説明

画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】画像読取装置で、複数のロッドレンズアレイを接続しても、読み取り結果でスジの発生を防ぐ。
【解決手段】画像読取装置は、配列された複数の受光素子を含むイメージセンサーと、読取対象に向けて光を照射する光源と、複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイを複数個つなぎ合わせたものであり、読取対象からの反射光をイメージセンサーに導くレンズ部と、イメージセンサーの各受光素子からの出力値に基づき画像データを生成し、画像データでのロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する画素の画素値が濃くなるように補正する補正部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取り、シェーディング補正を行う画像読取装置に関する。又、この画像読取装置を備えた複合機、複写機、プリンター、FAX装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置は、光源から光を放ち、原稿で反射された光をイメージセンサーに導き、画像データを得る。又、画像読取装置は複合機、FAX装置などの画像形成装置に設けられることもある。そして、画像読取装置には、CIS(Contact Image Sensor)と呼ばれる密着型イメージセンサーユニットが搭載されることがある。このCIS方式のユニットには、棒状のレンズを主走査方向に並べたロッドレンズアレイが設けられることがある。ここで、ロッドレンズアレイは読み取り幅(主走査方向の幅)と同じ長さが必要となる。しかし、専用品を用意すると高価となる場合があるので、汎用品のロッドレンズアレイを切断したもの同士を繋げて、所望の長さのロッドレンズアレイを作成することがある。例えば、A3用紙を読み取れるようにするため、A4用紙の短辺幅のロッドレンズアレイを切断し、切断した各ロッドレンズアレイを複数繋げて、A3用紙幅のロッドレンズアレイを得ることが行われる。
【0003】
このようなロッドレンズアレイの接続に関する発明が特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、光電変換素子が複数実装されたセンサー基板と、原稿照明用の光源と、センサー基板に原稿からの反射光を結像する結像素子と、これらを保持するフレームとを有し、結像素子は、少なくとも長手方向の一方の端部を切断した複数のロッドレンズアレイの切断部を互いに接続し所定の読み取り幅とし、フレームは、ロッドレンズアレイを保持する保持部を有し、保持部は、ロッドレンズアレイの切断部、及び/又は、接続部が位置する底面を幅広にすると共に、前記保持部の両壁面側に幅広にした前記底面より上端に至るように壁面に沿って設けられたバリ逃げ部を備えたイメージセンサーユニットが記載されている。この構成により、切断時に切断面に発生したバリを退避し、接続前後のロッドレンズアレイの方向管理やバリの削り取りを行うことなくバリ影響を排除しようとする(特許文献1:請求項1、段落0008等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4436895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロッドレンズアレイを切断し繋ぎ合わせることにより、所望の長さのロッドレンズアレイを安価に用意することができる。そして、一般に、ロッドレンズアレイ同士は、接着剤により接続される。接着剤で接続するものの、接着状態のばらつきや、切断時のブレ等の要因により、隙間ができてしまう場合がある。
【0006】
そして、原稿からの反射光以外の外乱光がこの隙間からイメージセンサーに到達する場合がある。光源点灯時、ロッドレンズアレイの繋ぎ目に位置するイメージセンサー内の受光素子は、原稿の反射光に加え、外乱光が入射される。これにより、イメージセンサーに基づき得られた画像データのうち、ロッドレンズアレイの繋ぎ目部分の画素は、外乱光分だけ明るくなる。本来よりも明るい部分が副走査方向に続くと、白色あるいはグレー状のスジ(白筋)として認識されてしまうという問題がある。
【0007】
尚、ロッドレンズアレイ同士を密着させ、適正な状態で保持して直ぐに接着するため、接着剤としてUV硬化型接着剤が用いられることがある。そして、接着剤はUVを照射してからの硬化時間は短い方が好ましい。そこで、良くUVを透過する透明タイプのUV硬化型接着剤が好ましい。しかし、透明タイプの接着剤は、外乱光を透過してしまう。
【0008】
又、外乱光をイメージセンサーに到達しないようにするため、不透明タイプのUV硬化型接着剤を用いることも考えられる。しかし、不透明のものではUVを照射してからなかなか固まらないことがある。又、CIS方式のイメージセンサーユニットでは被写界深度が浅いため、ロッドレンズアレイの位置決めも厳密に行われるので、接着剤の量も一定の制限があり、隙間が全て埋まるように接着剤を塗布することは難しい場合もある。
【0009】
尚、特許文献1を見ると、隙間に黒色のシール剤10を充填する旨が記載されているが(特許文献1:段落0014)、隙間を全て埋めるようにシール剤10を塗布するかは記載されていない。そのため、隙間から外乱光が入りスジを発生させる可能性が残る。又、接着剤以外にシール剤を塗布するという余分な工程が必要となる。又、ロッドレンズを全く汚さず、隙間を全て埋めるようにシール剤を充填しようとすると、充填作業を細かく高精度に行う必要があり、手間を要し、コストの面でも問題となり得る。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、画像読取装置で、たとえ透明の接着剤を用いて複数のロッドレンズアレイを接続しても、読み取り結果でスジの発生を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る画像読取装置は、配列された複数の受光素子を含むイメージセンサーと、読取対象に向けて光を照射する光源と、複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイを複数個つなぎ合わせたものであり、前記読取対象からの反射光を前記イメージセンサーに導くレンズ部と、前記イメージセンサーの各前記受光素子からの出力値に基づき画像データを生成し、画像データでの前記ロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する画素の画素値を補正する補正部と、を含むこととした。
【0012】
この構成によれば、補正部は、イメージセンサーの各受光素子からの出力値に基づき画像データを生成し、画像データでのロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する画素の画素値を補正する。これにより、原稿の反射光以外の外乱光が、ロッドレンズアレイの繋ぎ目の隙間からイメージセンサーに入射しても、外乱光による画像データへの影響を除去することができる。従って、たとえロッドレンズアレイ同士を透明の接着剤で接続したり、全ての隙間をシール剤で埋めたりせず、ロッドレンズアレイの繋ぎ目の隙間から外乱光が入り込むことがあってもスジ(白筋)の無い画像データを得ることができる。
【0013】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記補正部は、各前記受光素子からの出力値の大きさに基づき、黒基準値と白基準値の間で画素値に変換する量子化を行って、前記イメージセンサーの出力からディジタルの画像データを生成し、前記ロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する前記受光素子である補正対象受光素子の前記黒基準値を補正することとした。
【0014】
この構成によれば、補正部は、各受光素子からの出力値の大きさに基づき、黒基準値と白基準値の間で画素値に変換する量子化を行って、イメージセンサーの出力からディジタルの画像データを生成し、ロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する受光素子である補正対象受光素子の黒基準値を補正する。これにより、量子化するときの受光素子からの出力値の最小レベルを示す黒基準を補正することで、画像データで、補正対象受光素子に対応する画素を濃くすることができる。言い換えると、黒基準値を補正するので、補正対象受光素子の画素値が、外乱光の影響が目立つ高濃度値であるほど画像データでは画素値が濃くなる補正がなされ、外乱光の影響が目立ちにくい低濃度値となるほど補正による画素値への影響が少なくされる。従って、外乱光の影響による受光素子からの出力値の増加を濃度(画素値)に応じて滑らかに打ち消すように補正を行うことができる。
【0015】
又、請求項3に係る発明は、請求項2の発明において、前記補正部は、前記光源を消灯しているときの各前記受光素子からの第1出力値と、予め用意された均一濃度の補正用読取対象を読み取ったときの各前記受光素子からの第2出力値を取得し、前記第1出力値と前記第2出力値の差を各前記受光素子についてそれぞれ求め、差の絶対値が閾値以上の前記受光素子を前記補正対象受光素子と特定し、前記補正対象受光素子に対する前記黒基準値の補正を行うこととした。
【0016】
この構成によれば、補正部は、第1出力値と、第2出力値に基づき、補正対象受光素子を特定し、補正対象受光素子に対する黒基準値の補正を行う。これにより、光源消灯時の各受光素子からの出力値を取得するとともに補正用読取対象を読み取るだけで、ロッドレンズアレイの繋ぎ目を認識し、特定することができる。
【0017】
又、請求項4に係る発明は、請求項3の発明において、データを記憶する記憶部を有し、前記補正用読取対象は黒色であり、前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と、前記補正対象受光素子からの前記第1出力値と前記第2出力値の差の絶対値を補正値として記憶し、前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値を前記補正値分小さくする補正を行うこととした。
【0018】
この構成によれば、補正部は、光源消灯時の各受光素子からの出力値に基づき各受光素子の黒基準値を定め、補正対象受光素子の黒基準値を補正値分小さくする補正を行う。これにより、黒基準値のみを補正により小さくして、黒基準値と白基準値のレンジを広げて量子化が行われるので、補正対象受光素子からの出力値は、補正前よりも全体的に濃くなる方向に量子化される。又、記憶部は、補正対象受光素子の位置と補正値を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイの繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、黒い補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0019】
又、請求項5に係る発明は、請求項2の発明において、データを記憶する記憶部を有し、前記補正用読取対象は均一濃度を有し、グレー又は有彩色であり、前記補正部は、前記補正対象受光素子からの前記第2出力値と、前記補正対象受光素子以外の前記受光素子からの前記第2出力値に基づく比較値との比率を求め、前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と、前記比率を記憶し、前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値に前記比率を乗じて又は除して前記黒基準値を小さくする補正を行うこととした。
【0020】
