説明

畝立て局所施肥機

【課題】 畝立て局所施肥機においては、成形畝に対して帯状またはひも状に連続して散布されるが、そのままでは作物の成育がばらつく問題がある。
【解決手段】 機体と、この機体に設けられた耕耘土を畝立成形する畝成形体と、この畝形成体にて畝成形される畝中央部に肥料を散布する局所散布装置を備えた畝立て局所施肥機である。前記した局所散布装置は肥料を収容する単一のホッパーと、ホッパーの低部にシャッター装置を備え、シャッター装置の下部に水平方向に回転するスピンナを備えて、このスピンナから肥料を分配ケースに放出し、複数個の導出管に供給して、肥料を導出管によって畝中央部に局所散布するとともに、局所散布された被散布物と耕耘土とを混合する攪拌装置を設けたことを特徴とした構成であって、栽培畝の局所に必要量だけ施肥することが可能で、葉菜は肥料焼けすることもなく成育は安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白菜やキャベツ等の葉菜類を栽培する畝の成形と肥料の散布を行う畝立て局所施肥機の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野菜作における生産コスト低減と環境負荷低減を目指した局所散布機が要請され、又それに対応した多数の局所施肥や局所散布機が提案されている。例えば、この種の葉菜類を栽培する畝立て局所散布機として、特許第3586677号(特許文献1)が知られている。この公知文献には「機体と、この機体に設けられたミッション装置と、前記機体に回転可能に設けられ前記ミッション装置からの出力により回転駆動される耕耘ロータリーと、前記機体に設けられ前記耕耘ロータリーにて耕耘された耕耘土を畝立て成形する畝成形体と、この畝成形体にて畝立て成形される耕耘土に被散布物を局所散布する散布装置とを具備し、前記散布装置は、前記機体に設けられ被散布物を収容するホッパーと、このホッパーに設けられこのホッパー内に収容された被散布物を導出する導出体と、この導出体の導出部に設けられこの導出体から導出される被散布物を前記畝成形体にて畝立て成形される耕耘土中に局所散布する散布体とを有し、前記散布体は、この散布体の下端部にこの散布体の進行方向に対して後方に向かって開口した散布口を有し、この散布口の上縁部に防土フラップを後方に向かって突出し、この散布口の下縁部に被散布物を局所散布する位置を水平状に整地する水平状の整地面を形成したことを特徴とする畝立て局所散布機」の技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3586677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記畝立て局所施肥機の構成では、散布体にて畝の局所位置に被散布物が連続的に散布された状態で畝成形体にて畝が連続的に確実に畝立て成形されるものであるが、その散布状態は帯状態、又は筋状(ひも状)態であって、畝断面で見ると塊状、又は一点固まり状に配置されるものである。
【0004】
従って葉菜苗等の植付の後、根が成長する過程において肥料に直接に根が接触して肥料分を吸収する時期・タイミングが一定でなく、早期に一点固まり状の肥料に接触した場合あるいは後期に接触した場合の肥料効果が異なってくる問題がある。幼苗時の根が一点固まり状の肥料に触れると肥料焼けの問題発生が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、機体と、この機体に設けられた耕耘土を畝立成形する畝成形体と、この畝形成体にて畝成形される畝中央部に肥料を散布する局所散布装置を備え、この局所施肥装置は肥料を収容する単一のホッパーと、ホッパーの底部に備えたシャッター装置と、このシャッター装置の下部に水平方向に回転するスピンナを備え、このスピンナから肥料を分配ケースに放出して複数個の導出管に供給して、導出管の散布口によって畝の中央部に局所散布するとともに、さらに局所散布された肥料と耕耘土を混合する攪拌装置を備えたことを特徴とした畝立て局所施肥機を提供したものである。
【0006】
又、前記した畝立て局所施肥機において、肥料は帯状又は筋状に局所散布され、耕耘土と混合する攪拌幅は植付する作物の根群域である構成を提供したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成により、葉菜等の畝立て成形時における局所施肥作業をする際、葉菜等の成育する根群域の範囲で所要分の肥料を上下層に亘って耕耘土と混合攪拌するので、葉菜の成育にともなって根は一定して肥料分を吸収することができる。特に、肥料を単一のホッパーに収容して水平方向に回転するスピンナによって分配ケース内部に広幅状に排出し、複数個の導出管に分配するので、散布装置の構成部分が単純になって軽量な構成となる効果がある。又、作物の根群域の植付幅で上下に攪拌されるから栽培畝の局所に必要最小限の施肥をするにも係らず、葉菜は肥料焼けすることもなく成育は安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施した図面に基づいて構成を説明する。
図1は本発明を実施した側面図、図2は一部を省略した後面図、図3は動力伝達を示す平面図および図4は作物の根群域と攪拌状態図を示したものである。
【0009】
図1において、1は畝立て局所施肥機を示したもので図示していないがトラクタの後部三点リンクに装着するものである。2は機体を示し、前方にトラクタ装着部を設け下部に圃場を砕土する耕耘体9を配置する。
【0010】
16は連結フレームで、機体2の後方に延出して設けて、上方に散布装置5を載置し
後方に畝成形体3を連結している。畝成形体3は本実施例においては3連配置して、畝はその相互の中間部に2列形成される。18は左右対称の成形板を示す。畝成形体3を構成する成形板18は、図1に示す側面方向から見て散布口15の両側に位置すると、尚、畝の成形性が良好である。4は攪拌装置で、成形される畝の中間部上位に設けられて数個の攪拌爪17を設けている。
