説明

画像読取装置

【課題】 1回の副走査で原稿の可視画像情報と赤外画像情報の双方を簡易な構成で高速で取得することができる画像読取装置を得ること。
【解決手段】 可視光を発光する可視照明装置と赤外光を発光する赤外照明装置と少なくとも可視域と赤外域の異なる分光感度特性を有し主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と可視照明装置および赤外照明装置により照明され原稿台に載置された原稿の画像情報を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と結像光学系と原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段とを備え、一回の主走査方向の読取り毎に可視照明装置と赤外照明装置の点灯動作を制御して、結像光学系と原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像読取装置に関し、特に原稿の可視画像情報と赤外画像情報の双方を高速で取得することができる、例えばイメージスキャナーやデジタル複写機やファクシミリ等に好適な画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透過型の原稿(透過原稿)の画像情報を電気信号に変換してコンピュータに取り込む画像読取装置において、赤外光を用いて原稿面上のゴミやキズの情報を取得し、可視画像情報上のその部分を補正するようにした装置が種々と提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2では既成のモノリシックな3ラインセンサー(3ラインCCD)、赤外照明装置、可視照明装置、結像光学系、ピント補正手段、そして読取手段等を用い、可視画像情報と赤外画像情報を2回の副走査(副走査方向の読取り)に分けて各々取得している。以下この走査方式を「2回副走査方式」と称す。
【0004】
またLED光源を一主走査(一回の主走査方向の読取り)毎に順次切替し、原稿の可視画像情報と赤外画像情報を1回の副走査によって、取得する画像読取装置が提案されている。以下このLED光源を用いた走査方式を「LED順次切替1回副走査方式」と称す。
【0005】
上記の画像読取装置によれば既成の1ラインセンサー(1ラインCCD)とR(赤)/G(緑)/B(青)/IR(赤外)の異なる発光色の4つの照明装置と結像光学系を用いることで1回の副走査で可視画像情報と赤外画像情報の双方を取得でき、2回副走査方式に比して読取り時間や部品精度や調整精度等を改善できるという利点がある。
【0006】
また特殊なモノリシックな4ラインセンサー(4ラインCCD)を用いてR、G、BとIRの画像情報を同時に読み取る方法により、原稿の可視画像情報と赤外画像情報を1回の副走査で取得する画像読取装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
以下この特殊な4ラインCCDを用いた走査方式を「特殊CCD使用1回副走査方式」と称す。
【0008】
図7は特許文献3で提案されている特殊CCD使用1回副走査方式を用いた画像読取装置の主要部分の要部概略図である。
【0009】
特許文献3によれば特殊な4ラインCCDでR、G、BとIRの画像情報を同時に受光できる。さらに4ラインCCDの近傍に取り付けられたフィルタ素子608,610,612により、R、G、Bセンサ列602,604,606へのIR光の入射とIRセンサ列614への可視光の入射を遮断すると同時にフィルタの構造を特殊な形態にすることでIR光の色収差を補正し、R、G、BとIRの画像情報がともに4ラインCCD表面上で結像状態にある。これにより1回の副走査で可視画像情報と赤外画像情報の双方を取得でき、2回副走査方式に比して読取り時間や部品精度や調整精度等を改善できるという利点がある。
【0010】
さらに可視光と赤外光を発する光源を常時点灯するだけの単純な構成の照明系を採用することで、LED順次切替1回副走査方式よりも照明系を容易(安価)に製作できる。また特許文献3では電球を使用した実施例が明示されている。画像読取装置で用いられる電球の代表例にはハロゲン光源があるが、同光源は赤外線と可視光線をともに多く発光する光源であり、容易に製造ができる(コストが比較的安い)。また色収差補正をセンサ近傍のフィルタ素子で行っているため、読取光学系の設計も容易であるなど多くの利点を有している。
【0011】
尚、図7において634は原稿(不図示)からの光束、636は可視光、638は赤外光である。640は可視光636を透過し、赤外光638を反射させる第2プリズム、630は第1プリズム、642は第2プリズム640の反射面である。
【特許文献1】特開2000-324303号公報
【特許文献2】特開2001-189833号公報
【特許文献3】特表2002-503066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
2回副走査方式を用いた特許文献1、2は、キャリッジの副走査方向の駆動を行う駆動装置のバックラッシュや機構全体の熱膨張などによる経時変化等により、1回目の副走査が終わった後に、光学系を初期状態に戻し、精密な位置合わせを行う必要がある。そのため時間と部品精度の向上や調整精度の向上のため構成が複雑化するという問題点があった。また色収差補正手段(ピント位置調整手段)を用いるとその機構が複雑化(コスト上昇)するだけでなく、装置全体の大型化を招くという問題点もあった。
