説明

界面計

【課題】上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体と下層液体との界面に対応する液面位置を高精度に検出する界面計を提供する。
【解決手段】交流電源50から交流電流が供給されながら、第2の電極40の探触子44が、第2の液体24に浸漬された状態で、第1の電極30、130、230、430、530の探触子34、134、234、334、434、534が界面26を横切った際に、検出部70に対して抵抗段差を呈せしめることができるように、第1の電極の探触子の第2の液体に対する接触面積SAが、設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の抵抗値変化によって界面位置を検出する界面計に関し、特に、高温の溶融塩液体の下に高温の溶融金属融体が位置する等の比重が異なり容易に混合しない2種の高温液体から成る2層構造の液体の界面位置を検出するための界面計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、貯槽や反応槽中の液体の液面位置を検出する液面計としては、複数の電極を先端の高さが異なるように設置して、液面位置の変化による電極間の抵抗値等の変化で、液面位置を検出するもの、フロートを液中に設置して、フロート位置の変化で、液面位置を検出するもの、及び超音波やレーザー光により、液面までの距離を測定して、液面位置を検出するもの等の構成が用いられている。
【0003】
これらの中で、超音波やレーザー光を用いて、上方から液面位置を検出する構成は、液面上に液体の蒸気が冷えて形成されるミスト層が存在すると、安定した液面位置の検出が行い難い。超音波を用いる場合には、貯槽の底部に発振器を設置し、下方から液面を検出してもよいが、溶融塩のような高温の液体を対象とする場合には、貯槽の底部への発振器設置が難しい。
【0004】
フロートを用いる構成では、液面の直接的な検出に代えて、位置検出が容易なフロートを用いて検出しているに過ぎず、測定部材に関する選択肢は広がるものの、結局、フロート位置を何らかの方法で検出しなければならないことに変わりはない。
【0005】
これに対して、電極間の抵抗値等の変化によって液面位置を検出する構成は、構造が簡便で、高温の液体を対象として使用することができる利点がある。
【0006】
特許文献1は、3本の電極棒の内の1本の電極棒を基準として、各2本の電極棒間に交流電圧を印加して、タンク2に注入された液体の液面レベルを計測する液面レベル計測装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−147954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1が開示する液面レベル計測装置では、1種の液体の液面位置を出力電圧のデータベースを利用して計測するもので、2種の液体の界面の位置を検出することを何等提案するものではない。
【0009】
本発明者の更なる検討によれば、例えば、液体と大気等の気体とが界面を成す場合であれば、液体の導電率と気体の導電率とに大きな差があることを利用して、界面の位置を検出することは可能である。ところが、比重が異なり容易に混合しない2種の液体が分離して貯留されている場合に、上層の液体と下層の液体との界面に相当する液面位置を検出しようとするときには、液体間の導電率の差が、気体液体間ほどには大きくはなく、その液体位置の検出は容易ではない。
【0010】
例えば、上層の液体の導電率に対して、下層の液体の導電率が数桁程度大きい場合でも、上方の電極の先端が下層の液体に浸漬している場合に対応した抵抗測定レンジを設定しているとき、かかる上方の電極の先端が上層の液体内を下層の液体の液面に近づいていくに従い、電極間の抵抗値はほぼ線形に変化し、上方の電極の先端が下層の液体に完全に浸漬したあとは、抵抗値が大きく変化することはない。つまり、上方の電極の先端が下層の液体に接触する界面近傍での抵抗値は、変曲点レベルで変化するものであり、気体から液体に変化する界面のように、事実上の無限大から有限値へといった、明確な抵抗値変化を期待することはできない。
【0011】
つまり、上層の液体の導電率に対して、下層の液体の導電率が極めて大きい場合には、上方の電極の先端が下層の液体に接触する界面近傍での抵抗値の変化が、明確な段差(抵抗段差)を示すのであるが、かかる抵抗値の変化が明確ではないときに、高精度に界面位置に対応した液面位置を検出する構成を実現することが望まれる。
【0012】
また、上層の液体が電解液である場合には、上方の電極の先端が上層の液体中にあると、電極間は、コンデンサと抵抗が並列に接続されている回路と等価な状態となるため、安易に電極間へ電圧を印加すると、電極間に流れる電流が安定しない傾向があり、液体間の界面近傍での抵抗値の変化が一層不明確なものとなるから、これに対しても何等かの対策が望まれる。
【0013】
本発明は、以上の検討経てなされたもので、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体と下層液体との界面に対応する液面位置を高精度に検出する界面計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上のような目的を達成するため、本発明は、第1の局面において、容器内に溜められて電解質である第1の液体と、前記容器内に前記第1の液体よりも下方に溜められて導電性の第2の液体と、の成す界面を横断自在に、前記第1の液体及び前記第2の液体に浸漬自在である導電性の探触子を有する第1の電極と、前記第1の電極よりも下方に配置されて前記第2の液体に浸漬自在な導電性の探触子を有する第2の電極と、前記第1の電極の前記探触子と前記第2の電極の前記探触子との間に交流電流を供給自在な交流電源と、前記第1の電極の前記探触子と前記第2の電極の前記探触子との間に流れる前記交流電流に基づいて抵抗値を算出して、前記第1の液体と前記第2の液体との界面を検出する検出部と、を備え、前記交流電源から前記交流電流が供給されながら、前記第2の電極の前記探触子が、前記第2の液体に浸漬された状態で、前記第1の電極の前記探触子が前記界面を横切った際に、前記検出部に対して抵抗段差を呈せしめることができるように、前記第1の電極の前記探触子の前記第2の液体に対する接触面積を設定した界面計である。
【0015】
