説明

画像読取装置

【課題】従来よりも部品点数が少なく、かつ組立工数が削減できる画像読取装置を提供する。
【解決手段】 結像レンズ60が取付板52を介して光学基台51上に載置されていて、取付板52には、結像レンズ60の光軸と平行に延びる3つの長穴52aが設けられ、光学基台51には、取付板52の各長穴52aに対応する位置に鍔付ネジ55が取り付けられ、各鍔付ネジ55の頭部55aが対応する長穴52aに挿入されて鍔付ネジ55の鍔部55bにより取付板52が支持されている。結像レンズ60の位置調整を、取付板52の各長穴52aに頭部55aが挿入された鍔付ネジ55のねじ込み量と、当該長穴52a内での鍔付ネジ55の頭部55aの相対的位置とを調整することにより行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿面からの反射光を、結像レンズなどの光学部品を介して固体撮像素子で受光し画像データを生成する画像読取装置に関し、特に、結像レンズなどの光学部品を取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ装置などに用いられる画像読取装置は、露光ランプからの光を原稿に照射し、その反射光を結像レンズを介してCCD(Charge Coupled Device)などの固体撮像素子の受光面で受光して光電変換することにより、原稿の画像データを生成する構成になっている。
このような画像読取装置では、原稿面からの反射光をCCDの受光面で結像させるため、原稿面からの結像レンズおよびCCDの距離が予め決められており、これらの取付時に厳密な位置調整が行われる。
【0003】
特に、結像レンズの位置調整では、結像レンズの光軸を原稿面からの反射光の光路に合わせるための高さ調整(以下、「あおり調整」という。)と、原稿面から結像レンズまでの光路長を調整する光軸方向の位置調整(以下、「倍率調整」という。)とが行われる(例えば、特許文献1,2)。
図6は、従来の画像読取装置における、結像レンズおよびCCDを有する画像読取ユニット90の一例を示す斜視図である。
【0004】
図6に示すように、結像レンズ91を保持するレンズホルダー92は、取付板93上に固着され、この取付板93と高さ調整板94を介して光学基台95上に載置されている。
高さ調整板94には3つの丸穴94aが形成され、光学基台95には、各丸穴94aに対応する位置に鍔付ネジ101が取り付けられている。各鍔付ネジ101の頭部が丸穴94aに挿入され、高さ調整板94の丸穴94aの下側の縁が鍔部101aに当接して下方から支持されるとともに、板バネ98により上方から押圧されることにより固定されている。
【0005】
取付板93には、光軸J方向に延びる4つの長穴93aが形成されており、各長穴93aに挿入されたワッシャー付きネジ102により高さ調整板94に取付けられている。
CCD96が実装された基板97は、断面がL型の取付部材99に保持される。取付部材99は光軸J方向に延びる長穴99aが形成されており、長穴99aに挿入されたワッシャー付きネジ103により取付板93に固定されている。
【0006】
このような取付構造において、結像レンズ91とCCD96との位置関係の調整は、ネジ103を弛め、取付部材99を長穴99aの範囲内で光軸J方向に移動させることにより行うことができる。また、結像レンズ91の高さ調整は、鍔付ネジ101のねじ込み量を調整して、高さ調整板94の光学基台95からの高さを変えることにより行うことができ、結像レンズ91の光軸方向の位置調整は、ネジ102を弛め、取付板93を長穴93aの範囲内で光軸J方向に移動させることにより行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−347904号公報
【特許文献2】特開2003−241052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の画像読取装置における結像レンズ91の取付構造では、あおり調整を行う手段と、倍率調整行う手段とが異なり、あおり調整用に高さ調整板94と鍔付ネジ101が設けられ、倍率調整用に取付板93とネジ102が設けられている。