説明

画像診断装置

【課題】所定の時間内に検査ができる走査対象の数を増加できる、効率の高い画像診断装置を提供する。
【解決手段】画像診断装置が複数の検査を順次実行するに際し、総検査時間が最短となる検査のセットを探索する。画像診断装置は複数の検査を実行する順序が異なる複数の検査のセットで総検査時間をそれぞれ計算し、計算された総検査時間の中から最短の総検査時間を特定する。特定された検査のセットの順序に従って、複数の検査の走査処理が順次実行され、走査処理で取得された走査データに基づいて複数の検査の画像再構成処理が順次実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査対象を走査することにより取得した走査データに基づいて画像再構成処理を実施する画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療の分野では、被検体の内部組織を観察するために様々な種類の画像診断装置が提供されている。これらの画像診断装置には、X線撮像装置、磁気共鳴撮像(MRI:Magnetic
Resonance Imaging)装置、及びX線コンピュータ断層撮像(CT:Computer Tomography)装置、シングルフォトンエミッション・コンピュータ断層撮像(「SPECT」)装置、及びポジトロン放出断層X線写真法撮像(「PET」)装置等がある。各画像診断装置は、走査対象を走査することにより走査データを取得し、取得した走査データに基づいて画像再構成処理を実施する。画像診断装置は、医療用途の他にも、物体の内部構造を検査する非破壊検査等の産業用途などさまざまな分野において利用されている。各画像診断装置は、それが生成する画像において、それぞれ利点及び欠点があることが知られている。
【0003】
かかる画像診断装置の中には、走査の方法や画像再構成の方法が異なる様々な種類の検査を順次実施することができるものがある。それぞれの検査は、提供できる情報の種類が異なり、例えば特定の検査が特定の臓器を高品質な画質で再構成できる等、それぞれの検査で有利な点や不利な点が存在し、質の高い総合的な診断を行うために1人の患者に対して複数の検査を連続して実施することが行われている。例えば、MRI装置の場合、パラレルイメージング法やスピンエコー法等の様々な方法に基づく検査が連続して行われることがある。パラレルイメージング法等、比較的最近開発された検査方法は、スピンエコー法等の従来の手法に比べ、走査時間を短縮する一方、画像再構成処理を行うアルゴリズムが複雑になり、画像再構成処理に多くの時間を要する(特許文献1)。
【0004】
このような様々な検査を順次実施するに際し、走査処理(スキャン処理)と画像再構成処理を並列に実行することができる画像診断装置がある。しかし、そのような並列処理の能力を有する画像診断装置も複数の画像再構成処理同士や複数の走査処理同士を並列に実行することが出来ないのが一般的である。このため、先行する検査の画像再構成処理が長いと、次の検査の走査が終了したにもかかわらず、次の検査の画像再構成処理が開始できない場合がある。特に、検査の最後に走査処理時間(スキャン処理時間)が短く、画像再構成処理時間の長いパラレルイメージング法による検査を複数行うと、全ての検査の走査処理が終了したにも関わらず、画像再構成が終了せず、結果として、総検査時間が延びてしまうという問題がある。総検査時間が延びると、例えば、患者を長くMRI装置に留める必要が生じたり、次の患者の検査の開始時間が遅くなったりしてしまうという問題が生じる。
【0005】
かかる問題に関し、特許文献2は、画像再構成処理を一時的に中断し、一部の再構成された画像を確認し、かかる一部の画像に問題がなければ患者をMRI装置から出すと共に画像再構成処理を再開し、速やかに次の患者の検査に移り、再構成された一部の画像に問題がある場合にはMRI検査のやり直しを行う技術が記載されている。しかし、かかる技術によっても、前の患者の画像再構成処理が終わるまで次の患者の画像再構成処理ができないので、患者1人当たりの総検査時間は依然長く、所定の時間内に検査ができる患者の数を増加できる程度は限定的である。
【特許文献1】特開2004―344183号公報
【特許文献2】特開2008−35902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、走査対象(人体又は人体以外の物体を含む)当たりの総検査時間を短縮でき、所定の時間内に検査ができる走査対象の数を増加できる、効率の高い画像診断装置が提供されることが望まれる。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、走査対象当たりの総検査時間を短縮できる、効率の高い画像診断装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の一態様は、所定の時間内に検査ができる走査対象の数を増加できる、効率の高い画像診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の一態様は、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、検査の順序の変更を行うか否かを指定できる融通性の高い画像診断装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の一態様は、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、操作者が使用しやすい画像診断装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の一態様は、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、操作者が効率の改善の程度を確認できる画像診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の一態様は、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、検査の順序の決定を高速に行うことのできる画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様において、画像診断装置が複数の検査を順次実行するに際し、画像診断装置は、総検査時間が最短となる検査のセットを探索する。画像診断装置は、複数の検査を実行する順序が異なる複数の検査のセットについて総検査時間をそれぞれ計算し、計算された総検査時間の中から最短の総検査時間を特定する。特定された検査のセットの順序に従って、複数の検査の走査処理が順次実行される。また、走査処理で取得された走査データに基づいて複数の検査の画像再構成処理が順次実行される。
