説明

画像読取システムおよび画像読取方法

【課題】副走査方向に対する主走査方向の傾斜角を、記録媒体の幅や解像度の倍率に応じて適切な角度に変更することができる画像読取システム及び画像読取方法を提供する。
【解決手段】小切手5の画像を読み取る読み取りヘッド83と、読み取りヘッド83の主走査方向と副走査方向とが斜交するよう読み取りヘッド83を回動させるヘッド回転駆動モータ70と、解像度の倍率レベル又は小切手5の主走査方向に対応する長さ(幅)に基づき副走査方向に対する主走査方向の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部112と、傾斜角度に応じてヘッド回転駆動モータ70を制御するヘッド回転駆動制御部74と、主走査方向と副走査方向とを斜交させた状態でイメージセンサ83aが読み取った第1の読取画像から、主走査方向と前記副走査方向とが直交する場合の第2の読取画像に補正する画像補正部110と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手類などの媒体に係る画像を、媒体を搬送路内で搬送しながらラインセンサで読み取る画像読取システムおよび画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体を処理するための画像読取装置として小切手類を処理するための小切手処理装置が知られている。小切手処理装置では、搬送路に沿って読み取りヘッドおよび磁気ヘッドが配置されており、搬送される小切手類の画像および磁気インク文字が読み取られ、読み取り結果に応じて小切手類の仕分けが行われるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図11は、従来の小切手処理装置の画像読み取りの構成を示す模式図である。画像の読み取りを行う読み取りヘッド83は、フォトダイオードなどの光学センサを一直線上に配列したイメージセンサ83aで構成され、一般に、この配列(アレイ)の方向(即ち、主走査方向)が紙送り方向(即ち、副走査方向)と直角となるように固定されている。
【0004】
アレイの大きさは、装置の最大原稿サイズに合わせて設計されるが、それよりも小さな原稿の読み取りを行う場合、原稿からはみ出す光学センサは読み取りに関与せず、搭載した光学センサが十分に利用されないことがある。従来から、主走査方向と副走査方向を斜交させた走査装置(例えば、特許文献2を参照)が提案されている。これは明朝体の文字などにおける縦や横の細線の検出精度を高めるのが目的であるが、結果的には高解像度の画像を読み取ることができるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2008−211545号公報(第4頁−第6頁、図1)
【特許文献2】特開昭60−37869号公報(第2頁−第3頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
副走査方向に対する主走査方向の傾斜角度は適切な値に設定されるのが好ましい。適切な傾斜角度は、主走査方向に対応する原稿幅や設定された解像度の倍率によって異なるはずである。すなわち、原稿の幅がセンサレイの長さより短いほど傾斜角度を大きくし、また解像度の倍率を大きくするほど傾斜角度を大きく設定する必要がある。したがって、あらゆる原稿幅や設定された解像度の倍率に応じて傾斜角度を変更することが求められる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、副走査方向に対する主走査方向の傾斜角度を、記録媒体の幅や解像度の倍率に応じて適切な角度に変更することができる画像読取システム及び画像読取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決することのできる本発明の画像読取システムは、記録媒体の画像を読み取る読取部と、前記読取部の主走査方向と副走査方向とが斜交するよう前記読取部を回動させる駆動部と、解像度の倍率レベル又は前記記録媒体の前記主走査方向に対応する長さに基づき前記副走査方向に対する前記主走査方向の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部と、前記傾斜角度に応じて前記駆動部を制御する駆動制御部と、前記主走査方向と前記副走査方向とを斜交させた状態で前記読取部が読み取った第1の読取画像から、前記主走査方向と前記副走査方向とが直交する場合の第2の読取画像に補正する画像補正部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、解像度の倍率レベル又は記録媒体の用紙長に基づき適切な傾斜角度を算出し、読取部を傾斜角度だけ回動させる。