説明

留置針組立体

【課題】格別の操作無しに付勢手段の付勢力により内針を後退させられる留置針組立体を提供する。
【解決手段】留置針組立体1は、外針部材2と、内針部材3と、付勢手段係止部材4と、外筒管部材5と、内筒管部材6と、指掛部7とを備える。付勢手段19が配設される付勢手段係止部材4は内針部材3に係合され、内針部材3は外筒管部材5に係合される。穿刺に続いて内筒管部材6を穿刺方向に移動させ、内筒管部材6により内針部材3と外筒管部材5との係合を解除することにより、付勢手段19の付勢力を解放する。付勢手段19の付勢力により付勢手段係止部材4を後退させ、内針部材3を内筒管部材6内に収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等に穿刺されて輸液ライン等との接続に用いられる留置針を備える留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外針に挿入された内針を備え、該内針に案内させて該外針を血管等に穿刺した後、該内針を抜去して留置された該外針に輸液ラインを接続するようにした留置針が知られている。ところが、従来の留置針では前記外針から前記内針を抜去する際に、噴出した患者の血液が飛散して医師や看護師にかかったり、抜去した該内針を医師や看護師に誤穿刺することがあるという問題がある。このとき、前記患者がHIV等の感染症の患者である場合、飛散した血液や誤穿刺により医師や看護師が罹患する虞がある。
【0003】
そこで、前記内針と、該内針を出入自在に設けたケースと、該内針とケースとの間に取り付けられたバネとを備える留置針組立体が知られている(例えば特許文献1参照)。前記留置針組立体では、前記内針が前記ケースから突出しているときは、前記バネが該内針を該ケース内に収納する方向に付勢した状態でストッパーにより係止されている。そして、医師や看護師が前記ストッパーによる係止を解除すると、前記バネの弾性力により前記内針が抜去され、前記ケース内に収納される。
【0004】
前記従来の留置針組立体によれば、前記ケースに外針基を接続しておくことにより、前記内針を抜去する際に患者の血液が飛散することを防止することができる。また、抜去された前記内針は前記ケース内に収納されるので、医師や看護師に誤穿刺することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−49607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の留置針組立体によれば、医師や看護師がストッパーによるバネの係止を解除しなければ、バネの弾性力による内針の後退を発動することができないという不都合がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、格別の操作を行うことなく、付勢手段の付勢力により内針を後退させることができる留置針組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の留置針組立体は、外針本体と、該外針本体の基端部に備えられた外針基とを備える外針部材と、該外針本体内に挿入される内針本体と、該内針本体の基端部に備えられ該内針本体が該外針本体内に挿入されたときに基端部側の一部が該外針基から突出する内針基と、該内針基の中央部から側方に突出する1対の係合ピンと、該内針基の基端部から側方に突出する1対の係合突起とを備える内針部材と、該内針基の該係合ピンから基端部側の部分が挿入される第1の円筒状部材と、第1の円筒状部材の基端部側に連接し第1の円筒状部材より大径の第2の円筒状部材と、第1の円筒状部材と第2の円筒状部材との間の段差部の内周面に備えられ該係合突起が係合される係合部とを備え、第1の円筒状部材の外周面に配設された付勢手段の一方の端部を該段差部の外周面で係止する付勢手段係止部材と、該付勢手段係止部材の第1の円筒状部材が収容されると共に先端部内面側に該付勢手段の他方の端部を係止し先端部外面側に該係合ピンが係合される第3の円筒状部材と、第3の円筒状部材の外周側に接続部材を介して接続され第3の円筒状部材を収容する第4の円筒状部材とを備える外筒管部材と、該外筒管部材の第3の円筒状部材と第4の円筒状部材との間に進退自在に嵌合される第5の円筒状部材と、第5の円筒状部材の側面に長さ方向に沿って延在し該係合ピンを収容する空間部と、第5の円筒状部材の先端部に備えられ該外針基が外嵌されると共に該内針基の該係合ピンから先端側の部分が挿入される第5の円筒状部材より小径の第6の円筒状部材とを備える内筒管部材と、該内筒管部材の外周面に連設され、第5の円筒状部材が該外筒管部材の第3の円筒状部材と第4の円筒状部材との間に嵌合されたときに第4の円筒状部材の外周面に位置する指掛部とを備え、外針本体及び内針本体を血管内に穿刺し内針本体により外針本体を案内して所定の距離を前進させた後、外針本体の穿刺方向に該指掛部を押圧して該内筒管部材を該外筒管部材に対して相対的に前進させ、該空間部の基端部で該係合ピンを先端部側に押圧して折損させて除去することにより該内針部材の該外筒部材に対する係合を解除して、該付勢手段の付勢力により該付勢手段係止部材を後退させ、該付勢手段係止部材に係合されている該内針基を介して該内針本体を該内筒管部材内に収容することを特徴とする。