【0014】
本発明の他の一態様において、
所定の走査処理を所定の走査処理時間で実行した後に、前記走査処理に対応する画像再構成処理を所定の画像再構成処理時間で実行するn個(nは2以上の整数)の検査である、該n個の検査を順次実行する画像診断装置であって、
前記n個の検査を実行する順序が異なるk個の検査のセット(kは2以上n!以下の整数)で総検査時間をそれぞれ計算し、計算されたk個の総検査時間の中から最短の総検査時間又は、前記最短の総検査時間に準じて短い総検査時間に対応する検査のセットを特定する制御部、
を備える装置が提供される。
【0015】
本発明の他の一態様において、
前記総検査時間の算出に際し、各検査の走査処理の開始時間及び終了時間と、画像再構成処理の開始時間及び終了時間とを求め、
i番目(iは2以上n以下の整数)の走査処理の開始時間は、i−1番目の走査処理の終了時間に設定され、
i番目の走査処理の終了時間は、i番目の走査処理の開始時間にi番目に順序付けられた検査の走査処理時間を加えた時間に設定され、
i番目の画像再構成処理の開始時間は、i番目の走査処理の終了時間とi−1番目の画像再構成処理の終了時間の大きい方の時間に設定され、
i番目の画像再構成処理の終了時間は、i番目の画像再構成処理の開始時間にi番目に順序付けられた検査の画像再構成処理時間を加えた時間に設定される。
【0016】
本発明の他の一態様において、
前記n個の検査のうちの少なくとも1つの検査の走査パラメータの変更を操作者が入力する操作部をさらに備え、
前記少なくとも1つの検査の走査処理時間が前記操作者が変更した走査パラメータによって変更される。本発明の一態様において、前記操作部が前記n個の検査のうちの少なくとも1つの検査の画像再構成パラメータの変更を操作者が入力することを可能にし、
前記画像再構成パラメータが、ハーフフーリエ処理の有無又はパラレルイメージング処理の有無に関する画像再構成パラメータであり、前記走査パラメータが、イメージサイズ又はスライス枚数に関する走査パラメータである。
【0017】
本発明の他の一態様において、
前記制御部は、j番目の検査のセット(jは(k!−2)以下の整数)の総検査時間の計算の際に、以下の条件:
(i番目の検査の画像再構成処理の終了時間)−(i番目の検査の走査処理の終了時間)≧(i+1番目の検査の走査処理時間)+(i+2番目の検査の走査処理時間)+...+(n番目の検査の走査処理時間)
を判断し、前記条件が満たされる場合には、その1番目〜i番目の検査でj番目の組合せの1番目〜i番目の検査と同じ検査が同じ順序で並び、そのi+1番目〜n番目の検査でj番目の組合せのi+1番目〜n番目の検査と同じ検査が異なる順序で並ぶ(j+1番目の組合せ)〜(j+(n−i)!−1番目の組合せ)の内の少なくとも1つの総検査時間にj番目の総検査時間を代入する。
【0018】
本発明の他の一態様において、
前記並ぶ順序を変更する複数の検査を表示する表示部を更に備え、
操作者の選択により、前記複数の検査から少なくとも1つの検査が除外され、該除外された検査の順序は変更されない。
【0019】
本発明の他の一態様において、
前記制御部が特定した最短の総検査時間又は最短の総検査時間に準じて短い総検査時間を表示する表示部を更に備える。
【0020】
本発明の他の一態様において、
前記表示部が、前記n個の検査の走査処理が順次実行されているときに、前記n個の検査の走査処理が全て完了するまでの残り時間を表示する。
【0021】
本発明の他の一態様において、
前記表示部が、前記n個の検査の画像再構成処理が順次実行されているときに、前記n個の検査の画像再構成処理が全て完了するまでの残り時間を表示する。
【0022】
本発明の他の一態様において、
前記k個の検査のセットで総検査時間を計算している間に、該計算の計算時間が所定の値を超えた場合、又は総検査時間の計算が行われた検査のセットの数が所定の数を超えた場合に、前記総検査時間の計算がうち切られる。
【0023】
本発明の他の一態様において、前記画像診断装置はMRI装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、走査対象当たりの総検査時間を短縮できる、効率の高い画像診断装置を提供することができる。
【0025】
本発明の一態様によれば、所定の時間内に検査ができる走査対象の数を増加できる、効率の高い画像診断装置を提供することができる。
【0026】
本発明の他の一態様によれば、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、検査の順序の変更を行うか否かを指定できる融通性の高い画像診断装置を提供することができる。
【0027】
本発明の他の一態様によれば、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、操作者が使用しやすい画像診断装置を提供することができる。
【0028】
本発明の他の一態様によれば、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、操作者が効率の改善の程度を確認できる画像診断装置を提供することができる。
【0029】
本発明の他の一態様によれば、かかる効率の高い画像診断装置を提供するに際し、検査の順序の決定を高速に行うことのできる画像診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明をMRI装置に適用した場合の好適な実施の形態について説明する。なお、本発明はX線撮像装置、X線CT装置、SPECT装置、PET装置等の様々な画像診断装置に適用できるものである。また、本発明の画像診断装置の用途も、医療用途に限定されず、物体の内部構造を検査する非破壊検査等の産業用途など様々な用途に使用することができる。本発明をMRI装置に適用した場合の実施形態を説明することは、本発明をかかる実施形態に限定することを意図するものではない。
【0031】
図1において、静磁場マグネット部12は、被検体40が収容される静磁場空間11に静磁場を形成するために設けられている。静磁場マグネット部12は、水平磁場型であって、被検体40が収容される静磁場空間11において載置される被検体40の体軸方向に沿うように、超伝導磁石(図示なし)が静磁場を形成する。なお、静磁場マグネット部12は、水平磁場型の他に、垂直磁場型であってもよく、永久磁石により構成されていてもよい。
