説明

画像記録装置

【課題】端部がシールされた被記録媒体の品質低下を抑制すること。
【解決手段】搬送方向の下流側に搬送される被記録媒体に対して画像を記録するヘッドと、前記ヘッドと対向し、前記被記録媒体を支持面にて裏面から支持する支持部と、前記ヘッドよりも前記搬送方向の一方側に位置し、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送する第1搬送部と、を備え、前記第1搬送部は、前記搬送方向と交差する幅方向における前記被記録媒体の端部を前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜させ、前記第1搬送部は、前記被記録媒体に対して、前記幅方向における前記端部側に向かう張力を付与することが可能であることを特徴とする画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置の一例として、ヘッドに設けられたノズルから被記録媒体に向けてインクを吐出し、画像を印刷するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。プリンターには、用紙だけでなく、種々の部材に対して、画像を印刷することが要求されている。例えば、2枚のプラスチックフィルムを重ねて3方の周縁をシールすることで袋状に成形したものに対して(例えば、特許文献1参照)、画像を印刷することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−156512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、シール時のフィルムの収縮により、シール部近傍に凹凸(波打ち)が生じてしまう場合がある。そのため、シールにより成形された袋に対して画像を印刷する際に、袋をプラテンで裏面から支持するだけでは、袋の凹凸部分において、インクの着弾位置がずれたり、ヘッドと袋が衝突したりして、袋の品質が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明では、端部がシールされた被記録媒体(袋)の品質低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する為の主たる発明は、搬送方向の下流側に搬送される被記録媒体に対して画像を記録するヘッドと、前記ヘッドと対向し、前記被記録媒体を支持面にて裏面から支持する支持部と、前記ヘッドよりも前記搬送方向の一方側に位置し、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送する第1搬送部と、を備え、前記第1搬送部は、前記搬送方向と交差する幅方向における前記被記録媒体の端部を前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜させ、前記第1搬送部は、前記被記録媒体に対して、前記幅方向における前記端部側に向かう張力を付与することが可能である、ことを特徴とする画像記録装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】ヘッドの周辺を上から見た概略図である。
【図3】図3Aは本実施形態で用いる媒体を説明する図であり、図3Bは比較例の印刷方法を説明する図であり、図3Cは本実施形態の印刷方法を説明する図である。
【図4】図4Aから図4Cは実施例1における搬送ユニットの斜視図である。
【図5】搬送ユニットの上面図である。
【図6】図6Aから図6Dは搬送ユニットを搬送方向から見た断面図である。
【図7】図7Aから図7Cは実施例2の搬送ユニットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0009】
即ち、搬送方向の下流側に搬送される被記録媒体に対して画像を記録するヘッドと、前記ヘッドと対向し、前記被記録媒体を支持面にて裏面から支持する支持部と、前記ヘッドよりも前記搬送方向の一方側に位置し、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送する第1搬送部と、を備え、前記第1搬送部は、前記搬送方向と交差する幅方向における前記被記録媒体の端部を前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜させ、前記第1搬送部は、前記被記録媒体に対して、前記幅方向における前記端部側に向かう張力を付与することが可能である、ことを特徴とする画像記録装置である。
このような画像記録装置によれば、画像を記録する被記録媒体部位の平坦性を高めることができ、被記録媒体の品質低下を抑制することができる。
【0010】
かかる画像記録装置であって、前記第1搬送部は、前記ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に位置し、前記ヘッドよりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送する第2搬送部を備え、前記第2搬送部は、前記搬送方向と交差する幅方向における前記被記録媒体の端部を前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜させ、前記第2搬送部は、前記被記録媒体に対して、前記幅方向における前記端部側に向かう張力を付与することが可能であること。
このような画像記録装置によれば、画像を記録する被記録媒体部位の平坦性を高めることができ、被記録媒体の品質低下を抑制することができる。
【0011】
かかる画像記録装置であって、前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、一対のローラーで前記被記録媒体の前記端部を挟持しつつ、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送し、前記一対のローラーの接触面が、前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜していること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体の幅方向の端部を支持面に対してヘッド側とは反対側に傾斜させることができる。
【0012】
