説明

画像読み取り装置、情報処理装置およびプログラム

【課題】面タイプのセンサよりも小さい面積に実装でき、かつ、画像の繋ぎ合わせ処理を必要としない画像読み取り技術を提供すること。
【解決手段】画像読み取り装置は、検出対象から力を受け、所定の回転軸を中心に回転する回転体と、前記回転体の回転方向に沿って並べられた複数の読み取り手段であって、各々が前記回転体の表面に対して固定された読み取り面を有し、前記読み取り面に対向している前記検出対象の画像を読み取り、読み取った画像を示す画像信号を出力する読み取り手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋等の画像を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋センサにより取得した指紋画像を用いてユーザ認証を行う技術が知られている。指紋センサには、いわゆる面タイプ(エリアタイプ)のものと線タイプ(ラインタイプ)のものがある。面タイプの指紋センサは、検査対象である指よりも大きな読み取り面を有し、1回の撮像で指全体の指紋画像を得ることができる。一方、線タイプの指紋センサは、指よりも小さく、扁平率が高い(例えば8:258)読み取り面を有し、1回の撮像で得ることができるのは、指の一部の指紋画像である。線タイプの指紋センサを用いて指全体の指紋画像を得るには、ユーザが指紋センサの上で指を一定方向に動かしながら連続的に指紋を撮像し、これらを収集、さらには合成することが必要である。一般的には、指紋センサの上で指を移動させる速度はユーザによって異なるため、指紋センサは短い時間間隔で連続的に指紋画像を取得する。ここから指全体の指紋画像を得るには、取得された複数の指紋画像のうち同じ領域を判定しつつ、さらに移動方向も判定しつつ画像を重ね合わせることが必要である(例えば、非特許文献1)。
【0003】
線タイプおよび面タイプのセンサはそれぞれ異なる特徴を有しており、用途に応じて使い分けられている。線タイプの指紋センサは、センサの面積が小さいので携帯電話等のモバイル機器に好適である一方、指紋全体の画像を得るためには、短冊状のデータを位置合わせしつつ繋ぎ合わせる必要であるという問題がある。また、面タイプの指紋センサは、一度のセンシングで指紋全体を読み取ることが可能である一方、センサの面積が大きいという問題がある。
【0004】
【非特許文献1】吉嶺達樹、「バイオメトリクス認証の動向と周波数解析法 指紋/顔パターン認識アルゴリズム」、インターフェース、CQ出版、平成17年3月、2005年3月号、p.64
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、線タイプのセンサおよび面タイプのセンサの特長を併せ持った技術、より具体的には、面タイプのセンサよりも小さい面積に実装でき、かつ、複数の画像の位置合わせ処理を必要としない画像読み取り技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、検出対象から力を受け、所定の回転軸を中心に回転する回転体と、前記回転体の回転方向に沿って並べられた複数の読み取り手段であって、各々が前記回転体の表面に対して固定された読み取り面を有し、前記読み取り面に対向している検出対象の画像を読み取り、読み取った画像を示す画像信号を出力する読み取り手段とを有する画像読み取り装置を提供する。
この画像読み取り装置によれば、複数の画像読み取り手段は回転体の表面に固定される。
【0007】
好ましい態様において、前記複数の読み取り手段の各々は、基準位置からの前記回転体の回転角が所定の条件を満たしたタイミングで前記検出対象の画像を読み取ってもよい。
この画像読み取り装置によれば、検出対象の画像は、基準位置からの回転角が所定の条件を満たしたタイミングで読み取られる。
【0008】
別の好ましい態様において、この画像読み取り装置は、電力を供給する電力供給手段を有し、前記複数の読み取り手段の各々は、基準位置からの回転角が所定の条件を満たしたタイミングで前記電力供給手段から電力の供給を受けてもよい。
この画像読み取り装置によれば、画像読み取り手段への電力の供給は、基準位置からの前記回転体の回転角が所定の条件を満たしたタイミングで行われる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、この画像読み取り装置は、前記回転体の回転速度を計測する速度計測手段を有し、前記所定の条件は、前記回転速度が速くなるほど当該所定の条件を満たす読み取り手段の数が多くなるように設定される条件であってもよい。
