説明

界面活性剤の新規使用

改質硫黄、および/または改質硫黄コンクリートであってもなくてもよい改質硫黄セメントの製造における非イオン界面活性剤の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、改質(modified)硫黄の製造において非イオン界面活性剤を使用することに関する。本発明はまた、改質硫黄、および/または改質硫黄コンクリートなどの改質硫黄セメントにも関する。本発明はまた、非イオン界面活性剤を含む改質硫黄コンクリートを含む、障壁および封じ込め構造物にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
硫黄は、それぞれ2.07 Mg/m3、2.046 Mg/m3、および1.96 Mg/m3の比重を有する、斜方晶系、無定形、および単斜晶系の形態を含めて、多数の同素形を有する。単体(elemental)(未改質)硫黄は、119.2℃の融点よりも高い温度での液体硫黄から、室温(または95.5℃未満)での固体硫黄へと、各同素形の間で、二段階で複雑に転移する。固化すると、硫黄は最初に単斜晶系のβ相を取る。それは液体硫黄と比較して体積で7%収縮している。単体硫黄を鉱物骨材に対する結合剤として使用し、硫黄コンクリート材料を形成する場合、この収縮は細孔中および表面に陰圧(sub-pressure)をもたらす。
【0003】
ほんの0.3〜0.4 MPaしかない硫黄の引張能力(tensile capacity)は、その歪みに耐えることができず、微細な亀裂が入ることは避けられない。このことにより単体硫黄のコンクリート材料は、幾分水分の浸透に対して開放されている。
【0004】
硫黄をさらに冷却すると、単斜晶系(β相)は、95.5℃で安定な斜方晶系の形態(α相)に転換する。この転移はかなり急速であり(24時間未満)、6%のさらなる体積減少をもたらす。それは、固化時に体積の補償がなされているか否かにかかわらず、結合剤の歪み、および材料内での亀裂を生じさせる。履歴的には、単体硫黄のコンクリートは、多湿条件、凍結および解凍のサイクルの繰り返し、ならびに水中への浸漬に曝された場合、機能しなくなっている(分解により、機械的な意味で)。
【0005】
原理的には、この問題を処置する2つの方法があり、硫黄結合剤をそれが長時間β相で留まるように改質するか(化学的方法)、またはα相への転移を容認するが、少なくとも長時間の間、硫黄結合剤が、収縮を引き起こすことになる微細な硫黄結晶を形成するのを妨げるか(物理的方法)のいずれかによって、材料を収縮によって課せられる応力から解放する。このことは、例えばUS 4,293,463でさらに説明されている。
【0006】
該化学的方法は、斜方晶系の構造への転換を抑制するために、硫黄を化学的に改質する(modifies)改質剤(modifying agent)と、硫黄とを組み合わせるものである。このために使用することができる適切な物質としては、ジシクロペンタジエン、またはジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、およびジペンテンの組み合わせが挙げられる。
【0007】
該物理的方法は、硫黄を物理的に改質する改質剤と、硫黄とを組み合わせるものである。典型的には、該改質剤は、有機可塑剤である。それは通常、オレフィン炭化水素ポリマー(例えばExxon Chemicalによって製造されるRP220もしくはRP020、またはEscopol)などのポリマーを含む。
【0008】
耐久性の硫黄コンクリート材料は、安定な結合剤を必要とするだけでなく、骨材と結合剤との組成物も必要とし、その結果、完全な複合材料は、変動する温度および湿度の条件下で、安定かつ耐久性のままであり続ける(例えばそれは吸収を制限する)。
【0009】
骨材は、耐久性の硫黄コンクリート製品の探求において多数の取り組みの焦点となっている。例えば水分の吸収は、緻密なグレードの鉱物骨材の使用、ならびに結合剤、混合、および固化に関する適切な組成物の設計によって制限することができる。それぞれの特定の用途に適したものとなる、異なる骨材を選択することが硫黄コンクリート材料には必要である。耐久性、清浄度、および有害物質の制限の要求を満たすために、複合骨材はACI委員会(ACI Committee)548によるASTM C 33の規格を満たさなければならない。特定の用途についての骨材の適合性を判定するために、予備的な試験を立証のために行うことが推奨される。
【0010】
耐腐食性の骨材は、清浄であり、硬質であり、丈夫であり、頑丈であり、耐久性があり、かつ膨潤する成分を含まないものでなければならない。それは、酸および塩の溶液に曝されることによる化学的な攻撃および水分の吸収にも耐えるべきである。水分の吸収、および溶解損失は、24時間の期間で1%を越えてはいけない。
【0011】
固化した硫黄コンクリートの内部に粘土が含まれる場合、該粘土は吸収能力を有していると考えられ、このことで水は該材料を透過することができるようになる。粘土が水を吸収する場合、膨張が起こり、製品の劣化をもたらす。したがって、粘度を含有する骨材は、膨張能力を制限する処理をせずに硫黄コンクリートの製造において使用すべきではない。
【0012】
硫黄コンクリートは、ポルトランドセメントコンクリートとは異なる方法で製造される。新たな段階の設計技術がアスファルトコンクリートの技術に基づき開発されている。その意図は、骨材混合物の空隙を満たすのに硫黄を少ししか必要としないように、鉱物骨材中で最大の密度および最小の空隙を有する、骨材混合物を開発することであった。該硫黄コンクリートの硫黄含有量の最適範囲は、骨材を100%の飽和にまで充填するのに必要な量よりもわずかに少なく、けれども最終的な空隙含有量を8%未満に保つのには十分高いものである。これは、骨材の接触の改善によって固化後の収縮が少なくなるため、ほとんどの場合、より高い強度の材料を生じさせる。
【0013】
鉱物充填剤は、結合剤とペーストを形成し、該ペーストは粗く微細な骨材粒子を被覆し、結合させて、頑丈でありかつ緻密な生成物を生成させる。充填剤は、(1)流動性の硫黄-充填剤のペーストの粘度、熱い可塑性のコンクリートの加工性およびブリーディングを制御し;(2)ペースト中での結晶の形成および成長のための核形成部位を提供し、大きな針状結晶の成長を最小限にし;(3)他の場合であれば硫黄で充填されることとなる鉱物骨材中の空隙を充填し、硬化収縮、および熱膨張係数を減少させ;(4)形成物の強度を増大させるための、基質中の補強剤として作用すべきである。
【0014】
したがって、上述の機能を満たすために、充填剤は、特に上記の(2)の機能(核形成部位の提供)を満たすように、単位重量あたりに多数の粒子を提供するために、適度に緻密なグレードのものであり、できる限り微細に分割されていなければならない。
【0015】
前述の考察が示すように、多くの研究が、骨材を制御することによって硫黄コンクリートの有害作用を物理的に制御することに焦点を合わせている。かかる物理的に制御された材料は、例えば乾燥地では、必ずしも利用し得るものではない。
【0016】
化学製品の大桶の建造、放射性廃棄物、または下水・塩水処理系および電解槽における混合廃棄物の封入などの商業的な用途を含めて、これまでに硫黄コンクリートについて種々の用途が提案されている。硫黄コンクリートはまた、ダム、運河の水門、および幹線道路の修理において、工兵隊(Corps of Engineers)による使用もなされている。障壁系としての硫黄コンクリート材料の使用は、米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency)によって承認されている。
【0017】
硬質のコンクリート、柔軟な舗装材料、吹き付け塗装、グラウト、ならびに酸および塩の溶液などの腐食性化合物の一時的な封じ込めを含めて、改質硫黄コンクリートについて、これまで種々の用途もまた提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、かかる改質硫黄コンクリートを長期間にわたって透過を制限するために使用することは提案されていない。長期間にわたる透過の制限は、例えば廃棄物の封じ込めに有用であり得る。したがって、長期間の封じ込めを必要とする有害廃棄物は、長期間にわたって透過を制限する障壁を含む封じ込め構造物を必要とする。この場合、該障壁は、地下水の作用による浸出および移動による有害物質中の有毒物質による汚染から地表下の土壌、および地下水を保護する助けとなり得る。該障壁はまた、有毒物質を、その貯蔵または処理の受け入れ(host)環境の内部に隔離し、閉じ込めるための手段を提供することもできる。
【0019】
この目的のために現在使用されている材料としては、水硬性セメント、粘土系土壌、熱可塑性有機結合剤、および熱硬化性有機結合剤などの工学的実務において主に使用されている材料が挙げられる。これらの材料は、地下、または地表の穴で貯蔵または処分される有害物質の周りの封じ込め障壁系として利用されている。通常、粘土系土壌の障壁が、その低い透水係数のために使用されている。粘土材料が入手できない乾燥地域では、一般に既製の合成材料がベントナイトと組み合わせて使用されている。通常の、かつ特定のセメント、およびコンクリートを使用することが提案されているが、このアプローチは完全に満足できるものであることは証明されていない。
【0020】
障壁についての考えられる望ましい特性のうちには、以下のものがある。障壁は、(1)地下水、および塩水の作用に対して不浸透性の障壁を形成し;(2)特に地下水、または塩水に関して、低い浸出率を有し;(3)比較的不活性であり;(4)化学的分解および物理的分解、ならびに生物学的過程に対して良好な耐性を有し;(5)受け入れ環境における封じ込め構造物、および封じ込められていない任意の有害物質と適合性があり;(6)貯蔵または処理の環境の障壁または埋め戻しの材料として、長期間の満足できる挙動を示し;(7)十分に供給され、妥当な価格であり;かつ(8)操作および製造の観点から取扱い、および制御が容易であるべきである。有害廃棄物の障壁としての用途に適した材料は、10-9 m/sまたはそれよりも小さいオーダーの透水係数を必要とする。
【0021】
液体の低レベルの放射性廃棄物を固化させるために硫黄を使用している研究者もいる。その固化させた材料は、例えば粘土系障壁系、およびジオシンセティックスを用いる埋め立て地で処分されている。したがって、その硫黄系材料に由来する金属が浸出することは、主要な関心事となっていない。このシナリオでは、その硫黄基質から金属が浸出するが、障壁系によって封じ込められることが期待される。ほとんどの場合、硫黄基質はなんらの化学添加物もなしで、溶融した硫黄から製造されている。
【0022】
研究者が硫黄の改質のために化学添加物を使用しようとした場合、硫黄コンクリートの耐久性は、使用される化学物質の種類のために疑問のあるものとなっている。化学的攻撃および温度に対する長期間の耐久性は調査されているが、工学的用途についての必要なレベルの満足は満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(発明の要旨)