このため、部品点数が多くなり、その分、組立工数も増えて、コストアップに繋がるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであって、従来よりも部品点数が少なく、かつ組立工数が削減できる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像読取装置は、原稿面からの反射光を、1以上の光学部品を介して固体撮像素子の受光面で受光して画像データを生成するものであって、少なくとも1つの光学部品が取付板を介して載置される光学基台と、前記光学基台上に載置される光学部品の位置を調整する位置調整手段と、前記位置調整手段により調整された光学部品を光学基台上で固定する固定手段とを備え、前記取付板に、当該光学部品の光軸と平行に延びる3つ以上の長穴が、その全てが同一直線上にない状態で設けられ、前記光学基台の前記各長穴に対応する位置に鍔付ネジが取り付けられ、各鍔付ネジがその頭部側から対応する長穴に挿入されて、当該鍔付ネジの鍔部により前記取付板が支持され、前記位置調整手段が、前記3つ以上の長穴が設けられた取付板と、前記各鍔付ネジとからなり、各鰐付ネジのねじ込み量と、各長穴内での鍔付ネジの頭部の相対的位置とを調整することにより、前記光学部品の位置調整が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の画像読取装置によれば、光学部品の位置を調整する位置調整手段が、光軸と平行に延びる3つ以上の長穴が設けられた取付板と、頭部が長穴に挿入されて鍔部により取付板を支持する各鍔付ネジとからなり、光学部品の位置調整が、各鰐付ネジのねじ込み量と各長穴内での鍔付ネジの頭部の相対的位置とを調整することにより行われる構成となっている。つまり、各鰐付ネジのねじ込み量の調整により取付板の高さを変えて、光学部品の高さ調整を行うことができ、また、各長穴内での鍔付ネジの頭部の相対的位置の調整により、具体的には取付板を光軸方向に移動させることにより、光学部品の光軸方向の位置調整を行うことができる。
【0012】
これにより光学部品の高さ調整を行う手段と光軸方向の位置調整を行う手段とが、共通の一つの取付板で実現することができ、異なる部品で構成されていた従来の画像読取装置と比べて、部品点数を少なくでき、その分、組立工数を削減することができる。これにより装置の生産コストを低減することができる。
また、長穴の長手方向の長さの範囲で取付板を移動させても、光学部品が取着された状態における取付板の重心位置が、平面視において、常に各鍔付ネジのそれぞれの軸心を結んで得られる輪郭線の内側に来るように各長穴の形成位置が設定されているのが望ましい。
【0013】
さらに、固定手段が、光学基台との間に取付板を挟み込む挟持部材からなるのが望ましい。この挟持部材が、板状部材を折り曲げて形成された板ばねからなり、当該板ばねが、光学基台にネジにより取り付けられる基部と、取付板を光学基台側とは反対側から押圧する押圧部と、これら基部と押圧部とを連結する連結部とで構成されているのが望ましい。
ここでの取付板に、板ばねの連結部が嵌合する切欠部が形成され、かつ、板ばねの基部には、長穴と同じ方向に延びるネジ締め用の長穴が形成されており、位置調整手段による位置調整の際、取付板と板ばねとが一体移動するように構成されているのが望ましい。
【0014】
また板ばねが光軸に沿った方向に移動するのを案内する案内手段が設けられているのが望ましい。この案内手段は、板ばねの基部において、ネジ用の長穴とは異なる位置に形成された光軸方向に延びるピン用の長穴と、光学基台に立設されピン用の長穴に挿入されるピンとで構成されているのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図2】上記画像読取装置の有する画像読取ユニットの主要部の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の画像読取ユニットをN−N線で切断したときの部分断面を示す概略図である。
【図4】図2の画像読取ユニットの上面図である。
【図5】板バネの構成を説明するための図である。
【図6】従来の画像読取装置における結像レンズの取付構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像読取装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
<画像読取装置の全体構成>
図1は、本実施の形態に係る画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、画像読取装置1は、原稿押さえ板11と画像読取部12からなる。
原稿押さえ板11は、画像読取部12のプラテンガラス121上に載置された原稿を上方から押さえるためのものであり、画像読取部12上部の紙面奥側において、不図示のヒンジにより開閉自在に支持されている。