この画像読み取り装置によれば、回転速度が速くなるほど数多くの画像読み取り手段に電力が供給される。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、この画像読み取り装置は、前記複数の読み取り手段から出力される画像信号により示される複数の画像を記憶する画像記憶手段と、前記画像記憶手段に記憶された複数の画像を結合することにより、前記検出対象全体の画像を生成する画像生成手段とを有してもよい。
この画像読み取り装置によれば、複数の画像を結合することにより検出対象全体の画像が得られる。
【0011】
さらに別の好ましい態様において、この画像読み取り装置は、前記回転体の回転角を計測する回転角計測手段と、前記複数の画像のうち最初の画像が記憶されたときに前記回転角計測手段により計測された回転角を記憶する回転角記憶手段と、前記回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、前記画像生成手段により生成された画像を補正する画像補正手段とを有してもよい。
この画像読み取り装置によれば、回転体の回転角に基づいて、画像生成手段により生成された画像が補正される。
【0012】
さらに別の好ましい態様において、前記検出対象が生体であり、前記読み取り手段は、前記生体の生体情報を示す画像を読み取ってもよい。
この画像読み取り装置によれば、生体情報を示す画像が読み取られる。
【0013】
また、本発明は、上記の画像読み取り装置と、前記回転体の回転角を計測する回転角計測手段と、前記画像読み取り装置を制御する主制御部と、前記回転角が所定の大きさになると、前記主制御部への電力の供給を開始するように電力の供給を制御する電力制御手段とを有する情報処理装置を提供する。
この画像読み取り装置によれば、回転角が所定の大きさになると、主制御部への電力の供給が開始される。
【0014】
さらに、本発明は、所定の回転軸を中心に回転する回転体と、前記回転体の回転方向に沿って並べられた複数の読み取り手段であって、各々が前記回転体の表面に固定された読み取り面を有し、前記読み取り面に対向している検出対象の画像を読み取り、読み取った画像を示す画像信号を出力する読み取り手段と、記憶手段とを有するコンピュータ装置に、前記複数の読み取り手段から出力される画像信号により示される複数の画像を前記記憶手段に記憶するステップと、前記記憶手段に記憶された複数の画像を結合することにより、前記検出対象全体の画像を生成するステップとを実行させるプログラムを提供する。
このプログラムによれば、複数の画像を結合することにより検出対象全体の画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1.構成
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1の機能構成を示す図である。情報処理装置1は、画像読み取り装置10と、電源20と、回転体11(後述)の回転角および回転速度を計測する計測手段50と、主制御部40と、主制御部40または画像読み取り装置10への電力の供給を開始するように電力の供給を制御する電力制御手段30とを有する。
【0016】
画像読み取り装置10は、さらに以下の構成を有する。回転体11は、検出対象(被検出物)からの力を受け、所定の回転軸を中心に回転する。複数の読み取り手段12は、回転体11の回転方向に沿って並べられている。各読み取り手段12は、回転体11の表面に対して固定された読み取り面を有し、その読み取り面に対向している検出対象の画像を読み取り、読み取った画像を示す信号(以下「画像信号」という)を出力する。記憶手段13は、複数の読み取り手段12から出力される画像信号により示される複数の画像を記憶する。画像生成手段14は、記憶手段13に記憶された複数の画像を結合することにより、検出対象全体の画像を生成する。
【0017】