驚くべきことに、非イオン性である界面活性剤が、硫黄の改質に有利に使用することができることを見出した。かかる界面活性剤は、オリゴマー炭化水素の混合物と組み合わせて使用される場合、例えば改質硫黄コンクリートの製造において有用な改質硫黄の製造を可能にする。驚くべきことに、非イオン界面活性剤をオリゴマー炭化水素の混合物と組み合わせて使用して得ることができる改質硫黄コンクリートは、10-13 m/sのオーダーの透水係数を含めて、強度、耐久性、および浸出性の点で優れた性質を有していることを見出した。かかる改質硫黄コンクリートを使用することは、粘土および他の微細な粒子の土壌などの材料が容易に入手し得ず、したがって通常それを遠隔地から輸送しなければならないため高価である乾燥地域で特に有利である。本発明の改質硫黄コンクリートの優れた性質はまた、廃棄物の封じ込め、例えば有害な化学物質または放射性廃棄物を封じ込めるためにも有利である。
【0024】
したがって、本発明は、改質硫黄、および/または改質硫黄コンクリートであってもなくてもよい改質硫黄セメントの製造における非イオン界面活性剤の使用を提供する。
【0025】
本発明はまた、単体硫黄、オリゴマー炭化水素の混合物、および非イオン界面活性剤を混合して混合物を生成させることを含む、改質硫黄の製造方法も提供する。
【0026】
本発明はまた、硫黄、オリゴマー炭化水素の混合物、および非イオン界面活性剤を含む、改質硫黄、ならびに改質硫黄コンクリートであってもなくてもよい改質硫黄セメントの製造におけるかかる改質硫黄の使用も提供する。
【0027】
本発明はまた、単体硫黄と、本発明の改質硫黄とを混合することを含む、改質硫黄セメント(または骨材も存在している場合は改質硫黄コンクリート)の製造方法も提供する。
【0028】
本発明はまた、単体硫黄と、本発明の改質硫黄とを含む、改質硫黄セメント(または骨材も存在している場合は改質硫黄コンクリート)も提供する。本発明の改質硫黄コンクリートは、強度が高く、本質的に不透過性であり、非常に攻撃的な環境で使用するのに適した、酸および塩に耐性のある材料である。それは、高腐食性の環境において、酸性れんが、被膜、裏当て材、または他の保護系による保護が必要であるポルトランドコンクリートの長期間にわたる費用効率の高い代替物を提供する。本発明の改質硫黄セメントのさらなる利点は、それが熱可塑性を有していることである。したがって、該改質硫黄セメントがその融点よりも高い温度に加熱される場合、それは液体になり、砂、土壌、または廃棄物などの骨材と混合され、改質硫黄コンクリートが製造され得る。冷却すると、その混合物は再固化し、固体のモノリス(monolith)を形成する。完全な強度は、水硬性セメントと比べて、数週間ではなく、数時間で達成される。さらに、水硬性セメントのような、硬化のための化学反応は要しない。このことは、結合剤と骨材との不適合性を最小にする。蒸発が非常に激しい乾燥地では、水硬性セメント(セメントを水和させ、固体の基質を生成させるのに水の使用を必要とする)の使用は水が欠乏することによって妨げられる。結果として公共の建造物は、過剰な収縮、および強度の損失を受ける。しかしながら、硫黄セメントの製造は水を必要としない。
【0029】
本発明はまた、物質の透過を制限するための障壁としての本発明の改質硫黄コンクリートの使用、および本発明の改質硫黄コンクリートを含む、物質の透過を制限するのに適した障壁も提供する。
【0030】
本発明はまた、本発明の1つ以上の障壁を含む、長期間物質を封じ込めるのに適した封じ込め構造物も提供する。
【発明の効果】
【0031】
例えば封じ込め構造物において物質の透過を制限するための障壁としての本発明の改質硫黄コンクリートの使用は、高い温度の環境のために乾燥地で特に有利である。粘土材料は入手性が不十分であり、乾燥地の地表下の土壌は、高い透水係数(10-5 m/sオーダー)を有するという事実を考慮しても、該使用は有利である。また合成材料は、特に、必要とされるであろう品質管理、および汚染浸出液(leachetes)の漏れをもたらし得る建造中の事故(例えば材料の刺し穴)の危険性を考慮すると費用がかかるため、該使用は有利である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、硫黄の重合の機構を示す。
【図2】図2は、同じ加熱および冷却の条件で、純粋な単体硫黄とビチューメンを用いて改質した硫黄との違いを示すSEM像を示す。
【図3】図3は、どのような状態で硫黄および改質硫黄が深いところにまで、および骨材間で、結合し、被覆し、浸透しているかを示すSEM像である。
【図4】図4は、本発明のコンクリート構造物の試料を異なる溶液の環境、および異なる温度に曝すことによって得られた28日の浸漬試験の結果を示す。
【図5】図5は、本発明のコンクリート構造物の試料を同じ温度で異なる食塩溶液に曝すことによって得られた1年の浸漬試験の結果を示す。
【図6】図6は、蒸留水に1年間浸漬した後の本発明のコンクリートの試料の表面から1 cmのところの破断面のSEM顕微鏡像であり、硫黄による骨材粒子の異なる被膜を示している。
【図7】図7は、コンクリート試料から浸出した硫黄の量の、時間および溶液のpHによる変化を示す。
【図8】図8は、コンクリート試料から浸出したCa、Mg、Al、およびFeの量の、時間および溶液のpHによる変化を示す。
【図9】図9は、コンクリート試料から浸出した硫黄の量の、時間および温度による変化を示す。
【図10】図10は、コンクリート試料から浸出したCaおよびMgの量の、時間および温度による変化を示す。
【図11a】図11aは、典型的な有害廃棄物の封じ込め構造物の設計を示す。
【図11b】図11bは、乾燥地で使用するための典型的な有害廃棄物の封じ込め構造物の設計を示す。
【図11c】図11cは、本発明によって提供される新規な封じ込め構造物の設計を示す。
【図12】図12は、本発明の改質硫黄のDSCサーモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
「非イオン」によって、界面活性剤が形式正味電荷を有する頭部を含まないことが意味される。
【0034】
非イオン界面活性剤は、好ましくはアルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールである。
【0035】
典型的には、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコール中のアルキル基は、12個までの炭素原子、例えば2〜10個、または4〜8個の炭素原子などを有する。それは分枝していることが好ましいが、直鎖状であってもよい。該アルキル基は、置換されていないことが好ましい。典型的には、それはオクチルであり、より典型的にはイソオクチルである。
【0036】
典型的には、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコール中のアリール基は、6〜10個の炭素原子を含む。それは単環式の環、例えばフェニルであってもよく、また別段特定されない限り2個以上の縮合環、例えばナフチルからなってもよい。該アリール基は、置換されていないことが好ましい。典型的には、それはフェニルである。
【0037】
典型的には、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコール中のアルコキシ基は、1〜4個の炭素原子、例えば2個または3個の炭素原子などを含む。好ましくは、それはエトキシである。
【0038】
典型的には、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコール中の末端のアルコール部分は、繰り返されるアルコキシ基と同数の炭素原子を有する。それは、1〜4個の炭素原子、例えば2個または3個の炭素原子などを含むことが好ましい。最も好ましくは、それは2個の炭素原子を有する。
【0039】
ポリエトキシ部分は、典型的には平均7〜40個、好ましくは30個未満、より好ましくは20個未満、例えば10個未満などのエトキシ単位を含む。1つの実施態様において、エトキシ単位の平均の数は9である。別の実施態様において、ポリエトキシ部分は平均5〜15個のエトキシ単位を含む。
【0040】
アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールは、異なる種類のアルコキシ単位を含む共重合体であってもよく、例えばそれはエトキシ単位およびプロポキシ単位の混合物を含んでいてもよい。
【0041】
典型的には、アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールは、アルキルフェノキシポリエトキシエタノールである。アルキルフェノキシポリエトキシエタノールは、平均式CrH2r+1(C6H4)O(CH2CH2O)sCH2CH2OH(式中、rは4〜12であり、sは7〜40である)を有することが好ましい。rは、5〜10、例えば7〜9などであることが好ましい。1つの実施態様において、rは4〜8である。典型的にはrは8である。sは、好ましくは30未満であり、より好ましくは20未満であり、典型的には10未満である。1つの実施態様において、sは9である。
【0042】
1つの好ましい実施態様において、界面活性剤は、イソオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。該非イオン界面活性剤は、例えば、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのRohm and Haas Companyによって製造されているTriton X-100 (RTM)であってもよい。
【0043】
典型的には、非イオン界面活性剤は、オリゴマー炭化水素の混合物と組み合わせて使用される。
【0044】
オリゴマー炭化水素としては、種々の化学種が存在し得る。典型的には、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上の多環芳香族炭化水素を含む。したがって、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上の多環芳香族炭化水素を含む組成物とすることができる。
【0045】
本発明に従って使用される多環芳香族炭化水素としては、例えばナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ナフタセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、ベンゾフルオランテン(benzofluorathene)、ペリレン、ペンタセン、コランヌレン、ベンゾ[a]ピレン、コロネン、およびオバレンが挙げられる。典型的には、多環芳香族炭化水素は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、クリセン、ピレン、ベンゾフルオランテン、ペリレン、およびベンゾ[a]ピレンから選択される1つ以上のものである。1つの実施態様において、フェナントレン、およびピレンが使用される。典型的には、フェナントレンが使用される。