【0017】
画像読取部12は、上部の開口にプラテンガラス121が嵌め込まれた筐体122内に、光源ユニット40と、ミラーユニット43と、駆動モーターMと、結像レンズ60および固体撮像素子70などからなる画像読取ユニット50と、これらを制御する制御部30などを収納してなり、光源ユニット40とミラーユニット43を移動させて原稿を読み取る、いわゆるミラースキャン方式によるものである。
【0018】
光源ユニット40は、光源となるランプ41とミラー42を備え、ミラーユニット43は、一対の折り返しミラー44,45を備える。これら光源ユニット40およびミラーユニット43は、図示しない公知の移動機構と駆動モーターMにより矢印α方向に沿って移動自在に支持されている。
プラテンガラス121上に載置された原稿を読み取る場合には、ランプ41を点灯させて、当該原稿を照射しつつ光源ユニット40とミラーユニット43が駆動モーターMの駆動力により矢印α方向に移動する。原稿面からの反射光は、ミラー42、折り返しミラー44,45により光路変更され、結像レンズ60によって固体撮像素子70の受光面に受光される。原稿を読み取る際、ミラーユニット43が光源ユニット40と同方向にその移動速度の二分の一で移動するようになっており、これにより原稿面から結像レンズ60までの光路長が一定に保たれるようになっている。
【0019】
原稿からの反射光は、固体撮像素子70の受光面で受光電気信号に変換される。この電気信号は、画像読取ユニット50内に設けられた信号処理部71においてA/D変換されるとともに、シェーディング補正や濃度変換、エッジ強調などの公知の画像処理が加えられた後、画像データとして、制御部30内の画像メモリーに格納される。
制御部30は、CPU、画像メモリー、ROM、RAM、通信インターフェース等を備え、ランプ41の点灯制御、駆動モーターMの駆動制御、信号処理部71の画像データ処理制御などを行う。また、制御部30は、読み取った画像データをプリンターやパソコンなど外部機器への送信を行う。
<画像読取ユニットの構成>
次に、画像読取ユニット50の構成について図2および図3を参照しながら説明する。
【0020】
図2は、画像読取ユニット50の主要部の構成を示す斜視図であり、図3は、図2の画像読取ユニット50をN−N線で切断したときの部分断面を示す概略図である。
図2に示すように、画像読取ユニット50は、結像レンズ60をレンズホルダー61を介して取付板52に保持し、取付板52を光学基台51上で位置調整した後、板バネ53により固定されるようになっている。この結像レンズ60は、複数枚のレンズが光軸方向に積層されてなる。
【0021】
取付板52は、樹脂製または金属製の平板部材からなり、その上面の略中央に上記レンズホルダー61が不図示のネジまたは接着剤などで固定されている。なお、ここでは、レンズホルダー61を取付板52の所定の位置に、かつ結像レンズ60の向きが所定の向きになるように固定するため、例えば、取付板52に形成された凸部と、レンズホルダー61に形成され、取付板52の凸部に嵌め込まれる凹部とからなる位置固定手段(不図示)が設けられている。
【0022】
また、取付板52には、図4の平面図に示すように、結像レンズ60の光軸J方向(X軸方向)に延びる3個の長穴52aが設けられている。
このうち1個の長穴52aは、結像レンズ60の前方側(光の入射側)であって、光軸Jと重なる位置に設けられ、他の2個の長穴52aは、結像レンズ60より後方側(光の出射側)であって、光軸Jを間に挟んで対称の位置にある。
光学基台51の取付板52の各長穴52aに対応する位置には、長穴52aと同じ位置関係を有する3個のネジ穴が穿設されており、各ネジ穴に、それぞれ鍔付ネジ55が螺合されている。
【0023】
図3に示すように、鍔付ネジ55は、円筒形の頭部55aと、ネジ山が形成された脚部55cと、当該頭部55aと脚部55c間に形成された鍔部(段部)55bとからなり、その頭部55aが長穴52aに挿入され、鍔部55bが取付板52の長穴52の周縁部の下面に当接して下方から支持する、いわゆる3点支持構造となっている。3点により平面が決定されるので、これにより取付板52に、がたつきが生じることなく安定して支持できる。
【0024】
上記構成によれば、各鍔付ネジ55のねじ込み量を調整することにより、結像レンズ60の高さと傾きの調整(あおり調整)が可能となる。また、3個の長穴52aが、光軸J方向に延びて、各長穴52aに鍔付ネジ55の頭部55aが係合しているので、取付板52を光軸Jに沿って移動させることができ、倍率調整も容易に行える。
