説明

畦塗り機及びその作業部向き調整方法

【課題】圃場の隅まで連続的に畦塗り作業を行なう。
【解決手段】畦塗り機1は作業部30を旧畦U0の一辺Faに沿うように作業部の向きを調整可能な作業部位置調整装置61を有する。作業部位置調整装置61は、オフセットフレーム10の後端部に回動自在に設けられた作業部30の向きが旧畦U0の一辺Faと略平行にあるか否かを走行機体80から目視確認可能なマーカ64と、オフセットフレーム10を旋回動させる旋回シリンダ13及び作業部30を回動させる回動シリンダ57の動作を操作可能なアクチュエータ操作装置67を有する。走行機体80に搭乗した作業者Mは、マーカ64を目視して作業部30の向きが一辺Faと略平行になるようにアクチュエータ操作装置67を操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り機及びその作業部向き調整方法に関し、特に、走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置で畦塗り作業を行なう作業部を備えた畦塗り機及びその作業部向き調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような畦塗り機は、トラクタ等の走行機体に装着されて、走行機体の進行方向に沿って圃場における畦塗り作業を連続直線的に行なう場合に用いられる。畦塗り機は、広い圃場の全周に亘って畦を形成するものであり、畦塗り作業の作業効率を向上させることができる(特許文献1参照)。この畦塗り機は、走行機体の後部に装着され、旧畦の一部を削り取るロータリ爪と、削り取られた土を旧畦に飛散させて盛土にするロータリと、この盛土をバイブレータの振動で整形して新畦を形成する畦整形板を有してなる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−246001号公報(第1−2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような畦塗り機は、走行機体の進行に応じてオフセット位置での直線畦塗り作業を行なうものであるが、矩形状の圃場において圃場の周縁に沿った畦塗り作業を行なう場合に、走行機体の先端部分が圃場の端に到達した時点でその後の畦塗り作業を行なうことができなくなり、矩形圃場の四隅に未作業部分が必ず残るという問題が生じる。そこで、従来の畦塗り機では、畦塗り機を走行機体に対して通常作業時とは反対側のオフセット位置に移動させるとともにその前後関係を反転(反転リバース)させて、四隅の未作業部分に対して走行機体を後進動させながら作業を行なうようにしている。
【0005】
しかしながら、このような従来の反転リバースによる作業では、走行機体を停止させて畦塗り機を反転リバースさせ、走行機体の進行方向を変えて作業位置を調整した後に作業を再始動させることになるので、連続作業を一旦停止せざるを得ず、作業効率が著しく低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、走行機体の進行方向に沿って畦塗り作業を行なう畦塗り機において、圃場の隅まで連続的な畦塗り作業を行なうことができる畦塗り機及びその作業部向き調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係わる畦塗り機は、走行機体に装着され、一端側が回動自在に支持されて他端側が走行機体の側方に移動可能なオフセットフレームと該オフセットフレームの他端部に水平方向に回動自在に連結されて走行機体の走行位置に対して側方に存在する旧畦側にオフセット移動されて畦塗り作業を行なう作業部とを備え、走行機体の前進動にともなって畦塗り作業を行なう畦塗り機であって、作業部には、作業部が畦塗り作業中に作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行にあるか否かを走行機体から目視確認するため、走行機体に搭乗した作業者により目視されたときの作業者の視線の延長先が旧畦の延びる方向と略平行であると、作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行となるように配置された目視確認手段(例えば、実施形態におけるマーカ64)が設けられる。
【0008】