【0046】
本発明に従って使用される多環芳香族炭化水素は、置換されていないか、または置換されている。置換基が存在する場合、それは典型的にはアルキル置換基、アルケニル置換基、およびアルキニル置換基などの炭化水素置換基であるが、典型的にはアルキル(akyl)である。炭化水素置換基は、通常は1〜10個の炭素原子を有し、典型的には1〜6個、または1〜4個の炭素原子を有する。炭化水素置換基は、直鎖状であってもよく、分枝していてもよい。炭化水素置換基の好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルである。より好ましいのは、メチルおよびエチルである。メチルが最も好ましい。
【0047】
典型的には、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上のアスファルテンを含む。したがって、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上のアスファルテンを含む組成物であってもよい。
【0048】
典型的には、本発明に従って使用されるアスファルテンは、アルキル化縮合芳香環である。典型的には、該アスファルテンは、不溶性n-ヘプタン(n-heptane insoluble)に不溶であるが、トルエンに可溶である。典型的には、該アスファルテンは、400〜1500ユニット(units)の分子量範囲を有する。典型的には、最も一般的な分子量は、およそ750ユニットである。分子量を調べる適切な方法は、ESI FT-ICR MSである。
【0049】
典型的には、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上のアルカンを含む。したがって、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上のアルカンを含む組成物であってもよい。
【0050】
本発明に従って使用されるアルカンは、種々の数の炭素原子を有することができ、例えば20個までの炭素原子を有するアルカン、20〜35個の炭素原子を有するアルカン、および/または35個以上の炭素原子を有するアルカンである。該アルカンは、直鎖状であってもよい。あるいは、それは、分枝しているもの、例えばイソアルカンであってもよい。
【0051】
1つの実施態様において、該アルカンは、シクロアルカン、すなわちナフテンであり得、またはこれを含み得る。ナフテンは、非環式アルカンの代わりに存在してもよいが、典型的には双方が存在する。該ナフテンは、例えば、3個以上の環、例えば4個以上または5個以上の環などを含んでいてもよい。本発明の1つの態様において、ナフテンは、40個未満の環、例えば30個未満、20個未満、または10個未満の環などを含む。該ナフテンは、置換されていなくても、アルキル基で置換されていてもよく、ここでアルキル置換基は多環芳香族炭化水素について上述したものと同じである。
【0052】
典型的には、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上の樹脂を含む。したがって、オリゴマー炭化水素の混合物は、1種以上の樹脂を含む組成物であってもよい。
【0053】
オリゴマー炭化水素の混合物は、鉄、ニッケル、およびバナジウムなどの微量の金属、ならびに/または酸素、窒素、硫黄、リン、およびハロゲンなどの微量の非金属元素を含んでいても含んでいなくてもよい。これらの非金属元素が存在する場合、それらはオリゴマー炭化水素の混合物のうちの炭化水素の構造の中の適切な所に現れていてもよい。
【0054】
オリゴマー炭化水素の混合物は、好ましくは8〜12の平均重合度を有し、典型的にはおよそ10の平均重合度を有する。オリゴマー炭化水素の混合物が、多環芳香族炭化水素、アスファルテン、アルカン(典型的には非環式および環式の双方)、および樹脂のうちの1つのもの、1つよりも多くのもの、またはすべてのものを含む組成物であることもまた好ましい。典型的には、オリゴマー炭化水素の混合物は、ビチューメンなどの、これらのすべてを含む組成物である。
【0055】
ビチューメンは、分解された有機物質の天然に存在する有機副生成物である、黒色で油状の粘稠な物質である。それは原油の蒸留から得ることができる底部の大部分の留分から得ることができる。ビチューメンは、非常に濃厚かつ粘着性であるため流動し得ず、二硫化炭素に完全に溶解し、大抵は高度に縮合した多環芳香族炭化水素から構成される。
【0056】
用語「改質硫黄」は、(a)α相の硫黄の量が、溶融した単体硫黄が単独で(on its own)室温まで冷却された場合に観察されるものよりも少ないか、または(b)微細な結晶の形態で存在しているα相の硫黄の量が、溶融した単体硫黄が単独で(on its own)室温まで冷却された場合に観察されるものよりも少ないか、のいずれかの硫黄を指す。典型的には、改質硫黄においては、α相(すなわち斜方晶系の形態)で存在していない硫黄の割合が少なくとも5%、例えば少なくとも10%または少なくとも20%などである。それは、より典型的には、少なくとも30%、または少なくとも40%である。本発明では、改質硫黄は、(a)と(b)とをともに満たし、かつα相(すなわち斜方晶系の形態)で存在していない割合の硫黄が、代わりにポリスルフィドとして主に存在していることが好ましい。したがって、該改質硫黄の重合度は、少なくとも10%、例えば少なくとも20%または30%などである。典型的には、それは少なくとも40%である。
【0057】
用語「改質硫黄セメント」は、改質硫黄を含む硫黄セメントを指す。用語「改質硫黄コンクリート」は、さらに骨材を含む硫黄セメントを指す。
【0058】
本発明の改質硫黄は、典型的には少なくとも90重量%の硫黄を含み、好ましくは少なくとも95重量%の硫黄を含み、典型的には98重量%未満の硫黄を含む。それは95〜97.5重量%の硫黄を含むことが好ましい。本発明の改質硫黄は、典型的には0.01〜0.05重量%の非イオン界面活性剤を含み、好ましくは0.02〜0.04重量%、例えば0.02〜0.03重量%またはおよそ0.025重量%などの非イオン界面活性剤を含む。本発明の改質硫黄は、典型的には1〜5重量%のオリゴマー炭化水素の混合物を含み、好ましくは2〜4重量%、例えば2〜3重量%またはおよそ2.5重量%などのオリゴマー炭化水素の混合物を含む。
【0059】
本発明の改質硫黄は、該改質硫黄の全重量を基準にして、95〜97.5重量%の硫黄、ならびに2.5〜5重量%のビチューメンおよび非イオン界面活性剤の合計の成分を含むことが好ましい。
【0060】
改質硫黄の製造方法において、使用する出発物質の好ましい量は、本質的には本発明の改質硫黄に存在することが好ましい量に相当する。例えば、好ましい態様において、改質硫黄の製造方法は、単体硫黄、ビチューメン、および界面活性剤を混合することを含み、単体硫黄は該混合物の95〜97.5重量%を占め、ビチューメンおよび界面活性剤の成分の合計は、該混合物の2.5〜5重量%を占める。
【0061】
改質硫黄の製造方法における反応時間は、通常少なくとも30分であるが、典型的には3時間未満であり、より典型的には2時間未満である。反応時間は45〜60分の範囲であることが好ましい。通常120〜150℃の反応温度が使用され、好ましくは130〜140℃の反応温度が使用される。典型的には135〜140℃の温度が使用される。およそ140℃の温度が使用されることが最も好ましい。
【0062】
該方法は、好ましくは加熱および混合の後に該混合物を冷却することを含む。冷却は、単に混合物をひとりでに周囲温度にまで冷えるように放置することによって、または何らかの方法で冷却を積極的に誘導し、かつ/もしくは制御することによって行うことができる。典型的には1分あたり5℃未満、例えば1分あたり2℃未満または3℃未満などの冷却速度が用いられ、1分あたりおよそ1℃の冷却速度が用いられることが好ましい。通常、この冷却速度が冷却工程全体を通じて用いられる。冷却速度を算出するために測定される温度は、コンクリート全体の平均温度である。
【0063】
注型工程において、型の温度はその中に入れられる混合物の温度よりも高いか、または該温度に等しいことが好ましい。典型的には、型の温度は、直近の混合温度よりも高いか、または該温度に等しい。別の好ましい実施態様において、混合物の振動を使用し、非常に緻密な改質硫黄コンクリートを製造することができる。該改質硫黄コンクリートが、水および/または例えば透過を制限することを意図する任意の廃棄物に接触させるのに適するまでには、通常1日の硬化時間が必要である。
【0064】
改質硫黄セメントの適切な形成方法は、Mohamedら, 公共建造物用硫黄ポリマーコンクリートの製造についての組成の制御(Compositional control on sulfur polymer concrete production for public works), 第7回年次UAE大学研究会議予稿集(The Seventh Annual UAE University Research Conference Proceedings)2006年, 4月27日土曜日15:45〜16:00, 工学(Eng)131〜工学(Eng)140に記載されている。
【0065】
本発明の1つの好ましい実施態様において、改質硫黄は本明細書中に規定される本発明の方法によって得ることができる。
【0066】
改質硫黄の製造方法において、非イオン界面活性剤は、オリゴマー炭化水素の混合物と組み合わされて、硫黄の重合を誘導することによって、硫黄を物理的に改質する。したがって、得られる改質硫黄セメントは、重合した硫黄を含む。重合した硫黄が存在している場合、硫黄の相転移(βからαへ)は、やはり冷却時に起こるが、重合した硫黄は硫黄結晶間で柔軟(compliant)層として作用し、そのため相転移の影響を緩和するはたらきをする。
【0067】
本発明の好ましい実施態様において、改質硫黄は、硫黄成分の全重量を基準にして、45〜65重量%、好ましくは50〜60重量%、また典型的にはおよそ55重量%の単斜晶系の硫黄を含み、35〜55重量%、好ましくは40〜50重量%、また典型的にはおよそ45重量%のポリスルフィドを含む。
【0068】
重合度は、カラムクロマトグラフィー(HPLC Agilent 1100; カラムはPLgel Mixed C, 300 * 7.5 mm * 5 μm, クロロホルム流量1 ml/min, 室温24℃)によって、二硫化炭素(CS2)に不溶性の生成物の画分を分析することにより確認することができる。
【0069】