【0013】
LED順次切替1回副走査方式を用いた画像読取装置は、R、G、Bの画像情報を読み取るため主走査方向の読取りを順次切替で行わなければならない。そのためR、G、Bの画像情報を同時に読み取る上記の2回副走査方式に比べて可視画像情報を読み取る時間が長いという問題点がある。またLED光源は他の光源、例えば蛍光管等の光源に比べて発光効率が低いため、複数列のフイルムを同時に読み取るような画像読取装置では、照明幅が広くなり照度が不足するため、組込むLEDの数を多くしなければならない。しかしながら、LED、とりわけB色のLEDの製造は難しく(高価である)、これを多数個使うと製品コストを大幅に上昇させてしまうという問題点があった。
【0014】
さらにR/G/B/IRを共に1ラインCCD面上に結像させるためにガラス材料の最適化により色収差が補正された結像光学系が、例えば特開平10-325921号公報で提案されているが、複数列のフイルムを同時に読取る結像光学系は設計上難しく、構成枚数が極めて多くなるという問題点があった。
【0015】
よってLED順次切替1回副走査方式の画像読取装置は、一般的に35mmフイルム用のフイルムスキャナなどには読取光学系や照明装置についての負荷がそれほど大きくなく好適であるが、それよりも幅広く読み取る装置においては、製造が難しく、かつ構成が複雑化してしまうという問題点があった。
【0016】
また上記の画像読取装置においては、原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得する副走査回数は1回であるが、R、G、Bの画像情報を同時に読み取れないために全読取時間が短いとも言えなかった。
【0017】
特殊CCD使用1回副走査方式を用いた特許文献3による特殊な4ラインCCD及びフィルタ素子の製作には下記に示す問題点がある。
【0018】
まずフィルタ素子については、可視光と赤外光をそれぞれ完全に遮光することは困難であり、いくらかの遮光漏れが必ず発生する。しかしながら、昨今の画像読取装置は概ね8bit程度の高階調性を仕様としており、通常1bit程度のノイズ成分を許容していることを考慮しても、漏れ光の比率は1/2(8-1)=0.8%以下が求められる。だが、これを達成するフィルタ素子を製作することは容易ではない。例えば特開2000-304918号公報で開示されているような特殊な誘電体多層膜構造をフィルタ素子に組込むことも考えられるが、それでも製作は難しい。
【0019】
またフィルタ素子で色収差補正を行う場合、通常、ガラス媒体中での色ズレ量が0.7〜1.0mm程度であることを考えると、R、G、Bセンサ列とIRセンサ列の距離をそれだけ離さなくてはならない。従来のR、G、Bセンサより成る3ラインCCDの有効幅は概ね0.5mm程度であるから、素子面積が大幅に増えることになる。半導体プロセスで生産される素子の歩留りは面積に大きく依存するので、コストも大幅に上昇することが予見される。
【0020】
さらに0.7〜1.0mm程度の間隔の中に誘電体多層膜構造を斜めに、かつ端面を配置し、CCD表面と精密な位置合わせをするなど、歩留りの低下が見込まれる懸念事項も多い。
【0021】
また特殊CCD使用1回副走査方式によれば画像読取装置は1回の副走査により原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得でき、読取光学系を従来のものを使え、照明装置もハロゲン光源等の簡易な構成(低コスト)のものを利用できるが、その反面CCD及びそれに付加するフィルタ素子が極めて製造が難しくなるという問題点があった。
【0022】
本発明は1回の副走査で原稿の可視画像情報と赤外画像情報の双方を簡易な構成で高速で取得することができる画像読取装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1の発明の画像読取装置は、
可視光を発光する可視照明装置と、
赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも可視域と赤外域の異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像情報を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
一回の主走査方向の読取り毎に該可視照明装置と該赤外照明装置の点灯動作を制御して、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得することを特徴としている。
【0024】
請求項2の発明の画像読取装置は、
少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光する可視照明装置と、
波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有し、赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像情報を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
