説明

画像記録装置

【課題】 廃インクタンク内における廃インクの貯留量を可及的に正確に把握すること。
【解決手段】 廃インク輸送チューブは、廃インク(記録ヘッドのメンテナンス処理時にて当該記録ヘッドから漏出するインク)を廃インク貯留部(廃インクタンク)に輸送するように設けられている。検出部は、廃インク輸送チューブにおける廃インクの輸送方向と交差する方向の光透過状態に応じた出力を生じるように設けられている。廃インク貯留量算出部は、検出部の出力に基づいて、廃インク貯留部内の廃インクの貯留量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状のインクを吐出する記録ヘッドを備えた、画像記録装置(より詳細には「インクジェット記録装置」)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、記録ヘッドのメンテナンス処理時に当該記録ヘッドから漏出する(吐出あるいは吸引される)インクである廃インクを、廃インクタンクに貯留するものが、広く知られている(例えば、特開2000−141704号公報、特開2004−136550号公報、特開2005−225197号公報、特開2005−225198号公報、等参照。)。
【0003】
ここで、「メンテナンス処理」としては、一般に、パージ処理とフラッシング処理とが知られている(例えば、特開平8−252927号公報、特開平9−58014号公報、特開平9−109383号公報、特開2003−19816号公報、等参照。)。パージ処理は、記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態で、インクポンプを用いて、劣化したインクや気泡を各インクノズルから負圧で吸引することにより、各インクノズルを回復させる動作である。また、フラッシング処理は、記録ヘッドの各インクノズルからインク滴を吐出(無駄打ち)することにより、各インクノズルを回復させる動作である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置において、廃インクタンクの容量を大きくすることは、スペースの関係から困難である。その一方で、廃インクタンクから廃インクが漏出することは避けなければならない。そして、廃インクタンクの容量を最大限活用するためには、廃インクタンク内における廃インクの貯留量を可及的に正確に把握することが重要である。この点、従来のこの種の装置は、メンテナンス処理の回数や、メンテナンス処理時の記録ヘッドの駆動カウント値に基づいて、廃インクタンク内における廃インクの貯留量を推定するようになっていた。
【0005】
しかしながら、メンテナンス処理の回数や、メンテナンス処理時の記録ヘッドの駆動カウント値は、記録ヘッドから漏出した(排出された)廃インク量と必ずしも対応しない。具体的には、例えば、実際に記録ヘッドから漏出して(排出されて)廃インクタンク内に導入される廃インク量は、記録ヘッド内の気泡の存在や廃インク導入路内における廃インクの流動状態の変動等の理由により、メンテナンス処理の回数や記録ヘッドの駆動カウント値に基づく廃インクの吐出量の推定値よりも少なくなることがある。
【0006】
このため、従来のこの種の装置においては、メンテナンス処理によって実際に廃インクタンク内に流入した廃インク量を、正確に把握することが困難であった。したがって、従来のこの種の装置においては、オーバーフロー判定が行われた時点であっても、実際には廃インクタンクにさらに廃インクを収容することが可能であって、廃インクタンクのメンテナンス(交換等)がまだ不要である、というような状態が発生する場合があった。
【0007】
本発明は、このような課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、廃インクタンク内における廃インクの貯留量を可及的に正確に把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像記録装置は、記録ヘッドと、メンテナンス処理部と、廃インク貯留部(廃インクタンク)と、廃インク輸送チューブと、検出部と、廃インク貯留量算出部と、を備えている。
【0009】
前記記録ヘッドは、液体状のインクを吐出するようになっている。前記メンテナンス処理部は、廃インクを受容するようになっている。ここで、前記廃インクとは、前記記録ヘッドのメンテナンス処理時にて当該記録ヘッドから漏出するインクをいうものとする。前記廃インク貯留部は、前記メンテナンス処理部にて受容された前記廃インクを貯留するようになっている。前記廃インク輸送チューブは、前記廃インクが通過可能な光透過性のチューブである。この廃インク輸送チューブは、前記メンテナンス処理部にて受容された前記廃インクを前記廃インク貯留部へ輸送するために、前記メンテナンス処理部と前記廃インク貯留部との間に設けられている。前記検出部は、前記廃インク輸送チューブにおける前記廃インクの輸送方向と交差する方向の光透過状態に応じた出力を生じるように設けられている。前記廃インク貯留量算出部は、前記検出部の出力に基づいて、前記廃インク貯留部内の前記廃インクの貯留量を算出するようになっている。