典型的には、低分子量および高分子量の双方の画分のポリスルフィドが、本発明の改質硫黄中に存在している。該ポリスルフィドの重量平均分子量は、好ましくは10,000〜30,000であり、典型的には15,000〜20,000である。改質硫黄中に存在するポリスルフィドの数平均分子量(average number molecular weight)は、典型的には200〜500であり、好ましくは300〜400である。改質硫黄中に存在するポリスルフィドの多分散性指数(poly-disperseability index)は、該生成物の分子量分布を反映するものであるが、好ましくは3〜7であり、より好ましくは4〜6であり、典型的には5である。
【0070】
本発明の改質硫黄の製造において、非イオン界面活性剤およびオリゴマー炭化水素の混合物と、単体硫黄との反応(すなわち、それらが互いの中に分散することができる程度)は、それらがどのように相互作用するかによる。相互作用の種類は、π-π結合、極性結合または水素結合(ヘテロ原子の極性相互作用)、およびファンデルワールス力である。非イオン界面活性剤は、ビチューメンと組み合わせて使用されることが好ましく、該ビチューメンは硫黄と組み合わされた場合に、相互に溶解または分散する様々な分子種からなる均一な自己相溶性のある混合物を生成させる。典型的には、この組み合わせは、極性物質および非極性物質の連続体を含む。これは、存在するポリマーの量、反応時間、反応温度、および冷却速度に応じて、改質硫黄中にポリスルフィドの配列領域または構造領域を生じさせる。
【0071】
140℃未満の加熱温度で、単体硫黄は、ポリスルフィドを形成する。この過程を説明すると考えられている機構を図1に示す。本質的に、それは開始工程および成長工程を通じて起こる。
開始:環状S8 → 鎖状S8: (1)
成長:鎖状S8: → Sポリ: (2)
【0072】
硫黄は、単体硫黄S8の開環重合と解釈される、液体-液体の転移を通常経る。温度の増大は、運動の増大を伴い、環内の結合は歪み、最終的には壊れる。共有結合は半分に均等に壊れ、そのためジラジカルが形成される。開環することにより三つ組みのジラジカル鎖が生じる。次いで重合が起こり、長鎖が形成される。
【0073】
本発明の改質硫黄は、改質硫黄コンクリートなどの改質硫黄セメントの製造において使用することができる。改質硫黄セメントの製造方法は、単体硫黄と上に規定した本発明の改質硫黄とを混合することを含む。該方法はまた、骨材を単体硫黄および改質硫黄と混合することも含むことが好ましい。この場合、改質硫黄セメントの生成物は、改質硫黄コンクリートである。
【0074】
したがって、本発明の改質硫黄セメントは、1種以上の骨材を含むことが好ましい。これは、さらに強度を向上させ、改質硫黄セメントの利用を広げる。したがって、骨材は、物理的な安定剤としてはたらく。骨材を含む改質硫黄セメントは、改質硫黄コンクリートである。
【0075】
典型的には、骨材は補強材料である。一般に、硫黄セメントのいずれかの他の成分との反応が不利にならない限り、任意の材料を骨材として使用することができる。このように、骨材は、セメントにおいて、化学的な目的ではなく、物理的な目的を果たし、したがって任意の不活性な粒子を、それが適切な大きさのものである限り含んでいてもよい。適切な大きさは0.01〜1 mmであり、好ましくは0.05〜0.5 mmである。
【0076】
1つの可能な種類の骨材は、廃棄物である。このことは、通常は無用であり、他の状況では処分を必要とし得る、他の産業の副生成物の有益な用途を見出すという追加の利点をもたらす。例としては、フライアッシュ、鉄および鋼の製造に由来するスラグ、非鉄スラグ、家庭ごみの焼却炉灰、表土材、浚渫シルト、建造物の瓦礫、廃水処理のスラッジ、および製紙工場のスラッジが挙げられる。これらの物質は、潜在的な汚染物質である微量元素、および/または重金属(種々の環境上の危険を引き起こし得る)を含み得るため、浸潤条件時の予期される危険の可能性を評価するように使用前に留意されるべきである。
【0077】
本発明は、骨材の漸次的変化(gradation)を制御する必要がないという利点を有する。したがって、より安価な出発物質を使用することができる。安価な廃棄物を使用することができるため、骨材を使用することにより、さらにコストを減少させることもできる。それにより、得られる粒状構造物によって、相当な強度もまた加えられる。
【0078】
フライアッシュは、骨材として使用されること、すなわち該骨材はフライアッシュを含むことが好ましい。フライアッシュは、石炭の燃焼による灰様の(ashy)副生成物であり、石炭灰としても周知である。原子力産業の廃棄物である、フライアッシュの優れた廃棄物(waste)を使用することもできる。フライアッシュは、物質的には、非常に微細で粉末状の物質である。それは、大部分は、新規な球(ceno-spheres)と称される、ごく小さい中空の球の形態の粒子を備えたシリカである。典型的には、C型のフライアッシュが使用されるが、F型などの他の型を使用することもできる。これらの2つの型のフライアッシュはポゾランの特性を有しているが、C型のフライアッシュが水の存在下で硬化し、時間とともに強度を増すため、好ましい。骨材がフライアッシュを含む場合、フライアッシュは典型的には骨材の少なくとも30%を占め、好ましくは骨材の少なくとも40%を占め、典型的には骨材の少なくとも50%を占める。
【0079】
砂を骨材として使用すること、すなわち骨材が砂を含むことが好ましい。砂は、粒子または顆粒を含む、天然に存在する微細に分割された岩である。砂の最も一般的な成分は、通常は石英の形態にあるシリカ(二酸化ケイ素)であり、これはその化学的不活性、および相当な硬度のために、かなり風化に耐性がある。骨材が砂を含む場合、砂は典型的には骨材の少なくとも25%を占め、好ましくは骨材の少なくとも35%を占め、典型的には骨材の少なくとも45%を占める。
【0080】
上の考察から明らかなように、多数の異なる種類の化合物を、それらがコンクリートの形成プロセスを妨げないことを条件として、骨材として使用することができる。この目的に対して、本発明は、安価でもあり、かつ関連する環境上および経済上のコストのために他の状況では処分することも必要とされ得る望ましくない物質を使用することを可能にするという利点を有する。
【0081】
1つの実施態様において、本発明は、骨材が有害廃棄物を含む改質硫黄コンクリートを提供する。したがって該コンクリートは、いったん固化すると、その内部に埋め込まれた有害廃棄物を有している。すなわち該廃棄物は固化により封じ込められる。
【0082】
本発明の改質硫黄コンクリートにおいて、骨材の量は、得られる改質硫黄コンクリートの全重量を基準にして、通常少なくとも30重量%であり、好ましくは少なくとも40重量%であり、より好ましくは少なくとも50重量%であり、さらにより好ましくは少なくとも60重量%である。骨材の量は、得られる改質硫黄コンクリートの全重量を基準にして、85重量%以下とすることができ、さらには90重量%以下または95重量%以下にすることができる。しかしながら、骨材の量は、改質硫黄コンクリートの全重量を基準にして、典型的には85重量%未満であり、好ましくは80重量%未満であり、より好ましくは75重量%未満であり、さらにより好ましくは70重量%未満である。骨材の量は、改質硫黄コンクリートの全重量を基準にして、典型的には50〜85%であり、より好ましくは60〜70%である。
【0083】
本発明の改質硫黄セメントにおいて、単体硫黄の量は、改質硫黄セメントの全重量を基準にして、通常少なくとも97重量%であり、好ましくは少なくとも98重量%、例えばおよそ98.5重量%または99重量%などである。
【0084】
本発明の改質硫黄コンクリートにおいて、単体硫黄の量は、改質硫黄コンクリートの全重量を基準にして、通常少なくとも20%重量であり、好ましくは少なくとも25重量%であり、より好ましくは少なくとも30重量%である。単体硫黄の量は、改質硫黄コンクリートの全重量を基準にして、通常50重量%未満であり、好ましくは45重量%未満であり、より好ましくは40重量%未満である。
【0085】
本発明において、本発明の改質硫黄セメント(例えば改質硫黄コンクリート)の製造に使用するための改質硫黄は、ある量の「未改質」(すなわち未重合)硫黄を必然的に含むこととなる。しかしながら、本明細書の中で、改質硫黄セメント(改質硫黄コンクリートなど)の中の単体硫黄の量が言及される場合、それは出発物質として、改質硫黄に由来するのではなく、単体硫黄に由来する硫黄の量を指す。
【0086】
本発明の改質硫黄セメント(好ましくはコンクリートである)において、改質硫黄の量は、改質硫黄セメントの全重量を基準にして、通常少なくとも0.1重量%であり、好ましくは少なくとも0.25重量%であり、より好ましくは少なくとも1重量%である。改質硫黄の量は、改質硫黄セメントの全重量を基準にして、通常3重量%未満であり、好ましくは2重量%未満であり、より好ましくは1.5重量%未満である。
【0087】
1つの好ましい実施態様において、本発明は、20〜40重量%の砂、25〜45重量%のフライアッシュ、25〜45重量%の単体硫黄、および0.25〜2重量%の請求項12〜15のいずれか1項に記載の改質硫黄を含む、改質硫黄コンクリートを提供する。
【0088】
当然ながら、本発明の改質硫黄セメント、およびその製造方法は、国際規格ACI 548.2R(建築における硫黄コンクリートの混合および設置のためのガイド(Guide for Mixing and Placing Sulfur Concrete in Construction))、ならびにC1159-98R03(硫黄ポリマーセメント、および耐薬品性の硬質硫黄コンクリートに使用する硫黄改質剤についての規格(Specification for Sulfur Polymer Cement and Sulfur Modifier for Use in Chemical-Resistant, Rigid Sulfur Concrete))に適合しているはずである。
【0089】
本発明の改質硫黄セメント(改質硫黄コンクリートなど)の製造方法において、使用する出発物質の好ましい量は、本質的には本発明の改質硫黄セメント(改質硫黄コンクリートなど)中に存在することが好ましい量に相当する。例えば、該改質硫黄コンクリートの製造方法は、典型的にはコンクリートの全重量を基準にして、20〜50重量%の単体硫黄、50〜80重量%の骨材、および0.1〜0.5重量%の改質硫黄を混合することを含む。このことに関連して、また本発明の他の態様において、所定組成物の中の所定成分の重量百分率を特定したときに引用された有効桁数を念頭に置かなければならない。したがって、80重量%の骨材が使用される場合、単体硫黄の20重量%という最小限の量により、少量(例えば0.1重量%)の改質硫黄の存在は排除されない。別の例として、別の好ましい態様において、該改質硫黄コンクリートの製造方法は、20〜40重量%の砂、25〜45重量%のフライアッシュ、25〜45重量%の単体硫黄、および0.25〜2重量%の改質硫黄を混合することを含む。
【0090】
本発明の改質硫黄セメント(改質硫黄コンクリートなど)の製造方法において、単体硫黄および改質硫黄(ならびに必要な場合は骨材)の混合物は、130〜150℃、典型的にはおよそ140℃の温度に、30分間〜2時間、典型的には1時間〜1.5時間加熱することができる。