【0032】
勾配コイル部13は、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号に3次元の位置情報を持たせるために、静磁場空間11に勾配磁場を形成する。勾配コイル部13は、スライス選択勾配磁場、読み取り勾配磁場、位相エンコード勾配磁場の3種類の勾配磁場を形成するために勾配コイルを3系統有する。
【0033】
RFコイル部14は、たとえば、被検体40の撮影領域である頭部全体を囲むように配置されており、送信用と受信用とを兼用するように構成されている。RFコイル部14は、静磁場空間11内の被検体に電磁波であるRF信号を送信して高周波磁場を形成し、被検体40の撮影領域におけるプロトンのスピンを励起する。そして、RFコイル部14は、その励起されたプロトンから発生する電磁波を磁気共鳴信号として受信する。なお、RFコイル部14は、送信用コイルと受信用コイルが独立するように設けてもよい。
【0034】
RF駆動部22は、RFコイル部14を駆動させて静磁場空間11内に高周波磁場を形成するために、ゲート変調器(図示なし)とRF電力増幅器(図示なし)とRF発振器(図示なし)とを有する。RF駆動部22は、制御部30からの制御信号に基づいて、RF発振器からのRF信号を、ゲート変調器を用いて所定のタイミングおよび所定の包絡線の信号に変調する。そして、ゲート変調器により変調されたRF信号を、RF電力増幅器により増幅した後、RFコイル部14に出力する。
【0035】
勾配駆動部23は、制御部30の制御信号に基づいて勾配コイル部13を駆動させて、静磁場空間11内に勾配磁場を発生させる。勾配駆動部23は、勾配コイル部13の3系統の勾配コイルに対応して3系統の駆動回路(図示なし)を有する。
【0036】
データ収集部24は、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号を収集するために、位相検波器(図示なし)とアナログ/デジタル変換器(図示なし)とを有する。データ収集部24は、RFコイル部14からの磁気共鳴信号を、RF駆動部22のRF発振器の出力を参照信号として、位相検波器によって位相検波し、アナログ/デジタル変換器に出力する。そして、位相検波器により位相検波されたアナログ信号である磁気共鳴信号を、アナログ/デジタル変換器によってデジタル信号に変換して、画像再構成部33に出力する。
【0037】
テーブル(table)25は、被検体40を載置するクレードル(cradle)26を有する。テーブル25は、被検体を制御部30からの制御信号に基づいて、収容空間11の内部と外部との間でクレードル26に載置された被検体40を移動する。
【0038】
制御部30は、コンピュータと、コンピュータを用いて所定の走査(スキャン)に対応する動作を各部に実行させるプログラムと、該プログラムがロードされるメモリとを有する。そして、制御部30は、操作部32に接続されており、操作部32に入力された操作信号を処理し、RF駆動部22と勾配駆動部23とデータ収集部24とテーブル25との各部に、制御信号を出力し制御を行うコンピュータである走査用プロセッサを備える。また、制御部30は、所望の画像を得るために、操作部32からの操作信号に基づいて画像再構成部33を制御する。また、制御部30は、操作部から入力された情報を受信し、受信した情報に基づいて、総検査時間を短縮する検査の順序を計算し、その結果を表示部34に出力する。
【0039】
記憶部31は、ハードディスク装置等の記憶装置により構成されている。そして、記憶部31は、データ収集部24に収集された画像再構成処理前の磁気共鳴信号、画像再構成部33で画像再構成処理された画像データ等を記憶する。
【0040】
操作部32は、キーボードやマウスなどの操作デバイスにより構成されており、オペレータの操作に応じた操作信号を制御部30に出力する。
【0041】
画像再構成部33は、コンピュータである再構成用プロセッサにより構成されている。そして、画像再構成部33は、データ収集部24に接続されており、データ収集部24から出力される磁気共鳴信号に対して画像再構成処理を実施して、画像を生成する。
【0042】
表示部34は、ディスプレイなどの表示デバイスにより構成されており、画像再構成部33が生成する被検体40の画像を表示する。また、表示部34の表示画面には、後述する検査順序の変更や検査に使用する各種パラメータを入力するための各種ウインドウが表示される。
【0043】
<選択順に従った総検査時間の算出>
図2は、操作者が選択した複数の検査の走査処理と画像再構成処理が実施される様子を示す概念図である。この例において、操作者は、走査処理時間90秒・画像再構成処理時間45秒の検査1(Se1)、走査処理時間10秒・画像再構成処理時間50秒の検査2(Se2)、走査処理時間15秒・画像再構成処理時間25秒の検査1(Se3)を選択している。本発明の好適な実施例では、操作者が実施する検査の種類を選択し、検査パラメータを設定した段階で後述する総検査時間の計算処理が行われる。制御部30は、総検査時間の計算処理の終了後に図8に示すウインドウを表示部34に出力する。操作者は、このウインドウに表示された内容で特に変更の必要が無いと判断した場合には、この表示内容で一連の検査(検査セット)を実施することができる。
【0044】
図2に示される順序で検査を実施する場合、この順序に従って各検査の走査処理(Scan)が行われ、各走査処理(Se1Scan−Se3Scan)により収集された走査データは、上記順序に従って再構成用プロセッサにより順次再構成される。検査1の画像再構成処理(Se1Recon)は、検査1の走査処理(Se1Scan)で収集されたデータを使用する。このため、検査1の画像再構成処理は、検査1の走査処理の終了後に開始される。また、上述のように、再構成用プロセッサは複数の画像再構成処理を同時に処理できないので、検査2の画像再構成処理(Se2Recon)は、検査1の画像再構成処理(Se1Recon)の終了後に開始する。同様に、検査3の画像再構成処理(Se3Recon)は、検査2の画像再構成処理(Se2Recon)の終了後に開始する。
【0045】
したがって、図2に示す例では、総検査時間は:
総検査時間=検査1の走査処理時間+検査1の画像再構成処理時間+検査2の画像再構成処理時間+検査3の画像再構成処理時間=90+45+50+25=210(秒)
