説明

界面活性剤含有粒子の製造方法、界面活性剤含有粒子及び粒状洗剤組成物

【課題】破砕機等の造粒機に界面活性剤含有粒子が付着せず、また、界面活性剤含有粒子を輸送する配管にも界面活性剤含有粒子が付着することを抑制できる界面活性剤含有粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】界面活性剤を15〜35質量%、硫酸ナトリウムを1〜20質量%の範囲で含有する捏和物を調製し、30℃及び50℃における、捏和物の損失係数tanδの値と、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度K値との関係を、下記(A)又は(B)の範囲となる様にすることを特徴とする界面活性剤含有粒子の製造方法。
(A):tanδが0.075〜0.200の値を取るとき、圧裂引張強度Kが0〜200kPa。;(B):tanδが0.075未満又は0.200を超えるとき、圧裂引張強度Kが0〜30kPa。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は界面活性剤含有粒子の製造方法、界面活性剤含有粒子及び粒状洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用等の粉体の洗剤組成物は、例えば界面活性剤を主成分とする界面活性剤含有粒子と、酵素等の他の成分を含む粒子を粉体ブレンドし、さらに香料等を噴霧する方法等によって製造することができる。
界面活性剤含有粒子は、例えば特許文献1に記載されている様に、界面活性剤、ビルダー、適度な水等を含む粘土状の捏和物を製造し、これを例えば破砕造粒、攪拌造粒等の方法によって造粒することによって製造することができる。特許文献1には、tanδと圧裂引張強度Kというパラメータを用い、これらの関係を特定の数値範囲内に制御することによって空気輸送配管での付着トラブルを改善できることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−105211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、最近は、環境負荷の観点から、界面活性剤等の有機化合物の含有量をできるだけ少なくすることが求められており、本発明者は各種検討を進めている。
しかしながら、界面活性剤の含有量が少ない捏和物を製造し、これを破砕機等の造粒機を用いて造粒しようとすると、破砕機等の造粒機に造粒した粒子が付着しやすくなることが判明した。特に界面活性剤の含有量を少なくすることによって、破砕等の操作性の点から、造粒機の設定温度を、例えば50℃程度と比較的高くすることが望ましい場合が多いが、この様な高温条件下においては、特に付着量が多くなり、結果的に造粒が困難となる。
また、この様な捏和物は、例え造粒できたとしても、界面活性剤含有粒子が配管に付着しやすく、輸送することが困難である。
そして、例えば特許文献1に開示されている組成のうち、比較的、界面活性剤の含有量が低い捏和物の組成を適用しても、破砕機等の造粒機への付着を防ぐことができない。
したがって、界面活性剤の含有量が少ない界面活性剤含有粒子を安定して製造することは困難である。
【0004】
本発明は前記問題を解決するためになされたものであり、界面活性剤を含む捏和物を造粒することによって界面活性剤含有粒子を製造する際に、破砕機等の造粒機に界面活性剤含有粒子が付着せず、また、界面活性剤含有粒子を輸送する配管にも界面活性剤含有粒子が付着することを抑制できる界面活性剤含有粒子の製造方法、及びこの製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子並びにこの界面活性剤含有粒子を含む粒状洗剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明においては以下の手段を提案する。
第1の態様は、界面活性剤を含む捏和物を造粒することにより、界面活性剤含有粒子を製造する方法であって、
界面活性剤を15〜35質量%、硫酸ナトリウムを1〜20質量%の範囲で含有する捏和物を調製し、
30℃及び50℃における、捏和物の損失係数tanδの値と、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度K値との関係を、いずれの温度においても、下記(A)又は(B)の範囲となる様にすることを特徴とする界面活性剤含有粒子の製造方法である。
(A):tanδが0.075〜0.200の値を取るとき、圧裂引張強度Kが0〜200kPa。
(B):tanδが0.075未満又は0.200を超えるとき、圧裂引張強度Kが0〜30kPa。
前記造粒する方法として、破砕造粒法を用いると好ましい。
前記tanδと前記圧裂引張強度Kの関係を調整するにおいて、界面活性剤、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム以外のビルダー、及び水から選ばれる少なくとも1種の捏和物中の含有量を調整することが好ましい。
本発明の第2の態様は本発明の界面活性剤含有粒子の製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子である。
本発明の第3の態様は本発明の界面活性剤含有粒子を含む粒状洗剤組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、界面活性剤を含む捏和物を造粒することによって界面活性剤含有粒子を製造する際に、破砕機等の造粒機に界面活性剤含有粒子が付着せず、また、界面活性剤含有粒子を輸送する配管にも界面活性剤含有粒子が付着することを抑制できる界面活性剤含有粒子の製造方法、及びこの製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子並びにこの界面活性剤含有粒子を含む粒状洗剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[界面活性剤含有粒子の製造方法]
本発明の界面活性剤の製造方法は、界面活性剤を含む捏和物を造粒することにより、界面活性剤含有粒子を製造する方法である。
造粒方法としては、捏和物を成形して造粒する方法であれば適用可能であり、破砕機を用いた破砕造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法等が挙げられる。界面活性剤粒子の造粒においては、特に破砕機を用いたときに付着が起こりやすいことから、特に破砕造粒法に本発明を適用すると効果が高く、好ましい。
