説明

画像読取装置

【課題】キャリブレーションを行う際の外乱光の影響を低減することが可能な画像読取装置を提供する。
【解決手段】検出部5は、主走査方向に検出素子51を複数備え、主走査方向に直交する副走査方向82に移動可能である。検出部5に対向して、原稿台3と板部4が設けられている。板部4は、基準部材41等を備えている。原稿台3と基準部材41とは、副走査方向82において重ならない。基準部材41は、シート43とシート43の上側に配置された遮光部42とを備えている。シート43の底面は、キャリブレーション用の基準色を含む第一面44である。第一面44の高さ位置は、原稿台3の原稿接触面31の高さ位置より検出部5側である。検出部5と基準部材41との間の第一層7は、原稿台3より屈折率が小さい層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿からの反射光を検出する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿を画像データに変換するために、原稿からの反射光を検出して、原稿等を読み取る画像読取装置が知られている。一般的に、画像読取装置が原稿の読み取りを行う場合、原稿台に配置された原稿に光を照射し、その反射光を複数の撮像素子で構成されたセンサで検出する。しかし、個々の撮像素子の出力信号にはバラツキが生じるため、バラツキの影響を低減するために、キャリブレーションが行われる。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、ガラスで形成された原稿台の端部の上面に、基準白色板が設けられている。そして、画像形成装置は、原稿台に載置された原稿を読み取る前に基準白色板を読み取って、いわゆるシェーディング補正(キャリブレーションに相当)を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−64984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置では、原稿台における原稿が配置される部位から入射した外乱光の一部が、透明な原稿台の板厚方向の2つの面の間で反射を繰り返しながら原稿台内を伝搬し、基準白色板の下側に位置する原稿台の端部に到達する場合がある。このため、到達した外乱光が、キャリブレーションを行う際、センサによって検出されてしまい、キャリブレーションの精度が低下する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、キャリブレーションを行う際の外乱光の影響を低減することが可能な画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像読取装置は、光源から照射された光の反射光を検出する検出素子を主走査方向に複数備え、前記主走査方向に直交する副走査方向に移動可能な検出部と、前記副走査方向に移動する前記検出部に対向して設けられ、前記検出部に対向する面である対向面と、前記対向面の反対側の面であって読み取りの対象となる原稿に接触する面である原稿接触面とを有する透明板と、前記副走査方向において前記透明板と重ならない位置に設けられ、前記主走査方向と前記副走査方向とに直交する方向における位置である高さ位置が、前記対向面と同一、又は、前記対向面より前記原稿接触面側であり、前記検出部と対向する面である第一面の色がキャリブレーション用の基準色を含む基準部材と、前記検出部と前記基準部材との間の層であって、前記透明板より小さい屈折率で光を透過させる層である第一層とを備えている。
【0007】
この場合、副走査方向において透明板と重ならない位置に基準部材が設けられている。透明板に入射した外乱光の一部は、原稿接触面と対向面との間で反射を繰り返して透明板内を伝搬する。しかし、透明板と第一層との境目で外乱光の一部が全反射して第一層に到達しない。このため、透明板から第一層に向けて外乱光が漏れにくい。よって、基準部材の第一面の反射光を検出してキャリブレーションを行う際に、外乱光の影響を低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0008】
前記画像読取装置は、前記副走査方向において前記基準部材と前記透明板との間に配置され、前記検出部に対向する面の前記高さ位置が、前記透明板の前記対向面の前記高さ位置と同一、又は、前記対向面の前記高さ位置より前記検出部側に位置する第一遮光部を備えてもよい。この場合、第一遮光部が、透明板を伝搬する外乱光が第一層に入射することを防止する。よって、キャリブレーションを行う際の外乱光の影響を低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0009】