一回の主走査方向の読取り毎に該可視照明装置と該赤外照明装置の点灯動作を切り替えて、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該光電変換素子より、該原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得することを特徴としている。
【0025】
請求項3の発明の画像読取装置は、
少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光する可視照明装置と、
波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有し、赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元の光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
該可視照明装置は連続点灯し、該赤外照明装置は一回の主走査方向の読取り毎に点灯、消灯を切り替えて、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該光電変換素子より、
該原稿に対し可視光を照射したときの可視画像情報と、可視光と赤外光の双方を照射したときの可視赤外画像情報を取得することを特徴としている。
【0026】
請求項4の発明の画像読取装置は、
少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光する可視照明装置と、
波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有し、赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
該赤外照明装置は連続点灯し、該可視照明装置は一回の主走査方向の読取り毎に点灯、消灯を切り替えて、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該光電変換素子より、
該原稿に対し赤外光を照射したときの赤外画像情報と、可視光と赤外光の双方を照射したときの可視赤外画像情報を取得することを特徴としている。
【0027】
請求項5の発明は請求項1乃至4のいずれか1項の発明において、
前記結像光学系はオフアキシャル反射面で構成されることを特徴としている。
【0028】
請求項6の発明は請求項1乃至4のいずれか1項の発明において、
前記結像光学系は回折光学素子を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によればLED順次切替1回副走査方式とも特殊CCD使用1回副走査方式とも異なる新たな1回副走査方式により原稿の可視画像情報と赤外画像情報の双方を高速で取得でき、また製造が容易なラインCCDと照明装置と結像光学系等を利用して高精度で、かつ十分な高速性を兼ね備えた画像読取装置を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は本発明の実施例1のキャリッジ一体型の画像読取装置(フラットベッドスキャナー)の要部概略図である。
【0032】
同図において、101は可視照明装置であり、キセノン蛍光管より成り、少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光している。
【0033】
102は赤外照明装置であり、赤外LEDアレーより成り、波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有する赤外光を発光している。
【0034】
104は原稿台ガラスであり、その面上に透過型の原稿(フィルム)103が載置されている。
【0035】
109はキャリッジであり、後述する複数の折り返しミラー106、結像光学系(結像レンズ)107、そして読取手段108等を保持しており、モータなどの駆動手段としての駆動装置105により図中の副走査方向へ走査し、後述する図2に示すフローチャートに基づいて原稿103の可視画像情報と赤外画像情報を取得(読取り)している。読取られた可視画像情報と赤外画像情報はインターフェイスを通じて外部機器であるパーソナルコンピューターなどに送られる。
【0036】
複数の折り返しミラー106は原稿103からの光束の光路をキャリッジ109内部で折り曲げている。
【0037】
結像光学系107は1枚以上のレンズから構成されており、可視照明装置101および赤外照明装置102により照明された原稿台ガラス104に載置された原稿103の画像情報を読取手段108面上に結像させている。
【0038】
尚、本実施例で用いる結像光学系107としては、例えば特開2002-335375号公報などに開示されているオフアキシャル反射光学系を用いてもよい。オフアキシャル反射光学系は自由曲面反射面の作用にて光束を結像させる光学素子であり、色収差が発生しない。また反射面素材は金属でも樹脂でも製作可能であり、高い自由度がある。それ故に容易(低コスト)に製造できる。
【0039】
読取手段108は少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元の光電変換素子(以下「3ラインCCD(Charge Coupled Device)」と称す。)より成っている。
【0040】
駆動手段105はキャリッジ109(結像光学系107)と原稿103とを副走査方向へ相対的に変移させている。これによって結像光学系107と原稿103との副走査方向への光学的な相対的位置を変移させている。