この構成によれば、補正部は、光源消灯時の各受光素子からの出力値に基づき各受光素子の黒基準値を定め、補正対象受光素子の黒基準値に比率を乗じて又は除して黒基準値を小さくする補正を行う。これにより、補正用読取対象が黒でなくても、補正対象受光素子の黒基準値を適正に補正することができる。又、記憶部は、補正対象受光素子の位置と比率を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイの繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項2の発明において、前記補正部は、予め用意された均一濃度の補正用読取対象を読み取ったときの各前記受光素子からの出力値を取得し、連続する複数の前記受光素子の一定範囲を1つのブロックとした各前記ブロックについて代表値を定めるとともに、隣接する前記ブロック間で前記代表値の差を求め、隣接する前記ブロックのうち、前記代表値が明るい方の前記ブロックに含まれる前記受光素子を前記補正対象受光素子と特定し、前記補正対象受光素子に対する前記黒基準値の補正を行うこととした。
【0022】
この構成によれば、補正部は、予め用意された均一濃度の補正用読取対象を読み取ったときの各受光素子からの出力値を取得し、連続する複数の受光素子の一定範囲を1つのブロックとした各ブロックについて代表値を定めるとともに、隣接するブロック間で代表値の差を求め、隣接するブロックのうち、代表値が明るい方のブロックに含まれる受光素子を補正対象受光素子と特定し、補正対象受光素子に対する黒基準値の補正を行う。これにより、補正用読取対象を読み取るだけで、ロッドレンズアレイの繋ぎ目を認識し特定することができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6の発明において、データを記憶する記憶部を有し、前記補正用読取対象は黒色であり、前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と前記補正対象受光素子を含む前記ブロックと前記補正対象受光素子を含まない前記ブロックの前記代表値に基づく比較代表値の差の絶対値を補正値として記憶し、前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値を前記補正値分小さくする補正を行うこととした。
【0024】
この構成によれば、補正部は、光源消灯時の各受光素子からの出力値に基づき各受光素子の黒基準値を定め、補正対象受光素子の黒基準値を補正値分小さくする補正を行う。これにより、黒基準値のみを補正により小さくして、黒基準値と白基準値のレンジを広げて量子化が行われるので、補正対象受光素子からの出力値は、補正前よりも全体的に濃くなる方向に量子化される。又、記憶部は、補正対象受光素子の位置と補正値を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイの繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、黒い補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項6の発明において、データを記憶する記憶部を有し、前記補正用読取対象は均一濃度を有し、グレー又は有彩色であり、前記補正部は、前記補正対象受光素子を含むブロックの前記代表値と前記補正対象受光素子を含まない前記ブロックの前記代表値に基づく比較代表値との比率を求め、前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と前記比率を記憶し、前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値に前記比率を乗じて又は除して前記黒基準値を小さくする補正を行うこととした。
【0026】
この構成によれば、補正部は、光源消灯時の各受光素子からの出力値に基づき各受光素子の黒基準値を定め、補正対象受光素子の黒基準値に比率を乗じて又は除して黒基準値を小さくする補正を行う。これにより、補正用読取対象が黒でなくても、補正対象受光素子の黒基準値を適正に補正することができる。又、記憶部は、補正対象受光素子の位置と比率を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイの繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0027】
請求項9に係る発明は、請求項6乃至8の発明において、前記補正部は、前記ブロックに含まれる各前記受光素子からの出力値の平均値、または、前記ブロックに含まれる各前記受光素子のうち、いずれかの前記受光素子からの出力値を代表値とすることとした。
【0028】
この構成によれば、補正部は、ブロックに含まれる各受光素子からの出力値の平均値、又は、ブロックに含まれる各受光素子のうち、いずれかの受光素子からの出力値を代表値とする。これにより、ブロック単位での比較を行うことができる。
【0029】
又、請求項10に係る発明は、請求項1乃至9の発明において、使用者に向けてメッセージを報知する報知部を備え、前記第1出力値と前記第2出力値の差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、又は、隣接する前記ブロックとの代表値との差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、前記報知部は警告を発することとした。
【0030】
この構成によれば、第1出力値と第2出力値の差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、又は、隣接するブロックとの代表値との差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、報知部は警告を発する。これにより、ロッドレンズアレイ間の隙間が許容できないほど大きく、補正できないほど外乱光が隙間から入り込んでいる旨を報知(警告)することができる。従って、ロッドレンズアレイの交換が必要であることを認識することができる。
【0031】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至10の発明において、前記補正用読取対象は、均一濃度の原稿、又は、前記イメージセンサーで読み取り可能な位置に設けられた基準板であることとした。
【0032】
この構成によれば、補正用読取対象は、均一濃度の原稿、又は、イメージセンサーで読み取り可能な位置に設けられた基準板である。これにより、密着型イメージセンサーユニットを有する様々な形態の画像読取装置で外乱光の影響を除去する補正を行うことができる。
【0033】
請求項12に係る画像形成装置は、請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像読取装置を含むこととした。
【0034】
この構成によれば、複数のロッドレンズアレイを接続した画像読取装置を有しても、スジ(白筋)の無い画像データを得ることができる。従って、ロッドレンズアレイ間の隙間からの外乱光によるスジ(白筋)の無い印刷物を印刷することができ、印刷物の画質が高い画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、画像読取装置は、たとえ透明の接着剤を用いて複数のロッドレンズアレイを接続したレンズ部を含んでも、読み取り結果(画像データ)でのロッドレンズアレイの隙間からの外乱光によるスジ(白筋)を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】複合機の模型的正面断面図である。
【図2】画像読取装置の一例を示す模型的正面断面図である。
【図3】(a)は、読取ユニットの断面図であり、(b)はイメージセンサーの構造の一例を示す説明図である。
【図4】ロッドレンズアレイの一部を示す斜視図である。
【図5】複合機のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図6】画像読取装置の一例を示すブロック図である。
【図7】ロッドレンズアレイの繋ぎ目部分を拡大した拡大斜視図である。
【図8】ロッドレンズアレイの繋ぎ目部分を示す読取ユニットの断面図である。
【図9】スジを解消するための補正の概念を説明するためのグラフである。
【図10】スジを解消する補正で用いる補正用読取対象の一例を示す説明図である。
【図11】スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】補正値を用いた原稿読取の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】スジを解消するための補正の概念を説明するためのグラフである。
【図14】スジを解消する補正で用いる補正用読取対象の一例を示す説明図である。
【図15】スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【図16】補正値を用いた原稿読取の流れの一例を示すフローチャートである。
【図17】スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【図18】スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【図19】液晶表示部に表示される警告画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図1〜図18を用いて説明する。まず、図1〜図12を用いて第1の実施形態を説明する。但し、各実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0038】
(複合機100の構成の概要)
まず、図1を用い、第1の実施形態に係る画像読取装置1を含む複合機100(画像形成装置に相当)の概略を説明する。図1は、複合機100の模型的正面断面図である。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の複合機100は、上部に原稿搬送装置2と画像読取部3を含む画像読取装置1を有する(詳細は後述)。又、画像読取部3の前面に操作パネル10が設けられ、複合機100本体内に、給紙部4a、搬送路4b、画像形成部5a、定着部5b等が設けられる。
【0040】
まず、図1に破線で示すように、操作パネル10は、複合機100の正面上方に設けられる。そして、操作パネル10は、複合機100の状態や各種メッセージを表示する液晶表示部101を備える。液晶表示部101は、機能の選択、設定や文字入力等を行うためのキーを1又は複数表示できる。又、液晶表示部101の上面にタッチパネル部102(例えば、抵抗膜方式)が設けられる。タッチパネル部102は、液晶表示部101で押された部分の位置、座標を抽出するためのものである。又、操作パネル10には、コピー等の各種機能の実行開始を指示するためのスタートキー103等、各種のハードキーも設けられる。
【0041】
給紙部4aは、複数の用紙(例えば、コピー用紙、普通紙、再生紙、厚紙、OHPシート等の各種シート)を収容し、1枚ずつ搬送路4bに送り込む。搬送路4bは、給紙部4aから排出トレイ41まで用紙を搬送する通路である。そして、搬送路4bには、用紙搬送の際に回転駆動する搬送ローラー対42、43や、搬送されてくる用紙を画像形成部5aの手前で待機させ、トナー像形成のタイミングを合わせて用紙を送り出すレジストローラー対44等が設けられる。
【0042】
画像形成部5aは、画像データに基づきトナー像を形成し、搬送される用紙にトナー像を転写する。そのため、画像形成部5aは、図1中に示す矢印方向に回転駆動可能に支持された感光体ドラム51、及び、感光体ドラム51の周囲に配設された帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラー55、清掃装置56等を備える。
【0043】