前記画像読取装置において、前記第一層は、前記透明板より小さい屈折率を有する空気の層であってもよい。この場合、第一層は、空気の層であるため、第一層を透明板より小さい屈折率の材料で形成する場合に比べて、コストを低減することができる。
【0010】
前記画像読取装置において、前記基準部材は、前記第一面に対して前記検出部とは反対側に前記第一面に対向する面である第二面を備え、前記第二面の前記高さ位置が、前記原稿接触面の前記高さ位置と同一、又は前記原稿接触面の前記高さ位置より前記検出部側に位置してもよい。この場合、基準部材が原稿接触面より突出しない。従って、机上に置かれている原稿の上に画像読取装置を配置して読み取りを行う場合でも、原稿接触面を確実に原稿に当接させることができる。よって、原稿を正確に読み取ることができる。
【0011】
前記画像読取装置において、前記第二面の前記高さ位置が、前記原稿接触面の前記高さ位置より前記検出部側に位置してもよい。この場合、第二面の前記高さ位置が、原稿接触面の高さ位置より検出部側に位置するので、製造時において基準部材や透明板の取り付け精度にばらつきが発生しても、基準部材が原稿接触面より突出することがない。よって、原稿接触面を原稿に当接させることができ、原稿を正確に読み取ることができる。
【0012】
前記画像読取装置において、前記基準部材は、前記第一面に対して前記検出部とは反対側に前記第一面に対向する面である第二面を備え、前記第二面の前記高さ位置が、前記原稿接触面の前記高さ位置より前記検出部側とは反対側に位置してもよい。この場合、基準部材が原稿接触面より突出し、基準部材と原稿接触面とよって段部が形成される。このため、例えば、原稿接触面の上側に原稿を置いて読み取りを行う場合に、段部に原稿を当接させることで、原稿接触面に配置される原稿の位置決めをすることができる。よって、ユーザは、容易に原稿を原稿接触面に配置することができる。
【0013】
前記画像読取装置において、前記基準部材は、前記第一面を有するシートと、前記シートに対して前記検出部とは反対側に設けられ、外部の光が前記シートに向けて透過不能に遮光する第二遮光部とを備えてもよい。この場合、第二遮光部によって、基準部材を介して第一面及び第一層に外部の光が到達することが防止される。よって、キャリブレーションを精度よく行うことができる。
【0014】
前記画像読取装置において、前記基準部材は、厚みを有する1枚の板部であり、厚み方向の面のうち、前記検出部側の面が前記第一面で構成されていてもよい。この場合、基準部材が厚みを有するので、基準部材を介して第一面及び第一層に外部の光が到達することが防止される。よって、キャリブレーションを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スキャナ1の斜視図である。
【図2】図1のスキャナ1のI−I線矢視方向断面図である。
【図3】図2に示すスキャナ1の要部拡大図である。
【図4】机91上に置かれた原稿90を読み取る場合のスキャナ1を示す図である。
【図5】第二実施形態に係るスキャナ1の断面図である。
【図6】第三実施形態に係るスキャナ1の断面図である。
【図7】第四実施形態に係るスキャナ1の断面図である。
【図8】第五実施形態に係るスキャナ1の断面図である。
【図9】第六実施形態に係るスキャナ1の断面図である。
【図10】第七実施形態に係るスキャナ1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、図1の紙面の上側、下側、右上側、左下側、右下側、左上側を、それぞれスキャナ1の上側、下側、右側、左側、前側、後側と定義して説明する。
【0017】
図1を参照し、第一実施形態に係るスキャナ1の概要について説明する。スキャナ1は、ユーザが把持して机上の原稿90の上にスキャナ1を配置して読み取り(スキャン)を行ったり(図4参照)、スキャナ1の上側に原稿90を配置して読み取りを行なったりすることができる(図3参照)。
【0018】
図1に示すように、スキャナ1は、前後方向に長い長方体状の筐体2を備えている。筐体2の上面中央には、スキャナ1の内部に貫通する矩形状の開口21が設けられている。開口21の内側には、原稿台3と板部4とが嵌められている。原稿台3は、透明な板状部材であり、スキャナ1の上面略中央に設けられている。原稿台3は、スキャナ1を使用しての読み取りが行われる際に、原稿90と接触する(図3及び図4参照)。板部4は、原稿台3の左側に設けられている。板部4の前後方向の長さは原稿台3と略同一であり、板部4の左右方向の長さは原稿台3の左右方向長さより短い。板部4は、その底面にキャリブレーション用のシート43(図2参照)を備えている。
【0019】