【0008】
界面活性剤含有粒子は、界面活性剤、硫酸ナトリウムを必須成分として含む。そして、界面活性剤含有粒子には、硫酸ナトリウム以外の他ビルダー、酵素、漂白剤、柔軟剤、蛍光増白剤、色素、香料等の公知の洗剤に用いられる成分を配合してもよい。
【0009】
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。中でも、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
アニオン界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS塩)、アルキル硫酸塩(AS塩)、α−オレフィンスルホン酸塩(AOS塩)、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩(MES塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES塩)、石鹸等が挙げられる。中でも、LAS塩、AS塩、AOS塩、MES塩、石鹸が好ましい。塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば炭素数8〜18のアルコール(「ノニオン1」という)、脂肪酸残基の炭素数10〜18の脂肪酸メチルエステルのエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、及び/またはブチレンオキサイド(BO)付加物(「ノニオン2」という)等が挙げられる。「ノニオン1」としては、さらには炭素数10〜18のものが好ましく、特に、炭素数12〜16のものが好ましい。また、「ノニオン2」においては、さらにはEO及び/またはPO付加物が好ましい。
界面活性剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0010】
硫酸ナトリウム以外のビルダーとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ゼオライト、層状シリケート、メタケイ酸塩、オルトケイ酸塩等の無機ビルダーが挙げられ、無機ビルダーの中では、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ゼオライト、層状シリケートが好ましく、さらには、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ゼオライトが好ましい。
また、有機ビルダーを用いることもできる。有機ビルダーとしては、例えばポリカルボキシレ−ト、アミノカルボン酸、有機酸等が挙げられる。中でも、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体が好ましく、特にアクリル酸−マレイン酸共重合体が好ましい。
硫酸ナトリウム以外のビルダーとしては、無機ビルダーを用いることが好ましい。
硫酸ナトリウム以外のビルダーは1種または2種以上混合して用いることができる。
【0011】
本発明の界面活性剤粒子の製造方法においては、まず、界面活性剤と硫酸ナトリウムを含む、好適には例えば粘土状の捏和物を製造する。捏和物の原料としては、これらの他に、例えば硫酸ナトリウム以外のビルダー、酵素、漂白剤、柔軟剤、蛍光増白剤、色素や水を用いることができる。そして、これらの原料を混ぜ合わせることによって捏和物を得る。
【0012】
捏和物は、界面活性剤を15〜35質量%、好ましくは20〜34質量%、さらに好ましくは25〜32質量%含む様に調製する。15質量%以上であることにより、界面活性剤含有粒子がもろくなって、造粒機や配管等の壁面に衝突したときに、付着が発生することを防ぐことができる。35質量%以下であると、環境対応において好ましい。また、以下に示す硫酸ナトリウムの配合量とのバランスによって、界面活性剤含有粒子が柔らかくなりすぎず、造粒機や配管等の壁面に衝突したときに、付着が発生することを防ぐことができる。
【0013】
すなわち、上述の様な界面活性剤含有粒子の付着が問題となったときに、本発明者は、界面活性剤の配合量が小さくなるにつれて、ビルダー、特に無機ビルダーの量が相対的に増加するため、捏和物がもろくなる傾向があると考えた。捏和物がもろくなると、これから得られる粒子ももろくなり、壁面に衝突したときに簡単に粒子が崩壊し、表面積が大きくなり、粒子が崩壊した後の成分が壁に付着する可能性がある。しかしながら、検討を重ねたところ、硫酸ナトリウム以外のビルダーは、その量が多くなると捏和物をもろくしてしまう傾向があるが、ビルダーの中でも硫酸ナトリウムを配合すると、捏和物は柔らかくなり、むしろ付着を防ぐことができることを見出した。したがって、硫酸ナトリウムを必須とし、その配合量を調製することによって、捏和物を柔らかくすることができ、これによって、上述の様な少ない量の界面活性剤を用いた場合であっても破砕機等の造粒機に界面活性剤含有粒子が付着せず、また、界面活性剤含有粒子を輸送する配管にも界面活性剤含有粒子が付着することを抑制できることがわかった。
【0014】
捏和物は、硫酸ナトリウムを1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%、特に5〜12質量%の範囲で含有する様に調製する。
1質量%以上であることにより、捏和物のもろさを軽減することができる。その結果、後述する条件(A)、(B)に規定された数値範囲を満たすことができ、界面活性剤含有粒子の付着を防ぐことができる。20質量%以下であることにより、捏和物が柔らかくなりすぎることを抑制できる。その結果、後述する条件(A)、(B)に規定された数値範囲を満たすことができ、界面活性剤含有粒子の付着を防ぐことができる。
すなわち、硫酸ナトリウムが1〜20質量%という適度な範囲であることにより、界面活性剤含有粒子に適度な柔らかさを付与し、脆過ぎて付着したり、柔らかすぎて付着することを防ぐことができる。