【0009】
本発明の留置針組立体では、付勢手段は付勢手段係止部材の第1の円筒状部材の外周面において、第1の円筒状部材と第2の円筒状部材との段差部の外周面と、第1の円筒状部材が挿入されている外筒管部材の第3の円筒状部材の先端部内面側との間に配設されている。ここで、前記付勢手段係止部材は、前記外筒管部材の第3の円筒状部材の先端部内面側を支点として、前記付勢手段により基端部方向に付勢されている。
【0010】
しかし、前記付勢手段係止部材は、第1の円筒状部材と第2の円筒状部材との段差部の内周面に設けられた係合部により内針基の基端部に設けられた係合突起と係合している。また、前記内針基は、その中央部に設けられた係合ピンにより前記外筒管部材の第3の円筒状部材の先端部外面側と係合している。この結果、前記付勢手段は、第1の円筒状部材と第2の円筒状部材との段差部と、前記外筒管部材の第3の円筒状部材の先端部内面側との間に係止されている。
【0011】
本発明の留置針組立体は、前記付勢手段が前記のように係止されている状態で、まず、内針本体に案内させて外針本体を血管内に穿刺する。そして、内針本体により外針本体を案内して所定の距離を前進させた後、そのまま前記指掛部を前記外針本体の穿刺方向に指で押圧して、前記内筒管部材を前記外筒管部材に対して相対的に前進させる。
【0012】
このとき、前記係合ピンは、前記外筒管部材の第3の円筒状部材の先端部外面側に係合すると共に、先端部が前記内筒管部材の側面に設けられた空間部に収容されている。そこで、前記のように、前記内筒管部材を前記外筒管部材に対して相対的に前進させると、前記空間部の基端部が前記係合ピンに当接して、該係合ピンを先端部方向に押圧し、折損させることにより除去する。
【0013】
このようにすると、前記内針基と、前記外筒管部材の第3の円筒状部材との係合が解除されるので、前記付勢手段の係止状態も解除され、該付勢手段の付勢力により前記付勢手段係止部材が第4の円筒状部内を基端部側に移動する。一方、前記内針基は、前記係合突起によって前記付勢手段係止部材に係合された状態を維持しているので、該付勢手段係止部材の後退に伴って該内針基も後退し、内針本体が前記内筒管部材内に収容される。
【0014】
従って、本発明の留置針組立体によれば、外針本体を血管内に穿刺し内針本体により外針本体を案内して所定の距離を前進させた後、そのまま前記指掛部を該外針本体の穿刺方向に指で押圧すればよく、格別の操作を行うことなく、付勢手段の付勢力により内針本体を後退させ、前記内筒管部材内に収容することができる。
【0015】
また、本発明の留置針組立体によれば、内針基の先端部側の部分が挿入されている前記内筒部材の第6の円筒状部材に外針基が外嵌されているので、前記内針本体を前記内筒管部材内に収容する際に、患者の血液が外部に飛散することを防止することができる。
【0016】
さらに、本発明の留置針組立体によれば、使用前には前記内筒管部材が前記外筒管部材内に収容されているので、全長を短縮することができる。
【0017】
また、本発明の留置針組立体において、前記外筒管部材は、前記付勢手段の付勢力により後退する前記付勢手段係止部材を収容すると共に、該付勢手段係止部材と共に後退する有底筒状体を基端部に備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の留置針組立体は、前記外筒管部材の基端部に前記有底筒状体を備えることにより、前記付勢手段の付勢力により後退する前記付勢手段係止部材を収容して、該付勢手段係止部材及び内針部材が該外筒管部材の外部に突出することを防止することができる。また、本発明の留置針組立体によれば、使用前には前記有底筒状体が前記外筒管部材内に収容されているので、全長をさらに短縮することができる。
【0019】
また、本発明の留置針組立体は前記有底筒状体を備えるときに、前記外筒管部材は、基端部に1対の孔部を備え、前記有底筒状体は先端部の外周面から側方に突出する突起部を備え、該突起部は該有底筒状体が後退したときに該孔部に係合して抜け止めすることを特徴とする。
