説明

畜肉加工品用の乳化組成物及びそれを用いた畜肉加工品

【課題】
畜肉加工食品を冷蔵、或は冷凍して流通させ、畜肉加工品が未調理の場合には調理加熱、調理加熱済みの場合には再加熱して喫食する何れの場合にも、ジューシー感があって、旨味のある畜肉加工品の製造を可能にする油脂組成物の開発とそれを使用した畜肉性加工品を得ること。
【解決手段】
20質量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜45質量%と固形脂10〜50質量%を含有する畜肉加工用の乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畜肉加工用の乳化組成物とそれを用いた畜肉加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグ、餃子、焼売、ソーセージ、肉だんご、ミートボール、中華まんなどの畜肉加工品に、調理を容易にする為や、ジューシー感や旨味を増す目的で油脂を使用し、冷凍食品、チルド食品として家庭用、業務用に広範囲に製造され、流通されている。未調理の畜肉加工食品は加熱調理し、調理済みの畜肉加工食品は再加熱して喫食するのが一般的である。
【0003】
しかし乍ら畜肉加工品の加熱の形態によって、加熱時に油脂としての機能が充分に発揮できないケースが見られる。
【0004】
例えば、赤味肉と豚脂や牛脂を使用して製造するソーセージでは、加熱によってジューシーで美味な食感になるとされている。しかし、加熱時の肉汁の滲み出しは、肉を硬くしたり、旨味をにがしているし、必ずしも見かけのよいものではない。また、加熱後に冷蔵や冷凍して保存するには作業性、さらに保存後に再加熱すると、旨味やジューシー感がさらに低下し、肉がさらに硬くなるという傾向はさけられない。
【0005】
これに対して、畜肉加工品の製造時に油脂をそのまま添加するのでなく、例えば畜脂肪の代わりに可食性油脂と水とを可食性界面活性剤で乳化し、可食性油脂と水の重量比率が20〜49:50〜79のO/W型かO/W/O型の乳化組成物、或いは可食性油脂と水の重量比率が50〜79:20〜49のW/O型かW/O/W型の乳化油脂組成物を使用するソーセージを得る方法(特許文献1:特開平1−112969号)、前記と同じ乳化物を使用するソーセージ以外の肉製品を得る方法(特許文献2:特開平1−179667号)、20〜70重量%の食用油脂と30〜80重量%の水とを血漿タンパク質を用いて乳化し、得られた乳化液を食肉に注入する食肉加工品を得る方法(特許文献3:特開平4−320662号)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを用いて乳化した油脂分25重量%以上50重量%未満の油中水滴型乳化物を挽肉に練りこんだ低カロリー畜肉加工品(特許文献4:特開平6−105667号)、乳蛋白質濃縮物を水に溶解し、これに油脂を添加し、乳化させた乳化物を食肉に添加する畜肉加工品、または乳蛋白質濃縮物を粉末で直接、食肉に添加し、混合中に乳蛋白質濃縮物の蛋白質がほぐれ、食肉中の油脂を乳化させる畜肉加工品(特許文献5:特開平11−103562号)等の乳化油脂,或いは油脂の乳化組成物として畜肉加工品に使用する方法が開示されている。
【0006】
これらの方法では油脂を乳化安定した油脂または油脂組成物にして、加熱時の油脂の流出を抑制し、歩留向上に結びつく、或いは低脂肪化の畜肉加工食品等の製造を可能にするなどの改善がなされ、油脂による旨味やジューシー感もある程度感じられるが、乳化状態の制御はなされておらず、つまり加熱時に油脂が安定した乳化状態を保持しているために、旨さやジューシー感が不足することはさけられなかった。
【0007】
一方、蛋白質を未変性でなく、変性蛋白質として利用する方法として、加熱変性したホエー蛋白質と、加熱変性したホエー蛋白質と可食性油脂とを乳化してなる乳化組成物とをソーセージ原料赤味肉に添加したソーセージを得る方法等が開示されている(特許文献6:再公表WO97/04669号)。
【0008】