【0041】
本実施例では一回の主走査方向の読取り(一主走査)毎に可視照明装置101と赤外照明装置102の点灯動作を切り替えて、キャリッジ109(結像光学系107)と原稿103との副走査方向への一回の相対的位置の変移(副走査)によって、3ラインCCD108より、該原稿103の可視画像情報と赤外画像情報を順次高速で取得している。これにより赤外光で読取った原稿上のごみ、傷等の範囲情報により、可視光で読取った画像情報における欠陥を修復している。
【0042】
図2は本発明の実施例1の動作について説明したフローチャートである。
【0043】
本実施例においては図2に示すように原稿の読取開始後、副走査方向の読取りが読取終了位置に達するまで、可視照明装置の点灯、可視画像情報の取得(読取り)、可視照明装置の消灯、赤外照明装置の点灯、赤外画像情報の取得(読取り)、赤外照明装置の消灯、副走査方向に1ステップ分の相対移動を繰り返し、1回の副走査動作中に可視画像情報と赤外画像情報の双方を高速で取得できるようにしている。
【0044】
本実施例では上記の如くキセノン蛍光管からなる可視照明装置と赤外LEDアレイからなる赤外照明装置を用いている。キセノン蛍光管は始動応答性がよく、瞬時に安定した発光が可能であり、発光効率も高く明るい。また赤外LEDアレイも同じく始動応答性が良い。
【0045】
このように本実施例では上記の如く一主走査の読取り毎に可視照明装置101と赤外照明装置102の点灯動作を切り替えている。そして結像光学系107と原稿103との副走査方向への一回の相対的位置の変移によって、3ラインCCD108より、原稿の可視画像情報と赤外画像情報の双方を高速で取得している。
【実施例2】
【0046】
図3は本発明の実施例2の2対1ミラー走査型の画像読取装置(フラットベッドスキャナー)の要部概略図である。
【0047】
同図において301は可視照明装置であり、冷陰極蛍光管より成り、少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光している。
【0048】
302は赤外照明装置であり、赤外LEDアレーより成り、波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有する赤外光を発光している。
【0049】
304は原稿台ガラスであり、その面上に透過型の原稿(フィルム)303が載置されている。
【0050】
306は複数の折り返しミラーであり、原稿303からの光束の光路を本体内部で折り曲げている。複数の折り返しミラー306のうち原稿303に近い折り返しミラーは第1のミラー台309aに、それ以外の2枚の折り返しミラーは第2のミラー台309bに取付けられており、それぞれのミラー台309a,309bを後述する駆動手段としての駆動装置305によって2:1の速度で副走査方向へ移動させている。
【0051】
307は結像光学系あり、1枚以上のレンズから構成されており、可視照明装置301及び赤外照明装置302により照明された原稿台ガラス304に載置された原稿303の画像情報を読取手段308上に結像させている。
【0052】
尚、本実施例で用いる結像光学系307としては、例えば図8に示すようにオフアキシャル反射光学系を用いてもよい。同図におけるオフアキシャル反射光学系は原稿側から順に外形が互いに直交する方向で長さが異なり、厚みが外形の矩手方向の長さより小さく,樹脂材料より成る第1、第2の2つの反射型のオフアキシャル光学素子(反射型オフアキシャル光学素子)4a,4bを有し、該第1、第2のオフアキシャル光学素子4a,4bの鏡面(オフアキシャル反射面)R2,R4が互いに略向き合うように配置している。第1、第2のオフアキシャル光学素子4a,4bは具体的には矩形状より成り、その厚み方向の長さがその矩手方向(短辺方向)長さよりも短くなるように形成している。尚、同図におけるSPは絞りであり、第1のオフアキシャル光学素子4aと第2のオフアキシャル光学素子4bとの間に配置している。
【0053】
このようにオフアキシャル反射光学系は特に少枚数の反射ミラーで構成されており、色収差が発生しないだけでなく、特に光学系全体を容易に製作できる。
【0054】
308は読取手段であり、少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元の光電変換素子(3ラインCCD)より成っている。
【0055】
305は駆動手段としての駆動装置であり、結像光学系307と原稿303との副走査方向への光学的な相対的位置を変移させている。
【0056】
ここで「光学的な相対的位置を変移させている」とは原稿303と結像光学系307が固定で第1、第2ミラー309a,309bが移動して、原稿303と結像光学系307との間の距離を変移することを言う。
【0057】
本実施例では可視照明装置301を連続点灯し、赤外照明装置302を一主走査の読取り毎に点灯、消灯を切り替えて、結像光学系307と原稿301との副走査方向への一回の光学的な相対的位置の変移によって、3ラインCCD308より、原稿301に対し可視光を照射したときの可視画像情報と、可視光と赤外光の双方を照射したときの可視赤外画像情報を取得している。
【0058】
図4は本発明の実施例2の動作について説明したフローチャートである。
【0059】
