画質検査方法および装置
【課題】検査者の慣れの必要なしにブロンジングを容易に検査することのできる画質検査方法および装置を提供する。
【解決手段】印刷が施された被検査印刷媒体(1)を少なくとも一部に入射光を正反射する部材(2)が設けられた保持部材(2)に重ねて配置し、正反射する部材(2)への光源の写り込みの位置により被検査印刷媒体(1)の検査対象領域を特定し、光源(3)からの光の入射に対して正反射となる方向から検査対象領域を検査する。
【解決手段】印刷が施された被検査印刷媒体(1)を少なくとも一部に入射光を正反射する部材(2)が設けられた保持部材(2)に重ねて配置し、正反射する部材(2)への光源の写り込みの位置により被検査印刷媒体(1)の検査対象領域を特定し、光源(3)からの光の入射に対して正反射となる方向から検査対象領域を検査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷された用紙を見ていると、光の加減により、色が異様に見えることがある。これは、ブロンジング効果あるいはフロップ性として知られている現象(以下、「ブロンジング」という)によるものであり、ある種の顔料インクを用いて光沢性のある用紙に印刷した場合に生じることが知られている(例えば非特許文献1参照)。ブロンジングは、インクが特定の波長の光だけを選択的に反射することによって生じるもので、光源からの光の入射に対して正反射となる方向、すなわち、もし用紙の面が反射面であれば入射光が全反射する方向で見られる現象である。ブロンジングが生じる条件は、インクの材料や性質、インクの組み合わせなど、多くの要因が関係する。このため、ブロンジングが生じるかどうかは、実際に印刷してみないと判らないのが現状である。
【非特許文献1】新編色彩科学ハンドブック、第2版、日本色彩学会編、東京大学出版会、第18章光沢、第713−732頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブロンジングは、色空間として知られるL*a*b*表色系では表すことができず、実際に印刷したもので検査する必要がある。すなわち、印刷された被検査印刷媒体について、正反射の状況(ブロンジングが生じる可能性のある状況)と、正反射ではない拡散状況とで、乖離の程度を検査する。
【0004】
この検査は、人間が目視により行っている。すなわち、検査者が被検査印刷媒体を種々の角度で観察しながら、画質の良否判定を行っている。しかし、この方法では、検査者に慣れを必要とし、検査者間で検査のばらつきが生じたり、検査者と他者との間で状況がうまく伝わらないことがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決し、検査者の慣れの必要なしにブロンジングを容易に検査することができる画質検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画質検査方法は、印刷が施された被検査印刷媒体を少なくとも一部に入射光を正反射する部材が設けられた保持部材に重ねて配置し、正反射する部材への光源の写り込みの位置により被検査印刷媒体の検査対象領域を特定し、光源からの光の入射に対して正反射となる方向から検査対象領域を検査することを特徴とする。
【0007】
光源からの光に対して保持部材および被検査印刷媒体の角度を変化させて、被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることができる。また、これとは別に、光源からの光に対して保持部材を固定し、正反射する部材への光源の写り込みの位置に対して被検査印刷媒体を移動させることで、被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることもできる。光源として1方向に長いものを用い、この長い光源の長さ方向を正反射する部材に写し込むようにすることが望ましい。
【0008】
本発明の画質検査装置は、印刷が施された被検査印刷媒体が重ねて配置される保持部材と、光源とを有し、保持部材には、少なくとも一部に、光源からの入射光を正反射して被検査印刷媒体の印刷画質を検査するための指標とする反射部材が設けられたことを特徴とする。
【0009】
光源は1つの方向に長い形状を有し、保持部材は、光源の長さ方向にほぼ平行な軸を中心にして傾斜角を可変に調整可能である構成とすることができる。また、これとは別に、光源は1つの方向に長い形状を有し、保持部材には、反射する部材への光源の写り込み位置を指定するマーカーが設けられた構成とすることができる。保持部材および光源を、5方向に閉じられ1方向の少なくとも一部が開かれたブース内に配置することもできる。
【発明の効果】