【0020】
本発明の留置針組立体は、前記有底筒状体の突起部を前記外筒管部材の孔部に係合させて抜け止めさせることにより、前記付勢手段の付勢力により後退する前記付勢手段係止部材及び内針部材が該外筒管部材の外部に突出することを確実に防止することができる。
【0021】
また、本発明の留置針組立体において、前記外筒管部材は、前記第4の円筒状部材の先端面から長さ方向に突出する庇状部材を備え、該庇状部材は、前記内筒管部材が前記外筒管部材に対して相対的に前進したときに、前記指掛部の基端部に係止して、該外筒管部材に収容された前記内針本体の再突出を阻止することを特徴とする。
【0022】
本発明の留置針組立体は、前記外筒管部材が、前記第4の円筒状部材の先端面に前記庇状部材を備えることにより、前記内筒管部材が前記外筒管部材に対して相対的に前進したときに、該庇状部材が前記指掛部の基端部に係止する。この結果、前記内筒管部材は前記指掛部が前記庇状部に干渉して後退することができず、前記外筒管部材に収容された前記内針本体の再突出が阻止される。
【0023】
従って、前記外筒管部材が、前記第4の円筒状部材の先端面に前記庇状部材を備えることにより、使用済みの内針本体の誤穿刺を防止することができる。
【0024】
また、本発明の留置針組立体において、前記付勢手段係止部材は、前記第2の円筒状部材の基端部に、気体のみを通過させ液体の通過を抑制する散気手段を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の留置針組立体において、前記散気手段は、内針本体が血管内に穿刺されたときに血液のフラッシュバックが生じても、気体である空気を通過させるだけであり液体である血液の通過を抑制する。従って、血液が散気手段の外部に飛散することを低減することができる。
【0026】
また、本発明の留置針組立体において、前記係合ピンは、前記第3の円筒状部材の先端部外面側に当接され、前記内針本体が打撃を受けたときに該第3の円筒状部材の先端部外面側により先端部側に押圧され、折損して除去されることを特徴とする。
【0027】
前記係合ピンは、前記内針本体が打撃されると第3の円筒状部材の先端部外面側により先端部側に押圧されて、折損して除去される。前記係合ピンが除去されると、前述のように、付勢手段の付勢力により前記付勢手段係止部材が基端部側に移動し、前記内針本体が前記内筒管部材内に収容される。従って、前記内針本体は物理的に穿刺に用いることができなくなり、前記打撃により刃先が潰れたり汚染したりした内針本体を穿刺に用いることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の留置針組立体の構成を示す説明的断面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】内針部材と内筒管部材との組立方法を示す説明的断面図。
【図4】内針部材と内筒管部材との組立方法を示す説明的平面図。
【図5】内筒管部材と外筒管部材との組立方法を示す説明的断面図。
【図6】図5のVI−VI線断面図。
【図7】外筒管部材とバネ及びバネ止め部材との組立方法を示す説明的断面図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】外針部材と内針本体との組立方法を示す説明的断面図。
【図10】外針部材及び内針本体と内筒管部材との組立方法を示す説明的断面図。
【図11】組み立てられた留置針組立体の状態を示す説明的断面図。
【図12】図11のXII−XII線断面図。
【図13】本発明の留置針組立体の使用を準備する状態を示す説明的断面図。
【図14】本発明の留置針組立体を使用する状態を示す説明的断面図。
【図15】本発明の留置針組立体の第1の把持方法を示す平面図。
【図16】本発明の留置針組立体の第2の把持方法を示す平面図。
【図17】本発明の留置針組立体の使用方法を示す説明的断面図。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図。
【図19】図18のA部を拡大して示す説明的断面図。
【図20】内針基の係合が解除された状態を示す説明的断面図。
【図21】内針本体の再突出を防止する状態を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、本実施形態の留置針組立体1は、外針部材2と、内針部材3と、付勢手段であるバネの端部を係止する付勢手段係止部材としてのバネ止め部材4と、外筒管部材5と、内筒管部材6と、指掛部7とを備える。
【0031】
