画像診断システム
【課題】画像診断において診断能力を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】画像診断システムは、X線源と、X線画像検出手段と、重力方向指示手段とを備える。該画像診断システムでは、X線源は、X線を出射する。また、X線画像検出手段は、X線源と対向して設けられる。そして、重力方向指示手段は、X線非透過性の材質を用いて形成された指示体を有しており、X線画像検出手段の撮影面側に設けられて、重力方向をその姿勢によって指示する。
【解決手段】画像診断システムは、X線源と、X線画像検出手段と、重力方向指示手段とを備える。該画像診断システムでは、X線源は、X線を出射する。また、X線画像検出手段は、X線源と対向して設けられる。そして、重力方向指示手段は、X線非透過性の材質を用いて形成された指示体を有しており、X線画像検出手段の撮影面側に設けられて、重力方向をその姿勢によって指示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体に係る画像の解析を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、X線等を用いて内蔵や骨格等に含まれる患部を撮影することによって、各種検査や診断が行われている。近年では、デジタル技術の適用によって、さまざまな画像処理が臨床で利用されるようになっている。そして、呼吸器系疾患の評価のために、形態画像だけでなく生理・生化学的情報を映像化する機能画像も多く活用されている(例えば、非特許文献1等)。
【0003】
一方、人体の撮影においては、撮影時の検体の姿勢、または検出器の配置等によって、検体の撮影位置や体位、画像の向きが変わる場合があり、かかる場合には、撮影画像から正確な情報を得ることが困難となる。特に、ポータブル式の検出器の場合、検体の撮影位置や体位等を常に一定にすることは容易ではない。
【0004】
そのため、撮影時における検体の姿勢情報が得られる技術(例えば、特許文献1等)や撮影時におけるX線画像検出器の傾きを検知して、撮影画像の表示向きを自動的に調整可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−271108号公報
【特許文献2】特開2003−14848号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「フラットパネルX線ディテクタを用いた胸部呼吸動態診断支援画像診断システムの開発」、田中、真田、小林、文部科学省科学研究責補助金特定領域研究「多次元医用画像の知的診断支援」第三回シンポジウム論文集,53−58,2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、呼吸器系疾患の評価においては、肺野における呼吸機能であるガス交換の機能(効率)を解析することが多く行われる。ガス交換の機能の指標としては、換気血流比(V/Q)がある。ここで、換気血流比とは、一定時間あたりの肺血流量(Q)に対する肺胞換気量(V)の割合をいい、また、肺胞換気量とは、肺と血液との間で実際にガス交換に関与している呼吸気量のことをいう。
【0008】
人は、重力の影響により肺底から肺尖部に従い換気血流比が増加していくことが知られている。そのため、同等の重力を受けている領域(すなわち、肺野の重力方向に対して垂直な面)で肺機能を評価することは重要なことである。
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1および特許文献1,2の技術では、重力については特に考慮されておらず、重力の影響を加味した肺野における機能解析を実施することができない。また、肺以外のその他の部位の機能についても、重力の影響を加味する必要がある場合がある。さらに、このような機能情報を活用した診断については、医師の多くの経験と熟練を必要とするという問題もある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像診断において診断能力を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の態様に係る画像診断システムは、X線を出射するX線源と、前記X線源と対向して設けられるX線画像検出手段と、X線非透過性の材質を用いて形成された指示体を有し、前記X線画像検出手段の撮影面側に設けられて、重力方向をその姿勢によって指示する重力方向指示手段とを備える。
【0012】
第2の態様に係る画像診断システムは、第1の態様に係る画像診断システムであって、前記重力方向指示手段が、前記撮影面の隅に取り付けられている。
【0013】
第3の態様に係る画像診断システムは、第2の態様に係る画像診断システムであって、前記重力方向指示手段が、前記指示体を前記撮影面に平行な面内で揺動可能に軸支する支持軸を有しており、前記指示体が、前記支持軸から外れた位置に重心を持つ振り子状の部材を含む。
【0014】
第4の態様に係る画像診断システムは、第1の態様に係る画像診断システムであって、前記重力方向指示手段が、前記指示体を揺動可能に軸支する支持軸と、該支持軸が取り付けられている自立可能な支持具とを有しているとともに、前記X線源と前記撮影面との間に移動自在に配置されている。
【0015】
第5の態様に係る画像診断システムは、第4の態様に係る画像診断システムであって、前記支持具のうちの少なくとも前記X線源から前記X線画像検出手段に至るX線照射域と重なる部分が、前記指示体よりもX線の吸収率が低い素材によって構成されている。
【0016】
第6の態様に係る画像診断システムは、第1から第5の何れか1つの態様に係る画像診断システムであって、前記X線画像検出手段によって検出されるX線の2次元の強度分布を画像データとして取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記画像データを可視的に出力する表示手段とをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
第1から第6のいずれの態様に係る画像診断システムによっても、重力方向が容易に認識可能な画像を得ることができるため、検体の画像診断において、重力の影響を加味した適切な診断が容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における画像診断システム100Aの構成を示すブロック図である。
【図2】重力センサの設置状態の例を示す図である。
【図3】相対的重力方向情報を表現する場合における撮影機能画像上の座標系の例を示す図である。
【図4】画像データと重力方向情報との関連付けを示す図である。
【図5】相対的重力方向の表示例を示す図である。
【図6】診断対象画像と対比画像との対応関係を概念的に説明するための図である。
【図7】診断対象画像と過去画像との並列表示の例を説明する図である。
【図8】診断対象画像と過去画像との並列表示の例を説明する図である。
【図9】対比画像として過去画像を選択する例を説明する図である。
【図10】本発明の第2実施形態における画像診断システム100Bの構成を示すブロック図である。
【図11】X線画像検出器32に設置された重力方向指示器33Aの概略構成を示す正面図である。
【図12】X線源31とX線画像検出器32との間に設けられる重力方向指示器33Bの概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態では、被検査者(検体)の身体に係る生理機能、例えば、肺機能を撮影した画像とその撮影時における重力方向の情報とを取得し、この重力方向の情報を撮影された機能画像と関連づけて記憶する。そして、画像に対する相対的重力方向を示す図形や記号を含む表示要素を該機能画像とともに表示させる。
【0021】
<第1実施形態における画像診断システムの全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態における情報処理装置1Aを備えた画像診断システム100Aの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1で示されるように、画像診断システム100Aの情報処理機能を司る情報処理装置1Aは、画像取得部2、重力情報取得部3、記憶部4、制御部5、および操作部6をバスライン10に接続した一般的なコンピュータの構成となっている。
【0023】
画像取得部2は、被検査者から得られた構造および機能の画像データ、具体的には、形態画像データおよび機能画像データのうちの少なくとも1つに相当する画像データをX線撮影装置20から取得する。なお、本実施形態においては機能画像データが取得される。