また本発明は、第1の局面に加えて、前記接触面積をSA(m)、前記第1の電極の前記探触子の前記第2の液体に対する接触抵抗係数をρ(Ω・m)、前記接触抵抗係数ρを前記第1の電極の前記探触子の前記第1の液体に対する接触抵抗係数ρ(Ω・m)で除した接触抵抗係数比をh、並びに前記第1の電極の前記探触子及び前記第2の電極の前記探触子が、前記第2の液体に浸漬された状態における測定系の固有のをR(Ω)としたときに、以下の式(数1)を満足するように設定されていることを第2の局面とする。
【0016】
【数1】

【0017】
また本発明は、第1又は第2の局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子の先端部が錐体であり、前記錐体の高さが、前記錐体の底面の外径又は長辺よりも小さいことを第3の局面とする。
【0018】
また本発明は、第1から第3のいずれかの局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子の先端部が、前記界面と平行に設定自在な平面であることを第4の局面とする。
【0019】
また本発明は、第4の局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子の先端部が、更に複数の凹凸部を有することを第5の局面とする。
【0020】
また本発明は、第1から第5のいずれかの局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子の先端部が、その先端まで絶縁部材で覆われたことを第6の局面とする。
【0021】
また本発明は、第6の局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子の先端部を覆う前記絶縁部材に、前記複数の凹凸部に対応した切欠き部を設けたことを第7の局面とする。
【0022】
また本発明は、第1から第7のいずれかの局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子は、前記第1の電極の導電部材に連絡し、前記導電部材は、絶縁部材で覆われたことを第8の局面とする。
【0023】
また本発明は、第8の局面に加えて、前記第1の電極の前記導電部材を覆う前記絶縁部材の外面は、前記第1の電極の前記探触子の外面と面一であることを第9の局面とする。
【0024】
また本発明は、第1から第9のいずれかの局面に加えて、前記交流電圧の最大電圧が、前記第1の液体の電気分解電圧よりも小さいことを第10の局面とする。
【0025】
また本発明は、第1から第10のいずれかの局面に加えて、前記第1の液体が溶融塩化亜鉛を含有する溶融塩であり、前記第2の液体が溶融亜鉛を含有する溶融金属であることを第11の局面とする。
【0026】
また本発明は、第11の局面に加えて、前記交流電流の周波数は、5Hz以上500Hz以下の範囲であることを第12の局面とする。
【0027】
また本発明は、第1から第12のいすれかの局面に加えて、前記第1の電極の前記探触子が、グラファイト製であることを第13の局面とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1の局面における界面計においては、交流電源から交流電流が供給されながら、第2の電極の探触子が、第2の液体に浸漬された状態で、第1の電極の探触子が界面を横切った際に、検出部に対して抵抗段差を呈せしめることができるように、第1の電極の探触子の第2の液体に対する接触面積が、設定されているため、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層の第1の液体と下層の第2の液体との界面に対応する液面位置を高精度に検出することができる。
【0029】
また本発明の第2の局面における界面計においては、式(数1)を満足するように設定されているため、上層液体と下層液体との界面に対応する液面位置を検出する際に、抵抗段差を大きな値で得ることができる第1の電極の探触子を確実に得て、液面位置を高精度に検出することができる。
【0030】
また本発明の第3の局面における界面計においては、第1の電極の探触子の先端部が錐体であり、錐体の高さが、錐体の底面の外径又は長辺よりも小さいものであるため、上層の第1の液体と下層の第2の液との界面を探触子が通過するときに、急激な抵抗値の変化を得ることができ、液面位置を高分解能で高精度に検出することができる。
【0031】
また本発明の第4の局面における界面計においては、第1の電極の探触子の先端部が、界面と平行に設定自在な平面であるため、上層の第1の液体と下層の第2の液との界面を探触子が通過するときに、瞬時に探触子の接触面積を増大することができてより急激な抵抗値の変化を得ることができ、液面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【0032】
また本発明の第5の局面における界面計においては、第1の電極の探触子の先端部が、更に複数の凹凸部を有するものであるため、凹凸の深さに相当する液面位置の変動を吸収して、抵抗値の変動を一定範囲に収めることができ、かかる界面に対応する液面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【0033】
また本発明の第6の局面における界面計においては、第1の電極の探触子の先端部が、その先端まで絶縁部材で覆われているため、上層の第1の液体と下層の第2の液との界面を探触子が通過するときに、より瞬時に探触子の接触面積を増大することができてより急激な抵抗値の変化を得ることができ、界面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【0034】
また本発明の第7の局面における界面計においては、第1の電極の前記探触子の先端部を覆う絶縁部材に、前記複数の凹凸部に対応した切欠き部が設けられているため、第2の液体等が、複数の凹凸部間に不要に巻き込まれて溜まることがないように、切欠き部から外部に排出することができ、界面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【0035】
また本発明の第8の局面における界面計においては、第1の電極の探触子が連絡する第1の電極の導電部材が、絶縁部材で覆われているため、不要な測定電流を供給して検出される抵抗値が変動することを確実に防止できる。
【0036】