トナー像形成及び転写プロセスを説明する。感光体ドラム51は、画像形成部5aの略中心に設けられ、所定方向に回転駆動する。帯電装置52は、所定電位に感光体ドラム51を帯電させる。図1において、露光装置53は、画像データに基づき、レーザ光を出力し、感光体ドラム51表面を走査露光して画像データに応じた静電潜像を形成する。尚、画像データは、画像読取部3で得られた画像データや、ネットワーク等により接続される外部のコンピューター200や相手方FAX装置300(図5参照)から送信された画像データ等が用いられる。
【0044】
そして、現像装置54は、感光体ドラム51に形成された静電潜像にトナーを供給して現像する。転写ローラー55は感光体ドラム51に圧接し、ニップが形成される。そして、トナー像にあわせタイミングを図られつつ、用紙はニップに進入する。用紙進入時、転写ローラー55には所定の電圧が印加され、用紙に感光体ドラム51上のトナー像が転写される。清掃装置56は、転写後に感光体ドラム51に残留するトナーを除去する。
【0045】
定着部5bは、用紙に転写されたトナー像を定着させる。本実施形態における定着部5bは主として発熱体を内蔵する加熱ローラー57と加圧ローラー58で構成される。加熱ローラー57と加圧ローラー58は圧接しニップを形成する。そして、用紙が、このニップを通過することで、用紙表面のトナーが溶融・加熱され、トナー像が用紙に定着する。トナー定着後の用紙は、排出トレイ41が受け止める。このようにして、コピー機能、プリンタ機能の使用時、画像形成(印刷)が行われる。
【0046】
(画像読取装置1の概要)
次に、図2に基づき、本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置1を説明する。図2は画像読取装置1の一例を示す模型的正面断面図である。
【0047】
本実施形態の画像読取装置1は、原稿搬送装置2と画像読取部3を含む。まず、原稿搬送装置2は、読み取りを行う原稿を載置する原稿トレイ21、原稿の搬送を行う複数の原稿搬送ローラー対22、原稿搬送路23、原稿排出ローラー対24、原稿排出トレイ25を備える。原稿トレイ21上の原稿は、1枚ずつ原稿搬送路23に送り出される。送り出された原稿は、画像読取部3上面の送り読取用コンタクトガラス31に接するように自動かつ連続的に搬送される。そして、原稿排出ローラー対24は読取済の原稿を原稿排出トレイ25に排出する。又、原稿搬送装置2は、紙面奥側設けられた支点(不図示)により、上方に持ち上げ可能であり、例えば書籍等の原稿を画像読取部3の上面の載置読取用コンタクトガラス32に載せることもできる。
【0048】
次に、画像読取部3は、送り読取用コンタクトガラス31を通過する原稿や、載置読取用コンタクトガラス32に載置された原稿に光を照射し、その反射光に基づき原稿を読み取って画像データを生成する。そのため、画像読取部3は、CIS(Contact Image Sensor)方式の第1読取ユニット61(読取ユニット6)を備える(第1読取ユニット61の詳細は後述)。
【0049】
又、第1読取ユニット61は、ワイヤ33で巻取ドラム34に接続される。巻取ドラム34は、正逆回転する巻取モータ35(図6参照)により回転させられ、第1読取ユニット61を水平方向(複合機100の左右方向)に自在に移動させることができる。原稿搬送装置2を用いて原稿を読み取る時、第1読取ユニット61は、送り読取用コンタクトガラス31の下方で固定される。一方、載置読取用コンタクトガラス32上の原稿を読み取る時、巻取ドラム34の回転駆動により第1読取ユニット61を水平方向に移動させて読み取りが行われる。
【0050】
ここで、送り読取用コンタクトガラス31と載置読取用コンタクトガラス32の間には、原稿の搬送をガイドするガイド部材26が設けられる。そして、ガイド部材26の下面には、白基準を得るための真っ白な白基準板27や黒基準値の補正に用いる補正用基準板28(補正用読取対象に相当)が設けられる。各基準板は、画像読取装置1の主走査方向(原稿搬送方向と垂直な方向、図3の紙面に対し垂直な方向)に伸びる板である。
【0051】
又、原稿搬送路23には、CIS(Contact Image Sensor)方式の第2読取ユニット62(読取ユニット6)が設けられる。第2読取ユニット62は、例えば、送り読取用コンタクトガラス31と原稿排出ローラー対24の間に設けられる。第2読取ユニット62は、両面印刷された原稿の裏面側を読み取る。これにより、原稿が原稿搬送路23を1度通過させるだけで原稿の両面を読み取ることができる。従って、両面印刷された原稿を自動的に読み取るため、原稿の搬送方向の反転や複雑な原稿搬送路23を設けずに、容易に原稿の両面を読み取ることができる。尚、第2読取ユニット62に対向して白基準値を得るための白基準ローラー29が設けられる。又、白基準ローラー29に変えて真っ白な白基準板27を設けても良い。
【0052】
(読取ユニット6)
次に、図3及び図4に基づき、各読取ユニット6(第1読取ユニット61及び第2読取ユニット62)を説明する。図3(a)は、読取ユニット6の断面図であり、(b)はイメージセンサー8の構造の一例を示す説明図である。図4は、ロッドレンズアレイ7の一部を示す斜視図である。
【0053】
本実施形態の複合機100には、第1読取ユニット61と第2読取ユニット62が搭載される。そして、第1読取ユニット61と第2読取ユニット62は同じタイプのものを用いることができる。そこで、以下の説明では、第1読取ユニット61、第2読取ユニット62の両方について適用される説明については、第1、第2の語句を省略し、各読取ユニット6と総称を用い、第1読取ユニット61と第2読取ユニット62で共通する部材については便宜上同じ符号を付す。
【0054】
各読取ユニット6には断面略U字状の筐体63(外部フレーム)が設けられる。筐体63は、図3(a)の紙面垂直方向を長手方向とし、函状である。筐体63の長手方向が各読取ユニット6の主走査方向である。筐体63の上面には、筐体63の開口を閉じるように板状のガラス64が取り付けられる。第2読取ユニット62では、ガラス64に接して、又は、ガラス64の近傍を原稿が通過する。
【0055】
筐体63の下面には、図3(a)の紙面垂直方向(主走査方向)にのびるイメージセンサー8が設けられる。イメージセンサー8は、複数の受光素子9(光電変換素子)を主走査方向に沿って配列したものである。本実施形態の各読取ユニット6では、A3サイズの用紙を読み取れるように、イメージセンサー8は、A3サイズの用紙の短辺よりも長い。
【0056】
ここで、図3(b)を用いて、イメージセンサー8の構造の一例を説明する。イメージセンサー8は、画素として、複数の受光素子9が列状に配列される。各受光素子9の数やサイズは読み取り解像度による。そして、例えば、各受光素子9の下方に、読み出しレジスタ81が設けられる。読み出しレジスタ81は一定のクロックで各受光素子9の出力を順番に外部に出力する。
【0057】
イメージセンサー8の上方には、レンズ部65としてロッドレンズアレイ7が設けられる。尚、本実施形態のレンズ部65は、複数のロッドレンズアレイ7を複数繋ぎ合わせた(接続した)ものである(詳細は後述)。
【0058】
そして、ロッドレンズアレイ7の側方に、導光体66が設けられる。図3(a)に破線で示すように、各導光体66に対し、筐体63の紙面垂直方向の奥側の端部に光源67(例えば、LED)が設けられる。又、本実施形態の各読取ユニット6では、各導光体66に対し、筐体63の紙面垂直方向の手前側の端部にも光源67を設ける(手前側の光源67は不可視)。従って、各読取ユニット6の筐体63の長手方向の両端部にそれぞれ2つずつ光源67が設けられる(計4つ)。
【0059】
導光体66は、光源67が発する光を各読取ユニット6の長手方向(主走査方向)に導く。又、導光体66は、図3(a)に2点鎖線矢印で示すように、各読取ユニット6の長手方向(主走査方向)の各位置でほぼ均一な光量レベルとなるように、ロッドレンズアレイ7の上方(ガラス64の上方)に向けて、光を放つ。
【0060】
ロッドレンズアレイ7に含まれる各ロッドレンズ71は、原稿に照射された光のうち、反射された光を集光しつつイメージセンサー8に導く(反射光の光の方向を矢印付2点差線で示す)。ここで、図4を用いてロッドレンズアレイ7を説明する。図4に示すように、ロッドレンズアレイ7は、2枚の基板72、73(例えば、樹脂製)の間にロッドレンズ71(棒状のレンズ)を配列したものである。各ロッドレンズ71は、互いに周面が接するように一列に並べられる。そして、各ロッドレンズ71のレンズ長は揃えられ、各ロッドレンズ71の端面(円筒形の上面と下面)は、平滑に加工される。又、2枚の基板72、73の端部には、終端板74が設けられる。
【0061】
(複合機100のハードウェア構成)
次に、図5に基づき、第1の実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を説明する。図5は、複合機100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0062】
図5に示すように、本実施形態に係る複合機100は、内部に制御部11を有する。制御部11は、複合機100全体の制御を司る。例えば、制御部11は、CPU11a、記憶部11b等から構成される。
【0063】
CPU11aは、中央演算処理装置であって、記憶部11bに格納され、展開される制御プログラムに基づき複合機100の各部の制御や演算を行う。記憶部11bは、ROM、RAM、HDD、フラッシュROM等の記憶装置で構成される。記憶部11bは、複合機100の制御用プログラム、制御用データ、設定データ、画像読取部3でスキャンした画像データ等を記憶する。
【0064】
そして、制御部11は、画像読取装置1(原稿搬送装置2や画像読取部3)、及び、複合機100内の給紙部4a、搬送路4b、画像形成部5a、定着部5b、操作パネル10等と接続され、記憶部11bの制御プログラムやデータに基づき、適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。
【0065】
更に、制御部11は、各種コネクタ、ソケット、通信制御用のチップ等を備えたI/F部11cと接続される。I/F部11cは、ネットワークやケーブルや公衆回線等によりコンピューター200(例えば、パーソナルコンピューターやサーバー)や、相手方のFAX装置300と複合機100とを通信可能に接続する。例えば、設定データ等を含む画像データを外部のコンピューター200や相手方FAX装置300(インターネットFAXでもよい)と送受信に送信することができる(スキャナ機能、FAX機能)。又、外部のコンピューター200や相手方FAX装置300からの画像データを記憶部11bに蓄積したり、印刷したりすることもできる(プリンタ機能、FAX機能)。
【0066】
(画像読取装置1のハードウェア構成と画像データの生成)
次に、図6に基づき、第1の実施形態に係る画像読取装置1のハードウェア構成と画像データの生成を説明する。図6は、画像読取装置1の一例を示すブロック図である。尚、図6では、画像データの流れは、白抜矢印で図示している。
【0067】
まず、画像読取装置1の一部である原稿搬送装置2には原稿搬送制御部20が設けられる。原稿搬送制御部20は、複合機100本体の制御部11と通信可能に接続される。原稿トレイ21に原稿が載置された状態で操作パネル10のスタートキー103が押された場合など、原稿搬送装置2を用いて原稿の読み取りを行うとき、複合機100本体の制御部11は、原稿搬送制御部20に原稿の搬送を指示する。例えば、原稿搬送制御部20は原稿を搬送する各種回転体を回転させる原稿搬送モータ2M等を制御する。これにより、原稿搬送装置2の動作が制御される。
【0068】
又、画像読取装置1の一部である画像読取部3には読取制御部30が設けられる。読取制御部30は、CPU、チップ等の各種電子部品が実装された基板である。尚、読取制御部30内には、読取制御部30による制御のためのプログラムやデータを保存するための記憶部36を設けることができる。そして、読取制御部30は、複合機100本体の制御部11と通信可能に接続される。操作パネル10のスタートキー103が押された場合など原稿の読み取りを行う場合、複合機100本体の制御部11は、読取制御部30に原稿読み取りの指示を与える。