なお、特許文献1に記載された組成は硫酸ナトリウムの量がこの範囲を満足していない。その理由は、特許文献1に記載のものは、本発明の様に、界面活性剤の含有量が少なく、厳しい造粒条件下の造粒が必要となる様なものではないからである。そのため特許文献1に記載された組成で捏和物を調製しても、本発明の条件(A)、(B)を満足することはできない。また、上記の様に、ビルダー、特に無機ビルダーは、その配合量が増加するにしたがって、粒子をもろくする傾向があると考えるのが技術常識の観点から通常である。したがって、硫酸ナトリウムに限っては、むしろ粒子を柔らかくする傾向があることは、驚くべきことである。
【0015】
捏和物を調製する際には、さらに、30℃及び50℃における、捏和物の損失係数tanδの値と、造粒後、好ましくは破砕造粒後の界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度K値との関係を、いずれの温度においても、下記(A)又は(B)の範囲となる様にする必要がある。
(A):tanδが0.075〜0.200の値を取るとき、圧裂引張強度Kが0〜200kPa。
(B):tanδが0.075未満又は0.200を超えるとき、圧裂引張強度Kが0〜30kPa。
【0016】
30℃と50℃という条件を設定したのは、前者は配管中における界面活性剤含有粒子の温度を想定しており、後者は本発明の様に、界面活性剤の含有量が少ない場合の造粒機中の捏和物や、これから得られる界面活性剤含有粒子の温度を想定しており、これら両方の場合において、上記(A)、(B)の条件を満たすことによって、配管や造粒機への付着を防ぐことができるためである。
つまり、配管の温度は通常20〜40℃の範囲であるから、上記30℃の温度条件下において、付着しにくい特性が得られれば、上記範囲内においても付着しにくい特性が得られる。よって、配管にて輸送する際のハンドリングが良好である。
また、造粒機内の温度は例えば40〜65℃の範囲であるから、上記50℃の温度条件下において、付着しにくい特性が得られれば、上記範囲内においても付着しにくい特性が得られる。よって、造粒時のハンドリングが良好である。
【0017】
より好ましい範囲は、(A)の条件を満たす範囲であり、さらに好ましくは
「tanδが0.075〜0.200、圧裂引張強度Kが70kPa以下」の範囲であり、
さらに好ましくは
「tanδが0.080〜0.170、圧裂引張強度Kが50kPa以下の範囲」であり、
さらに好ましくは、
「tanδが0.085〜0.150、圧裂引張強度Kが30kPa以下の範囲」である。
【0018】
特許文献1には、洗剤粒子の壁面への付着は、粘弾性と表面付着力の2つが特に重要であることが開示されている。
粘弾性はtanδにて示すことができる。
表面付着力は圧裂引張強度(K)にて示すことができる。
以下、詳細に説明する。
【0019】
「tanδ」
粘弾性を示すtanδは、損失弾性率G´´/貯蔵弾性率G´で表される。
粘弾性は、「粒子の形状をどれだけ保てるか」の尺度であり、粒子の壁面への付着のしやすさのひとつの指標とすることができる。
【0020】
粘弾性を測定する装置として、本発明では、一般的な粘弾性測定装置を用いることができる。具体的には例えばReo Stress RS75(HAAKE社製)等が挙げられる。測定の方法については、ずり、剪断応力等による測定が可能であるが、本発明では、ずり、剪断応力に対応する損失弾性率、貯蔵弾性率から粘弾性の測定を行う。損失弾性率、貯蔵弾性率は、上記測定装置において測定することができる。
【0021】
以下に測定方法の例を示す。
[tanδの測定]
(i)サンプル調整
界面活性剤を含む捏和物を製造し、これを約1.7g用い、油圧ジャッキ(マサダ製作所製)を用いて、30℃の温度条件下で、直径20mmの容器内にて、圧力200kgf/cm2をかけ、厚み約3mmになるように成形し、円盤状の成形体(サンプル)を得る。
同様にして、50℃の温度条件下においても、成形体(サンプル)を得る。
なお、捏和物としては、これをペレット状に成形した「ペレット状成形体」を用いてもよい。「ペレット状成形体」は捏和物と同じ組成であり、これを用いて製造したサンプルを評価することは、捏和物の物性を評価することと同様である。
【0022】
(ii)測定方法
測定装置は、この例ではHAAKE製 「Reo Stress RS75」を用いる。
そして、ステージ上を30℃の温度条件に保持し、上記30℃の温度条件で製造したサンプルを、その温度が変化しないうちに速やかに移し、応力10000Paにて、周波数を0.01から100Hzまで変化させ、1Hzのときの、損失弾性率G´´〔Pa〕及び貯蔵弾性率G´〔Pa〕を測定し、粘弾性tanδを求める(tanδ=損失弾性率G´´〔Pa〕/貯蔵粘弾性G´〔Pa〕)。これを30℃における捏和物のtanδとする。
また、50℃の温度条件にて製造したサンプルを、50℃の温度条件に保持したステージ上に配置する以外は、同様の条件によってtanδを測定する。これを50℃における捏和物のtanδとする。
【0023】
以下、tanδの技術的意義について詳細に説明する。
物質は、その内部に弾性的性質と粘性的性質を併せ持っている。これらを総称して粘弾性体と呼ぶ。そして、「粒子の内部(内側)」の弾性的性質と粘性的性質のバランスによって、粒子の変形のしやすさが変わる。
a) 粒子に加えられる力に対して、弾性・粘性のバランスが適当であれば、粒子は、瞬間的に変形は起こしても回復して元の形状を維持することができる。
b) 粘弾性が大きくなりすぎると、塑性変形で見られるように、粒子はつぶれて表面積が大きくなり壁面に付着する。
c) 粘弾性が小さくなりすぎると、脆性破壊のように衝撃に対してもろく崩れてしまい、結果、表面積が大きくなり壁面に付着する。
【0024】
界面活性剤含有粒子は、造粒時には造粒機の内壁に衝突する。また、配管輸送時においても、配管の内壁に衝突する。
粒子の変形と壁面への付着の関係については、以下の様な傾向が見られる。
1)tanδの値が適当であれば、粒子は、壁面に衝突した際、瞬間的に変形は起こしても回復して元の形状を維持することができる。
2)tanδの値が大きくなりすぎると(粘弾性が大きくなりすぎると)、壁面に衝突した際、塑性変形で見られるように、粒子はつぶれて表面積が大きくなり壁面に付着する。
3)tanδの値が小さくなりすぎると(粘弾性が小さくなりすぎると)、壁面に衝突した際、粒子は脆性破壊のように衝撃に対してもろく崩れてしまい、その結果、表面積が大きくなり壁面に付着する。
なお、tanδはこの様に粒子の変形のしやすさに関わる指標なので、界面活性剤含有粒子そのものを評価するよりも、その内部を形成する捏和物を評価する方が、より正確に界面活性剤含有粒子が壁面に衝突したときの変形の状態を評価することができる。そのため、tanδは、捏和物にて評価する。