【0091】
別の実施態様において、本発明の改質硫黄セメント(改質硫黄コンクリートなど)の製造方法は、(i)170〜180℃、典型的にはおよそ175℃の温度に予熱されている骨材、および(ii)単体硫黄と改質硫黄との混合物であって、130〜150℃、典型的にはおよそ140℃の温度に予熱されている混合物、をともに混合すること、ならびに次いで(i)と(ii)との混合物を、130〜150℃、典型的にはおよそ140℃の温度に20〜40分間曝すことを含む。次いで、典型的には、得られる混合物を型に流し込み、冷却させる。典型的には改質硫黄セメントは、119℃で溶融するが、149℃よりも高いとその粘度が加工できない粘稠度にまで急速に増大するため、温度の制御は重要である。
【0092】
本発明の改質硫黄コンクリートの製造方法は、成分を異なる順序で混合することを含むことができる。単体硫黄と改質硫黄とを最初に混合し、骨材をその後に加えることが好ましい。砂およびフライアッシュを骨材として使用しようとする場合、フライアッシュは砂よりも先に加えることが好ましい。
【0093】
本発明の改質硫黄セメント(改質硫黄コンクリートなど)は、好ましくは上述の方法の1つによって得ることができる。1つの好ましい実施態様において、該混合物は、冷却される前に特定の形状に注型され、該形状は障壁の使用に適した改質硫黄コンクリートのブロックを生じさせ、該障壁は物質の透過を制限するのに適するものである。
【0094】
本発明の改質硫黄セメントを製造するために130〜140℃の製造温度が用いられる場合、このことは該方法の間に少量の水分を効率的に揮発させることができるように、廃棄物中に含まれる水分および他の揮発性化合物が追い出されるという利点を有する。本方法についての固化の概念は、硫黄の基質中に骨材を捕捉し、それを物理的に固定することである。したがって、好ましい実施態様において、本発明の改質硫黄セメントは、130〜140℃の製造温度を用いて得ることができる改質硫黄コンクリートである。
【0095】
本発明において使用する単体硫黄としては、任意の特定の形態の標準的な単体硫黄を使用することができる。単体硫黄は、市販のグレードのものであってもよく、結晶性であってもよく、無定形のものであってもよい。硫黄は、硫黄セメントの製造中に溶融するため、粒径は一般に重要ではなく、硫黄は固体形態か、または液体(溶融した)形態のいずれかとして使用することができる。
【0096】
硫黄を使用することは、現在の市場の需要を上回る速度でつくり出されている他の産業の副生成物の有益な用途を提供するため、有利である。例えばアラブ首長国連邦(UAE)では、石油および天然ガスの製造において、硫化水素を浄化することによって、現在大量の副生成物の硫黄がつくり出されている。この硫黄は、本発明に従って使用することができる。
【0097】
本発明に従って使用される硫黄は、典型的には顆粒形状、および99.9%の純度を有する。それは、例えばUAEのAl Ruwais精製所(refinery)から得ることができる。
【0098】
本発明の封じ込め構造物は、適切な強度のある支持物および土台を備えた封じ込めユニットの中に本発明の1つ以上の障壁を収容することによって製造することができる。本発明の封じ込め構造物は、乾燥地で使用するのに適していることが好ましい。
【0099】
典型的には、本発明の障壁は、長期間にわたって有害廃棄物などの物質を封じ込めるのに適している。このことに関連して、「長期間」は、障壁を通じた物質の透過が、障壁寿命を限定する要因になるとは考えられないということの反映を意図したものである。それはまた、障壁がその周囲環境に分解することが障壁を限定する要因になるとは考えられないということの反映も意図したものである。換言すれば、障壁が設置された場合、障壁寿命の間、または使用が続けられる限り、透過を制限する機能、および周囲の環境中への最小限の分解が無期限に続くと考えられる。
【0100】
長期間は、例えば、少なくとも20年であり得、より好ましくは少なくとも50年であり得、さらにより好ましくは少なくとも100年であり得、例えば少なくとも250年、500年、または1000年などである。1つの好ましい実施態様において、長期間は本質的には無期限である。したがって典型的には、本発明の構造体、または構造物は、無期限に透過を制限するのに適するように配置される。
【0101】
本発明の障壁は、有害廃棄物などの物質を封じ込めるのに適している。用語「物質を封じ込めるのに適した」は、障害の形状、および寸法を反映することを意図したものである。したがって、本発明の障壁は、物質を封じ込めるという目的を覆す穴または間隙を含む形状を有すべきではない。典型的には、本発明の障壁は、封じ込められる物質と直接接触すると考えられる障壁部分の構造中に間隙または穴を有することなく、保管される物質を取り囲むように配置され、形づくられる。例えば、本発明の障壁は、カップ、フラスコ、またはボウルのように形づくることができる。すなわち、側面および底部は、間隙も穴も有さず、頂部は開口部を有し、封入される物質の挿入/取り出しを可能にする。あるいは、それは、箱、円柱、棒、またはフラットシートのように形づくることができる。しかしながら、本発明の障壁は、例えば流体物質を別の方向へ向けるために、1つ以上の特定の方向の透過を制限することが意図される場合、障壁中の穴または間隙を特徴とし得る。
【0102】
本発明の障壁が有害廃棄物のような骨材を含む(すなわちコンクリートから外へ透過することが制限される)場合、廃棄物の骨材が硫黄コンクリート内に効果的に包含される限り、障壁の形状は重要ではない。当然ながら、本発明の障壁により、障壁自体の一部ではない物質の透過も制限する(すなわち、コンクリートの中への透過とコンクリートから外への透過が共に制限される)場合、障壁は上記と同様に配置され、形づくられることが好ましい。
【0103】
典型的には、本発明の障壁は、改質硫黄コンクリートの混合物を所定の形状に形成することを可能にする制御された方法によって得られ得るか、または得られる、改質硫黄コンクリートである。このようにして形成された形状は、崩壊することなくその後に続く操作においてそれを取り扱うことを可能にする十分な構造上の完全性を有しなければならない。
【0104】
本発明の改質硫黄コンクリートの極めて低い透水係数を考慮すると、典型的には、本発明の障壁は、1 m未満の厚さである。該障壁は、0.3〜0.9 mの厚さであることが好ましく、0.5〜0.7 mの厚さであることがより好ましい。
【0105】
典型的には本発明の障壁は、モノリス、すなわち単一の固化したブロックである。本発明の封じ込め構造物は、本発明の1個以上の障壁を含むことができるが、典型的には1個を含むだけである。
【0106】
本発明の障壁は、該障壁によって封じ込められた物質が該障壁を横切って透過することを制限する働きをすることが好ましい。したがって、該障壁は、周囲の環境をそれが封じ込めている物質から保護する。しかしながら、このことと同様に、またはこのことの代わりに、該障壁は、周囲環境から物質が該障壁を横切って透過するのを制限する働きをし得る。したがって、該障壁は、それが封じ込めている物質を周囲環境から保護することができる。
【0107】
本発明の障壁は、有害廃棄物などの物質の透過を制限するのに適している。「有害廃棄物」によって、例えば毒性、可燃性、および反応性(例えば酸化または還元)、刺激性、発癌性、腐食性、感染性、催奇性、変異原性、爆発性、または放射性であることにより危険をもたらし得る物質を指すか、または有害廃棄物を容易に形成する可能性を有する物質もまた指し得ることが意味される。該廃棄物は、例えば2〜13の範囲のpHを有し得る。
【0108】
本発明の障壁はまた、海洋環境に曝すのにも適している。
【0109】
所定の障壁、または封じ込め構造物が、本発明の改質硫黄コンクリートの透過を制限する能力を利用しているという関係から、障壁または構造物が長期間にわたって物質を封じ込めるのに適しているか否かは明らかであろう。例えば、有害廃棄物を無期限の期間(その有害廃棄物を使用し、または処分する何らかの他の手段が見出され得るまで、または見出され得ない場合)収容することが意図された封じ込めユニットは、それが永続的に存在する可能性を反映するように建造されるであろう。例えば、それはおそらく頑丈なものとなり、非常に頑丈な土台を用いて恒久的に適所に配置されるであろう。かかる封じ込めユニットは、長期間にわたる物質の封じ込めに使用するのに適するものに分類されるであろう。
【0110】
一方、例えば化学製品を製造する工場で使用される大桶もしくは反応容器、または化学製品を一時的に保管するための貯蔵タンクは、長期間にわたり物質を封じ込めるのに適するものに分類されない。このことは、例えばそれらが適所に恒久的に配置されておらず(それらは何らかの時点で取り替えられることが予想されるため)、無期限に存続するように建造された土台を有していない(該土台は目的を考慮すると不要な過剰機能(over-engineering)である)ということから明らかであろう。したがって、それらは潜在的に無期限に使用され得ることを示す様式で建造されておらず、そのため無期限の使用に適したものではない。
【0111】
既に記載した通り、本発明の障壁は、有害廃棄物の封じ込めに使用することができる。図11aは、典型的な有害廃棄物の封じ込め構造物の設計を示す。例えば、米国環境保護庁(EPA)は、圧縮された粘土ライナーが少なくとも0.9 mの厚さであり、10-9 m/s以下の透水係数を有することを要求している。排水層は、典型的には1 cm/s以上の透水係数、および24時間以内に漏出を検出し得る漏出検出系を有することが要求されている。柔軟膜のライナー(flexible membrane liners)(FML)は少なくとも0.76 mmの厚さでなければならない。
【0112】
図11bは、乾燥地で使用するための典型的な有害廃棄物の封じ込め構造物の設計を示す。そのライナーは、2つのジオテキスタイルの間に挟まれているか、またはジオメンブレンに接着した粘土の薄層からなる。文献ではこの材料を記述するために種々の用語が使用されている。一般的な用語は、二重の柔軟膜のライナー(double flexible membrane liner)(DFML)である。その設計は、乾燥地では、砂の基質の下の地下水を保護するために、DFMLの2つの層を使用しなければならないことを要求している。特に建造時に必要とされるすべての品質管理/品質保証を有する合成材料が高価であることは注目に値する。その上、有害な浸出液(leachetes)が漏れることにつながる材料の刺し穴の危険性もあり、これは例えば地下の水塊を汚染し得る。
【0113】