【0069】
載置読取用コンタクトガラス32上の原稿や、原稿搬送装置2に搬送される原稿の表面を読み取るとき、読取制御部30は、第1読取ユニット61を動作させる。具体的には、第1読取ユニット61の光源67を点灯させ、イメージセンサー8を駆動させる。又、読取制御部30は、巻取ドラム34を回転させる巻取モータ35を制御する。又、原稿搬送装置2に搬送される原稿の裏面を読み取るとき、読取制御部30は、原稿搬送装置2内の第2読取ユニット62を動作させる。具体的には、第2読取ユニット62の光源67を点灯させ、イメージセンサー8を駆動させる。
【0070】
各読取ユニット6のイメージセンサー8の出力は補正部12に入力される。尚、第1読取ユニット61と第2読取ユニット62で共通の補正部12を用いず、第1読取ユニット61用の補正部12と第2読取ユニット62用の補正部12をそれぞれ設けても良い。そして、イメージセンサー8の各受光素子9は、反射光を光電変換し、反射光のレベル(受光量)に応じて電荷を蓄え、一定タイミングで電荷を吐き出す。言い換えると、各受光素子9は、反射光の強さに応じた電流(電圧)を出力する。イメージセンサー8は、各受光素子9(各画素)についてアナログの出力値(例えば、電圧値)を補正部12に向けて出力する。場合により、イメージセンサー8内外に各受光素子9の出力を増幅した電圧を増幅する増幅部が設けられてもよい。この場合、補正部12は、増幅後の電圧値を各受光素子9からの出力値として受け取る。
【0071】
補正部12のA/D変換部121は各受光素子9からの出力値に応じて量子化を行う。言い換えると、A/D変換部121は、各画素(各受光素子9)について濃度を示す画素値を生成して各受光素子9のアナログの出力値のディジタルデータ化を行う。尚、各受光素子9の感度のばらつきや主走査方向での位置による原稿への照射光のムラ等を考慮し、量子化を行う上での各読取ユニット6の各受光素子9についての白基準値と黒基準値を記憶する基準値保持部122が設けられる。
【0072】
ここで、量子化での黒基準値と白基準値を説明する。まず、第1読取ユニット61の白基準値と黒基準値の取得を説明する。基準値保持部122は、原稿読取前や主電源投入後や省電力モードからの復帰時に第1読取ユニット61の黒基準値と白基準値を取得する。
【0073】
本実施形態では、第1読取ユニット61では、各受光素子9の黒基準値は光源67を消灯させた状態でのイメージセンサー8の出力に基づき定める。言い換えると、基準値保持部122は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値(例えば、電圧値)を取得し、各受光素子9の黒基準値とする。尚、ガイド部材26の下方に黒基準板を設け、黒基準板を読み取って黒基準値を取得しても良い。このため、基準値保持部122は、イメージセンサー8からの各受光素子9の電圧値を認識するための回路、素子を有する(例えば、A/Dポートを有するチップ)。具体的には、基準値保持部122は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値を数ライン分取得し、各受光素子9について出力値の平均をとり、ノイズの影響を軽減して各受光素子9の黒基準値を得る。
【0074】
又、第1読取ユニット61では、各受光素子9の白基準値は、光源67を点灯させ、真っ白な白基準板27を読み取ったときのイメージセンサー8の出力に基づき定める。言い換えると、基準値保持部122は、白基準板27の読取時の各受光素子9からの出力値(例えば、電圧値)を取得し、各受光素子9の白基準値とする。具体的には、基準値保持部122は、白基準板27読取時の各受光素子9からの出力値を数ライン分取得し、各受光素子9について出力値の平均をとり、ノイズの影響を軽減して各受光素子9の白基準値を得る。
【0075】
次に、第2読取ユニット62の白基準値と黒基準値の取得を説明する。基準値保持部122は、読取前や主電源投入後や省電力モードからの復帰時に、第2読取ユニット62の黒基準値と白基準値を取得する。
【0076】
第2読取ユニット62では、各受光素子9の黒基準値は、光源67を消灯させた状態でのイメージセンサー8の出力に基づき定める。言い換えると、基準値保持部122は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値(例えば、電圧値)を取得し、各受光素子9の黒基準値とする。具体的には、基準値保持部122は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値を数ライン分取得し、各受光素子9について出力値の平均をとり、ノイズの影響を軽減した各受光素子9の黒基準値を得る。
【0077】
又、第2読取ユニット62では、各受光素子9の白基準値は、光源67を点灯させ、第2読取ユニット62に対向して設けられる真っ白な白基準ローラー29(図2参照)を読み取ったときのイメージセンサー8の出力に基づき定める。言い換えると、基準値保持部122は、白基準板27の読取時の各受光素子9からの出力値(例えば、電圧値)を取得し、各受光素子9の白基準値とする。具体的には、基準値保持部122は、白基準板27読取時の各受光素子9からの出力値を数ライン分取得し、各受光素子9について出力値の平均をとり、ノイズの影響を軽減した各受光素子9の白基準値を得る。
【0078】
そして、補正部12の基準値保持部122は、各読取ユニット6の各イメージセンサー8の各画素について白基準値と黒基準値をA/D変換部121に与える。そして、A/D変換部121は、各受光素子9(各画素)について、白基準値と黒基準値の間を、予め定められたステップ数(階調数、例えば、8ビット256階調)で刻み、各受光素子9(各画素)からの出力値の大きさに応じて、量子化(階調化)を行う。例えば、補正部12が白黒の画像データを出力する場合、1画素当たり8ビット(例えば、256階調、黒を0、白を255)で出力し、各画素の値が濃度を示す値となる。カラーの場合、補正部12は、RGBで1画素当たり、計24ビットに量子化を行う(例えば、Red=8ビット、Green=8ビット、Blue=8ビット、それぞれ0〜255の値を取り、256階調)。尚、補正部12に入力される各受光素子9からの出力値が白基準値と黒基準値の間に収まらなければ、例えば、階調での最高値(真っ白、例えば、256階調ならば255)又は最小値(真っ黒、例えば、0)と同値とされる。
【0079】
そして、補正部12が出力する原稿画像の画像データは、画像処理部11dに入力される。本実施形態の画像処理部11dは、画像データに関する演算や作業領域としてのワークRAMや専用回路としてのASIC等を組み合わせて構成される回路である。尚、制御部11のCPU11aや記憶部11bに画像処理プログラムを格納してソフトウェア的に画像処理部11dを実現することもできる。画像処理部11dは、濃度変換処理や、拡大縮小処理、画像データのデータ形式変換処理等、各種画像処理を行うことができる。しかし、実行可能な画像処理は多岐にわたるので、本説明では、画像処理部11dは、公知の画像処理を行えるものとして、画像処理部11dが実行可能な画像処理の詳細な説明は割愛する。
【0080】
そして、画像処理部11dが画像処理を施した後の画像データは、例えば、画像形成部5aの露光装置53に送られ、各感光体ドラム51の走査・露光に用いられる。これにより、原稿に基づき印刷を行うことができる(コピー機能)。又、例えば、画像処理部11dが画像処理を施した後の画像データを記憶部11bに送り、記憶部11bに記憶させておくこともできる(スキャナ機能)。
【0081】
(ロッドレンズアレイ7の繋ぎ合わせ)
次に、図7及び図8に基づき、第1の実施形態に係る各読取ユニット6でのロッドレンズアレイ7の繋ぎ合わせを説明する。図7は、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目部分を拡大した拡大斜視図である。図8は、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目部分を示す読取ユニット6の断面図である。尚、図8は、図7でのA−A’線に沿って図7の矢印方向に見た読取ユニット6の断面図である。
【0082】
本実施形態の各読取ユニット6では、A3サイズの用紙の読み取りを行えるように、レンズ部65の長手方向の長さ(主走査方向での長さ)は、A3用紙の短辺程度(約300〜310mm程度)の長さを有する。
【0083】
ここで、本実施形態の各読取ユニット6でのレンズ部65は、複数のロッドレンズアレイ7を繋げたものである。例えば、まず、A4短辺程度(約220〜230mm程度)の長さのロッドレンズアレイ7(便宜上、ロッドレンズアレイ7Aと呼ぶ)を用意する。そして、ロッドレンズアレイ7Aの端部分を切断し、ロッドレンズアレイ7Aに80mm程度のロッドレンズアレイ7(便宜上、ロッドレンズアレイ7Bと呼ぶ)を繋げる。これにより、A3用紙の短辺に対応した長さのロッドレンズアレイ7を得る。従って、本実施形態のレンズ部65は、2つのロッドレンズアレイ7を繋いだ(接続した)ものである。
【0084】
そして、図7に示すように、レンズ部65を構成するそれぞれのロッドレンズアレイ7の端部には切り込み75が入れられる。そして、図7に示すように、各ロッドレンズアレイ7の間を中心として、両側の基板72、73(側板)にまたがるように接着剤76が盛られる。このように各ロッドレンズアレイ7は、接着剤76により接続され、固定される。例えば、接着剤76には、透明のUV硬化型接着剤が用いられる。
【0085】
図8は、ロッドレンズアレイ7の接着面(切断面)を見た断面図である。図8に示すようにロッドレンズ71部分にも接着剤76が塗布される。各ロッドレンズアレイ7を接続して固定するため、上方から見て、略H字状に接着剤76が塗布される。
【0086】
ここで、複数のロッドレンズアレイ7を繋ぎ合わせた物であるので、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目に隙間が生ずることがある。正式な光路は、光源67(導光体66)→原稿→ロッドレンズ71→イメージセンサー8であるところ、隙間があると、光源67(導光体66)からの光が外乱光として隙間から入り込み、繋ぎ目に位置する受光素子9に入り込んでしまう(図8中、2点差線で外乱光の光路の一例を図示)。そうすると、隙間からの外乱光によって、繋ぎ目に位置する受光素子9の蓄える電荷が増える。例えば、同じレベルの反射光を原稿から受光素子9が受光したとしても、繋ぎ目に位置する受光素子9からの出力値は、繋ぎ目に位置しない受光素子9からの出力値よりも大きくなる。
【0087】
そうすると、補正部12が生成した画像データでは、繋ぎ目に位置する受光素子9に対応する画素の画素値が明るくなる。例えば、画像データが256階調とし、同じ濃度のベタ原稿を読み取ったとき、繋ぎ目に位置する受光素子9に対応する画素の画素値は、平均して2〜4程度大きくなる(隙間の程度による)。そして、繋ぎ目の位置は一定なので、副走査方向でみると、繋ぎ目に位置する受光素子9に対応する画素だけ薄くなり、スジ(白筋)として認識される。
【0088】
(スジ解消のための補正値の設定)
次に、図9〜図11を用いて、第1の実施形態に係るスジ解消の補正値の設定を説明する。図9は、スジを解消するための補正の概念を説明するためのグラフである。図10は、スジを解消する補正で用いる補正用読取対象の一例を示す説明図である。図11は、スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【0089】
図9を用いて、外乱光によるイメージセンサー8からの出力値への影響を説明する。図9は、イメージセンサー8の各受光素子9の主走査方向の位置を横軸に配し、各受光素子9からの出力値を縦軸に配したグラフである。
【0090】