特許文献6では、豚脂や牛脂の代わりに加熱変性したホエー蛋白質、及び加熱変性したホエー蛋白質と可食性油脂との乳化組成物とを用いることで、食感およびジューシー感が従来のソーセージと同じ低脂肪ソーセージの製造を可能にする旨記載されているが、豚脂や牛脂にみられる特有の旨味成分については全く考慮されていなくて味覚的にものたりないし、従来のソーセージでも問題であった加熱したソーセージを冷蔵や冷凍で保存し、再加熱した場合について、ジューシー感等などを含めて何の記載も見られない。
【0009】
さらに、2回目以降の加熱調理によって、はじめて乳化油脂組成物の乳化が壊れ、解乳化することによって、保形性、旨味、ジューシーな食感を付与できる乳化剤としてグリセリン飽和脂肪酸モノエステル0.02〜0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1〜1重量%を含有し、且つ油中水滴型に乳化してなる練り込み用乳化剤組成物(特許文献7:特開2002−174)と、この乳化剤を含有させた畜肉加工品(特許文献8:特開2002−231号)等が開示されている。
【0010】
これら文献7及び8は、同じ技術に属し,1次加熱で調理殺菌工程を伴うような冷凍食品、例えば畜肉加工品や魚肉加工品等に適用され、1次加熱では油脂として振舞い、製造工程を損なわずに2次加熱されるまで、乳化油脂組成物を保ち、2次加熱以降に始めて解乳化をおこし、水相部からの旨味、ジューシー感も付与できる旨開示されているが、1次加熱から2次加熱までの工程は乳化状態を維持し、2次加熱で解乳化をおこすという乳化度合いの制御は容易なものでなく、必ずしも実用性に優れたものとはいえない。
【0011】
上記にみられるように、油脂を含有させた畜肉加工品において、加熱処理が1回、或いは加熱処理が2回、いずれの場合にも喫食時には、ジューシー感があって、旨味のある畜肉加工品は容易に得られるものでなかった。
【0012】
本出願人も、オクテニルコハク酸エステル化澱粉を使用する含油食品を得る方法(特許文献9:特開平6−296462号)で、含油食品がハンバーク、ミンチボール,焼売、ソーセージなどの畜肉加工品の場合、液状油はそのまま、ラードのような固形脂では油脂が液状化する程度に加熱してから末糊化の状態のオクテニルコハク酸エステル化澱粉と混合し、油脂と馴染ませてから通常の方法で畜肉加工品を製造すると、加熱処理時にみられる油脂のドリップを大幅に減少でき、歩留改善や食味や食感も改善できるとしている。しかし、加熱が1回の場合には効果はあっても、冷蔵や冷凍してから再加熱すると同じような効果を発揮できなかった。
【0013】
このような情況に鑑みて、未調理,或いは加熱調理済みで冷蔵や冷凍で流通している畜肉加工品に対して、喫食時に未調理の場合は調理加熱、調理済みの場合は再加熱した際にも同じようにジューシー感はあって、旨味のある特性を有する畜肉加工品が求められている。さらに、畜肉加工品の見掛けについて、あらびきソーセージのように油脂が油塊として存在させるタイプのものが好まれる傾向がある。
【特許文献1】特開平1−112969号
【特許文献2】特開平1−179667号
【特許文献3】特開平4−320662号
【特許文献4】特開平6−105667号
【特許文献5】特開平11−103562号
【特許文献6】再公表WO97/04669号
【特許文献7】特開2002−171号
【特許文献8】特開2002−231号
【特許文献9】特開平6−296462号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この課題は、畜肉加工品を冷蔵、或いは冷凍して流通させ、畜肉加工品が未調理の場合には調理加熱、調理加熱済みの場合には再加熱して喫食する何れの場合にも、ジューシー感があって、旨味のある畜肉加工品の製造を可能にする油脂組成物の開発とそれを使用した畜肉性加工品を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明者は種々の検討を行った結果、特定粘度の可溶性澱粉と固形脂を特定の比率にした乳化組成物が、目的とする畜肉加工品の製造を可能にし、これを用いて畜肉加工品を製造するとジューシー感があって,旨味のある畜肉加工品が得られることを見いだして本発明を完成した。