図11cは、本発明によって提供される新規な封じ込め構造物の設計を示し、該封じ込め構造物は乾燥地で有害廃棄物を封じ込めるのに適する。そのライナーは、0.3 mの最小厚さを有する改質硫黄セメント/改質硫黄コンクリートの層からなる。かかる材料は、10-13 m/sオーダーの透水係数を有すべきであり、これはUS EPAによって特定された10-9 m/sよりもはるかに低い。そのライナー(改質硫黄セメント/改質硫黄コンクリート)は、中性媒体、酸性媒体、またはアルカリ性媒体などの異なる環境において非常に低い浸出率を有する不活性な材料である。それは、化学的および物理的な分解に対する良好な耐性を有し、そのため異なる環境条件でその強度を保持する。この設計を使用すれば、多大な省力が得られ、ヒトの健康および乾燥地の環境が保護される。このように、本発明は、物質(典型的には有害廃棄物)の透過を制限するための1つ以上のライナー層を含む封じ込め構造物を提供し、前記ライナー層は0.9 m未満の厚さであり、典型的には0.8 m未満の厚さであり、例えば0.7 m未満の厚さ、0.6 m未満の厚さ、または0.5 m未満の厚さなどである。通常、最小の厚さは0.3 mである。
【0114】
上で説明したように、本発明の改質硫黄コンクリートは、乾燥地で使用するのに特に有利である。このことに関連して、乾燥地とは、温和、温暖または熱い土地であり、かつ潜在的な蒸発散量に対する年間降水量の比が0.65未満である土地を指す。本発明の改質硫黄コンクリートはまた、記録平均降水量が1年あたり10日以下である土地での使用にも有利である。
【0115】
以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0116】
硫黄コンクリート試料の物理的性質、化学的性質、および機械的性質を調べた。
【0117】
実施例1:改質硫黄の製造
硫黄、改質剤(ビチューメン)、および非イオン界面活性剤(Triton X-100)を反応させることによって硫黄の改質を達成し、所望の直鎖状のポリスルフィドの生成物(これは硫黄の結晶化を遅らせる)を得た。存在するポリマーの全量を基準にした形成されたポリスルフィドの量は、1〜5重量%の範囲であり、反応時間は140℃で45〜60分の範囲であった。反応の進行は混合物の粘度および均一性の変化から追跡した。
【0118】
使用した硫黄は、99.9%の純度を有する顆粒状のものであり、UAEのAl Ruwais精製所から入手した。
【0119】
使用した改質剤は、UAE、ドバイのGeo-Chem Middle Eastから入手し、1.0289 g/cm3の比重、431 cSt(431 mm2/s)の135℃での動粘性率(kinematics viscosity)、および48.8℃の軟化点によって物理的に特徴付けられたポリマーであった。それは79%の炭素、10%の水素、3.3%の硫黄、および0.7%の窒素を含有した。
【0120】
生成物の改質硫黄セメントは、ポリスルフィドと未反応の単体硫黄との混合物であり、ガラス様の性質を有していた。未反応の遊離硫黄は一般にCS2に可溶性であり、一方ポリスルフィドは、不溶性であるが、その不溶性は重合度に依存し、かつ撹拌速度および反応時間にも依存する。そのため、CS2を用いて抽出し得る反応生成物の割合を調べることによって、ポリスルフィドとして存在する硫黄の百分率を推定した。カラムクロマトグラフィーを使用し、ポリスルフィドの重量平均分子量、および数平均分子量を測定した。走査型電子顕微鏡法を使用し、遊離硫黄の結晶が斜方晶系または単斜晶系であるか否かを判定した。
【0121】
カラムクロマトグラフィー(HPLC Agilent 1100; カラムはPLgel Mixed C, 300 * 7.5 mm * 5 μm, クロロホルム流量1 ml/min, 室温24℃)によって、CS2に不溶性の画分を分析することにより、ポリスルフィドの構造を43%の%収率を伴って確認した。分析データは、17417の重量平均分子量、および344の数平均分子量(average number molecular weight)を有する、低分子量の画分、および高分子量の画分のポリスルフィドが存在することを示した。生成物の分子量分布を反映する多分散性指数を5と特定し、異なるポリマー画分の存在を確認した。
【0122】
結果として、硫黄のレオロジー特性は影響を受け、そのため改質硫黄は未改質硫黄よりも高い粘度を有していた。このことは、硫黄の結晶化に重要な影響を有する。より粘性な改質硫黄によれば、分子がより多くの重合をしており、結晶の成長が抑制される。
【0123】
図2は、ポリマー改質することなく硫黄を加熱するとα(斜方晶系の形態)硫黄の結晶が形成されたが、一方硫黄をポリマー改質剤を用いて改質すると、結晶形態が調節され、支配的な微細構造はミクロンサイズの板様結晶であったことを示している。そのような組み合わさった(interlocked)微細構造は、硫黄の熱膨張時に発生する応力を緩和する手段を提供する。
【0124】
実施例2:硫黄コンクリート試料の製造
硫黄コンクリートの混合および設置についてのACI 248.2R-93に記載された手順に従って、硫黄、フライアッシュ、砂、および実施例1の改質硫黄から硫黄コンクリート試料を製造した。この新たに製造したコンクリートを型に流し込み、所望のコンクリート試料を形成した。
【0125】
使用した硫黄は、99.9%の純度を有する顆粒状のものであり、UAEのAl Ruwais精製所から入手した。
【0126】
同時に行う誘導結合プラズマ−原子発光分析(ICP-AES)VISTA-MPX CCDを用いて、使用したフライアッシュ(India-97/591)の化学分析を行った。該フライアッシュは、主にシリカ(60.9%)、アルミニウム(32.4%)、および鉄(4.34%)の酸化物からなり、少量のカルシウム(0.46%)、マグネシウム(0.66%)、およびカリウム(0.027%)を含んでいた。SAF酸化物(すなわちSiO2+Al2O3+Fe2O3)の値は50%を超えていたため、それはASTM C 618 (1980)によりC型のフライアッシュに分類された。
【0127】
使用した砂は、UAEのAl Ain地域の砂丘の採石場から得た砂漠の砂であった。ICP-AESを用いて化学分析を行った。該砂は、主にシリカ(74.4%)、カルシウム(16.35%)の酸化物、ならびに少量のマグネシウム(1.158%)、鉄(0.676%)、アルミニウム(0.47%)、およびカリウム(0.13%)からなるものであった。該砂をふるいにかけ、0.08〜0.43 mmの範囲の粒径を得た。
【0128】
硫黄コンクリート試料を50×50×5 mm(直平行六面体(cuboid))、50×50×50 mm(直平行六面体)、および38×77 mm(円柱形)の寸法で製造した。約20℃に冷却すると該試料の固化または硬化が起こった。
【0129】
実施例3:硫黄コンクリート試料の特徴づけ
硫黄コンクリート試料を多数の性能試験に供し、予想される貯蔵条件下および処分条件下で、その物理的性質、化学的性質、安定性、固化特性、電気的性質、および熱的性質を測定した。表1は測定した物理的性質および化学的性質を示す。試験した試料は、水和したポルトランドセメントに匹敵する密度を有する高密度構造を有していた。したがってそれらの試料は、水和したポルトランドセメントと同様の放射線遮蔽特性を提供するはずである。
【0130】
分析により、最良のコンクリート試料は34.4%の硫黄(改質+未改質)、36.4%のフライアッシュ、および28.95%の砂から構成されることが示された。すなわちそれらの試料は高い骨材含有量を有していた。しかしながら、それらはまた、規制上の許容基準および処分場所の許容基準を満たすか、またはそれらに勝るものでもあった。
【0131】
その熱混合物は、非常に高い周囲温度と非常に低い周囲温度のどちらでも問題なく注ぎ得る(注入工程のそのような温度変化に耐えることができない水硬性セメントコンクリートと比較した場合)ことがわかった。さらにその熱混合物は、変質せずに、何時間もの間、流体の形態で維持し得ることがわかった。
【0132】
【表1】

【0133】
実施例4:硫黄コンクリート試料の機械的性質
本発明の構造物は、高い不透過性を有することが重要である。したがって、空隙(細孔)は連結するべきではなく、その結果少しの水しか吸収し得ない。この現象は、冷却と関連する収縮の問題を克服した硫黄の改質によって防止した。
【0134】
該試料は、燃焼を援助しないことがわかった。試料の表面に存在する硫黄は、直火に曝された場合にゆっくりと燃焼したが、炎を取り去ったときに自己消火した。硫黄の低い熱伝導率により熱の遅い進入がもたらされるのである。
【0135】
コンクリート試料の高い圧縮強度に特に注目されたい(表2、50×50×50 mmの硫黄コンクリートの試料について)。該試料は、ポルトランドセメントコンクリートよりも高い機械的性質を示した。わずか1時間で最終強度の80%が得られ、試料は1日未満で大抵使用できる状態になった。この速く硬化する性質は、建造期間の短縮に寄与する。
【0136】
実施例2により製造されたコンクリートは、容易に種々の形状にプレキャストすることができることがわかった。
【0137】
また、製造した試料は、熱可塑性を有していることもわかった。すなわちそれらの試料は、強度や他の特性の損失なしで、粉砕、再溶融、再形成し得る。
【0138】
【表2】

【0139】
実施例5:硫黄コンクリート試料の流体力学的(hydro-mechanical)性質
本発明の障壁は、水性環境に曝され得、そのため試料の流体力学的性質を試験した。障壁の材料を水溶液に曝すと内部応力が生じ得、その結果として障壁における亀裂および強度損失を伴う。
【0140】
コンクリート試料を98%の硫酸、50%のリン酸、30%のホウ酸、および10%の酢酸に7日間24℃で浸漬することによって、試料に対する攻撃的な環境の影響を調べた。透水係数は、液体が障壁を透過する速度の尺度であるため、封じ込めの障壁についての最も重要な性質である。試料の透水係数の実験的に得られた結果は10-11〜10-13 m/sのオーダーであった。これにより、試料が水に対して不浸透性であることが示された。
【0141】
表3は、透水係数(38×77 mmの円柱状の硫黄コンクリート試料について)、重量の損失および機械的強度の損失(50×50×50 mmの硫黄コンクリート試料について)についてのいくつかの性能データをまとめる。透水係数は、柔軟膜の試験装置を用いて測定した。そのデータは、試料が攻撃的な環境に対して高い耐性を示すことを示している。同じ条件下でポルトランドセメントコンクリートは、これらの場合の大部分において破壊されることに留意されたい(McBeeら, 硫黄建設材料(Sulfur Construction Materials), Bulletin 678, U.S. Bureau of Mines, Washington D.C., 1985)。
【0142】
【表3】

【0143】
実施例6:耐久性能−28日の浸漬試験
実施例1のコンクリート試料を、(a)24℃、40℃および60℃の異なる温度の脱イオン水;(b)40℃および60℃の異なる温度の3%のNaClの食塩溶液、ならびに(c)40℃の70%の硫酸の酸性溶液に浸漬した。すべての試験片を28日の期間浸漬した。次いで試験期間の終わりに、試験片を換気されたフード中で24時間風乾した。重量の損失を測定し、対照とした試料(空気)について得られた値と比較し、圧縮強度試験を行った。