図1及び図2を参照して、スキャナ1の内部構造について説明する。図2に示すように、スキャナ1の内部には、原稿台3に対応して前後方向に長い検出部5が設けられている。本実施形態では、一例として、検出部5は、CIS(Contact Image Sensor)方式の検出部であるとする。検出部5は、前後方向に、光を検出する複数の検出素子51を備えている。検出部5は、左右方向に移動可動である。複数の検出素子51が配列された方向(本実施形態では前後方向)を、主走査方向81(図1参照)という。また、主走査方向81と直交する方向であって、検出部5が移動可能な方向(本実施形態では左右方向)を、副走査方向82(図1及び図2参照)という。また、主走査方向81と副走査方向82とに直交する方向である上下方向を、高さ方向83(図1及び図2参照)という。
【0020】
複数の検出素子51の上側には、レンズ52が設けられている。レンズ52は、例えば、セルフォックレンズである。検出部5は、その前後方向の一方の端部に、光源53を備えている。光源53は、例えば、LED(Light Emitting Diode)で構成されている。また、検出部5は、光源53が設けられている端部から主走査方向81に延びる導光板54を備えている。光源53から発せられた光は、導光板54を介して、主走査方向81に亘って上方に向けて照射される。スキャナ1が読み取りを行う際には、検出部5が副走査方向右側に移動しながら、光源53が光を照射し、その反射光を検出素子51が検出する。
【0021】
原稿台3は、副走査方向82に移動する検出部5に対向している。原稿台3の高さ方向83の面のうち、上側の面は、原稿90に接触する面である原稿接触面31であり、下側の面は、検出部5に対向する対向面32である。原稿台3の左端には、対向面32が原稿接触面31より左側に長くなるように突出した突出部33が設けられている。原稿台3の左端面34(本実施形態では、突出部33の左側の面)は、第一層7(後述)と接触している。
【0022】
板部4は、基準部材41、左延伸部48、及び右延伸部49を備えている。基準部材41は、板部4において、左延伸部48と右延伸部49との間の中央部分をなし、板状の遮光部42と、遮光部42の底面に貼り付けられたキャリブレーション用のシート43とを備えている。基準部材41は、副走査方向82において原稿台3と重なっていない。遮光部42は、スキャナ1の外部からの光をシート43に向けて透過不能に遮光する。基準部材41における検出部5と対向する面(本実施形態ではシート43の底面)を、第一面44という。第一面44の色は、スキャナ1がキャリブレーションを行うための基準色を含んでいる。本実施形態では、一例として、第一面44は、キャリブレーションを行うための基準となる白色で構成されているとする。第一面44の高さ方向83における位置(以下、「高さ位置」という。)は、原稿接触面31の高さ位置より検出部5側(下側)であり、対向面32の高さ位置より原稿接触面31側(上側)である。
【0023】
また、第一面44に対して検出部5とは反対側に設けられた基準部材41の面(本実施形態では遮光部42の上面)を第二面45という。第二面45の高さ位置は、原稿台3の原稿接触面31の高さ位置と同一である。
【0024】
右延伸部49と左延伸部48とは、遮光部42と一体に形成されている。右延伸部49は、遮光部42の右側に設けられ、遮光部42より下方に向けて突出している。右延伸部49の底面491の高さ位置は、シート43の第一面44の高さ位置より下方に位置し、原稿台3の突出部33の上面と接触している。
【0025】
左延伸部48は、遮光部42の左側に設けられ、遮光部42より下方に向けて突出している。左延伸部48の底面の高さ位置は、シート43の第一面44の高さ位置より下方に位置している。板部4の左側に位置する開口21の端部には、その底面が上面より右側に長くなるように突出した突出部22が形成されている。左延伸部48の底面481は、突出部22の上面と接触している。
【0026】
検出部5と基準部材41とが対向した位置にある場合に両者の間にある層を、第一層7という。第一層7は、透明な原稿台3より小さい屈折率で光を透過させる層である。本実施形態では、一例として、第一層7は、空気(屈折率:約1.0)の層であるとする。また、原稿台3は、一例として、アクリル(屈折率:約1.492)で形成されているとする。
【0027】
次に、図3を参照して、スキャナ1の上に原稿90を配置して読み取りを行う場合について説明する。本実施形態では、原稿90の読み取りを実行する前には必ず、キャリブレーションが行われる。なお、図3では、説明を分かり易くするために、検出部5の外装を簡略化して示している。また、以下で説明する検出部5の移動、光源53の発光、検出素子51による検出等は、スキャナ1に設けられたCPU等の制御回路(図示外)の制御によって行われる。
【0028】