【0010】
光源の写り込み位置により被検査印刷媒体の検査対象領域を確認することで、検査者に慣れを必要とせず、また、検査者間で検査のばらつきが生じることなく、ブロンジングを容易に検査できる。また、検査方法が統一されるので、検査者と他者との間で状況がうまく伝わらないような状況を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
[構成]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画質検査装置10の構成例を示す図である。この画質検査装置10は、印刷が施された被検査印刷媒体1が重ねて配置される保持部材としての反射台2と、光源3とを有する。反射台2は、光源3からの入射光を正反射して被検査印刷媒体1の印刷画質を検査するための指標とする反射部材により構成される。光源3は1つの方向(図1の紙面に対して鉛直方向)に長い形状を有し、反射台2は、光源3の長さ方向にほぼ平行な回転軸4を中心にして、傾斜角を可変に調整可能である。
【0013】
反射台2を構成する反射部材としては、入射光を全反射するものだけでなく、入射光の一部だけを全反射するものを用いることができる。そのような反射部材としては、例えば、鏡、金属板、ガラス板、あるいはアクリル板などがある。この実施の形態では反射台2の全体が反射部材により構成されるものとしているが、被検査印刷媒体1が配置される領域の両側など、一部だけを反射部材により構成してもよい。また、ここでは被検査印刷媒体1が反射台2に載せられるものとして説明するが、被検査印刷媒体1の上(光源3側)に、アクリル板などの透明でかつ光源3からの入射光の一部を正反射する反射部材を配置する構成とすることもできる。光源3としては、例えば棒状の蛍光灯を用いる。
【0014】
[検査方法]
図2は、図1に示す画質検査装置10を検査者の側から見た要部正面図である。この図2と先の図1とを参照して、画質の検査方法を以下に説明する。光源3からの光は被検査印刷媒体1の全体を照らし、被検査印刷媒体1の法線に対する光源3の角度(図1に示す照射角θi)と検査者の目5の角度(図1に示す反射角θr)が異なる被検査印刷媒体1上の領域では、入射光が拡散反射して検査者の目5に入ってくる。このとき、検査者の目5には、所定の印刷色が見える。一方、照射角θiと反射角θrが等しい被検査印刷媒体1上の領域では、ブロンジングが生じる可能性がある。検査者の目5にとって照射角θiと反射角θrが等しい領域は、反射台2への光源3の写り込み6により確認できる。ここで、光源3の写り込み6とは、検査者の目5には光源3があたかも反射台2の上にあるように写っている状態を示す。そこで、検査者は、反射台2上で写り込み6が生じている場所の間の被検査印刷媒体1の検査対象領域7を目視し、その周囲との色の変化を調べる。これにより、ブロンジングを検査し、画質の良否を判定することができる。検査対象領域7は、図2では2本の一点鎖線で囲まれた領域であり、被検査印刷媒体1が反射台2に置かれていなければ光源3の写り込み6が生じるであろう領域となる。
【0015】
図3は、図1に示す画質検査装置10を用いた画質検査方法のフローチャートである。この方法では、まず、検査者は、被検査印刷媒体1を反射台2に重ねて配置する(ステップS1)。続いて、検査者は、被検査印刷媒体1上の検査したい領域が正反射位置となるように、反射台2の傾斜を調整する(ステップS2)。反射台2の傾斜を調整することで、照射角θiと反射角θrが等しくなる条件が変化し、正反射位置が移動する。検査者は、この正反射位置を、反射台2上の光源3の写り込み6で確認する。そして、検査者は、光源3からの光の入射に対して正反射となる方向、すなわち反射角θrの方向から、正反射位置における被検査印刷媒体1の印刷の色を、目視により観察する(ステップS3)。そして、全領域の検査が終了するまで、ステップS2、S3を繰り返す(ステップS4)。
【0016】
[効果]
以上説明した実施の形態によれば、反射台2への光源3の写り込み6の存在により、被検査印刷媒体1上の検査領域を安定して確認することができ、検査者は、技能や慣れに左右されることなく、安定した観察評価を得ることができる。
【0017】
[第2の実施の形態]
[構成]
図4は本発明の第2の実施の形態に係る画質検査装置20の構成例を示す図である。この画質検査装置20は、印刷が施された被検査印刷媒体11が重ねて配置される保持部材として反射板12と、光源3とを有する。反射板12は、光源13からの入射光を正反射して被検査印刷媒体11の印刷画質を検査するための指標とする反射部材により構成される。光源13は1つの方向に長い形状を有し、反射板12には、光源13の写り込み位置を指定するマーカー14が設けられる。反射板12および光源13は、検査者が観察する方向を除く5方向が非開口状態となるブース15内に配置される。