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成を示す図である。この例で、情報処理装置1は、電子ペーパまたは電子ブックといわれる情報表示装置である。CPU(Central Processing Unit)101は、情報処理装置1の構成要素を制御する制御装置である。ROM(Read Only Memory)102は、情報処理装置1の起動に必要なプログラムやデータを記憶する不揮発性の記憶装置である。RAM(Random Access Memory)103は、CPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する記憶装置である。VRAM(Video Random Access Memory)104は、表示体107に表示させる画像(以下「メイン画像」という)を示すデータを記憶する記憶装置である。VRAM104は、メイン画像の記憶領域を有しており、メイン画像はその記憶領域に記憶される。I/O(Input/Output)105は、データや信号の入出力を管理するインターフェースである。UI(User Interface)ボタン群106は、ユーザの操作に応じた信号を出力する装置、例えば、ボタン(書き換えボタンやページ送りボタン、決定ボタンなど)・キーパッド・ホイール・レバー・タッチパネル・ペンデバイスなどの操作子を含む入力装置である。この例で、UIボタン群106は、回転体であるホイール106Wを含む。補助記憶装置115は、表示体107に表示することが可能なデータを記憶する記憶装置である。UIボタン群106はI/O105に接続されており、UIボタン群106から出力された信号はI/O105を介してCPU101に入力される。
【0018】
表示体107は、記憶性表示素子を有する表示体、例えばコレステリック液晶ディスプレイやEPD(Electrophoretic Display)である。表示制御部108は、表示体107の描画制御を行う信号を出力する装置である。以下、必要に応じて表示体107と表示制御部108をあわせて「メインディスプレイ」という。電源オン・オフ回路111は、表示制御部108・CPU101などの要素への電力の供給を行ったり停止したりする回路である。以下、ある構成要素に電力を供給することを「電源をオンする」と、電力の供給を停止することを「電源をオフする」という。電源制御部112は、情報処理装置1の電源管理を行う装置である。具体的には、電源制御部112は、電源オン・オフ回路111を制御して表示制御部108およびCPU101の電源をオンまたはオフする。また、電源制御部112は、電池113の残量を監視する。電池113は、表示制御部108・CPU101・RAM103など、情報処理装置1の構成要素に電力を供給する。バス114は、構成要素間での信号の伝送に用いられる伝送路である。
【0019】
指紋センサ117は、ユーザの指紋を静電的に読み取り、読み取った指紋の画像を示す信号(画像信号)を出力する装置である。指紋センサ117はI/O105に接続されており、指紋センサ117から出力された信号はI/O105を介してCPU101に入力される。この例で、情報処理装置1は複数の指紋センサ117を有している(図2には1つのみ図示)。
【0020】
回転センサ118は、ホイール106Wの回転角(所定の基準位置からの回転角)を計測し、計測した回転角を示す信号を出力する装置である。回転センサ118はI/O105に接続されており、回転センサ118から出力された信号はI/O105を介してCPU101に入力される。回転センサ118により計測される回転角を一定の時間間隔で記録すると回転速度が得られるので、回転センサ118は速度計測手段として用いられることも可能である。
【0021】
ROM102は、以下で説明する処理を行う制御プログラムを記憶している。CPU101がこの制御プログラムを実行することにより、図1に示される機能が情報処理装置1に実装される。
【0022】
図3は、情報処理装置1の外観を示す図である。この例で、画像読み取り装置10として複数の指紋センサ117が用いられる。すなわち、検出対象はユーザの指Fである。情報処理装置1は、筐体の前面に表示体107の表示面を有し、側面にホイール106W(UIボタン群106の一部)および指紋センサ117を有する。各指紋センサ117は、いわゆる線タイプのセンサであり、長方形の読み取り面を有する。複数の指紋センサ117は、ホイール106Wの回転方向に沿って並べられている。
【0023】
図4は、ホイール106Wと指紋センサ117との位置関係を示す図である。ホイール106Wは、矢印A方向に移動する指Fからの力を受け、軸Pを中心として矢印B方向に回転する回転体であり、回転体11の一例である。ホイール106Wは円筒の形状を有している。すなわち、ホイール106Wの軸Pに垂直な断面の形状は軸Pを中心とする円である。回転軸Pはホイール106Wと共に回転する芯の部分と、回転しない外周部分との二重構造を有しており、電極パターンE(後述)は外周部分に設けられている。
【0024】