かかる画像記録装置であって、前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、前記被記録媒体の前記幅方向における一方側の端部を挟持する前記一対のローラーを備え、前記一対のローラーはそれぞれ前記搬送方向の前記下流側に対して開いた姿勢で設けられていること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体に対して幅方向における端部側に向かう張力を付与することができる。
【0013】
かかる画像記録装置であって、前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、前記被記録媒体の前記幅方向における両側の各端部を挟持する前記一対のローラーを2組備え、前記一対のローラーはそれぞれ前記搬送方向の前記下流側に対して開いた姿勢で設けられていること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体に対して幅方向における端部側に向かう張力を付与することができる。
【0014】
かかる画像記録装置であって、前記一対のローラーのうちの一方のローラーは、当該一方のローラーの軸方向に第1ばねを介して移動可能であり、側面に傾斜部を備え、前記一対のローラーのうちの他方のローラーは、当該他方のローラーの軸方向と交差する方向に第2ばねを介して移動可能であり、前記一対のローラーが前記被記録媒体の前記端部を挟持しない時、前記他方のローラーは、前記第2ばねの復元力により前記傾斜部に当接した状態で前記一方のローラーに近付きつつ、前記一方のローラーを前記軸方向の前記端部側とは反対側に移動させ、前記一対のローラーが前記被記録媒体の前記端部を挟持する時、前記他方のローラーが前記傾斜部から離れ、前記一方のローラーは前記第1ばねの復元力により前記軸方向の前記端部側に移動すること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体に対して、幅方向における端部側に向かう張力を付与することができる。
【0015】
かかる画像記録装置であって、前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、前記被記録媒体の前記幅方向における両側の各端部を挟持する前記一対のローラーを2組備え、前記幅方向における少なくとも一方側の前記一対のローラーは、前記被記録媒体の前記幅方向の長さに応じて、前記幅方向に移動可能であること。
このような画像記録装置によれば、種々のサイズの被記録媒体の平坦性を高めることができる。
【0016】
かかる画像記録装置であって、前記第1搬送部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置し、前記被記録媒体の前記端部を表面側から押さえるガイド部を備え、前記ガイド部では、前記搬送方向の前記下流側の部位が前記上流側の部位よりも、前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜していること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体が第1搬送部をスムーズに通過することができ、被記録媒体の詰まりを防止することができる。
【0017】
かかる画像記録装置であって、前記被記録媒体は、第1フィルムと第2フィルムを重ねて前記幅方向における端部をシールしたものであること。
このような画像記録装置によれば、凹凸が生じている虞のある被記録媒体であっても、被記録媒体を平坦な状態にして画像を記録することができる。
【0018】
かかる画像記録装置であって、前記被記録媒体の前記端部の前記支持面に対する傾斜角度は、15度以上45度以下であること。
このような画像記録装置によれば、画像を記録する被記録媒体部位をより確実に平坦にすることができる。
【0019】
===印刷システム===
画像記録装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2は、ヘッド41の周辺を上から見た概略図である。なお、図2では、上から見たノズルの配置を仮想的に示す。
【0020】
コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
プリンター1内のコントローラー10は、プリンター1における全体的な制御を行うためのものである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60との間でデータの送受信を行う。CPU12は、プリンター1の全体的な制御を行うための演算処理装置であり、ユニット制御回路14を介して各ユニットを制御する。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視し、その検出結果をコントローラー10に出力するためのものである。
【0021】
搬送ユニット20は、被記録媒体(以下、媒体)を印刷可能な位置に給紙し、ヘッド41に対して媒体を搬送方向の下流側に搬送するためのものである。また、本実施形態の搬送ユニット20は、媒体の幅方向(搬送方向と交差する方向)における端部をヘッド41とは反対側の下方に傾斜させ、且つ、媒体に対して幅方向の外側に向かう張力を付与する(詳細は後述)。
【0022】
キャリッジユニット30は、キャリッジ31に搭載されたヘッド41を移動方向(搬送方向と交差する方向)に移動するためのものである。
ヘッドユニット40は、媒体にインクを吐出するヘッド41を有し、媒体に画像を印刷するためのものである。ヘッド41の下面には、インクの色(イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック)ごとに、インクを吐出する複数のノズルが搬送方向に所定の間隔おきに並んだノズル列(YMCK)が設けられている。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張・収縮させることによりノズルからインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0023】
このような構成のプリンター1において、キャリッジ31によりヘッド41が移動方向に移動しながらインクを吐出する吐出動作と、搬送ユニット20により媒体が搬送方向の下流側に搬送される搬送動作と、が交互に繰り返される。その結果、媒体上に2次元の画像が印刷(記録)される。