【0018】
この実施の形態において、反射板12を構成する反射部材としては、入射光を全反射するものだけでなく、入射光の一部だけを全反射するものを用いることができる。また、反射板12は、全体が反射部材により構成されてもよく、マーカー14の周囲の領域など、一部だけを反射部材により構成してもよい。ブース15が反射板12を兼ねる構造とすることもできる。また、ここでは、被検査印刷媒体11が反射板12に載せられるものとして説明するが、被検査印刷媒体11の上に、アクリル板などの透明でかつ光源13からの入射光の一部を正反射する反射部材を配置する構成とすることもできる。光源13としては、例えば棒状の蛍光灯を用いる。
【0019】
[検査方法]
図5および図6は、図4に示す画質検査装置20の側面図および平面図である。これらの図を参照して、図4に示す画質検査装置20による画質の検査方法を説明する。図5に示すように、光源13からの光は、被検査印刷媒体11の全体を照らし、被検査印刷媒体11の法線に対する光源13の角度(照射角θi)と検査者の目の角度(出射角θr)が異なる被検査印刷媒体11上の領域では、入射光が拡散反射して検査者の目5に入ってくる。このとき、検査者には、所定の印刷色が見える。一方、照射角θiと反射角θrが等しい被検査印刷媒体11上の領域では、ブロンジングが生じる可能性がある。検査者の目5にとって照射角θiと反射角θrが等しい領域は、図6に示すように、反射板12への光源13の写り込み16により確認できる。そこで、検査者は、マーカー14の示す位置で写り込み16が生じるように自分の位置を調整して、被検査印刷媒体11を観察する。観察は、検査者が反射板12に対する自分の位置を固定し、写り込み16の間の検査対象領域17(図6において一点鎖線で囲まれる部分)を目視して、色の変化を調べる。これにより、ブロンジングを検査し、画質の良否を判定することができる。検査対象領域17を移動するには、被検査印刷媒体11を検査者に対して前後に移動させる。なお、図6では検査者の目5を簡略化して1つとしたが、実際は、検査者は両目で検査をする。
【0020】
図7は、図4から図6に示す画質検査装置20を用いた画質検査方法のフローチャートである。この方法では、まず、検査者は、被検査印刷媒体11を反射板12の上に置く(ステップS11)。続いて、検査者は、マーカー14の示す位置で光源13の写り込み16が生じるように自身の位置を調整し、被検査印刷媒体11上の検査したい領域をマーカー14(および写り込み16)の位置に合わせる(ステップS12)。そして、その位置における被検査印刷媒体11の色を目視により確認する(ステップS13)。全領域の検査が終了する(ステップS14でY)まで、被検査印刷媒体11を移動させて(ステップS15)、ステップS12、S13を繰り返す。
【0021】
[効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、観察照明の幾何学条件、すなわち光源13から被検査印刷媒体11への光の照射角θiおよび被検査印刷媒体11からの反射光の検査者の目5への出射角θrが固定され、常に同じ条件で検査を行うことができる。また、ブース15を用いることで、外部の影響を受けずに検査を行うことができる。
【0022】
[第2の実施の形態の変形例]
図8は図4から図7を参照して説明した第2の実施の形態に係る画質検査装置20の変形例である画質検査装置21を示す図であり、図5に示す側面図に相当する図である。図4から図7を参照して説明した構成では、検査者の方向を除く5方向をブース15で区切るものとしていたが、この変形例では、検査者の方向についても区切り、検査者は覗き窓17から被検査印刷媒体11を観察する。この構成により、検査者の観察位置をさらに限定することができ、検査条件の安定性をさらに高めることができる。
【0023】
また、図8に示す画質検査装置21は、ブース15の検査者側に、上方向に開けることのできる扉18を有し、この扉18を開けることで、ブース15への被検査印刷媒体11の出し入れ、およびブース15内での被検査印刷媒体11の移動を行うことができる。ここでは上方向に開けることのできる扉18を示したが、開ける方向は横方向でも下方向でもよく、上、横あるいは下にずらす構造でもよい。
【0024】
[その他の実施の形態]
以上の実施の形態において、光源3、13として棒状の蛍光灯を用いるものとして説明した。これは、エンドユーザが印刷媒体を見ることを想定した場合、点光源を用いることはあまりなく、一般的には蛍光灯の照明が用いられると考えられるからである。したがって、光源3、13として、1本の蛍光灯ではなく複数本の蛍光灯を平行に配置して用いてもよく、また、複数本の蛍光灯が内部に設けられたような平面的な照明を用いてもよい。