本実施例においては図4に示すように原稿の読取開始後、はじめに可視照明装置を点灯し一定時間待機する。これは冷陰極蛍光管の始動応答性が実施例1のキセノン蛍光管に比べて劣るための対策である。続いて、副走査方向の読取りが読取終了位置に達するまで、可視画像情報を取得(読取り)し、可視照明装置301を消灯することなく赤外照明装置302を点灯し、可視・赤外画像情報を取得する。その後、赤外照明装置302の消灯、副走査方向に1ステップ分の相対移動をした後、可視画像情報の取得に戻る。これにより1回の副走査動作中に可視画像情報と可視・赤外画像情報を取得できるようにしている。
【0060】
尚、可視・赤外画像情報は可視画像情報と赤外画像情報を加算的に含んでいるが、別途、単独の可視画像情報を取得しているので両画像情報から減算処理することで、単独の赤外画像情報を得ることができる。同処理は単純な計算であるから、不図示の後工程での画像処理に大きな負荷を与えず、処理時間や製品コストにも大きな影響は及ぼさない。
【0061】
本実施例では上記の如く冷陰極蛍光管からなる可視照明装置と赤外LEDアレイからなる赤外照明装置を用いている。冷陰極蛍光管はキセノン蛍光管に比べて始動応答性が劣るが、発光効率が極めて高く、かつ極めて容易(低コスト)に製作できるという大きな利点がある。よって、始動応答性についての対策を行った実施例2は本発明の目的を十分に達成しているだけでなく、特に豊かな可視光量による画像のSN比の向上や消費電力の低減や製造面(低コスト化)等についても効果がある。
【実施例3】
【0062】
図5は本発明の実施例3のキャリッジ一体型の画像読取装置(フラットベッドスキャナー)の要部概略図である。同図において図1に示した要素と同一要素には同符番を付している。
【0063】
本実施例において前述の実施例1と異なる点は赤外照明装置502をハロゲン光源とシリコン等の可視光を遮光する遮光フィルタとを組合せて構成し、可視照明装置101と赤外照明装置502の点灯及び消灯動作を異ならせて設定したことである。その他の構成及び光学的作用は実施例1と略同様であり、これにより同様な効果を得ている。
【0064】
即ち、同図において502は赤外照明装置であり、波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有する赤外光を発光している。本実施例における赤外照明装置502はハロゲン光源とシリコン等の可視光を遮光する遮光フィルタを組合せて構成している。
【0065】
505は駆動手段としての駆動装置であり、キャリッジ109(結像光学系107)と原稿103とを副走査方向へ相対的に変移させている。
【0066】
尚、本実施例における結像光学系107としては、例えば特開2000-066093号公報に開示されている回折光学素子面を含む結像レンズ系を用いてもよい。回折光学素子面は色収差補正の効果が極めて強いので、従来の屈折レンズ系に組み込むことで可視光領域外でも色収差の補正が容易である。
【0067】
本実施例では赤外照明装置502を連続点灯し、可視照明装置101を一主走査の読取り毎に点灯、消灯を切り替えて、キャリッジ109(結像光学系107)と原稿103との副走査方向への光学的な相対的変移を1回することによって、3ラインCCDより、該原稿103の赤外光を照射したときの赤外画像情報と、可視光と赤外光の双方を照射したときの可視赤外画像情報の双方を高速で取得している(読取っている)。
【0068】
図6は本発明の実施例3の動作について説明するフローチャートである。
【0069】
本実施例においては図6に示すように原稿の読取開始後、はじめに赤外照明装置502を点灯し一定時間待機する。これはハロゲン光源の始動応答性が実施例1のキセノン蛍光管に比べて劣るための対策である。続いて、副走査方向の読取りが読取終了位置に達するまで、可視照明装置101を点灯し、可視・赤外画像情報を取得する。次いで可視照明装置101を消灯して赤外画像情報を取得する。その後、副走査方向に1ステップ分の相対移動をした後、可視照明装置101の点灯に戻る。これにより1回の副走査動作中に可視・赤外画像情報と赤外画像情報を取得できるようにしている。
【0070】
可視・赤外画像情報は可視画像情報と赤外画像情報を加算的に含んでいるが、別途、単独の赤外画像情報を取得しているので両画像から減算処理することで、単独の可視画像情報を得ることができる。同処理は単純な計算であるから、不図示の後工程での画像処理に大きな負荷を与えず、処理時間や製品コストに大きな影響は及ぼさない。
【0071】
本実施例では上記の如くハロゲン光源とシリコン等の可視光遮光フィルタを組合せた赤外照明装置502を用いている。ハロゲン光源は赤外LEDに比べて始動応答性が劣るが、構造が簡単で大光量を得やすいという大きな利点がある。よって、始動応答性についての対策を行った実施例3は本発明の目的を十分に達成しているだけでなく赤外画像情報のSN比を出来るだけ向上させておきたい場合、例えば原稿面上のゴミやキズの状態が悪い画像の読取りなどには好適である。
【0072】
尚、本発明の画像読取装置の構成は、各実施例にとらわれない。例えばフイルムなどの透過原稿以外の反射原稿に対しても本発明は有用である。ラインセンサーについても3ラインCCD以外の例えば同色が2ラインある6ラインCCDや4色以上の色分解性能向上を図った4ラインCCDもしくはCMOS型センサでも本発明は前述の実施例と同じ効果を発揮することができる。
【0073】