なお、本実施の形態では、さらに安定して取付板52が光軸Jに沿って移動できると共に、鍔付ネジ55をねじ込む(または弛める)ときに取付板52が傾くのを極力防止するため、傾き防止手段58(図4参照)が設けられている。
【0025】
当該傾き防止手段58は、取付板52の、上記3つの長穴52aとは異なる位置に設けられた2つの長穴52b(図4の平面図参照)と、光学基台51の各長穴52bに対応する位置に立設され、各長穴52bに係合する係合ピン581からなる。本実施の形態では、係合ピン581として、頭部が円筒状のネジを光学基台51に穿設されたネジ穴に螺合させてとしているが、もちろんこれに限定されない。
【0026】
2つの長穴52bの長手方向の長さは、長穴52aと略同じであり、光軸J方向に沿って縦に並べられている。傾き防止の観点より、2つの係合ピン581間の距離は、可能な範囲内で長くとるのが望ましい。2つのネジ581間の距離を長くとれば、円滑な移動のため、たとえ、ネジ581の直径と長穴52bの幅に微小な隙間を設けたとしも、取付板52の傾き量を可及的に小さくすることができるからである。
【0027】
図2に戻り、取付板52の光軸J方向と直交する方向における両側は、固定部材として、一対の板バネ53が配されており、結像レンズ60のあおり調整と倍率調整の終了後、板バネ53を、ネジ56により光学基台51に設けられたネジ穴に締め付けて、取付板52を押さえ込み、鍔付ネジ55の鍔部55bとの間で挟み込むようにして固定するようになっている。
【0028】
特に、取付板52の倍率調整後における光軸J方向の位置が振動によって変化しないように、本実施の形態においては、板バネ53を取付板52に嵌合させている。
すなわち、図5に示すように、板バネ53は、光学基台51に取り付けられる基部531、取付板52を押圧する押圧部533、基部531と押圧部533とを連結する連結部532で構成されており、連結部532は、取付板52の側部を切欠き形成された切欠部521に嵌め込まれている。基部531に形成されたネジ56を挿入する穴53aも光軸J方向に延びる長穴となっていて(図4参照)、ネジ56を弛めて取付板52を光軸J方向に移動させる際、切欠部521に嵌め込まれた状態の板バネ53を取付板52と一体移動させることができるので、いちいち板バネ53を取り外す必要がない。
【0029】
倍率調整後、ネジ56を締付けて板バネ53を固定することにより、取付板52が、上下方向だけでなく光軸J方向の移動も規制されるので、位置ずれするのを抑制することができる。
なお、板バネ53が取付板52と共に光軸J方向に移動し易いように、当該板バネ53自体を光軸J方向に沿って案内する案内手段59が設けられている。案内手段59は、板バネ53の基部531の上記長穴53aとは異なる位置に設けられた長穴53bと、光学基台51の長穴53bに対応する位置に立設され、長穴53bに挿入された2本の案内ピン511とで構成されている。
【0030】
長穴53bも、長穴53aと同様、光軸J方向に延びており、2本の案内ピン511は、光軸J方向に所定間隔をおいて並んで配置されている。これにより、板バネ53を、光軸J方向に並ぶ2本の案内ピン511に沿って移動させることができるので、板バネ53が光軸J方向に対して傾いて取付板52の移動を妨げることもなく、取付板52との一体移動がスムーズに行えるようになる。
【0031】
固体撮像素子70は、例えばCCDのラインセンサーからなり、その受光面が結像レンズ60と対向し、かつ、レンズの光軸J方向と直交するように基板72に実装されている。基板72の固体撮像素子70が実装された面とは反対側の面には、信号処理部71を構成する各種回路が実装されている。
基板72は、Y軸方向に延びる長方形状であり、そのY軸方向の両端部が、断面が略L字状のCCD取付部材54を介して取付板52に取付けられている(図3参照)。各CCD取付部材54の水平部分541には、光軸J方向に延びる長穴54aが形成されていて、各CCD取付部材54が、この長穴54aに挿入されたワッシャー付きネジ57により取付板52に取付けられている。ワッシャー付きネジ57を弛めることにより、各CCD取付部材54および基板72における光軸J方向の位置調整が可能となっている。
【0032】