図3に示すように、原稿接触面31の上には、原稿90が配置されている。スキャナ1が読み取りを実行する場合、まず、検出部5が、基準部材41の下側(基準部材41に対向する位置)に移動する(図3の紙面左側の検出部5の位置に移動)。そして、光源53が発光し、導光板54を介して基準部材41の第一面44に向けて光が照射される。検出素子51とレンズとは、検出素子51の焦点が第一面44に合うように構成されている。このため、第一面44に反射された光が、複数の検出素子51によって正確に検出される。検出素子51は、検出した反射光に応じた出力値を制御回路(図示外)に出力する。
【0029】
スキャナ1の制御回路は、各検出素子51の出力値を検出する。第一面44は、白色で構成されているが、複数の検出素子51が同じ白色を検出した場合でも、複数の検出素子51の各々の出力値にはバラツキがある。このため、予めROM等の記憶手段に記憶された基準値と、各検出素子51の出力値とを比較し、基準値に合うように、各検出素子51の出力値に乗算する係数を算出する。後で原稿90の読み取りを行う際には、各検出素子51の出力値に算出された係数が乗算される。これによって、スキャナ1が読み取りを行う際に、検出素子51のバラツキの影響を低減することができる。つまり、キャリブレーションが行われる。なお、上記で述べた係数を乗算するキャリブレーションの方法は、一例であり、公知の種々のキャリブレーションの方法を採用することができる。
【0030】
キャリブレーションが終了すると、検出部5が、原稿台3の下側を副走査方向82の右方向に移動しながら、原稿90の読み取りを行う(図3の紙面右側の検出部5)。このときの検出素子51の焦点は、原稿90に合っている。検出素子51の焦点が、原稿90に合う理由について説明する。
【0031】
空気より屈折率が大きい透明な原稿台3を介して、検出素子51が読み取りを行う場合、焦点距離は、空気の場合と比べて延びる。例えば、第一層7のように空気の層である場合における検出素子51の焦点距離がL1であるとする。この場合、空気より屈折率の大きい透明な原稿台3を介して読み取りを行う場合、焦点距離は、L1よりズレ量ΔLだけ延びる。ズレ量ΔLは、屈折率n、厚みtを用いて、以下の式(1)で表すことができる。
ΔL=(n−1)/n×t・・・(1)
【0032】
本実施形態では、原稿台3を構成するアクリルの屈折率nは、1.492である。そして、原稿台3の厚みtは、3mmであるとする。これらを式(1)に代入すると、焦点距離のズレ量ΔLは、0.989mmと算出される。よって、図3に示すように、焦点距離は、L1に比べてズレ量ΔL「0.989mm」だけ上側に延びる。ここで、本実施形態では、原稿接触面31と第一層7との高さ位置の差は、ズレ量ΔLと同一の「0.989mm」に設定されている。このため、焦点距離がΔL「0.989mm」だけ延びた場合に、検出素子51の焦点が原稿90に合うようになる。
【0033】
このように、キャリブレーションを行う位置における焦点距離L1より、原稿90を読み取りする位置における焦点距離(L1+ΔL)の方が、焦点距離が長くなる。このため、第一面44の高さ位置を、原稿接触面31の高さ位置より検出部5側(下側)に配置することができる。第一面44の高さ位置を原稿接触面31の高さ位置より下側に配置することができるので、第一面44に対向する第二面45を原稿接触面31と同一の高さ位置に配置できる。これによって、図2及び図3に示すように、基準部材41と原稿接触面31とをフラットに構成できる。
【0034】
次に、図4を参照して、スキャナ1を用いて、机91の上に配置された原稿90を読み取る場合について説明する。この場合、図4に示すように、机91の上の原稿90に対して、原稿接触面31が接触するように、スキャナ1が配置される。仮に、基準部材41の第二面45が、原稿接触面31より突出していれば、突出した基準部材41の第二面45が机91に当接するため、原稿接触面31が机91の上の原稿90から浮いてしまう。このため、原稿90を正確に読み取ることができない可能性がある。本実施形態では、基準部材41の第二面45が、原稿接触面31より突出しないので、原稿接触面31を原稿90に当接させることができる。よって、原稿90を正確に読み取ることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態のスキャナ1が構成される。本実施形態では、副走査方向82において原稿台3と重ならない位置に基準部材41が設けられている。原稿台3に入射した外乱光の一部は、原稿接触面31と対向面32との間で反射を繰り返して原稿台3内を伝搬する。しかし、第一層7が原稿台3より小さい屈折率をしているため、原稿台3と第一層7との境目である左端面34で外乱光の一部が全反射して第一層7に到達しない。このため、原稿台3から第一層7に向けて外乱光が漏れにくい。よって、基準部材41の反射光を検出してキャリブレーションを行う際に、外乱光の影響を低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0036】