外針部材2は、先端部に削ぎ竹状の穿刺部8を備える外針本体9と、外針本体9の基端部に備えられた外針基10とからなる。尚、本明細書では、留置針組立体1の長さ方向に沿って、穿刺部8方向を先端部、穿刺部8と反対側を基端部と記載する。
【0032】
内針部材3は、外針本体9内に挿入される内針本体11と、内針本体11の基端部に備えられた内針基12とを備える。また、内針基12は、中央部から側方に突出する1対の係合ピン13,13と、内針基12の基端部から側方に突出する1対の係合突起14,14とを備えている。係合ピン13,13は、例えば、内針基12の中央部の側方から基端部側に向かって斜めに突出しているが、内針基12の中央部から側方に直角に突出しているものであってもよい。
【0033】
バネ止め部材4は、内針基12の係合ピン13,13から基端部側の部分が挿入される第1の円筒状部材15と、第1の円筒状部材15の基端部側に連接し第1の円筒状部材15より大径の第2の円筒状部材16とを備えている。また、第1の円筒状部材15と第2の円筒状部材16との間の段差部17の内周面には、内針基12の係合突起14,14が係合される係合部18を備えている。
【0034】
バネ止め部材4の第1の円筒状部材15の外周面には、付勢手段としてのバネ19が配設されるようになっており、バネ19の一方の端部は段差部17の外周面で係止される。また、バネ止め部材4の第2の円筒状部材16の基端部側は、気体のみを通過させ液体の通過を抑制する散気手段としての散気栓20により閉塞される。尚、散気手段は、気体のみを通過させ液体の通過を抑制する機能を備えるものであればよく、散気栓20に代えて、例えば、小径の貫通孔を備える筒状体等を用いるようにしてもよい。
【0035】
外筒管部材5は、バネ止め部材4の第1の円筒状部材15が収容される第3の円筒状部材21と、第3の円筒状部材21の外周側に接続部材22を介して接続され第3の円筒状部材21を収容する第4の円筒状部材23とを備えている。第3の円筒状部材21は、先端部内面側にバネ19の他方の端部が係止されると共に、先端部外面側には内針基12の係合ピン13,13が係合されるようになっている。このため、第3の円筒状部材21は、先端部の側面に、係合ピン13,13を挿通自在とする1対のスリット24,24を備えている。
【0036】
外筒管部材5において、第4の円筒状部材23は第3の円筒状部材21よりも長く形成されており、第4の円筒状部材23の基端部の内周側には有底筒状体25が嵌着されている。有底筒状体25は、バネ止め部材4がバネ19の弾性力により後退するときに、バネ止め部材4を収容し、バネ止め部材4と共に後退する。また、有底筒状体25は、前記後退の際に第4の円筒状部材23からの脱落を防止するために、先端部の外周面から側方に突出する1対の突起部26,26を備えている。突起部26,26は、第4の円筒状部材23の基端部に設けられた1対の孔部27,27に係合することにより、有底筒状体25を抜け止めする。
【0037】
また、外筒管部材5は、第4の円筒状部材23の先端面から長さ方向に突出する庇状部材28を備えている。
【0038】
内筒管部材6は、外筒管部材5の第3の円筒状部材21と第4の円筒状部材23との間に進退自在に嵌合される第5の円筒状部材29と、第5の円筒状部材29の先端面を貫通して備えられ第5の円筒状部材29より小径の第6の円筒状部材30とを備えている。第6の円筒状部材30は、外針基10が外嵌されると共に、内周側に内針基12の係合ピン13,13から先端側の部分が挿入される。
【0039】
また、第5の円筒状部材29の上面には、第3の円筒状部材21と第4の円筒状部材23との間に挿入されたときに、接続部材22との干渉を回避するためのスリット31が設けられている。さらに、第5の円筒状部材29の内側面には、長さ方向に沿って延在し、内針基12の係合ピン13,13を収容する空間部としての1対の長穴部32,32が設けられている。
【0040】
指掛部7は、内筒管部材6の外周面、より詳しくは第5の円筒状部材29の上面に、1対の橋絡部33を介して連設されている。この結果、指掛部7は、内筒管部材6の第5の円筒状部材29が、外筒管部材5の第3の円筒状部材21と第4の円筒状部材23との間に嵌合されたときに、第4の円筒状部材23の外周面上に位置するようになっている。
【0041】
また、本実施形態の留置針組立体1は、外針部材2を収容して保護する有底円筒状のプロテクター34を備えており、プロテクター34はその基端部が外筒管部材5の第4の円筒状部材23の外周面に着脱自在に嵌着されるようになっている。
【0042】
次に、本実施形態の留置針組立体1の組立方法について説明する。
【0043】