【0024】
画像取得部2は、図1に示すように、情報処理装置1Aに接続されたX線撮影装置20から画像データをオンラインで受信するように構成されている。また、DVD等の可搬型の記憶媒体からのデータの読み取りや、スキャナによる画像の読み取りによって画像データを取得するように構成されても良い。さらに、画像取得部2は、画像診断システム100Aの外部に設けた記憶装置、例えばネットワーク回線によって接続されたファイルサーバ等に被検査者を撮影した画像データを記憶しておき、記憶されている複数の画像データの中から所望の被検査者の画像データを検索して取得するように構成されても良い。
【0025】
画像取得部2によって取得された画像データは、後述する記憶部4に記憶される。このような画像データの記憶や、後述する重力方向の情報の記憶も、画像診断システム100Aの外部に設けた記憶装置に対してネットワークを介して行ってもよい。
【0026】
重力情報取得部3は、被検査者のX線撮影を行った際における重力方向の情報を、後述する重力センサ25から取得する。
【0027】
記憶部4は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶装置によって構成され、後述する制御部5で実行されるプログラム、プログラムを実行する際に必要な情報、さらに、画像取得部2および重力情報取得部3から取得される各種情報を記憶する。
【0028】
制御部5は、例えば、CPUを含んで構成され、記憶部4に記憶される制御プログラムを実行することによって、情報処理装置1A全体の動作を決定し、情報処理装置1A全体に指令を与える。また、さらに、画像診断システム100A内の各要素例えば後述する表示装置26に表示の指示を出す。さらに、制御部5は、後述する記憶制御部11、検索部12、表示制御部13の機能も実現する。これらの機能によって、制御部5は、被検査者の撮影の際における重力方向の情報を取得させ、取得された画像データに係る画像の座標系に関連づけて重力方向の情報を記憶させ、また、画像の座標系に対する相対的な重力方向の情報を付加した画像を表示する。これについては図4を参照して後に詳述する。
【0029】
操作部6は、キーボード、タッチパネル、またはマウス等を備えて構成され、ユーザの各種操作にしたがって各種指令信号を制御部5に送信する。
【0030】
また、情報処理装置1Aは、画像診断システム100Aの構成要素ではあるが情報処理装置1Aにとっては外部装置となっている表示装置26、X線撮影装置20等の医療用画像撮影装置、および重力センサ25と接続されている。
【0031】
表示装置26は、例えば、液晶表示ディスプレイ等によって構成され、制御部5で生成される動画像データ等を可視的に出力する。なお、表示装置26を外部装置として情報処理装置1Aに接続せずに、情報処理装置1Aの内部に表示部として構成することによって、情報処理装置1Aに表示装置26の機能を持たせてもよい。
【0032】
X線撮影装置20は、被検査者の内臓等に含まれる所定部位を撮影する。X線撮影装置20では、X線発生源から検体にX線が出射されることで胸部の撮影が行われる。
【0033】
具体的には、X線撮影装置20では、被検査者に対して出射されたX線は、例えば、被検査者の胸部を透過し、X線画像検出器によって、該X線の2次元の強度分布が検出される。このとき、X線画像検出器で得られたX線の強度分布は、被検査者を透過したX線の強度分布に係る画像データとして、図示しないX線撮影装置20内の記憶部に記憶され、記憶された画像データは制御部5からの制御信号に応答して画像取得部2に転送される。あるいは、該画像データは、X線撮影装置20から画像取得部2を通して直接情報処理装置1Aの記憶部4に転送されてもよい。
【0034】
X線撮影装置20のX線画像検出器については、多数の光電変換素子を2次元状に配置してなる大面積の検出面を有するX線検出センサ(フラットパネル検出器、以下FPD)を使用することが好ましく、本実施形態においては、ポータブルのFPDにより取得されたX線動画像に基づいて得られた肺の換気機能画像を用いる。なお、X線画像検出器は、その他にもコンピューテッド・ラジオグラフィー(CR)のイメージングプレート等、公知の種々のものを用いることができる。
【0035】
重力センサ25は、例えば、公知の加速度センサを用いることができる。図2は、重力センサの設置状態の例を示す図である。重力センサ25は、図2(a)に示すようにX線撮影装置20のX線画像検出器22に取り付けるか、または、図2(b)に示すように被検査者に取り付けるかによって、被検査者の撮影時における重力方向の測定が行われる。後者の場合には、X線源21からX線画像検出器22に至るX線照射域から外れた位置に重力センサ25を取り付ける。
【0036】
後者の場合には、重力センサ25自身の姿勢がX線画像検出器22の姿勢と一致する姿勢で重力センサ25を検査対象者に取り付ける。例えばX線画像検出器22の縦中心軸が鉛直軸に対して右に30度程度傾いた姿勢でX線画像検出器22を使用せざるを得ない環境のときには、重力センサ25の縦中心軸もまた鉛直軸に対して右に30度程度傾けた姿勢で重力センサ25を検査対象者に取り付ける。これは、重力センサ25の縦中心軸が検査対象者の正中線にほぼ平行になるように重力センサ25を検査対象者に取り付けることによってほぼ達成できる。また、重力センサ25の出力信号は、引き回し自在な有線ケーブルまたは無線で情報処理装置1Aに送信する。
【0037】
<情報処理装置1Aの処理内容>
情報処理装置1Aは、最初に、被検査者の撮影時における重力方向の情報を取得して、取得された画像データに係る画像の座標系に関連づけて記憶する。この関連づけと記憶の態様は、後述する(図4)。そして、記憶した情報に基づいて、重力方向の情報を撮影された診断対象画像上に付加して表示する。また、診断対象画像と並列的に、画像の座標系に対する相対的な重力方向が診断対象画像と類似する他の機能画像を併せて表示することができる。以下、これらの処理内容について順次に説明する。
【0038】
<重力方向の情報の画像データへの関連づけと記憶処理>
制御部5は、初めに、画像取得部2に被検査者の身体の検査部位に係る生理機能、例えば、肺の換気機能を撮影した画像データをX線撮影装置20から取得させる。以下、撮影によって得られた肺の換気機能画像を、撮影機能画像と称する。また、過去に撮影された画像などと区別するために診断対象画像とも呼ぶ。X線撮影装置20によって撮影された胸部X線動画像データから肺の換気機能画像を取得するためには、既知の方法、例えば『田中、真田、小林、“フラットパネルX線検出器を用いた胸部呼吸動態診断支援画像診断システム開発”文部科学省科学研究責補助金特定領域研究「多次元医用画像の知的診断支援」第三回シンポジウム論文集,53−58,(2006).』の方法を用いることができる。
【0039】
また、制御部5は、重力情報取得部3に重力センサ25によって得られた撮影時における重力方向の情報を取得させる。
【0040】
次に、記憶制御部11は、被検査者の撮影時に重力センサ25から得られた重力方向の情報を画像の座標系に対する相対的な方向を示す相対的重力方向情報として記憶部4に記憶させる。
【0041】
相対的重力方向情報は、例えば、あらかじめ設定された撮影機能画像の座標系における3次元の方向ベクトルで表現されて、記憶部4に記憶される。図3は、相対的重力方向情報を表現する場合における撮影機能画像上の座標系の例を示す図である。図3に示すように、例えば、3次元の方向ベクトルは、撮影機能画像の横軸方向、縦軸方向をそれぞれx方向、y方向とし、画像面に垂直に手前に向いた方向をz方向とする座標系で表現される。多くの場合は、3次元方向ベクトルのうち(x,y)平面での重力方向の傾きが重要であることから、上記の3次元の方向ベクトルを(x,y)平面に射影した2次元方向ベクトルを用いることができる。
【0042】
一般には、空間中で地面方向に向く重力方向をX線撮影装置20のX線画像検出器22に固定された座標系に変換するためには、
(1) X線撮影装置20とは別の手段によって重力方向を知る方法と、
(2) 重力方向との方向関係が既知である指標を設け、X線撮影装置20が撮影した画像にその指標が写し込まれるようにする方法と、
の2種類の方法が考えられる。ここで説明している第1の実施形態は前者に属するものであり、後述する第2の実施形態は後者に属する。
【0043】
診断対象画像における重力方向の情報、より具体的には画像の座標系における基準方向と重力方向との相対方向に関する相対的重力方向情報は、診断対象画像の画像データに関連づけられる。
【0044】