【0016】
本発明は以下の乳化組成物及びそれを用いて製造する畜肉加工品に係るものである。
【0017】
1.20質量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜45質量%と固形脂10〜50質量%を含有する畜肉加工用の乳化組成物。
【0018】
2.20質量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉を10〜21質量%と固形脂30〜50質量%を含有する1に記載の畜肉加工用の乳化組成物。
【0019】
3.可溶性澱粉がオクテニルコハク酸エステル化した可溶性澱粉である1又は2に記載の畜肉加工用の乳化組成物。
【0020】
4.1〜3のいずれかに記載の乳化組成物を使用して製造された畜肉加工品。
本発明は、20質量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜45質量%と固形脂10〜50質量%を含有する乳化組成物と、それを用いて製造する畜肉加工品に係るものである。
【0021】
本発明でいう畜肉加工品とは、挽肉或いは10mm角以下のブロック肉の如き食肉を主原料とする加工食品で、未調理のまま又は調理加工してから冷蔵や冷凍で保存され、未調理の場合には加熱調理、調理済の場合には再加熱して喫食するものであって、具体的には例えば餃子、ソーセージ、肉ダンゴ、ミートボール,中華まん等が例示できる。
【0022】
本発明でいうジューシー感とは、口中で咀嚼した時にジュースがあふれ出る感じを意味
し、このジュース中には、加熱により溶解する油脂の旨味成分と水溶性旨味成分とが混在している。
【0023】
本発明でいう乳化組成物とは、製造時に乳化しており、冷却すると固形状になって、任意の形状にカッティングでき、加熱すると乳化がこわれて解乳化し、油脂としての特徴が発現しやすい特性を有するものを言う。
【0024】
牛脂のような固形脂と同じように使用でき、畜肉加工品中で油塊となって存在し、畜肉加工品の見栄えをよくする。さらに、畜肉加工品として加熱すると、乳化組成物に適度な粘度をもたせているために、解乳化した乳化組成物の移動する範囲が限定的で、実質的に加熱溶解した乳化組成物の流出がない特性を有し、畜肉加工品を咀嚼した時に旨くてジューシーな食感がより強く感じられる。
【0025】
また加熱溶解した乳化組成物の流出が実質的にないので、冷蔵や冷凍で保存する場合にも作業性に格別問題がないし、保存後に再加熱しても喫食すると旨くて、ジューシーな食感を味わえる。
【0026】
本発明に使用する可溶性澱粉 は、澱粉を水に懸濁させ、塩酸、硫酸などの酸、または次亜塩素酸ソーダなどの公知の酸化剤を添加して、20質量%水溶液の粘度が1000mPas以下、好ましくは10〜1000mPasになるまで分解した後、中和、水洗、脱水、乾燥して粉末状で得られる熱水可溶なタイプのものを意味する。さらにこれをドラムドライヤーやエクストルーダーなどで処理して冷水可溶性にした可溶性澱粉も同じように使用できるのでこれも包含する。
【0027】
20質量%水溶液の粘度が10mPas未満なら澱粉スラリーの反応中に澱粉が水に溶解して流出する割合が増え、可溶性澱粉の製品としての歩留が悪くなるだけでなく、畜肉加工品を加熱した時の油脂の流出を押える効果が弱くなる。又逆に1000mPasを越えると、乳化組成物の乳化はできても加熱で乳化がこわれにくくなる、即ち解乳化を阻害する。
【0028】
可溶性澱粉の粘度を上記範囲にすることによって、カッテイング特性に優れた乳化組成物とする事が出来、畜肉加工品中では乳化組成物を油塊として存在させて見栄えをよく出来、加熱すると解乳化はしているが実質的に加熱溶解した乳化油脂組成物の流出を防止することが出来、惹いては、畜肉加工品を咀嚼したときの旨さやジューシー感を強く感じることを可能にする。
【0029】
可溶性澱粉 を製造するための澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーポテトスタ−チやワキシーコーンスターチなどの天然澱粉及びこれらの澱粉を常法により、エステル化やエーテル化した変性澱粉を使用できる。また、エーテル化やエステ化した可溶性澱粉の場合、天然澱粉を可溶性澱粉にしてからエーテル化やエステル化してもよい。なおエーテル化やエステル化は常法に従えば良い。