結像レンズ60と固体撮像素子70との間には、複数のカバーからなり、原稿からの反射光の光路に外部の光が入らないように遮光するための遮光カバー群62が付設され、また、基板72にも外光が入射しないように固体撮像素子70の受光面を除いて基板72全体を覆う遮光ケース63が設けられている。なお、図2および図4において、内部の構成が理解しやすいように遮光ケース63は仮想線(2点鎖線)で示している。一方、図3においては、結像レンズ60と固体撮像素子70を示すため、遮光カバー群62および遮光ケース63が省略されている。
【0033】
これら遮光カバー群62および遮光ケース63は、遮光性を有する樹脂または金属材料で構成される。遮光カバー群62は、その外周に巻かれた帯状の金具64とネジ65により取付板52に取り付けられ、遮光ケース63はネジ66により光学基台51に取り付けられている。
光学基台51の材料は、金属でも樹脂でもよいが、内部の温度上昇により熱膨張して位置変化をできるだけ回避するため熱膨張率の小さい方が望ましく、この観点からは金属製の方がよい。また、光学基台51は、画像読取装置1の筺体もしくは本体フレーム(不図示)に直接固定されるか、もしくは筺体や本体フレームの一部をそのまま光学基台として利用するようにしてもよい。
【0034】
取付板52の材料も、光学基台51の材料と同様の理由により、温度上昇による熱膨張率の小さい方がよいので、より望ましいのは樹脂製よりも金属製である。
(結像レンズおよび固体撮像素子の配置位置の調整)
このような画像読取ユニット50では、固体撮像素子70の受光面に最適な結像をなすようにプラテンガラスの原稿載置面から、光源ユニット40のミラー42や、折り返しミラー44,45などを経由して結像レンズ60に至るまでの光学的距離、結像レンズ60と固体撮像素子70までの光学的距離が予め計算により決定されており、結像レンズ60と固体撮像素子70の取付位置の調整は次のようにして行われる。
【0035】
まず、固体撮像素子70の配置位置の調整は、固体撮像素子70の基板72を保持するCCD取付部材54の取付板52への取付位置の調整により行う。各CCD取付部材54は、ネジ57を弛めれば、長穴54aの範囲内で光軸J方向に移動可能になり、取付板52に対する取付位置の微調整が行えるので(図3の矢印A)、結像レンズ60の主点から、予め決めた距離の位置に受光面がくるように固体撮像素子70を配置することができる。ここでは、取付板52に各取付部材54を取り付けた状態において、結像レンズ60の光軸Jが固体撮像素子70の受光面の中心を通るように、取付板52のネジ57を螺合するネジ穴の位置が設定されている。
【0036】
つぎに、結像レンズ60の配置位置の調整は、結像レンズ60が保持された取付板52の光学基台51への取付位置の調整により行う。この際、固体撮像素子70は、CCD取付部材54を介して取付板52に取着されているため、既に調整済みの結像レンズ60と固体撮像素子70との位置関係は維持される。
ここでは、まず結像レンズ60の光軸Jを原稿面からの反射光の光路に合わせるためのあおり調整を行う。具体的には、取付板52を支持する鍔付ネジ55のねじ込み量を調整することにより、取付板52の高さを変えることができるので(図3の矢印B)、もって結像レンズ60の高さを調整することができる。この場合、鍔付ネジ55を、その頭部55aを取付板52の各長穴52aに挿入させたまま、ドライバーによりねじ込む(または弛める)ことができるので、例えば、プラテンガラス121上にサンプル原稿を載置し、固体撮像素子70で読み取った画像データを外部モニターに出力するようにしておけば、当該モニター画面上の読取画像の位置を確認しながら各鍔付ネジのねじ込み量を調整することにより結像レンズ60のあおり調整を行うことができる。
【0037】
なお、このあおり調整の際、板バネ53により取付板52を光学基台51側に押し付けるように仮固定しており、これにより取付板52が鍔付ネジ55の鍔部55bに圧接されて遊びがない状態で調整できるので、調整精度が向上する。
このあおり調整の後、結像レンズ60の光軸J方向における倍率調整を行う。ネジ56を弛めて板バネ53による取付板52への圧接力を小さくして、固定を解除し、取付板52が長穴52aの範囲内で光軸J方向に移動可能な状態にする。これにより取付板52の光軸J方向における位置を変更して(図3の矢印C)、原稿面から予め決めた距離の位置に結像レンズ60がくるように配置することができる。ここで、取付板52を長穴52aの範囲内で光軸J方向に移動させて配置位置を変えるということは、長穴52a内での鍔付ネジ55の頭部55aの相対的位置を調整することと同義である。
【0038】