図4は、画像データと重力方向情報との関連付けを示す図である。具体的には、この関連づけは、例えば図4(a)に示すように、診断対象画像の画像データ本体FIを含む画像データファイルFのうち、そのヘッダ部HD内に相対的重力方向情報DRが書込まれてもよい。また、図4(b)に示すように、診断対象画像の画像データファイルF自身には相対的重力方向情報DRは書込まず、画像データファイルFのファイル名FNを、他のファイル例えば所定のテーブルファイルTBの中に追記し、当該テーブル中のファイル名FNを含むレコードに相対的重力方向情報DRが書込まれることによって、間接的に、被検査者の画像データと重力方向の情報とを関連づけてもよい。図4(b)の場合には、その「時点で得られた診断対象画像の情報だけでなく、過去に得られて保存されている各診断対象画像の画像ファイルと、それらの画像における相対的重力方向情報とが関連づけて記憶蓄積されている。
【0045】
<相対的重力方向情報を付加した画像の表示処理>
情報処理装置1Aは、撮影機能画像を表示装置26に表示させる際に、操作部6の操作によって合成モードが指定されていた場合には、記憶部4に記憶された相対的重力方向情報を付加した合成画像として診断対象画像を表示させる。
【0046】
まず、表示制御部13は、記憶部4から表示対象となる診断対象画像の画像データおよびそれに関連づけられた相対的重力方向情報を取得する。次に、表示制御部13は、相対的重力方向情報に基づく表示要素を診断対象画像上に付加した合成画像を生成して、合成後の診断対象画像を表示装置26に表示させる。
【0047】
表示要素としては、例えば、被検査者の画像の正中線を基準線した場合における正中線と重力方向とのずれ(被検査者の画像の正中線と重力方向との相対的な角度関係、ここでは基準角と称する。)の数値表示や矢印表示(重力方向を始点と終点で表示)等を用いる。ただし、正中線とは、身体の中心を上下に貫く中心線のことをいう。
【0048】
一般に、基準角は、診断対象画像から基準となる線(基準線)を算出し、基準線と相対的重力方向情報に基づく重力方向とのなす角を計算することによって求められる。例えば、被検査者の診断対象画像における正中線を基準線とする場合には、そのような正中線をあらかじめ画像処理によって計算しておく。なお、相対的重力方向情報は、3次元方向ベクトルとして記憶部4に記憶されているため、ここではその3次元方向ベクトルの2次元平面への射影情報(本実施形態での座標系では、x,yの情報)を使い、正中線と相対的重力方向情報から得た相対的重力方向とのなす角を(x,y)平面上で計算することによって、基準角が求められる。
【0049】
診断者による判定が可能であれば、どのような表示要素を用いてもよいが、図形や記号などを含む形態で可視的に表示することが好ましく、それによって、直感的に画像座標系での基準方向(座標軸方向または正中線方向)と重力方向とのずれの把握が特に容易となる。
【0050】
図5は、相対的重力方向の表示例を示す図である。図5(a)の例では、重力方向表示要素として、重力を意味する「G」の記号が附属した重力方向の矢印が、正中線とともに、撮影画像と重畳して表示されている。
【0051】
また、図5(b)の例では、画像の座標系に対する相対的な重力方向の矢印ARのみが、診断部位に重ならないと想定される部分を白抜きにして、その領域に表示させている。
【0052】
<相対的重力方向が類似した複数の画像の表示処理>
情報処理装置1Aは、表示装置26に、診断対象画像とともに、それと類似した相対的重力方向情報を持つ対比画像を診断対象画像と同時並列的に表示させることができる。
【0053】
ここで言う「類似」とは、例えば基準角の差が所定の程度以下であるような関係にあることを指しており、基準角の違いがゼロである(つまり基準角が完全に同一である)場合も含む。
【0054】
図6は、このような診断対象画像と対比画像との対応関係を概念的に説明するための図である。この実施形態では被検査者を撮影して得られる画像が動画であるため、図6中にはそれぞれの動画を構成する一連のフレームの画像が時間軸に沿って示されている。
【0055】
基準角が類似となっているかどうかの判定の例においては、診断対象画像についての基準角θの値を制御部5が算出する。そして、後述するように記憶部4にあらかじめ記憶されている多数の対比候補画像のそれぞれについて同様に重力情報(x,y,z)から計算して記憶させておいた基準角θi(i=1,2,3・・・)の値を診断対象画像の基準角θの値と比較する。そして、そして角度差(θ−θi)の絶対値が所定の閾値Δθth以下となっている特定の対比候補画像を対比画像として制御部5が選択する。
【0056】
なお、図6では概念的に、重力情報(x,y,z)も描かれているが、具体的には基準角θを選択指標として対比画像の選択が行われる。
【0057】
図7および図8は、診断対象画像と過去画像との並列表示の例を説明する図である。対比画像が選択されると、図7に示すように、表示制御部13が、診断対象画像と対比画像とを同時並列的に表示装置26に表示させる。ここで、診断対象画像および対比画像のそれぞれは、それぞれの相対的重力方向情報に基づく表示要素をそれぞれの画像上に付加して合成した状態で表示装置26に表示される。その例が図7および図8に示されており、これらにおいては、図5(a),(b)に対応した表示形態で、相対的重力方向を示す表示要素である矢印G,ARが合成された診断対象画像および対比画像が表示されている。
【0058】
対比画像を抽出する母集団としては、例えば、以下のものがある。
【0059】
(1)対比画像を過去の実撮影画像から選択
同じ被検査者に対して過去に撮影した機能画像(過去画像)群について、あらかじめ相対的重力方向情報を対応させて記憶部4に記憶させる。そして、過去画像群の中から、診断対象画像の相対的重力方向が類似する画像を選択して表示する。図9は、対比画像として過去画像を選択する例を説明する図である。過去画像群のそれぞれにおける相対的な重力方向の情報である基準角θiと診断対象画像の基準角θとの類似性に基づいて対比画像が選択される。類似した過去画像が複数あるときには、そのうちの1つを対比画像として選択するが、それは、類似度が最も高いもの(例えば差(θ―θi)の絶対値が最も小さいもの)を選択してもよく、各画像データに付与されている撮影時期の情報を比較することによって、撮影時期が診断対象画像の撮影時期に最も近い1つの画像を選択してもよい。相対的重力方向が類似した複数の画像が存在する場合のこのような絞り込み基準は、以下の他の態様でも適用することができる。
【0060】
また、同じ被検査者ではなく他の被検査者について得ている過去画像群を対比画像の選択の母集団に含めてもよい。被検査者が初診の場合などは特にこの態様が有効である。
【0061】
(2)対比画像を標準画像から選択
種々の重力方向で撮影したときに得られる複数の理想的な機能画像(以下、標準画像と称する。)をあらかじめ、相対的重力方向情報を対応させて記憶部4に記憶させる。この標準画像は、手作業のデジタル作画によって作成してもよく、正常な肺機能を持った健常者を撮影することによって得られた機能画像を活用してもよい。そして、診断対象画像を表示装置26に表示させる際に、対比画像として、診断対象画像と類似した相対的重力方向情報の値を持つひとつの標準画像を選択して表示する。
【0062】
(3)対比画像を3次元標準機能モデルから選択
肺野の2次元の機能画像を作成する基となる肺野の3次元の立体機能画像である3次元標準機能モデルを記憶部4に記憶させておく。この標準機能モデルは、例えば、人体の正中線と相対的重力方向情報に基づく重力方向とのずれが0度である肺野の理想的な機能を示す機能モデルであり、3次元のCGで表される。標準機能モデルは、標準機能画像と同様に、手作業のデジタル作画によって作成してもよく、正常な肺機能を持った健常者を撮影することによって得られた機能画像を基礎としてそれを加工して作成してもよい。
【0063】
その場合には、表示装置26に表示しようとする診断対象画像の相対的重力方向に一致するように肺野の標準機能モデルの変形または修正を行う。重力方向による血流や換気機能の変動を近似的に表現する数式を準備しておけば、これは自動で行うことができる。このようにして得た対比画像を、基準線となる検体の正中線の向きを診断対象画像と合わせた状態で並べて表示することによって、視覚的に違いに比較しやすくなる。
【0064】
以上のそれぞれの方法で対比画像が選択されたときには、被検査者と対比画像との差分をとり、診断対象画像内に含まれる異常個所のみを表示させてもよい。さらに、標準機能画像と過去機能画像を対比させて表示させてもよい。
【0065】