となる。
【0046】
<総検査時間を最短にする組合せの探索>
しかし、後述するように、この図2の順序とは異なる順序で検査を実施することにより総検査時間を短縮化することができる。このため本発明の好適な実施例の一態様では、制御部30は、図2〜図7に示す検査のセットの総検査時間を検証し、最も総検査時間が短くなる組合せを自動的に探索する。すなわち、順序を変更できる検査の数が図2の例のように3つの場合:
組合せ1(図2):検査1−>検査2−>検査3
組合せ2(図3):検査1−>検査3−>検査2
組合せ3(図4):検査2−>検査1−>検査3
組合せ4(図5):検査2−>検査3−>検査1
組合せ5(図6):検査3−>検査1−>検査2
組合せ6(図7):検査3−>検査2−>検査1
の6通りの組合せが検証される。
【0047】
すなわち、
組合せ1(図2)の総検査時間=90+45+50+25=210
組合せ2(図3)の総検査時間=90+45+25+50=210
組合せ3(図4)の総検査時間=10+90+45+25=170
組合せ4(図5)の総検査時間=10+15+90+45=160
組合せ5(図6)の総検査時間=15+90+45+50=200
組合せ6(図7)の総検査時間=15+10+90+45=160
となる。なお、上記の加算方法と図2〜7の各図の下方に表示された矢印は、読者が各検査のセットで総検査時間の計算を簡単に計算できるようにするものであり、後述するように、本発明の好適な実施例における制御部30の実際の計算方法と異なることに留意されたい。
【0048】
さらに具体的な制御部30の動作を説明すると、制御部30は、各組合せにおいて、1番目の走査処理〜n番目(図2〜7の場合、n=3)の走査処理の各々について開始時間と、終了時間とを設定する。同様に、1番目の画像再構成処理〜n番目の画像再構成処理の各々についても開始時間と終了時間を設定する。そして、制御部30は、n番目の画像再構成処理の終了時間をその検査のセットにおける総検査時間とする。さらに具体的な手順を図9のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
図9は、図4の例における総検査時間の計算手順を示している。図4の例では初期設定として検査数nに3が入力される。また、計算手順において何番目の検査が計算対象であるかを示す変数iに1が入力される(ステップ602)。次に、ステップ603で、図4の組合せに対応して1番目〜n番目の走査処理時間と再構成処理時間が設定される。
【0050】
ステップ605で、第1番目の走査処理の開始時間に0が、終了時間に1番目の検査に順序付けられた検査2の走査処理時間である10が代入(設定)される。第1番目の画像再構成処理の開始時間に第1番目の走査処理の終了時間である10が代入される。第1番目の画像再構成処理の終了時間に検査2の画像再構成処理時間(50)を第1番目の画像再構成処理の開始時間(10)に加算した60が代入される。
【0051】
ステップ607で次の検査の処理に移った後、第2番目の走査処理の開始時間には第1番目の走査処理の終了時間である10が代入される。第2番目の走査処理の終了時間には第2番目の走査処理の開始時間(10)に2番目に順序付けられた検査1の走査処理時間(90)を加算した値100が代入される(ステップ609)。第2番目の画像再構成処理の開始時間には第2番目の走査処理の終了時間(100)と第1番目の画像再構成処理の終了時間(60)の大きい方の値(100)が代入される(ステップ611〜615)。第2番目の画像再構成処理の終了時間には、検査1の画像再構成処理時間(45)を第2番目の画像再構成処理の開始時間(100)に加算した145が代入される(ステップ617)。
【0052】
ステップ619、607で次の検査の処理に移った後、第3番目の走査処理の開始時間には第2番目の走査処理の終了時間である100が代入される。第3番目の走査処理の終了時間には第3番目の走査処理の開始時間(100)に3番目に順序付けられた検査3の走査処理時間(15)を加算した値115が代入される(ステップ609)。第3番目の画像再構成処理の開始時間には第3番目の走査処理の終了時間(115)と第2番目の画像再構成処理の終了時間(145)の大きい方の値(145)が代入される(ステップ611〜615)。第3番目の画像再構成処理の終了時間には、検査3の画像再構成処理時間(25)を第3番目の画像再構成処理の開始時間(145)に加算した170が代入される(ステップ617)。この例では、第3番目の画像再構成処理の終了時間170が総検査時間となる(ステップ619、621)。
【0053】
図4の例では、検査数nが3であったが、検査数nが3よりも大きいときも、制御部30は同様にして、i番目(iは2以上の整数)の走査処理の開始時間及び終了時間と画像再構成処理の開始時間及び終了時間を以下のアルゴリズムに従って計算する(「=」は右側の値を左側の変数に代入することを意味する)。
i番目の走査処理の開始時間=i−1番目の走査処理の終了時間(ステップ609)
i番目の走査処理の終了時間=i番目の走査処理の開始時間+i番目に順序付けられた検査の走査処理時間(ステップ609)
i番目の画像再構成処理の開始時間=(i番目の走査処理の終了時間とi−1番目の画像再構成処理の終了時間の大きい方)(ステップ611〜615)
i番目の画像再構成処理の終了時間=i番目の画像再構成処理の開始時間+i番目に順序付けられた検査の画像再構成処理時間(ステップ617)
【0054】
すなわち、制御部30は、総検査時間の計算過程において、i番目の画像再構成処理の終了時間は、i番目の走査処理の終了時間とi−1番目の画像再構成処理の終了時間の大きい方にi番目に順序付けられた検査の画像再構成処理時間を加えた値が設定される。
【0055】
なお、ステップ603で説明したように、「i番目に順序付けられた検査」は、様々な組合せで総検査時間を計算する過程で「i番目に順序付けられた検査」であり、i=3とすると、図2、4の場合は検査3、図3、6の場合検査2、図5、7の場合検査1が「i番目に順序付けられた検査」になる。
【0056】
この例では、組合せ4(図5)と組合せ6(図7)による順序が総検査時間を最短にする。図5、7が示すように、比較的長い画像再構成処理(検査2の画像再構成処理)が実行されているときに比較的長い走査(検査1の走査処理)が実行される組合せが総検査時間をより短縮することができる。
【0057】