より精度の高い倍率調整をするため、この場合にも、プラテンガラス121上にサンプル原稿を載置し、読み取った画像データを外部モニターで確認しながら結像レンズ60の配置位置を調整するのが望ましい。読み取った画像データを都度確認することにより、結像レンズ60および固体撮像素子70の配置位置の調整精度を高めることができるからである。また、画像データを確認して必要であれば、固体撮像素子70の配置位置を再調整するのが良い。
【0039】
こうして結像レンズ60の配置位置を調整した後、ネジ56を締め付け、板バネ53により取付板52を固定する。
このように、本実施の形態においては、結像レンズ60のあおり調整を行う調整手段と、倍率調整を行う調整手段とが、長穴52aが設けられた取付板52と鍔付ネジ55だけで構成されているので、取付板1枚の構成で、双方の調整を容易に行うことができ、図6に示した従来の構成に比べて、材料コストや組立てコストを確実に低減することができると共に、画像読取ユニットの小型化、ひいては画像読取装置の小型化にも資する。
【0040】
(その他の構成)
本実施の形態では、図4に示すように、結像レンズ60などの各部品が取付けられた状態における取付板52の重心位置Gが、取付板52を支持する3つの鍔付ネジ55のそれぞれの回転中心(軸心)を結んで得られる三角形の輪郭線Lの内側になるように構成されている。
【0041】
取付板52には、結像レンズ60以外に、レンズホルダー61、第1の遮光カバー群62、固体撮像素子70、信号処理部71、基板72、取付部材54などが取付けられており、重心位置Gは、これらの部品の重量も加味して求められたものである。こうして求められた取付板52の重心位置Gが輪郭線Lの内側になるように、各鍔付ネジ55および各長穴52aの配置位置が設定されているので、取付板52を各鍔付ネジ55の鍔部55b上に載せたとき、取付板52が傾くようなことがなく、取付や配置位置の調整がし易い構成となっている。仮に、重心位置Gが輪郭線Lの外側になる場合には、取付板52を各鍔付ネジ55の鍔部55b上に載せたときに取付板52が傾いてしまい、配置位置の調整や組立てがし難くなって精度の低下を招くおそれある。また、傾いた取付板52が鍔部55b上から抜け落ちてレンズなどを傷つけてしまうおそれもある。このようなことから、重心位置Gは輪郭線Lの内側にあるのが望ましい。
[変形例]
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(1)上記実施の形態では、取付板52に、結像レンズの光軸方向に延び、鍔付ネジ55の頭部55aが挿入される長穴52aが3つ形成された構成を示したが、これに限定するものではなく、当該長穴が4つ、またはそれ以上形成された構成としても構わない。当該複数の長穴の少なくとも1つが同一直線上にない状態で設けられていれば、他の2箇所と合わせて3点支持が可能となり、取付板の高さと傾きを安定的に保持することが可能となるからである。
(2)上記実施の形態では、取付板52が光軸J方向に対して傾くのを防止するため、専用の傾き防止手段58を設けた構成を示したが、専用の傾き防止手段を設けなくても構わない。例えば、鍔付ネジ55の頭部55aの直径と長穴52aの幅寸法との差が小さければ小さいほど、取付板52が光軸J方向に対して傾くのを抑制することができるので、鍔付ネジ55の頭部55aと長穴52aとを傾き防止手段として機能させることができる。
(3)上記実施の形態では、光学部品である結像レンズ60の位置を調整する構成について説明したが、これに限定するものではない。例えば、光源ユニット40のミラー42や、ミラーユニット43の折り返しミラー44,45においても、本発明の構成を適用することができる。
(4)上記実施の形態では、取付板52の側方両側に、取付板52を固定するための板バネ53が設けられた構成を示したが、取付板52を固定する手段は、板バネでなくても構わない。取付板を固定する固定手段は、取付板が傾いたり、鍔付ネジの鍔部から抜け落ちないように構成できればよく、例えば、固定金具などを用いることもできる。画像読取装置の仕様に応じて適宜選択することができる。
(5)上記実施の形態では、固体撮像素子70が実装された基板72に、A/D変換やシェーディング補正などを行う信号処理部71を設けた構成を示したが、これに限定するものではなく、例えば、A/D変換やシェーディング補正などの処理を制御部30が行う構成としても構わない。
(6)上記実施の形態では、傾き防止手段58に、光学基台51に取り付けられたネジ581を用いた構成を示したが、これに限定するものではなく、例えば、光学基台51の各長穴52bに対応する位置に立設させたピンを用いることもできる。