以上のような処理によって、第1実施形態では被検査者の画像診断において、重力の影響を加味することが可能となり、診断能力を向上させることができる。また、画像に対する相対的な重力方向が類似する対比画像と比較しながら診断を行うことができるため、重力の影響を加味した適切な画像診断を容易に行うことが可能となる。さらに、画像上に重力の方向が表示されることによって、重力の方向の影響を容易に判別することが可能となる。
【0066】
<第2実施形態>
第2実施形態では、X線撮影装置の撮影面側に、重力方向をその姿勢で指示するような重力方向指示部材を備えた重力方向指示器を設け、診断対象画像の撮影をする際に、その重力方向指示部材のX線像を被検査者の検査部位の画像の一部に重畳させて撮影を行う。
【0067】
図10は、本発明の第2実施形態における情報処理装置1Bを備える画像診断システム100Bの構成を示すブロック図である。第2実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して重複説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0068】
図10に示されるように、第2実施形態では、情報処理装置1BにX線撮影装置30が備えられている。そして、制御部5の制御下で、X線撮影装置30によって、検体の内臓等に含まれる所定部位が撮影される。
【0069】
X線撮影装置30は、X線源31と、X線画像検出器32と、重力方向指示器33A(33B)と、X線撮影制御部34とを備える。
【0070】
X線源31は、X線をX線画像検出器32に向けて出射する。
【0071】
X線画像検出器32は、X線源31から出射されたX線のうちの被検査者の検査部位を透過するX線の強度分布を電気信号に変換する。X線画像検出器32は、いわゆるX線シンチレータと撮像素子を用いて構成され、平面状にマトリックス状に並べられた複数の画素によって、2次元平面上でX線の強度をサンプリングする。そして、X線画像検出器32は、画素ごとにX線量に比例した電荷値を電気信号に変換し、画像情報として記憶部4に出力する。
【0072】
重力方向指示器33A(33B)は、被検査者の撮影時における重力方向を指示する重力方向指示体41(図11、図12)を含んでなり、被検査者と同時に撮影されて、診断対象画像上に表示される。
【0073】
図11は、X線画像検出器32の撮影面32Dそのものの隅に取り付けられた重力方向指示器33Aの例を示す。重力方向指示器33Aは、支持軸42によって軸支されて、撮影面32Dに平行な面内で揺動可能であり、支持軸42から外れた位置に重心を持つ振り子状の重力方向指示体41を有する。重力方向指示体41は、矢印形状など、その姿勢で重力方向を特定できる形状をしている。重力方向指示体41および支持軸42は、X線の非透過材質、例えば、金、白金、鉛、ガリウム、チタン、タングステン等のX線の吸収率が高い重金属によって構成されるか、あるいはこれらの重金属メッキが施されている。
【0074】
また、図12は、X線源31とX線画像検出器32の撮影面との間に配置される移動自在な重力方向指示器33Bの概略構成を示す図である。重力方向指示器33Bは、重力方向指示器33Aと同様に、重力方向指示器33Bは、支持軸42で軸支されて揺動可能な重力方向指示体41を備えており、支持軸42は自立可能な支持具43に取り付けられている。支持具43のうち少なくともX線の照射域と重なる柱部の部分は、X線の吸収率が低い素材(例えば、シリコン、ガラス、樹脂等)によって構成される。
【0075】
なお、重力方向指示器の形状は図11,12に開示された形状に限定されるものではない。
【0076】
X線撮影制御部34は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、X線撮影装置30全体の動作を制御する。
【0077】
情報処理装置1Bで制御される画像診断システム100Bでは、まず、X線撮影制御部34が、X線源31から被検査者と重力方向指示器33A(33B)とに向けてX線を出射させる。そして、X線画像検出器32が、X線源31から出射されたX線のうちの被検査者と重力方向指示器33A(33B)とを透過するX線の強度分布を電気信号に変換する。この結果、X線画像検出器32が撮影するX線像は、重力方向指示体41のX線陰影の姿勢として表現された重力方向の指示像が診断対象画像上に写し込まれた合成画像となり、それによって診断対象画像に相対的重力方向情報が表示される。
【0078】
以上のような処理により、第2実施形態では、重力方向が容易に認識可能な画像を得ることができるため、被検査者の画像診断において、重力の影響を加味した適切な診断が容易に可能となる。
【0079】
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0080】
例えば、上記実施形態では、FPDによって、胸部の機能画像を捉えた機能を対象としていたが、胸部の形態画像、例えば、胸部の形態を単純にとらえたX線透過像の画像(胸部単純X線画像)を対象としてもよい。
【0081】
第1実施形態では、過去画像群の中から、相対的重力方向が診断対象画像と類似する対比画像を選択して表示する例が示されているが、画像に対する相対的な重力方向が診断対象画像と類似した画像を、複数の過去画像の補間などの修正処理を行って得てもよい。
【0082】
診断対象画像や過去画像などの記憶を画像診断システム外部のデータベースに対して行うことも可能であるが、それらに対応する相対的な重力方向の情報の記憶も外部データベースで行い、オンラインで情報処理装置1A,1Bからの記憶制御や読み出し制御を行ってもよい。
【0083】
また、第1実施形態では、モダリティがFPDであったが、これに限られない。本発明の情報処理装置においては、例えば、CT(Computed Tomography)や、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)などを用いて検体の内部構造をとらえた各種画像を対象としてもよい。
【0084】
なお、上記実施形態ならびに変形例で説明した構成は、矛盾が生じない限り適宜一部の構成を入れ換えてもよい。これらの変形例によっても、前記実施の形態と同様の効果を、達成することができる。
【符号の説明】
【0085】
100A,100B 画像診断システム
1A,1B 情報処理装置
2 画像取得部
3 重力情報取得部
4 記憶部
5 制御部
11 記憶制御部
12 検索部
13 表示制御部
31 X線源
32 X線画像検出器
33A,33B 重力方向指示器
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体に係る画像の解析を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、X線等を用いて内蔵や骨格等に含まれる患部を撮影することによって、各種検査や診断が行われている。近年では、デジタル技術の適用によって、さまざまな画像処理が臨床で利用されるようになっている。そして、呼吸器系疾患の評価のために、形態画像だけでなく生理・生化学的情報を映像化する機能画像も多く活用されている(例えば、非特許文献1等)。
【0003】
一方、人体の撮影においては、撮影時の検体の姿勢、または検出器の配置等によって、検体の撮影位置や体位、画像の向きが変わる場合があり、かかる場合には、撮影画像から正確な情報を得ることが困難となる。特に、ポータブル式の検出器の場合、検体の撮影位置や体位等を常に一定にすることは容易ではない。
【0004】
そのため、撮影時における検体の姿勢情報が得られる技術(例えば、特許文献1等)や撮影時におけるX線画像検出器の傾きを検知して、撮影画像の表示向きを自動的に調整可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−271108号公報
【特許文献2】特開2003−14848号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「フラットパネルX線ディテクタを用いた胸部呼吸動態診断支援画像診断システムの開発」、田中、真田、小林、文部科学省科学研究責補助金特定領域研究「多次元医用画像の知的診断支援」第三回シンポジウム論文集,53−58,2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、呼吸器系疾患の評価においては、肺野における呼吸機能であるガス交換の機能(効率)を解析することが多く行われる。ガス交換の機能の指標としては、換気血流比(V/Q)がある。ここで、換気血流比とは、一定時間あたりの肺血流量(Q)に対する肺胞換気量(V)の割合をいい、また、肺胞換気量とは、肺と血液との間で実際にガス交換に関与している呼吸気量のことをいう。