【0024】
===シールに起因する問題===
図3Aは、本実施形態で用いる媒体Sを説明する図であり、図3Bは、比較例の印刷方法を説明する図であり、図3Cは、本実施形態の印刷方法を説明する図である。本実施形態では、図3Aに示すように、第1フィルムf1と第2フィルムf2を重ねて、3方の周縁、即ち、幅方向における両端部Sa,Sbと底部Scをシールした袋(三方シール袋)を、画像を印刷する媒体Sとして用いる。このような袋は、シールされていない頂部Sdから内容物が入れられ、最後に頂部Sdがシールされることにより、内容物を密封する包装材として使用される。
【0025】
第1フィルムf1と第2フィルムf2は、それぞれ、基材層とシーラント層を有し、各フィルムf1,f2のシーラント層が対向するように2枚のフィルムf1,f2が重ねられた状態で、3方の周縁Sa,Sb,Scがシールされる。具体的には、重ねられた2枚のフィルムf1,f2を熱板で挟む等して加熱・加圧することにより、シーラント層を溶融し、2枚のフィルムf1,f2を融着する。こうして、2枚のフィルムf1,f2は、3方の周縁がシールされた袋に成形される。
【0026】
なお、基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),アルミニウム箔(Al),ナイロン(Ny)等が挙げられ、これらを積層したフィルムであっても、単層フィルムであってもよい。シーラント層としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、熱融着性を有するものであればよい。
【0027】
ただし、シール時の温度管理が悪く、シール時にフィルムf1,f2を加熱する温度が高過ぎると、シール部(2枚のフィルムf1,f2が融着している部位)が他の部位に比べて収縮してしまうことがある。そうすると、シール部と他の部位との境界にて、凹凸(波打ち)が生じてしまう。
【0028】
通常のプリンターでは、ヘッド41と対向可能な位置に配置されたプラテン70が平坦な上面にて媒体Sの裏面(印刷面とは反対側の面)を支持した状態で、印刷が行われる。そうすることで、ヘッド41のノズル面(下面)と媒体Sとの間隔(プラテンギャップ)を一定にすることができ、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができる。
【0029】
しかし、本実施形態で用いる媒体S(三方シール袋)には、シール時に凹凸が生じている場合がある。そのため、図3Bに示すように、プラテン70が媒体Sを裏面から支持するだけでは、媒体Sを平坦にすることが出来ず、媒体Sが部分的にヘッド41側に突出してしまう。そうすると、ヘッド41のノズル面と媒体Sとの間隔が一定でないため、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができずに、印刷画像の画質が劣化してしまう。また、ヘッド41と媒体Sが衝突し、媒体Sが汚れたり、媒体Sにシワが寄ったりしてしまう。
【0030】
そこで、本実施形態のプリンター1では、図3Cに示すように、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sb、即ち、シール時に生じた凹凸部を含む媒体部位を、媒体Sの支持面に対してヘッド41側とは反対側の下方に傾斜させ(幅方向のより外側の部位が下方に位置するように傾斜させ)、且つ、媒体Sに対して、幅方向の端部側、即ち、媒体Sの外側に向かう張力を付与する。
【0031】
媒体Sの凹凸部を下方に傾斜させることで、ヘッド41側に突出する媒体部位の位置を下げることができ、また、媒体Sを幅方向に引っ張ることで、媒体Sの凹凸度合いを小さくすることができる。つまり、下方に傾斜させない媒体部位の平坦性を高めることができる。そして、本実施形態では、媒体Sのうち、下方に傾斜させる部位(端部)を非印刷領域とし、下方に傾斜させない部位を印刷領域とする。従って、印刷領域となる媒体部位とヘッド41のノズル面との間隔が一定となり、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができ、また、媒体Sとヘッド41の衝突を防止することができる。
【0032】
また、媒体Sの形態を三方シール袋に限定することなく、例えば、フィルムを2つ折りして2方の周縁をシールした二方シール袋や、開閉可能なチャックが設けられた袋や、スタンディング袋などでもよい。即ち、搬送方向と交差する幅方向における少なくとも一方側の端部がシールされている媒体Sであれば、シール部近傍に凹凸が生じている虞があるため、本発明が有効となる。
【0033】
===実施例1:搬送ユニット20===
図4Aから図4Cは、実施例1における搬送ユニット20の斜視図であり、図5は、搬送ユニット20の上面図であり、図6Aから図6Dは、搬送ユニット20を搬送方向から見た断面図である。なお、図6Aは図5における位置aa’の断面図であり、図6Bは位置bb’の断面図であり、図6Cは位置cc’の断面図であり、図6Dは位置dd’の断面図である。また、媒体Sの幅方向とヘッド41の移動方向を同一の方向とする。
【0034】
実施例1の搬送ユニット20は、シール時に媒体Sに生じる凹凸の問題を解消するために、媒体Sの幅方向の両端部Sa,Sbを他の部位よりも下方に傾斜させ、且つ、媒体Sに対して幅方向の外側(端部側)に向かう張力を付与する。なお、シール時に生じた凹凸部を含む媒体部位が下方に傾斜するように、図5に示すように、凹凸が生じている部位よりも内側の位置を媒体Sの傾斜位置(折り位置)とする。また、説明のため、傾斜位置よりも内側の媒体部位、即ち、下方に傾斜させない印刷領域となる媒体部位の面の位置(支持面に相当)を、「基準面」と呼ぶ。
【0035】
そのために、実施例1の搬送ユニット20は、給紙ローラー21a,21bと、上流側ローラー22a,22bと、下流側ローラー23a,23bと、プラテン24a,24bと、押さえガイド25a,25bと、を有する。各部は幅方向の左右で対称の構成になっている。また、幅方向左側の給紙ローラー21bやプラテン24b等は、媒体Sの幅方向の長さに応じて、幅方向に移動可能になっている。
【0036】