【0042】
逆に、案内手段59においては、ピン511に代えてネジを用いることもできる。
また、上記実施の形態及び変形例の内容は、可能な限り組み合わせても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、結像レンズなどの光学部品を取り付ける技術として有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 画像読取装置
40 光源ユニット
41 ランプ
42 ミラー
43 ミラーユニット
44,45 ミラー
50 画像読取ユニット
51 光学基台
52 取付板
52a 長穴(取付板)
52b 長穴(取付板)
53 板バネ
53a 長穴(板バネ)
53b 長穴(板バネ)
54 取付部材
54a 長穴
55 鍔付ネジ
55a 頭部
55b 鍔部
58 傾き防止手段
59 案内手段
60 結像レンズ
61 レンズホルダー
70 固体撮像素子
71 信号処理部
72 基板
511 案内ピン
521 切欠部
531 基部
532 連結部
533 押圧部
G 重心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿面からの反射光を、1以上の光学部品を介して固体撮像素子の受光面で受光して画像データを生成する画像読取装置であって、
少なくとも1つの光学部品が取付板を介して載置される光学基台と、
前記光学基台上に載置される光学部品の位置を調整する位置調整手段と、
前記位置調整手段により調整された光学部品を光学基台上で固定する固定手段と
を備え、
前記取付板に、当該光学部品の光軸と平行に延びる3つ以上の長穴が、その全てが同一直線上にない状態で設けられ、
前記光学基台の前記各長穴に対応する位置に鍔付ネジが取り付けられ、各鍔付ネジがその頭部側から対応する長穴に挿入されて、当該鍔付ネジの鍔部により前記取付板が支持され、
前記位置調整手段が、前記3つ以上の長穴が設けられた取付板と、前記各鍔付ネジとからなり、各鰐付ネジのねじ込み量と、各長穴内での鍔付ネジの頭部の相対的位置とを調整することにより、前記光学部品の位置調整が行われる
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記長穴の長手方向の長さの範囲で前記取付板を移動させても、前記光学部品が取着された状態における前記取付板の重心位置が、平面視において、常に前記各鍔付ネジのそれぞれの軸心を結んで得られる輪郭線の内側に来るように前記各長穴の形成位置が設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記固定手段が、前記光学基台との間に前記取付板を挟み込む挟持部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記挟持部材が、板状部材を折り曲げて形成された板ばねからなり、
当該板ばねが、前記光学基台にネジにより取り付けられる基部と、前記取付板を光学基台側とは反対側から押圧する押圧部と、これら基部と押圧部とを連結する連結部とで構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記取付板に、前記板ばねの連結部が嵌合する切欠部が形成され、かつ、前記板ばねの基部には、前記長穴と同じ方向に延びるネジ締め用の長穴が形成されており、
前記位置調整手段による位置調整の際、前記取付板と板ばねとが一体移動するように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記板ばねが前記光軸に沿った方向に移動するのを案内する案内手段が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記案内手段は、前記板ばねの基部において、前記ネジ用の長穴とは異なる位置に形成された前記光軸方向に延びるピン用の長穴と、前記光学基台に立設され前記ピン用の長穴に挿入されるピンとで構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−70219(P2013−70219A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207132(P2011−207132)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】