これにより、実際に搭載している光学センサが低解像度のものであっても、記録媒体の長さに応じて傾斜角度を変えるだけで高解像度の読み取り画像を出力することができる。
【0009】
また、本発明の画像読取システムにおいて、前記傾斜角度は、当該傾斜角度の正接又は余接の値が整数となる角度であることが好ましい。
上記構成によれば、記録媒体の副走査方向の送り間隔を主走査方向のサンプリング間隔の整数倍とし、あるいは記録媒体の副走査方向の送り間隔を主走査方向のサンプリング間隔の整数分の1倍とすることによって、サンプリング間隔と記録媒体の送り間隔と、を等しい値とすることができる。サンプリング間隔と記録媒体の送り間隔とが一致していれば、傾斜角度だけ傾いて出力される第1の読取画像を構成する各サンプリング点の副走査方向の座標を置き換えるだけで、正方形状の格子状の第2の読取画像へ容易に補正することができる。
【0010】
上記の課題を解決することのできる本発明は、記録媒体の画像を読み取る読取部を備えた画像読み取りシステムにおける画像読取方法であって、
解像度の倍率レベル又は前記記録媒体の前記主走査方向に対応する長さに基づき、前記副走査方向に対する前記主走査方向の傾斜角度を算出するステップと、前記傾斜角度に応じて前記読取部を回動させるステップと、前記主走査方向と前記副走査方向とを斜交させた状態で前記読取部が第1の読取画像を読み取るステップと、前記第1の読取画像から前記主走査方向と前記副走査方向とが直交する場合の第2の読取画像に補正するステップと、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、解像度の倍率レベル又は記録媒体の用紙長に基づき適切な傾斜角度を算出し、読取部を傾斜角度だけ回動させる。これにより、実際に搭載している光学センサが低解像度のものであっても、記録媒体に応じて傾斜角度を変えるだけで高解像度の読み取り画像を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明に係る画像読取システムの実施の形態を説明する。なお、本実施形態における画像読取システムは、小切手処理装置1及びこれと通信可能に接続されたホストコンピュータ103とを含む概念である。
【0012】
(小切手処理装置の全体構成)
図1は本実施の形態に係る小切手処理装置の外観斜視図である。小切手処理装置1は、装置本体側の本体ケース2と、左右の開閉カバー3、4とを備えている。本体ケース2と開閉カバー3、4の間には、小切手5を搬送するための小切手搬送路6が形成されている。小切手搬送路6は、上から見た場合に略U字状に湾曲して延びている細幅の垂直溝によって規定されている。小切手搬送路6の小切手搬送方向の上流端は、細幅の垂直溝からなる小切手送り出し通路7を介して広幅の垂直溝からなる小切手供給部8に繋がっている。小切手搬送路6の下流端は、左右に分岐している細幅の垂直溝からなる左右の分岐通路9および10を介して、左右の広幅の垂直溝からなる第1および第2小切手排出部11、12に繋がっている。
【0013】
小切手5は、その表面5aの下端部分に、その長辺方向に磁気インク文字列5Aが印刷されている。また、表面5aには、所定の模様の背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、裏面5bには裏書き欄などが設けられている。小切手5は、上下方向を揃え、表面5aがU形状の小切手搬送路6の外側を向くように、小切手供給部8に挿入される。
【0014】