【0025】
以上、本発明の実施の形態に係る画質検査装置について説明したが、本発明は要旨を変更しない限り種々変更実施できる。例えば、反射台2あるいは反射板12は平板状であることが望ましいが、光源3あるいは13の長さ方向と平行に凹または凸となる湾曲した形状であってもよい。また、目視による観察ではなく、スチル・カメラあるいはビデオ・カメラを用いて、被検査印刷媒体1または11を撮影することもできる。その場合でも、撮影された画像中の光源3、13の写り込みの位置から、検査対象場所を知ることができ、その検査結果を得ることができる。第1の実施の形態に係る画質検査装置10をブース15内に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画質検査装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示す画質検査装置による画質の検査方法を説明する図である。
【図3】図1に示す画質検査装置を用いた画質検査方法のフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る画質検査装置の構成例を示す図である。
【図5】図4に示す画質検査装置の側面図である。
【図6】図4に示す画質検査装置の平面図である。
【図7】図4から図6に示す画質検査装置を用いた画質検査方法のフローチャートである。
【図8】図4から図7を参照して説明した第2の実施の形態に係る画質検査装置の変形例を示す図であり、図5に示す側面図に相当する図である。
【符号の説明】
【0027】
10、20、21 画質検査装置、1、11 被検査印刷媒体、2 反射台(保持部材)、3、13 光源、4 回転軸 5 検査者の目、6、16 光源の写り込み、7、17 検査対象領域、12 反射板(保持部材)、14 マーカー、15 ブース
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷された用紙を見ていると、光の加減により、色が異様に見えることがある。これは、ブロンジング効果あるいはフロップ性として知られている現象(以下、「ブロンジング」という)によるものであり、ある種の顔料インクを用いて光沢性のある用紙に印刷した場合に生じることが知られている(例えば非特許文献1参照)。ブロンジングは、インクが特定の波長の光だけを選択的に反射することによって生じるもので、光源からの光の入射に対して正反射となる方向、すなわち、もし用紙の面が反射面であれば入射光が全反射する方向で見られる現象である。ブロンジングが生じる条件は、インクの材料や性質、インクの組み合わせなど、多くの要因が関係する。このため、ブロンジングが生じるかどうかは、実際に印刷してみないと判らないのが現状である。
【非特許文献1】新編色彩科学ハンドブック、第2版、日本色彩学会編、東京大学出版会、第18章光沢、第713−732頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブロンジングは、色空間として知られるL*a*b*表色系では表すことができず、実際に印刷したもので検査する必要がある。すなわち、印刷された被検査印刷媒体について、正反射の状況(ブロンジングが生じる可能性のある状況)と、正反射ではない拡散状況とで、乖離の程度を検査する。
【0004】
この検査は、人間が目視により行っている。すなわち、検査者が被検査印刷媒体を種々の角度で観察しながら、画質の良否判定を行っている。しかし、この方法では、検査者に慣れを必要とし、検査者間で検査のばらつきが生じたり、検査者と他者との間で状況がうまく伝わらないことがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決し、検査者の慣れの必要なしにブロンジングを容易に検査することができる画質検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画質検査方法は、印刷が施された被検査印刷媒体を少なくとも一部に入射光を正反射する部材が設けられた保持部材に重ねて配置し、正反射する部材への光源の写り込みの位置により被検査印刷媒体の検査対象領域を特定し、光源からの光の入射に対して正反射となる方向から検査対象領域を検査することを特徴とする。
【0007】