【0030】
本発明の乳化組成物は、固形脂と可溶性澱粉をベースにして乳化して得られるものであり、乳化には通常乳化剤を使用し、乳化剤ごとに乳化条件を適宜検討して使用する。その際、殆どの乳化剤が使用され、その代表的な具体例としては、レシチン、モノグリセリド、ポリグリセリド、シュガーエステル等がある。但し乳化剤を使用する必要がないと言う理由で、オクテニルコハク酸エステル化した可溶性澱粉が特に好ましい。
【0031】
尚,20質量%水溶液の粘度は、200cc容のビーカに可溶性澱粉試料40gと水160gを秤取し、沸騰浴中で内容物を攪拌しながら90℃まで加熱後、蒸発水分を補充し30℃まで冷却し、B型回転粘度型を用いで測定される。
【0032】
本発明に使用する固形脂とは、一般的に油脂本来の特性から常温で固体状を呈するものを意味するが、本発明ではこれに常温で液体状となっている液体脂が使用されても、油脂全体でみると融点が常温を越えるものも包括し、その具体的な例としては、パ−ム油、ヤシ油、パ−ム核油、カカオ脂、牛脂、豚脂のような常温で固体状のものや、大豆油、菜種油、綿実油、サフラ−油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、コメ油、アマニ油のような液状のものや、これらの油脂に水素添加等を行って、融点を上げたり、凝固点を下げたりしたものが含まれる。
これらを単独又は併用して油脂全体が常温で固体状を呈するものが挙げられる。これらの固形脂の中でも、畜肉加工品に油脂の旨味を付与する効果がより顕著であるという点で、牛脂、豚脂などの動物性油脂がより好ましい。
【0033】
畜肉加工品用の油脂として、固形脂や加熱時の安定性に優れた乳化物、加熱時には乳化がこわれて解乳化をおこす乳化物、或いは最初の加熱では乳化安定性を有し、2回目以降の加熱で解乳化をおこす乳化物など種々の乳化物が使用、又は使用が検討されているが、
加熱時に乳化安定性が強すぎると畜肉加工品を加熱した時に旨味やジューシー感の発現が弱い。加熱で解乳化する場合には、調理済みの畜肉加工品として冷蔵や冷凍で保存するには作業性やこれを再加熱したときの旨味やジューシー感の低下が著しく、加熱に対して乳化状態を自在に制御することは技術的にかなり困難であると思われる。
【0034】
本発明は、上記の問題を解消するために油脂としては固形脂を使用し、油脂以外に特定粘度の可溶性澱粉を併用した乳化組成物とすることによって、上記の問題点の解決がはかれるようなった。
【0035】
本発明の乳化組成物は、20重量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜45質量%と、固形脂10〜50質量%を含む乳化組成物である。
【0036】
かかる乳化組成物は、例えば、以下のような方法で製造できる。即ち、固形脂を溶融し、溶融した固形脂を、80〜85℃に加熱糊化した可溶性澱粉の水溶液に滴下し、高速撹拌して乳化する。
【0037】
その際、20重量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜45質量%と固形脂10〜50質量%、好ましくは可溶性澱粉10〜21質量%と固形脂30〜50質量%を含有するようにして乳化する。可溶性澱粉がオクテニルコハク酸エステル化した可溶性澱粉の場合には不要であるが、それ以外の可溶性澱粉には、モノグリセライドやレシチンなどの乳化剤を組成物に1質量%程度含有させて乳化させる。乳化は、高速撹拌機がホモミキサーのような場合には、8000〜12000rpm程度で3〜10分間、温度を60℃以上に保持して撹拌すればよい。
【0038】
可溶性澱粉と固形脂が上記の割合を逸脱すると、乳化不充分となり均一化しない。たとえ乳化はできても、冷却時に固形状にならずに、カッティング適正が悪くなったり、解乳化しなくて旨味やジューシー感の発現が悪くなる。
【0039】
特に、乳化組成物中の油脂含量を30〜50質量%にすると、油脂由来の旨味やジューシー感をさらに際立てることができる。