小切手供給部8から小切手送り出し通路7を介して送り出された小切手5は、小切手搬送路6に沿って搬送されながら、その表面5aに印刷されている磁気インク文字列5A、その表面画像および裏面画像が読み取られる。これらの情報が正常に読み取られた小切手5は、「電子決済済み」などの印刷が行われた後に、第1小切手排出部11に振り分けられて、そこに排出される。読み取り不能、読み取り異常などが発生した小切手5については、そのような印刷が行われることなく、第2小切手排出部12に振り分けられて、そこに排出されるようになっている。
【0015】
図2は、開閉カバー3、4を開いて小切手搬送路6を開放した状態の小切手処理装置1を示す外観斜視図であり、図3は、その平面図である。これらの図も参照して説明すると、本体ケース2は、U字状の小切手搬送路6に沿った輪郭形状の垂直な外周側面部分21を備えた中央ケース部分22と、左右の側方ケース部分23、24と、中央ケース部分22および側方ケース部分24の間に配置されている仕切り用ケース部分25とを備えている。中央ケース部分22と側方ケース部分23の間には小切手供給部8が形成されている。中央ケース部分22と他方の側方ケース部分24の間は、仕切り用ケース部分25によって左右に仕切られて、小切手排出部11、12が形成されている。
【0016】
中央ケース部分22における左右の側方ケース部分23、24から突出している部分の外周側面部分は小切手5をガイドするための本体側ガイド面21であり、この本体側ガイド面21は、左右から開閉カバー3、4によって覆われている。開閉カバー3は、側方ケース部分23の側に配置されており、その内側のカバー側ガイド面30が本体側ガイド面21に一定の間隔で対峙しており、これら本体側ガイド面21とカバー側ガイド面30によって規定される上方に開口した垂直溝によって上流側搬送路部分6aが規定されている。
【0017】
同様に、開閉カバー4は側方ケース部分24の側に配置されており、その内側のカバー側ガイド面40が本体側ガイド面21に一定の間隔で対峙しており、これら本体側ガイド面21とカバー側ガイド面40とによって規定される上方に開口した垂直溝によって下流側搬送路部分6bが規定されている。
【0018】
なお、開閉カバー3の先端部3aと開閉カバー4の先端部4aは、本体ケース2の側に配置されている垂直な開閉中心軸26を中心として左右に開閉可能な状態で、当該開閉中心軸26に取り付けられている。
【0019】
次に、開閉カバー3、4はロック機構によってその閉じ位置にロックされている。開閉カバー3のロック機構は、図2、3に示すように、当該開閉カバー3の後端面3bに形成したカバー側係合爪31と、側方ケース部分23における端面23aに進退可能に取り付けた本体側係合爪32とを備えている。本体側係合爪32は、装置本体内部に配置されている不図示のばね部材のばね力によって、端面23aから突出する方向に付勢されている。側方ケース部分23の外側面部分にはロック解除用のスライドボタン33が取り付けられている。他方の開閉カバー4のロック機構も同様に、本体側係合爪35、ケース側係合爪36およびスライドボタン37を備えている。
【0020】
開閉カバー3によって規定されている上流側搬送路部分6aには、その上流側から順に、不図示の表面側読み取りヘッド、裏面側読み取りヘッド83が配置されている。本例では、装置本体側に、裏面側読み取りヘッド83、磁気ヘッド84および印刷機構86が搭載されており、開閉カバー3に表面側読み取りヘッドが搭載されている。
【0021】
なお、表面側読み取りヘッドおよび裏面側読み取りヘッド83は、後述するヘッド回転駆動モータ70により搬送路を含む平面内で回動可能となるように設置されている。通常は搬送方向に対して直角をなしているが、小切手等の幅に応じて、適切な読み取りが行える角度まで回動する。つまり、回動により主走査軸と副走査軸は斜交するようになる。
【0022】
図4は、上流側搬送路部分6aの裏面側読み取りヘッド83の周辺部を模式的に示した図である。図4に示すように、装置本体側に搭載された裏面側読み取りヘッド83の周辺には、読み取りヘッド83を挟むように2つのローラ対が配置されている。読み取りヘッド83よりも上流側には小切手5を押し出し下流側へ搬送する搬送ローラ52と、搬送ローラ52に押し付けられて連れ回りする押えローラ62とが備えられている。また、読み取りヘッド83よりも下流側には搬送ローラ52及び押えローラ62によって押し出された小切手5を狭持してさらに下流側へ送り出す搬送ローラ53と、搬送ローラ53に押し付けられて連れ回りする押えローラ63とが備えられている。なお、図4には、裏面側読み取りヘッド83のみを示しているが、裏面側読み取りヘッド83のほぼ対向する位置には表面側読み取りヘッドが搭載されている。