給紙ローラー21a,21b、上流側ローラー22a,22b、及び、下流側ローラー23a,23bは、それぞれ、媒体Sの幅方向右側の端部Saを挟持する1対のローラーと媒体Sの幅方向左側の端部Sbを挟持する1対のローラーから構成され、1対のローラーを2組ずつ有する。よって、搬送ユニット20は、1対のローラーを合計6組有することになる。なお、1対のローラーのうちの一方のローラーを駆動ローラーにし、他方のローラーを従動ローラーにしてもよいし、両方のローラーを駆動ローラーにしてもよい。
【0037】
また、給紙ローラー21a,21bは、給紙ステージ71から搬送ユニット20に用紙Sを給紙するためのものである。給紙ローラー21a,21bをそれぞれ構成する一対のローラーの接触面(媒体Sを挟持する面)は、基準面上に位置し、水平である。また、図5に示すように、幅方向右側の給紙ローラー21aと幅方向左側の給紙ローラー21bは、共に軸と交差する面が搬送方向に沿い、互いに平行となる姿勢で配置されている。
【0038】
上流側ローラー22a,22b(第1搬送部に相当)は、ヘッド41よりも搬送方向の上流側に位置し、媒体Sを搬送方向の下流側に搬送するためのものである。上流側ローラー22a,22bをそれぞれ構成する一対のローラーの接触面やローラーの軸は、図6Dに示すように、基準面に対してヘッド41側とは反対側の下方に角度θ1で傾斜している。詳しく言えば、幅方向のより外側の部位が下方に位置するように、上流側ローラー22a,22bは傾斜している。この上流側ローラー22a,22bの傾斜角度θ1が、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを下方に傾斜させる角度に相当する。なお、本実施形態では、傾斜角度θ1を30度とするが、これに限らない。
【0039】
また、図5に示すように、幅方向右側の上流側ローラー22aと幅方向左側の上流側ローラー22bは、共に軸と交差する面が搬送方向に沿わず、互いに平行となっていない。幅方向右側の上流側ローラー22aは、下流側の部位が上流側の部位よりも右側に位置するように搬送方向に対して傾いた姿勢(外側に開いた姿勢)で配置され、逆に、幅方向左側の上流側ローラー22bは、下流側の部位が上流側の部位よりも左側に位置するように搬送方向に対して傾いた姿勢(外側に開いた姿勢)で配置されている。なお、本実施形態では、上流側ローラー22a,22bの搬送方向に対する傾斜角度θ3を10度とするが、これに限らない。
【0040】
下流側ローラー23a,23b(第2搬送部に相当)は、ヘッド41よりも搬送方向の下流側に位置し、媒体Sを搬送方向の下流側に搬送するためのものである。下流側ローラー23a,23bをそれぞれ構成する一対のローラーの接触面やローラーの軸も、上流側ローラー22a,22b(図6D)と同様に、基準面に対してヘッド41側とは反対側の下方に角度θ1(30度)で傾斜している。詳しく言えば、幅方向のより外側の部位が下方に位置するように下流側ローラー23a,23bは傾斜している。
【0041】
また、図5に示すように、幅方向右側の下流側ローラー23aは、下流側の部位が上流側の部位よりも右側に位置するように、搬送方向に対して角度θ3(10度)で傾いた姿勢(外側に開いた姿勢)で配置され、幅方向左側の下流側ローラー23bは、下流側の部位が上流側の部位よりも左側に位置するように、搬送方向に対して角度θ3(10度)で傾いた姿勢(外側に開いた姿勢)で配置されている。
【0042】
プラテン24a,24b(支持部に相当)は、媒体Sの傾斜位置よりも内側の部位(即ち、下方に傾斜させない印刷領域となる媒体部位)が、基準面に沿って水平となり、ヘッド41のノズル面との間隔が一定となるように、媒体Sを裏面から支持するためのものであり、図6Dに示すように、基準面に沿う水平部24a1,24b1と、基準面に対して傾斜している傾斜部24a2,24b2とを、有する。図4Aに示すように、水平部24a1,24b1は、下流側ローラー23a,23bよりも下流側の位置から給紙ローラー21a,21bまで搬送方向に延びているのに対して、傾斜部24a2,24b2は、下流側ローラー23a,23bよりも下流側の位置から上流側ローラー22a,22bの直ぐ上流側の位置まで搬送方向に延びている。
【0043】
そして、プラテンの水平部24a1,24b1の上面(支持面に相当)にて、傾斜位置よりも内側の媒体部位が裏面から支持される。また、図6Aに示すように、給紙ステージ71から給紙された直後の媒体Sが水平部24a1,24b1と押さえガイド25a,25bの間に挟まれるように、水平部24a1,24b1では、図5に示すように、搬送方向上流側の端部の幅方向の長さが他の部位の幅方向の長さよりも長くなっている。
【0044】
また、プラテンの傾斜部24a2,24b2は、上流側ローラー22a,22bや下流側ローラー23a,23bをそれぞれ構成する一対のローラーのうち、下方のローラー(例えば、図6Dのローラー22a2,22b2)の軸を支持する。そのため、上流側ローラー22a,22bや下流側ローラー23a,23bが所定の角度θ1で傾斜するように、傾斜部24a2,24b2は水平部24a1,24b1や基準面に対して所定の角度(90度−θ1)で傾斜している。
【0045】
押さえガイド25a,25bは、基準面に対して角度θ1で傾斜している上流側ローラー22a,22b(図6D)が媒体Sを挟持し易いように、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを表面側(印刷面側)から押さえ、媒体Sの端部Sa,Sbを事前に傾斜させておくためのものである。そのため、押さえガイド25a,25bは、給紙ローラー21a,21bと上流側ローラー22a,22bとの間で搬送方向に延び、また、プラテンの水平部24a1,24b1よりも上方、且つ、幅方向の外側(媒体Sの端部側)に位置する。
【0046】
図6Aから図6Cに示すように、押さえガイド25a、25bは、搬送方向上流側から下流側にかけて徐々に下方に傾斜し、基準面に対する傾斜角度が徐々に大きくなっている(θ2<θ1)。詳しく言えば、幅方向のより外側の部位が下方に位置するように押さえガイド25a,25bは傾斜している。そして、図6Cに示すように、押さえガイド25a,25bにおける搬送方向下流側端部の基準面に対する傾斜角度θ1が、上流側ローラー22a,22bの基準面に対する傾斜角度θ1と等しくなっている。
【0047】