また本発明の第9の局面における界面計においては、第1の電極の導電部材を覆う絶縁部材の外面が、第1の電極の探触子の外面と面一であるため、上層の第1の液体と下層の第2の液体との界面に不要な乱れを生じさせることなく、かかる界面に対応する液面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【0037】
また本発明の第10の局面における界面計においては、交流電圧の最大電圧が、第1の液体の電気分解電圧よりも小さい設定されるため、界面検出時に測定電流により不要な電気分解が生じることを確実に防止できる。
【0038】
また本発明の第11の局面における界面計においては、第1の液体が溶融塩化亜鉛を含有する溶融塩であり、第2の液体が溶融亜鉛を含有する溶融金属であるため、溶融塩化亜鉛を電気分解することにより、その下層に溶融亜鉛を得て、それらの界面に対応する液面位置を高分解能で高精度に検出することができる。
【0039】
また本発明の第12の局面における界面計においては、交流電流の周波数が、5Hz以上500Hz以下の範囲に設定されるため、第1の電極の探触子の先端部が、第1の液体に浸漬された場合や界面を横切る場合に、抵抗値変化が安定し、界面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【0040】
また本発明の第13の局面における界面計においては、第1の電極の探触子が、グラファイト製であるため、測定系の抵抗値を低く抑えることができ、界面位置をより高分解能で高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態における界面計の構成を示す模式的な断面図であり、液体を貯留する貯槽をも示す。
【図2】本実施形態における界面計により測定される抵抗変化曲線を示すグラフである。
【図3】図3(a)は、本実施形態における界面計の第1の電極の部分断面図であって、図3(b)のA−A断面図に相当し、図3(b)は、かかる電極の底面図であって、図3(a)のZ矢視図に相当する。また、図3(c)は、本実施形態の界面計の変形例における第1の電極の部分断面図であり、図3(d)のB−B断面図に相当し、図3(d)は、かかる電極の底面図であり、図3(c)のZ矢視図に相当する。
【図4】図3(a)及び図3(b)に示す電極を有する界面計により測定される抵抗変化曲線、並びに図3(c)及び図3(d)に示す電極を有する界面計により測定される抵抗変化曲線を各々示すグラフである。
【図5】図5(a)は、本実施形態の界面計の別の変形例における第1の電極の部分断面図であって、図5(b)のC−C断面図に相当し、図5(b)は、かかる電極の底面図であって、図5(a)のZ矢視図に相当する。また、図5(c)は、本実施形態の界面計の更に別の変形例における第1の電極の部分断面図であり、図5(d)のD−D断面図に相当し、図5(d)は、かかる電極の底面図であり、図5(c)のZ矢視図に相当する。
【図6】図6(a)は、本実施形態の界面計の更に別の変形例における第1の電極の部分断面図であって、図6(b)のE−E断面図に相当し、図6(b)は、かかる電極の底面図であって、図6(a)のZ矢視図に相当する。また、図6(c)は、本実施形態の界面計の更に別の変形例における第1の電極の部分断面図であり、図6(d)のF−F断面図に相当し、図6(d)は、かかる電極の底面図であり、図6(c)のZ矢視図に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態における界面計につき、図面を適宜参照して、詳細に説明する。なお、図中、x軸及びz軸は、直交座標系を成し、z軸の方向が鉛直の上下方向である。
【0043】
図1は、本実施形態における界面計の構成を示す模式的な断面図であり、液体を貯留する貯槽をも示す。また、図2は、本実施形態における界面計により測定される抵抗変化曲線を示すグラフである。
【0044】
図1に示すように、本実施形態における装置Sは、界面計10と、液体を貯留自在な貯槽20と、を備える。かかる装置Sは、単に液体を溜める貯留装置であってもよいし、図示を省略する一対の電解用電極を用いて、典型的には、溶融塩化亜鉛を電気分解し、溶融亜鉛と塩素ガスとを生成する電解装置であってもよい。装置Sが、電解装置である場合には、貯槽20は、電解反応容器となる。
【0045】
かかる界面計10は、第1の電極30と、第1の電極30よりも下方に配置された第2の電極40と、第1の電極30及び第2の電極40に給電線50a、50bを介して連絡して交流電圧を印加して交流電流を流す交流電源50と、交流電源50から第1の電極30及び第2の電極40に流れる交流電流を測定すべく給電線50aに連絡された交流電流計60と、交流電流計60で測定された交流電流値をデータ処理して抵抗値を算出し、その抵抗値変化の度合いに応じて2種の液体間の界面位置を検出すべく交流電流計60に連絡された検出部70と、を備える。なお、検出部70は、図示を省略する演算装置やメモり等を有する。
【0046】
具体的には、第1の電極30は、詳細は後述するが、棒状の導電部材を絶縁性の保護管で囲んだ構造を有する電極部32と、導電部材から成る鏃型の探触子34と、を備える。具体的には、かかる第1の電極30において、電極部32の保護管は、円筒状の絶縁部材であり、不要な測定電流を供給して測定する抵抗値が変動することがないように、棒状の導電部材の周囲を覆っている。また、探触子34は、電極部32の保護管及び導電部材に接続する上部の外面が、保護管の外面と面一となる円柱状であって、かつ先細りとなるような円錐状の先端部を有する。一方で、第2の電極40は、電極部42と探触子44とを備え、かかる電極部42の上下方向の全長が、第1の電極30の電極部32のものよりも長く設定される他は、第1の電極30の電極部32及び探触子34と同じ構成を有するものとした。
【0047】