【0008】
人は、重力の影響により肺底から肺尖部に従い換気血流比が増加していくことが知られている。そのため、同等の重力を受けている領域(すなわち、肺野の重力方向に対して垂直な面)で肺機能を評価することは重要なことである。
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1および特許文献1,2の技術では、重力については特に考慮されておらず、重力の影響を加味した肺野における機能解析を実施することができない。また、肺以外のその他の部位の機能についても、重力の影響を加味する必要がある場合がある。さらに、このような機能情報を活用した診断については、医師の多くの経験と熟練を必要とするという問題もある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像診断において診断能力を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の態様に係る画像診断システムは、X線を出射するX線源と、前記X線源と対向して設けられるX線画像検出手段と、X線非透過性の材質を用いて形成された指示体を有し、前記X線画像検出手段の撮影面側に設けられて、重力方向をその姿勢によって指示する重力方向指示手段とを備える。
【0012】
第2の態様に係る画像診断システムは、第1の態様に係る画像診断システムであって、前記重力方向指示手段が、前記撮影面の隅に取り付けられている。
【0013】
第3の態様に係る画像診断システムは、第2の態様に係る画像診断システムであって、前記重力方向指示手段が、前記指示体を前記撮影面に平行な面内で揺動可能に軸支する支持軸を有しており、前記指示体が、前記支持軸から外れた位置に重心を持つ振り子状の部材を含む。
【0014】
第4の態様に係る画像診断システムは、第1の態様に係る画像診断システムであって、前記重力方向指示手段が、前記指示体を揺動可能に軸支する支持軸と、該支持軸が取り付けられている自立可能な支持具とを有しているとともに、前記X線源と前記撮影面との間に移動自在に配置されている。
【0015】
第5の態様に係る画像診断システムは、第4の態様に係る画像診断システムであって、前記支持具のうちの少なくとも前記X線源から前記X線画像検出手段に至るX線照射域と重なる部分が、前記指示体よりもX線の吸収率が低い素材によって構成されている。
【0016】
第6の態様に係る画像診断システムは、第1から第5の何れか1つの態様に係る画像診断システムであって、前記X線画像検出手段によって検出されるX線の2次元の強度分布を画像データとして取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記画像データを可視的に出力する表示手段とをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
第1から第6のいずれの態様に係る画像診断システムによっても、重力方向が容易に認識可能な画像を得ることができるため、検体の画像診断において、重力の影響を加味した適切な診断が容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における画像診断システム100Aの構成を示すブロック図である。
【図2】重力センサの設置状態の例を示す図である。
【図3】相対的重力方向情報を表現する場合における撮影機能画像上の座標系の例を示す図である。
【図4】画像データと重力方向情報との関連付けを示す図である。
【図5】相対的重力方向の表示例を示す図である。
【図6】診断対象画像と対比画像との対応関係を概念的に説明するための図である。
【図7】診断対象画像と過去画像との並列表示の例を説明する図である。
【図8】診断対象画像と過去画像との並列表示の例を説明する図である。
【図9】対比画像として過去画像を選択する例を説明する図である。
【図10】本発明の第2実施形態における画像診断システム100Bの構成を示すブロック図である。
【図11】X線画像検出器32に設置された重力方向指示器33Aの概略構成を示す正面図である。
【図12】X線源31とX線画像検出器32との間に設けられる重力方向指示器33Bの概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態では、被検査者(検体)の身体に係る生理機能、例えば、肺機能を撮影した画像とその撮影時における重力方向の情報とを取得し、この重力方向の情報を撮影された機能画像と関連づけて記憶する。そして、画像に対する相対的重力方向を示す図形や記号を含む表示要素を該機能画像とともに表示させる。
【0021】
<第1実施形態における画像診断システムの全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態における情報処理装置1Aを備えた画像診断システム100Aの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1で示されるように、画像診断システム100Aの情報処理機能を司る情報処理装置1Aは、画像取得部2、重力情報取得部3、記憶部4、制御部5、および操作部6をバスライン10に接続した一般的なコンピュータの構成となっている。
【0023】
画像取得部2は、被検査者から得られた構造および機能の画像データ、具体的には、形態画像データおよび機能画像データのうちの少なくとも1つに相当する画像データをX線撮影装置20から取得する。なお、本実施形態においては機能画像データが取得される。
【0024】
画像取得部2は、図1に示すように、情報処理装置1Aに接続されたX線撮影装置20から画像データをオンラインで受信するように構成されている。また、DVD等の可搬型の記憶媒体からのデータの読み取りや、スキャナによる画像の読み取りによって画像データを取得するように構成されても良い。さらに、画像取得部2は、画像診断システム100Aの外部に設けた記憶装置、例えばネットワーク回線によって接続されたファイルサーバ等に被検査者を撮影した画像データを記憶しておき、記憶されている複数の画像データの中から所望の被検査者の画像データを検索して取得するように構成されても良い。
【0025】
画像取得部2によって取得された画像データは、後述する記憶部4に記憶される。このような画像データの記憶や、後述する重力方向の情報の記憶も、画像診断システム100Aの外部に設けた記憶装置に対してネットワークを介して行ってもよい。
【0026】
重力情報取得部3は、被検査者のX線撮影を行った際における重力方向の情報を、後述する重力センサ25から取得する。
【0027】
記憶部4は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶装置によって構成され、後述する制御部5で実行されるプログラム、プログラムを実行する際に必要な情報、さらに、画像取得部2および重力情報取得部3から取得される各種情報を記憶する。
【0028】
制御部5は、例えば、CPUを含んで構成され、記憶部4に記憶される制御プログラムを実行することによって、情報処理装置1A全体の動作を決定し、情報処理装置1A全体に指令を与える。また、さらに、画像診断システム100A内の各要素例えば後述する表示装置26に表示の指示を出す。さらに、制御部5は、後述する記憶制御部11、検索部12、表示制御部13の機能も実現する。これらの機能によって、制御部5は、被検査者の撮影の際における重力方向の情報を取得させ、取得された画像データに係る画像の座標系に関連づけて重力方向の情報を記憶させ、また、画像の座標系に対する相対的な重力方向の情報を付加した画像を表示する。これについては図4を参照して後に詳述する。
【0029】
操作部6は、キーボード、タッチパネル、またはマウス等を備えて構成され、ユーザの各種操作にしたがって各種指令信号を制御部5に送信する。
【0030】
また、情報処理装置1Aは、画像診断システム100Aの構成要素ではあるが情報処理装置1Aにとっては外部装置となっている表示装置26、X線撮影装置20等の医療用画像撮影装置、および重力センサ25と接続されている。
【0031】
表示装置26は、例えば、液晶表示ディスプレイ等によって構成され、制御部5で生成される動画像データ等を可視的に出力する。なお、表示装置26を外部装置として情報処理装置1Aに接続せずに、情報処理装置1Aの内部に表示部として構成することによって、情報処理装置1Aに表示装置26の機能を持たせてもよい。
【0032】