光源からの光に対して保持部材および被検査印刷媒体の角度を変化させて、被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることができる。また、これとは別に、光源からの光に対して保持部材を固定し、正反射する部材への光源の写り込みの位置に対して被検査印刷媒体を移動させることで、被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることもできる。光源として1方向に長いものを用い、この長い光源の長さ方向を正反射する部材に写し込むようにすることが望ましい。
【0008】
本発明の画質検査装置は、印刷が施された被検査印刷媒体が重ねて配置される保持部材と、光源とを有し、保持部材には、少なくとも一部に、光源からの入射光を正反射して被検査印刷媒体の印刷画質を検査するための指標とする反射部材が設けられたことを特徴とする。
【0009】
光源は1つの方向に長い形状を有し、保持部材は、光源の長さ方向にほぼ平行な軸を中心にして傾斜角を可変に調整可能である構成とすることができる。また、これとは別に、光源は1つの方向に長い形状を有し、保持部材には、反射する部材への光源の写り込み位置を指定するマーカーが設けられた構成とすることができる。保持部材および光源を、5方向に閉じられ1方向の少なくとも一部が開かれたブース内に配置することもできる。
【発明の効果】
【0010】
光源の写り込み位置により被検査印刷媒体の検査対象領域を確認することで、検査者に慣れを必要とせず、また、検査者間で検査のばらつきが生じることなく、ブロンジングを容易に検査できる。また、検査方法が統一されるので、検査者と他者との間で状況がうまく伝わらないような状況を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
[構成]
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画質検査装置10の構成例を示す図である。この画質検査装置10は、印刷が施された被検査印刷媒体1が重ねて配置される保持部材としての反射台2と、光源3とを有する。反射台2は、光源3からの入射光を正反射して被検査印刷媒体1の印刷画質を検査するための指標とする反射部材により構成される。光源3は1つの方向(図1の紙面に対して鉛直方向)に長い形状を有し、反射台2は、光源3の長さ方向にほぼ平行な回転軸4を中心にして、傾斜角を可変に調整可能である。
【0013】
反射台2を構成する反射部材としては、入射光を全反射するものだけでなく、入射光の一部だけを全反射するものを用いることができる。そのような反射部材としては、例えば、鏡、金属板、ガラス板、あるいはアクリル板などがある。この実施の形態では反射台2の全体が反射部材により構成されるものとしているが、被検査印刷媒体1が配置される領域の両側など、一部だけを反射部材により構成してもよい。また、ここでは被検査印刷媒体1が反射台2に載せられるものとして説明するが、被検査印刷媒体1の上(光源3側)に、アクリル板などの透明でかつ光源3からの入射光の一部を正反射する反射部材を配置する構成とすることもできる。光源3としては、例えば棒状の蛍光灯を用いる。
【0014】
[検査方法]
図2は、図1に示す画質検査装置10を検査者の側から見た要部正面図である。この図2と先の図1とを参照して、画質の検査方法を以下に説明する。光源3からの光は被検査印刷媒体1の全体を照らし、被検査印刷媒体1の法線に対する光源3の角度(図1に示す照射角θi)と検査者の目5の角度(図1に示す反射角θr)が異なる被検査印刷媒体1上の領域では、入射光が拡散反射して検査者の目5に入ってくる。このとき、検査者の目5には、所定の印刷色が見える。一方、照射角θiと反射角θrが等しい被検査印刷媒体1上の領域では、ブロンジングが生じる可能性がある。検査者の目5にとって照射角θiと反射角θrが等しい領域は、反射台2への光源3の写り込み6により確認できる。ここで、光源3の写り込み6とは、検査者の目5には光源3があたかも反射台2の上にあるように写っている状態を示す。そこで、検査者は、反射台2上で写り込み6が生じている場所の間の被検査印刷媒体1の検査対象領域7を目視し、その周囲との色の変化を調べる。これにより、ブロンジングを検査し、画質の良否を判定することができる。検査対象領域7は、図2では2本の一点鎖線で囲まれた領域であり、被検査印刷媒体1が反射台2に置かれていなければ光源3の写り込み6が生じるであろう領域となる。
【0015】