各指紋センサ117の読み取り面はホイール106Wの表面に固定されており、外側を向いている。読み取り面の面積は、検査対象である指Fの面積(より詳細には、第1関節よりも先の指の腹の部分)よりも小さい。複数の指紋センサ117はホイール106Wの表面においてホイール106Wの回転方向に沿って、角度θごとに等間隔で並べられている。角度θは、角度θで切り取られるホイール106Wの外周の長さが指紋センサ117の読み取り面の短辺の長さxに相当する角度である。以下、複数の指紋センサ117の各々を区別する必要があるときは、指紋センサ117−1、指紋センサ117−2、…というように添字を用いて区別する。指紋センサ117の読み取り面の形状は長方形であり、短辺がホイール106Wの回転方向に平行になるように並べられている。ユーザが指Fをホイール106Wの上に載せると、複数の指紋センサ117のうち指Fと対向するのは一部(図4の例では指紋センサ117−1)である。ユーザが指Fを矢印A方向に移動させるとホイール106Wは矢印B方向に回転し、指紋センサ117−1に代わり指紋センサ117−2が指Fと対向する。
【0025】
図5は、指紋センサ117の配線を例示する図である。指紋センサ117は、電力の供給に用いられる信号線および画像信号を伝送する信号線を含む信号線117Wを有する。軸Pはその表面に電極パターンEを有している。軸P自体は回転せず、電極パターンEは軸Pの表面のうち一部分に設けられている。複数の指紋センサ117のうち一部(図5の例では、指紋センサ117−1、2および3)の信号線117Wだけが、電極パターンEと接している。これにより指紋センサ117−1、2および3の3つの指紋センサに電力が供給される。また電極パターンEは、これら3つの指紋センサのうち指Fと対向する位置にある指紋センサ(図5の例では指紋センサ117−1)からの画像信号のみをホイール106Wの外部に出力できるような位置および形状を有するように設計されている。ホイール106Wが回転すると、電力が供給される指紋センサおよび画像信号を出力可能となる指紋センサは次々に入れ替わる。
【0026】
2.動作
図6は、情報処理装置1の動作を示すフローチャートである。図6のフローは、例えば、CPU101への電力供給が停止され、情報処理装置1がスリープ状態に移行したことを契機として開始される。ここで特に、CPU101への電力供給を開始することを「主電源をオンする」といい、CPU101への電力供給を停止することを「主電源をオフする」または「スリープ状態に移行する」という。
【0027】
ステップS100において、電源制御部112は、ホイール106Wの回転を検出したか判断する。具体的には次のとおりである。電源制御部112は、回転センサ118から出力される信号を監視しており、この信号により示される回転角がしきい値を超えた場合には回転を検出したと判断し(S100:YES)、回転角がしきい値を超えていない場合には回転を検出していないと判断する(S100:NO)。
【0028】
ステップS110において、電源制御部112は、主電源をオンする。電力が供給されると、CPU101は、RAM103上に指紋画像を記憶する記憶領域を確保する等、以下の処理に必要な初期化処理を行う。初期化処理により、RAM103は、所定数の指紋画像を記憶する記憶領域を有する。ここで「指紋画像」とは、各指紋センサ117から出力される画像信号により示される画像、すなわち指Fの一部分を写した画像をいう。また「所定数」とは、指紋センサ117の数である。
【0029】
ステップS120において、CPU101は、指紋認証を行う。詳細には以下のとおりである。
【0030】
図7は、指紋認証処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS121において、CPU101は、ホイール106Wの回転角が所定の大きさになったか判断する。この例で「所定の大きさ」とは、図4の角度θである。回転角が所定の大きさになったと判断された場合(S121:YES)、CPU101は処理をステップS122に移行する。回転角が所定の大きさに未満であると判断された場合(S121:NO)、CPU101は回転角が所定の大きさになるまで待機する。
【0031】
ステップS122において、CPU101は、画像信号により示される指紋画像をRAM103に記憶する。すなわち、CPU101は、ホイール106Wの回転角がθになるたびに指紋画像を記憶する。このとき指紋画像を出力するのは、既に説明したように、複数の指紋センサ117のうち指Fと対向しているセンサである。
【0032】
図8は、取得される指紋画像を例示する図である。この例では、10枚の指紋画像が示されている。1枚の指紋画像に含まれるのは、指F全体のうち各指紋センサ117の読み取り面と対向している部分である。
