説明

番組再生システム

【課題】稼働系と待機系で映像取得に時間ズレがあっても、映像再生された映像では稼働系と待機系で同期が取られているようにした冗長構成による番組再生システムを提供すること。
【解決手段】デコーダ2、3は、LAN(映像LAN)を介して送出サーバ4、5にアクセスし、これらに録画・録音してある映像や音の映像取得を行い、映像Aと映像Bの映像素材として同時に再生し、何等かの障害発生時、映像Aから映像Bに切り替えることにより映像の連続性が保たれるようにした番組再生システムにおいて、デコーダ2、3による映像Aと映像Bの映像取得に時間ズレが生じた場合、映像取得が遅れた方の映像について映像再取得を行うようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバに用意した複数の個別の映像素材を時系列的に並べて再生するシステムに係り、特に放送業務用に好適な冗長構成による番組再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、テレビ局(テレビジョン放送局)では、予め放送プログラムの作成に必要な夫々の映像素材(放送素材)をサーバに用意しておき、必要とする映像素材を、放送スケジュールに従って逐次、サーバから取り出すことによりプログラム構成された映像素材に再生し、放送プログラムとして放送用送信システムに供給するという運用が一般的であり、このときに用いられるのが番組再生システムと呼ばれるものである。
【0003】
ところで、例えばテレビ局での運用を想定した、いわゆる業務用の場合、放送スケジュールの維持は、ほとんど至上命令であるといってもよく、従って、放送プログラムの作成に必要な映像素材の再生には万全の信頼性が要求され、このため、従来から映像素材再生系を冗長構成にし、障害の発生に備えてバックアップが与えられるようにするのが一般的である(例えば特許文献1、2等参照)。
【0004】
ここで、冗長構成とは、端的にいえば、システムに含まれる各種の機器を稼働系と待機系に分け、夫々を独立に設けたもので、要するに二重系にすることであり、稼働系に障害が発生して本来の映像が得られなくなったら待機系の映像に切り替え、放送スケジュールの維持に疎漏が生じないようにするのである。
【0005】
このとき、稼働系については現用系又は主系と呼称し、待機系については予備系又は従系と呼称する場合もあり、更に二重系にとどまらず、三重系以上にする場合もある。
【0006】
そして、この冗長構成の番組再生システムにおいては、障害発生時、稼働系から直ちに待機系に切り替えが可能なように、稼働系と待機系で同じ映像を同期して再生する必要があり、このため従来技術では、制御指示を稼働系と待機系で同じタイミングにすることにより同期制御が実現されるようにしている。
【0007】
なお、このときの「再生」とは、録画・録音した映像や音を記録媒体から取り出し、デコーダ機器を用いて1倍速或いは早送り・巻き戻しで表示を行うことを意味する。
【0008】
ここで、図7は、従来の冗長構成された番組再生システムの一例を示したもので、この従来技術の場合、図示のように、送出制御装置1とデコーダ2、3、それに送出サーバ4、5を備えている。なお、デコーダ2、3については、通常、高解像度デコーダが用いられている。
【0009】
まず、送出制御装置1は、所望のプログラムが搭載されたCPUを備え、これにより、デコーダ2、3による映像取得を同時に開始させ、映像取得完了後、映像再生を開始させるのに必要な制御と、これに付随したシステム全体の動作に必要な制御とを司る。
【0010】
次に、デコーダ2、3は、冗長化のためA系とB系の2台備えられ、送出制御装置1から供給される制御指令A、Bに応じて再生動作を行う。
【0011】
そして、送出サーバ4、5は、データベースとなる記録媒体を備え、これに録画・録音した映像や音を記録し、映像素材として保持する働きをするもので、これらも冗長化のためA系とB系の2台が備えられている。
【0012】
従って、デコーダ2と送出サーバ4及びデコーダ3と送出サーバ5が各々対になり、A系とB系の冗長構成された映像再生手段を構成していることになる。
【0013】
次に、この従来技術の動作について説明する。
【0014】
デコーダ2、3は、送出制御装置1から再生要求を受け取ると、それぞれLAN(映像LAN)を介して送出サーバ4、5にアクセスする。そして、送出サーバ4、5の記録媒体に録画・録音してある画像や音を、当該記録媒体から取り出し、それぞれ映像Aと映像Bの映像素材として再生する。
【0015】
このとき、映像Aと映像Bの一方、例えば映像Aを稼働系とする。従って、この場合、映像Bは待機系となる。
【0016】
そして、この映像Aの映像素材を放送プログラム用として、図示してない放送用の送信システムに供給する。
【0017】