【0144】
これらの試料と空気中で保管した対をなす相手の試料との比較から、すべての試料について、観察される亀裂はなく、寸法の変化は無視できるほどであることが示された。図4に示したように異なる温度で水に浸漬した試料について、重量の損失、および圧縮強度における有害な影響はなかった。食塩溶液に浸漬した試料の重量の損失はほとんど有意ではなかったが、該試料は圧縮強度のわずかな減少ないし有意な減少を示し、60℃の3%の食塩溶液に浸漬した試料で減少は最大であった。このことは,硫黄ガスが形成されたこと、および空隙の量が増大したことに起因し得る。そのことはまた、塩化ナトリウムの存在により硫黄と骨材とが部分的に分離した結果でもあり得る。
【0145】
実施例7:耐久性能−1年の浸漬試験
50×50×50 mmの改質硫黄コンクリート試料を試験し、1年間室温(24±2℃)で浸漬した後に、水和物の状態での試料の耐久性、および食塩水の環境中での試料の耐久性を判定した。試料を蒸留水中、ならびに1%および3%のNaCl濃度の異なる食塩溶液中に360日まで継続的に浸漬した。これらの試料を空気中で保管した試料と比較した。試験期間中、定期的に、収縮および亀裂について試料を目視検査した。また1年後に硫黄コンクリート試料を秤量し、それらの圧縮強度および微細構造について調べた。
【0146】
図5は、試料を蒸留水および異なる食塩溶液に1年間浸漬した後の圧縮強度の変化を示す。その結果により、硫黄系障壁は耐腐食性であり、水和した環境および塩の環境で使用し得るものであることが示された。劣化は観察されず、圧縮強度の限られた損失だけが観察された。
【0147】
試験片を蒸留水中に1年間浸漬した後の微細構造の画像を図6に示す。水の存在下で、試料中の骨材を被覆する硫黄が骨材表面から溶出する傾向があることがわかる。しかしながら、改質硫黄セメントを使用すると、被覆された硫黄のこの溶出(elusion)に対する耐性が増大することとなる。このことは、改質硫黄を含浸させた多孔質体の存在に起因し得、該改質硫黄は通常の硫黄の相互作用力とは異なる相互作用力を有し得、該相互作用力は改質硫黄に水による損傷を受けにくくさせるものである(Feldmanら, Cem. Concr. Res., 8, 273〜281 (1978); Beaudoinら, The Int. Journal of Cement Compositions and Lightweight Concrete, 6(1), 13〜17, (1984))。
【0148】
図3は、硫黄コンクリート試料が、疎水性の硫黄で骨材を包み込むことによって骨材間に深く浸透した改質硫黄を伴う緻密な構造をどのように形成していたかを示している。
【0149】
実施例8:浸出試験
50×50×5 mmの改質硫黄コンクリート試料の腐食性環境に対する耐性を、種々の水性環境中で試料を試験することによって調べた。1000 mlの試験する水性環境で満たした透明の容器に試料を浸漬した。硫酸塩としての硫黄の浸出、ならびにカルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよび鉄などの金属の塩の浸出の総量を測定するために、それぞれの水溶液から1 mlをICPによる分析に使用した。各試験は二重に行い、再現性を確保した。
【0150】
コンクリート試料について浸出試験を行い、本発明の構造物から浸出し得る環境に有害な金属の汚染物質の濃度を評価した。試料からの硫黄(硫酸塩として)の化学浸出を上で述べたICP-AESを用いて測定した。単体硫黄は異なる密度を有する異なる同素形で存在し、それらは冷却速度に対して感応性であるため、その硫黄が酸化のための良好な場所を提供する微細亀裂および表面欠陥を生じ得ることは注目に値する。式3および4により示されるように酸素および水の存在下で、硫黄はゆっくりと亜硫酸(sulfite)に酸化され、次いで硫酸(sulfate)に酸化される(MattusおよびMattus, 1994, 低濃度の放射性廃棄物または混合廃棄物の固定化用の廃棄物形態としての硫黄ポリマーセメントの評価(Evaluation of Sulfur polymer cement as a Waste Form for the Immobilization of Low-Level Radioactive or Mixed Waste), ORNL/TM-12657, Oak Ridge National Laboratory, Oak Ridge, TN)。
S0+O2+2H2O → H2SO3 (3)
H2SO3+1/2O2 → H2SO4 (4)
【0151】
加速濾過試験(Accelerated Leach Test)(ALT)の手順、すなわちモノリス状無機物の濾過試験(Monolithic Inorganic Leach Test)ASTM C 1308に従って、浸出実験を行った。この試験方法は、固化した廃棄物の浸出速度を速める方法を提供し、放出が拡散律速であるかを判定するものである。この試験方法は、試験中に分解したり、変形したり、浸出機構が変化したりしない任意の材料に適用することができる。拡散が支配的な浸出機構である場合、この試験の結果を使用し、廃棄物の形態からの長期間放出のモデルを作ることができる。その手順は固化した基質からの潜在的な浸出性を評価するために開発されたものである。該試験のプロトコルは、pH、媒体、温度、容積に対する表面積の比および試験時間の変化を規定する。得られた結果は、浸出硫黄画分の増分および累積を含むものであった。
【0152】
時間および溶液のpHの影響
浸出試験を4、7、および9のいくつかの一定のpH値で行い、試料からの硫黄および金属酸化物の浸出に対するpHの影響を評価した。瓶中で等しい体積の酸(酢酸、リン酸、およびホウ酸)を混合することによって、Britton, 水素イオン(Hydrogen Ions), 第4版, Chapman and Hall, 313 (1952)によって報告された方法を改変することによって調製した、汎用の緩衝液を使用した。該酸混合物の全モル濃度は、3つの酸について0.4 Mに維持した。酸混合物を必要とされる量の1 Mの水酸化ナトリウム溶液と混合することによって、所望のpHに到達させた。3つの緩衝液、すなわちpH 4、7、および9のものについての一定のイオン強度をpHメータを用いて維持し、調節した。硫黄コンクリート試料を、試験する緩衝液で満たした透明の容器に浸漬した。アリコートをサンプリングし、ICP分析に付し、浸出した硫黄および金属の全量を測定した。
【0153】
時間の関数としての増分浸出のデータを図7および図8に示す。該結果により次のことが示された。
1.行った試験は、硫黄の浸出率が、水性環境中でpHの変化にかかわらず極めて低いことを示している。図7に示されるように、酸性(pH 4)、中性(pH 7)およびアルカリ性(pH 9)の媒体中で固化した基質から浸出した硫黄の量は、およそ同じである。このことは、水性環境中では固化した基質の安定性が、溶液のpHとは無関係であることを示唆し得、同様の結果がSlivaら, 「低濃度廃棄物のガラス基質のカプセル材料としての硫黄ポリマーセメント(Sulfur Polymer Cement as a Low Level Waste Glass Matrix Encapsulant)」, PNNL-10947, パシフィックノースウェスト国立研究所(Pacific Northwest National Laboratory), リッチランド, ワシントン州, 1996年1月によって報告された。溶液のpHは経時的に一定であったことが報告されたため、浸出する硫黄の量が時間とともにわずかに増加することが観察されたが、放出された硫黄は緩衝能を克服できなかった。
2.砂およびフライアッシュなどの材料は、浸出し得るか、または抽出され得る金属の汚染物質を含むため、こうした金属の汚染物質の潜在的な浸出性を評価することは最も重要である。図8に示した結果は、主な浸出した金属がCaであり、より少ない量のMg、AlおよびFeもまた浸出したことを示した。このことは、これらの原子の電気陰性度によって説明することができる。金属が異なれば電子を獲得する傾向が異なることは公知である。原子の電気陰性度が大きいほど、電子に対するその親和力が大きい。Ca、Mg、Al、Fe、および硫黄の電気陰性度は、それぞれ-1.00、-1.55、-1.61、-1.83、および-2.58である。
3.図8からpH値にかかわらず、すべての曲線は同じ傾向に従っていることがわかる。金属イオンは酸性のpH値よりもアルカリ性のpH値で低い溶解度を有する。以下に述べるように、これらの金属酸化物の基本的な性質の違いにより、その異なる浸出効果を説明することができる。
a.多くの金属酸化物は、水と反応し、アルカリ性水酸化物を形成する。例えば酸化カルシウム(生石灰)は水と反応して水酸化カルシウムを形成する。
金属酸化物+水 → 金属水酸化物 (5)
CaO (s)+H2O (l) → Ca(OH)2 (aq) (6)
b.水と反応しない金属酸化物もあるが、それらは、酸と反応し、塩および水を形成する場合、塩基性となる。
金属酸化物+酸 → 塩+水 (7)
MgO (s)+2HCl (aq) → MgCl2+H2O (l) (8)
c.他の金属酸化物は両性を示す。すなわちそれらは、強酸および強塩基に溶解する酸化アルミニウムのように、酸および塩基のどちらとも反応する。
Al2O3+6H+ → 2Al3++3H2O (9)
Al2O3+6OH-+3H2O → 2Al(OH)63- (10)
d.さらに他の金属酸化物は中性かつ非反応性である。
4.試験期間を通じて時間とともに金属の浸出はわずかだが直線的に増大したが、溶液のpHは同じpHで緩衝された。
5.固化した基質の低い透水係数のために、物質の浸出は通常非常に少ない。また、固化による硬化のために、フライアッシュ中に見出される金属酸化物は、より溶解性の低い金属硫化物、およびわずかな割合の硫酸塩に転換されているため、基質の内部で化学的に結合している(Darnellら, 加熱された原型容器、および加熱されていない原型容器の中の硫黄ポリマーセメントおよび非放射性廃棄物の原寸大の試験(Full-scale tests of sulfur polymer cement and non-radioactive waste in heated and unheated prototypical containers), EGG-WM-10109, アイダホ国立工学研究所(Idaho Natl. Engineering Lab.), アイダホフォールズ, アイダホ, (1992))。金属酸化物がより溶解性の低い硫化物の形態へ転換するというこの性質は、Mayberryら, 低濃度の混合廃棄物の最終的な廃棄物形態についての技術領域の状況報告(Technical area status report for low-level mixed waste final waste forms), 第1巻, DOEMWIP-3, 混合廃棄物の統合計画(Mixed Waste Integrated Program), 技術開発局(Office of Technology Development), 米国エネルギー省(US Dep. Of Energy), ワシントンDC (1993)によってもまた報告されている。これらの理由により、硫黄系障壁は、廃棄物の固定化のための基質または結合剤として、利用するための良好な候補となる。浸出の研究により、硫黄の改質方法が、固化した基質から有毒な成分が放出されることを最小限にし、または防止することが示された。