【0023】
図5は、画像読取システムの制御系を示す概略ブロック図である。図5に示すように、裏面側読み取りヘッド83にはヘッド回転駆動モータ70が接続されている。本実施形態の裏面側読み取りヘッド83及び表面側読み取りヘッドは、ヘッド回転駆動モータ70の動力によって矢印Aのように回動可能に構成されており、主走査軸Cと副走査軸Bとが斜交するようになっている(図4参照)。副走査軸Bに対する主走査軸Bの傾斜角度は、小切手5の幅や、各イメージセンサの解像度の倍率レベルに応じて変更することができる。
【0024】
(制御系)
小切手処理装置1は、ROM、RAM等の記憶素子や演算装置であるCPUを備え、不揮発性の記憶素子に格納されているファームウェアを実行することによって各種機能部が形成される。図5に示すように、小切手処理装置1は、主として搬送制御部71、読取制御部72、小切手幅検出部73及びヘッド回転駆動制御部74が形成される。搬送制御部71は、小切手搬送路6に設けられた搬送ローラ52,53等を回転させる駆動ローラへ動力を与える搬送モータの動作を制御する。また、搬送制御部71は、通信可能に接続されたホストコンピュータ103からの指示に応じた小切手排出処理を制御する。
【0025】
読取制御部72は、ホストコンピュータ103からの指示に応じて表面側読み取りヘッド及び裏面側読み取りヘッド83による読取動作を制御する。また、読取制御部72は、各読み取りヘッドに搭載された光学センサから得られる電気信号をデジタル処理し、ホストコンピュータ103へ読取データとて送信する。なお、本実施形態では光学センサとしてCIS方式のスキャナを搭載しているが、CCD方式のスキャナを搭載することもできる。
【0026】
小切手幅検出部73は、不図示の小切手幅センサによって小切手供給部8に挿入された小切手5の幅(主走査方向に対応する長さ)を検出し、ホストコンピュータ103へ送信する。
ヘッド回転駆動制御部74は、ホストコンピュータ103から指示された傾斜角度に基づきヘッド回転駆動モータ70による読み取りヘッド83の回動動作を制御する。
【0027】
次にホストコンピュータ103について説明する。
コンピュータシステム103は表示部103a、キーボード、マウスなどの操作部103b,103cなどの入出力機器と接続されており、これらの入出力機器を介して当該ホストコンピュータ103側から小切手読取動作の開始指令や、各イメージセンサの解像度の倍率レベルを入力することができる。また、小切手処理装置1の小切手幅検出部73によって小切手5の幅の検出を行う方法以外に、小切手5の用紙幅の値をオペレータが直接入力することもできる。
【0028】
ホストコンピュータ103の内部構成としては、主として画像補正部110、コマンド生成部111、傾斜角度算出部112を備えている。画像補正部110は、読取制御部72によってデジタル処理された読取データに補正処理を行う。すなわち、副走査方向に対して傾斜した各イメージセンサが読み込んだ画像を、主走査方向と副走査方向とが直交する場合の読取画像に補正するための画像処理を行う。また、文字認識処理などを行い、読み取りが正常に行われたか否かを判断し、判断結果がコマンド生成部111に供給される。コマンド生成部111は、判断結果に基づいて印刷機構86や搬送機構の駆動を指示する各種コマンドを生成し、小切手処理装置1へ送信する。
傾斜角度算出部112は、操作部103b,103cによって入力された解像度の倍率レベルや小切手5の用紙幅、あるいは小切手幅検出部73によって検出され送信された小切手5の用紙幅の値に基づき、副走査方向に対する主走査方向の傾斜角度を算出する。
【0029】
(画像読み取り動作)
次に、副走査方向に対する主走査方向の傾斜角度を算出し、算出された傾斜角度だけ主走査方向を傾斜させて画像を読み取る場合の処理の流れを説明する。