次に、媒体Sの給紙・搬送動作と印刷動作の流れについて説明する。まず、プリンター1のコントローラー10が、媒体Sの幅方向の長さに応じて、幅方向の左側に位置する給紙ローラー21b,上流側ローラー22b,下流側ローラー23b,プラテン24b,押さえガイド25bを幅方向に移動させる。その後、給紙ローラー21a,21bが給紙ステージ71から搬送ユニット20に媒体Sを給紙する。給紙ローラー21a,21bを通過した媒体Sは、まず、図6Aに示すように、押さえガイド25a,25bとプラテンの水平部24a1,24b1の間を通過する。この時、媒体Sの全域が基準面に沿って水平となっている。
【0048】
給紙ローラー21a,21bによって媒体Sが搬送方向の下流側に搬送されるにつれて、図6Bに示すように、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは、押さえガイド25a,25bによって表面側から押さえられ、基準面に対して徐々に下方に傾斜する。なお、図5に示す媒体Sの傾斜位置から外側の部位が傾斜するように、プラテンの水平部24a1,24b1の外側端部と媒体Sの傾斜位置が揃うように、幅方向に移動可能なプラテン24bの位置や媒体Sの給紙位置が調整されている。
【0049】
そして、媒体Sが上流側ローラー22a,22bの手前まで搬送されると、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは、図6Cに示すように、上流側ローラー22a,22bと同じ傾斜角度θ1(30度)で基準面に対して下方に傾斜した状態となる。その後、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは、図6Dに示すように、上流側ローラー22a,22bに挟持され、媒体Sの搬送方向における印刷開始位置とヘッド41とが対向する位置まで、媒体Sは搬送方向の下流側に搬送される。
【0050】
こうして、媒体Sの給紙動作が終了すると、コントローラー10は、傾斜位置やプラテン24a,24bよりも内側の媒体部位に対する画像の印刷を開始する。前述のように、ヘッド41が移動方向に移動しながら媒体Sにインクを吐出する吐出動作と、上流側ローラー22a,22bや下流側ローラー23a,23bによって媒体Sが搬送方向の下流側に搬送される搬送動作と、が交互に繰り返される。その結果、媒体Sに画像が印刷される。
【0051】
この時、基準面に対して下方に傾斜している上流側ローラー22a,22b(図6D)に媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは挟持されているため、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sb、即ち、シール部近傍の凹凸部を含む媒体部位は、基準面よりも下方に傾斜する。
また、下流側の部位が外側に開いている上流側ローラー22a,22b(図5)に媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは挟持されているため、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは傾斜している方向に沿って外側に引っ張られ、媒体Sに対して幅方向の外側(端部側)に向かう張力が付与される。
従って、傾斜位置よりも内側の媒体部位、即ち、下方に傾斜させない印刷領域となる媒体部位は、基準面に沿って平坦となる。そのため、ヘッド41のノズル面と媒体Sとの間隔が一定となり、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができ、また、ヘッド41と媒体Sの衝突を防止することができる。
【0052】
また、印刷が進み、媒体Sが更に搬送方向の下流側に搬送されると、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbは下流側ローラー23a,23bにも挟持される。下流側ローラー23a,23bも、上流側ローラー22a,22bと同様に、基準面に対して下方に傾斜し、且つ、下流側の部位が外側に開いている。そのため、下流側ローラー23a,23bも、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを基準面より下方に傾斜させることができ、また、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを傾斜している方向に沿って外側に引っ張り、媒体Sに対して幅方向の外側に向かう張力を付与することができる。
つまり、媒体Sが下流側ローラー23a,23bに挟持されている時も、傾斜位置より内側の媒体部位の平坦性を確保することができる。よって、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができ、ヘッド41と媒体Sの衝突を防止することができる。
【0053】
そして、媒体Sに印刷する画像が完成すると、媒体Sは、下流側ローラー23a,23bにより更に搬送方向の下流側に搬送され、最終的には下流側ローラー23a,23bから放れて排紙される。
【0054】
以上のように、本実施例では、上流側ローラー22a,22b(第1搬送部に相当)と下流側ローラー23a,23b(第2搬送部に相当)が、それぞれ、一対のローラーで媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを挟持しつつ、媒体Sを搬送方向の下流側に搬送する。そして、上流側ローラー22a,22bと下流側ローラー23a,23bをそれぞれ構成する一対のローラーの接触面が、基準面(プラテン24a,24bによる媒体Sの支持面)に対して、ヘッド41側とは反対側の下方に傾斜している。詳しく言えば、一対のローラーの接触面のうち、幅方向のより外側の部位が下方に位置するように、上流側ローラー22a,22bと下流側ローラー23a,23bは傾斜している。
【0055】
そのため、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sb、即ち、シール部近傍に生じている媒体Sの凹凸部を、基準面よりも下方に傾斜させることができ、傾斜位置よりも内側の媒体部位、即ち、印刷領域となる媒体部位の平坦性を高めることができる。従って、ヘッド41のノズル面と媒体Sの間隔を一定にし、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができ、また、ヘッド41と媒体Sの衝突を防止することができるため、媒体Sの品質低下を抑制することができる。
