説明

画質異常検査装置、画質異常検査システム及びプログラム

【課題】用紙等の記録材に画像を形成する画像形成装置における画質異常の検出を精度よく行えるようにする。
【解決手段】テストチャート画像データ出力部86が、画質異常推定部85により推定された画質異常に応じたテストチャート画像のデータを画像形成部60に供給して、当該テストチャート画像を記録材へ形成させ、その後、画質異常予兆検出部88が、出力画像読取部70により得られる当該記録材の読取画像と当該テストチャート画像とを比較して、当該読取画像における前記画質異常の有無を検査する。この過程において、パラメータ調整部87は、前記画質異常に応じた調整データを画像形成部60に供給して画像形成部60の動作を調整し、また、前記画質異常に応じた調整データを画質異常予兆検出部88に供給して画質異常予兆検出部88の動作を調整することで、前記画質異常の検出性が高まるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質異常検査装置、画質異常検査システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙等の記録材に画像を形成する画像形成装置による画質異常等の障害の検出に関し、従来から種々の発明が提案されている。
例えば、感光体の表面電位の測定や感光体の表面に付着したトナーの濃度の測定を行い、その測定結果を予め設定された条件と比較して、画質不良の原因となっている部位を表示する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、読取画像情報と記録画像情報と比較して不一致が検出された場合に、その不一致の内容を判別し、判別された画像情報間の不一致の内容に対応させて記録条件(不一致が発生しない記録条件)を再設定した後、記録紙に対して記録画像情報に対応する画像を再記録させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
例えば、複数種類のテスト用の画像を記憶しておき、この複数種類のテスト用の画像のうち、何れか一又は複数のテスト用の画像を選択し、選択したテスト用の画像の種類に応じた出力条件(異常種毎に設定された出力周期)で、選択したテスト用の画像をプリンタ出力させる技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
例えば、画像形成装置の複数種の状態データに基づいて異常予兆判定用の複数種の対象データを生成し、複数種の対象データが、各種宛に設定されている各基準値以下か超えるかを判別し、各種の状態データ宛の判別結果に、各状態データ宛に設定されている重みを付けて多数決により、数種の状態データの全体としての異常予兆の有無を判定する技術が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−262800号公報
【特許文献2】特開平11−109807号公報
【特許文献3】特開2008−173869号公報
【特許文献4】特開2009−037141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、用紙等の記録材に画像を形成する画像形成装置における画質異常の検出を精度よく行えるようにする技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、記録材に画像を形成する画像形成手段について推定された画質異常に応じた検査用画像を前記画像形成手段に供給して記録材に形成させる供給手段と、前記画像形成手段により前記検査用画像の形成が施された記録材を画像読み取りして得られた読取画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された読取画像と前記検査用画像とを比較して、前記推定された画質異常の有無を検査する検査手段と、前記検査手段による検査において前記推定された画質異常の検出性が高まるように、前記推定された画質異常に関する調整対象として定められた設定項目の値を調整する調整手段と、を備えたことを特徴とする画質異常検査装置である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の画質異常検査装置において、前記設定項目は、前記画像形成手段の動作に関する設定項目である、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の画質異常検査装置において、前記設定項目は、前記検査手段の動作に関する設定項目である、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、記録材に画像を形成する画像形成手段と、記録材を画像読み取りして読取画像を得る画像読取手段と、前記画像形成手段における画質異常の発生を推定する推定手段と、前記推定手段により推定された画質異常に応じた検査用画像を前記画像形成手段に供給して記録材に形成させる供給手段と、前記画像形成手段により前記検査用画像の形成が施された記録材を前記画像読取手段により画像読み取りして得られた読取画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された読取画像と前記検査用画像とを比較して、前記推定された画質異常の有無を検査する検査手段と、前記検査手段による検査において前記推定された画質異常の検出性が高まるように、前記推定された画質異常に関する調整対象として定められた設定項目の値を調整する調整手段と、を備えたことを特徴とする画質異常検査システムである。