一方、ここで待機系となった映像Bは、予備の映像素材として、障害発生時でのバックアップに備えて用意されていることになり、この結果、障害発生時、稼働系から待機系に切り替えることにより映像の連続性が保たれ、冗長構成による放送スケジュールの維持が疎漏なく得られることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−244543号公報
【特許文献2】特開2010−220183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記従来技術は、冗長構成の番組再生システムにおいて同期制御の実現に配慮がされておらず、障害発生時の切り替えに際して映像の連続性が保持できないという問題がある。
【0020】
上記したように、従来の冗長構成の番組再生システムにおいては、稼働系と待機系で同じタイミングで制御指示を行うことにより同期制御が実現されるようにしている。
【0021】
しかし、このとき稼働系と待機系は互いに独立した機器であるから、例えば、このときの映像データのデータベースにおける格納位置の違い、ネットワークやサーバ内CPUの負荷状態の違いなど、いくつかの外部要因により、稼働系と待機系で全く同じ応答特性をもたせることは、事実上、不可能に近く、しかもアトランダムになる。
【0022】
従って、たとえ同じタイミングで制御したとしても、記録媒体から稼働系と待機系で同じタイミングで映像や音を取得するのは困難で、このため従来技術では、稼働系と待機系で同期した映像の再生が常時、確実に得られるという保証は、必ずしもない。
【0023】
これを図8により具体的に説明する。
【0024】
いま、或る時点で送出制御装置1(図7)から再生要求がなされたとする。
【0025】
このとき送出制御装置1は、内部にシステム時計を備え、これを使用して稼働系と待機系の双方に同時に遅れ無く再生要求が行えるものとする。
【0026】
そこで、この再生要求が送出制御装置1から指示された時刻を図8(a)のズレない場合と、同(b)のズレた場合の時点t1とすると、デコーダ2、3は、この時点t1で同時に映像Aと映像Bの取得(映像取得)を開始することになる。
【0027】
次に、図8(a)において、この再生要求の指示時点t1以後、デコーダ2による映像Aの映像取得が完了し、映像再生が可能になったら、送出制御装置1から映像再生が指示され、この結果、時点t2から映像Aの映像再生が開始され、稼働系の映像素材として、図示してない放送用の送信システムに供給されることになる。
【0028】
また、このとき、映像Bについても、図8(a)に示すように、時点t2までに映像取得が完了して映像再生が可能になっていれば、この時点t2で送出制御装置1の映像再生指示により映像Bの映像再生も開始され、待機系の映像素材としてバックアップに備えることができる。
【0029】
ここで、この図8(a)の場合、映像Aと映像Bは、時点t2で同時に映像再生が開始されている。
【0030】
そして、この場合、図示のように、画像フレーム内容が同一、つまりタイムコードTCが同一の映像Aと映像Bが相互に同期した状態で稼働系と待機系に個別に再生されることになり、従って、この後、バックアップに際して映像を切り替えても、映像はフレームが正しく連続した状態を保ち、従って、冗長構成による放送スケジュールの維持が映像に乱れを伴うことなく得られることになる。
【0031】
しかしながら、上記した外部要因のため、映像Aと映像Bが同時に再生可能な状態になるとは限らず、時間がズレてしまう場合があり、しかも、このとき、上記したように、ズレの程度は映像取得ごとにアトランダムに決まる。
【0032】
例えば、図8(b)に示すように、映像Aの映像取得が完了し、時点t2で映像Aの映像再生が開始されたとき、映像Bでは映像取得が遅れ、時点t2から遅れた時点t3になってからでなければ映像Bの映像再生ができなくなってしまった場合、映像Aと映像Bに画像ズレが現れ、映像Bの画像フレーム内容は、時点t2での映像Aの画像フレーム内容と同じになってしまう。
【0033】
このとき、時点t1で再生要求が指示されたのは、上記したように、放送スケジュールに従ってなされたものであり、このため時点t2で映像取得が完了し映像再生が可能になったら、それが、たとえ映像Aについてだけであっても、放送システムとしての運用上、とにかく、この映像Aの映像素材を放送プログラム用として、図示してない放送用の送信システムに供給しなければならないので、ここで映像再生を中止し、再度、映像取得から始めて、映像Aと映像Bが同時に映像再生可能になるのを待つ訳にはいかない。
【0034】
そうすると、この図8(b)の場合、映像Aと映像Bで画像フレーム内容に時間的なズレをもった状態になっていることになり、バックアップが必要な局面において稼働系から待機系に映像を切り替えたとき、画像のフレーム内容が前に飛んでしまい、以前と同じ場面からの繰り返し映像になって画像の連続性に乱れが生じてしまう。
【0035】