X線撮影装置20は、被検査者の内臓等に含まれる所定部位を撮影する。X線撮影装置20では、X線発生源から検体にX線が出射されることで胸部の撮影が行われる。
【0033】
具体的には、X線撮影装置20では、被検査者に対して出射されたX線は、例えば、被検査者の胸部を透過し、X線画像検出器によって、該X線の2次元の強度分布が検出される。このとき、X線画像検出器で得られたX線の強度分布は、被検査者を透過したX線の強度分布に係る画像データとして、図示しないX線撮影装置20内の記憶部に記憶され、記憶された画像データは制御部5からの制御信号に応答して画像取得部2に転送される。あるいは、該画像データは、X線撮影装置20から画像取得部2を通して直接情報処理装置1Aの記憶部4に転送されてもよい。
【0034】
X線撮影装置20のX線画像検出器については、多数の光電変換素子を2次元状に配置してなる大面積の検出面を有するX線検出センサ(フラットパネル検出器、以下FPD)を使用することが好ましく、本実施形態においては、ポータブルのFPDにより取得されたX線動画像に基づいて得られた肺の換気機能画像を用いる。なお、X線画像検出器は、その他にもコンピューテッド・ラジオグラフィー(CR)のイメージングプレート等、公知の種々のものを用いることができる。
【0035】
重力センサ25は、例えば、公知の加速度センサを用いることができる。図2は、重力センサの設置状態の例を示す図である。重力センサ25は、図2(a)に示すようにX線撮影装置20のX線画像検出器22に取り付けるか、または、図2(b)に示すように被検査者に取り付けるかによって、被検査者の撮影時における重力方向の測定が行われる。後者の場合には、X線源21からX線画像検出器22に至るX線照射域から外れた位置に重力センサ25を取り付ける。
【0036】
後者の場合には、重力センサ25自身の姿勢がX線画像検出器22の姿勢と一致する姿勢で重力センサ25を検査対象者に取り付ける。例えばX線画像検出器22の縦中心軸が鉛直軸に対して右に30度程度傾いた姿勢でX線画像検出器22を使用せざるを得ない環境のときには、重力センサ25の縦中心軸もまた鉛直軸に対して右に30度程度傾けた姿勢で重力センサ25を検査対象者に取り付ける。これは、重力センサ25の縦中心軸が検査対象者の正中線にほぼ平行になるように重力センサ25を検査対象者に取り付けることによってほぼ達成できる。また、重力センサ25の出力信号は、引き回し自在な有線ケーブルまたは無線で情報処理装置1Aに送信する。
【0037】
<情報処理装置1Aの処理内容>
情報処理装置1Aは、最初に、被検査者の撮影時における重力方向の情報を取得して、取得された画像データに係る画像の座標系に関連づけて記憶する。この関連づけと記憶の態様は、後述する(図4)。そして、記憶した情報に基づいて、重力方向の情報を撮影された診断対象画像上に付加して表示する。また、診断対象画像と並列的に、画像の座標系に対する相対的な重力方向が診断対象画像と類似する他の機能画像を併せて表示することができる。以下、これらの処理内容について順次に説明する。
【0038】
<重力方向の情報の画像データへの関連づけと記憶処理>
制御部5は、初めに、画像取得部2に被検査者の身体の検査部位に係る生理機能、例えば、肺の換気機能を撮影した画像データをX線撮影装置20から取得させる。以下、撮影によって得られた肺の換気機能画像を、撮影機能画像と称する。また、過去に撮影された画像などと区別するために診断対象画像とも呼ぶ。X線撮影装置20によって撮影された胸部X線動画像データから肺の換気機能画像を取得するためには、既知の方法、例えば『田中、真田、小林、“フラットパネルX線検出器を用いた胸部呼吸動態診断支援画像診断システム開発”文部科学省科学研究責補助金特定領域研究「多次元医用画像の知的診断支援」第三回シンポジウム論文集,53−58,(2006).』の方法を用いることができる。
【0039】
また、制御部5は、重力情報取得部3に重力センサ25によって得られた撮影時における重力方向の情報を取得させる。
【0040】
次に、記憶制御部11は、被検査者の撮影時に重力センサ25から得られた重力方向の情報を画像の座標系に対する相対的な方向を示す相対的重力方向情報として記憶部4に記憶させる。
【0041】
相対的重力方向情報は、例えば、あらかじめ設定された撮影機能画像の座標系における3次元の方向ベクトルで表現されて、記憶部4に記憶される。図3は、相対的重力方向情報を表現する場合における撮影機能画像上の座標系の例を示す図である。図3に示すように、例えば、3次元の方向ベクトルは、撮影機能画像の横軸方向、縦軸方向をそれぞれx方向、y方向とし、画像面に垂直に手前に向いた方向をz方向とする座標系で表現される。多くの場合は、3次元方向ベクトルのうち(x,y)平面での重力方向の傾きが重要であることから、上記の3次元の方向ベクトルを(x,y)平面に射影した2次元方向ベクトルを用いることができる。
【0042】
一般には、空間中で地面方向に向く重力方向をX線撮影装置20のX線画像検出器22に固定された座標系に変換するためには、
(1) X線撮影装置20とは別の手段によって重力方向を知る方法と、
(2) 重力方向との方向関係が既知である指標を設け、X線撮影装置20が撮影した画像にその指標が写し込まれるようにする方法と、
の2種類の方法が考えられる。ここで説明している第1の実施形態は前者に属するものであり、後述する第2の実施形態は後者に属する。
【0043】
診断対象画像における重力方向の情報、より具体的には画像の座標系における基準方向と重力方向との相対方向に関する相対的重力方向情報は、診断対象画像の画像データに関連づけられる。
【0044】
図4は、画像データと重力方向情報との関連付けを示す図である。具体的には、この関連づけは、例えば図4(a)に示すように、診断対象画像の画像データ本体FIを含む画像データファイルFのうち、そのヘッダ部HD内に相対的重力方向情報DRが書込まれてもよい。また、図4(b)に示すように、診断対象画像の画像データファイルF自身には相対的重力方向情報DRは書込まず、画像データファイルFのファイル名FNを、他のファイル例えば所定のテーブルファイルTBの中に追記し、当該テーブル中のファイル名FNを含むレコードに相対的重力方向情報DRが書込まれることによって、間接的に、被検査者の画像データと重力方向の情報とを関連づけてもよい。図4(b)の場合には、その「時点で得られた診断対象画像の情報だけでなく、過去に得られて保存されている各診断対象画像の画像ファイルと、それらの画像における相対的重力方向情報とが関連づけて記憶蓄積されている。
【0045】
<相対的重力方向情報を付加した画像の表示処理>
情報処理装置1Aは、撮影機能画像を表示装置26に表示させる際に、操作部6の操作によって合成モードが指定されていた場合には、記憶部4に記憶された相対的重力方向情報を付加した合成画像として診断対象画像を表示させる。
【0046】
まず、表示制御部13は、記憶部4から表示対象となる診断対象画像の画像データおよびそれに関連づけられた相対的重力方向情報を取得する。次に、表示制御部13は、相対的重力方向情報に基づく表示要素を診断対象画像上に付加した合成画像を生成して、合成後の診断対象画像を表示装置26に表示させる。
【0047】
表示要素としては、例えば、被検査者の画像の正中線を基準線した場合における正中線と重力方向とのずれ(被検査者の画像の正中線と重力方向との相対的な角度関係、ここでは基準角と称する。)の数値表示や矢印表示(重力方向を始点と終点で表示)等を用いる。ただし、正中線とは、身体の中心を上下に貫く中心線のことをいう。
【0048】
一般に、基準角は、診断対象画像から基準となる線(基準線)を算出し、基準線と相対的重力方向情報に基づく重力方向とのなす角を計算することによって求められる。例えば、被検査者の診断対象画像における正中線を基準線とする場合には、そのような正中線をあらかじめ画像処理によって計算しておく。なお、相対的重力方向情報は、3次元方向ベクトルとして記憶部4に記憶されているため、ここではその3次元方向ベクトルの2次元平面への射影情報(本実施形態での座標系では、x,yの情報)を使い、正中線と相対的重力方向情報から得た相対的重力方向とのなす角を(x,y)平面上で計算することによって、基準角が求められる。
【0049】
診断者による判定が可能であれば、どのような表示要素を用いてもよいが、図形や記号などを含む形態で可視的に表示することが好ましく、それによって、直感的に画像座標系での基準方向(座標軸方向または正中線方向)と重力方向とのずれの把握が特に容易となる。
【0050】
図5は、相対的重力方向の表示例を示す図である。図5(a)の例では、重力方向表示要素として、重力を意味する「G」の記号が附属した重力方向の矢印が、正中線とともに、撮影画像と重畳して表示されている。