【0056】
また、本実施例では、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbの傾斜角度θ1、及び、上流側ローラー22a,22bや下流側ローラー23a,23bの傾斜角度θ1を、30度としている。このように、基準面に対する媒体Sの端部Sa,Sbの傾斜角度を、15度以上45度以下にすることが好ましい。
【0057】
これは、種々の媒体Sに対する実験の結果、傾斜角度を15度未満にしてしまうと、媒体Sの凹凸部が基準面よりも下方に下がらず、逆に、傾斜角度を45度よりも大きくしてしまうと、傾斜位置で媒体Sが盛り上がってしまう傾向にあったからである。つまり、媒体Sの端部Sa,Sbの傾斜角度を15度以上45度以下にすることで、傾斜位置よりも内側の印刷領域となる媒体部位をより確実に平坦にすることができる。
【0058】
また、本実施例では、図5に示すように、上流側ローラー22a,22bや下流側ローラー23a,23bを、それぞれ、搬送方向の下流側に対して、外側(媒体Sの端部側)に開いた姿勢で設ける。換言すると、幅方向右側の上流側ローラー22a及び下流側ローラー23aの各搬送方向下流側の部位が各上流側の部位よりも幅方向の右側(外側)に位置するように、各ローラー22a,23aを傾けて配置する。逆に、幅方向左側の上流側ローラー22b及び下流側ローラー23bの各搬送方向下流側の部位が各上流側の部位よりも幅方向の左側(外側)に位置するように、各ローラー22b,23bを傾けて配置する。
【0059】
そうすることで、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを傾斜している方向に沿って外側に引っ張ることができ、媒体Sに対して幅方向の外側(端部側)に向かう張力を付与することができる。従って、傾斜位置よりも内側の媒体部位の平坦性を高めることができる。
【0060】
また、本実施例では、媒体Sの幅方向の長さに応じて、幅方向左側の上流側ローラー22b、下流側ローラー23b、給紙ローラー21b、プラテン24b、及び、押さえガイド25bを、幅方向に移動可能とする。そうすることで、上流側ローラー22b及び下流側ローラー23bは、種々のサイズの媒体Sの端部Sa,Sbを挟持することができ、種々のサイズの媒体Sの平坦性を高めることができる。なお、幅方向左側の部材を可変にするに限らず、例えば、幅方向右側の部材を可変にしてもよいし、左右両側の部材を可変にしてもよい。
【0061】
また、本実施例では、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを表面側から押さえるためのものであって、搬送方向下流側の部位が上流側の部位よりも基準面に対してヘッド側とは反対側の下方に傾斜する押さえガイド25a,25b(ガイド部に相当)を、上流側ローラー22a,22bよりも搬送方向上流側の位置に設ける。
【0062】
そうすることで、基準面に対して下方に傾斜する上流側ローラー22a,22bが媒体Sの端部Sa,Sbを挟持し易くなる。つまり、一対のローラーを成す上流側ローラー22a,22bの間を媒体Sがよりスムーズに通過することができ、媒体Sの詰まりを防止することができる。
【0063】
そして、このような構成のプリンター1であれば、第1フィルムf1と第2フィルムf2を重ねて幅方向における少なくとも一方側の端部をシールした媒体S(例えば、三方シール袋)に対して画像を印刷する場合にも、即ち、表面に凹凸が生じている虞のある媒体Sに対して画像を印刷する場合にも、媒体Sを平坦な状態にして画像を印刷することができる。従って、媒体Sの品質低下を抑制することができる。
【0064】
なお、上述の実施例では、媒体Sの幅方向における左右両側の端部Sa,Sbを下方に傾斜させているが、これに限らない。例えば、媒体Sの幅方向における一方側の端部だけがシールされている場合、その一方側の端部だけを下方に傾斜させるようにしてもよい。この場合、幅方向の他方側に位置する上流側ローラー及び下流側ローラーを基準面に対して下方に傾斜させずに、水平に配置するとよい。また、上流側ローラー22a,22bと下流側ローラー23a,23bを共に基準面に対して傾斜させるに限らず、ヘッド41よりも搬送方向の一方側に位置するローラー(第1搬送部に相当)だけを傾斜させてもよい。即ち、媒体Sの端部のうちの搬送方向一方側の部位をローラーで傾斜させることで、媒体Sを平坦にするようにしてもよい。
【0065】
また、上述の実施例では、上流側ローラー22a,22bと下流側ローラー23a,23bを共に搬送方向に対して幅方向の外側に開いた姿勢で配置し、媒体Sに張力を付与しているが、これに限らない。上流側ローラー22a,22bと下流側ローラー23a,23bのうちの一方だけを幅方向の外側に開いた姿勢で配置するようにしてもよい。
また、幅方向の左右に位置する上流側ローラー22a,22bのうちの一方だけを幅方向の外側に開いた姿勢で配置するようにしてもよいし、幅方向の左右に位置する下流側ローラー23a,23bのうちの一方だけを幅方向の外側に開いた姿勢で配置するようにしてもよい。
【0066】
また、上述の実施例では、押さえガイド25a,25bが媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを傾斜させた後に、上流側ローラー22a,22bが媒体Sの端部Sa,Sbを挟持するが、これに限らない。押さえガイド25a,25bを設けずに、上流側ローラー22a,22bが直接に媒体Sの端部Sa,Sbを挟持するようにしてもよい。
【0067】
===実施例2:搬送ユニット20===
図7Aから図7Cは、実施例2の搬送ユニット20を説明する図であり、上流側ローラー22aを搬送方向から見た断面図である。実施例1と実施例2では、上流側ローラー22a,22b、及び、下流側ローラー23a,23bの構造が異なり、媒体Sに対して幅方向の外側に向かう張力を付与する方法が異なるため、主にその点について説明する。
【0068】