【0011】
機体2の前方には、トラクタの三点リンクに装着するためのトップブラケット11、左右に設けたロアピン8が設けられている。7はトラクタにPTO軸から動力が伝えられる入力軸を示し、6は入力ボックスであり各部へ動力を伝導する。22は第1伝動ケースで入力ボックス6から回転力を伝えられて、第1横軸23に設けた砕土爪10を回転して土塊を耕耘する。
【0012】
散布装置5は上方に肥料を投入する単一のホッパー12を備えてなる。このホッパー12の底部にはシャッター装置33を設けて、このシャッター装置33の下部に水平方向に回転するスピンナ34を備えている。スピンナ34の後端部は分配ケース43内に突設してなる。スピンナ34は円板上の上面に放射方向に羽根36を複数個設けてなり、前方と左右を被覆するケーシング37を設けている。35はスピンナを回転する回転主軸を示し、上端はホッパー12内のアジテータを回転する。
【0013】
41はレバーを示し、ロッド38を介してシャッター装置33の開度を可変するもので、ホッパー12から肥料をスピンナ34へ落下する量を調節するものである。39は駆動モータを示し、本実施例では電動モータであり、出力軸40に設けたプーリ46にベルト45を掛け渡してスピンナ34を回転する回転主軸を駆動する分配ケース43は箱状で、本実施例では左右に2個の導出管14を配置している。導出管14は所望によって3個ないし4個を設けることができる。散布口15の断面は植付する葉菜等の根群域の幅に設定されている。
【0014】
図2において、散布装置5は単一のホッパー12と排出部を有するものであって、放射方向に羽根36を有して水平方向に回転するスピンナ34を配置している。分配ケース43は左右に広長の箱状を呈し、本実施例においては箱底面に山形状の仕切板44を設置して、分配ケース43内に排出された肥料を左右に2分割して導出管14に供給する。
【0015】
20は横枠を示し、図1に示した連結フレーム16によって支持されて3組の畝成形体3を支承してなる。畝成形体3は、成形される畝の斜面を押圧するように上方に向けて突出するように左右に成形板18を設けて、相互に隣接する成形板18間によって栽培用の成形畝31を形成する。この成形畝31の中央部で上位に位置するように攪拌装置4は設けられている。攪拌装置4は数個の攪拌爪17を設けて回転する。21は尾輪を示し、畝成形体3の中央部にそれぞれ設けられて上下調節可能に設けられている。
【0016】
図3において、入力ボックス6はトラクタからの回転力を入力軸7を介して入力する。入力ボックス6は機枠体を兼用するパイプフレーム25を左右に突設して伝動機構を内装して、一方は第1伝動ケース22へ伝動し他方端には第2伝動ケース24を連結してなる。第1伝動ケース22は下方に第1横軸23を横設して、耕耘体9を形成する砕土爪10を回転駆動するものである。
【0017】
本実施例では、耕耘作業と畝立て作業と同時に施肥作業をして、さらに部分攪拌作業をする構成である。別途に前作業で前面耕耘をする場合は、耕耘体9は不要である。
【0018】
第2伝動ケース24は、攪拌装置4を形成する第2横軸26を回転する。第2横軸26には前述した成形される成形畝31の中央上部に位置する攪拌爪17が数本設けられて正転方向に低速回転する。攪拌爪17の長さは、植付する葉菜の成育根群域に達する程度に設定され植付葉菜の根群域幅に散布された肥料を混合する。本実施例では爪長さは略18cmを採用した。
【0019】
図4において、成形畝31に対して葉菜30の根群域32である上下層に亘って、局所に帯状に散布された肥料が攪拌される状態を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施した側面図
【図2】一部を省略した後面図
【図3】動力伝達を示す平面図
【図4】作物の根群域と攪拌状態図
【符号の説明】
【0021】
1 畝立て局所施肥機
2 機体
3 畝成形体
4 攪拌装置
5 散布装置
6 入力ボックス
7 入力軸
8 ロアピン
9 耕耘体
10 砕土爪
11 トップブラケット
12 ホッパー
14 導出管
15 散布口
16 連結フレーム
17 攪拌爪
18 成形板
20 横枠
21 尾輪
22 第1伝動ケース
23 第1横軸
24 第2伝動ケース
25 パイプフレーム
26 第2横軸
30 葉菜
31 成形畝
32 根群域
33 シャッター装置
34 スピンナ
35 回動主軸
36 羽根
37 ケーシング
38 ロッド
39 駆動モータ
40 出力軸
41 レバー
43 分配ケース
44 仕切板
45 ベルト
46 プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、この機体に設けられた耕耘土を畝立成形する畝成形体と、この畝形成体にて畝成形される畝中央部に肥料を散布する局所散布装置を備え、
この局所施肥装置は肥料を収容する単一のホッパーと、ホッパーの底部に備えたシャッター装置と、このシャッター装置の下部に水平方向に回転するスピンナを備え、このスピンナから肥料を分配ケースに放出して複数個の導出管に供給して、導出管の散布口によって畝の中央部に局所散布するとともに、さらに局所散布された肥料と耕耘土を混合する攪拌装置を備えたことを特徴とした畝立て局所施肥機。
【請求項2】
肥料は帯状又は筋状に局所散布され、耕耘土と混合する攪拌幅は植付する作物の根群域である請求項1記載の畝立て局所施肥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−174747(P2006−174747A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370479(P2004−370479)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】