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、コンピュータに、記録材に画像を形成する画像形成手段について推定された画質異常に応じた検査用画像を前記画像形成手段に供給して記録材に形成させる供給機能と、前記画像形成手段により前記検査用画像の形成が施された記録材を画像読み取りして得られた読取画像を取得する取得機能と、前記取得機能により取得された読取画像と前記検査用画像とを比較して、前記推定された画質異常の有無を検査する検査機能と、前記検査機能による検査において前記推定された画質異常の検出性が高まるように、前記推定された画質異常に関する調整対象として定められた設定項目の値を調整する調整機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、4、5に記載の本発明によると、用紙等の記録材に画像を形成する画像形成装置における画質異常の検出を、本発明を適用しない場合に比べて精度よく行えるようになる。
【0014】
請求項2に記載の本発明によると、推定された画質異常の検出性が高まるように、画像形成手段の動作を調整することができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明によると、推定された画質異常の検出性が高まるように、検査手段の動作を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムの機能ブロックを例示する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムにおける画像形成部の構成を例示する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムにおけるレーザ光量に係る予兆監視特徴量を時系列順に例示する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムにおける画質異常と画像形性パラメータとの関係を例示する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムにおけるベイジアンネットワークによる画質異常推定モデルを例示する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムにおける画質異常検査処理の流れを例示する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る画質異常検査システムにおいて故障検査装置として動作するコンピュータの主要なハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る故障検査システムの機能ブロックを例示してある。本例の故障検査システムは、記録材に画像を形成する画像形成部60、画像形成部60による出力画像を読み取る出力画像読取部70、画像形成部60における画質異常を検査する画質異常検査部80、を備えた画像形成装置として構成されている。つまり、本例の故障検査システム(画像形成装置)は、画質異常検査装置に相当する画質異常検査部80を画像形成装置の内部に備えた構成であり、画像形成部60における画質異常の検査を装置自身が単独で行う構成となっている。なお、画像形成装置としては、例えば、プリンタ(印刷装置)、コピー機(複写装置)、ファクシミリ装置、印刷・複写・ファクシミリ等の機能を複合的に備えた複合機、などが挙げられる。
【0018】
まず、画像形成部60について説明する。
図2には、画像形成部60の構成を例示してある。本例の画像形成部60は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、を備えている。また、本例の画像形成部60は、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置57と、を備えている。また、本例の画像形成部60は、各装置(各部)の動作を制御する制御手段の一例としての制御部40と、利用者からの指示を受け付けるためのユーザインタフェース(UI)41と、を有している。
【0019】