また、幅方向の同じ側に位置する上流側ローラーと下流側ローラー(22aと23a、及び、22bと23b)は同じ構造であり、幅方向右側の上流側ローラー22a及び下流側ローラー23aと幅方向左側の上流側ローラー22b及び下流側ローラー23bは、左右対称の構造である。そのため、以下では、幅方向右側の上流側ローラー22aを例に挙げて説明する。
【0069】
実施例2の上流側ローラー22aは、一対のローラーを成す上部ローラー81、及び、下部ローラー82と、上部ローラー81の回転軸である上部軸83と、下部ローラー82の回転軸である下部軸84と、傾斜ばね85と、軸ばね86と、を有する。なお、実施例1と同様に、上流側ローラー22aは基準面に対して下方に傾斜しており(幅方向のより外側の部位が下方に位置するように傾斜しており)、媒体Sの幅方向の端部Sa,Sbを基準面よりも下方に傾斜させることが可能となっている。
【0070】
上部軸83と下部軸84の軸方向における外側端部は、固定壁87に支持され、下部軸84の軸方向における内側端部は、プラテンの傾斜部24a2に支持されている。下部軸84は、固定されているのに対して、上部軸83は、上部ローラー81と共に固定壁87に沿って軸方向と交差する傾斜方向に移動可能である。また、上部軸83の軸方向における外側端部と下部軸84の軸方向における外側端部は、傾斜ばね85を介して接続されている。
【0071】
上部ローラー81は円板形状を成し、上部軸83における上部ローラー81の軸方向の位置は固定されている。一方、下部ローラー82は、側面が傾斜しており、頂部821と傾斜部822と底部823から構成される。傾斜部822は、円板形状の頂部821から円板形状の底部823にかけて、下部ローラー82の内側(軸)に向かって傾斜している。また、下部ローラー82は、下部軸84上を軸方向に移動可能であり、下部ローラー82の頂部821とプラテンの傾斜部24a2が、軸ばね86を介して接続されている。
【0072】
図7Aは、上部ローラー81と下部ローラー82が媒体Sの端部を挟持している時の様子を示す図である。この時、媒体Sの端部が、下部ローラー82の頂部821と底部823に支持されるため、上部ローラー81は、下部ローラー82の傾斜部822に当接せずに、下部ローラー82から離れる方向(傾斜方向の上側)に移動する。そのため、傾斜ばね85は、自然状態から伸び、負荷のかかった状態になる。
【0073】
図7Bは、上部ローラー81と下部ローラー82から媒体Sが放れた直後の状態を示す図であり、図7Cは、図7Bの後の状態を示す図である。上部ローラー81と下部ローラー82の間から媒体Sが無くなると、傾斜ばね85の復元力により、上部ローラー81及び上部軸83は、下部ローラー82に近付く方向(傾斜方向の下側)に移動する。この時、上部ローラー81は下部ローラー82の傾斜部822に当接するため、上部ローラー81は、傾斜方向の下側に向かいつつ、下部ローラー82を軸方向の内側に押し上げる。そのため、プラテンの傾斜部24a2と下部ローラー82の間の軸ばね86は、自然状態から縮み、負荷のかかった状態になる。
【0074】
その後、再び、図7Aに示すように、上部ローラー81と下部ローラー82の間に媒体Sが挿入されると、上部ローラー81は傾斜部822から離れる。そのため、下部ローラー82の押さえが無くなり(下部ローラー82を軸方向の内側に押し上げていた力が無くなり)、下部ローラー82は、軸ばね86の復元力により、軸方向の外側(媒体Sの端部側)に移動する。そのため、軸方向の外側に向かう下部ローラー82によって媒体Sの端部は軸方向の外側に引っ張られ、媒体Sに対して幅方向の外側(端部側)に向かう張力が付与される。従って、傾斜位置よりも内側の媒体部位の平坦性を高めることができる。その結果、媒体S上の正しい位置にインクを着弾させることができ、また、ヘッド41と媒体Sの衝突を防止することができる。
【0075】
以上をまとめると、実施例2では、上流側ローラー22a,22bや下流側ローラー23a,23b(図4)をそれぞれ構成する一対のローラーのうちの一方のローラーである下部ローラー82が、その下部ローラー82の軸方向に沿って軸ばね86(第1ばねに相当)を介して移動可能であり、側面に傾斜部822を備える。また、一対のローラーのうちの他方のローラーである上部ローラー81が、その上部ローラー81の軸方向と交差する傾斜方向に傾斜ばね85(第2ばねに相当)を介して移動可能である。
【0076】
そして、一対のローラーが媒体Sの端部を挟持しない時(図7B・図7C)、上部ローラー81は、傾斜ばね85の復元力により、下部ローラー82の傾斜部822に当接した状態で下部ローラー82に近付きつつ、下部ローラー82を軸方向の内側(媒体Sの端部側とは反対側)に移動させる。
【0077】
そして、一対のローラーが媒体Sの端部を挟持する時(図7A)、上部ローラー81は、下部ローラー82の傾斜部822から離れ、下部ローラー82は、軸ばね86の復元力により軸方向の外側(媒体Sの端部側)に移動する。そのため、軸ばね86の復元力で軸方向の外側に移動する下部ローラー82によって、媒体Sの端部は外側に引っ張られ、媒体Sに対して幅方向の外側(端部側)に向かう張力を付与することができる。従って、傾斜位置よりも内側の媒体部位の平坦性を高めることができる。
【0078】
なお、媒体Sの幅方向の一方側の端部にだけ張力を付与する場合には、幅方向の一方側に位置する上流側ローラー及び下流側ローラーだけを図7に示す構造にすればよく、また、上流側ローラー22a,22bと下流側ローラー23a,23bのうちの一方だけを図7に示す構造にしてもよい。
【0079】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0080】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッドが移動方向に移動しながらインクを吐出する動作と媒体の搬送動作を繰り返すプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、媒体の幅長さに亘って延びた固定されたヘッドの下を媒体が通過する際に、ヘッドが媒体に向けてインクを吐出し、媒体に2次元の画像を印刷するプリンターでもよい。また、例えば、印刷領域に搬送された媒体に対して、ヘッドがX方向に移動しながら画像を印刷する動作とヘッドがY方向に移動する動作を繰り返して、印刷領域の媒体部位に2次元の画像を印刷し、その後、媒体をX方向に搬送して新たな媒体部位を印刷領域に搬送するプリンターでもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21a 給紙ローラー、21b 給紙ローラー、