この例の場合、順序を変更できる検査の数が3つであるが、一般的に、異なる順序となる検査のセットは、順序を変更できる検査の数が2つの場合は2通り(2!)、3つの場合は6通り(3!)、4つの場合は24通り(4!)、5つの場合は120通り(5!)、6つの場合は720通り(6!)となる。ここで説明する実施例では全ての組合せが検証される(「!」は順列を示す記号)。
【0058】
本発明の好適な実施例の一態様において、図8に示すように、制御部30は、操作者が最初に入力した検査の順序と、その順序で検査を実施した場合の総検査時間とを表示部4に出力する。また、図11に示すように、総検査時間を最短にする組合せにおける検査の順序と、その順序で検査を実施した場合の(最短)総検査時間とを図8と同様に表示部34に出力する。操作者は、最初に入力した検査の順序か、最短総検査時間の検査の順序かを選択し、一連の検査を実行するように操作部32に入力を行い、選択した順序でMRI装置1に一連の検査(検査セット)を実施させることができる。なお、図11は、図5に対応する最短総検査時間の検査順序のみを表示した例であるが、図5及び図7に対応する2つの検査順序等、最短総検査時間となる全て(又は所定の数)の検査順序を同時に表示して、その内の1つを操作者に選択させてもよい。さらに、総検査時間が短い順に所定の数の検査順序及びそれぞれに対応する総検査時間を同時に表示し、その内の1つの検査順序を操作者に選択させてもよい。
【0059】
また、図5、7の例のように、総検査時間を最短にする検査のセットが複数存在する場合、表示部34に、いずれの組合せを希望するかを訪ねるウインドウを出力することもできる。この場合、操作者は、所望の組合せを選択し、OKボタンを押すことにより、選択した順序でMRI装置10に検査を実施させることができる。他の例では、最初に実行する操作処理の処理時間がより短い組合せ(組合せ4(図5))を優先する等、予め所定の条件が設定されており、総検査時間を最短にする複数組合せから、その条件に合った組合せが自動的に選択される。
【0060】
<各検査の予想画像再構成処理時間の計算>
図2〜7の例では各検査の走査処理の時間を、検査1は、90秒、検査2は、10秒、検査3は、15秒としている。また、各検査の画像再構成処理の時間を、検査1は、45秒、検査2は、50秒、検査3は、25秒としている。これらの時間に、各検査の平均走査処理時間や平均画像再構成処理時間を固定的に設定することもできる。しかし、本発明の好適な実施例の一態様においては、各検査における総走査処理時間、総画像再構成処理時間、総検査時間をより厳密に推定するために、以下に説明するように各検査における推定走査処理時間、推定画像再構成処理時間を計算により算出している。
【0061】
図12は、本発明好適な実施例における検査パラメータ設定ウインドウ300を示す図である。操作者はパラメータの設定を希望する検査タグ321,323をクリックし、各検査の検査パラメータ(走査パラメータ及び再構成パラメータを含む)を設定することができる。かかる検査パラメータの設定は当業者に公知であり、様々な形式の検査パラメータ設定ウインドウ300を設計し、操作者にパラメータの設定のためのインタフェースを提供することができる。
【0062】
制御部30は、実施する検査の種類の情報を操作部32から受けると、各検査に対応した検査パラメータ設定ウインドウ300を生成し、表示部34に出力する。好適には、図12に示すように、操作者が選択した検査の検査パラメータ設定ウインドウ300のみが表示され、操作者に各種パラメータの設定値を表示し、変更可能な状態にする。好適には操作者が最も頻繁に選択すると予想される設定値がデフォルトとして予め設定されている。操作者は、デフォルトの値から変更する必要のあるパラメータの値を変更する。変更が終了すると、他の検査を選択し、パラメータの設定を完了する。制御部30は、設定されたパラメータのデータを記憶部31に格納する。
【0063】
この実施例において、制御部30は、各検査の走査処理時間と画像再構成処理時間を、イメージサイズ(周波数設定値311に対応する)、スライス枚数315、ハーフフーリエ処理の有無、パラレルイメージング処理の有無等により、推測する。具体的には、以下の式により各検査の画像再構成処理時間を計算する。
画像再構成処理時間=RM×(P1×C1)×P2×(P3×C3)
(ここで、RM:その検査の種類に対応したスライス1枚当たりの画像再構成処理時間の平均値、P1:イメージサイズに対応するパラメータの値、C1:P1に対応した係数、P2:スライス枚数、P3:ハーフフーリエ処理の有無、C3:P3に対応した係数)
【0064】
<並び替え対象の検査を指定>
操作者が、全ての検査の検査パラメータの入力を完了すると、制御部30は、図13に示す検査順序決定ウインドウ400を表示部34に出力し、表示部34にこれを表示させる。操作者は図12の検査パラメータ設定ウインドウ300及び図13の検査順序決定ウインドウ400の設定情報を将来同様の検査を行うときのために記憶部31に格納することができる。また、操作者は、検査セット名401を用いて過去に設定した設定情報を検索することができる。
【0065】
操作者が、全ての検査の検査パラメータの入力を完了した後、ある検査セットの検査順序決定ウインドウ400が初めて表示される場合、図13に示すように検査セットに含まれる全ての検査の検査名411、走査処理時間413、画像再構成処理時間415が、原則として操作者がその検査セットに含めることを選択した順序に並べて表示される。そして、検査順序決定ウインドウ400には、現在の検査順序に従って計算された総検査時間403が表示される。
【0066】
図13の例において、検査順序決定ウインドウ400に表示された1番上の検査と2番目の検査は後続する他の検査に必要な位置決めや構成を行う検査であるため、制御部30は自動的にこれらの検査を一連の検査の中で最も早い順序に設定している。
【0067】
本発明の好適な実施例では、図13に示すチェックボックス(Check Box)421〜428が各検査に割り当てられている。操作者は、このチェックボックス421〜428を用いて、各検査を並べ替えの対象とするか否(すなわち順序が固定)かを設定することができる。図の例において、1番目の検査と2番目の検査のチェックボックス421、422は操作者が変更できないことを示すように灰色で表示されるとともに、すでにチェックが入ったように表示される。チェックボックス423−428は、選択可能であり、この例では、操作者は、チェックボックス423にチェックを入れ、並び替えの対象から除去する選択を行っている。すなわち、検査順序決定ウインドウ400に表示された8つの検査のうち、1番上の検査と2番目の検査を除く3番目〜8番目の検査は、並び替えを行う検査の候補となり、チェックボックス423のチェックにより、3番目の検査は、並び替えを行う検査の対象から除外される。