【0010】
前記検出部は、発光部と、受光部と、第一出力部と、第二出力部と、を備えていてもよい。
【0011】
前記発光部は、前記光透過状態の検出用の光である検出光を発生するようになっている。前記受光部は、前記発光部から発せられ前記廃インク輸送チューブを透過した前記検出光を受光し得るように、前記廃インク輸送チューブを挟んで前記発光部と対向配置されている。この受光部は、光半導体素子からなり、前記検出光の受光量に応じた出力を生じるようになっている。前記第一出力部は、前記受光部における出力と、所定の第一閾値と、に応じて、第一検出信号を出力するようになっている。前記第二出力部は、前記受光部における出力と、雰囲気温度に応じて可変な第二閾値と、に応じて、第二検出信号を出力するようになっている。
【0012】
この場合、前記廃インク貯留量算出部は、前記第一検出信号と前記第二検出信号とに基づいて、前記貯留量を算出するようになっている。
【0013】
また、前記発光部は、前記廃インク輸送チューブ内にて輸送されるインクの種類に対応した波長(色)の前記検出光を発生するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
かかる構成を備えた本発明の画像記録装置においては、前記メンテナンス処理時に前記記録ヘッドから漏出して前記メンテナンス処理部に受容された前記廃インクは、光透過性の前記廃インク輸送チューブを通って、前記廃インク貯留部に流入する。この途中、すなわち、前記廃インク輸送チューブ内を前記廃インクが前記廃インク貯留部に向かって流動する途中で、当該廃インクは、前記検出部を通過する。したがって、かかる構成によれば、前記廃インクが通過した際の前記検出部の出力に基づいて、前記廃インク輸送チューブ内の前記廃インクの流量、ひいては前記廃インク貯留部内の前記廃インクの前記貯留量を、可及的に正確に算出(把握)することが可能となる。
【0015】
また、前記検出部を上記のように構成した場合、前記発光部から前記受光部に向けて発せられた前記検出光は、前記廃インク輸送チューブ内における前記廃インクの流動状態に応じて変調される。このため、光半導体素子からなる前記受光部は、受光量に応じて動作することで、当該受光量、すなわち、前記廃インク輸送チューブ内における前記廃インクの流動状態に応じた出力を生じる。
【0016】
この場合、前記第一出力部は、前記受光部における出力と、所定の前記第一閾値と、に応じて、前記第一検出信号を出力する。また、前記第二出力部は、前記受光部における出力と、前記雰囲気温度に応じて可変な前記第二閾値と、に応じて、前記第二検出信号を出力する。そして、前記廃インク貯留量算出部は、前記第一検出信号と前記第二検出信号とに基づいて、前記貯留量を算出する。
【0017】
かかる構成を有する前記検出部においては、前記雰囲気温度の変化に伴って前記廃インクの前記廃インク輸送チューブ内の流動状態が変化しても、前記貯留量の算出値は、これらの変化に対応したものとなる。よって、かかる構成によれば、前記廃インク貯留部内の前記廃インクの前記貯留量を、よりいっそう正確に算出(把握)することが可能となる。また、前記受光部、前記第一出力部及び前記第二出力部を含む回路構成を、スイッチング素子(トランジスタ等)や増幅回路(オペアンプ等)を用いた簡略なものとすることが可能となる。
【0018】
さらに、前記廃インク輸送チューブ内にて輸送されるインクの種類に対応した波長(色)の前記検出光を用いた場合、当該インクの種類に応じて前記検出光の波長を適宜変更することで、前記廃インク貯留部内の前記廃インクの前記貯留量を、よりいっそう正確に算出(把握)することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像記録装置の一実施形態に係るカラーインクジェットプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示されているカラーインクジェットプリンタにおける、廃インク流量を検知するための回路構成を概略的に示す図である。
【図3】図2に示されている受光素子の出力電圧の、雰囲気温度変化による影響を示すグラフである。