また、貯槽20は、図示を省略する加熱機構により500℃に保持されており、その内部に溶融塩化亜鉛22と、それから電解生成される溶融亜鉛24と、が溜められる。500℃での塩化亜鉛の比重は2.4であり、亜鉛の比重は6.4であるから、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の両液は、上下に分離して、溶融塩化亜鉛22を上層とし溶融亜鉛24を下層とする2層構造の液体となる。ここで、検出部70は、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面を検出する。なお、かかる2層構造の液体としては、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24に限定されるものではなく、上層液体が、電解液等の導電性が低い溶融塩等の液体で、下層液体が、上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い溶融金属等の液体であれば足りる。また、溶融塩化亜鉛を電解質として用いながら電気分解をして、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24から成る2層構造の液体を得る場合においては、塩化リチウムや塩化カリウム等の支持電解質を用いてもかまわず、かかる場合には、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24には、塩化リチウムや塩化カリウム等が混入してもかまわない。
【0048】
かかる溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24から成る2層構造の液体には、第1の電極30の探触子34及び第2の電極40の探触子44が侵入し得る。 詳しくは、第1の電極30は、探触子34が溶融塩化亜鉛22とそれから電解生成される溶融亜鉛24との上昇する界面26を横断自在に固定されて配置され、第2の電極40は、探触子44が溶融塩化亜鉛22から電解生成される溶融亜鉛24中に完全に浸漬自在に固定されて配置される。なお、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26の位置が一定である場合等には、第1の電極30の探触子34の方を移動して、その界面26を横切らせてもかまわない。また、かかる探触子34が、界面26を相対的に横切る方向は、上下方向であって、界面26に直交する方向であるとする。
【0049】
また、交流電源50は、第1の電極30及び第2の電極40に交流電圧を印加して交流電流を流すものである。かかる交流電源50を測定電源として用いる理由としては、溶融塩化亜鉛22は電解質であるため、直流電圧を印加して直流電流を流すと、その電流測定値は安定しないのに対して、交流電圧を印加して交流電圧を流すと、安定した電流測定値を得ることができることが挙げられる。また、かかる交流電圧の最大電圧は、溶融塩化亜
鉛22に不要な電気分解を生じさせないように、溶融塩化亜鉛22の電気分解電圧よりも小さく設定されている。
【0050】
このように交流電源50から印加する交流電流の周波数としては、5Hz以上500Hz以下の範囲が好適である。詳しくは、印加する交流電流の周波数の下限については、印加する交流電流の周波数が低いほど、測定される電流値に対応した抵抗値が大きくなって、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26において得られる抵抗値の差が相対的に大きくできる観点からは好ましいのであるが、5Hz未満の低周波数になると安定した電流測定値が現実的に得られないため、5Hz以上であることが好ましい。
【0051】
一方で、このように印加する交流電流の周波数の上限については、印加する交流電流の周波数が高いほど、安定した電流測定値を得ることができるからは好ましいのであるが、500Hzを超える周波数になると、測定される電流値に対応した抵抗値が顕著に小さくなって、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26において得られる抵抗値の段差が相対的に小さくなるし、検出部70等に対して電磁シールドを設ける必要が生じたり、交流電源50や交流電流計60等が特殊なものとなって高価となる傾向となるので、500Hz以下であることが好ましい。更に、より商用の電源周波数に近く、安価で信頼性の高い交流電源50や交流電流計60等が使用できるという観点からは、印加する交流電流の周波数としては、50Hz以上100Hz以下の範囲が現実的により好適である。
【0052】
さて、以上の構成において、第1の電極30の探触子34が、溶融塩化亜鉛22中に浸漬され、第2の電極40の探触子44が、溶融亜鉛24中に浸漬された状態において、交流電源50から交流電圧を印加して交流電流を流したとすれば、亜鉛の導電率が塩化亜鉛の導電率に較べて5桁ほど大きいので、流れる電流の経路は、第1の電極30の探触子34の先端部と、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26と、を上下方向に最短距離で結ぶ溶融塩化亜鉛22内の経路、並びにかかる溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26と、第2の電極40の探触子44の先端部と、を斜め方向に最短距離で結ぶ溶融亜鉛24内の経路から成る。
【0053】
また、第1の電極30の探触子34及び第2の電極40の探触子44が、共に溶融亜鉛24中に浸漬された状態において、交流電源50から交流電圧を印加して交流電流を流したとすれば、流れる電流の経路は、溶融亜鉛24を介して、第1の電極30の探触子34と第2の電極40の探触子44とを結ぶ溶融亜鉛24内の経路から成る。
【0054】
ここで、第2の電極40の探触子44が、溶融亜鉛24中に浸漬された状態において、第1の電極30の探触子34の先端部と、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26と、の距離Lが、相対的に変化した場合において、交流電流計60が測定した電流値に基づいて検出部70が求める抵抗変化曲線は、図2に実線で示すようなプロフィールCを呈する。なお、図2において、横軸は、第1の電極30の探触子34の先端部と、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26と、の距離Lを示し、距離Lの値0を境に、図中右側領域で距離Lの値が正、及び図中左側領域で距離Lの値が負である。また、図2において、縦軸は、交流電流計60が測定した電流値に基づいて検出部70が求めた抵抗値Rを示す。
【0055】
かかる抵抗変化曲線Cは、距離Lの値が0と0の負側近傍との間において、急峻に変化する抵抗段差プロフィールC1を有し、その両横において、プロフィールC2及びC3を有する。
【0056】
具体的には、距離Lが負の値をとるような、第1の電極30の探触子34の先端部が、溶融亜鉛24内に完全に浸漬している状態では、検出部70が求める抵抗値は、第1の電