図3は、図1に示す画質検査装置10を用いた画質検査方法のフローチャートである。この方法では、まず、検査者は、被検査印刷媒体1を反射台2に重ねて配置する(ステップS1)。続いて、検査者は、被検査印刷媒体1上の検査したい領域が正反射位置となるように、反射台2の傾斜を調整する(ステップS2)。反射台2の傾斜を調整することで、照射角θiと反射角θrが等しくなる条件が変化し、正反射位置が移動する。検査者は、この正反射位置を、反射台2上の光源3の写り込み6で確認する。そして、検査者は、光源3からの光の入射に対して正反射となる方向、すなわち反射角θrの方向から、正反射位置における被検査印刷媒体1の印刷の色を、目視により観察する(ステップS3)。そして、全領域の検査が終了するまで、ステップS2、S3を繰り返す(ステップS4)。
【0016】
[効果]
以上説明した実施の形態によれば、反射台2への光源3の写り込み6の存在により、被検査印刷媒体1上の検査領域を安定して確認することができ、検査者は、技能や慣れに左右されることなく、安定した観察評価を得ることができる。
【0017】
[第2の実施の形態]
[構成]
図4は本発明の第2の実施の形態に係る画質検査装置20の構成例を示す図である。この画質検査装置20は、印刷が施された被検査印刷媒体11が重ねて配置される保持部材として反射板12と、光源3とを有する。反射板12は、光源13からの入射光を正反射して被検査印刷媒体11の印刷画質を検査するための指標とする反射部材により構成される。光源13は1つの方向に長い形状を有し、反射板12には、光源13の写り込み位置を指定するマーカー14が設けられる。反射板12および光源13は、検査者が観察する方向を除く5方向が非開口状態となるブース15内に配置される。
【0018】
この実施の形態において、反射板12を構成する反射部材としては、入射光を全反射するものだけでなく、入射光の一部だけを全反射するものを用いることができる。また、反射板12は、全体が反射部材により構成されてもよく、マーカー14の周囲の領域など、一部だけを反射部材により構成してもよい。ブース15が反射板12を兼ねる構造とすることもできる。また、ここでは、被検査印刷媒体11が反射板12に載せられるものとして説明するが、被検査印刷媒体11の上に、アクリル板などの透明でかつ光源13からの入射光の一部を正反射する反射部材を配置する構成とすることもできる。光源13としては、例えば棒状の蛍光灯を用いる。
【0019】
[検査方法]
図5および図6は、図4に示す画質検査装置20の側面図および平面図である。これらの図を参照して、図4に示す画質検査装置20による画質の検査方法を説明する。図5に示すように、光源13からの光は、被検査印刷媒体11の全体を照らし、被検査印刷媒体11の法線に対する光源13の角度(照射角θi)と検査者の目の角度(出射角θr)が異なる被検査印刷媒体11上の領域では、入射光が拡散反射して検査者の目5に入ってくる。このとき、検査者には、所定の印刷色が見える。一方、照射角θiと反射角θrが等しい被検査印刷媒体11上の領域では、ブロンジングが生じる可能性がある。検査者の目5にとって照射角θiと反射角θrが等しい領域は、図6に示すように、反射板12への光源13の写り込み16により確認できる。そこで、検査者は、マーカー14の示す位置で写り込み16が生じるように自分の位置を調整して、被検査印刷媒体11を観察する。観察は、検査者が反射板12に対する自分の位置を固定し、写り込み16の間の検査対象領域17(図6において一点鎖線で囲まれる部分)を目視して、色の変化を調べる。これにより、ブロンジングを検査し、画質の良否を判定することができる。検査対象領域17を移動するには、被検査印刷媒体11を検査者に対して前後に移動させる。なお、図6では検査者の目5を簡略化して1つとしたが、実際は、検査者は両目で検査をする。
【0020】
図7は、図4から図6に示す画質検査装置20を用いた画質検査方法のフローチャートである。この方法では、まず、検査者は、被検査印刷媒体11を反射板12の上に置く(ステップS11)。続いて、検査者は、マーカー14の示す位置で光源13の写り込み16が生じるように自身の位置を調整し、被検査印刷媒体11上の検査したい領域をマーカー14(および写り込み16)の位置に合わせる(ステップS12)。そして、その位置における被検査印刷媒体11の色を目視により確認する(ステップS13)。全領域の検査が終了する(ステップS14でY)まで、被検査印刷媒体11を移動させて(ステップS15)、ステップS12、S13を繰り返す。
【0021】
[効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、観察照明の幾何学条件、すなわち光源13から被検査印刷媒体11への光の照射角θiおよび被検査印刷媒体11からの反射光の検査者の目5への出射角θrが固定され、常に同じ条件で検査を行うことができる。また、ブース15を用いることで、外部の影響を受けずに検査を行うことができる。
【0022】
[第2の実施の形態の変形例]