本例において、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kを有する。そして、感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kの各々の周囲には、各種の電子写真用デバイスが順次配設されている。このデバイスとしては、感光体ドラム11を帯電する帯電器12と、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)と、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14と、が含まれる。また、デバイスとしては、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17とが含まれる。
これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。そして、感光体ドラム11Y,11M,11C,11Kの各々は、中間転写ベルト15に対して接離可能に構成されている。
【0020】
本例では、用紙搬送系として、用紙収容部から用紙Pを取り出して二次転写部20へと送り込む手段と、二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置57へと搬送する搬送ベルト55と、用紙Pを定着装置57に導く定着入口ガイド56と、を備えている。また、用紙搬送系として、定着装置57から排紙された用紙Pをガイドする排紙ガイド58と、排紙ガイド58によりガイドされた用紙Pを外部に排出する排紙ロール59と、を備えている。
【0021】
すなわち、二次転写部20にてトナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置57における搬送速度に合わせて、用紙Pを最適な搬送速度で定着装置57まで定着入口ガイド56を介して搬送する。定着装置57に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置57によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、排紙ガイド58及び排紙ロール59を介して、装置外部に設けられた図示しない排紙収容部に搬送される。
【0022】
次に、画質異常検査部80について説明する。
本例の画質異常検査部80は、画像形成パラメータ1次蓄積部81、予兆監視特徴量算出部82、画像形成パラメータ2次蓄積部83、予兆監視特徴量変化検出部84、画質異常推定部85、テストチャート画像データ出力部86、パラメータ調整部87、画質異常予兆検出部88、画質異常予測出力部89、を備えている。
【0023】
画像形成パラメータ1次蓄積部81は、予め定められた単位時間毎に画像形成部60から取得される画像形成パラメータ及び補助データを一時的に蓄積するためのバッファメモリである。本例では、蓄積データ(画像形成パラメータ及び補助データ)に時刻情報等の時系列を示す情報を付加することで時系列順に保持している。
【0024】
ここで、画像形成パラメータとしては、帯電器12における帯電電位、レーザ露光器13におけるレーザ光量、現像器14におけるトナー濃度、一次転写部10における一次転写電流、二次転写部20における二次転写電流、定着装置57における定着ロール温度などの各部の計測値が挙げられる。また、各部の計測値だけでなく、各部を制御するための設定値を画像形成パラメータとしてもよく、各部の設定値と計測値の差分を画像形成パラメータとしてもよい。
【0025】
また、補助データとしては、画像形成部60における画像形成処理を制御するためのパッチ濃度情報等のプロセスコントロール情報(処理制御情報)、画像密度を表すピクセルカウント数等のジョブ情報(指示情報)、装置内部の温度や湿度等の環境情報などが挙げられ、画像形成パラメータの変化点の原因解析等を行うために用いられる。
【0026】
予兆監視特徴量算出部82は、予め定められた単位枚数分の画像形成パラメータが画像形成パラメータ1次蓄積部81に蓄積される毎に、画像形成パラメータ1次蓄積部81に時系列順に蓄積された単位枚数分の画像形成パラメータを読み出して、各画像形成パラメータの平均値、標準偏差、最大値、最小値等の統計量を算出する。本例では、当該算出された各画像形成パラメータに関する統計量を(画質異常の)予兆監視特徴量という。
【0027】
画像形成パラメータ2次蓄積部83は、予兆監視特徴量算出部82により算出された予兆監視特徴量を蓄積する。本例では、蓄積データ(予兆監視特徴量)に時刻情報等の時系列を示す情報を付加することで時系列順に保持している。
また、本例では、補助データについても、予兆監視特徴量算出部82により平均値等の統計量を算出して、対応する予兆監視特徴量と共に画像形成パラメータ2次蓄積部83に蓄積するようにしている。
【0028】