【0025】
「圧裂引張強度(K)」
界面活性剤含有粒子が造粒機や配管等の壁面に衝突した際の「粒子の表面」に着目すると、粒子の衝突時に、任意に配合されるノニオン界面活性剤等の液体状バインダー成分の染み出しが起こり、衝突した界面活性剤含有粒子と壁面との間に液架橋膜が形成されて「ベタツキ」が生じた場合や、造粒機や配管内の湿度が高い場合に、環境中の水分が粒子表面に凝縮し、「ベタツキ」が生じた場合に、これらの「ベタツキ」によって、粒子の付着が起こる、というメカニズムが考えられる。
この様な染み出しや湿度等の液体に起因する「ベタツキ」が生じなければ粒子は壁面に衝突した際に跳ね返され、付着は起こらない。
【0026】
この様な「ベタツキ」に起因する「粒子の表面」における付着の起こりやすさを示す尺度を「表面付着力」と言う。なお、表面付着が生じやすいか否かは、圧裂引張強度Kによって判断することができる。また、パウダーベッドテスター(三協バイオテク(株)製)、アグロボット(ホソカワミクロン(株)製)、錠剤硬度計(岡田精工(株)製)などを用いて、粒子−粒子間の付着力、粒子−固体表面間の付着力を測定することにより判断することができる。
本発明においては、「表面付着力」を表わす指標として「圧裂引張強度K」を用いる。
【0027】
以下に測定方法の例を示す。
[圧裂引張強度Kの測定]
(i)サンプル調整
篩にて粒径350〜710μmに粒径を揃えた界面活性剤含有粒子18gを、30℃の温度条件下において、岡田精工製、単発式打錠機(製品名:ND60E)を用いて円盤状の成形体(サンプル)に調整する。成形体調製条件は以下の通りである。また、成形体の厚さは15.3〜16.0mmである。
【0028】
<成形体調製条件>
・臼内径 34mm
・臼・杵間クリアランス 0.1mm
・圧縮時稼働杵 上杵及び下杵
・上杵/下杵圧力比 1.25/1
・圧縮時間 0.175秒
【0029】
そして、50℃の温度条件においても同様に成形して成形体(サンプル)を調製する。
【0030】
(ii)測定方法
岡田精工(株)製、錠剤硬度計(製品名:TD−50)を用いて、上記30℃または50℃の温度条件で成形したサンプルについて、それぞれ、圧裂引張強度Kの測定を行う。
すなわち、上記条件で得られた成形体を錠剤硬度計にかけ、毎分20mmの速度で加圧アームを動かし、成形体の直径方向に力を加えて、崩れるまでの最大応力を測定し、以下の式より圧裂引張強度Kを求める。
圧裂引張強度K(Pa)=(2/π)×最大応力(N)/〔錠剤径(m)×錠剤厚み(m)〕
【0031】
大まかな傾向としては、圧裂引張強度Kが大きいほど、界面活性剤含有粒子は衝突時に付着しやすい傾向があり、逆に、圧裂引張強度Kが小さいほど、界面活性剤含有粒子は付着しにくい。
そのため、圧裂引張強度Kは、表面の「ベタツキ」を防ぎ、付着しない様な特性を実現するために上限値を設定する必要がある。
【0032】
圧裂引張強度Kはこの様に粒子の表面の「ベタツキ」を示す指標なので、界面活性剤含有粒子そのものの表面を評価することが、正確性の点から好ましい。すなわち、捏和物を造粒して界面活性剤含有粒子を得る過程においては、一般的には、捏和物を所定の粒子状に成形するとともに、その表面に流動性付与、造粒工程の効率化等のために、ゼオライト、炭酸ナトリウム等の破砕助剤を付着させる。この粒子の表面に存在する助剤は、小さいながらも多少は粒子表面のベタツキを緩和する役割を果たすと推測されるので、この助剤が存在する状態の界面活性剤含有粒子を評価する方が正確であると考えられる。
【0033】
「tanδと圧裂引張強度(K)のバランス」
この様に圧裂引張強度Kは表面の付着の状態を示す上で重要である。
しかし、必ずしも圧裂引張強度Kが大きい粒子が付着するということではなく、上述の様に、粒子自体がもろい物性を持つものであれば、壁面に衝突した時に粒子表面が壊れて粒子内部が剥き出しになり、これが付着につながることがある。
したがって、圧裂引張強度Kとtanδとのバランスをとることが重要である。
よって、界面活性剤含有粒子の付着しやすさの指標として、tanδと圧裂引張強度(K)の2つが重要である。
そして、例えばこれら一方が適当な数値範囲であっても他方が不適当な数値範囲になっていると、界面活性剤含有粒子の付着を防ぐことはできない。
そこで、本発明者が実験を繰り返したところ、
(A):捏和物のtanδが0.075〜0.200の値を取るとき、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度Kが0〜200kPa。
(B):捏和物tanδが0.075未満又は0.200を超えるとき、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度Kが0〜30kPa。
という条件を満足することにより配管と破砕機等の造粒機の両方において、界面活性剤の配合量が少ない界面活性剤含有粒子の付着を防ぐことができることがわかった。
【0034】
上記(A)の範囲では、tanδの値が適度な範囲で、粒子が変形しにくい。そのため、圧裂引張強度Kが広い範囲であってもよい。すなわち、圧裂引張強度Kの値が大きく、多少粒子の表面において、付着が生じやすい範囲であっても、tanδの値が適度な範囲で粒子の変形が生じにくいため、界面活性剤含有粒子の付着を防ぐことができる。
上記(B)の範囲では、tanδの値が小さく、tanδの値だけを見ると、粒子が崩壊して表面積が大きくなる付着が生じやすいか、tanδの値が大きく、粒子が変形して表面積が大きくなることによる付着が生じやすい。そのため、圧裂引張強度Kを小さい範囲として、「ベタツキ」を適度な範囲とし、バランスをとることによって付着を防ぐことができる。
【0035】
すなわち、上記(A)の条件を満たす捏和物のtanδの範囲は、上記1)の「tanδの値が適当」な範囲であり、粒子は、瞬間的に変形は起こしても回復して元の形状を維持することができる。そのため、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度Kの値が200KPa以下という広い範囲を設定することができる。例えば圧裂引張強度Kの値が大きく、「ベタツキ」の点において、多少付着しやすい状態であっても、tanδによって表される粘弾性によって、壁面に衝突した粒子の形状を回復することができ、結果として付着を防ぐことができる。
【0036】