図8は図4から図7を参照して説明した第2の実施の形態に係る画質検査装置20の変形例である画質検査装置21を示す図であり、図5に示す側面図に相当する図である。図4から図7を参照して説明した構成では、検査者の方向を除く5方向をブース15で区切るものとしていたが、この変形例では、検査者の方向についても区切り、検査者は覗き窓17から被検査印刷媒体11を観察する。この構成により、検査者の観察位置をさらに限定することができ、検査条件の安定性をさらに高めることができる。
【0023】
また、図8に示す画質検査装置21は、ブース15の検査者側に、上方向に開けることのできる扉18を有し、この扉18を開けることで、ブース15への被検査印刷媒体11の出し入れ、およびブース15内での被検査印刷媒体11の移動を行うことができる。ここでは上方向に開けることのできる扉18を示したが、開ける方向は横方向でも下方向でもよく、上、横あるいは下にずらす構造でもよい。
【0024】
[その他の実施の形態]
以上の実施の形態において、光源3、13として棒状の蛍光灯を用いるものとして説明した。これは、エンドユーザが印刷媒体を見ることを想定した場合、点光源を用いることはあまりなく、一般的には蛍光灯の照明が用いられると考えられるからである。したがって、光源3、13として、1本の蛍光灯ではなく複数本の蛍光灯を平行に配置して用いてもよく、また、複数本の蛍光灯が内部に設けられたような平面的な照明を用いてもよい。
【0025】
以上、本発明の実施の形態に係る画質検査装置について説明したが、本発明は要旨を変更しない限り種々変更実施できる。例えば、反射台2あるいは反射板12は平板状であることが望ましいが、光源3あるいは13の長さ方向と平行に凹または凸となる湾曲した形状であってもよい。また、目視による観察ではなく、スチル・カメラあるいはビデオ・カメラを用いて、被検査印刷媒体1または11を撮影することもできる。その場合でも、撮影された画像中の光源3、13の写り込みの位置から、検査対象場所を知ることができ、その検査結果を得ることができる。第1の実施の形態に係る画質検査装置10をブース15内に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画質検査装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示す画質検査装置による画質の検査方法を説明する図である。
【図3】図1に示す画質検査装置を用いた画質検査方法のフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る画質検査装置の構成例を示す図である。
【図5】図4に示す画質検査装置の側面図である。
【図6】図4に示す画質検査装置の平面図である。
【図7】図4から図6に示す画質検査装置を用いた画質検査方法のフローチャートである。
【図8】図4から図7を参照して説明した第2の実施の形態に係る画質検査装置の変形例を示す図であり、図5に示す側面図に相当する図である。
【符号の説明】
【0027】
10、20、21 画質検査装置、1、11 被検査印刷媒体、2 反射台(保持部材)、3、13 光源、4 回転軸 5 検査者の目、6、16 光源の写り込み、7、17 検査対象領域、12 反射板(保持部材)、14 マーカー、15 ブース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷が施された被検査印刷媒体を少なくとも一部に入射光を正反射する部材が設けられた保持部材に重ねて配置し、
上記正反射する部材への光源の写り込みの位置により上記被検査印刷媒体の検査対象領域を特定し、上記光源からの光の入射に対して正反射となる方向から上記検査対象領域を検査する
ことを特徴とする画質検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の画質検査方法において、前記光源からの光に対して前記保持部材および前記被検査印刷媒体の角度を変化させて、前記被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることを特徴とする画質検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の画質検査方法において、前記光源からの光に対して前記保持部材を固定し、前記正反射する部材への前記光源の写り込みの位置に対して前記被検査印刷媒体を移動させることで、前記被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることを特徴とする画質検査方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の画質検査方法において、前記光源として1方向に長いものを用い、この長い光源の長さ方向を前記正反射する部材に写し込むようにしたことを特徴とする画質検査方法。