予兆監視特徴量変化検出部84は、画像形成パラメータ2次蓄積部83に時系列順に蓄積された予兆監視特徴量を読み出して、予兆監視特徴量の時系列変化における異変(異常と推定される状態への変化)を検出する。本例では、例えば回帰曲線で予測される時系列変化の傾向に対する乖離の度合いが閾値以上になったか、画像形成パラメータ毎に設定された正常範囲から予兆監視特徴量が外れたか等の観点から、予兆監視特徴量の時系列変化における異変を検出する。
【0029】
図3には、画像形成パラメータの一例であるLaserPower(レーザ光量)に係る予兆監視特徴量を時系列順に例示してある。図3において、LaserPower1〜LaserPower4は、それぞれ、M(マゼンタ)色、Y(イエロー)色、C(シアン)色、K(黒)色の画像形成用のレーザ露光器13のレーザ光量に対応しており、予め定められた時間間隔毎にサンプリングされた各LaserPowerの平均値を時系列順にプロットしてある。また、図3では、M色用、Y色用、C色用のLaserPower1〜3についての正常範囲をR1で示しており、K色用のLaserPower4についての正常範囲をR2で示している。
【0030】
図3によると、M色用、Y色用、C色用のLaserPower1〜3は正常範囲R1にほぼ収まっており、動作上の問題がないことが分かる。一方、K色用のLaserPower4は2009/8/25辺りから急激に上昇している。この場合、予兆監視特徴量変化検出部84は、K色用のLaserPower4に係る予兆監視特徴量について、回帰曲線で予測される時系列変化の傾向に対する乖離の度合いが閾値以上になった(或いは、LaserPower4についての正常範囲R2から予兆監視特徴量が外れた)という異変を検出する。また、図3によると、矢印で示された日時にメンテナンス(保守)が実施されており、K色用のLaserPower4の急激な変化がその後は正常に戻ることが確認される。なお、図3の事例は、画像における背景部へのトナー付着によって生じる「かぶり」と呼ばれる画質異常が発生した事例である。
【0031】
画質異常推定部85は、予兆監視特徴量変化検出部84で時系列変化における異変が検出された予兆監視特徴量と、当該異変の発生時点における補助データとに基づいて、発生していること(或いは、間もなく発生すること)が予測される画質異常を推定する。画質異常推定部85は、例えば、過去に実施したトラブルシューティング(故障解決)の情報に基づいて構築された、画質異常と画像形性パラメータとの関係を表すテーブル(対応表)を用いて、発生が予測される画質異常を推定する。
【0032】
図4には、画質異常と画像形性パラメータとの関係(一部抜粋)を例示してある。図4では、画像形成パラメータと画質異常との関係をマトリクス形式で表しており、画像形成パラメータ毎に、その画像形成パラメータについて異変が検出された場合に予測される1又は複数の画質異常に対応する欄に丸印(○)を付してある。図4の例によると、図3に例示したLaserPowerの異変に対応する画質異常は「かぶり」であり、「かぶり」の画質異常の発生が予測される。なお、画質異常の発生状況や発生原因は多岐に亘っており、画質形成パラメータの時系列変化の原因も様々である。このため、LaserPowerの異変が検出されたとしても、単なる局所的なパラメータ変動に依るもので画質異常が発生しない可能性もある。
【0033】
上記した画質異常推定部85は、画像形成パラメータと画質異常との関係を表す単純なテーブルを用いることで処理の簡易化を図っているが、複合的に画像形成パラメータが変化するような場合には画質異常の推定精度が低くなる。また、プロセスコントロール情報、ジョブ情報、環境情報等の補助データを効果的に利用することが難しい。そこで、例えば、複合的に画像形成パラメータの変化に対応可能で且つ補助データを効果的に利用可能な、ベイジアンネットワークによる画質異常推定モデルを適用するようにしてもよい。ベイジアンネットワークは、因果関係に基づく有向グラフによるネットワークであり、異変が検出された各画像形成パラメータ及びその発生時点における補助データを入力として、画質異常を推定する画質異常推定モデルを構築することができる。
【0034】
図5には、ベイジアンネットワークによる画質異常推定モデルを例示してある。図5の例では、画質異常の検出通知を表すノードNa、各補助データを表すノードNb(Nb1〜Nb4)、各画質異常を表すノードNc(Nc1〜Nc4)、各画像形成パラメータを表すノードNd(Nd1〜Nd18)を用いて画質異常推定モデルが構成されている。
【0035】
図5によると、「かぶり」の画質異常は、そのノードNc1に対する入力となるノードNd1〜Nd4の4つの画像形成パラメータにより推定され、「色味不良」の画質異常は、そのノードNc2に対する入力となるノードNd4〜Nd8の5つの画像形成パラメータにより推定され、「線・筋」の画質異常は、そのノードNc3に対する入力となるノードNd9〜Nd14の6つの画像形成パラメータにより推定され、「ゴースト」の画質異常は、そのノードNc4に対する入力となるノードNd15〜Nd18の4つの画像形成パラメータにより推定されることが表されている。