図6は、小切手処理装置1及びホストコンピュータ103を含む画像読取システムによる画像読み取り処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
オペレータは、読取対象となる小切手5を小切手供給部8へ挿入する。小切手幅検出部73により小切手5の用紙幅を検出すると、ホストコンピュータ103へ送信する(ステップS11)。傾斜角度算出部112は、受信した用紙幅に基づき傾斜角度を算出する(ステップS22)。なお、小切手幅検出部73により小切手5の用紙幅を検出せずとも、オペレータが入出力機器103b,103cを介して直接入力してもよい。また、傾斜角度算出部112は、イメージセンサの解像度の倍率レベルに基づいて傾斜角度を算出することもできるため、用紙幅が与えられずともオペレータが必要とする解像度の倍率レベルを設定する構成とすることもできる(ステップS21)。傾斜角度を算出する方法は後述するが、予め設定された角度の中から適切な読み取りが行える角度が選択される。
【0031】
次に、コマンド生成部111は、傾斜角度算出部112が算出した傾斜角度だけ、読み取りヘッド83を回動させるための回動コマンドを生成し小切手処理装置1へ送信する(ステップS23)。回動コマンドに応じてヘッド回転駆動制御部74は、ヘッド回転駆動モータ70を駆動させて裏面側読み取りヘッド83を回動させる(ステップS12)。このとき、表面側読み取りヘッドについても裏面側読み取りヘッド83とほぼ対向するよう同じ傾斜角度だけ回動させる。
【0032】
次に、読み取りヘッドが所定角度に固定されると、コマンド生成部111によって生成された小切手搬送コマンド、小切手読取コマンドが送信され(ステップS24)、小切手5が送り出し通路7を介して小切手搬送路6へ送り出される(ステップS13)。送り出された小切手5が小切手搬送路6に沿って下流側へ搬送され、表面側読み取りヘッドおよび裏面側読み取りヘッド83のイメージセンサ83aを通過し、小切手5の表面および裏面の画像読み取りが開始する(ステップS14)。
【0033】
各イメージセンサが読み取った読取データを、ホストコンピュータ103へ送信し(ステップS15)、ホストコンピュータ103は、読取データを受信する(ステップS25)。
【0034】
読取データは各読み取りヘッドを回動させ副走査方向に対して傾斜させて読み取ったものであり、そのままでは直交座標系で小切手の画像を再現することができない。そこで、コンピュータシステム103の画像補正部110は、後述する手順で座標変換補正処理を実行し(ステップS26)、主走査方向と副走査方向とが直交する場合の読取画像を生成する(ステップS27)。
【0035】
画像補正部110は、生成した表面画像、裏面画像、および磁気インク文字情報に基づいて、読み取りが正常に行われたか否かを判断する。コマンド生成部111は画像補正部110から判断結果を得ると、その判断結果を小切手処理装置1へ送信する(ステップS28)。小切手処理装置1の搬送制御部71は判断結果を受信すると(ステップS16)、読取判断結果に応じた小切手5の印刷や排出の処理を行う(ステップS17)。
【0036】
(座標変換補正処理動作)
図7から図9は、搬送方向と直交する基準方向から読み取りヘッドを回動させて読み取りを行う場合の読み取りおよび画像処理動作を説明するための模式図である。以下では、傾斜角度を45°とした場合の例について説明する。
【0037】
図7に示すように、光学センサの間隔をlとした場合に傾斜角度を45°とし、光学センサのアレイを45°傾けると、副走査方向と直行するサンプル間隔はl/√2となる。サンプリング毎の紙送り間隔をl/√2とすると、スキャン領域上でのサンプル点は正方形の格子状に並ぶ。この場合、元のアレイの解像度の√2倍の解像度でサンプリングしたとの同等となる。小切手5が搬送されると、その先端は、Aで示す光学センサに先に到達する。従って、A、B、C、・・の順に順次スキャンを開始する。
【0038】
イメージセンサは、所定の紙送り間隔ごとにスキャンを実行するので、スキャンした画像について、左からX個目のセンサが、Y回目のサンプリングで取得する画素値をI(X,Y)とすると、図8に示すような順序で画像の読み取りが行われる。読取データは読み取りヘッドを斜交させて読み取ったものであるため、これをそのまま直交座標系で再生しても小切手の画像を再現できない。