【0068】
操作者が並び替え及び総検査時間の再計算を指示する計算ボタン405をクリックすると、制御部30は、上述の総検査時間を最短にする組合せを探索する処理を開始する。この例において、検査順序決定ウインドウ400に表示された1番目乃至3番目の検査が並び替えの対象から除外されている。このため制御部30は、この3つの検査をあたかも1つの検査(以下「統合検査」という)であるかのように取り扱い、探索処理を行う。
【0069】
具体的には、1番目乃至3番目の検査を対象として、上述の総検査時間の算出処理を行う。これにより、3番目の走査処理の終了時間と3番目の画像再構成処理の終了時間を計算することができる。この3番目の走査処理の終了時間と3番目の画像再構成処理の終了時間を統合検査の走査処理の終了時間と画像再構成処理の終了時間とし、探索処理を行う。すなわち、統合検査は、図13の例の場合、走査処理時間1分12秒(14+12+46=72秒)、画像再構成処理時間1分となる。
【0070】
図4を用いて説明した総検査時間の計算処理では、1番目の検査の走査処理の開始時間に0がセットされ、1番目の検査の画像再構成処理の開始時間に1番目に順序付けられた検査の走査処理時間がセットされたが、固定された検査(1つの検査が固定されている場合と統合検査の場合とがある)が存在する場合には異なる値が設定される。すなわち、
1番目の走査処理の開始時間=固定検査の走査処理の終了時間
1番目の走査処理の終了時間=1番目の走査処理の開始時間+1番目に順序付けられた検査の走査処理時間
1番目の画像再構成処理の開始時間=(1番目の走査処理の終了時間と固定検査の画像再構成処理の終了時間の大きい方)
1番目の画像再構成処理の終了時間=1番目の画像再構成処理の開始時間+1番目に順序付けられた検査の画像再構成処理時間
となるように設定される。
【0071】
図13に示す例では、統合検査に後続する検査の検査数は5であるので、120通りの検査のセットで総検査時間の計算が行われ、総検査時間が最短となる検査のセットが探索される。探索処理が終了すると、検査順序決定ウインドウ400に総検査時間を最短となる組合せの順序に各検査を並び替えて表示する。また、総検査時間の表示403を最短の総検査時間に更新して表示する。
【0072】
なお、本発明の好適な実施例では、リセット・ボタン407が用意されている。制御部30は、検査順序決定ウインドウ400が初めて表示されたときの検査の順序と総検査時間のデータを記憶部31に格納しており、このリセット・ボタン407が操作者によりクリックされた場合、探索処理の結果を無効にし、検査順序決定ウインドウ400を初めて表示したときの状態に戻す。
【0073】
検査の順序が決定し、操作者が、検査セットの実行を指示するコマンドを操作部32に入力すると、その入力信号は制御部30に送信され、制御部30は、各検査に対応するプログラムを決定された順序で順次実行する。プログラムは、各検査に対応する動作を各部に実行させる。
【0074】
すなわち、制御部30からの指令を受けたデータ収集部24は、各検査のパルス・シーケンスにより発生した磁気共鳴信号を収集し、記憶部31に出力する。画像再構成部33は、この記憶部31の磁気共鳴信号をデータ収集部24が出力した順序で画像再構成処理を実施して、画像を生成する。
【0075】
なお、本発明の好適な実施例において、検査順序決定ウインドウ400に表示される総検査時間は、検査が開始され、時間が経過するに伴って減少するように設定される。操作者は、この減少する総検査時間の値から画像再構成処理も含め検査が全て完了するまでの残り時間(の予測)を確認することができる。また、他の例では、制御部30は、特定された検査のセットのn番目の検査(最後に実行される検査)の走査処理の終了時間を表示部34に表示する。この時間(走査処理終了までの残り時間の予測値)も検査が開始され、時間が経過するに伴って減少するように設定される。操作者は、この減少する残り時間から全ての走査処理が全て完了するまでの残り時間(の予測)を確認することができる。また必要に応じて、現在検査を受けている患者に全ての走査処理が完了するまでの時間を告げることもできる。さらに、次の患者の検査に速やかに移行できるように、適切なタイミングで次の患者や他の医療従事者に準備を促すことができる。
【0076】
<探索する組合せの削減:同一の総検査時間となる組合せの検出>
上述のように、総検査時間の計算を順序を変更できる全ての検査のセットで計算する場合、順序を変更できる検査の数nが2つの場合は2通り、3つの場合は6通り、4つの場合は24通り、5つの場合は120通り、6つの場合は720通りとなる。このため、順序の変更ができる検査の数nが多くなるに従って計算量は飛躍的に増加することが予想される。このため、本発明の好適な実施例の一態様では、計算量を削減するアルゴリズムが提供される。このアルゴリズムにより、総検査時間を短縮する検査のセットを高速に発見することができる。
【0077】
図14は、順序を変更できる検査の数が5のときのj番目の組合せにおける総検査時間の算出の様子を示す概念図である。図に示されるように、この例では、2番目の検査に順序付けられた検査2の走査処理の終了時間から検査2の画像再構成処理時間の終了までの時間501が、後続する全ての検査の走査処理時間の合計時間503よりも長くなっている。このような状態が発生すると、後続する検査のセットを変更して総検査時間を計算しても、結果として算出される総検査時間はi番目の組合せの総検査時間と常に等しくなる。
【0078】
より詳細に説明すると、図14の組合せ(j番目の組合せ)とこれに後続する組合せは、
組合せj(図14):検査3−>検査2−>検査1−>検査4−>検査5
組合せj+1 :検査3−>検査2−>検査1−>検査5−>検査4
組合せj+2 :検査3−>検査2−>検査4−>検査1−>検査5
組合せj+3 :検査3−>検査2−>検査4−>検査5−>検査1
組合せj+4 :検査3−>検査2−>検査5−>検査1−>検査4
組合せj+5 :検査3−>検査2−>検査5−>検査4−>検査1
となる。
【0079】