また、右延伸部49が設けられているため、原稿台3内を伝搬する外乱光の一部が右延伸部49によって遮られ、第一層7に到達することが防止される。よって、基準部材41の反射光を検出してキャリブレーションを行う際に、外乱光の影響をさらに低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0037】
また、第一層7は、空気の層であるため、第一層7を形成するための部材は必要ない。このため、第一層7を原稿台3と異なる屈折率の材料の別部材として形成する場合に比べて、スキャナ1の製造コストを低減することができる。
【0038】
また、シート43の上側に、遮光部42が設けられている。このため、遮光部42によって、基準部材41の上側からの外部の光が、基準部材41を介して第一面44及び第一層7に到達することが防止される。よって、キャリブレーションを精度よく行うことができる。
【0039】
また、第一面44の高さ位置は、対向面32の高さ位置より原稿接触面31側(上側)である。仮に、第一面44の高さ位置が対向面32の高さ位置より下側に設けられている場合において、検出素子51の焦点を第一面44に合わせるように設定しているとする。この場合、原稿台3の下側に検出部5が移動すると、原稿台3(対向面32)の下側で焦点が合ってしまう。このため、原稿90を精度よく読み取ることができない。本実施形態では、第一面44の高さ位置は、対向面32より原稿接触面31側(上側)であるので、原稿台3の下側で焦点が合ってしまうことがなく、精度よく原稿90を読み取ることができる。
【0040】
また、図3に示すように、本実施形態では、レンズ52の焦点距離を可変にすることなく、第一面44と原稿90とに焦点を合わせることができる。よって、レンズ52の焦点距離を可変にする場合に比べて、レンズ52の構造をシンプルにできる。
【0041】
上記実施形態において、スキャナ1が本発明の「画像読取装置」に相当し、原稿台3が本発明の「透明板」に相当する。遮光部42が本発明の「第二遮光部」に相当する。
【0042】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第一面44の基準色は、白色であったが、これに限定されない。例えば、白色と黒色であってもよい。
【0043】
また、スキャナ1は、パーソナルコンピュータ(以下、PCという。)等の外部機器に接続される機器であってもよいし、外部機器に接続されない機器であってもよい。
【0044】
また、スキャナ1の制御回路が、キャリブレーションのための演算を行っていたが、これに限定されない。例えば、スキャナ1に接続されるPC等が、スキャナ1を介して取得される検出素子51の出力値を使用して、キャリブレーションのための演算を行ってもよい。
【0045】
また、キャリブレーションについて、検出素子51のバラツキの影響を低減する場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、光源53が劣化した場合でも同様に、その劣化を低減するようにキャリブレーションを行うことができる。
【0046】
また、原稿台3の材質も本実施形態の場合に限定されず、例えば、ポリカーボネート(屈折率:約1.583)やガラス(屈折率:約1.52)等を用いてもよい。
【0047】
また、本発明の画像読取装置の一例として、スキャナ1について説明したが、これに限定されない。例えば、コピー機能やスキャナ機能を有した複合機等であってもよい。
【0048】
また、右延伸部49が設けられていたが、これに限定されない。例えば、右延伸部49を設けなくてもよい。図5に示す例を第二実施形態という。第二実施形態では、第一実施形態(図2参照)の場合と比較して、右延伸部49と左延伸部48とが設けられておらず、基準部材41が原稿台3と筐体2に接触している。また、原稿台3の突出部33と筐体2の突出部22とが設けられていない。
【0049】
この場合、第一実施形態の場合と同様に、原稿台3と第一層7との境目である左端面34で外乱光の一部が全反射して第一層7に到達しない。このため、原稿台3から第一層7に向けて外乱光が漏れにくい。よって、基準部材41の反射光を検出してキャリブレーションを行う際に、外乱光の影響を低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0050】