そして、図9の実線は、光源67を消灯したまま数ライン分の読み取りを行って、各受光素子9からの出力値を平均化したときの各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値の一例を示す。このとき、光源67は消灯しているので、ロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光による各受光素子9からの出力値に影響はあらわれない。尚、図9では、出力値を示すラインを直線状に示しているが、実際には、ノイズ等の影響でラインに多少の凹凸が現れることがある。
【0091】
次に、図9の破線は、光源67を点灯させ、補正用読取対象を数ライン分読み取って、各受光素子9からの出力値を平均化したときの各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値の一例を示す。本例では、補正用読取対象は真っ黒なものを用いる。そして、図9の破線で示すように、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目に位置する(対応する)受光素子9では、ロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光により、出力値がロッドレンズアレイ7の繋ぎ目と離れた位置の受光素子9よりも上乗せされる。
【0092】
ここで、本実施形態の補正用読取対象は、真っ黒な補正用基準板28(補正用読取対象に相当)又は補正用原稿D(補正用読取対象に相当)である(真っ黒な補正用基準板28は黒基準板としても用いることができる)。第1読取ユニット61に関しては、ガイド部材26の下部に補正用読取対象としての黒い補正用基準板28を設けておく。第2読取ユニット62に関しては、黒い補正用基準板28や真っ黒な黒基準ローラーを設けることは不可能では無いが、白基準ローラー29と補正用基準板28や真っ黒な黒基準ローラーを切り替える必要がある。そこで、図10に示すように、予め用意された真っ黒な補正用原稿Dを補正用読取対象として用意する。そして、原稿搬送装置2に黒い補正用読取対象をセットし、第2読取ユニット62に補正用読取対象を読み取らせる。尚、第1読取ユニット61の場合でも、原稿搬送装置2や載置読取用コンタクトガラス32に補正用読取対象をセットし、補正用読取対象を読み取ることが可能である。従って、第1読取ユニット61でも黒い補正用原稿Dを補正用読取対象として用いることができる。
【0093】
図9に示すように、補正部12は、光源67消灯時のイメージセンサー8からの出力値と光源67を点灯させ補正用読取対象を読み取った時のイメージセンサー8からの出力値を比較すれば、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目からの外乱光の影響を受ける受光素子9を特定することができる。そして、補正部12は、特定した受光素子9を補正対象受光素子9として黒基準値の補正を行う。
【0094】
図11を用いて、スジ解消のための黒基準値の補正値の設定の流れを説明する。まず、図11のスタートは、ロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光によるスジ解消の補正値の設定を行う時点である。補正値の設定は、工場出荷時や複合機100の設置後のメンテナンス時に行われる。そして、補正値の設定は、操作パネル10に対して入力を行うことにより実行できる。
【0095】
まず、読取制御部30は、各読取ユニット6について光源67を消灯状態として数ライン分読み取りを行わせる(ステップ♯11)。次に、補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、各受光素子9の出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の第1出力値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯12)。
【0096】
次に、読取制御部30は、各読取ユニット6について光源67を点灯させる(ステップ♯13)。そして、読取制御部30は、各読取ユニット6に数ライン分の補正用読取対象の読み取りを行わせる(ステップ♯14)。尚、この読み取り完了後、光源67は消灯される。補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、イメージセンサー8の各受光素子9の出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の第2出力値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯15)。
【0097】
次に、補正部12は、各読取ユニット6の各受光素子9について、第1出力値と第2出力値の差を求める(ステップ♯16)。差は、第1出力値から第2出力値を引いても良いし、第2出力値から第1出力値を引いても良い。そして、補正部12は、各読取ユニット6について、求めた差の絶対値が予め定められた閾値以上の受光素子9を補正対象受光素子9と特定する(ステップ♯17)。ここで、閾値は任意に定めることができるが、画像データとしたとき、スジ(白筋)が発生してしまうほどの第1出力値と第2出力値の差を閾値とすることができる。尚、隙間がないほどの正確さでロッドレンズアレイ7同士が接続されていれば、補正部12は、補正対象受光素子9と特定する受光素子9は無いと扱う。
【0098】
そして、記憶部(補正部12内の記憶部123でも良いし、読取制御部30の記憶部36でも良い)は、各読取ユニット6について、補正対象受光素子9の位置と、読み取りでの黒基準値の補正値として、補正対象受光素子9の第1出力値と第2出力値の差の絶対値を記憶する(ステップ♯18)。読み取りでの補正対象受光素子9の黒基準値は、この補正値を用いて補正される。
【0099】
(補正値を用いた読み取り)
次に、図12を用いて、第1の実施形態に係る補正値を用いた読み取りを説明する。図12は、補正値を用いた原稿読取の流れの一例を示すフローチャートである。尚、図12に示すフローチャートは、第1読取ユニット61を用いた読み取りにも、第2読取ユニット62を用いた読み取りにも適用される。
【0100】
図12のスタートは、読み取りでの白基準値と黒基準値の取得時である。例えば、操作パネル10のスタートキー103が押され原稿読取を行う前に(原稿読取を行うごとに)、基準値取得部は、白基準値と黒基準値を取得する。
【0101】
まず、原稿読取を行う読取ユニット6(第1読取ユニット61又は第1読取ユニット61と第2読取ユニット62の両方)は、光源67消灯状態で数ライン分の読み取りを行う(ステップ♯21)。次に、補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、各受光素子9からの出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の黒基準値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯22)。
【0102】
そして、補正部12は、記憶部(記憶部36や記憶部123)から補正対象受光素子9の位置と補正値を読み出す(ステップ♯23)。そして、補正部12は、補正対象受光素子9の黒基準値を補正値分だけ小さくする補正を行う(ステップ♯24)。言い換えると、補正対象受光素子9に対しては、黒基準値と白基準値のレンジを広げて、ロッドレンズアレイ7の隙間から入り込む外乱光の影響を軽減する。
【0103】
次に、読取制御部30は、原稿読取を行う読取ユニット6の光源67を点灯させる(ステップ♯25)。そして、読取制御部30は、原稿読取を行う読取ユニット6に数ライン分の白基準板27の読み取りを行わせる(ステップ♯26)。尚、この読み取り完了後、光源67は消灯される。補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、イメージセンサー8の各受光素子9からの出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の白基準値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯27)。
【0104】
黒基準値と白基準値の取得後、1又は複数枚の原稿について、読取ユニット6による原稿の読み取りと補正部12のA/D変換部121による、イメージセンサー8からの出力値と各受光素子9の白基準値と黒基準値に基づく量子化が行われ、画像データが生成される(ステップ♯28→エンド)。この後、画像データは、露光装置53などに与えられ、随時用いられる。このように、黒基準値を補正して、スジの無い画像データが生成される。
【0105】
このようにして、本実施形態の画像読取装置1は、配列された複数の受光素子9を含むイメージセンサー8と、読取対象に向けて光を照射する光源67と、複数のロッドレンズ71が配列されたロッドレンズアレイ7を複数個つなぎ合わせたものであり、読取対象からの反射光をイメージセンサー8に導くレンズ部65と、イメージセンサー8の各受光素子9からの出力値に基づき画像データを生成し、画像データでのロッドレンズアレイ7の繋ぎ目位置に対応する画素の画素値が濃くなるように補正する補正部12と、を含む。これにより、原稿の反射光以外の外乱光が、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目の隙間からイメージセンサー8に入射しても、外乱光による画像データへの影響を除去することができる。従って、たとえロッドレンズアレイ7同士を透明の接着剤76で接続したり、全ての隙間をシール剤で埋めたりせず、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目の隙間から外乱光が入り込むことがあっても、スジ(白筋)の無い画像データを得ることができる。
【0106】
又、補正部12は、各受光素子9からの出力値の大きさに基づき、黒基準値と白基準値の間で画素値に変換する量子化を行って、イメージセンサー8の出力からディジタルの画像データを生成し、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目位置に対応する受光素子9である補正対象受光素子9の黒基準値を補正する。これにより、量子化するときの受光素子9からの出力値の最小レベルを示す黒基準を補正することで、画像データで、補正対象受光素子9に対応する画素を濃くすることができる。言い換えると、黒基準値を補正するので、補正対象受光素子9の画素値が、外乱光の影響が目立つ高濃度値であるほど画像データでは画素値が濃くなる補正がなされ、外乱光の影響が目立ちにくい低濃度値となるほど補正による画素値への影響が少なくされる。従って、外乱光の影響による受光素子9からの出力値の増加を濃度(画素値)に応じて滑らかに打ち消すように補正を行うことができる。
【0107】
又、補正部12は、光源67を消灯しているときの各受光素子9からの第1出力値と、予め用意された均一濃度の補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)を読み取ったときの各受光素子9からの第2出力値を取得し、第1出力値と第2出力値の差を各受光素子9についてそれぞれ求め、差の絶対値が閾値以上の受光素子9を補正対象受光素子9と特定し、補正対象受光素子9に対する黒基準値の補正を行う。これにより、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値を取得するとともに補正用読取対象を読み取るだけで、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目を認識し、特定することができる。
【0108】