【0033】
再び図7を参照して説明する。ステップS123において、CPU101は、所定数の指紋画像が取得されたか判断する。まだ所定数の指紋画像が取得されていないと判断された場合(S123:NO)、CPU101は、ステップS121−S123の処理を繰り返し実行する。所定数の指紋画像が取得されたと判断された場合(S123:YES)、CPU101は、処理をステップS124に移行する。
【0034】
ステップS124において、CPU101は、所定数の指紋画像を結合し、指全体の画像を生成する。ここで、複数の指紋画像は、隣接する指紋画像同士の位置合わせをしない単純な結合により結合される。従来技術では必要であった、複数の指紋画像の相対的な位置あわせは不要である。これは、指Fがホイール106W(正確には指紋センサ117)に触れながら移動している限り、指Fと各指紋センサ117の読み取り面との相対位置は一定であることによる。
【0035】
図9は、生成された指全体の画像を例示する図である。図9に示される複数の指紋画像は指Fが距離x移動するタイミングで取得され、さらにこの間、指Fと指紋センサ117の読み取り面との相対位置は一定であるので、位置合わせをせずに複数の指紋画像を重ね合わせても指全体の画像が得られる。
【0036】
ふたたび図7を参照して説明する。ステップS125において、CPU101は、生成された画像を用いて認証処理を行う。認証処理は周知の技術を用いて行われるので、ここでは説明を省略する。
【0037】
3.他の実施形態
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下において、実施形態と共通する事項についてはその説明を省略する。また、実施形態と共通する構成要素については共通の参照符号が用いられる。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
3−1.変形例1
上述の実施形態において、回転体11には主電源のスイッチとしての機能も割り当てられていた。しかし、主電源のスイッチとしての機能は回転体11以外の操作子に割り当てられていてもよい。この場合において、回転体11は画像読み取り装置10の電源のオン/オフを制御する機能を有していてもよい。
【0039】
例えばこの場合、図6のフローは、情報処理装置1が起動され、CPU101への電力供給が開始されたことを契機として開始される。電力が供給されると、CPU101は、RAM103上に指紋画像を記憶する記憶領域を確保する等、以下の処理に必要な初期化処理を行う。初期化処理により、RAM103は、所定数の指紋画像を記憶する記憶領域を有する。ステップS110においては主電源をオンする処理に代わり指紋センサ117への電力の供給を開始する処理が行われる。この例によれば、指紋認証が行われるときだけ指紋センサ117に電力が供給されるので、この構成を有しない場合と比較してより低消費電量化できる。
【0040】
3−2.変形例2
図10は、変形例2に係る、生成された指全体の画像を例示する図である。実施形態で説明したとおり、指紋画像が取得される間、指紋センサ117の読み取り面と指Fの相対位置は固定されているので、複数の指紋画像相互の位置合わせは必要ない。しかし、指紋の読み取りを開始するときのホイール106Wの回転角はかならずしも一定ではないので、指の画像の原点(ホイール106Wの絶対回転角に依存する)と結合した画像の原点とは必ずしも一致しない。図10は、ホイール106Wが円周Lに相当する角度回転した状態から指紋の読み取りが開始された場合において、単純な重ね合わせにより生成された画像を示している。この例で、指の画像の原点(OF)と結合した画像の原点(OS)とは一致していない。取得された画像と、あらかじめ記憶された照合用の画像をマッチングするアルゴリズムによっては、原点OFと原点OSとが一致していないとマッチングが困難な場合もあるので、その場合は以下のようにして原点OFと原点OSとを一致させるように画像処理をしてもよい。
【0041】
CPU101は、指紋の読み取りを開始したときのホイール106Wの回転角を、回転センサ118により取得し、RAM103に記憶する。図10に示される画像が生成された後で、CPU101は、RAM103に記憶した回転角に対応する長さぶん原点OFが移動するように画像をシフトする。このように、複数の指紋画像のうち最初の画像が記憶されたときに計測手段50により計測された回転角を記憶する回転角記憶手段と、画像生成手段14により生成された画像を、その回転角に基づいて補正する画像補正手段とを有することにより、情報処理装置1は、図9に示されるような原点OFと原点OSとが一致した画像を得る。