極30の探触子34の先端部と、第2の電極40の探触子44の先端部と、の距離に応じた値となるプロフィールC2を示し、かかる探触子34、44の先端部間の水平方向の距離が、それらの間の上下方向の距離よりも充分大きいとすれば、溶融亜鉛24の呈する抵抗値に、第1の電極30、第2の電極40及び給電線50a、50bの抵抗値を加えた実質一定の固有値Rとなる。かかる固有の抵抗値Rは、第1の電極30の探触子34の先端部及び第2の電極40の探触子44の先端部間の距離や下層の液体の種類が決まれば、あとは第1の電極30、第2の電極40及び給電線50a、50bの抵抗値で決まるものであるから、下層の液体に関する測定系の固有の抵抗値と呼ぶことにする。なお、かかる固有の抵抗値に勾配等がある場合には、距離Lの値が負から0に近づく0近傍の値を、下層の液体に関する測定系の固有の抵抗値として扱えばよい。
【0057】
一方で、距離Lが正の値とるような、第1の電極30の探触子34の先端部が、溶融塩化亜鉛22内に完全に浸漬している状態では、検出部70が求める抵抗値は、距離Lに比例して変化するプロフィールC3を示すが、このときの比例定数は、溶融塩化亜鉛22の呈する抵抗値に対応している。
【0058】
さて、距離Lの値が0と0の負側近傍との間をとるような、第1の電極30の探触子34の先端部が、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26近傍に位置する状態では、検出部70が求める抵抗値は、第1の電極30の探触子34の先端部が、溶融亜鉛24内に完全に浸漬している状態における固有の抵抗値Rと、第1の電極30の探触子34の先端部が、溶融塩化亜鉛22内に完全に浸漬している状態で界面26に接近した場合の抵抗値Rと、の間で、急峻に変化するプロフィールC1を呈する。また、このように距離Lの値が0と0の負側近傍との間をとるときに、かかるプロフィールC1をより詳細に分析すれば、プロフィールC1は、抵抗値Rと抵抗値Rとの差である抵抗段差ΔRに応じて急峻に変化する曲線であると同時に裾野ΔLをも呈してはいる。
【0059】
ここで、検出部70は、2種の液体間の抵抗値変化の度合いに応じてそれらの間の界面位置を検出するのであるから、第1の電極30の探触子34の先端部が溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26を横切る際に検出部70が求める抵抗値を、抵抗値Rと抵抗値Rとの差である抵抗段差ΔRに応じてこのように急峻に変化させれば、検出部70が、いわば不連続的に変化する抵抗段差ΔRの存在を確実に検出でき、界面26の位置を検出できることになる。
【0060】
つまり、溶融亜鉛24の上方に溶融塩化亜鉛22が存在せずに単に大気が有るとすれば、第1の電極30の探触子34の先端部が、溶融亜鉛24内に完全に浸漬している状態から大気内に移動すると、検出部70が求める抵抗値は、RからプロフィールC’で示すように無限大へと変化するため、その抵抗値変化を利用して界面26の位置を検出することは、極めて容易である。これに対して、溶融亜鉛24の上方に溶融塩化亜鉛22が存在する2層構造の液体では、検出部70が、抵抗段差ΔRを利用して、界面26の位置を検出することが必要となるため、検出部70に対して抵抗段差ΔRを確実に呈せしめることのできる構成を採ることが求められる。
【0061】
ここで、更に、かかる特性の抵抗変化曲線Cにつき検討すると、抵抗段差ΔRは、第1の電極30の探触子34の先端部の溶融塩化亜鉛22に対する接触抵抗係数ρznclが、第1の電極30の探触子34の先端部の溶融亜鉛24に対する接触抵抗係数ρznよりも大きいことに起因して生じていることが分かった。ここで、接触抵抗係数(Ω・m)は、接触抵抗(Ω)と接触面積(m)とを乗じた値として規定される。
【0062】
一般的に2層構造の液体においては、上方に位置する電極の探触子の先端部の下層液体に対する接触抵抗係数ρをかかる電極の探触子の先端部の上層液体に対する接触抵抗係
数ρで除した接触抵抗係数比h(=ρ/ρ)は、上方に位置する電極の探触子の材料、形状等の構成や、それが浸漬する液体の種類に依存して決定されるものである。このような事情は、例えば、2層構造の液体の上層液体22が、電解液等の導電性が低い液体で、2層の液体の下層液体24が、上層液体22よりも比重が重く上層液体22と不要に混合せず、かつ上層液体22よりも導電性の高い液体である場合においても同様なのであるが、より詳細に検討すれば、かかる接触抵抗係数比hが5以上程度のものであれば、更に追加的な条件を加味することによって、上層液体と下層液体との界面検出の分解能を向上し、検出部70に対して抵抗段差ΔRを呈せしめる、つまり現実的に検出部70が抵抗段差ΔRを検出することができることが分かった。また、一般的に、かかる接触抵抗係数比hが大きくなれば、抵抗段差ΔRは大きくなるが、反面で裾野ΔLも大きくなる傾向にあるものである。
【0063】
よって、具体的に2層構造の液体として、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24を用い、探触子34、44にグラファイトを用いた場合には、第1の電極30の探触子34の先端部の溶融亜鉛24に対する接触抵抗係数ρznを第1の電極30の探触子34の先端部の溶融塩化亜鉛22に対する接触抵抗係数ρznclで除した接触抵抗係数比h(=ρzn/ρzncl)は、20程度の値をもとり得るから、検出部70に対して抵抗段差ΔRを呈せしめることが可能である一方で、抵抗段差ΔRはある程度大きくなるが、反面で裾野ΔLもある程度出現する抵抗変化曲線Cが得られるのである。
【0064】
つまり、このように抵抗段差ΔRはある程度大きいが、裾野ΔLも大きくなる傾向がある場合において、まず、前提となる抵抗段差ΔRをより明確に得て上層液体と下層液体との界面検出の分解能を向上するための構成、つまり検出部70に対して抵抗段差ΔRを呈せしめることのできる構成を画定することが必要となるのである。
【0065】
そこで、更に検討を進めると、接触抵抗係数比hが5以上である場合に、抵抗段差ΔRが測定系の固有の抵抗値Rの1/5以上の比較的大きな値であれば、検出部70が、2層構造の液体の界面を検出することができることが分かった。そして、このように抵抗段差ΔRに抵抗値Rの1/5以上の大きな値をとらせるには、第1の電極30の探触子34の先端部の下層液体に対する接触面積SAを小さく設定することが前提であることも分かった。つまり、第1の電極30の探触子34の先端部の下層液体に対する接触面積SAを小さく設定できれば、抵抗段差ΔRが抵抗値Rの1/5以上の大きな値となり得て、検出部70に対して抵抗段差ΔRを確実に呈せしめることができるので、まず、このような接触面積SAを画定することとした。ここで、第1の電極30の探触子34の先端部の下層液体に対する接触面積SAとは、先端部が円錐である場合には、かかる円錐の外面の表面積を意味する。また、かかる接触面積SAは、第1の電極30の探触子34の先端部の上層液体に対する接触面積と実質等しいものでもある。