留置針組立体1を組み立てるときには、まず図3及び図4に示すように、内筒管部材6に内針基12を組み付ける。ここで、内筒管部材6は、長穴部32,32を二分する線で分割される上半部6aと下半部6bとがヒンジ6cにより連結された構成を備えている。
【0044】
そこで、次に、内筒管部材6を上半部6aと下半部6bとに分割した状態で、例えば、上半部6aの長穴部32,32に係合ピン13,13が収容されるように内針基12を配置する。そして、下半部6bをヒンジ6cで折り曲げ、上半部6aに連結することにより、長穴部32,32に係合ピン13,13が収容された状態で内針基12が組み付けられている内筒管部材6を得ることができる。上半部6aと下半部6bとの連結は、例えば、上半部6aと下半部6bとを相互に嵌合させることにより行うことができる。
【0045】
次に、図5及び図6に示すように、外筒管部材5に内筒管部材6を組み付ける。外筒管部材5に対する内筒管部材6の組み付けは、外筒管部材5の先端部側から内筒管部材6の基端部側を挿入することにより行う。より具体的には、外筒管部材5の先端部側から外筒管部材5の第3の円筒状部材21と第4の円筒状部材23との間に、内筒管部材6の第5の円筒状部材29をその基端部側から挿入する。
【0046】
このとき、第3の円筒状部材21は接続部材22を介して第4の円筒状部材23に接続されているが、第5の円筒状部材29はその上面側にスリット31を備えている。従って、スリット31に接続部材22を収容することにより、第5の円筒状部材29が接続部材22と干渉することを回避することができると共に、第3の円筒状部材21に対する第5の円筒状部材29の位置決めを行うことができる。
【0047】
また、内針基12から側方に突出している係合ピン13,13は、第3の円筒状部材21の先端部側面に設けられたスリット24,24に挿通されることにより、第3の円筒状部材21と干渉することを回避することができる。そして、係合ピン13,13は、第3の円筒状部材21の先端部外面側に当接される。
【0048】
また、指掛部7は、第5の円筒状部材29の上面に、1対の橋絡部33を介して連設されており、第4の円筒部材23は、庇状部材28の両側面の延長上に図示しないスリット部を備えている。そこで、指掛部7は、第3の円筒状部材21と第4の円筒状部材23との間に、第5の円筒状部材29を挿入するときに、1対の橋絡部33を前記スリット部に挿入することにより、第4の円筒部材23の外周面上に位置することができる。
【0049】
次に、図7及び図8に示すように、外筒管部材5にバネ止め部材4を組み付ける。外筒管部材5に対するバネ止め部材4の組み付けは、外筒管部材5の基端部側からバネ止め部材4の先端部側を挿入することにより行う。より具体的には、外筒管部材5の第3の円筒状部材21の内周側に、バネ止め部材4の第1の円筒状部材15を挿入すると共に、第1の円筒状部材15の内周側に内針基12の係合ピン13,13から基端部側の部分が挿入される。
【0050】
このとき、第1の円筒状部材15の外周面にはバネ19が配設される。バネ19は、圧縮することにより弾性力を生じるコイルバネであり、初めは伸張状態にある。バネ19は、一方の端部がバネ止め部材4の第1の円筒状部15と第2の円筒状部16との間の段差部17の外周面に係止されると共に、他方の端部が外筒管部材5の第3の円筒状部材21の先端部内面側に係止される。そして、バネ止め部材4の第1の円筒状部材15が外筒管部材5の第3の円筒状部材21の内周側に挿入されるのに伴って、バネ19が圧縮される。
【0051】
またこのとき、バネ止め部材4の第1の円筒状部材15は、内側面に長さ方向に沿って一方の端部から他方の端部まで延在する1対の溝部35,35を備えている。そして、内針基12の基端部側がバネ止め部材4の第1の円筒状部材15の内周側に挿入される際に、内針基12の基端部から側方に突出する係合突起14,14は、溝部35,35に挿通される。内針基12の係合突起14,14は、第1の円筒状部材15の内周側を通過して第2の円筒状部材16の内周側に達したならば、バネ止め部材4を90°回転することにより段差部17の内周面に設けられた係合部18に係合される。
【0052】
この状態でバネ19は圧縮されており、第3の円筒状部材21の先端部内面側を支点としてバネ止め部材4を基端部側に付勢する弾性力が作用している。しかし、バネ止め部材4は係合突起14,14を介して内針基12に係合されており、内針基12は係合ピン13,13を介して第3の円筒状部材21の先端部外面側に係合されている。従って、このままでは、バネ止め部材4がバネ19の弾性力により基端部側に移動することはない。
【0053】