一方、(B)の条件を満たす範囲の捏和物のtanδについて、tanδが0.075未満である場合には、tanδの値だけを見ると、界面活性剤含有粒子がもろく、崩れやすくなることによる付着が生じやすくなるので、(B)の条件に示す様に、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度Kの値を30kPa以下に調製して、「ベタツキ」を調整して、付着を防ぐことが必要となる。tanδが0.200を超える場合には、tanδの値だけを見ると、界面活性剤含有粒子が変形して粒子がつぶれて表面積が大きくなることによる付着が生じやすくなるので、(B)の条件に示す様に、圧裂引張強度Kの値を30kPa以下に調製して、圧裂引張強度Kの値を30kPa以下に調製して、「ベタツキ」を調整して、付着を防ぐことが必要となる。
【0037】
tanδと圧裂引張強度Kは、捏和物の原料、配合量を調整することによって変更することができる。
上述の様に、界面活性剤含有粒子の表面には破砕助剤を付着させることが一般的であるが、この破砕助剤による圧裂引張強度Kへの影響は小さいので、圧裂引張強度Kの調製は、捏和物の組成を変更することによって調製することが容易である。
前記tanδと前記圧裂引張強度Kの関係は、界面活性剤、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム以外のビルダー、及び水から選ばれる少なくとも1種の捏和物中の含有量を調整することが好ましい。これらを調製すると、tanδと圧裂引張強度Kの変更が容易だからである。
【0038】
(A)の条件、(B)の条件を満足するためには、図1に示した様に、以下の様に、捏和物の組成を調製することが好ましい。
tanδの値を大きくするためには、捏和物中の界面活性剤の量を増加させる;捏和物中の硫酸ナトリウムの量を増加させる;捏和物中の硫酸ナトリウム以外のビルダーの量を減少させる等の方法が例示できる。
tanδの値を小さくするためには、捏和物中の界面活性剤の量を減少させる;捏和物中の硫酸ナトリウムの量を減少させる;捏和物中の硫酸ナトリウム以外のビルダーの量を増加させる等の方法が例示できる。
圧裂引張強度Kを減少させるためには、捏和物中の水分量を減少させる。;捏和物中の界面活性剤量を減少させる。;捏和物中の硫酸ナトリウム以外のビルダーの量を増加させる等の方法が例示できる。
【0039】
硫酸ナトリウムは、配合量が多くなる程界面活性剤含有粒子を柔らかくする作用があるので、この作用を利用して、上記配合量の範囲内で、tanδと圧裂引張強度Kを調製すると、容易である。
【0040】
「製造方法例」 この例においては、主な材料として以下のものを用いて界面活性剤含有粒子を製造する方法の一例を説明する。
・MES塩。
・LAS塩。
・石鹸。
・ノニオン活性剤。
・炭酸ナトリウム。
・炭酸カリウム。
・亜硫酸ナトリウム
・ゼオライト。
・硫酸ナトリウム。
・その他のビルダー:必要に応じて例えばアクリル酸−マレイン酸共重合体等。
・少量成分:例えば蛍光剤等。
【0041】
[1]噴霧乾燥粒子の調製
MES塩、ノニオン活性剤を除いた成分を、攪拌機、ジャケットを有する反応装置(回転数60rpm)中に仕込んだ水道水に溶解分散させて、スラリーを調製する。スラリーの固形分濃度は好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは50〜68質量%である。スラリーのpHは7〜12程度である。
このとき、ジャケット温度は例えば50〜90℃、好ましくは60〜80℃である。
また、界面活性剤含有粒子を製造するときに排出される廃粉を、前記水に再溶解し、これをスラリーに一部配合することもできる。この場合、洗剤の常用成分がスラリー中に微量であるが混入する。
【0042】
このスラリーを、向流式乾燥塔を用いて、好適には以下の条件で噴霧乾燥し、好適には以下の物性を有する噴霧乾燥粒子を得る。
【0043】
<噴霧乾燥条件>
・噴霧乾燥装置例:向流式、塔径2.0m、有効長5.0m。
・微粒化方式例:加圧ノズル方式が好適である。2流体ノズル方式、高速回転円盤方式も使用可能である。
・噴霧圧力:一般に20〜40kg/cm2の範囲であり、30kg/cm2が好ましい。
・熱風入口温度:一般に100〜500℃、好ましくは200〜300℃であり、より好ましくは300℃である。
・熱風出口温度:一般に70〜150℃、好ましくは80〜120℃であり、特に100℃
が好ましい。
【0044】
<噴霧乾燥粒子の物性>
・平均粒子径:一般に100〜600μmであり、約400μmであることが好ましい。なお、平均粒子径の測定方法は、目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μmの9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行ない、各粒子径の質量頻度から質量50%径を算出して求める。
・目開き150μmの篩にかけたときに篩を通過する粒子の割合:約10質量%が好ましい。
・目開き1000μmの篩にかけたときに篩の上に残る割合:約3質量%が好ましい。
・嵩密度:一般に100〜500g/Lであり、300g/Lが特に好ましい。
・安息角:一般に30〜60度であり、40度が特に好ましい。
・水分:一般に2〜10質量%であり、特に5質量%が好ましい。
なお、噴霧乾燥粒子の物性はスラリーの構成成分、固形分濃度及び噴霧乾燥装置の微粒化条件(ノズル種類、噴霧圧力)によって変化させることができる。
【0045】
[2]捏和物の製造
得られた噴霧乾燥粒子と共に、下記に示す方法にて予め製造しておいたMES塩とノニオン活性剤の混合濃縮物、及び混合濃縮物に用いなかった残りのノニオン界面活性剤、ゼオライトおよび水道水を連続ニーダー(栗本鐵工所社製、KRC−S4型)に投入し、下記の条件で捏和して[ニーダーの回転数135rpm、ジャケット温度:ジャケット入り口5℃、出口25℃(ジャケットに通水して冷却)]、捏和物(不定形固形洗剤)を形成する。捏和物中の水の配合量は好ましくは5〜10質量%、より好ましくは6〜9質量%である。
【0046】
<MES塩とノニオン界面活性剤の混合濃縮物の製造方法>