【0036】
また、平均パッチ濃度等のプロセスコントロール情報、平均ピクセルカウント値等のジョブ情報、平均温度や平均湿度等の環境情報といった補助データを表すノードNb(Nb1〜Nb4)も、各画質異常を表すノードNc(Nc1〜Nc4)に対する入力となっており、これらの補助データを画質異常の推定に利用することが表されている。
また、各画質異常を表すノードNc(Nc1〜Nc4)は、画質異常の検出通知を表すノードNaに対する入力となっており、画質異常の発生が検出されたことに応じて、その通知を出力することが表されている。
【0037】
なお、各画質異常を表すノードNc(Nc1〜Nc4)は、各画像形成パラメータ及び各補助データの影響度(画質異常に影響を及ぼす度合い)を設定した条件確率表を有しており、各画像形成パラメータ及び各補助データの影響度を考慮して画質異常の発生を推定するように構成されている。例えば、「ゴースト」の画質異常は、高温・高湿度の環境下で発生し易いため、当該画像形成装置の環境情報に応じて「ゴースト」の画質異常の発生確率を変更するようにすることで、「ゴースト」の画質異常の発生を推定する精度を向上させることが可能となる。
【0038】
画質異常推定部85による画質異常の推定の結果、テストチャート画像(検査用画像)を用いた画質異常の予兆診断が必要であると判断された場合には、画像形成装置の状態及びテストチャート画像出力に基づく予兆診断の要否を利用者に問い合わせる表示を操作パネル上に表示させる。そして、予兆診断の実施を指示する操作入力を操作パネルにより利用者から受け付けた場合に、テストチャート画像データ出力部86、パラメータ調整部87、画質異常予兆検出部88等による画質異常検査処理が実施される。
【0039】
テストチャート画像データ出力部86は、画質異常推定部85により推定された画質異常に対応したテストチャート画像のデータを画像形成部60に供給し、用紙等の記録材にテストチャート画像を形成させる。例えば、「濃度ムラ」や「白抜け」の画質異常が推定された場合には、中間調のパッチ画像をテストチャート画像とし、「かぶり」や「線・筋」の画質異常が推定された場合には、白紙画像をテストチャート画像し、「ゴースト」の画質異常が推定された場合には、ソリッドパッチと呼ばれるベタ画像の小パッチが予め定められた間隔で配置された画像をテストチャート画像とする。
本例では、各テストチャート画像のデータを画質異常に対応付けてメモリに保持しており、推定された画質異常に応じて特定されるテストチャート画像のデータをメモリから読み出して、画像形成部60に供給する。
【0040】
パラメータ調整部87は、画像形成部60によるテストチャート画像の記録材への形成にあたり、画質異常推定部85により推定された画質異常が記録材上で顕在化し易いように、画像形成部60における画像形成パラメータを調整する。具体的には、例えば、「かぶり」や「ゴースト」の画質異常が推定された場合には、低濃度画像が検出し易いように現像器14における現像電位を調整し、その画質異常の予兆が表れ易いようにする。
【0041】
なお、予兆監視特徴量変化検出部84で異変が検出された画像形成パラメータを調整するようにしてもよい。具体的には、例えば、「かぶり」の画質異常の発生が予測される根拠となる画像形成パラメータであるLaserPowerの異変に関しては、LaserPowerの値を異変が検出される前の平均的な値に戻すことにより、「かぶり」の画質異常の予兆がより顕在化し易くなる。同様に、図4に例示した関係において、PreTransferGridVoltageの値に異変が検出され、「線・筋」の画質異常が推定された場合には、「線・筋」の画質異常が検出され易いように現像電位を調整すると共に、PreTransferGridVoltageの値を異変が検出される前の平均的な値に戻すことにより、「線・筋」の画質異常が発生し易い状態となる。
【0042】
本例では、調整対象となる画像形成パラメータ及びその調整の仕方(或いは具体的な調整値)などの調整データを画質異常に対応付けてメモリに保持しており、推定された画質異常に応じた調整データをメモリから呼び出して画像形成部60に供給して、各部の動作等の制御に係る画像形成パラメータを調整させる。
また、パラメータ調整部87は、画質異常予兆検出部88における画像処理パラメータの調整も行うが、その内容については以下で述べる。
【0043】
画質異常予兆検出部88は、テストチャート画像データ出力部86により画像形成部60に供給されたテストチャート画像のデータと、画像形成部60により当該テストチャート画像の形成が施された記録材を画像読み取りして得られた読取画像のデータとを比較して差分を検出して、当該読取画像における画質異常(画質異常推定部85により推定された画質異常)の有無を検査することで、画質異常の予兆検出を行う。
【0044】