上記構成の畦塗り機によれば、作業部に、作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行にあるか否かを走行機体から目視確認可能な目視確認手段を設けることで、走行機体に搭乗した作業者が目視確認手段を目視するだけで、作業者は、作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行であるか否かの確認が可能になる。
【0009】
また、上記構成の畦塗り機において、作業部は、アクチュエータ(例えば、実施形態における回動シリンダ57)によりオフセットフレームに対して回動可能であり、アクチュエータは、走行機体に設けられたアクチュエータ操作手段(例えば、実施形態におけるアクチュエータ操作装置67)の操作に応じてそれぞれの動作が制御されてもよい。
【0010】
上記構成の畦塗り機によれば、アクチュエータは、走行機体に設けられたアクチュエータ操作手段の操作によりその動作が制御されるので、走行機体に搭乗した作業者がアクチュエータ操作手段を操作すると、アクチュエータ操作手段の操作に応じてアクチュエータが駆動して、作業部が回動し、作業部の向き調整が可能になる。
【0011】
また、本発明に係わる畦塗り機の作業部向き調整方法は、走行機体に装着され、一端側が回動自在に支持されて他端側が走行機体の側方に移動可能なオフセットフレームと該オフセットフレームの他端部に水平方向に回動自在に連結されて走行機体の走行位置に対して側方に存在する旧畦側にオフセット移動されて畦塗り作業を行なう作業部とを備え、走行機体の前進動にともなって畦塗り作業を行なう畦塗り機において、前記作業部の向きが前記旧畦の一辺に沿って設置されるように前記作業部の向き調整を行なう畦塗り機の作業部向き調整方法であって、走行機体に搭乗した作業者により目視されたときの作業者の視線の延長先が旧畦の延びる方向と略平行であると、作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行となるように作業部に配設された目視確認手段を介して目視された作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行になるように、走行機体に設けられて作業部の回動操作が可能なアクチュエータ操作手段を操作する。
【0012】
上記構成の畦塗り機の作業部向き調整方法によれば、目視確認手段を目視して作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行になるようにアクチュエータ操作手段を操作することで、作業部を旧畦の延びる方向と略平行にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係わる畦塗り機は、作業部に、作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行にあるか否かを走行機体から目視確認可能な目視確認手段を設け、走行機体に、オフセットフレームに対して作業部を回動させるアクチュエータの動作を操作するアクチュエータ操作手段を設けることで、走行機体に搭乗した作業者は、目視確認手段を目視することで、作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行にあるか否かを容易に確認することができる。また目視確認手段を目視してアクチュエータ操作手段を操作するだけで、作業部を旧畦の延びる方向と略平行にすることができる。
【0014】
また、本発明に係わる畦塗り機の作業部向き調整方法は、目視確認手段を目視して作業部の向きが旧畦の延びる方向と略平行になるようにアクチュエータ操作手段を操作する。このため、圃場の隅において走行機体が旧畦から圃場の内側に進行方向を変えて前進動した場合でも、畦塗り機を旧畦に沿って前進動させることができる。このため、圃場の隅まで連続的な直線畦塗り作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1から図7に基づいて説明する。先ず、本発明に係わる畦塗り機の作業部位置調整方法を説明する前に、畦塗り機について説明する。なお、説明の都合上、図1(斜視図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0016】
畦塗り機1は、図1及び図2(平面図)に示すように、トラクタ等の走行機体80の後部に配設された三点リンク連結機構81に着脱可能に装着されるヒッチフレーム3に前端側が回動自在に取り付けられて後端側が走行機体80の左右方向の側方に旋回動可能なオフセットフレーム10と、オフセットフレーム10の後端部に水平方向に回動可能に連結された作業部30を有してなる。