表1は本発明と従来の画像読取装置の特徴を比較して示している。表1において、従来例と比較して優れているときを「〇」印、劣っているときを「×」印、同様のときを「△」印を付している。
【0074】
表1からも明らかなように、本発明は従来例のどれよりも光学性能や製造面(コスト面)でバランス良く優位であることが分かる。
【0075】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1の要部概略図
【図2】本発明の実施例1のフローチャート
【図3】本発明の実施例2の要部概略図
【図4】本発明の実施例2のフローチャート
【図5】本発明の実施例3の要部概略図
【図6】本発明の実施例3のフローチャート
【図7】従来の画像読取装置の主要部分の要部概略図
【図8】本発明の実施例2の結像光学系の要部概略図
【符号の説明】
【0077】
101、301 可視照明装置
102、302、502 赤外照明装置
103、303 原稿
104、304 原稿台ガラス
105、305、505 駆動装置
106、306 折り返しミラー
107、307 結像光学系
108、308 読取手段
109 キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を発光する可視照明装置と、
赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも可視域と赤外域の異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像情報を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
一回の主走査方向の読取り毎に該可視照明装置と該赤外照明装置の点灯動作を制御して、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光する可視照明装置と、
波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有し、赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像情報を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
一回の主走査方向の読取り毎に該可視照明装置と該赤外照明装置の点灯動作を切り替えて、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該光電変換素子より、該原稿の可視画像情報と赤外画像情報を取得することを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光する可視照明装置と、
波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有し、赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元の光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
該可視照明装置は連続点灯し、該赤外照明装置は一回の主走査方向の読取り毎に点灯、消灯を切り替えて、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該光電変換素子より、
該原稿に対し可視光を照射したときの可視画像情報と、可視光と赤外光の双方を照射したときの可視赤外画像情報を取得することを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
少なくとも波長480nmから波長630nmまでの可視光を発光する可視照明装置と、
波長800nmから波長950nmの間のいずれかの波長にピーク波長を有し、赤外光を発光する赤外照明装置と、
少なくとも3つの異なる分光感度特性を有し、主走査方向に延在された複数列の1次元光電変換素子と、
該可視照明装置および該赤外照明装置により照明され、原稿台に載置された原稿の画像を該1次元光電変換素子上に結像させる結像光学系と、
該結像光学系と該原稿との副走査方向への光学的な相対的位置を移動させる駆動手段と、を備え、
該赤外照明装置は連続点灯し、該可視照明装置は一回の主走査方向の読取り毎に点灯、消灯を切り替えて、該結像光学系と該原稿との副走査方向への一回の光学的な相対的移動によって、該光電変換素子より、
該原稿に対し赤外光を照射したときの赤外画像情報と、可視光と赤外光の双方を照射したときの可視赤外画像情報を取得することを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
前記結像光学系はオフアキシャル反射面で構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記結像光学系は回折光学素子を含んでいることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図1】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−333078(P2006−333078A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153932(P2005−153932)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】