上記の組合せの総検査時間は、全て検査3の走査処理時間+(検査1〜検査5の画像再構成処理時間の合計)となる。このため、本発明の好適な実施例の一態様では、図9のステップ619の後に、後述する所定の条件が満たされる場合(ステップ625)、ここで説明する探索する組合せの削減が可能か否かの判断を行う。すなわち、
(i番目の検査の画像再構成処理の終了時間)−(i番目の検査の走査処理の終了時間)≧(i+1番目の検査の走査処理時間)+(i+2番目の検査の走査処理時間)+...+(n番目の検査の走査処理時間)
との条件が満たされるか否かを判別する。
【0080】
この判断の具体的な手順を図10のフローチャートを用いて以下に説明する。なお、図14の例ではi=2の時に上記条件が具備されることになるので、i=2であるとして説明する。ステップ651で、このルーチンで検査の順序を示す変数lにメインルーチンで検査の順序を示す変数iの値を代入する。また、メインルーチンで検査の順序を示す変数iと、メインルーチンで検査のセットの番号を示す変数jをitとjtとして保存する。
【0081】
ステップ653で、iに後続する検査の検査処理時間の合計を保存する変数の初期設定を行い、ステップ655〜659で、iに後続する検査の検査処理時間の合計を行う。
【0082】
ステップ661で、(i番目の検査の画像再構成処理の終了時間)−(i番目の検査の走査処理の終了時間)がiに後続する検査の検査処理時間の合計以上であるか否かの判断を行う。
【0083】
このステップ661の判断により同一の総検査時間となる組合せを検出することができる。条件が満たされない場合には、図9のステップ607に戻る。条件が満たされる場合には、(j+1番目の組合せ)〜(j+(n−i)!−1番目の組合せ)の総検査時間にj番目の総検査時間を代入し、(j+(n−i)!番目の組合せ)の組合せの総検査時間の算出の処理に移る(「!」は順列を示す記号であり、図14の例では(n−i)!=(5−2)!=3!=6となる)。なお、(j+1番目の組合せ)〜(j+(n−i)!−1番目の組合せ)の各々の組合せにおいて、1番目〜i番目の検査は、j番目の組合せの1番目〜i番目の検査と同じ検査が同じ順序で並び、i+1番目〜n番目の検査は、j番目の組合せのi+1番目〜n番目の検査と同じ検査が異なる順序で並んでいる。
【0084】
具体的には、ステップ663〜667で、iに後続する再構成処理時間をi番目の再構成処理の終了時間に加算することにより、n番目の再構成処理の終了時間が計算される。そして、ステップ669で、n番目の再構成処理の終了時間がこのj番目の検査のセットの総検査時間として設定される。
【0085】
ステップ671〜675で、(j+1番目の組合せ)〜(j+(n−i)!−1番目の組合せ)の総検査時間にj番目の総検査時間を代入する。そして、この処理ルーチンを終了し(ステップ677)、(j+(n−i)!番目の組合せ)の組合せの総検査時間の算出の処理に移る。
【0086】
ここで説明した、「同一の総検査時間となる組合せを検出することによる組合せの削減を行うアルゴリズム」により、((n−i)!−1)回の総検査時間の算出処理が削減されることとなる。なお、条件が満たされた場合に削減される総検査時間の算出処理の数は、((n−i)!−1)であるため、同一の総検査時間となる組合せの検出は、iがnに近い場合には削減される総検査時間の算出処理の数が減少し、効果的ではない。このため本発明の好適な実施例の一態様では、1≦i≦(n−3)のときのみ上記判別を行う(図9、ステップ625)。
【0087】
<探索する組合せの削減:所定の検査のペアの固定>
上述のように、順序の変更ができる検査の数nが多くなると最短となる総検査時間の組合せを探索する処理の計算量は飛躍的に増加する。このため、本発明の好適な実施例の一態様では、順序の変更ができる検査の数nが所定の値以上となる場合(例えばn≧5)、所定の検査のペアを固定する。すなわち、図7に示されるように、長い画像再構成処理時間を持つ検査の後に長い走査処理時間を持つ検査を実施すると、総検査時間は短縮される場合が多い。
【0088】
このため、本発明の好適な実施例の一態様では、最も長い画像再構成処理時間を持つ検査の後に最も長い走査処理時間を持つ検査が行われるようにその順序を固定(2つの検査のペアを固定)し、組合せを行う。図2〜7の例では、検査2が最も長い画像再構成処理時間を持ち、検査1が最も長い走査処理時間を持つ。このため、検査2と検査1を固定して、全ての組合せで総検査時間の検証を行う。この例では、
組合せ3(図4):(検査2−>検査1)−>検査3
組合せ6(図7):検査3−>(検査2−>検査1)
についてのみ総検査時間の検証が行われる。これにより、総検査時間の算出処理の数を大きく減少させることができる(n=5のときの削減数は(5!−4!)=96、n=6のときの削減数は(6!−5!)=600となる)。
【0089】
<探索する組合せの削減:その他>
さらに、走査処理時間が最も長い検査が先頭となる組合せや画像再構成処理時間が最も長い検査が最後尾となる組合せも総検査時間を最短にする組合せになる確率が低いので探索の対象から除外することもできる。また、探索処理が所定の時間(例えば2分)や操作者が設定した時間(例えば10秒〜600秒)を超える場合や、探索数が所定数(例えば720)操作者が設定した数(例えば120〜5040)を超える場合には、探索処理をうち切り、うち切られた探索処理で発見された最も短い総検査時間の検査のセットを得ることもできる。
【0090】
以上、本発明の好適な実施例を中心に説明を行ったが、本発明の思想は、かかる実施例に限定されるものではない。本発明の実施に際しては、種々の変形形態を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、本発明をMRI装置に適用した場合のシステムの構成を示す構成図である。
【図2】図2は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【図3】図3は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【図4】図4は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【図5】図5は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【図6】図6は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【図7】図7は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【図8】図8は、検査セットに含まれる各検査の走査処理時間と再構成処理時間を表示するウインドウの一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の好適な実施例における総検査時間の計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の好適な実施例における探索する組合せの削減処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、検査セットに含まれる各検査の走査処理時間と再構成処理時間を表示するウインドウの一例を示す図である。