【0017】
ヒッチフレーム3の左右方向の中央下部にはギアボックス5が設けられ、ギアボックス5は前側に入力軸(図示せず)を突出して有し、この入力軸に走行機体80のPTO軸(図示せず)からヒッチフレーム3の前側に設けられた中間フレーム6の伝動軸(図示せず)を介して動力が伝達されるようになっている。オフセットフレーム10は、内部が中空な箱状部材であり、内部には伝動機構(図示せず)が設けられ、走行機体80からの駆動力がギアボックス5の入力軸を介してオフセットフレーム10の後端部に上下方向に延びて回転動自在に配設された駆動軸11に伝達されるようになっている。
【0018】
オフセットフレーム10は、一端側がオフセットフレーム10の後側上部に枢結されて他端側がヒッチフレーム3の上部に枢結された油圧式の旋回シリンダ13の伸縮動作により左右方向に旋回動可能である。このため、旋回シリンダ13が伸長動するとオフセットフレーム10は右側に旋回動し、旋回シリンダ13が縮小動するとオフセットフレーム10は左側に旋回動する。
【0019】
オフセットフレーム10の後端下部には、駆動軸11の下部に連結されて垂直下方へ延びる回動軸31が設けられている。回動軸31はその回転中心軸線が駆動軸11のそれと同軸上に配置されている。回転軸31の外側にはこれを覆う回転軸ケース32が配設され、その上端部はオフセットフレーム10の後端下部に回動可能に連結されている。回動軸31の下部には前述した作業部30が接続されている。
【0020】
作業部30は、畦塗り作業を行なう作業本体部35と、作業本体部35を回転軸ケース32に連結して駆動軸11からの駆動力を作業本体部35に伝達する伝動支持部51を有してなる。作業本体部35は、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部36と、旧畦を切り崩した土の土盛りを行なう前処理部40と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部44を有してなる。
【0021】
天場処理部36は、図3に示すように、回転動自在に支持された天場処理ロータ37を有する。天場処理ロータ37は天場動力伝達ケース52を介して回転軸ケース32に連結されて支持される。天場動力伝達ケース52内には動力伝達機構53a、53b、53c、53d、53eが内蔵され、この動力伝達機構を介して回転軸31の駆動力が天場処理ロータ37に伝達されるようになっている。天場処理ロータ37の上部にはこれを覆う図2に示すカバー部材38が設けられている。カバー部材38は天場動力伝達ケース52に接続されて支持されている。
【0022】
前処理部40は、回転動自在に支持された耕耘ロータ41を有する。耕耘ロータ41は前処理動力伝達ケース55を介して回転軸ケース32に連結されて支持される。前処理動力伝達ケース55内には動力伝達機構56aが内蔵され、この動力伝達機構56aを介して回転軸31の駆動力が耕耘ロータ41に伝達されるようになっている。耕耘ロータ41の上部にはこれを覆うカバー部材42が設けられ、カバー部材42は前処理動力伝達ケース55に支持されている。
【0023】
整畦部44は、左右方向に延びて回転動自在に支持された回転中心軸44aに取り付けられた多面体ドラム45と、多面体ドラム45の右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部46を有する。整畦部44は整畦動力伝達ケース58を介して回転軸ケース32に連結されて支持される。整畦動力伝達ケース58内には動力伝達機構59a、59b、59c、59dが内蔵され、この動力伝達機構を介して回転軸31の駆動力が整畦部44に伝達されるようになっている。整畦部44の上部にはこれを覆う図1に示すカバー部材47が設けられ、カバー部材47は整畦動力伝達ケース58に支持されている。
【0024】
天場処理部36の回転中心軸36aは、平面視において整畦部44の回転中心軸44aと略平行に延びる一方、前処理部40の回転中心軸40aは、平面視において整畦部44の回転中心軸44aと交差する方向に且つ非直交する方向に延びる。
【0025】
伝動支持部51は、前述した天場動力伝達ケース52、前処理動力伝達ケース55及び整畦動力伝達ケース58を有してなる。このため、作業本体部35は、伝動支持部51を介してオフセットフレーム10の後端部に回動且つ回転駆動可能に支持されている。
【0026】