【図4】図1に示されている制御装置によって実行される、廃インク貯留量算出処理の一具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(変形例:modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0021】
<構成>
図1は、本発明の画像記録装置の一実施形態に係るカラーインクジェットプリンタ1の概略構成を示す図である。本実施形態のカラーインクジェットプリンタ1は、本体部2と、記録ヘッド3と、キャリッジ機構4と、給紙ローラ5と、排紙ローラ6と、インク輸送機構7と、制御装置8と、を備えている。記録ヘッド3、キャリッジ機構4、給紙ローラ5、排紙ローラ6、インク輸送機構7、及び制御装置8は、本体部2内に収容されている。
【0022】
記録ヘッド3は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4色の液体状のインクを吐出可能に構成されている。キャリッジ機構4は、記録ヘッド3を、用紙幅方向(図中左右方向)に往復移動させるように構成されている。給紙ローラ5は、記録ヘッド3に対向する記録位置に向けて用紙Pを搬送するように設けられている。排紙ローラ6は、上述の記録位置を経てインクによる記録が行われた用紙Pを、当該記録位置から本体部2の外部に向けて排出するように設けられている。上述したような、記録ヘッド3〜排紙ローラ6の構成は周知であるので、本明細書においては、これらについてのさらに詳細な構成の説明は省略する。
【0023】
インク輸送機構7は、本体部2内に収容されたインクタンク71(イエローインクタンク71Y、マゼンタインクタンク71M、シアンインクタンク71C、及びブラックインクタンク71Kを含む)からインクを記録ヘッド3に供給するとともに、メンテナンス処理時に記録ヘッド3から漏出した(具体的には、周知のパージ処理により吸引された、若しくは周知のフラッシング処理により吐出された)廃インクを廃インクタンク72に向けて送出するように構成されている。具体的には、インク輸送機構7は、インク供給チューブ73と、吸引キャップ74と、廃インク輸送チューブ75aと、廃インク輸送チューブ75bと、廃インク輸送チューブ76と、ポンプ77と、光学センサ78と、を備えている。
【0024】
インク供給チューブ73は、インクタンク71と記録ヘッド3とを接続するように設けられている。本発明の「メンテナンス処理部」としての吸引キャップ74は、メンテナンス処理時に記録ヘッド3から漏出した廃インクを受容するように設けられている。吸引キャップ74には、ブラックの廃インクを排出するための廃インク輸送チューブ75aと、それ以外の廃インクを排出するための廃インク輸送チューブ75bとが接続されている。
【0025】
廃インク輸送チューブ75a及び廃インク輸送チューブ75bは、1本の(共通の)廃インク輸送チューブ76を介して、廃インクタンク72と接続されている。廃インク輸送チューブ75a、廃インク輸送チューブ75b、及び廃インク輸送チューブ76は、無色透明な合成樹脂製のチューブからなり、可視光におけるほぼすべての波長の光を良好に透過可能に形成されている。ポンプ77は、吸引キャップ74に受容された廃インクを、廃インクタンク72に向けて送出するように設けられている。上述したような、インクタンク71〜ポンプ77の構成は周知であるので、本明細書においては、これらについてのさらに詳細な構成の説明は省略する。
【0026】
光学センサ78は、廃インク輸送チューブ76における、廃インクタンク72よりも手前側に対応する位置に設けられている。本発明の「検出部」に相当する光学センサ78は、廃インク輸送チューブ76における廃インクの輸送方向と交差する方向の光透過状態に応じた出力を生じるように構成されている。具体的には、光学センサ78は、発光部781と、受光素子782と、を備えている。
【0027】
制御装置8は、カラーインクジェットプリンタ1における各部の動作を制御するための、いわゆるマイクロコンピュータであって、CPUと、ROMと、RAMと、バックアップRAMと、インターフェースと、これらを接続する双方向バスと、を備えている。ROMには、CPUが実行するルーチン(プログラム)、及びこのルーチンの実行時に参照されるテーブル(ルックアップテーブル、マップ)、等が、予め格納されている。本発明の「廃インク貯留量算出部」に相当する制御装置8は、光学センサ78の出力に基づいて、光学センサ78が設けられた位置における廃インク輸送チューブ76の廃インク流量、及び廃インクタンク72内の廃インクの貯留量を算出するようになっている。
【0028】