【0039】
そこで、I’(X,Y)=I(X,Y+X)となるような座標変換を行う。これにより、変換後の直交座標系I’(X,Y)で、元の光学センサアレイの√2倍の解像度による読取画像を生成することができる。例えば、図9に示すように、上記の座標変換で、I’(1,1)=I(1,2)、I’(2,1)=I(2,3)、I’(3,1)=I(3,4)、I’(4,1)=I(4,5)、I’(5,1)=I(5,6)となる。この画素値の並びは、主走査方向と副走査方向とが直交する場合の読取画像に対応する。
【0040】
図10は、本実施形態の小切手処理装置で選択することができる傾斜角度およびその解像度に対応する倍率レベルを示す表である。オペレータは倍率レベルを選択するだけで、読み取りヘッドを対応する傾斜角度だけ回動させることができる。傾斜角度が大きくなるにつれてサンプリング間隔が密になるので、解像度は上昇する。上記の傾斜角度45°の例からも推察できるように、小切手上において正方形の格子状にサンプリングすることができる角度は、傾斜角度の正接(tan)又は余接(cot)の値が整数となる角度である。これは、傾斜角度によって変化するサンプルリング間隔が、紙送り間隔のちょうど整数倍(または整数分の1倍)であるときのみ正方形の格子を形成することができるからである。このようなサンプリングを行う場合は、小切手5の副走査方向の送り間隔を主走査方向のサンプリング間隔の整数倍とし、あるいは小切手5の副走査方向の送り間隔を主走査方向のサンプリング間隔の整数分の1とすることによって、サンプリング間隔と記録媒体の送り間隔と、を等しい値とすることができる。サンプリング間隔と小切手5の送り間隔とが一致していれば、傾斜角度だけ傾いて出力される読取画像を構成する各サンプリング点の副走査方向の座標を置き換えるだけで、正方形の格子状の読取画像へ容易に補正することができる。
【0041】
なお、小切手5の用紙幅:Wが与えられた場合に傾斜角度θを算出するには、センサアレイの全長:4l及び用紙幅:Wから傾斜角度θのCOS(余弦)の値を算出し、三角関数表に基づき傾斜角度θを求めるよう構成すればよい。ところで、用紙幅から傾斜角度を算出する場合は、算出された傾斜角度が必ずしも正方形の格子状にサンプリングが得られない角度である可能性がある。すなわち傾斜角度の正接(tan)又は余接(cot)の値が整数とならない場合である。このような場合は、バイリニアに代表されるスプライン補完を行うことによって、主走査と副走査が直行する場合の画像に変換することができる。
【0042】
上記の実施形態では、小切手の幅に応じて傾斜角度を設定する構成としたが、プレスキャンもしくはユーザの設定値入力により高解像度で読み取りを行う用紙領域を指定し、当該領域のみ最適な斜交角度で読み取りを行うようにしてもかまわない。
【0043】
なお、本発明は、小切手や手形、請求書などの小切手類以外のシート状媒体を処理するための画像読取システムにも同様に適用できる。例えば、プリンタ、スキャナなどの画像処理装置に適用することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る小切手処理装置は、小切手5の画像を読み取る表面及び裏面側読み取りヘッド83と、読み取りヘッド83の主走査方向と副走査方向とが斜交するよう読み取りヘッド83を回動させるヘッド回転駆動モータ70と、解像度の倍率レベル又は小切手5の主走査方向に対応する長さ(幅)に基づき副走査方向に対する主走査方向の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部112と、傾斜角度に応じてヘッド回転駆動モータ70を制御するヘッド回転駆動制御部74と、主走査方向と副走査方向とを斜交させた状態で読み取りヘッド83が読み取った第1の読取画像から、主走査方向と副走査方向とが直交する場合の第2の読取画像に補正する画像補正部110と、を有する。