ここで、本例では、画像形成部60により画像形成された記録材を装置外部の排紙収容部に搬送する経路上に印刷検査装置として設けられた出力画像読取部70によって画像読み取りして得られた読み取り画像のデータを取得して、テストチャート画像のデータと比較している。なお、コピー処理においてコピー対象の原稿を画像読み取りする画像読取部を利用するようにしてもよく、この場合には、例えば、排紙収容部に排紙された記録材を画像読取部にセットするよう促す表示を操作パネルに表示して、人手を介して画像読み取りさせればよい。
【0045】
また、本例では、画質異常予兆検出部88による画質異常の有無の検査にあたり、パラメータ調整部87は、画質異常推定部85により推定された画質異常の検出性が高まるように(画質異常が検出され易くなるように)、画質異常予兆検出部88における画像処理パラメータを調整して検出感度を高めるようにしている。画質異常予兆検出部88により調整される画像処理パラメータとしては、画像分割数、閾値間隔、フィルタの種類等が挙げられる。
【0046】
例えば、「濃度ムラ」の画質異常に関する予兆検出の場合には、画像領域分割は無し、フィルタは平滑化フィルタを使用し、主走査方向及び副走査方向の投影波形積算値を算出する。そして、主走査方向の投影波形積算値の変化量が予め定められた閾値範囲を超えた場合には、画像形成装置IN−OUTの「濃度ムラ」の画質異常であると判定する。また、副走査方向の投影波形積算値の変化量が予め定められた閾値範囲を超えた場合には、用紙前後の「濃度ムラ」の画質異常であると判定する。なお、投影波形積算値の変化量の閾値範囲を調整することにより、「濃度ムラ」の画質異常に関する予兆検出の性能を調整できる。
【0047】
例えば、「線・筋」の画質異常に関する予兆検出の場合には、画像領域分割は無し、フィルタはエッジ強調フィルタを使用した後、予め設定された2値化閾値を用いて欠陥領域を検出する。2値化された画像に対し、モフォロジー処理を施し、主走査方向及び副走査方向のつながりを検出し、「線・筋」の画質異常の有無を判定する。なお、エッジ強調フィルタの強度及び2値化閾値を調整することにより、「線・筋」の画質異常に関する予兆検出の性能を調整できる。
【0048】
例えば、「白抜け」の画質異常に関する予兆検出の場合には、画像領域は複数の小領域に分割し、小領域毎にエッジ強調フィルタを使用した後、小領域毎の濃度平均に基づく2値化閾値で白抜け画像の領域を抽出する。「白抜け」の画質異常に対しては、上述した「線・筋」の画質異常に関する予兆検出と同様に、モフォロジー処理を施し、主走査方向及び副走査方向のつながりを検出し、「白抜け」の画質異常の有無を判定する。なお、エッジ強調フィルタの強度及び2値化閾値を調整することにより、「白抜け」の画質異常に関する予兆検出の性能を調整できる。
【0049】
本例では、調整対象となる画像処理パラメータ及びその調整の仕方(或いは具体的な調整値)などの調整データを画質異常に対応付けてメモリに保持しており、推定された画質異常に応じた調整データをメモリから呼び出して画質異常予兆検出部88に供給して、処理内容等の制御に係る画像処理パラメータを調整させる。
【0050】
画質異常予測出力部89は、画質異常予兆検出部88により画質異常が検出されたことに応じて、その画質異常や処置に関する情報を操作パネル上に表示させる。なお、検出された画質異常や処置に関する情報を出力する態様は操作パネルによる表示出力に限定するものではなく、例えば、画像形成部60に供給して記録材に形成出力させてもよく、予め指定された送信先に宛てた電子メールにより送信出力させてもよい。
【0051】
ここで、画質異常推定部85により複数の画質異常が推定された場合には、それぞれの画質異常について、テストチャート画像データ出力部86、パラメータ調整部87、画質異常予兆検出部88等による画質異常検査処理を繰り返し、その結果について画質異常予測出力部89により操作パネル上に表示させるように構成してある。なお、複数の画質異常が推定された場合において、例えば、発生の可能性が高い画質異常の順に画質異常検査処理を行い、画質異常が検出された時点で処理を中止し、以後の画質異常については画質異常検査処理を行わないようにしてもよい。また、例えば、推定された複数の画質異常のうち、利用者により指定された画質異常についてのみ画質異常検査処理を行うようにしてもよい。
【0052】
図6には、本例の画質異常検査システムにおける画質異常検査処理の流れを例示してある。
予め定められた単位時間毎に画像形成部60から取得される画像形成パラメータ及び補助データを、画像形成パラメータ1次蓄積部81に蓄積する(ステップS1,S2)。
画像形成パラメータ1次蓄積部81に予め定められた単位枚数分の画像形成パラメータが蓄積される毎に、予兆監視特徴量算出部82が、各画像形成パラメータについて予兆監視特徴量を算出し、画像形成パラメータ2次蓄積部83に蓄積する(ステップS3,S4)。