また、第一実施形態の場合(図2参照)と同様に、第一層7の屈折率が、原稿台3の屈折率より小さいので、第一面44が、原稿接触面31よりも検出部5に近づいている。このため、原稿台3の左端面34は、基準部材41と接触している。よって、外乱光が原稿台3の左端面34に到達しても、その外乱光の一部が基準部材41によって遮光され、外乱光が原稿台3から第一層7に漏れにくい。よって、基準部材41の反射光を検出してキャリブレーションを行う際に、外乱光の影響を低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0051】
第一実施形態において、第一層7と原稿台3(突出部33)とが接触していたが、これに限定されない。例えば、右延伸部49を下方に延ばして、第一層7と原稿台3とが接触しないようにしてもよい。図6に示す例を第三実施形態という。図6に示すように、第三実施形態に係るスキャナ1は、第一実施形態に係るスキャナ1(図2参照)と比較して、原稿台3の突出部33と、開口21の突出部22とが形成されていない。そして、左延伸部48と右延伸部49とが、下方に長く延びており、それぞれの底面481,491の高さ位置が、原稿台3の対向面32の高さ位置と同一となっている。この場合、右延伸部49が、第一層7と原稿台3との間に位置し、第一層7と原稿台3とが直接接触しない。よって、右延伸部49によって、原稿台3の内部を伝搬する外乱光が第一層7に入射することがより確実に防止される。よって、キャリブレーションを行う際の外乱光の影響を低減することができ、キャリブレーションの精度が向上する。
【0052】
本実施形態において、右延伸部49が本発明の「第一遮光部」に相当する。なお、右延伸部49の底面491(検出部5側の面)が、原稿台3の対向面32の高さ位置より検出部5側(下側)にあってもよい。つまり、右延伸部49をさらに下方に延ばしてもよい。この場合でも、右延伸部49によって、原稿台3の内部を伝搬する外乱光が第一層7に入射することが防止され、キャリブレーションの精度が向上する。
【0053】
また、第一実施形態において、基準部材41の第二面45の高さ位置が、原稿接触面31の高さ位置と同一であったが、これに限定されない。例えば、基準部材41の第二面の高さ位置が、原稿接触面31の高さ位置と異なっていてもよい。図7に示す第四実施形態に係るスキャナ1では、第一実施形態に係るスキャナ1(図2参照)と比較して、基準部材41の遮光部42の厚みが小さい。このため、基準部材41の第二面45の高さ位置が、原稿台3の原稿接触面31の高さ位置より検出部5側(下側)となっている。この場合、製造時において、基準部材41や原稿台3の取り付け精度にバラツキが発生しても、基準部材41が原稿接触面31より上方に突出することがない。よって、例えば、図4に示す第一実施形態の場合と同様に、机91の上に配置された原稿90に、原稿接触面31を当接させることができる。よって、原稿90を正確に読み取ることができる。
【0054】
また、図8に示す第五実施形態に係るスキャナ1では、第一実施形態に係るスキャナ1(図2参照)と比較して、基準部材41の遮光部42の厚みが大きい。このため、基準部材41の第二面45の高さ位置が、原稿台3の原稿接触面31の高さ位置より検出部5側とは反対側(上側)に位置している。この場合、基準部材41が原稿接触面31より突出し、基準部材41と原稿接触面31とによって、段部80が形成される。このため、例えば、図8に示すように、原稿接触面31の上側に原稿90を配置して読み取りを行う場合に、段部80に原稿90を当接させることで、原稿接触面31に配置される原稿90の位置決めをすることができる。よって、ユーザは、容易に原稿90を原稿接触面31に配置することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0055】
なお、第四実施形態(図7参照)及び第五実施形態(図8参照)では、遮光部42の厚みを変更することで、第二面45の高さ位置を、原稿接触面31の高さ位置より検出部5側(下側)、又は検出部5側の反対側(上側)にしていたが、これに限定されない。例えば、原稿台3の材料を、現在の材料とは屈折率の異なる材料に変更し、原稿台3の高さ方向83の厚みを変更することで、第二面45の高さ位置が、原稿接触面31の高さ位置を原稿接触面31の高さ位置より検出部5側、又は検出部5側の反対側にしてもよい。
【0056】
また、第一実施形態では、第一層7が空気の層であったが、これに限定されない。例えば、原稿台3より小さい屈折率であれば、第一層7が、空気とは異なる部材の層であってもよい。例えば、図9に示す第六実施形態のように、第一層7に原稿台3とは異なる屈折率の部材を用いてもよい。図9では、第一層7は、空気より屈折率が大きく、原稿台3より屈折率が低い部材を用いている。なお、この場合、第一層7が空気の場合の焦点距離L1(図3参照)と比較して、式(1)に示すズレ量ΔL分焦点距離が延び、シート43の第一面44の位置が、第一層7が空気の場合(図2及び図3参照)と比べてやや上側に移動する。また、第一層7による焦点距離のズレ量ΔLは、原稿台3による焦点距離のズレ量ΔLよりも小さいので、第一面44の高さ位置は、原稿接触面31の高さ位置より検出部5側(下側)となっている。