又、本実施形態の画像読取装置1は、データを記憶する記憶部(記憶部36や記憶部123など)を有し、補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)は黒色であり、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と、補正対象受光素子9からの第1出力値と第2出力値の差の絶対値を補正値として記憶し、補正部12は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値に基づき各受光素子9の黒基準値を定め、補正対象受光素子9の黒基準値を補正値分小さくする補正を行う。これにより、黒基準値のみを補正により小さくして、黒基準値と白基準値のレンジを広げて量子化が行われるので、補正対象受光素子9からの出力値は、補正前よりも全体的に濃くなる方向に量子化される。又、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と補正値を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、黒い補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0109】
又、補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)は、均一濃度の原稿、又は、イメージセンサー8で読み取り可能な位置に設けられた基準板である。これにより、密着型イメージセンサー8ユニットを有する様々な形態の画像読取装置1で外乱光の影響を除去する補正を行うことができる。
【0110】
又、画像形成装置は、画像読取装置1を含む。この構成によれば、複数のロッドレンズアレイ7を接続した画像読取装置1を有しても、スジ(白筋)の無い画像データを得ることができる。従って、ロッドレンズアレイ7間の隙間からの外乱光によるスジ(白筋)の無い印刷物を印刷することができ、印刷物の画質が高い画像形成装置を提供することができる。
【0111】
(第2の実施形態)
次に、図13〜図16を用いて、第2の実施形態に係るスジ解消の補正値の設定を説明する。図13は、スジを解消するための補正の概念を説明するためのグラフである。図14は、スジを解消する補正で用いる補正用読取対象の一例を示す説明図である。図15は、スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。図16は、補正値を用いた原稿読取の流れの一例を示すフローチャートである。
【0112】
第2の実施形態は、真っ黒ではない補正用読取対象を読み取ってスジ解消の補正値の設定を行う点が第1の実施形態と異なる。その他の点については、第1の実施形態と同様でよく、第1の実施形態と共通する点については説明、図示を省略し、記載を援用するものとする。
【0113】
図13は、第1の実施形態の説明で用いた図9と同様のグラフである。図13の実線は光源67を消灯したまま数ライン分の読み取りを行って、各受光素子9からの出力値を平均化したときの各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値の一例を示す。
【0114】
ここで、本実施形態では、黒以外の補正用読取対象を用いる。例えば、本実施形態での補正用読取対象は、均一濃度の濃いグレーの補正用基準板28又はグレーの補正用原稿Dである(有彩色でもよい)。尚、補正用読取対象には白い基準板や原稿は用いない。第1読取ユニット61に関しては、例えば、ガイド部材26の下部に高濃度のグレーの補正用基準板28を設けておく(図2参照)。第2読取ユニット62に関しては、図14に示すように、高濃度の補正用原稿D(例えば、グレー)を予め用意する。そして、原稿搬送装置2に補正用読取対象をセットし、第2読取ユニット62に補正用読取対象を読み取らせる。尚、第1読取ユニット61の場合でも、原稿搬送装置2や載置読取用コンタクトガラス32に補正用読取対象をセットし、補正用読取対象を読み取ることが可能である。従って、第1読取ユニット61でもグレーの補正用原稿Dを補正用読取対象として用いることができる。
【0115】
次に、図13の破線は、光源67を点灯させ、補正用読取対象を数ライン分読み取って、各受光素子9からの出力値を平均化したときの各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値の一例を示す。そして、図13の破線で示すように、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目に位置する(対応する)受光素子9では、ロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光により、出力値がロッドレンズアレイ7の繋ぎ目から外れた位置の受光素子9よりも上乗せされる。
【0116】
図13に示すように、補正部12は、光源67消灯時のイメージセンサー8からの出力値と光源67を点灯させ補正用読取対象を読み取った時のイメージセンサー8からの出力値を比較すれば、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目からの外乱光の影響を受ける受光素子9を特定することができる。そして、補正部12は、特定した受光素子9を補正対象受光素子9として黒基準値の補正を行う。
【0117】
そこで、図15を用いて、第2実施形態でのスジ解消のための黒基準値の補正値の設定の流れを説明する。まず、図15のスタートは、第1の実施形態と同様、工場出荷時等のロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光によるスジ解消の補正値の設定を行う時点である。
【0118】
まず、読取制御部30は、各読取ユニット6について光源67消灯状態で数ライン分読み取りを行わせる(ステップ♯31)。次に、補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、各受光素子9からの出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の第1出力値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯32)。
【0119】
次に、読取制御部30は、各読取ユニット6について光源67を点灯させる(ステップ♯33)。そして、読取制御部30は、各読取ユニット6に数ライン分の補正用読取対象(例えば、グレー一色)の読み取りを行わせる(ステップ♯34)。尚、この読み取り完了後、光源67は消灯される。補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、イメージセンサー8の各受光素子9からの出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の第2出力値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯35)。
【0120】
次に、補正部12は、各読取ユニット6の各受光素子9について、第1出力値と第2出力値の差を求める(ステップ♯36)。そして、補正部12は、各読取ユニット6について、求めた差の絶対値が予め定められた閾値以上の受光素子9を補正対象受光素子9と特定する(ステップ♯37)。ここで閾値は任意に定めることができるが、画像データとしたとき、スジ(白筋)が発生してしまうほどの出力値の差を閾値とすることができる。尚、隙間がないほどの正確さでロッドレンズアレイ7同士が接続されていれば、補正部12は、補正対象受光素子9と特定する受光素子9は無いと扱う。
【0121】
そして、記憶部(補正部12内の記憶部123でも良いし、読取制御部30の記憶部36でも良い)は、各読取ユニット6について、補正対象受光素子9の位置と、読み取りでの黒基準値の補正値として、補正対象受光素子9の第2出力値と、補正対象受光素子9以外の受光素子9の第2出力値に基づく比較値の比率を補正値として記憶する(ステップ♯38)。補正対象受光素子9以外の受光素子9の第2出力値に基づく比較値は、補正対象受光素子9以外の受光素子9の第2出力値の平均値でもよいし、任意の補正対象受光素子9の第2出力値でもよい。これにより、以後の読み取りでは、比率を用いて補正対象受光素子9の黒基準値が補正される。尚、比率は、補正部12が演算する(読取制御部30でもよい)。
【0122】
次に、図16を用いて、第2の実施形態に係る補正値を用いた読み取りを説明する。図16は、補正値を用いた原稿読取の流れの一例を示すフローチャートである。尚、図16に示すフローチャートは、第1読取ユニット61を用いた読み取りにも、第2読取ユニット62を用いた読み取りにも適用される。
【0123】
図16のスタートは、読み取りでの白基準値と黒基準値の取得時である。例えば、操作パネル10のスタートキー103が押され原稿読取を行う前に(原稿読取を行うごとに)、白基準値と黒基準値が取得される。
【0124】
まず、原稿読取を行う読取ユニット6は、光源67消灯状態で数ライン分の読み取りを行う(ステップ♯41)。次に、補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、各受光素子9からの出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9の黒基準値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯42)。
【0125】
そして、補正部12は、記憶部(記憶部36や記憶部123)から補正対象受光素子9の位置と補正値を読み出す(ステップ♯43)。そして、補正部12は、補正対象受光素子9の黒基準値に補正値としての比率を乗じて又は除して黒基準値を小さくする補正を行う(ステップ♯44)。言い換えると、補正対象受光素子9に対しては、黒基準値と白基準値のレンジを広げて、ロッドレンズアレイ7の隙間から入り込む外乱光の影響を軽減する。
【0126】
例えば、補正部12が、比率を(補正対象受光素子9の第2出力値/比較値)として求めたならば、補正対象受光素子9の第2出力値の方が大きいので、比率は1よりも大きくなる。この場合、補正部12は、黒基準値を比率で除して黒基準値を小さくする。一方、補正部12が、比率を(比較値/補正対象受光素子9の第2出力値)として求めたならば、補正対象受光素子9の第2出力値が大きいので、比率は1未満になる。この場合、補正部12は、黒基準値に比率を乗じて黒基準値を小さくする。
【0127】
尚、ステップ♯45〜ステップ♯48は、第1の実施形態で説明した図12のステップ♯25〜ステップ♯28と同様であるので説明を省略する。
【0128】
このようにして、本実施形態の画像読取装置1は、データを記憶する記憶部(記憶部36や記憶部123など)を有し、補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)は均一濃度を有し、グレー又は有彩色であり、補正部12は、補正対象受光素子9からの第2出力値と、補正対象受光素子9以外の受光素子9からの第2出力値に基づく比較値との比率を求め、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と、比率を記憶し、補正部12は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値に基づき各受光素子9の黒基準値を定め、補正対象受光素子9の黒基準値に比率を乗じて又は除して黒基準値を小さくする補正を行う。これにより、補正用読取対象が黒でなくても、補正対象受光素子9の黒基準値を適正に補正することができる。又、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と比率を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0129】
(第3の実施形態)
次に、図17を用いて、第3の実施形態に係るスジ解消の補正値の設定を説明する。図17は、スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【0130】