【0042】
あるいは、CPU101は、指紋の読み取りを開始してから最初に取得された指紋画像に対してエッジ検出処理を行うことにより、原点OFの位置を取得してもよい。さらにあるいは、バネ等を用いて、ホイール106Wに力が加えられていない状態ではホームポジションに位置するように構成し、原点OFと原点OSとを機械的に一致させてもよい。
【0043】
3−3.変形例3
上述の実施形態においては、電力の供給および画像信号の出力を機械的に制御する例、具体的には、電極パターンEの位置や形状を適切に設計することにより軸Pに対して特定の配置にある指紋センサ117についてのみ電源をオンし、また画像信号を出力できる例について説明した。しかし、軸Pに対する配置によらず、複数の指紋センサ117のすべてについて電力の供給および画像信号の出力を可能な構成とし、ソフトウェア的に電力の供給および画像信号の出力を制御してもよい。この場合、例えば各指紋センサ117は、画像信号に自身の識別子を含めて出力する。CPU101は複数の画像信号により示される複数の画像の中から、記憶すべきものを選択して記憶する。
【0044】
3−4.他の変形例
上述の実施形態においては情報処理装置1の主制御部であるCPU101が図6に示される処理を実行する例について説明したが、CPU101以外のプロセッサが図6の処理を実行してもよい。例えば、指紋センサ117自体が図6の処理の一部または全部を実行するプロセッサおよびメモリを有してもよい。
【0045】
上述の実施形態では画像読み取り装置が指紋センサ117である例、すなわち取得される情報が指紋である例について説明したが、取得される情報は指紋に限定されない。指紋・虹彩・静脈など、画像として取得できるものであれば他のいかなる生体情報が用いられてもよい。あるいは、生体情報以外の以外の情報が取得されてもよい。例えば、検査対象はカード・印鑑など非生体であってもよい。
【0046】
上述の実施形態では指紋センサ117が静電容量式のセンサである例について説明したが、光学式・感熱式・機械式等、他の方式のセンサが用いられてもよい。またここでいう「ラインタイプ」のセンサは、撮像素子が1次元的に配列されているものに限定されない。撮像素子が2次元的に配置されているものであっても、読み取り面の外接矩形の短辺の長さが検査対象の長さよりも短いものであれば、いかなる形状のセンサが用いられてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、指紋センサ117の読み取り面の形状が長方形である例について説明したが、読み取り面の形状は長方形に限定されない。楕円形、8角形など、長方形以外の形状であってもよい。要は、外接矩形が長方形となるような形状であればよい。
【0048】
上述の実施形態では計測手段50が回転体11の回転角および回転速度を計測する例について説明したが、計測手段50は回転角および回転速度のいずれか一方のみを計測するものであってもよい。
【0049】
情報処理装置1のハードウェア構成は図2で示されるものに限定されない。必要な機能構成を実現できるものであれば、どのようなハードウェア構成を有する装置が用いられてもよい。また上述の実施形態では情報処理装置1が電子ペーパである例について説明したが、情報処理装置1は電子ペーパ以外の装置であってもよい。
【0050】
ここで用いられた「平行」および「垂直」という用語は、数学的に完全な平行および垂直を意味するものではなく、本発明の効果を奏する範囲であればある程度の誤差を含んでいてもよい。
【0051】
上述の実施形態においてCPU101によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))など)、光記録媒体(光ディスク(CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk))など)、光磁気記録媒体、半導体メモリ(フラッシュROMなど)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一実施形態に係る情報処理装置1の機能構成を示す図である。
【図2】情報処理装置1のハードウェア構成を示す図である。
【図3】情報処理装置1の外観を示す図である。
【図4】ホイール106Wと指紋センサ117との位置関係を示す図である。
【図5】指紋センサ117の配線を例示する図である。
【図6】情報処理装置1の動作を示すフローチャートである。