【0040】
得られた乳化組成物は、冷却時には固形状になって、所望の大きさに容易にカッティングでき、そのまま畜肉加工品に含有させて油塊として存在せしめ得られ、製品の見栄えをよくすることが出来る。この乳化組成物を含有した畜肉加工品を加熱した際に、乳化がこわれて解乳化することで油脂としての機能を発揮しやすくするが、適度な粘性を付与しているので油脂が拡散せず、限られた範囲内に残存する。つまり実質的にドリップ現象がなく、油脂が濃縮されたような状態で存在するため、咀嚼するとジューシーで旨味を強く感じる。またドリップ現象がないので、冷蔵や冷凍しても作業性に全く問題が発生せずに調理済み畜肉加工製品となり、この調理済み食品を電子レンジなどで再加熱して咀嚼しても旨味やジューシー感を強く感じる。
【0041】
上記のような方法で得られた本発明の乳化組成物は、牛脂や豚脂のような固形脂と同じように使用して、ハンバーグ、餃子、焼売、ソーセージ、肉だんご、ミートボール、中華まん畜肉加工品を製造できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の乳化組成物が畜肉加工品の製造にもたらす効果について、畜肉加工品としてハンバークを例にとって説明する。
【0043】
豚肉、牛肉、鶏肉などの畜肉は、単独または合せて、チョッパーにかけて望みの大きさのミンチ状にする。一方、冷蔵又は冷凍で保存している本発明の乳化組成物を、ナイフ或いは適当な機器を用いて、ダイスカット又は任意の大きさにカッテイングする。
【0044】
手動または混合機を用いて、ミンチ状の肉、カットした乳化組成物、タマネギなどのミジン切りした野菜、食塩、砂糖やグルタミン酸ソーダなどの調味料、胡椒などの香辛料、タマゴ、パン粉、澱粉、加工澱粉などを捏ね合わせから好みの量を取り出し、楕円形、円形など任意の形に成形する。成形の終了したハンバーグを冷蔵や冷凍で保存するか、そのまま、片面ずつ、150〜180℃の程度の温度で数分間ローストする。ローストしたハンバーグはそのまま喫食するか或いは加熱調理済みのハンバーグとして、冷蔵や冷凍で保存し、好みの時に電子レンジなどを用いて加熱して喫食する。牛脂や豚脂の加熱が一度或いは複数になる何れのケースでも、柔らかく、ジューシーで、風味に優れたハンバークが味わえるようにになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に本発明の詳細を参考例及び、実施例を示して説明するが、参考例や実施例で%は質量%、部は質量部を意味する。
【参考例1】
【0046】
「スタビローズK」(商品名、松谷化学工業(株)製、20%水溶液の粘度が17mPasの可溶性澱粉)100部を水130部に懸濁し、3%苛性ソ−ダ水溶液を用いてpH7.5〜9.3に維持しながら、無水オクテニルコハク酸2.5部を添加してエステル化した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して20%水溶液の粘度が18mPasのオクテニルコハク酸エステル化した可溶性澱粉を得た。この試料をOCT1とする。
【参考例2】
【0047】
撹拌下にある5%硫酸溶液13kgにタピオカ澱粉10kgを投入して分散し、45℃で加水分解反応をさせ、澱粉乳液の一部を連続的にサンプリングして、3%水酸化ナトリウム溶液で中和し、水洗後脱水した試料について粘度測定を行った。粘度の測定は、水分13%まで乾燥した可溶性澱粉が40g(固形分として34.8g)に水を加えて200gとした割合にした可溶性澱粉の乳液を90℃まで加熱し、50℃まで冷却して測定した。
【0048】
上記のようにして測定した粘度が約700mPas、約1300cpになった試料を、それぞれ2kgずつとりだし、3%水酸化ナトリウム溶液でpH6.5に中和して反応を停止し、温度を30℃まで冷却した。
【0049】