【0066】
具体的には、2層構造の液体の上層液体22が、電解液等の導電性が低い液体で、2層の液体の下層液体24が、上層液体22よりも比重が重く上層液体22と不要に混合せず、かつ上層液体22よりも導電性の高い液体である場合に、第1の電極30の探触子34の先端部の下層液体24に対する接触面積SA(m)については、かかる電極30の探触子34の先端部の下層液体24に対する接触抵抗係数ρ(Ω・m)をかかる電極30の探触子34の先端部の上層液体22に対する接触抵抗係数ρ(Ω・m)で除した接触抵抗係数比h、かかる電極30の探触子34の先端部の下層液体24に対する接触抵抗係数ρ(Ω・m)、並びに第1の電極30の探触子34の先端部及び第2の電極40の探触子44の先端部が溶融亜鉛24に完全に浸漬された状態における測定系の固有の抵抗値R(Ω)を用いて、以下の式(数2)を満足するように接触面積SAを決めれば、統一的な指針で、抵抗段差ΔRが抵抗値Rの1/5以上の大きな値をとり得るような、検出部70に対して抵抗段差ΔRを確実に呈せしめることができる接触面積SAを求め
ることができることが分かった。ここで、探触子34の先端部の接触面積SAは、かかる先端部の外面における接触面積とした。なお、式(数2)は、電解時の支持電解質の有無に実質影響されないことも確認された。
【0067】
【数2】

【0068】
このように第1の電極30の探触子34の先端部の下層液体24に対する接触面積SAが決まれば、かかる接触面積SAを維持して、探触子34の先端部の形状は自在に変更し得るものである。例えば、探触子34を鏃型とした場合、その外径を大きくし高さ(上下方向の長さ)を短くする等の形状の調整が自在である。
【0069】
また、同時に、下層液体24に関する測定系の固有の抵抗値Rに対して抵抗段差ΔRを大きく設定するには、かかる抵抗値Rを小さく設定できればよいから、第1の電極30の探触子34の材料には、高温の溶融塩化亜鉛22や溶融亜鉛24に耐性があって電気抵抗が低い材料であるグラファイトを採用することも好適である。
【0070】
さて、次に、検出部70に対して、抵抗段差ΔRをより明確に呈せしめるには、裾野ΔLがより小さな値となるような設定をする必要があるが、そのためには第1の電極30の探触子34の構造につき検討する必要がある。つまり、特に、かかる探触子34の先端部の形状につき、詳細に検討する必要がある。
【0071】
図3(a)は、本実施形態における界面計の第1の電極の部分断面図であって、図3(b)のA−A断面図に相当し、図3(b)は、かかる電極の底面図であって、図3(a)のZ矢視図に相当する。また、図3(c)は、本実施形態の界面計の変形例における第1の電極の部分断面図であり、図3(d)のB−B断面図に相当し、図3(d)は、かかる電極の底面図であり、図3(c)のZ矢視図に相当する。また、図4は、これらの界面計により測定される抵抗変化曲線を各々示すグラフである。
【0072】
まず、これまで説明してきた第1の電極30について検討すると、図3(a)及び図3(b)に示すように、電極部32の棒状の導電部材32bは、鉄製であり、電極部32の保護管32aは、導電部材32bを覆う円筒状のアルミナ製で外径は8mmとし、かつ、探触子34は、上下方向の全長が10mmのグラファイト製の鏃型であり、電極部32の保護管32a及び導電部材32bに接続する上部は、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面に不要な乱れを生じないように保護管32aと面一となった外径が8mmの円柱状であって、かつ先端部34aは先細りとなるように頂角が60°の円錐状である。
【0073】
かかる構成の第1の電極30を用いた場合に、交流電流計60が測定した電流値に基づいて検出部70が求めた抵抗変化曲線の詳細プロフィールは、図4のプロフィールCAに示される。かかる抵抗変化曲線CAは、図2に示す抵抗変化曲線Cと同様であるが、この曲線CAによれば、探触子34の先端部34aが、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26に位置して、探触子34の先端部34aの界面26までの距離Lの値が0であるときには、0.115Ω程度の抵抗段差が生じてはいるものの距離Lの負側で裾野を引いており、鈍っていることが分かる。かかる現象は、探触子34の先端部34aにおける円錐外面が、界面26を比較的滑らかに横切ることにより、生じるものと考えられ、界面検出の分解能を低下させる要因となるものである。
【0074】
つまり、第1の電極30の探触子34の先端部34aを円錐状とする場合には、円錐の
頂角を大きくしていき、円錐の上下方向の高さが底面の直径よりも小さくなるように扁平化すれば、先端部34aにおける円錐外面が、界面26を迅速に横切るようになるため、急激な抵抗値の変化を得ることができ、裾野をより低減して界面検出の分解能を向上することができる。なお、かかる探触子34の先端部34aは、円錐状に限定されるものではなく、その他の三角錐等の錐体状としてもよく、かかる場合には、錐体の上下方向の高さが底面の大きさ、つまり底面の長辺や対頂角間の距離よりも小さくなるように扁平化されていればよい。
【0075】
そこで、かかる構成を一歩進めて、図3(c)及び図3(d)に示す第1の電極130のように、電極部32の構成が、第1の電極30と同一であって、探触子134が、電極部32の保護管32a及び導電部材32bに接続する円柱状であることは第1の電極30の探触子34と同様であるが、その先端部134aがより扁平化されて高さが0となるような上下方向に垂直な平面状である構成を採用する。
【0076】
かかる構成の第1の電極130を用いた場合に、交流電流計60が測定した電流値に基づいて検出部70が求めた抵抗変化曲線の詳細プロフィールは、図4のプロフィールCBに示される。かかる抵抗変化曲線CBによれば、探触子134の先端部134aが、界面26に位置して、探触子134の先端部134aの界面26までの距離Lの値が0であるときには、その負側の裾野がより小さくなって、0.115Ω程度の抵抗段差がほぼ鈍らずに明確に生じている。これは、探触子134の先端部134aが扁平化されて上下方向に垂直、つまり界面26に平行な平面状であることに起因して、界面26を瞬時に上下方向に横切ることができ、瞬時に探触子134の接触面積を増大してより急激な抵抗値の変化を得ることができるためと考えられ、界面検出の分解能をより向上させることに寄与するものである。