原料の脂肪酸エステルをスルホン化し、中和して得られたMES塩(好ましくは水分濃度29〜31質量%)に、ノニオン界面活性剤の一部(MES塩に対して25質量%程度)を添加し、リサイクルフラッシュ蒸発機[プレート熱交換器、製品名:EX−11型(伝熱面積424.6m2)、(株)日阪製作所製]を用いて、好ましくは加熱管温度120〜130℃、熱交換器内圧:0.2MPa以下加圧、循環圧0.6MPa以下で蒸発操作を行ない、水分を10〜13質量%になるまで常圧フラッシュ濃縮して、MES塩とノニオン界面活性剤の混合濃縮物を得る。
【0047】
<捏和条件>
・捏和装置:連続式ニーダ−の他に、回分式ニーダー、押出機、混練・押出一体型装置等を用いることができる。
・温度制御:捏和装置のジャケットに5℃の冷水を通水することが好ましい。
・捏和物の温度:40〜80℃に制御することが好ましい。
・処理速度:装置が上記「KRC−S4型」の場合、一般に100〜300kg/hrであることが好ましい。
【0048】
[3]捏和物の造粒
得られた捏和物を押出機に投入し、下記条件にてダイスから押し出すと同時に切断し、ペレット状成形体を得る[ペレッター(カッター)のカッター周速は例えば5m/s]。
【0049】
<押出条件>
・押出機装置:スクリュー型押出機を使用すると好ましい。また、二軸型がより好ましい。特にペレッターダブル(不二パウダル(株)製、製品名:EXD−100型)、ツインドームグラン(不二パウダル(株)製)等が挙げられる。
・ダイス孔径:0.3〜50mmであることが好ましい。
・ダイス厚み:5〜50mmであることが好ましい。
・ペレット寸法:一般に、直径0.3〜50mmであり、長さ0.5〜100mmであることが好ましい。
【0050】
ついで、このペレット状成形体を粉砕し、所定の粒径に調製し、界面活性剤含有粒子を得る。好ましい粉砕条件は以下の通りである。
<粉砕条件>
・粉砕装置:カッターミルやハンマーミルを使用すると好ましい。また、多段の装置を用いた方が粒度分布がシャープになり、好ましい。特にフィッツミル(ホソカワミクロン(株)製、製品名:DKA−6型)、スピードミル(岡田精工(株)製)等が挙げられる。
・粉砕助剤:ゼオライト、炭酸ナトリウム等の粉末を捏和物100質量部に対して、3〜10質量部程度、特に6〜9質量部添加すると好ましい。
・破砕時の送風温度:通常は10〜20℃が好ましい。ただし、捏和物の組成によって好適な範囲が異なるので、20〜30℃や30〜40℃の範囲で行う場合もある。
・気/固の比率:一般に1.0〜4.0m3/kgとすることが好ましく、特に好ましくは2.5〜3.5m3/kgである。
・スクリーン径:通常捏和物の組成によって適宜変更するものであり、特に限定されない。多段粉砕の場合は下段に行くほどスクリーン径を小さくすることが好ましい。
・粉砕機の回転数:フィッツミル(製品名:DKA−6型)の最高回転数は4700rpm(周速約60m/s)であり、捏和物の組成によって適宜変更することが好ましい。
・処理速度:フィッツミル(製品名:DKA−6型)の場合、一般に300kg/hr以下とするのが好ましい。
【0051】
なお、上述の様に捏和物を造粒する方法としては、撹拌造粒法、転動造粒法等を用いることもでき、例えば上述の破砕する工程をこれらの装置を用いて行うか、あるいは捏和物を直接捏和物をこれらの装置に投入して造粒することもできる。
撹拌造粒装置としては、レディゲミキサー〔(株)マツボー社製〕、ブロシェアミキサー〔太平洋機工(株)社製〕が挙げられる。
転動造粒装置としては、容器回転型混合機を好適に使用することができる。
【0052】
[界面活性剤含有粒子]
本発明の界面活性剤含有粒子は、本発明の製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子である。この界面活性剤含有粒子は、従来の界面活性剤含有粒子と比較して、界面活性剤の含有量が少なく、硫酸ナトリウムの量が多いため、容易に区別することができる。そして、この様に界面活性剤の含有量が少ないため、環境負荷が小さいという優れた効果が得られるものである。
界面活性剤含有粒子は、嵩密度は0.45g/cc以上、好ましくは0.7〜0.9g/ccであり、平均粒径は200μm以上、5mm以下であることが好ましい。
【0053】
[粒状洗剤組成物]
本発明の粒状洗剤組成物は本発明の界面活性剤含有粒子の製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子を含むことを特徴とする粒状洗剤組成物である。
粒状洗剤組成物の配合組成は特に限定することはなく、本発明の界面活性剤含有粒子を、例えば70〜95質量%、好適には80〜85質量%の割合で配合することが好ましい。他の組成としては、例えば酵素含有粒子、漂白剤や漂白活性化剤含有粒子等が挙げられる。また、柔軟化剤、再汚染防止剤、泡コントロール剤、香料等を配合してもよい。
配合方法も特に限定するものではないが、本発明の界面活性剤含有粒子を、他の成分を含む粒子と粉体ブレンドし、必要に応じて香料等を噴霧する方法が好ましい。
本発明の粒状洗剤組成物は、その嵩密度が、一般に0.70〜1.00g/Lであり、0.80〜0.95g/Lであることが特に好ましい。
そして、本発明の粒状洗剤組成物は、本発明の界面活性剤含有粒子を含むため、界面活性剤量が少なく、環境に対する負荷が低いという効果が得られる。
【0054】
この様に、本発明においては、界面活性剤を含む捏和物を造粒することによって界面活性剤含有粒子を製造する際に、破砕機等の造粒機に界面活性剤含有粒子が付着せず、また、界面活性剤含有粒子を輸送する配管にも界面活性剤含有粒子が付着することを抑制できる界面活性剤含有粒子の製造方法及びこの製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子を含む粒状洗剤組成物を提供することができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、単に「%」と記す場合は「質量%」を示す。
【0056】
実施例において用いた材料を以下に示す。
[用いた材料]
・MES−Na:脂肪酸由来のアルキル基の炭素数が14〜16のα−スルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム塩。
・LAS塩:アルキル基の炭素数が10〜14のナトリウム塩。
・石鹸:脂肪酸ナトリウム塩。
・ノニオン活性剤:LMAO−90(商品名、日本触媒製)[ポリオキシエチレン(EO15)アルキル(C12−14)エーテル]。
*「EO15」はエチレンオキシドの平均付加モル数が15であることを示し、(C12−14)はアルキル基の炭素数が12〜14であることを示す。