次にそれぞれの可溶性澱粉の乳液を撹拌しながら3%水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを8〜9に維持しながら、用いたタピオカ澱粉に対して3重量%になるような割合で無水オクテニルコハク酸を添加し、澱粉乳液のpHの変動がなくなったところで5%硫酸溶液で中和し、水洗、脱水し、水分13%まで乾燥したオクテニルコハク酸化した可溶性澱粉を得た。これ等をまたOCT2とOCT3とした。OCT2とOCT3を20%懸濁液にし、90℃まで加熱し、30℃まで冷却して測定した粘度はそれぞれ、680mPasと720mPasであった。
【実施例1】
【0050】
可溶性澱粉として、参考例1のOCT1(20%水溶液の粘度が18mPasのオクテニルコハク酸エステル化澱粉)、「EM30」(商品名、松谷化学工業(株)製、20質量%水溶液の粘度が48.5mPasの)、参考例2のOCT2(20%水溶液の粘度が680mPasのオクテニルコハク酸エステル化澱粉)とOCT3(20%水溶液の粘度が1320mPasのオクテニルコハク酸エステル化澱粉)を水に表1の割合で分散し、撹拌しながら80℃まで加熱して糊化する。次いで、TKホモミキサーを用い、8000rpmで1分間撹拌して均質化した後、表1の割合で溶融した牛脂(60〜70℃)を添加して、8000〜10000rpmで5分間撹拌して乳化し、乳化組成物とする。乳化組成物の製造時の乳化状態、乳化組成物を常温まで冷却後冷蔵庫に入れ1昼夜放置した時の均一性とカッテイング適正、再加熱して解乳化した状態を下記の基準で評価した結果を表1に示した。
【0051】
<乳化状態>
○:均一で良好な乳化状態。
△:部分的的な乳化状態。
×:乳化していない。
【0052】
<カッティング適正>冷蔵1日後の乳化組成物のスライス性
○:容易にスライスできる)
△:スライスすることがかなり困難。
×:スライスできない。
【0053】
<加熱後の乳化状態>
○:解乳化する。
△:一部解乳化している。
×:解乳化しない又は解乳化の状態でない。

【0054】
【表1】




【実施例2】
【0055】
可溶性澱粉として、「スタビローズK」(商品名、松谷化学工業(株)製で20%水溶液の粘度を17mPasの可溶性澱粉)を18部、水41部、乳化剤としてモノグリセライドを1部、牛脂を40部の割合で使用し、実施例1に準じて製造した乳化組成物を試料No.11とした。この乳化組成物を実施例1に準じて評価したところ、乳化性、カッティング性、解乳化の何れにも優れていた。

【0056】
【表2】




【0057】
ミンチ肉、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、ホワイトペッパー、ナツメグを表2の割合で混合し、乳化組成物、タマネギ、全卵、「松谷あやめ」(松谷工業社製、加工小麦澱粉)を表2の割合で添加して混合後、1個あたりの大きさが35gにしてハンバーグ用に成形した。尚、ミンチ肉は8mmのプレートを付けて肉ひきしたもの、乳化組成物は実施例1と実施例2の方法で作成し、冷蔵で保存している試料No.2、4.5、6、7、9、10、11の乳化組成物をナイフで8mm角にカッテイングしたもの、タマネギはソテー水分70%にしたものを使用した。対照区では、冷蔵保存している牛脂をナイフで8mm角にカッティングしたもの使用して同じようにしてハンバークを製造した。
【0058】
成形の終了したハンバーグを、冷凍して1週間保存後に170℃で片面3分間ローストしたハンバークと成形後そのまま170℃で片面3分間ローストし、それを冷凍で1週間保存後に電子レンジ調理(500W,30秒)したハンバークについて評価した結果を表3に示した。
【0059】
表3において、「スタビロースK」は「スタビK」と表記した。焼成歩留について、成形した試料重をW1、成形冷凍後ローストした試料重をW2、成形後ローストした試料重をW3、W3を冷凍後に電子レンジで加熱したものをW4し、次の式を用いて計算した。焼成歩留が高ければ、ハンバーグ内部のジューシーな部分の流出が少ないことの指標となる。
【0060】
焼成歩留1=(W2/W1)×100
焼成歩留2=(W3/W1)×100
電子レンジ歩留=(W4/W3)×100
食感1は成形ローストした試料、食感2は電子レンジ加熱した試料について実施したもので、評価は次のような基準を用いて行った。
【0061】
ジューシー感
5:強い
4:やや強い
3:普通
2:やや弱い
1:弱い