尚、バネ止め部材4を内針基12に係合するための構成は、係合突起14,14を係合部18に係合する構成に限定されるものではなく、他の構成であってもよい。例えば、内針基12の基端部に、係合突起14,14に代えて外周側に付勢される1対の弾性部材を設けるようにしてもよい。この場合、バネ止め部材4の第1の円筒状部材15は溝部35,35を備えず、前記弾性部材は内周側に撓められた状態で第1の円筒状部材15の内周面に挿通される。そして、前記弾性部材は第2の円筒状部材16の内周側に達したならば、前記付勢力により外周側に展開し、段差部17の内周面に係合する。
【0054】
次に、図9に示すように、外針部材2に、外針基10側から内針本体11を挿入し、内針本体11の刃顎と外針本体9の先端とを位置合わせして固定する。前記位置合わせは、JIS T 3223の規定に従って、内針本体11の刃顎と外針本体9の先端との距離が1mm以下になるように行う。そして、図10に示すように、内針本体11の基端部を内針基12に接着すると共に、内筒管部材6の第6の円筒状部材30に外針基10を外嵌して外針部材2を取着する。
【0055】
次に、図11及び図12に示すように、バネ止め部材4の基端部に散気栓20を嵌着して閉塞すると共に、外筒管部材5の基端部に有底筒状体25を嵌着する。そして、外針部材2を収容して保護するプロテクター34をその基端部で外筒管部材5の第4の円筒状部材23の外周面に嵌着することにより、留置針組立体1の組み立てを完了する。
【0056】
次に本実施形態の留置針組立体1の使用方法について説明する。
【0057】
本実施形態の留置針組立体1を使用するときには、まず図13に示すように、外筒管部材5からプロテクター34を取り外し、外針部材2を露出させる。そして、外針基10が内筒管部材6の第6の円筒状部材30に確実に嵌着されていることを確認する。
【0058】
また、同時に、外針本体9の先端部と内針本体11との張り付きの有無を確認する。外針本体9はポリテトラフルオロエタンまたはポリウレタンからなる薄いチューブであり、滅菌のための熱等により、内針本体11に強固に張り付いていることがある。そこで、前記張り付きの有無を確認し、強固に張り付いている場合は、剥離する等の処理を行う。
【0059】
次に、外筒管部材5の外周面、より詳しくは第4の円筒状部材23の外周面を手指により把持して、外針本体9と外針本体9に挿入されている内針本体11を血管に穿刺する。外針本体9及び内針本体11を血管に穿刺した状態を図14に示す。外針本体9及び内針本体11が血管に穿刺されたことは、バネ止め部材4の第2の円筒状部材16内に血液がフラッシュバックすることにより確認する。尚、第2の円筒状部材16の基端部は散気栓20により閉塞されおり、散気栓20は気体である空気のみを通過させ、液体である血液の通過を抑制するので、前記フラッシュバックした血液の第2の円筒状部材16の外部への飛散が低減される。
【0060】
このとき、第4の円筒状部材23の外周面を手指により把持するには、例えば図15に示すように、第一指(親指)36及び第三指(中指)37で第4の円筒状部材23の外周面を把持し、第二指(人差し指)38を指掛部7に掛けるようにする。或いは、図16に示すように、第二指38を台にして第4の円筒状部材23を載置し、第一指36を指掛部7に掛けると共に、第一指36と第二指38とで第4の円筒状部材23の外周面を挟持するようにしてもよい。
【0061】
外針本体9及び内針本体11を血管に穿刺したならば、次に、外針本体9及び内針本体11を寝かせ(血管に対する穿刺角度を浅くし)、さらに数mm血管内に穿刺する。次いで、内針本体11により外針本体9を案内して所定の距離を前進させた後、図17に示すように、指掛部7を第一指36又は第二指38で押圧し、内筒管部材6を外筒管部材5に対して相対的に先端部側に移動させる。
【0062】
このようにすると、図18及び図19に示すように、内筒管部材6の第5の円筒状部材29の内側面に設けられている長穴部32,32の基端部が、外筒管部材5の第3の円筒状部材21の先端部外面側に係合している係合ピン13,13に当接する。そして、内筒管部材6を外筒管部材5に対して、さらに相対的に先端部側に移動させると、係合ピン13,13は長穴部32,32の基端部により押圧されて、図19に仮想線で示すように、先端部側に逆転されることとなり、折損して内針基12から除去される。
【0063】
ここで、係合ピン13,13は、四角柱等の柱状体であってもよいが、前記折損を容易にするために平板状体であってもよい。また、係合ピン13,13が四角柱等の柱状体である場合には、前記折損を容易にするために、内針基12に接続される部分に溝部を備えていてもよい。
【0064】