【0077】
さて、このように探触子134の先端部134aが扁平化されて平面状である第1の電極130を用いた場合には、探触子134の先端部134aが、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26を瞬時に横切るものであるため、界面検出の分解能をより向上させることができる一方で、界面26が波立つ等の乱れた状態となり、交流電流計60で測定された電流とが不要に変動し、界面検出自体が不安定になる場合も考えられる。そこで、界面26が波立つ等の乱れた状態とならない探触子134の先端部134aの形状につき、詳細に検討する必要がある。
【0078】
図5(a)は、本実施形態の界面計の別の変形例における第1の電極の部分断面図であって、図5(b)のC−C断面図に相当し、図5(b)は、かかる電極の底面図であって、図5(a)のZ矢視図に相当する。
【0079】
図5(a)及び図5(b)に示す第1の電極230のように、電極部32の構成が、第1の電極30と同一であって、探触子234が、電極部32の保護管32a及び導電部材32bに接続する円柱状であることは第1の電極30と同様であるが、その先端部234aには複数の円錐部が設けられた構成を採用する。かかる構成であれば、探触子234の先端部234aに設けられた複数の円錐部が、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26に対して微細なバッファ構造となり、波立ち等を吸収しながら界面26を横切るため、界面検出を安定した状態とし、その分解能をより向上させることができる。
【0080】
また、探触子134の先端部134aが扁平化されて平面状である第1の電極130の構成を一歩進めて、探触子134の先端部134aが、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26をより瞬時に横切る構成として、界面検出の分解能をより向上させてもよい。
【0081】
図5(c)は、本実施形態の界面計の更に別の変形例における第1の電極の部分断面図であり、図5(d)のD−D断面図に相当し、図5(d)は、かかる電極の底面図であり、図5(c)のZ矢視図に相当する。
【0082】
つまり、図5(c)及び図5(d)に示す第1の電極330のように、電極部32の構成が、第1の電極30と同一であって、探触子334が、電極部32の保護管32a及び導電部材32bに接続する円柱状であって、その先端部334aが扁平化されて上下方向に平行な平面状であることは第1の電極130と同様であるが、更に、かかる先端部334aが、電極部32の保護管32aが延長されたアルミナ等の絶縁材製の保護管334bで、その先端と面一になるまで囲われた構成を採用する。かかる構成により、探触子334の先端部334aが、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26をより瞬時に上下方向に横切ることができ、抵抗値の変化がより鮮鋭になって界面検出の分解能をより向上させることができる。なお、かかる先端部334aの保護管334bは、電極部32の保護管32aと一体に設けてもよいし、別体に設けてもよい。
【0083】
更に、以上の構成を組み合わせて、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26の波立ち等の乱れを吸収しながら、界面検出の分解能をより向上させてもよい。
【0084】
図6(a)は、本実施形態の界面計の更に別の変形例における第1の電極の部分断面図であって、図6(b)のE−E断面図に相当し、図6(b)は、かかる電極の底面図であって、図6(a)のZ矢視図に相当する。また、図6(c)は、本実施形態の界面計の更に別の変形例における第1の電極の部分断面図であり、図6(d)のF−F断面図に相当し、図6(d)は、かかる電極の底面図であり、図6(c)のZ矢視図に相当する。
【0085】
つまり、図6(a)及び図6(b)に示す第1の電極430のように、電極部32の構成が、第1の電極30と同一であって、探触子434が、電極部32の保護管32a及び導電部材32bに接続する円柱状部材であり、先端部434aまで保護管334bで囲われることは第1の電極330と同様であるが、更に、先端部434aに複数の円錐部が設けられた構成を採用してもよいし、図6(c)及び図6(d)に示す第1の電極530のように、電極部32の構成が、第1の電極30と同一であり、探触子534が、電極部32の保護管32a及び導電部材32bに接続する円柱状部材であり、先端部534aまで保護管334bで囲われることは第1の電極330と同様であるが、更に、先端部534aに複数の凸部が設けられた構成を採用してもよい。また、かかる第1の電極430、530における保護管334bの端部には、先端部434a、534aに設けられた複数の円錐部や複数の凸部に対応して、ぐたいてきにはそれらの上下方向の高さと同程度か、より大きい長さでもって、上下方向に延在する切欠き334cが形成されており、溶融亜鉛24が複数の円錐部や複数の凸部間に不要に巻き込まれて溜まることがないように、溶融亜鉛24を切欠き334cから外部に排出自在としている。かかる切欠き334cは、図中では同じ大きさで対向する一対のものとして示しているが、所望の大きさや配置パターンで複数個数設けてもよい。
【0086】
かかる第1の電極430や第1の電極530においては、探触子434の先端部434aに設けられた複数の円錐部や探触子534の先端部534aに設けられた複数の凸部が、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面26に対して、波立ち等の乱れを吸収しながら、より瞬時に横切るバッファ構造となるため、界面検出を安定した状態として、その分解能を一層向上させることができる。
【0087】
なお、第1の電極230、430及び530の探触子234、434及び534の先端部234a、434a及び534aにおける微細なバッファ構造としては、複数の円錐や複数の凸部に限らず微細な凹凸形状が採用でき、その凹凸形状の大きさ等は、界面検出で