・炭酸ナトリウム
・炭酸カリウム
・亜硫酸ナトリウム
・ゼオライト。
・硫酸ナトリウム。
・その他のビルダー:TL400(商品名)[アクリル酸−マレイン酸共重合体(日本触媒製)、 重量平均分子量≒50000]。
・少量成分:チノパールCBS (製品名、チバスペシャリティケミカルズ製)0.2質量%、及び亜硫酸Na(神州化学(株)残りの質量%。
【0057】
[界面活性剤含有粒子の製造及び評価]
表1、表2に示す組成の捏和物を製造し、これを破砕造粒して界面活性剤含有粒子を得た。なお、表1、2に示したのは、捏和物の組成であり、単位は質量%であり、組成の合計は100質量%である。
そして、捏和物について、tanδを測定し、得られた界面活性剤含有粒子について圧裂引張強度Kを測定した。結果を表1、2に示した。また、図2に、30℃におけるtanδと圧裂引張強度Kの測定値をプロットしたグラフを示した。図3に、50℃におけるtanδと圧裂引張強度Kの測定値をプロットしたグラフを示した。
そして、界面活性剤含有粒子について、図4に示す装置を用いて、付着の状況を評価した。
以下、詳細に説明する。
【0058】
[1]噴霧乾燥粒子の調製
表1、2に示した捏和物の組成のうち、MES−Na、ノニオン活性剤、及び顆粒ゼオライトを除いた成分を、攪拌機、ジャケットを有する反応装置内に投入し、水道水(東京都江戸川区)に溶解分散させ(攪拌機の回転数60rpm、ジャケット温度70℃)、固形分濃度約62〜65質量%のスラリー(pH7〜12)を調製した。
ついで、このスラリーを向流式乾燥塔を用いて以下の条件で噴霧乾燥し、以下に示す物性の噴霧乾燥粒子を得た。
【0059】
<噴霧乾燥条件>
・噴霧乾燥装置:向流式、塔径2.0m、有効長5.0m。
・微粒化方式:加圧ノズル方式。
・噴霧圧力:30kg/cm2
・熱風入口温度:300℃。
・熱風出口温度:100℃。
【0060】
<噴霧乾燥粒子の物性>
・平均粒子径:約400μm。
・目開き150μmの篩にかけたときに篩を通過する粒子の割合:約10質量%。
・目開き1000μmの篩にかけたときに篩の上に残る割合:約3質量%。
・嵩密度:300g/L。
・安息角:40度。
・水分:5質量%。
【0061】
[2]捏和物の製造
得られた噴霧乾燥粒子と共に、下記に示す方法にて予め製造しておいたMES−Naとノニオン活性剤の混合濃縮物、当該混合濃縮物に使用しなかったノニオン界面活性剤、顆粒ゼオライトおよび水道水(東京都江戸川区)を連続ニーダー(栗本鐵工所社製、KRC−S4型)に投入し、捏和して[ニーダーの回転数135rpm、ジャケット温度:ジャケット入り口5℃、出口25℃(ジャケットに通水して冷却)]、表1及び2に示す水分の捏和物(不定形固形洗剤)を形成した。
【0062】
<MES−Naとノニオン界面活性剤の混合濃縮物の製造方法>
原料の脂肪酸エステルをスルホン化し、中和して得られたMES−Na(水分濃度29〜31%)に、ノニオン界面活性剤の一部(MES−Naに対して25%)を添加し、リサイクルフラッシュ蒸発機[プレート熱交換器、製品名:EX−11型(伝熱面積424.6m2)、(株)日阪製作所製]を用いて、加熱管温度120〜130℃、熱交換器内圧0.2MPa以下加圧、循環圧0.6MPa以下で蒸発操作を行ない、水分を10〜13質量%になるまで常圧フラッシュ濃縮して、MES−Naとノニオン界面活性剤の混合濃縮物を得た。
【0063】
<捏和条件>
・捏和装置:連続式ニーダ−、押出機。
・温度制御:捏和装置のジャケットに5℃の冷水を通水。
・捏和物の温度:58±5℃
・処理速度:KRC−S4型、244kg/hr。
【0064】
[3]捏和物の造粒
次いで、得られた捏和物を、ペレッターダブル(不二パウダル(株)製、製品名:EXD−100型)に投入し、孔径約10mm、厚さ10mmのダイスから押し出すと同時に切断し、ペレット状成形体[直径約10mm、長さ70mm以下(実質的には5mm以上)]を得た[ペレッター(カッター)のカッター周速は5m/s]。
【0065】
このペレット状成形体に、粉砕顆粒としてのゼオライト(1次粒子凝集造粒物の平均粒径100μm)を添加し、送風共存下で3段直列に配置されたフィッツミル(ホソカワミクロン(株)製、DKA−6型)を用いて粉砕した。得られた粉砕品の温度は30±5℃あった。
【0066】
〔粉砕条件〕
・粉砕助剤:ゼオライト(添加量は捏和物100に対して7.1)
・送風速度:30m/sec。
・送風温度:15±3℃。
・気/固の比率:2.8±0.25m3/kg。
・スクリーン径:1段目6mm、2段目4mm、3段目2mm
・粉砕機回転数:4700rpm(周速約60m/s)。
・処理速度:244kg/hr
【0067】
[4]評価
(1)tanδの測定
(i)サンプル調整
上記界面活性剤含有粒子の製造の途中で得られた「ペレット状成形体」を約1.7g用い、これを、油圧ジャッキ(マサダ製作所製)を用いて、30℃の温度条件下で、直径20mmの容器内にて、圧力200kgf/cm2をかけ、厚み約3mmになるように成形し、円盤状の成形体(サンプル)を得た。
同様にして、50℃の温度条件下においても、成形体(サンプル)を得た。
【0068】
(ii)測定方法
測定装置は、HAAKE製 「Reo Stress RS75」を用いた。
ステージ上を30℃の温度条件に保持し、上記30℃の温度条件で製造したサンプルを、その温度が変化しないうちに速やかに移し、応力10000Paにて、周波数を0.01から100Hzまで変化させ、1Hzのときの、損失弾性率G´´〔Pa〕及び貯蔵弾性率G´〔Pa〕を測定し、粘弾性tanδを求めた。(tanδ=損失弾性率G´´〔Pa〕/貯蔵粘弾性G´〔Pa〕)
また、50℃の温度条件にて製造したサンプルを、50℃の温度条件に保持したステージ上に配置した以外は、同様の条件によってtanδを測定した。
【0069】
(2)圧裂引張強度Kの測定
圧裂引張強度Kは以下の様にして測定した。
(i)サンプル調整
篩にて粒径350〜710μmに粒径を揃えた界面活性剤含有粒子18gを、30℃の温度条件下において、岡田精工製、単発式打錠機(製品名:ND60E)を用いて円盤状の成形体(サンプル)に調整した。成形体調製条件は以下の通りである。また、成形体の厚さは15.3〜16.0mmである。
【0070】
<成形体調製条件>
・臼内径 34mm
・臼・杵間クリアランス 0.1mm
・圧縮時稼働杵 上杵及び下杵
・上杵/下杵圧力比 1.25/1