予め定められた監視タイミングの到来に応じて、予兆監視特徴量変化検出部84が、予兆監視特徴量の時系列変化における異変の検出を行う(ステップS5,S6)。
予兆監視特徴量変化検出部84により予兆監視特徴量の時系列変化における異変が検出された場合には、画質異常推定部85が、発生が予測される画質異常の推定を行う(ステップS7,S8)。
【0053】
画質異常推定部85により推定された画質異常の1つを候補として、以下の処理(ステップS9〜S11)を行う。
テストチャート画像データ出力部86が、候補の画質異常に応じたテストチャート画像のデータを画像形成部60に供給して、画像形成部60によりテストチャート画像の記録材への形成を実施させる。このとき、パラメータ調整部87は、候補の画質異常に応じた調整対象の画像形成パラメータ及びその調整の仕方などの調整データを画像形成部60に供給して画像形成部60の動作を調整することで、記録材上における候補の画質異常が顕在化し易いようにする(ステップS9)。
画像形成部60によりテストチャート画像の形成が記録材に施されると、出力画像読取部70が、当該記録材を画像読み取りして、その読取画像のデータを得る(ステップS10)。
【0054】
画質異常予兆検出部88は、候補の画質異常に応じたテストチャート画像と対応する読取画像とを比較して、当該読取画像における候補の画質異常の有無を検査する。このとき、パラメータ調整部87は、候補の画質異常に応じた調整対象の画像処理パラメータ及びその調整の仕方などの調整データを画質異常予兆検出部88に供給して画質異常予兆検出部88の動作を調整することで、候補の画質異常の検出感度が高まるようにする(ステップS11)。
画質異常予兆検出部88により当該読取画像について候補の画質異常が検出されなかった場合には、次の画質異常を候補として上記の処理(ステップS9〜S11)を行うことを、画質異常推定部85により推定された全ての画質異常について繰り返す(ステップS12,S13)。
画質異常予兆検出部88により当該読取画像について候補の画質異常が検出されると、画質異常予測出力部89が、その画質異常や処置に関する情報を操作パネル上に表示させる(ステップS12,14)。
【0055】
以上のように、本例の画質異常検査システムでは、パラメータ調整部87が、画質異常推定部85により推定された画質異常に応じた調整対象の画像形成パラメータやその調整量などを画像形成部60に供給して画像形成部60の動作を調整すると共に、当該画質異常に応じた調整対象の画像処理パラメータやその調整量などを画質異常予兆検出部88に供給して画質異常予兆検出部88の動作を調整することで、画質異常予兆検出部88による検査において当該画質異常が検出され易いようにしている。なお、画像形成部60の動作の調整又は画質異常予兆検出部88の動作の調整の一方を行うようにしてもよい。
【0056】
また、本例の画質異常検査システムでは、画像形成装置自身が単独で画質異常の検査を行う構成となっているが、画像形成装置とは別に設置された監視サーバにより当該画像形成装置における画質異常の検査を行うようにしてもよい。
一例として、例えば、画質異常検査システムを構成する各機能部のうち、画像形成パラメータ2次蓄積部83、予兆監視特徴量変化検出部84、画質異常推定部85を監視サーバに設け、この監視サーバが有線又は無線を用いた通信により複数の画像形成装置について画質異常の検査を行うリモート監視システムとして構成とすることができる。この場合には、画像形成装置において予兆監視特徴量算出部82により各画像形成パラメータについて予兆監視特徴量が算出された後、監視サーバに送信されて画像形成パラメータ2次蓄積部83に格納される。そして、監視サーバでは、複数の画像形成装置から送信された予兆監視特徴量に基づいて、各画像形成装置について予兆監視特徴量の時系列変化における異変の検出や画質異常の推定を行い、テストチャート画像出力に基づく予兆診断が必要と判断された場合に、その情報を画像形成装置に送信して画像形成装置の状態及びテストチャート画像出力に基づく予兆診断の要否を利用者に問い合わせる表示を操作パネル上に表示させ、利用者からの指示に応じて画質異常検査処理を実行させる。
【0057】
図7には、本例の画質異常検査システムにおける画質異常検査部80(画質異常検査装置)として動作するコンピュータの主要なハードウェア構成を例示してある。
本例では、各種演算処理を行うCPU91、CPU91の作業領域となるRAM92や基本的な制御プログラムを記録したROM93等の主記憶装置、本発明の一実施形態に係るプログラムや各種データを記憶する補助記憶装置(例えば、HDD等の磁気ディスクや、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリなど)94、各種情報を表示出力するための表示装置及び操作者により入力操作に用いられる操作ボタンやタッチパネル等の入力機器とのインタフェースである入出力I/F95、他の装置との間で有線又は無線により通信を行うインタフェースである通信I/F96、等のハードウェア資源を有するコンピュータにより構成されている。