【請求項5】
印刷が施された被検査印刷媒体が重ねて配置される保持部材と、
光源と
を有し、
上記保持部材には、少なくとも一部に、上記光源からの入射光を正反射して上記被検査印刷媒体の印刷画質を検査するための指標とする反射部材が設けられた、
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の画質検査装置において、
前記光源は1つの方向に長い形状を有し、
上記保持部材は、上記1つの方向にほぼ平行な軸を中心にして傾斜角を可変に調整可能である
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項7】
請求項5記載の画質検査装置において、
前記光源は1つの方向に長い形状を有し、
前記保持部材には、前記正反射する部材への前記光源の写り込み位置を指定するマーカーが設けられた
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項記載の画質検査装置において、
前記保持部材および前記光源が、5方向に閉じられ1方向の少なくとも一部が開かれたブース内に配置された
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項1】
印刷が施された被検査印刷媒体を少なくとも一部に入射光を正反射する部材が設けられた保持部材に重ねて配置し、
上記正反射する部材への光源の写り込みの位置により上記被検査印刷媒体の検査対象領域を特定し、上記光源からの光の入射に対して正反射となる方向から上記検査対象領域を検査する
ことを特徴とする画質検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の画質検査方法において、前記光源からの光に対して前記保持部材および前記被検査印刷媒体の角度を変化させて、前記被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることを特徴とする画質検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の画質検査方法において、前記光源からの光に対して前記保持部材を固定し、前記正反射する部材への前記光源の写り込みの位置に対して前記被検査印刷媒体を移動させることで、前記被検査印刷媒体上の検査対象領域を移動させることを特徴とする画質検査方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の画質検査方法において、前記光源として1方向に長いものを用い、この長い光源の長さ方向を前記正反射する部材に写し込むようにしたことを特徴とする画質検査方法。
【請求項5】
印刷が施された被検査印刷媒体が重ねて配置される保持部材と、
光源と
を有し、
上記保持部材には、少なくとも一部に、上記光源からの入射光を正反射して上記被検査印刷媒体の印刷画質を検査するための指標とする反射部材が設けられた、
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の画質検査装置において、
前記光源は1つの方向に長い形状を有し、
上記保持部材は、上記1つの方向にほぼ平行な軸を中心にして傾斜角を可変に調整可能である
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項7】
請求項5記載の画質検査装置において、
前記光源は1つの方向に長い形状を有し、
前記保持部材には、前記正反射する部材への前記光源の写り込み位置を指定するマーカーが設けられた
ことを特徴とする画質検査装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項記載の画質検査装置において、
前記保持部材および前記光源が、5方向に閉じられ1方向の少なくとも一部が開かれたブース内に配置された
ことを特徴とする画質検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−145197(P2010−145197A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321910(P2008−321910)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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