歯ごたえ
5:柔らかい
4:やや柔らかい
3:普通
2:ややかたい
1:かたい
風味
5:非常に良好
4:やや良好
3:普通
2:やや悪い
1:悪い













【0062】
【表3】





【実施例3】
【0063】
実施例1の試料No.2の牛脂を豚脂に変えた以外、同じようにして乳化組成物を製造し、ナイフで8mm角に裁断したところ、牛脂の場合と同じように乳化性とカッティング性に優れたものであった。
【0064】
豚肉ミンチ31.9部、食塩0.7部、砂糖1.0部、濃口醤油2.4部、土しょうが0.5部、グルタミン酸ソーダ0.5部、上記の乳化組成物8.0部を粘りが出る程度までに混合撹拌し、キャベツ14.0部、白菜24.0部、白ねぎ7.0部、ニラ3.0部などの野菜のみじん切りと「パインゴールドVE」(ナショナルスターチ社製のα化架橋澱粉)を3.0部、「プロファム974」(ADM社製の粉末大豆蛋白)を1.6部添加し、最後にごま油2.4部を添加混合してギョーザの具を作った。
【0065】
特等強力小麦粉100部、食塩2部、ショートニング10部、水43部をケンミックス・アイコメジアKM005《愛工舎製のミキサーに入れ、低速2分、高速5分の撹拌後フローアタイム10分間とり、ギョーザの生地とした、この生地を厚さ1mmに圧延し、直径7cmの円形に打ち抜き、これに上記の具をのせ、皮と具の合計が1個あたり23gになったところで、ギョーザ用に成形し、フライパンにて蒸し焼きに後、冷蔵、冷凍した。対照例として冷蔵保存している豚脂をナイフで8mm角に裁断して、同じよう処理したギョーザを作り、冷蔵、冷凍した。
【0066】
3日後に冷蔵、冷凍中のギョーザを電子レンジ調理して食べ比べたところ、乳化脂組成物を使用したギョーザは、対照例のギョーザに比べて冷蔵或いは冷凍の何れの場合於いてもジューシーで、美味しいものであった。
【実施例4】
【0067】
豚肉ミンチ48.4部、実施例3で得た乳化組成物10部、ホタテ10部、玉葱10部、椎茸5部、しろねぎ1部、たけのこ5部、全卵3部、馬鈴薯澱粉10部、食塩0.5部、砂糖2部、かき油1部、ごま油1部、グルタミン酸ソーダ0.5部、濃口醤油2部、胡椒0.1部、チキンエキス0.5部を混合して焼売の具とした。
【0068】
特等強力粉100部、食塩2部、水44部を「ケンミックス・アイコメジアKM005」(愛工舎製のミキサー)に入れ、低速2分、高速5分の撹拌後フローアタイム10分間とり、焼売の皮用の生地とした。この生地を厚さ1mmに圧延し、7cm角に打ち抜き、上記の具をのせ22gの重さになったところで焼売用に成形し、10分間蒸煮した。その後急速に冷凍した。対照例として冷蔵保存している豚脂をナイフで8mm角に裁断して、同じようにギョーザを作り、冷凍した。1週間後に冷凍中のギョーザを電子レンジ調理して食べ比べたところ、乳化脂組成物を使用した焼売は、対照例の餃子に比べてジューシーで、美味しいものであった。

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
20質量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜45質量%と固形脂10〜50質量%を含有する畜肉加工用の乳化組成物。
【請求項2】
20質量%水溶液の粘度が10〜1000mPasの可溶性澱粉10〜21質量%と固形脂30〜50質量%を含有する請求項1に記載の畜肉加工用の乳化組成物。
【請求項3】
可溶性澱粉がオクテニルコハク酸エステル化した可溶性澱粉である請求項1又は請求項2に記載の畜肉加工用の乳化組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の乳化組成物を使用して製造した畜肉加工品。


























【公開番号】特開2008−43288(P2008−43288A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223756(P2006−223756)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】