【図7】指紋認証処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】取得される指紋画像を例示する図である。
【図9】生成された指全体の画像を例示する図である。
【図10】変形例2に係る、生成された指全体の画像を例示する図である。
【符号の説明】
【0053】
1…情報処理装置、10…画像読み取り装置、11…回転体、12…読み取り手段、13…記憶手段、14…画像生成手段、20…電源、30…電力制御手段、40…主制御部、50…計測手段、101…CPU、102…ROM、103…RAM、104…VRAM、105…I/O、106…UIボタン群、107…表示体、108…表示制御部、111…電源オン・オフ回路、112…電源制御部、113…電池、114…バス、115…補助記憶装置、117…指紋センサ、118…回転センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体の回転方向に沿って並べられた複数の読み取り手段であって、各々が前記回転体の表面に固定された読み取り面を有し、前記読み取り面に対向している検出対象の画像を読み取り、読み取った画像を示す画像信号を出力する読み取り手段と
を有する画像読み取り装置。
【請求項2】
前記複数の読み取り手段の各々は、基準位置からの前記回転体の回転角が所定の条件を満たしたタイミングで前記検出対象の画像を読み取る
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読み取り装置。
【請求項3】
電力を供給する電力供給手段を有し、
前記複数の読み取り手段の各々は、基準位置からの前記回転体の回転角が所定の条件を満たしたタイミングで前記電力供給手段から電力の供給を受ける
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読み取り装置。
【請求項4】
前記回転体の回転速度を計測する速度計測手段を有し、
前記所定の条件は、前記回転速度が速くなるほど当該所定の条件を満たす読み取り手段の数が多くなるように設定される条件である
ことを特徴とする請求項3に記載の画像読み取り装置。
【請求項5】
前記複数の読み取り手段から出力される画像信号により示される複数の画像を記憶する画像記憶手段と、
前記画像記憶手段に記憶された複数の画像を結合することにより、前記検出対象全体の画像を生成する画像生成手段と
を有する請求項1−4のいずれかの項に記載の画像読み取り装置。
【請求項6】
前記回転体の回転角を計測する回転角計測手段と、
前記複数の画像のうち最初の画像が記憶されたときに前記回転角計測手段により計測された回転角を記憶する回転角記憶手段と、
前記回転角記憶手段に記憶された回転角に基づいて、前記画像生成手段により生成された画像を補正する画像補正手段と
を有する請求項5に記載の画像読み取り装置。
【請求項7】
前記検出対象が生体であり、
前記読み取り手段は、前記生体の生体情報を示す画像を読み取る
ことを特徴とする請求項1−6のいずれかの項に記載の画像読み取り装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像読み取り装置と、
前記回転体の回転角を計測する回転角計測手段と、
前記画像読み取り装置を制御する主制御部と、
前記回転角が所定の大きさになると、前記主制御部への電力の供給を開始するように電力の供給を制御する電力制御手段と
を有する情報処理装置。
【請求項9】
所定の回転軸を中心に回転する回転体と、前記回転体の回転方向に沿って並べられた複数の読み取り手段であって、各々が前記回転体の表面に固定された読み取り面を有し、前記読み取り面に対向している検出対象の画像を読み取り、読み取った画像を示す画像信号を出力する読み取り手段と、記憶手段とを有するコンピュータ装置に、
前記複数の読み取り手段から出力される画像信号により示される複数の画像を前記記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段に記憶された複数の画像を結合することにより、前記検出対象全体の画像を生成するステップと
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−181297(P2009−181297A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19205(P2008−19205)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】