【図12】図12は、本発明好適な実施例における検査パラメータ設定ウインドウを示す図である。
【図13】図13は、本発明好適な実施例における検査順序決定ウインドウを示す図である。
【図14】。 図14は、複数の検査がある順序に並べられた場合における総検査時間の算出を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0092】
1:MRI装置
11:静磁場空間
12:静磁場マグネット部
13:勾配コイル部
14:RFコイル部
22:RF駆動部
23:勾配駆動部
24:データ収集部
25:テーブル
26:クレードル
30:制御部
31:記憶部
32:操作部
33:画像構成部
34:表示部
40:被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走査処理を所定の走査処理時間で実行した後に、前記走査処理に対応する画像再構成処理を所定の画像再構成処理時間で実行するn個(nは2以上の整数)の検査である、該n個の検査を順次実行する画像診断装置であって、
前記n個の検査を実行する順序が異なるk個の検査のセット(kは 2≦k≦n! を満たす整数)について総検査時間をそれぞれ計算し、計算されたk個の総検査時間の中から最短の総検査時間又は、前記最短の総検査時間に準じて短い総検査時間に対応する検査のセットを特定する制御部、
を備える画像診断装置。
【請求項2】
前記総検査時間の算出に際し、各検査の走査処理の開始時間及び終了時間と、画像再構成処理の開始時間及び終了時間とを求め、
i番目(iは2以上n以下の整数)の走査処理の開始時間は、i−1番目の走査処理の終了時間に設定され、
i番目の走査処理の終了時間は、i番目の走査処理の開始時間にi番目に順序付けられた検査の走査処理時間を加えた時間に設定され、
i番目の画像再構成処理の開始時間は、i番目の走査処理の終了時間とi−1番目の画像再構成処理の終了時間の大きい方の時間に設定され、
i番目の画像再構成処理の終了時間は、i番目の画像再構成処理の開始時間にi番目に順序付けられた検査の画像再構成処理時間を加えた時間に設定される、請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記n個の検査のうちの少なくとも1つの検査の走査パラメータの変更を操作者が入力する操作部をさらに備え、
前記少なくとも1つの検査の走査処理時間が前記操作者が変更した走査パラメータによって変更される、請求項1又は2に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記操作部が前記n個の検査のうちの少なくとも1つの検査の画像再構成パラメータの変更を操作者が入力することを可能にし、
前記画像再構成パラメータが、ハーフフーリエ処理の有無又はパラレルイメージング処理の有無に関する画像再構成パラメータであり、前記走査パラメータが、イメージサイズ又はスライス枚数に関する走査パラメータである、請求項3に記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、j番目の検査のセット(jは(k!−2)以下の整数)の総検査時間の計算の際に、以下の条件:
(i番目の検査の画像再構成処理の終了時間)−(i番目の検査の走査処理の終了時間)≧(i+1番目の検査の走査処理時間)+(i+2番目の検査の走査処理時間)+...+(n番目の検査の走査処理時間)
を判断し、前記条件が満たされる場合には、その1番目〜i番目の検査でj番目の組合せの1番目〜i番目の検査と同じ検査が同じ順序で並び、そのi+1番目〜n番目の検査でj番目の組合せのi+1番目〜n番目の検査と同じ検査が異なる順序で並ぶ(j+1番目の組合せ)〜(j+(n−i)!−1番目の組合せ)の内の少なくとも1つの総検査時間にj番目の総検査時間を代入する、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記並ぶ順序を変更する複数の検査を表示する表示部を更に備え、
操作者の選択により、前記複数の検査から少なくとも1つの検査が除外され、該除外された検査の順序は変更されない、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記制御部が特定した最短の総検査時間又は前記最短の総検査時間に準じて短い総検査時間を表示する表示部を更に備える請求項1乃至5のいずれかに記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記表示部が、前記n個の検査の走査処理が順次実行されているときに、前記n個の検査の走査処理が全て完了するまでの残り時間を表示する請求項7に記載の画像診断装置。
【請求項9】
前記表示部が、前記n個の検査の画像再構成処理が順次実行されているときに、前記n個の検査の画像再構成処理が全て完了するまでの残り時間を表示する請求項7又は8に記載の画像診断装置。
【請求項10】
前記k個の検査のセットで総検査時間を計算している間に、該計算の計算時間が所定の値を超えた場合、又は総検査時間の計算が行われた検査のセットの数が所定の数を超えた場合に、前記総検査時間の計算がうち切られる、請求項1乃至9のいずれかに記載の画像診断装置。
【請求項11】
前記画像診断装置がMRI装置である、請求項1乃至10のいずれかに記載の画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−131221(P2010−131221A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310436(P2008−310436)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】