そして、本発明の一実施形態に係るプログラムを補助記憶装置94等から読み出してRAM92に展開し、これをCPU91により実行させることで、本発明の一実施形態に係る画質異常検査装置の各機能をコンピュータ上に実現している。
【0058】
なお、本例では、画質異常検査装置の各機能部を1台のコンピュータに設ける構成としてあるが、各機能部を複数台のコンピュータに分散して設ける構成としてもよい。
また、本発明の一実施形態に係るプログラムは、例えば、当該プログラムを記憶したCD−ROM等の外部記憶媒体から読み込む形式や、通信回線等を介して受信する形式などにより、本例に係るコンピュータに設定される。
また、本例のようなソフトウェア構成により各機能部を実現する態様に限られず、それぞれの機能部を専用のハードウェアモジュールで実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
60:画像形成部、 70:出力画像読取部、 80:画質異常検査部、
81:画像形成パラメータ1次蓄積部、 82:予兆監視特徴量算出部、 83:画像形成パラメータ2次蓄積部、 84:予兆監視特徴量変化検出部、 85:画質異常推定部、 86:テストチャート画像データ出力部、 87:パラメータ調整部、 88:画質異常予兆検出部、 89:画質異常予測出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する画像形成手段について推定された画質異常に応じた検査用画像を前記画像形成手段に供給して記録材に形成させる供給手段と、
前記画像形成手段により前記検査用画像の形成が施された記録材を画像読み取りして得られた読取画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された読取画像と前記検査用画像とを比較して、前記推定された画質異常の有無を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査において前記推定された画質異常の検出性が高まるように、前記推定された画質異常に関する調整対象として定められた設定項目の値を調整する調整手段と、
を備えたことを特徴とする画質異常検査装置。
【請求項2】
前記設定項目は、前記画像形成手段の動作に関する設定項目である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画質異常検査装置。
【請求項3】
前記設定項目は、前記検査手段の動作に関する設定項目である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画質異常検査装置。
【請求項4】
記録材に画像を形成する画像形成手段と、
記録材を画像読み取りして読取画像を得る画像読取手段と、
前記画像形成手段における画質異常の発生を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された画質異常に応じた検査用画像を前記画像形成手段に供給して記録材に形成させる供給手段と、
前記画像形成手段により前記検査用画像の形成が施された記録材を前記画像読取手段により画像読み取りして得られた読取画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された読取画像と前記検査用画像とを比較して、前記推定された画質異常の有無を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査において前記推定された画質異常の検出性が高まるように、前記推定された画質異常に関する調整対象として定められた設定項目の値を調整する調整手段と、
を備えたことを特徴とする画質異常検査システム。
【請求項5】
コンピュータに、
記録材に画像を形成する画像形成手段について推定された画質異常に応じた検査用画像を前記画像形成手段に供給して記録材に形成させる供給機能と、
前記画像形成手段により前記検査用画像の形成が施された記録材を画像読み取りして得られた読取画像を取得する取得機能と、
前記取得機能により取得された読取画像と前記検査用画像とを比較して、前記推定された画質異常の有無を検査する検査機能と、
前記検査機能による検査において前記推定された画質異常の検出性が高まるように、前記推定された画質異常に関する調整対象として定められた設定項目の値を調整する調整機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−22232(P2012−22232A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161444(P2010−161444)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】