本実施形態では、補正用読取対象の読み取りだけで、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目からの外乱光の影響を受ける受光素子9を特定し、補正部12が特定した補正対象受光素子9の黒基準値の補正を行う点で、第1の実施形態や第2の実施形態と異なる。その他の点については、第1、第2の実施形態と同様でよく、第1、第2の実施形態と共通する点については説明、図示を省略し、記載を援用するものとする。
【0131】
ここで、本実施形態の補正用読取対象は、真っ黒な補正用基準板28又は補正用原稿Dである(真っ黒な補正用基準板28は黒基準板としても用いることができる)。第1読取ユニット61に関しては、ガイド部材26の下部に補正用読取対象としての黒い補正用基準板28を設けておく。第2読取ユニット62に関しては、図10に示すように、予め用意された真っ黒な補正用原稿Dを補正用読取対象として用意する。そして、原稿搬送装置2に黒い補正用読取対象をセットし、第2読取ユニット62に補正用読取対象を読み取らせる。尚、第1読取ユニット61の場合でも、原稿搬送装置2や載置読取用コンタクトガラス32に補正用読取対象をセットし、補正用読取対象を読み取ることが可能である。従って、第1読取ユニット61でも黒い補正用原稿Dを補正用読取対象として用いることができる。
【0132】
第1の実施形態で図9を用いて説明したように、補正用読取対象を読み取った時のイメージセンサー8からの出力値は、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目からの外乱光の影響を受ける受光素子9では、大きくなる。そこで、本実施形態では、イメージセンサー8での各受光素子9を複数のブロックBに分割する(図3(b)参照)。例えば、各ブロックBに含まれる受光素子9の数は同じとする。そして、各ブロックBに含まれる受光素子9の個数は、任意に定めることができる。例えば、ロッドレンズアレイ7とロッドレンズアレイ7の間で生じる平均的な隙間の幅に相当する受光素子9の個数をブロックBに含まれる受光素子9の個数としてもよい。
【0133】
そして、ブロックB同士で補正用読取対象を読み取った時のイメージセンサー8からの各受光素子9からの出力値を比較して、補正対象受光素子9を特定する。そして、補正部12は、特定した補正対象受光素子9の黒基準値の補正を行う。
【0134】
図17を用いて、スジ解消のための黒基準値の補正値の設定の流れを説明する。まず、図11のスタートは、第1、第2の実施形態と同様、ロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光によるスジ解消の補正値の設定を行う時点である。
【0135】
まず、読取制御部30は、各読取ユニット6について光源67を点灯させる(ステップ♯51)。そして、読取制御部30は、各読取ユニット6に数ライン分の補正用読取対象(補正用基準板28や黒一色の補正用原稿D)の読み取りを行わせる(ステップ♯52)。尚、この読み取り完了後、光源67は消灯される。補正部12は、各読取ユニット6のイメージセンサー8からの出力値に基づき、イメージセンサー8の各受光素子9からの出力値をそれぞれ平均化して各受光素子9からの出力値を定め、基準値保持部122に保持させる(ステップ♯53)。
【0136】
次に、補正部12は、一定範囲の複数の受光素子9を1ブロックBとした各ブロックBについて出力値の代表値を定める(ステップ♯54)。そして、補正部12は、各ブロックBについて、ブロックBに含まれる各受光素子9からの出力値の平均値を求め、平均値を代表値と定めてもよい。あるいは、ブロックBのうち、特定位置(例えば、ブロックBでの先頭位置や中央位置や末尾位置)の受光素子9からの出力値を代表値と定めても良い。
【0137】
そして、補正部12は、隣接するブロックBの代表値同士の差を求める(ステップ♯55)。そして、補正部12は、各読取ユニット6について、代表値の差が予め定められた閾値以上となったブロックBの組み合わせのうち、代表値が明るい方のブロックBに含まれる受光素子9を補正対象受光素子9と特定する(ステップ♯56)。ここで閾値は任意に定めることができるが、画像データとしたとき、スジ(白筋)が発生してしまうほどの出力値の差を閾値とすることができる。尚、隙間がないほどの正確さでロッドレンズアレイ7同士が接続されていれば、代表値の差は閾値以内に収まることもある。この場合、補正部12は、補正対象受光素子9と特定する受光素子9は無いと扱う。
【0138】
そして、記憶部(補正部12内の記憶部123でも良いし、読取制御部30の記憶部36でも良い)は、各読取ユニット6について、補正対象受光素子9の位置と、読み取りでの黒基準値の補正値として、補正対象受光素子9を含むブロックBの代表値と補正対象受光素子9を含まないブロックBの代表値に基づく比較代表値との差の絶対値を記憶する(ステップ♯57)。このとき、比較代表値は、補正対象受光素子9を含まない複数のブロックBの代表値の平均値としてもよいし、任意のブロックBの代表値としてもよい。
【0139】
実際の補正値を用いた読み取りでは、第1の実施形態のときと同様に補正値は用いられる(図12参照)。言い換えると、図12と同様に読み取りがなされればよい。
【0140】
このようにして、補正部12は、予め用意された均一濃度の補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)を読み取ったときの各受光素子9からの出力値を取得し、連続する複数の受光素子9の一定範囲を1つのブロックBとした各ブロックBについて代表値を定めるとともに、隣接するブロックB間で代表値の差を求め、隣接するブロックBのうち、代表値が明るい方のブロックBに含まれる受光素子9を補正対象受光素子9と特定し、補正対象受光素子9に対する黒基準値の補正を行う。これにより、補正用読取対象を読み取るだけで、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目を認識し特定することができる(第4の実施形態も同様)。
【0141】
又、本実施形態の画像読取装置1は、データを記憶する記憶部(記憶部36や記憶部123など)を有し、補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)は黒色であり、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と補正対象受光素子9を含むブロックBと補正対象受光素子9を含まないブロックBの代表値に基づく比較代表値の差の絶対値を補正値として記憶し、補正部12は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値に基づき各受光素子9の黒基準値を定め、補正対象受光素子9の黒基準値を補正値分小さくする補正を行う。これにより、黒基準値のみを補正により小さくして、黒基準値と白基準値のレンジを広げて量子化が行われるので、補正対象受光素子9からの出力値は、補正前よりも全体的に濃くなる方向に量子化される。又、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と補正値を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、黒い補正用読取対象を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0142】
(第4の実施形態)
次に、図18を用いて、第4の実施形態に係るスジ解消の補正値の設定を説明する。図18は、スジ解消のための補正値の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
【0143】
本実施形態では、第3の実施形態と同様、補正用読取対象の読み取りだけで、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目からの外乱光の影響を受ける受光素子9を特定し、補正部12が特定した受光素子9を補正対象受光素子9として黒基準値の補正を行う点で、第1の実施形態や第2の実施形態と異なる。
【0144】
又、第4の実施形態は、真っ黒ではない補正用読取対象を読み取ってスジ解消の補正値の設定を行う点が第3の実施形態と異なる。その他の点については、第3の実施形態と同様でよく、第1〜第3の実施形態と共通する点については説明、図示を省略し、記載を援用するものとする。
【0145】
ここで、本実施形態では、黒以外の補正用読取対象を用いる。例えば、本実施形態での補正用読取対象は、均一濃度の濃いグレーの補正用基準板28又はグレーの補正用原稿Dである(有彩色でもよい)。尚、補正用読取対象には白い基準板や原稿は用いない。第1読取ユニット61に関しては、例えば、ガイド部材26の下部に高濃度のグレーの補正用基準板28を設けておく(図2参照)。第2読取ユニット62に関しては、図14に示すように、高濃度の補正用原稿D(例えば、グレー)を予め用意する。そして、原稿搬送装置2に補正用読取対象をセットし、第2読取ユニット62に補正用読取対象を読み取らせる。尚、第1読取ユニット61の場合でも、原稿搬送装置2や載置読取用コンタクトガラス32に補正用読取対象をセットし、補正用読取対象を読み取ることが可能である。従って、第1読取ユニット61でもグレーの補正用原稿Dを補正用読取対象として用いることができる。
【0146】
第1の実施形態で図9を用いて説明したように、補正用読取対象を読み取った時のイメージセンサー8からの出力値は、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目からの外乱光の影響を受ける受光素子9では、大きくなる。そこで、本実施形態では、第3の実施形態と同様に、イメージセンサー8での列状に配列された各受光素子9を複数のブロックBに分割する。例えば、各ブロックBに含まれる受光素子9の個数を数個〜数十個とする。例えば、ロッドレンズアレイ7とロッドレンズアレイ7の間で生じる平均的な隙間の幅に相当する受光素子9の個数をブロックBに含まれる受光素子9の個数としてもよい。
【0147】
そして、ブロックB同士で補正用読取対象を読み取った時のイメージセンサー8からの各受光素子9からの出力値を比較して、補正対象受光素子9を特定する。そして、補正部12は、特定した補正対象受光素子9の黒基準値の補正値を得る。
【0148】
図18を用いて、スジ解消のための黒基準値の補正値の設定の流れを説明する。まず、図11のスタートは、第1、第2の実施形態と同様、ロッドレンズアレイ7の隙間からの外乱光によるスジ解消の補正値の設定を行う時点である。
【0149】
ここで、補正用読取対象が真っ黒で無い点以外、図18でのステップ♯61〜ステップ♯66は、図17でのステップ♯51〜ステップ♯56と同様である。そこで、上記の該当箇所の説明を援用するものとして、ステップ♯61〜ステップ♯66については、説明を省略する。
【0150】
そして、記憶部(補正部12内の記憶部123でも良いし、読取制御部30の記憶部36でも良い)は、各読取ユニット6について、補正対象受光素子9の位置と、読み取りでの黒基準値の補正値として、補正対象受光素子9を含むブロックBの代表値と、補正対象受光素子9を含まないブロックBの代表値に基づく比較代表値の比率を補正値として記憶する(ステップ♯67)。ステップ♯38での比較代表値は、補正対象受光素子9を含まない複数のブロックBの代表値の平均値としてもよいし、任意のブロックBの代表値としてもよい。これにより、以後の読み取りでは、比率を用いて補正対象受光素子9の黒基準値が補正される。尚、比率は、補正部12が演算する(読取制御部30でもよい)。
【0151】
実際の補正値を用いた読み取りでは、第2の実施形態のときと同様に補正値は用いられる(図16参照)。言い換えると、図16と同様に読み取りがなされればよい。
【0152】