図2は、図1に示されているカラーインクジェットプリンタ1における、廃インク流量を検知するための回路構成を概略的に示す図である。図2を参照すると、本実施形態の発光部781は、いわゆる「フルカラーLED」であって、赤色(シアンインクの補色)、緑色(マゼンタインクの補色)、青色(イエローインクの補色)及び白色の検出光を発生可能に構成されている。かかるフルカラーLEDは既に市販されていて、その構成は周知であるので、本明細書においては、これについてのさらに詳細な構成の説明は省略する。
【0029】
本発明の「受光部」に相当する受光素子782は、検出光の受光量に応じた出力を生じる光半導体素子(光トランジスタ)である。この受光素子782は、発光部781から発せられて廃インク輸送チューブ76を透過した検出光を受光し得るように、廃インク輸送チューブ76を挟んで発光部781と対向配置されている。具体的には、本実施形態においては、受光素子782は、NPNトランジスタであって、オープンコレクタ出力するように、プルアップ抵抗R1を介して+5Vの電源電圧端子と接続されている。
【0030】
また、光学センサ78は、電流増幅回路部783と、第一出力部784と、電流増幅回路部785と、第二出力部786と、サーミスタ787と、を備えている。
【0031】
電流増幅回路部783は、受光素子782のアナログ電圧出力を電流増幅するために設けられた回路である。第一出力部784は、反転入力(−)側に第一閾値に対応する+3.0Vの電源電圧端子が接続されるとともに、非反転入力(+)側に電流増幅回路部783の出力側が接続されたコンパレータであって、非反転入力(+)と反転入力(−)との関係に基づく出力OUT1を生じるように設けられている。
【0032】
同様に、増幅器785は、受光素子782のアナログ電圧出力を電流増幅するために設けられた回路である。第二出力部786は、第一出力部784と同様のコンパレータであって、非反転入力(+)と反転入力(−)との関係に基づく出力OUT2を生じるように設けられている。
【0033】
第二出力部786の非反転入力(+)側には、増幅器785の出力側が接続されている。一方、第二出力部786の反転入力(−)側は、第二閾値に対応する電圧が入力されるようになっている。具体的には、接地されたサーミスタ787と、+3.3Vの電源電圧端子と接続された抵抗R4とが、直列に接続されている。そして、第二出力部786の反転入力(−)側は、サーミスタ787の高圧側と接続されている。
【0034】
<動作の概要>
かかる構成においては、メンテナンス処理時に記録ヘッド3から漏出して吸引キャップ74に受容された廃インクは、光透過性の廃インク輸送チューブ76を通って、廃インクタンク72に流入する。この途中、すなわち、廃インク輸送チューブ76内を廃インクが廃インクタンク72に向かって流動する途中で、当該廃インクは、光学センサ78における発光部781と受光素子782とが対向する位置を通過する。
【0035】
このとき、発光部781から受光素子782に向けて発せられた検出光は、廃インク輸送チューブ76内における廃インクの流動状態に応じて遮断される。このため、光半導体素子からなる受光素子782は、受光量に応じて動作することで、当該受光量、すなわち、廃インク輸送チューブ76内における廃インクの流動状態に応じた出力を生じる。そこで、制御装置8は、光学センサ78の出力(図2におけるOUT1及びOUT2)に基づいて、廃インク輸送チューブ76の廃インクの流量を算出し、かかる値を積算することで廃インクタンク72内の廃インクの貯留量を算出する。
【0036】
ここで、本実施形態の構成においては、制御装置8は、メンテナンス処理時における、記録ヘッド3から漏出するインクの色(フラッシング処理時に如何なる色のインクに対応するノズルが吐出駆動されているか、あるいは、パージ処理時に如何なる色のインクに対応するノズルが吸引されているか)に応じて、発光部781を駆動する。
【0037】
ところで、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量が少ない場合、廃インク輸送チューブ76内を廃インクが通過する際に、表面張力が作用する。このため、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量が少ない場合、廃インク輸送チューブ76内の廃インクによって検出光が遮蔽される程度は、かかる表面張力の影響を受ける。また、廃インクは、高温時に低粘度であり、低温時に高粘度となる。よって、廃インク輸送チューブ76内を廃インクが通過する際の検出光の遮蔽状態は、雰囲気温度(廃インク輸送チューブ76の周囲の温度)の影響を受ける。
【0038】