【0051】
また、図5(b)の例では、画像の座標系に対する相対的な重力方向の矢印ARのみが、診断部位に重ならないと想定される部分を白抜きにして、その領域に表示させている。
【0052】
<相対的重力方向が類似した複数の画像の表示処理>
情報処理装置1Aは、表示装置26に、診断対象画像とともに、それと類似した相対的重力方向情報を持つ対比画像を診断対象画像と同時並列的に表示させることができる。
【0053】
ここで言う「類似」とは、例えば基準角の差が所定の程度以下であるような関係にあることを指しており、基準角の違いがゼロである(つまり基準角が完全に同一である)場合も含む。
【0054】
図6は、このような診断対象画像と対比画像との対応関係を概念的に説明するための図である。この実施形態では被検査者を撮影して得られる画像が動画であるため、図6中にはそれぞれの動画を構成する一連のフレームの画像が時間軸に沿って示されている。
【0055】
基準角が類似となっているかどうかの判定の例においては、診断対象画像についての基準角θの値を制御部5が算出する。そして、後述するように記憶部4にあらかじめ記憶されている多数の対比候補画像のそれぞれについて同様に重力情報(x,y,z)から計算して記憶させておいた基準角θi(i=1,2,3・・・)の値を診断対象画像の基準角θの値と比較する。そして、そして角度差(θ−θi)の絶対値が所定の閾値Δθth以下となっている特定の対比候補画像を対比画像として制御部5が選択する。
【0056】
なお、図6では概念的に、重力情報(x,y,z)も描かれているが、具体的には基準角θを選択指標として対比画像の選択が行われる。
【0057】
図7および図8は、診断対象画像と過去画像との並列表示の例を説明する図である。対比画像が選択されると、図7に示すように、表示制御部13が、診断対象画像と対比画像とを同時並列的に表示装置26に表示させる。ここで、診断対象画像および対比画像のそれぞれは、それぞれの相対的重力方向情報に基づく表示要素をそれぞれの画像上に付加して合成した状態で表示装置26に表示される。その例が図7および図8に示されており、これらにおいては、図5(a),(b)に対応した表示形態で、相対的重力方向を示す表示要素である矢印G,ARが合成された診断対象画像および対比画像が表示されている。
【0058】
対比画像を抽出する母集団としては、例えば、以下のものがある。
【0059】
(1)対比画像を過去の実撮影画像から選択
同じ被検査者に対して過去に撮影した機能画像(過去画像)群について、あらかじめ相対的重力方向情報を対応させて記憶部4に記憶させる。そして、過去画像群の中から、診断対象画像の相対的重力方向が類似する画像を選択して表示する。図9は、対比画像として過去画像を選択する例を説明する図である。過去画像群のそれぞれにおける相対的な重力方向の情報である基準角θiと診断対象画像の基準角θとの類似性に基づいて対比画像が選択される。類似した過去画像が複数あるときには、そのうちの1つを対比画像として選択するが、それは、類似度が最も高いもの(例えば差(θ―θi)の絶対値が最も小さいもの)を選択してもよく、各画像データに付与されている撮影時期の情報を比較することによって、撮影時期が診断対象画像の撮影時期に最も近い1つの画像を選択してもよい。相対的重力方向が類似した複数の画像が存在する場合のこのような絞り込み基準は、以下の他の態様でも適用することができる。
【0060】
また、同じ被検査者ではなく他の被検査者について得ている過去画像群を対比画像の選択の母集団に含めてもよい。被検査者が初診の場合などは特にこの態様が有効である。
【0061】
(2)対比画像を標準画像から選択
種々の重力方向で撮影したときに得られる複数の理想的な機能画像(以下、標準画像と称する。)をあらかじめ、相対的重力方向情報を対応させて記憶部4に記憶させる。この標準画像は、手作業のデジタル作画によって作成してもよく、正常な肺機能を持った健常者を撮影することによって得られた機能画像を活用してもよい。そして、診断対象画像を表示装置26に表示させる際に、対比画像として、診断対象画像と類似した相対的重力方向情報の値を持つひとつの標準画像を選択して表示する。
【0062】
(3)対比画像を3次元標準機能モデルから選択
肺野の2次元の機能画像を作成する基となる肺野の3次元の立体機能画像である3次元標準機能モデルを記憶部4に記憶させておく。この標準機能モデルは、例えば、人体の正中線と相対的重力方向情報に基づく重力方向とのずれが0度である肺野の理想的な機能を示す機能モデルであり、3次元のCGで表される。標準機能モデルは、標準機能画像と同様に、手作業のデジタル作画によって作成してもよく、正常な肺機能を持った健常者を撮影することによって得られた機能画像を基礎としてそれを加工して作成してもよい。
【0063】
その場合には、表示装置26に表示しようとする診断対象画像の相対的重力方向に一致するように肺野の標準機能モデルの変形または修正を行う。重力方向による血流や換気機能の変動を近似的に表現する数式を準備しておけば、これは自動で行うことができる。このようにして得た対比画像を、基準線となる検体の正中線の向きを診断対象画像と合わせた状態で並べて表示することによって、視覚的に違いに比較しやすくなる。
【0064】
以上のそれぞれの方法で対比画像が選択されたときには、被検査者と対比画像との差分をとり、診断対象画像内に含まれる異常個所のみを表示させてもよい。さらに、標準機能画像と過去機能画像を対比させて表示させてもよい。
【0065】
以上のような処理によって、第1実施形態では被検査者の画像診断において、重力の影響を加味することが可能となり、診断能力を向上させることができる。また、画像に対する相対的な重力方向が類似する対比画像と比較しながら診断を行うことができるため、重力の影響を加味した適切な画像診断を容易に行うことが可能となる。さらに、画像上に重力の方向が表示されることによって、重力の方向の影響を容易に判別することが可能となる。
【0066】
<第2実施形態>
第2実施形態では、X線撮影装置の撮影面側に、重力方向をその姿勢で指示するような重力方向指示部材を備えた重力方向指示器を設け、診断対象画像の撮影をする際に、その重力方向指示部材のX線像を被検査者の検査部位の画像の一部に重畳させて撮影を行う。
【0067】
図10は、本発明の第2実施形態における情報処理装置1Bを備える画像診断システム100Bの構成を示すブロック図である。第2実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して重複説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0068】
図10に示されるように、第2実施形態では、情報処理装置1BにX線撮影装置30が備えられている。そして、制御部5の制御下で、X線撮影装置30によって、検体の内臓等に含まれる所定部位が撮影される。
【0069】
X線撮影装置30は、X線源31と、X線画像検出器32と、重力方向指示器33A(33B)と、X線撮影制御部34とを備える。
【0070】
X線源31は、X線をX線画像検出器32に向けて出射する。
【0071】
X線画像検出器32は、X線源31から出射されたX線のうちの被検査者の検査部位を透過するX線の強度分布を電気信号に変換する。X線画像検出器32は、いわゆるX線シンチレータと撮像素子を用いて構成され、平面状にマトリックス状に並べられた複数の画素によって、2次元平面上でX線の強度をサンプリングする。そして、X線画像検出器32は、画素ごとにX線量に比例した電荷値を電気信号に変換し、画像情報として記憶部4に出力する。
【0072】
重力方向指示器33A(33B)は、被検査者の撮影時における重力方向を指示する重力方向指示体41(図11、図12)を含んでなり、被検査者と同時に撮影されて、診断対象画像上に表示される。
【0073】
図11は、X線画像検出器32の撮影面32Dそのものの隅に取り付けられた重力方向指示器33Aの例を示す。重力方向指示器33Aは、支持軸42によって軸支されて、撮影面32Dに平行な面内で揺動可能であり、支持軸42から外れた位置に重心を持つ振り子状の重力方向指示体41を有する。重力方向指示体41は、矢印形状など、その姿勢で重力方向を特定できる形状をしている。重力方向指示体41および支持軸42は、X線の非透過材質、例えば、金、白金、鉛、ガリウム、チタン、タングステン等のX線の吸収率が高い重金属によって構成されるか、あるいはこれらの重金属メッキが施されている。
【0074】