係合ピン13,13が内針基12から除去されると、内針基12の第3の円筒状部材21に対する係合が解除されるので、バネ19の弾性力が解放される。前記弾性力は、第3の円筒状部材21の先端部内面側を支点とし、バネ止め部材4を基端部側に付勢するものである。この結果、図20に示すように、バネ止め部材4がバネ19の弾性力により弾発的に後退し、基端部側に移動させられる。
【0065】
即ち、本実施形態の留置針組立体1によれば、外針本体9及び内針本体11を血管に穿刺する操作の延長で、指掛部7を先端部方向に押圧するだけで、特別な操作を行うことなくバネ19の弾性力を発動させることができる。
【0066】
このとき、内針基12は係合部材14,14によりバネ止め部材4に係合されているので、バネ止め部材4と共に後退して、基端部側に移動させられ、内針基12に取着されている内針本体11が内筒管部材6内に引き込まれる。内針本体11が内筒管部材6内に引き込まれると、外針本体9は血管内に留置されているので、外針本体9を介して外針基10に血液が噴出するが、外針基10はまだ第6の円筒状体30に外嵌されたままであり、内筒管部材6に接続された状態を維持している。従って、外針基10に噴出した血液が外部に飛散することを防止することができる。
【0067】
また、基端部側に移動させられたバネ止め部材4は、第4の円筒状部材23の内周面に嵌着されている有底筒状部材25に収容される。有底筒状部材25は、バネ止め部材4を収容した状態で第4の円筒状部材23の内周面に沿って摺動することによりバネ19による付勢力を減衰させることができる。さらに、有底筒状部材25は、先端部の外周面から側方に突出する1対の突起部26,26を、第4の円筒状部材23の基端部に設けられた孔部27,27に係合させることにより抜け止めされ、バネ止め部材4の脱落を確実に防止することができる。
【0068】
次に、さらに指掛部7を押圧し、内筒管部材6を外筒管部材5に対して相対的に先端部側に移動させると、図21に示すように、第4の円筒状部材23の先端面から突出する庇状部28の先端部が、指掛部7の基端部に当接して係合する。この結果、内筒管部材6は外筒管部材5に対して相対的に後退することができず、外筒管部材5は内筒管部材6に対して相対的に前進することができなくなるので、内筒管部材6内に収容された内針本体11の再突出を防止することができる。
【0069】
また、外筒管部材5と内筒管部材6とが相対的に移動できなくするために、内筒管部材6に外周面から側方に突出する1対の突起部(図示せず)を設け、該突起部を外筒管部材5の先端部に設けられた1対の孔部(図示せず)に係合させるようにしてもよい。
【0070】
尚、本実施形態では、庇状部28の先端部を指掛部7の基端部に係合させることにより、内針本体11の再突出を防止するようにしているが、有底筒状部材25の内周面の軸を、バネ止め部材4の軸に対して傾けるようにしてもよい。この結果、バネ止め部材4に係合されている内針基12及び内針基12に取着されている内針本体11の軸が内筒管部材6の軸に対して傾くので、これによっても内針本体11の再突出を防止することができる。
【0071】
本実施形態の留置針組立体1では、次に、外針基10から内筒管部材6の第6の円筒状体30を取り外し、外針基10に輸液ラインを接続する。また、外針基10から取り外された内筒管部材6と、内筒管部材6に組み付けられている外筒管部材5とは、内筒管部材6に収容されている内針部材3と共に、所定の廃棄ボックス等に廃棄される。
【0072】
また、図13に示すように、外筒管部材5からプロテクター34を取り外し、外針部材2を露出させたときに、内針本体11の先端を壁、床、スタンド等の硬度の大きいものに強打すると、刃先が潰れて穿刺することができなくなることがある。また、このような場合には刃先が潰れないまでも、汚染されるので、穿刺に用いることは好ましくない。
【0073】
ここで、本実施形態の留置針組立体1では、図6に示すように、内針基12の係合ピン13,13は、第3の円筒状部材21の先端部外面側に当接されている。そこで、内針本体11は先端が前記硬度の大きいものにより打撃されると、係合ピン13,13が第3の円筒状部材21の先端部外面側により先端部側に押圧されて、図19に示す場合と同様に折損して内針基12から除去される。この結果、図20に示す場合と同様に、バネ止め部材4がバネ19の弾性力により弾発的に後退し、基端部側に移動させられ、内針本体11が内筒管部材6内に引き込まれる。
【0074】
従って、内針本体11は物理的に穿刺に用いることができなくなり、刃先が潰れたり汚染したりした内針本体11を穿刺に用いることを未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…留置針組立体、 2…外針部材、 3…内針部材、 4…バネ止め部材、 5…外筒管部材、 6…内筒管部材、 7…指掛部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針本体と、該外針本体の基端部に備えられた外針基とを備える外針部材と、