図3は、図2に示されている受光素子782の出力電圧の、雰囲気温度変化による影響を示すグラフである。図3における実線は、廃インク輸送チューブ76内をブラックインクが最大限の流量で流れている状態(雰囲気温度30℃)の出力電圧を示している。また、図3における一点鎖線は、実線で示されている状態から流量を少なくした場合の出力電圧を示している。さらに、図3における二点鎖線は、一点鎖線で示されている状態から雰囲気温度を低下させた場合(5℃)の出力電圧を示している。図3に示されているように、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量が少ない場合、雰囲気温度の影響により、受光素子782の出力電圧が変化する。
【0039】
そこで、本実施形態の構成においては、雰囲気温度の変化に対して一定な第一閾値と受光素子782の出力電圧とに基づく出力OUT1と、雰囲気温度の変化に対して可変な第二閾値と受光素子782の出力電圧とに基づく出力OUT2と、に基づいて、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量を算出する。具体的には、例えば、図2に示されているように、第一閾値を3.0Vとした第一出力部784により、廃インク輸送チューブ76内を廃インクが最大限の流量で流れているかどうかを検知する(OUT1)。一方、雰囲気温度が5℃のときに2.7Vであり雰囲気温度が30℃のときに2Vとなるようにサーミスタ787を選定する。そして、かかる第二閾値を用いた第二出力部786により、廃インク輸送チューブ76内を廃インクが所定量以上流れているかどうかを検知する(OUT2)。そして、上述のOUT1及びOUT2に適宜重みづけ(例えばOUT1に乗じる定数:OUT2に乗じる定数=3:1)を行うことで、廃インクの流量を算出する。
【0040】
<動作の具体例>
図4は、図1に示されている制御装置8によって実行される、廃インク貯留量算出処理の一具体例を示すフローチャートである。なお、図4のフローチャートにおいて、「ステップ」は「S」と略記されている。制御装置8に内蔵されたCPU(以下、単に「CPU」と称する。)は、所定時間毎に、図4に示されている廃インク貯留量算出処理ルーチン400を実行する。
【0041】
かかるルーチン400が起動されると、まず、CPUは、ステップ405において、回復処理(メンテナンス処理)を現在実行中であるか否かを判定する。現在回復処理中でない場合(ステップ405=No)、ステップ410以下の処理はすべてスキップされ、本ルーチンの処理が一旦終了する。よって、以下の説明では、現在回復処理中である(ステップ405=Yes)ものとする。
【0042】
続いて、処理がステップ410に進行し、現在の回復処理がイエローノズルに対するものであるか否かが判定される。現在の回復処理がイエローノズルに対するものである場合(ステップ410=Yes)、処理がステップ415に進行して、発光部781にて青色のLEDが点灯される。これにより、発光部781から青色の検出光が発せられる。
【0043】
現在の回復処理がイエローノズルに対するものではない場合(ステップ410=No)、処理がステップ420に進行して、現在の回復処理がマゼンタノズルに対するものであるか否かが判定される。現在の回復処理がマゼンタノズルに対するものである場合(ステップ420=Yes)、処理がステップ425に進行して、発光部781にて緑色のLEDが点灯される。これにより、発光部781から緑色の検出光が発せられる。
【0044】
現在の回復処理がイエローノズルに対するものでもマゼンタノズルに対するものでもない場合(ステップ410=No,ステップ420=No)、処理がステップ430に進行して、現在の回復処理がシアンノズルに対するものであるか否かが判定される。現在の回復処理がシアンノズルに対するものである場合(ステップ430=Yes)、処理がステップ435に進行して、発光部781にて赤色のLEDが点灯される。これにより、発光部781から赤色の検出光が発せられる。
【0045】
現在の回復処理がイエローノズルに対するものでもマゼンタノズルに対するものでもシアンノズルに対するものでもない場合(ステップ410=No,ステップ420=No,ステップ430=No)、処理がステップ440に進行して、発光部781にてすべての色のLEDが点灯される。これにより、発光部781から白色の検出光が発せられる。
【0046】
上述のようにして、回復処理時における、記録ヘッド3から漏出するインクの色に応じて発光部781が駆動されると、次に、処理がステップ450に進行して、第一出力部784の出力OUT1に所定の係数K1を乗じた値M1が算出される。続いて、処理がステップ460に進行して、第二出力部786の出力OUT2に所定の係数K2を乗じた値M2が算出される。そして、値M1と値M2との和が、現在光学センサ78における発光部781と受光素子782との間を通過中の廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量に対応した値となる。