【0154】
温度の影響
温度は固化した基質から硫黄および金属が浸出する速度に大きく影響する重要な要因であるため、試料を24℃、40℃、および60℃の温度の蒸留水の中で試験した。図9および図10に示した結果は、以下のことを際立たせている。
1.室温の蒸留水の場合に浸出した硫黄は、90日の試験期間を通じて取るに足りなかった(図9)。このことは、コンクリート試料は、室温の蒸留水中で非常に安定であり、不溶性であったことを意味する。
2.蒸留水中で試験したコンクリート試料から浸出した物質は、硫黄、Ca、およびMgであった。AlおよびFeなどの他の金属は、浸出した生成物中に検出されなかった。
3.24℃、40℃、および60℃の間での蒸留水中での物質の浸出率の差異は、19日までの初期の試験期間では有意ではなく、時間とともに次第に増大した。すなわち温度の影響は非常に小さく、時間とともにゆっくりと増大した。さらに浸漬時間を増やすと、溶液中に浸出する硫黄および金属酸化物の予想される増大が観察された。このことは、蒸留水に浸漬した場合、固化した基質中の金属の反応速度が温度および時間に依存することを示すものであった。
【0155】
金属酸化物(CaおよびMg)の浸出速度は、室温では重要ではなかったが、図10に示したように、温度の増大とともにわずかに増大した。金属の溶解度は温度に依存し、したがって温度が増大するにつれて増大するため(Lageraaenら, 放射性のある、有害な、かつ混合された廃棄物の封入のための再生ポリマーの使用(Use of recycled polymers for encapsulation of radioactive, hazardous and mixed wastes), BNL-66575, (1997))、高い温度により浸出プロセスが促進された。
【0156】
他のセメントとの比較
単体硫黄およびビチューメンを用いて、しかし非イオン界面活性剤なしで、硫黄セメントを製造すると、得られるセメントは非常に脆弱であったため、困難に直面した。
本発明の改質硫黄は、β(単斜晶系)形態で存在する硫黄を有する。このことの証拠は、図12に提供されており、該図12はシクロペンタジエンオリゴマー/ジシクロペンタジエンを用いて製造した改質硫黄についてのDSCを示すUS 4,391,969の図5と比較し得るものである。しかしながら、本発明の改質硫黄は、優れた安定性をもたらすことに留意されたい。このように、US 4.391,969に記載されたコンクリートについての報告された最大貯蔵時間は6箇月であったのに対して、本発明の改質硫黄を用いて製造されたコンクリートは2年を超える期間安定であることがわかった。
【0157】
上の実施例により、本発明の改質硫黄コンクリートが、熱力学的挙動の観点および水理化学的(hydro-chemical)挙動の観点から、長期間にわたって透過を制限する障壁として使用するのに適していることが実証された。該コンクリートは、(1)その速い硬化、すなわち1日未満;その高い強度、すなわちポルトランドセメントコンクリートの強度の2〜3倍;(3)酸性、中性、およびアルカリ性の環境に対するその高い耐性;ならびに(4)それについて観察される、固化した基質からの金属の非常に低い浸出性のために、乾燥地で有害廃棄物を封じ込めるために使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質硫黄、および/または改質硫黄コンクリートであってもなくてもよい改質硫黄セメントの製造における非イオン界面活性剤の使用。
【請求項2】
界面活性剤がアルキルフェノキシポリエトキシエタノールである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
アルキルフェノキシポリエトキシエタノールが、平均式CrH2r+1(C6H4)O(CH2CH2O)sCH2CH2OH(式中、rは4〜8であり、sは7〜40である)を有する、請求項2記載の使用。
【請求項4】
平均式において、rが8であり、sが9である、請求項3記載の使用。
【請求項5】
界面活性剤がイソオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
界面活性剤がTriton X-100 (RTM)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
界面活性剤がオリゴマー炭化水素の混合物と組み合わせて使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
オリゴマー炭化水素の混合物がビチューメンである、請求項7記載の使用。
【請求項9】
単体硫黄、オリゴマー炭化水素の混合物、および請求項1〜6のいずれか1項に記載の界面活性剤を混合し、混合物を生成させることを含む、改質硫黄の製造方法。
【請求項10】
オリゴマー炭化水素の混合物がビチューメンである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
単体硫黄、オリゴマー炭化水素の混合物、および界面活性剤を含む混合物を120〜150℃の温度に30分〜3時間曝すことを含む、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
混合物が120〜150℃の温度に30分〜3時間曝された後に1分あたり約1℃の速度で冷却される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
硫黄、オリゴマー炭化水素の混合物、および請求項1〜6のいずれか1項に記載の界面活性剤を含む、改質硫黄。
【請求項14】
オリゴマー炭化水素の混合物がビチューメンであり、改質硫黄が改質硫黄の全重量を基準にして、95〜97.5重量%の硫黄、ならびに2.5〜5重量%のビチューメンおよび界面活性剤の合計の成分を含む、請求項13記載の改質硫黄。
【請求項15】
硫黄成分が、硫黄成分の全重量を基準にして、45〜65重量%の単斜晶系の硫黄、および35〜55重量%のポリスルフィドを含む、請求項13または14に記載の改質硫黄。
【請求項16】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法によって得られ得るか、または得られる、請求項13〜15のいずれか1項に記載の改質硫黄。
【請求項17】
改質硫黄コンクリートであってもなくてもよい改質硫黄セメントの製造における請求項13〜16のいずれか1項に記載の改質硫黄の使用。
【請求項18】
単体硫黄と、請求項13〜16のいずれか1項に記載の改質硫黄とを混合することを含む、改質硫黄セメントの製造方法。
【請求項19】
改質硫黄セメントが改質硫黄コンクリートであり、骨材を単体硫黄、および改質硫黄と混合し、混合物を生成させることを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
コンクリートの全重量を基準にして、20〜50重量%の単体硫黄、50〜80重量%の骨材、および0.1〜0.5重量%の改質硫黄を混合することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
混合物を130〜150℃の温度に30分〜2時間曝すことを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
(i)170〜180℃の温度に予熱されている骨材、および(ii)単体硫黄と改質硫黄との混合物であって、130〜150℃の温度に予熱されている混合物、をともに混合すること、ならびに次いで(i)と(ii)との混合物を130〜150℃の温度に20〜40分間曝し、得られる混合物を型に流し込み、冷却させることを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
請求項13〜16のいずれか1項に記載の改質硫黄、および単体硫黄を含む、改質硫黄セメント。
【請求項24】
請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法によって得られ得るか、または得られる、請求項23記載の改質硫黄セメント。
【請求項25】
さらに骨材を含むものであり、かつ改質硫黄コンクリートである、請求項23または24に記載の改質硫黄セメント。
【請求項26】
骨材がフライアッシュを含む、請求項25記載の改質硫黄コンクリート。
【請求項27】
フライアッシュがC型のフライアッシュである、請求項26記載の改質硫黄コンクリート。
【請求項28】
骨材が砂を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の改質硫黄コンクリート。
【請求項29】
20〜40重量%の砂、25〜45重量%のフライアッシュ、25〜45重量%の単体硫黄、および0.25〜2重量%の請求項13〜16のいずれか1項に記載の改質硫黄を含む、請求項25〜28のいずれか1項に記載の改質硫黄コンクリート。
【請求項30】
物質の透過を制限するための障壁としての請求項25〜29のいずれか1項に記載の改質硫黄コンクリートの使用。
【請求項31】
請求項25〜29のいずれか1項に記載の硫黄コンクリートを含む、物質の透過を制限するのに適した障壁。
【請求項32】
長期間にわたって有害廃棄物を封じ込めるのに適した、請求項31記載の障壁。
【請求項33】
0.3〜0.9 mの厚さである、請求項31または32に記載の障壁。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれか1項に記載の1つ以上の障壁を含む、長期間にわたって物質を封じ込めるのに適した封じ込め構造物。
【請求項35】
乾燥地で使用するのに適した、請求項34記載の封じ込め構造物。


【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【公表番号】特表2011−518751(P2011−518751A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505611(P2011−505611)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005338
【国際公開番号】WO2009/130584
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510055079)ユナイティッド アラブ エミレーツ ユニヴァーシティ (2)
【Fターム(参考)】