・圧縮時間 0.175秒
【0071】
50℃の温度条件においても同様に成形して成形体(サンプル)を調製した。
【0072】
(ii)測定方法
岡田精工(株)製、錠剤硬度計(製品名:TD−50)を用いて、上記30℃または50℃の温度条件で成形したサンプルについて、それぞれ、圧裂引張強度Kの測定を行った。
すなわち、上記条件で得られた成形体を錠剤硬度計にかけ、毎分20mmの速度で加圧アームを動かし、成形体の直径方向に力を加えて、崩れるまでの最大応力を測定し、以下の式より圧裂引張強度Kを求めた。結果を表1、表2にあわせて示した。
圧裂引張強度(Pa)=(2/π)×最大応力(N)/〔錠剤径(m)×錠剤厚み(m)〕
【0073】
(3)付着状況評価方法
配管にて輸送する際のハンドリングを評価するため、連続ニーダー(栗本鐵工所社製、KRC−S4型)を用いて捏和した捏和物を、3段直列に配置したフィッツミル(ホソカワミクロン(株)製、DKA−6型)を用いて粉砕し、その界面活性剤含有粒子を30℃の条件下で評価した。また、造粒時のハンドリングを評価するため、連続ニーダー(栗本鐵工所社製、KRC−S4型)を用いて捏和した捏和物を、スピードミル(岡田精工(株)製)を用いて粉砕し、その界面活性剤含有粒子を篩にて粒径350〜710μmに粒径を揃え、50℃の条件下で評価した。
【0074】
図4に示すような付着性の評価装置を用いて評価した。
評価装置は配管とSUS板とからなる。
図中、符号10は配管であり、配管は略L字状のもので、長管部1aと短管部1bとを有する主管1と、その長管部1aの側壁から略垂直に伸び、主管1内に開口する側管2とから構成されている。なお、側管2は、短管部1bが伸びる方向と反対方向に取り付けられている。また、長管部1aと短管部1bの角度は略直角とされている。また、配管10の各部分のサイズは図4に記載されている。
【0075】
まず、SUS板20を床に置き、これに対して、配管10を、その短管部1b側の開口部5がSUS板20の上面に対峙する様に配置した。
一方、界面活性剤含有粒子は、恒温槽内において、30℃または50℃の条件下にて、それぞれ1時間放置し、30℃、または50℃にしておいた。
【0076】
そして、長管部1a側の開口部3から、絶対湿度0.013kg−HO/kgのドライエアーの条件下を、風速47m/sの条件で流した。
ついで、側管2の開口部4から300gの界面活性剤含有粒子を投下した。
この界面活性剤含有粒子は、側管2を通り、長管部1aに到達し、長管部1a側の開口部3から流されているエアーの作用によって、長管部1aと短管部1bを通過し、開口部5から、SUS板20の上面に衝突した。
そして、50℃の恒温槽内において、同様の保温した界面活性剤含有粒子についても、同様にしてSUS板20に衝突させた。
なお、30℃で保温した界面活性剤含有粒子については、配管において、壁面に界面活性剤含有粒子が衝突することによって生じる付着を想定しており、50℃に保温した界面活性剤含有粒子については、破砕造粒機等の造粒機において、壁面に衝突することによって生じる付着を想定している。また、この試験によって良好な結果が得られるものは、実際の配管や造粒機においても付着が生じにくい、良好な結果が得られることは実験にて確認済みである。
【0077】
このとき、以下の基準にて、付着状況を評価した。結果を表1、表2にあわせて示した。
付着状況の評価基準:
○:SUS板上への付着量が250mgより少ない。
△:SUS板上への付着量が250〜350mgである。
×:SUS板上への付着量が350mgより多い。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
本発明の(A)、(B)の条件を満たす実施例においては、30℃、50℃においていずれも付着が生じなかった。
一方、比較例1、2は硫酸ナトリウムの配合量が本発明に規定された範囲の下限値未満であり、比較例3は硫酸ナトリウムの配合量が本発明に規定された範囲の上限値を超えるものである。そのため、(A)、(B)の条件を満たすことができず、結果として、30℃、50℃において付着が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】tanδ、圧裂引張強度Kの関係を示すグラフである。
【図2】実施例の結果を示すグラフである。
【図3】実施例の結果を示すグラフである。
【図4】付着状況を調べるための評価装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含む捏和物を造粒することにより、界面活性剤含有粒子を製造する方法であって、
界面活性剤を15〜35質量%、硫酸ナトリウムを1〜20質量%の範囲で含有する捏和物を調製し、
30℃及び50℃における、捏和物の損失係数tanδの値と、界面活性剤含有粒子の圧裂引張強度K値との関係を、いずれの温度においても、下記(A)又は(B)の範囲となる様にすることを特徴とする界面活性剤含有粒子の製造方法。
(A):tanδが0.075〜0.200の値を取るとき、圧裂引張強度Kが0〜200kPa。
(B):tanδが0.075未満又は0.200を超えるとき、圧裂引張強度Kが0〜30kPa。
【請求項2】
前記造粒する方法として、破砕造粒法を用いる請求項1に記載の界面活性剤含有粒子の製造方法。
【請求項3】
前記tanδと前記圧裂引張強度Kの関係を調整するにおいて、界面活性剤、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム以外のビルダー、及び水から選ばれる少なくとも1種の捏和物中の含有量を調整する請求項1または2に記載の界面活性剤含有粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の界面活性剤含有粒子の製造方法によって得られる界面活性剤含有粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の界面活性剤含有粒子を含む粒状洗剤組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291176(P2007−291176A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118005(P2006−118005)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】