オフセットフレーム10と作業部30との間には、図1に示すように、電動油圧式の回動シリンダ57が連結されている。回動シリンダ57は油圧の給排制御が電動モータDMで行なわれており、電動モータDMの駆動により回動シリンダ57が伸長動すると作業部30が平面視において左方向(反時計方向)に回転動し、回動シリンダ57が縮小動すると作業部30が平面視において右方向(時計方向)に回転動する。なお、図4に示すように、整畦部44の回転中心軸44aが走行機体80の進行方向Aに対して直交する方向に配置されている場合において、作業部30の向きを示す作業方向軸O2は進行方向Aと平行であると定義する。
【0027】
このように構成された作業部30には、作業部位置調整装置61が設けられている。作業部位置調整装置61は、走行機体80に搭乗している作業者Mが、作業部30の向きが旧畦U0の延びる方向と略平行にあるか否かを確認し、作業部30の向きが略平行でない場合には、作業部30を回動させ、若しくはオフセットフレーム10の旋回動とともに作業部30を回動させて、作業部30の向きを旧畦U0に対して略平行にするためのものである。
【0028】
作業部位置調整装置61は、作業部30の作業方向軸O2の向きが旧畦U0の延びる方向と略平行にあるか否かを走行機体80から目視確認可能なマーカ64と、旋回シリンダ13及び回動シリンダ57(以下、これらをまとめて「アクチュエータ13、57」と記す。)の動作を手動操作するアクチュエータ操作装置67と、アクチュエータ操作装置67の操作信号に応じてアクチュエータ13、57の動作を制御する図5に示すコントローラ71とを有してなる。
【0029】
なお、マーカ62は作業者Mが視認し易いように着色されてもよい。また、マーカ62の取り付け位置は、前処理部40のカバー部材42に限るものではなく、天場動力伝達ケース52や天場処理部36のカバー部材38でもよい。
【0030】
マーカ64は、前後方向に延びる棒状部材であり、走行機体80に搭乗した作業者Mにより目視されたときの作業者Mの視線の延長先が旧畦U0の一辺Faと略平行であるときに、作業部30の向きが旧畦U0の延びる方向と略平行となるような位置、即ち、整畦部44のカバー部材47の左側端面の上部とオフセットフレーム10の後端位置との間の位置に配置されている。マーカ64は、作業部30の一部である整畦部44のカバー部材47に取り付けられ、多面体ドラム45の左側端部の外径と略同じ長さを有する。このため、走行機体80に搭乗した作業者Mがマーカ64を目視したときに、マーカ64の全体が旧畦U0の一辺Faと重なって見えると、作業部30の向きを示す作業方向軸O2は旧畦U0の延びる方向と略平行な状態にある。なお、マーカ64は作業者Mが視認し易いように着色されてもよい。またマーカ64の取り付け位置は、整畦部44のカバー部材47に限るものではなく、整畦部44を支持する整畦動力伝達ケース58でもよい。
【0031】
さて、オフセットフレーム10を旋回動させる旋回シリンダ13及び作業部30を回動させる回動シリンダ57は、図5に示すように、アクチュエータ操作装置67によって操作される。アクチュエータ操作装置67は、旋回シリンダ13の動作を操作する旋回操作レバー67aと回動シリンダ57の動作を操作する回動操作レバー67bとを有する。旋回操作レバー67a及び回動操作レバー67bは、中立位置から前後方向若しくは左右方向に傾動可能である。アクチュエータ操作装置67は、旋回操作レバー67aが中立位置から前後又は左右方向のいずれかの方向に傾動操作されると、傾動方向に応じた右旋回操作信号及び左旋回操作信号を出力し、回動操作レバー67bが中立位置から左右又は前後方向のいずれかの方向に傾動操作されると、傾動方向に応じた右回動操作信号及び左回動操作信号を出力するように構成されている。
【0032】
なお、旋回操作レバー67a及び回動操作レバー67bは一つの操作レバーで構成してもよい。この場合、この操作レバーは、前後方向、左右方向及び斜め方向に傾動可能である。そして、この一つの操作レバーを有したアクチュエータ操作装置は、中立位置から前後方向のいずれかの方向に傾動操作されると、傾動方向に応じた右旋回操作信号及び左旋回操作信号を出力し、中立位置から左右方向のいずれかの方向に傾動操作されると、傾動方向に応じた右回動操作信号及び左回動操作信号を出力し、さらに斜め方向に傾動操作されると操作方向に応じた旋回操作信号及び回動操作信号を出力するように構成されてもよい。
【0033】