必要とされる分解能に応じて適宜設定自在である。
【0088】
また、第1の電極30、130、230、330、430、530は、探触子34、134、234、334、434、534が溶融塩化亜鉛22とそれから電解生成される溶融亜鉛24との界面26を横断自在に固定されて配置される構成としたが、例えば、第2の電極40を固定したままで、第1の電極30、130、230、330、430、530を一定周期で上下に往復移動自在な構成として、界面26の位置が変化した場合でも、その位置を検出することができるようにしてもよい。
【0089】
以上の構成によれば、交流電源から交流電流が供給されながら、第2の電極の探触子が、第2の液体に浸漬された状態で、第1の電極の探触子が界面を横切った際に検出部により得られる抵抗変化曲線において、第1の電極の探触子が第2の液体側から界面に近づいて位置するにつれ、抵抗変化曲線の勾配がより大きくなるように、第1の電極の探触子の第2の液体に対する接触面積が、設定されているため、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層の第1の液体と下層の第2の液体との界面に対応する液面位置を高精度に検出することができる。
【0090】
なお、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明においては、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体と下層液体との界面に対応する液面位置を高精度に検出する界面計を提供することができ、その汎用普遍的な性格からこのような2層構造の液体を対象とする界面計に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0092】
10………界面計
20………貯槽
22………上層液体
24………下層液体
26………界面
30………電極
32………電極部
32a……保護管
32b……導電部材
34………探触子
34a……先端部
40………電極
42………電極部
44………探触子
50………交流電源
50a……給電線
50b……給電線
60………交流電流計
70………検出部
130……電極
134……探触子
134a…先端部
230……電極
234……探触子
234a…先端部
330……電極
334……探触子
334a…先端部
334b…保護管
334c…切欠き
430……電極
434……探触子
434a…先端部
530……電極
534……探触子
534a…先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に溜められて電解質である第1の液体と、前記容器内に前記第1の液体よりも下方に溜められて導電性の第2の液体と、の成す界面を横断自在に、前記第1の液体及び前記第2の液体に浸漬自在である導電性の探触子を有する第1の電極と、
前記第1の電極よりも下方に配置されて前記第2の液体に浸漬自在な導電性の探触子を有する第2の電極と、
前記第1の電極の前記探触子と前記第2の電極の前記探触子との間に交流電流を供給自在な交流電源と、
前記第1の電極の前記探触子と前記第2の電極の前記探触子との間に流れる前記交流電流に基づいて抵抗値を算出して、前記第1の液体と前記第2の液体との界面を検出する検出部と、
を備え、
前記交流電源から前記交流電流が供給されながら、前記第2の電極の前記探触子が、前記第2の液体に浸漬された状態で、前記第1の電極の前記探触子が前記界面を横切った際に、前記検出部に対して抵抗段差を呈せしめることができるように、前記第1の電極の前記探触子の前記第2の液体に対する接触面積を設定した界面計。
【請求項2】
前記接触面積をSA(m)、前記第1の電極の前記探触子の前記第2の液体に対する接触抵抗係数をρ(Ω・m)、前記接触抵抗係数ρを前記第1の電極の前記探触子の前記第1の液体に対する接触抵抗係数ρ(Ω・m)で除した接触抵抗係数比をh、並びに前記第1の電極の前記探触子及び前記第2の電極の前記探触子が、前記第2の液体に浸漬された状態における測定系の固有の抵抗値をR(Ω)としたときに、以下の式(数3)を満足するように設定された請求項1に記載の界面計。
【数3】

【請求項3】
前記第1の電極の前記探触子の先端部が錐体であり、前記錐体の高さが、前記錐体の底面の外径又は長辺よりも小さい請求項1又は2に記載の界面計。
【請求項4】
前記第1の電極の前記探触子の先端部が、前記界面と平行に設定自在な平面である請求項1から3のいずれかに記載の界面計。
【請求項5】
前記第1の電極の前記探触子の先端部が、更に複数の凹凸部を有する請求項4に記載の界面計。
【請求項6】
前記第1の電極の前記探触子の先端部が、その先端まで絶縁部材で覆われた請求項1から5のいずれかに記載の界面計。
【請求項7】
前記第1の電極の前記探触子の先端部を覆う前記絶縁部材に、前記複数の凹凸部に対応した切欠き部を設けた請求項6に記載の界面計。
【請求項8】
前記第1の電極の前記探触子は、前記第1の電極の導電部材に連絡し、前記導電部材は、絶縁部材で覆われる請求項1から7のいずれかに記載の界面計。
【請求項9】
前記第1の電極の前記導電部材を覆う前記絶縁部材の外面は、前記第1の電極の前記探触子の外面と面一である請求項8に記載の界面計。
【請求項10】
前記交流電圧の最大電圧が、前記第1の液体の電気分解電圧よりも小さい請求項1から9のいずれかに記載の界面計。
【請求項11】
前記第1の液体が溶融塩化亜鉛を含有する溶融塩であり、前記第2の液体が溶融亜鉛を含有する溶融金属である請求項1から10のいずれかに記載の界面計。
【請求項12】
前記交流電流の周波数は、5Hz以上500Hz以下の範囲である請求項11に記載の界面計。
【請求項13】
前記第1の電極の前記探触子が、グラファイト製である請求項1から12のいずれかに記載の界面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79808(P2013−79808A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27996(P2010−27996)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(503107255)株式会社キノテック・ソーラーエナジー (18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】