また、図12は、X線源31とX線画像検出器32の撮影面との間に配置される移動自在な重力方向指示器33Bの概略構成を示す図である。重力方向指示器33Bは、重力方向指示器33Aと同様に、重力方向指示器33Bは、支持軸42で軸支されて揺動可能な重力方向指示体41を備えており、支持軸42は自立可能な支持具43に取り付けられている。支持具43のうち少なくともX線の照射域と重なる柱部の部分は、X線の吸収率が低い素材(例えば、シリコン、ガラス、樹脂等)によって構成される。
【0075】
なお、重力方向指示器の形状は図11,12に開示された形状に限定されるものではない。
【0076】
X線撮影制御部34は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、X線撮影装置30全体の動作を制御する。
【0077】
情報処理装置1Bで制御される画像診断システム100Bでは、まず、X線撮影制御部34が、X線源31から被検査者と重力方向指示器33A(33B)とに向けてX線を出射させる。そして、X線画像検出器32が、X線源31から出射されたX線のうちの被検査者と重力方向指示器33A(33B)とを透過するX線の強度分布を電気信号に変換する。この結果、X線画像検出器32が撮影するX線像は、重力方向指示体41のX線陰影の姿勢として表現された重力方向の指示像が診断対象画像上に写し込まれた合成画像となり、それによって診断対象画像に相対的重力方向情報が表示される。
【0078】
以上のような処理により、第2実施形態では、重力方向が容易に認識可能な画像を得ることができるため、被検査者の画像診断において、重力の影響を加味した適切な診断が容易に可能となる。
【0079】
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0080】
例えば、上記実施形態では、FPDによって、胸部の機能画像を捉えた機能を対象としていたが、胸部の形態画像、例えば、胸部の形態を単純にとらえたX線透過像の画像(胸部単純X線画像)を対象としてもよい。
【0081】
第1実施形態では、過去画像群の中から、相対的重力方向が診断対象画像と類似する対比画像を選択して表示する例が示されているが、画像に対する相対的な重力方向が診断対象画像と類似した画像を、複数の過去画像の補間などの修正処理を行って得てもよい。
【0082】
診断対象画像や過去画像などの記憶を画像診断システム外部のデータベースに対して行うことも可能であるが、それらに対応する相対的な重力方向の情報の記憶も外部データベースで行い、オンラインで情報処理装置1A,1Bからの記憶制御や読み出し制御を行ってもよい。
【0083】
また、第1実施形態では、モダリティがFPDであったが、これに限られない。本発明の情報処理装置においては、例えば、CT(Computed Tomography)や、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)などを用いて検体の内部構造をとらえた各種画像を対象としてもよい。
【0084】
なお、上記実施形態ならびに変形例で説明した構成は、矛盾が生じない限り適宜一部の構成を入れ換えてもよい。これらの変形例によっても、前記実施の形態と同様の効果を、達成することができる。
【符号の説明】
【0085】
100A,100B 画像診断システム
1A,1B 情報処理装置
2 画像取得部
3 重力情報取得部
4 記憶部
5 制御部
11 記憶制御部
12 検索部
13 表示制御部
31 X線源
32 X線画像検出器
33A,33B 重力方向指示器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を出射するX線源と、
前記X線源と対向して設けられるX線画像検出手段と、
X線非透過性の材質を用いて形成された指示体を有し、前記X線画像検出手段の撮影面側に設けられて、重力方向をその姿勢によって指示する重力方向指示手段と、
を備えることを特徴とする画像診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像診断システムであって、
前記重力方向指示手段が、
前記撮影面の隅に取り付けられていることを特徴とする画像診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像診断システムであって、
前記重力方向指示手段が、
前記指示体を前記撮影面に平行な面内で揺動可能に軸支する支持軸を有しており、
前記指示体が、
前記支持軸から外れた位置に重心を持つ振り子状の部材を含むことを特徴とする画像診断システム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像診断システムであって、
前記重力方向指示手段が、
前記指示体を揺動可能に軸支する支持軸と、該支持軸が取り付けられている自立可能な支持具とを有しているとともに、前記X線源と前記撮影面との間に移動自在に配置されていることを特徴とする画像診断システム。
【請求項5】
請求項4に記載の画像診断システムであって、
前記支持具のうちの少なくとも前記X線源から前記X線画像検出手段に至るX線照射域と重なる部分が、前記指示体よりもX線の吸収率が低い素材によって構成されていることを特徴とする画像診断システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載の画像診断システムであって、
前記X線画像検出手段によって検出されるX線の2次元の強度分布を画像データとして取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記画像データを可視的に出力する表示手段と、
をさらに備えることを特徴とする画像診断システム。
【請求項1】
X線を出射するX線源と、
前記X線源と対向して設けられるX線画像検出手段と、
X線非透過性の材質を用いて形成された指示体を有し、前記X線画像検出手段の撮影面側に設けられて、重力方向をその姿勢によって指示する重力方向指示手段と、
を備えることを特徴とする画像診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像診断システムであって、
前記重力方向指示手段が、
前記撮影面の隅に取り付けられていることを特徴とする画像診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像診断システムであって、
前記重力方向指示手段が、
前記指示体を前記撮影面に平行な面内で揺動可能に軸支する支持軸を有しており、
前記指示体が、
前記支持軸から外れた位置に重心を持つ振り子状の部材を含むことを特徴とする画像診断システム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像診断システムであって、
前記重力方向指示手段が、
前記指示体を揺動可能に軸支する支持軸と、該支持軸が取り付けられている自立可能な支持具とを有しているとともに、前記X線源と前記撮影面との間に移動自在に配置されていることを特徴とする画像診断システム。
【請求項5】
請求項4に記載の画像診断システムであって、
前記支持具のうちの少なくとも前記X線源から前記X線画像検出手段に至るX線照射域と重なる部分が、前記指示体よりもX線の吸収率が低い素材によって構成されていることを特徴とする画像診断システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載の画像診断システムであって、
前記X線画像検出手段によって検出されるX線の2次元の強度分布を画像データとして取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記画像データを可視的に出力する表示手段と、
をさらに備えることを特徴とする画像診断システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−78697(P2013−78697A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22240(P2013−22240)
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2009−92025(P2009−92025)の分割
【原出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2009−92025(P2009−92025)の分割
【原出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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