該外針本体内に挿入される内針本体と、該内針本体の基端部に備えられ該内針本体が該外針本体内に挿入されたときに基端部側の一部が該外針基から突出する内針基と、該内針基の中央部から側方に突出する1対の係合ピンと、該内針基の基端部から側方に突出する1対の係合突起とを備える内針部材と、
該内針基の該係合ピンから基端部側の部分が挿入される第1の円筒状部材と、第1の円筒状部材の基端部側に連接し第1の円筒状部材より大径の第2の円筒状部材と、第1の円筒状部材と第2の円筒状部材との間の段差部の内周面に備えられ該係合突起が係合される係合部とを備え、第1の円筒状部材の外周面に配設された付勢手段の一方の端部を該段差部の外周面で係止する付勢手段係止部材と、
該付勢手段係止部材の第1の円筒状部材が収容されると共に先端部内面側に該付勢手段の他方の端部を係止し先端部外面側に該係合ピンが係合される第3の円筒状部材と、第3の円筒状部材の外周側に接続部材を介して接続され第3の円筒状部材を収容する第4の円筒状部材とを備える外筒管部材と、
該外筒管部材の第3の円筒状部材と第4の円筒状部材との間に進退自在に嵌合される第5の円筒状部材と、第5の円筒状部材の側面に長さ方向に沿って延在し該係合ピンを収容する空間部と、第5の円筒状部材の先端部に備えられ該外針基が外嵌されると共に該内針基の該係合ピンから先端側の部分が挿入される第5の円筒状部材より小径の第6の円筒状部材とを備える内筒管部材と、
該内筒管部材の外周面に連設され、第5の円筒状部材が該外筒管部材の第3の円筒状部材と第4の円筒状部材との間に嵌合されたときに第4の円筒状部材の外周面に位置する指掛部とを備え、
外針本体及び内針本体を血管内に穿刺し内針本体により外針本体を案内して所定の距離を前進させた後、外針本体の穿刺方向に該指掛部を押圧して該内筒管部材を該外筒管部材に対して相対的に前進させ、該空間部の基端部で該係合ピンを先端部側に押圧して折損させて除去することにより該内針部材の該外筒部材に対する係合を解除して、該付勢手段の付勢力により該付勢手段係止部材を後退させ、該付勢手段係止部材に係合されている該内針基を介して該内針本体を該内筒管部材内に収容することを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
請求項1記載の留置針組立体において、前記外筒管部材は、前記付勢手段の付勢力により後退する前記付勢手段係止部材を収容すると共に、該付勢手段係止部材と共に後退する有底筒状体を基端部に備えることを特徴とする留置針組立体。
【請求項3】
請求項2記載の留置針組立体において、前記外筒管部材は、基端部に1対の孔部を備え、前記有底筒状体は先端部の外周面から側方に突出する1対の突起部を備え、該突起部は該有底筒状体が後退したときに該孔部に係合して抜け止めすることを特徴とする留置針組立体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の留置針組立体において、前記外筒管部材は、前記第4の円筒状部材の先端面から長さ方向に突出する庇状部材を備え、該庇状部材は、前記内筒管部材が前記外筒管部材に対して相対的に前進したときに、前記指掛部の基端部に係止して、該外筒管部材に収容された前記内針本体の再突出を阻止することを特徴とする留置針組立体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の留置針組立体において、前記付勢手段係止部材は、前記第2の円筒状部材の基端部に、気体のみを通過させ液体の通過を抑制する散気手段を備えることを特徴とする留置針組立体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の留置針組立体において、前記係合ピンは、前記第3の円筒状部材の先端部外面側に当接され、前記内針本体が打撃を受けたときに該第3の円筒状部材の先端部外面側により先端部側に押圧され、折損して除去されることを特徴とする留置針組立体。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−56010(P2011−56010A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208259(P2009−208259)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】