コントローラ71は、アクチュエータ操作装置67からの操作信号に応じて旋回シリンダ13及び回動シリンダ57の動作を制御する作動制御弁V及び電動モータDMの作動をコントロールする。即ち、コントローラ71は、アクチュエータ操作装置67から右旋回操作信号を受け取ると、旋回シリンダ13が伸長動するように作動制御弁Vの作動を制御し、アクチュエータ操作装置67から左旋回操作信号を受け取ると、旋回シリンダ13が縮小動するように作動制御弁Vの作動を制御する。また、コントローラ71は、アクチュエータ操作装置67から左回動操作信号を受け取ると、回動シリンダ57が伸長動するように電動モータDMの作動を制御し、アクチュエータ操作装置67から右回動操作信号を受け取ると、回動シリンダ57が縮小動するように電動モータDMの作動を制御する。なお、旋回シリンダ13及び回動シリンダ57は油圧式に限るものではなく、電動式でもよい。
【0034】
次に、本発明に係わる畦塗り機1により畦塗り作業を行なう場合の動作及び作業部30の作業部向き調整方法について説明する。図6(平面図)に示すように、畦塗り機1により矩形状の圃場Fの旧畦U0の一辺Faを畦塗りする場合、先ず、走行機体80を旧畦U0の一辺Faに沿って配置する。そして、オフセットフレーム10により作業部30を走行機体80の右側にオフセット移動し、作業部30の作業方向軸O2が旧畦U0の一辺Faに沿うように、作業部30をオフセットフレーム10に対して回動させる。そして、走行機体80を前進動させるとともに作業部30を作動させる。その結果、図4に示す天場処理部36が旧畦U0の一辺Faの旧畦U0の上部を切り崩し、図4に示す前処理部40が旧畦U0を切り崩しながら土盛りを行ない、図4に示す整畦部44が盛られた土を切り崩された旧畦U0上に塗り付けて、旧畦U0の一辺Faが連続的に畦塗りされる。
【0035】
そして、走行機体80が圃場Fの前端周辺位置80aに近づいたときに走行機体80の向きが左側に変わって走行機体80がさらに前進動すると(80b〜80d)、走行機体80に対してオフセットフレーム10や作業部30の相対角度がそのままであると、作業部30の作業方向軸O2が旧畦U0の一辺Faの延びる方向とずれ、一辺Faの前端部の畦塗り作業ができなくなる。さらに詳細には、図7(平面図)に示すように、作業部30が矢印A'方向に前進動している状態(30a)から左側に向きを変えてさらに前進動すると(30b)、平面視において直線状に配置されたマーカ64は旧畦U0の一辺Faから圃場Fの内側方向へ前側が傾いた状態になり、作業部30の作業方向軸O2は前側が内側に傾斜して、旧畦U0の一辺Faの延びる方向とずれる。
【0036】
しかしながら、本発明に係わる畦塗り機1では、図4に示す走行機体80に搭乗した作業者Mが回動操作レバー67bを手動操作することで、傾いた作業方向軸O2を元の状態(旧畦U0の一辺Faと平行な状態)に戻すことができる(30b')。即ち、作業者Mがマーカ64を目視したときに、前後方向に延びるマーカ64の全体が旧畦U0の一辺Faと略平行に見えるように作業部30をオフセットフレーム10に対して矢印B方向に旋回動させる(30b')と、マーカ64は旧畦U0の一辺Faと略平行な状態になり、作業部30の作業方向軸O2の方向を旧畦U0の一辺Faと略平行にすることができる。
【0037】
なお、傾いた作業方向軸O2を元の状態に戻す場合、作業者Mがマーカ64を目視したときに、前後方向に延びるマーカ64の全体が旧畦U0の一辺Faよりも内側にずれて見えるときには、マーカ64の全体が旧畦U0の一辺Faに沿って重なって見えるように、旋回操作レバー67aを操作してオフセットフレーム10を旋回動させるとよい。
【0038】
従って、図6に示すように、走行機体80の進行方向が変わった場合でも、走行機体80の進行方向に応じて作業部30の回動角度を変更させて、作業部30の作業方向軸O2を旧畦U0の一辺Faに沿った状態にすることができる。このため、走行機体80の進行方向を変えた場合でも、圃場Fの旧畦U0の一辺Faの隅を畦塗りすることができる。
【0039】
その結果、従来技術では作業部を反転リバースさせた後に後進作業によって行なっていた矩形圃場Fの四隅塗り残し部分の作業を、連続した前進作業のみで行なうことができる。このため、畦塗り作業の作業効率を著しく向上させることができるとともに、反転リバース機構を設ける必要がないので、作業機の構造を簡略化し且つ軽量にすることができる。また、作業部位置調整装置61は、特別の自動制御装置を有せずに作業部30を旧畦U0の所望の位置に移動させることができるので、構成が簡素である。このため、畦塗り機1のコストの増加を抑制することができる。
