェットプリンタを例として挙げたが、これに限ることなく、マルチパスを行わず記録媒体を1パスさせるのみで記録を行うラインヘッド方式のインクジェットプリンタに用いてもよく、1パス目から2パス目への移行に伴う動作を、搬送方向最上流に位置するラインヘッドから搬送方向の次のラインヘッドへ搬送されるまでに行うようにしてもよい。
【0130】
また、上述の実施形態においては、ヘッドホルダを主走査方向の中心を基準に広げるように移動させているが、これに限らず、例えば、上位機種からの画像データより、主走査方向の記録率の違い(偏り)を検出し、その検出結果に基づき、分割されたヘッドホルダの位置を各々補正してもよい。
【0131】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな改良並びに変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1…画像記録装置、2…帯電ローラ、3…記録媒体検出部、4…搬送機構、5…徐電器、6…画像記録部、7…制御部、8…記録媒体、9…給送トレイ、10…給送駆動部、11…ドラム、12…剥離部、13…搬送情報生成部、14…搬送駆動部、15…収納トレイ、16…排出駆動部、17−1〜17−n…記録ユニット、18−1〜18−m…記録ヘッド、19−1〜19−n…記録ヘッド駆動部、20…上位装置、21…記憶部、22…記録ヘッド制御部、23…記録データ制御部、24…記録ユニット移動制御部、25…クリーニング部、26−1〜26−8…ヘッドホルダ、27−1〜27−8…バネ、28−1〜28−8…偏心カム、29−1、29−2…ステッピングモータ、30…圧電素子、31−1〜31−6…偏心カム、32−1〜32−6…板バネ、33−1…偏心カム、34…回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列され、該ノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を記録する複数の記録ヘッドにより構成されたラインヘッドと、
該ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、
該ヘッドホルダを前記配列の方向である主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、
前記記録媒体が前記ラインヘッドの直下を複数回通過するように前記記録媒体を搬送する搬送機構と、
を具備し、
前記記録媒体が前記ラインヘッドの直下を前記複数回通過する毎に、前記ヘッド移動機構により前記ヘッドホルダを前記主走査方向に移動させて、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
前記ラインヘッドを構成している複数の記録ヘッドのうち、前記主走査方向の一端側に配置された記録ヘッドに配列されたノズルと、前記主走査方向の他端側に配置された記録ヘッドに配列されたノズルと、の主走査方向のノズル間距離を変化させるノズル間距離調整機構を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記ノズル間距離調整機構は、前記ヘッド移動機構を兼ねていることを特徴とする請求項1の画像記録装置。
【請求項3】
前記ノズル間距離調節機構は、前記複数の記録ヘッドを複数のグループに分割したグループ毎に設けられていることを特徴とする請求項1又は2の画像記録装置。
【請求項4】
前記ノズル間距離調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられた回動点を中心として前記ヘッドホルダを回動させることにより、ノズル間距離を変化させることを特徴とする請求項1の画像記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体の前記主走査方向の端部位置を検出する記録媒体検出部を有し、
前記記録媒体検出部が、前記記録媒体に画像を記録した後に、前記記録媒体の前記端部位置を検出した結果に応じて、前記ノズル間距離調整機構がノズル間距離を変化させることを特徴とする請求項1の画像記録装置。
【請求項6】
前記ノズル間距離調整機構は、記録媒体の種類に応じて予め設定された記録媒体の伸張量に従って、ノズル間距離を変化させることを特徴とする請求項1の画像記録装置。
【請求項7】
前記ノズル間距離調整機構は、上位装置からの画像データに基づくパス毎の単位面積あたりの記録ドット数に応じて予め設定された記録媒体の伸張量に従って、ノズル間距離を変化させることを特徴とする請求項1の画像記録装置。
【請求項8】
複数のノズルが配列され、該ノズルからインクを吐出して記録媒体に画像を記録する複数の記録ヘッドにより構成されたラインヘッドと、
該ラインヘッドを保持するヘッドホルダと、
該ヘッドホルダを前記配列の方向である主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、
前記記録媒体が前記ラインヘッドの直下を複数回通過するように前記記録媒体を搬送する搬送機構と、
を具備し、
前記記録媒体が前記ラインヘッドの直下を前記複数回通過する毎に、前記ヘッド移動機構により前記ヘッドホルダを前記主走査方向に移動させて、前記記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
前記ラインヘッドを構成している複数の記録ヘッドのうちの1つの記録ヘッドに配列されたノズルと、前記1つの記録ヘッドとは異なる記録ヘッドに配列されたノズルと、の主走査方向のノズル間距離を変化させるノズル間距離調整機構を有する画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−183757(P2012−183757A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49105(P2011−49105)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】