22a 上流側ローラー、22b 上流側ローラー、23a 下流側ローラー、
23b 下流側ローラー、24a プラテン、24b プラテン、
25a 押さえガイド、25b 押さえガイド、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、40 ヘッドユニット、
41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター、S 媒体、
81 上部ローラー、82 下部ローラー、83 上部軸、84 下部軸、
85 傾斜ばね、86 軸ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向の下流側に搬送される被記録媒体に対して画像を記録するヘッドと、
前記ヘッドと対向し、前記被記録媒体を支持面にて裏面から支持する支持部と、
前記ヘッドよりも前記搬送方向の一方側に位置し、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送する第1搬送部と、
を備え、
前記第1搬送部は、前記搬送方向と交差する幅方向における前記被記録媒体の端部を前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜させ、
前記第1搬送部は、前記被記録媒体に対して、前記幅方向における前記端部側に向かう張力を付与することが可能である、
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記第1搬送部は、前記ヘッドよりも前記搬送方向の上流側に位置し、
前記ヘッドよりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送する第2搬送部を備え、
前記第2搬送部は、前記搬送方向と交差する幅方向における前記被記録媒体の端部を前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜させ、
前記第2搬送部は、前記被記録媒体に対して、前記幅方向における前記端部側に向かう張力を付与することが可能である、
画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、一対のローラーで前記被記録媒体の前記端部を挟持しつつ、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側に搬送し、
前記一対のローラーの接触面が、前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜している、
画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、前記被記録媒体の前記幅方向における一方側の端部を挟持する前記一対のローラーを備え、
前記一対のローラーはそれぞれ前記搬送方向の前記下流側に対して開いた姿勢で設けられている、
画像記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像記録装置であって、
前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、前記被記録媒体の前記幅方向における両側の各端部を挟持する前記一対のローラーを2組備え、
前記一対のローラーはそれぞれ前記搬送方向の前記下流側に対して開いた姿勢で設けられている、
画像記録装置。
【請求項6】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
前記一対のローラーのうちの一方のローラーは、当該一方のローラーの軸方向に第1ばねを介して移動可能であり、側面に傾斜部を備え、
前記一対のローラーのうちの他方のローラーは、当該他方のローラーの軸方向と交差する方向に第2ばねを介して移動可能であり、
前記一対のローラーが前記被記録媒体の前記端部を挟持しない時、前記他方のローラーは、前記第2ばねの復元力により前記傾斜部に当接した状態で前記一方のローラーに近付きつつ、前記一方のローラーを前記軸方向の前記端部側とは反対側に移動させ、
前記一対のローラーが前記被記録媒体の前記端部を挟持する時、前記他方のローラーが前記傾斜部から離れ、前記一方のローラーは前記第1ばねの復元力により前記軸方向の前記端部側に移動する、
画像記録装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記第1搬送部と前記第2搬送部は、それぞれ、前記被記録媒体の前記幅方向における両側の各端部を挟持する前記一対のローラーを2組備え、
前記幅方向における少なくとも一方側の前記一対のローラーは、前記被記録媒体の前記幅方向の長さに応じて、前記幅方向に移動可能である、
画像記録装置。
【請求項8】
請求項2から請求項7の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記第1搬送部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置し、前記被記録媒体の前記端部を表面側から押さえるガイド部を備え、
前記ガイド部では、前記搬送方向の前記下流側の部位が前記上流側の部位よりも、前記支持面に対して前記ヘッド側とは反対側に傾斜している、
画像記録装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記被記録媒体は、第1フィルムと第2フィルムを重ねて前記幅方向における端部をシールしたものである、
画像記録装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記被記録媒体の前記端部の前記支持面に対する傾斜角度は、15度以上45度以下である、
画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107271(P2013−107271A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253731(P2011−253731)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】