【0057】
また、第一実施形態では、基準部材41は、遮光部42とシート43とを備え、シート43の第一面44が基準色で形成されていたが、これに限定されない。例えば、図10に示す第七実施形態のように、基準部材41を厚みのある板状部材で形成し、シート43を設けなくてもよい。そして、例えば、基準部材41全体を基準色の材料で構成したり、基準部材41に底面に基準色の塗料を塗布したりして、基準部材41の底面を基準色とすることで、キャリブレーションに使用される第一面44が形成されていてもよい。この場合、基準部材41が厚みを有するので、基準部材41の上側からの外部の光が基準部材41を介して第一面44及び第一層7に到達することが防止される。よって、キャリブレーションを精度よく行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 スキャナ
3 原稿台
4 板部
5 検出部
7 第一層
31 原稿接触面
32 対向面
41 基準部材
42 遮光部
43 シート
44 第一面
45 第二面
49 右延伸部
51 検出素子
82 副走査方向
83 高さ方向
90 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光の反射光を検出する検出素子を主走査方向に複数備え、前記主走査方向に直交する副走査方向に移動可能な検出部と、
前記副走査方向に移動する前記検出部に対向して設けられ、前記検出部に対向する面である対向面と、前記対向面の反対側の面であって読み取りの対象となる原稿に接触する面である原稿接触面とを有する透明板と、
前記副走査方向において前記透明板と重ならない位置に設けられ、前記主走査方向と前記副走査方向とに直交する方向における位置である高さ位置が、前記対向面と同一、又は、前記対向面より前記原稿接触面側であり、前記検出部と対向する面である第一面の色がキャリブレーション用の基準色を含む基準部材と、
前記検出部と前記基準部材との間の層であって、前記透明板より小さい屈折率で光を透過させる層である第一層と
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記副走査方向において前記基準部材と前記透明板との間に配置され、前記検出部に対向する面の前記高さ位置が、前記透明板の前記対向面の前記高さ位置と同一、又は、前記対向面の前記高さ位置より前記検出部側に位置する第一遮光部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第一層は、前記透明板より小さい屈折率を有する空気の層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記基準部材は、前記第一面に対して前記検出部とは反対側に前記第一面に対向する面である第二面を備え、前記第二面の前記高さ位置が、前記原稿接触面の前記高さ位置と同一、又は前記原稿接触面の前記高さ位置より前記検出部側に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第二面の前記高さ位置が、前記原稿接触面の前記高さ位置より前記検出部側に位置することを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記基準部材は、前記第一面に対して前記検出部とは反対側に前記第一面に対向する面である第二面を備え、前記第二面の前記高さ位置が、前記原稿接触面の前記高さ位置より前記検出部側とは反対側に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記基準部材は、
前記第一面を有するシートと、
前記シートに対して前記検出部とは反対側に設けられ、外部の光が前記シートに向けて透過不能に遮光する第二遮光部と
を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記基準部材は厚みを有する板部であり、厚み方向の面のうち、前記検出部側の面が前記第一面で構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−12891(P2013−12891A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144087(P2011−144087)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】