このようにして、本実施形態の画像読取装置1は、データを記憶する記憶部(記憶部36や記憶部123など)を有し、補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)は均一濃度を有し、グレー又は有彩色であり、補正部12は、補正対象受光素子9を含むブロックBの代表値と補正対象受光素子9を含まないブロックBの代表値に基づく比較代表値との比率を求め、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と比率を記憶し、補正部12は、光源67消灯時の各受光素子9からの出力値に基づき各受光素子9の黒基準値を定め、補正対象受光素子9の黒基準値に比率を乗じて又は除して黒基準値を小さくする補正を行う。これにより、補正用読取対象が黒でなくても、補正対象受光素子9の黒基準値を適正に補正することができる。又、記憶部は、補正対象受光素子9の位置と比率を記憶する。これにより、ロッドレンズアレイ7の繋ぎ目の位置は固定されているので、一度、補正用読取対象(補正用基準板28や補正用原稿D)を読み取るだけで、外乱光の影響を除去する補正を永続的に行うことができる。
【0153】
又、補正部12は、ブロックBに含まれる各受光素子9からの出力値の平均値、または、ブロックBに含まれる各受光素子9のうち、いずれかの受光素子9からの出力値を代表値とする。これにより、ブロックB単位での比較を行うことができる(第3の実施形態も同様)。
【0154】
(第5の実施形態)
次に、図19に基づき、第5の実施形態を説明する。図19は、液晶表示部101に表示される警告画面S1の一例を示す説明図である。
【0155】
第1〜第4の実施形態では、ロッドレンズアレイ7とロッドレンズアレイ7の隙間から入り込む外乱光の影響を取り除く補正を行う例を説明した。しかし、製造上の都合や経年劣化等により、希にロッドレンズアレイ7とロッドレンズアレイ7の間の隙間が補正できないほど広くなる場合が生じ得る。
【0156】
補正にも限度があり、又、補正によりある程度スジの発生を軽減できるとしても完全にはスジを除去しきれない場合もある。そこで、隙間から入る外乱光の影響が大きく、第1出力値と前記第2出力値の差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき(第1、第2実施形態)や隣接するブロックBとの代表値との差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき(第3、第4の実施形態)、補正部12は、例えば、読取制御部30を介し、制御部11にその旨を通知する。通知を受けたとき、制御部11は、図19に示すようなメッセージを含む警告画面S1を操作パネル10の液晶表示部101(報知部に相当)に表示させる。図19に示すように、液晶表示部101は、例えば、読取ユニット6に異常がある旨や交換や点検の必要性や異常のある読取ユニット6の場所を表示する。
【0157】
ここで、許容値は、各受光素子9からの出力値に応じて任意に定めることができる。例えば、ロッドレンズアレイ7間の隙間として許容できる隙間を予め定め、実験等により、許容できるときの隙間のときの外乱光による受光素子9の増加出力値分を求め、求めた増加出力値分を許容値と定めても良い。あるいは、実験等により、補正を行ってもスジが現れてしまう外乱光による受光素子9の増加出力値分を求め、求めた増加出力値分を許容値と定めても良い。例えば、許容値は、記憶部123や記憶部36に記憶させておき、黒基準値の補正値の設定の際に読み出して、補正部12が許容値を超えるか否かを確認する。
【0158】
補正用読取対象を読み取って、黒基準値を補正するための補正値の設定は、工場出荷時の検査等で設定される。又、複合機100のメンテナンスを行うサービスマンが行えるようにしてもよい。そのため、工場出荷時や定期的なメンテナンスの際に、各読取ユニット6に異常があることを、複合機100の検査者やサービスマンは知ることができる。従って、異常があるままの複合機100の出荷や使用を防ぐことができる。
【0159】
このようにして、本実施形態の画像読取装置1は、使用者に向けてメッセージを報知する報知部(液晶表示部101)を備え、第1出力値と第2出力値の差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、又は、隣接するブロックBとの代表値との差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、報知部(液晶表示部101)は警告を発する。これにより、ロッドレンズアレイ7間の隙間が許容できないほど大きく、補正できないほど外乱光が隙間から入り込んでいる旨を報知(警告)することができる。従って、ロッドレンズアレイ7の交換が必要であることを認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、複数のロッドレンズアレイ7を繋ぎ合わせたレンズ部65を含む画像読取装置1や、この画像読取装置1を備えた画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0161】
100 複合機(画像形成装置) 1 画像読取装置
2 原稿搬送装置 28 補正用基準板(補正用読取対象)
3 画像読取部 36 記憶部
6 読取ユニット 61 第1読取ユニット
62 第2読取ユニット 65 レンズ部
67 光源 7 ロッドレンズアレイ
71 ロッドレンズ 8 イメージセンサー
9 受光素子 10 操作パネル
101 液晶表示部(報知部) 12 補正部
123 記憶部 B ブロック
D 補正用原稿(補正用読取対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列された複数の受光素子を含むイメージセンサーと、
読取対象に向けて光を照射する光源と、
複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイを複数個つなぎ合わせたものであり、前記読取対象からの反射光を前記イメージセンサーに導くレンズ部と、
前記イメージセンサーの各前記受光素子からの出力値に基づき画像データを生成し、画像データでの前記ロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する画素の画素値を補正する補正部と、を含むことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記補正部は、各前記受光素子からの出力値の大きさに基づき、黒基準値と白基準値の間で画素値に変換する量子化を行って、前記イメージセンサーの出力からディジタルの画像データを生成し、前記ロッドレンズアレイの繋ぎ目位置に対応する前記受光素子である補正対象受光素子の前記黒基準値を補正することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記光源を消灯しているときの各前記受光素子からの第1出力値と、予め用意された均一濃度の補正用読取対象を読み取ったときの各前記受光素子からの第2出力値を取得し、前記第1出力値と前記第2出力値の差を各前記受光素子についてそれぞれ求め、差の絶対値が閾値以上の前記受光素子を前記補正対象受光素子と特定し、前記補正対象受光素子に対する前記黒基準値の補正を行うことを特徴とする請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
データを記憶する記憶部を有し、
前記補正用読取対象は黒色であり、
前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と、前記補正対象受光素子からの前記第1出力値と前記第2出力値の差の絶対値を補正値として記憶し、
前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値を前記補正値分小さくする補正を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
データを記憶する記憶部を有し、
前記補正用読取対象は均一濃度を有し、グレー又は有彩色であり、
前記補正部は、前記補正対象受光素子からの前記第2出力値と、前記補正対象受光素子以外の前記受光素子からの前記第2出力値に基づく比較値との比率を求め、
前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と、前記比率を記憶し、
前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値に前記比率を乗じて又は除して前記黒基準値を小さくする補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記補正部は、予め用意された均一濃度の補正用読取対象を読み取ったときの各前記受光素子からの出力値を取得し、連続する複数の前記受光素子の一定範囲を1つのブロックとした各前記ブロックについて代表値を定めるとともに、隣接する前記ブロック間で前記代表値の差を求め、隣接する前記ブロックのうち、前記代表値が明るい方の前記ブロックに含まれる前記受光素子を前記補正対象受光素子と特定し、前記補正対象受光素子に対する前記黒基準値の補正を行うことを特徴とする請求項2記載の画像読取装置。
【請求項7】
データを記憶する記憶部を有し、
前記補正用読取対象は黒色であり、
前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と前記補正対象受光素子を含む前記ブロックと前記補正対象受光素子を含まない前記ブロックの前記代表値に基づく比較代表値の差の絶対値を補正値として記憶し、
前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値を前記補正値分小さくする補正を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
データを記憶する記憶部を有し、
前記補正用読取対象は均一濃度を有し、グレー又は有彩色であり、
前記補正部は、前記補正対象受光素子を含むブロックの前記代表値と前記補正対象受光素子を含まない前記ブロックの前記代表値に基づく比較代表値との比率を求め、
前記記憶部は、前記補正対象受光素子の位置と前記比率を記憶し、
前記補正部は、前記光源消灯時の各前記受光素子からの出力値に基づき各前記受光素子の前記黒基準値を定め、前記補正対象受光素子の前記黒基準値に前記比率を乗じて又は除して前記黒基準値を小さくする補正を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記ブロックに含まれる各前記受光素子からの出力値の平均値、または、前記ブロックに含まれる各前記受光素子のうち、いずれかの前記受光素子からの出力値を代表値とすることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
使用者に向けてメッセージを報知する報知部を備え、
前記第1出力値と前記第2出力値の差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、又は、隣接する前記ブロックとの代表値との差の絶対値が予め定められた許容値よりも大きいとき、前記報知部は警告を発することを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記補正用読取対象は、均一濃度の原稿、又は、前記イメージセンサーで読み取り可能な位置に設けられた基準板であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像読取装置を含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−249237(P2012−249237A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121564(P2011−121564)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】