【0047】
そこで、CPUは、続くステップ470において、廃インクタンク72内の廃インクの貯留量(積算値)Mを、値M1と値M2とを加えた値に更新する。その後、処理がステップ480に進行し、かかる貯留量Mが所定値M0(廃インクタンク72における廃インクの最大貯留容量に相当する値)よりも小さいか否かが判定される。
【0048】
貯留量Mが所定値M0に達した場合(ステップ480=No)、処理がステップ490に進行して、廃インクタンク72が満タンになった際の処理(警告等)が行われ、本ルーチンの処理が一旦終了する。一方、貯留量Mが所定値M0に達していない場合(ステップ480=Yes)、ステップ490の処理がスキップされ、本ルーチンの処理が一旦終了する。
【0049】
<実施形態及び具体例の構成による作用・効果>
以上詳述したように、本実施形態の構成においては、廃インク輸送チューブ76内を流動して廃インクタンク72に流入する廃インクの流量が、光学センサ78の出力に基づいて算出される。具体的には、雰囲気温度の変化に対して一定な第一閾値と受光素子782の出力電圧とに基づく出力OUT1と、雰囲気温度の変化に対して可変な第二閾値と受光素子782の出力電圧とに基づく出力OUT2と、に基づいて、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量が算出される。そして、この流量の算出値を積算することで、廃インクタンク72内の廃インクの貯留量が算出される。
【0050】
また、本実施形態の構成においては、回復処理時における、記録ヘッド3から漏出するインクの色に応じて、発光部781が駆動される。具体的には、当該インクの色の補色に相当する色(当該インクがブラックインクである場合は白色)の検出光が発生するように、発光部781が駆動される。
【0051】
これにより、インクの違いに伴う検出光の透過度の違いに対応した、発光部781の出力が得られる。したがって、本実施形態の構成によれば、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量、及び廃インクタンク72内の廃インクの貯留量を、可及的に正確に算出(把握)することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の構成においては、光半導体素子からなる受光素子782と、この受光素子782の出力を増幅あるいは演算するための回路素子である増幅器783、第一出力部784、増幅器785、及び第二出力部786を用いて、廃インク輸送チューブ76内の廃インクの流量が算出される。したがって、本実施形態によれば、アナログ−デジタル変換器を用いない簡略な回路構成(トランジスタ等のスイッチング素子やオペアンプ等の増幅回路を用いた簡略な回路構成)で、廃インクの流量及び貯留量を算出することが可能になる。
【0053】
<変形例の例示>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0054】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、実施形態や変形例の、全部又は一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、互いに複合的に適用され得る。
【0055】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態や、下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0056】
本発明は、カラーインクジェットプリンタに限定されない。すなわち、例えば、本発明は、単色のインクジェットプリンタに対しても、良好に適用され得る。また、インクの種類(色)や検出光の色(波長)も、上述の具体例に何ら限定されない。すなわち、検出光は、インクの吸収ピーク(多数存在する場合にはそのうちの1つ)に相当する波長を有していれば、補色でなくてもよく、可視光でなくてもよい。
【0057】
本発明は、上述の実施形態に示された装置構成に何ら限定されない。例えば、廃インク輸送チューブ75aと廃インク輸送チューブ75bとは、一体的に(すなわち1本のチューブとして)構成されていてもよい。あるいは、廃インク輸送チューブ75bは、イエロー、マゼンタ、及びシアン用に、それぞれ分割されていてもよい。
【0058】