解像度の倍率レベル又は小切手5の用紙長に基づき適切な傾斜角度を算出し、読み取りヘッドを傾斜角度だけ回動させる。これにより、実際に搭載している光学センサが低解像度のものであっても、小切手5の長さに応じて傾斜角度を変えるだけで高解像度の読み取り画像を出力することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る小切手処理装置の傾斜角度は、当該傾斜角度の正接又は余接の値が整数となるような角度に設定される。したがって、読み取りヘッドが傾斜していても小切手5のサンプリングを正方形の格子状に行うことができ、座標変換後の補正画像も歪のない適正な画像とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を適用した小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】開閉カバーを開けた状態の小切手処理装置の外観斜視図である。
【図3】開閉カバーを開けた状態の小切手処理装置の平面図である。
【図4】裏面側読み取りヘッドの周辺部を模式的に示した図である。
【図5】画像読取システムの制御系を示す概略ブロック図である。
【図6】画像読取システムによる画像読み取り処理手順を示す概略フローチャートである。
【図7】読み取りヘッドを傾斜させて読み取りを行う場合の読み取り及び画像処理動作を説明するための模式図である。
【図8】読み取りヘッドを傾斜させて読み取りを行う場合の読み取り及び画像処理動作を説明するための模式図である。
【図9】読み取りヘッドを傾斜させて読み取りを行う場合の読み取り及び画像処理動作を説明するための模式図である。
【図10】本実施形態の小切手処理装置で選択することができる解像度の倍率レベルとこれに対応する傾斜角度を示す表である。
【図11】従来の小切手処理装置の画像読み取りの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1:小切手処理装置、5:小切手、6:小切手搬送路、46,47:ヘッド駆動モータ、83:裏面側読み取りヘッド(読取部)、70:ヘッド回転駆動モータ(駆動部)、71:搬送制御部、72:読取制御部、73:小切手幅検出部、74:ヘッド回転駆動制御部(駆動制御部)、103:ホストコンピュータ、110:画像補正部、111:コマンド生成部、112:傾斜角度算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の画像を読み取る読取部と、
前記読取部の主走査方向と副走査方向とが斜交するよう前記読取部を回動させる駆動部と、
解像度の倍率レベル又は前記記録媒体の前記主走査方向に対応する長さに基づき前記副走査方向に対する前記主走査方向の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部と、
前記傾斜角度に応じて前記駆動部を制御する駆動制御部と、
前記主走査方向と前記副走査方向とを斜交させた状態で前記読取部が読み取った第1の読取画像から、前記主走査方向と前記副走査方向とが直交する場合の第2の読取画像に補正する画像補正部と、を有することを特徴とする画像読取システム。
【請求項2】
前記傾斜角度は、当該傾斜角度の正接又は余接の値が整数となる角度であることを特徴とする請求項1に記載の画像読取システム。
【請求項3】
記録媒体の画像を読み取る読取部を備えた画像読み取りシステムにおける画像読取方法であって、
解像度の倍率レベル又は前記記録媒体の前記主走査方向に対応する長さに基づき、前記副走査方向に対する前記主走査方向の傾斜角度を算出するステップと、
前記傾斜角度に応じて前記読取部を回動させるステップと、
前記主走査方向と前記副走査方向とを斜交させた状態で前記読取部が第1の読取画像を読み取るステップと、
前記第1の読取画像から前記主走査方向と前記副走査方向とが直交する場合の第2の読取画像に補正するステップと、を含むことを特徴とする画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−118891(P2010−118891A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290666(P2008−290666)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】