【0040】
なお、前述した実施の形態では、オフセットフレーム10が単一の棒状部材で構成された例を示したが、オフセットフレーム10は複数の部材を有してリンク機構を構成してなるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
畦塗り作業を行なう作業部に溝を掘る溝掘り機能を有した作業部を設け、この作業部にマーカを設けることで、作業部の向き調整が可能な溝掘り機に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる作業部位置調整装置を搭載した畦塗り機の斜視図を示す。
【図2】この畦塗り機の平面図を示す。
【図3】図1のI−I矢視に相当する作業部の断面図を示す。
【図4】畦塗り機の平面図を示す。
【図5】本発明の一実施の形態に係わる作業部位置調整装置のブロック図を示す。
【図6】畦塗り機の動作を説明するための畦塗り機の平面図を示す。
【図7】畦塗り機の動作を説明するための作業部の概略平面図を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 畦塗り機
10 オフセットフレーム
30 作業部
57 回動シリンダ(アクチュエータ)
64 マーカ(目視確認手段)
67 アクチュエータ操作装置(アクチュエータ操作手段)
67b 回動操作レバー(アクチュエータ操作手段)
80 走行機体
M 作業者
U0 旧畦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着され、一端側が回動自在に支持されて他端側が前記走行機体の側方に移動可能なオフセットフレームと該オフセットフレームの他端部に水平方向に回動自在に連結されて前記走行機体の走行位置に対して側方に存在する旧畦側にオフセット移動されて畦塗り作業を行なう作業部とを備え、前記走行機体の前進動にともなって畦塗り作業を行なう畦塗り機であって、
前記作業部には、前記作業部が畦塗り作業中に前記作業部の向きが前記旧畦の延びる方向と略平行にあるか否かを前記走行機体から目視確認するため、前記走行機体に搭乗した作業者により目視されたときの前記作業者の視線の延長先が前記旧畦の延びる方向と略平行であると、前記作業部の向きが前記旧畦の延びる方向と略平行となるように配置された目視確認手段が設けられることを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
前記作業部は、アクチュエータにより前記オフセットフレームに対して回動可能であり、
前記アクチュエータは、前記走行機体に設けられたアクチュエータ操作手段の操作に応じてそれぞれの動作が制御されることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
走行機体に装着され、一端側が回動自在に支持されて他端側が前記走行機体の側方に移動可能なオフセットフレームと該オフセットフレームの他端部に水平方向に回動自在に連結されて前記走行機体の走行位置に対して側方に存在する旧畦側にオフセット移動されて畦塗り作業を行なう作業部とを備え、前記走行機体の前進動にともなって畦塗り作業を行なう畦塗り機において、前記作業部の向きが前記旧畦の一辺に沿って設置されるように前記作業部の向き調整を行なう畦塗り機の作業部向き調整方法であって、
前記走行機体に搭乗した作業者により目視されたときの前記作業者の視線の延長先が前記旧畦の延びる方向と略平行であると、前記作業部の向きが前記旧畦の延びる方向と略平行となるように前記作業部に配設された目視確認手段を介して目視された前記作業部の向きが前記旧畦の延びる方向と略平行になるように、前記走行機体に設けられて前記作業部の回動操作が可能なアクチュエータ操作手段を操作することを特徴とする畦塗り機の作業部向き調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−119009(P2008−119009A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1222(P2008−1222)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【分割の表示】特願2003−280836(P2003−280836)の分割
【原出願日】平成15年7月28日(2003.7.28)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】