光学センサ78は、図1に示されているようにポンプ77よりも下流側に設けられていてもよいし、この逆に、ポンプ77よりも上流側に設けられていてもよい。あるいは、光学センサ78は、廃インク輸送チューブ75aと廃インク輸送チューブ75bとにそれぞれ設けられていてもよい。
【0059】
電気回路構成も、上述の実施形態に何ら限定されない。例えば、受光素子782は、フォトトランジスタに限定されず、フォトダイオードであってもよい。また、増幅器783〜第二出力部786のうちの少なくともいずれか1つは、制御装置8側に設けられていてもよく、あるいは、光学センサ78と制御装置8との間に設けられていてもよい。
【0060】
サーミスタ787を用いることなく、温度センサと、この温度センサによる温度検知値と所定のテーブル(マップ)に基づく閾値と、を用いて、第二閾値が生成されてもよい。
【0061】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した他の出願や公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして、必要に応じて且つ技術的に矛盾しない範囲内において援用され得る。
【符号の説明】
【0062】
1…カラーインクジェットプリンタ
2…本体部
3…記録ヘッド
4…キャリッジ機構
5…給紙ローラ
6…排紙ローラ
7…インク輸送機構
71…インクタンク
71C…シアンインクタンク
71K…ブラックインクタンク
71M…マゼンタインクタンク
71Y…イエローインクタンク
72…廃インクタンク
73…インク供給チューブ
74…吸引キャップ
75a…廃インク輸送チューブ
75b…廃インク輸送チューブ
76…廃インク輸送チューブ
77…ポンプ
78…光学センサ
781…発光部
782…受光素子
783…電流増幅回路部
784…第一出力部
785…電流増幅回路部
786…第二出力部
787…サーミスタ
8…制御装置
P…用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2000−141704号公報
【特許文献2】特開2004−136550号公報
【特許文献3】特開2005−225197号公報
【特許文献4】特開2005−225198号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状のインクを吐出する、記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのメンテナンス処理時にて当該記録ヘッドから漏出するインクである廃インクを受容する、メンテナンス処理部と、
前記メンテナンス処理部にて受容された前記廃インクを貯留する、廃インク貯留部と、
前記メンテナンス処理部にて受容された前記廃インクを前記廃インク貯留部へ輸送するために、前記メンテナンス処理部と前記廃インク貯留部との間に設けられた、光透過性の廃インク輸送チューブと、
前記廃インク輸送チューブにおける前記廃インクの輸送方向と交差する方向の光透過状態に応じた出力を生じるように設けられた、検出部と、
前記検出部の出力に基づいて、前記廃インク貯留部内の前記廃インクの貯留量を算出する、廃インク貯留量算出部と、
を備えたことを特徴とする、画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、画像記録装置であって、
前記検出部は、
前記光透過状態の検出用の光である検出光を発生する、発光部と、
前記検出部から発せられ前記廃インク輸送チューブを透過した前記検出光を受光し得るように前記廃インク輸送チューブを挟んで前記発光部と対向配置されていて、前記検出光の受光量に応じた出力を生じる、光半導体素子からなる受光部と、
前記受光部における出力と、所定の第一閾値と、に応じて、第一検出信号を出力する、第一出力部と、
前記受光部における出力と、雰囲気温度に応じて可変な第二閾値と、に応じて、第二検出信号を出力する、第二出力部と、
を備え、
前記廃インク貯留量算出部は、前記第一検出信号と前記第二検出信号とに基づいて、前記貯留量を算出することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の、画像記録装置であって、
前記発光部は、
前記廃インク輸送チューブ内にて輸送されるインクの種類に対応した波長の前記検出光を発生することを特徴とする、画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6342(P2013−6342A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140258(P2011−140258)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】