しかも、この時間ズレは、上記したように、外部要因によるものであるから、このような冗長構成による番組再生システムの場合、ほとんど不可避で、結果として甘受するしかない。
【0036】
このため、従来技術では、同期再生の確保に配慮がされているとはいえず、障害発生時の切り替えに際して映像の連続性が保持できないという問題が生じてしまうのである。
【0037】
本発明の目的は、稼働系と待機系で映像取得に時間ズレがあっても、映像再生された映像では稼働系と待機系で同期が取られているようにした冗長構成による番組再生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記目的は、少なくとも2系統のデコーダとサーバを備え、前記少なくとも2系統のサーバの各々に記憶保持された複数の映像素材を少なくとも2系統のデコーダの各々から所望の順序で取り出すことにより、少なくとも2系統の映像素材を所望のプログラム構成された映像素材として同時に再生する方式の番組再生システムにおいて、前記少なくとも2系統のデコーダの各々による映像取得を同時に開始させ、映像取得完了後、映像再生させる制御部と、前記少なくとも2系統のデコーダの中の何れかのデコーダの映像取得だけが完了した場合、他のデコーダによる映像取得が完了した時点で当該他のデコーダによる映像再取得を開始させ、前記一方のデコーダによる映像取得が完了した時点から予め設定した合わせ込み時間が経過した時点で、前記他のデコーダにより映像再取得された映像を映像再生させる制御部とが設けられているようにして達成される。
【発明の効果】
【0039】
本発明においては、外部要因による同期再生の時間ズレが補償されるので、稼働系と待機系の切り替えに際しても常に同期した映像素材が再生され、従って、本発明によれば、冗長構成による番組再生システムとしての機能を、放送プログラムの連続性に乱れを伴うことなく、常に確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る番組再生システムの一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の動作を説明するためのタイミング図である。
【図3】本発明の一実施形態における送出制御装置のデータと処理の関連を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態における処理の流れをイメージ化して示した説明図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるユーザーの処理内容を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態における保守員の処理内容を示す説明図である。
【図7】番組再生システムの従来技術の一例を示すブロック図である。
【図8】番組再生システムの従来技術による動作を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明による番組再生システムについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0042】
まず、図1は、本発明に係る番組再生システムの一実施の形態で、この図1において、10は送出制御装置、11はユーザーインターフェース用のマウスやキーボードなどからなる入力装置で、12はモニター用の表示手段を備えた出力装置であり、その他、デコーダ2、3、それに送出サーバ4、5を備えている点は、図7の従来技術の場合と同じである。
【0043】
従って、送出制御装置10も、デコーダ2、3による映像取得を同時に開始させ、映像取得完了後、映像再生を実行させ、このとき付随して必要なシステム全体の動作を司る制御部として機能する点では、従来技術における送出制御装置1と基本的には同じであるが、このとき外部要因による同期再生の時間ズレが補償されるように構成されている点で、この送出制御装置10は、従来技術の送出制御装置1とは明確に構成が異なっている。
【0044】
このとき図2は、この実施形態の動作を説明するためのタイミング図で、詳しくは後述する。
【0045】
図3は、送出制御装置10におけるデータと処理の関連を示したもので、図示されているアプリケーション101、102、103は、送出制御装置10のCPUが有するアプリケーションであり、記憶媒体104は、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置で、ユーザーUから入力された動画データ群(1つ以上の動画データ)を保持し、且つ、保守員Mから入力されたディレイ値(後述)を設定値の一つとして保持する働きをする。
【0046】
そして、まず、アプリケーション(ユーザーI/F)101は、ユーザーU及び保守員Mと記憶媒体104の間に位置し、ディレイ値(遅延値)など設定値の参照(設定)や変更を保守員Mの入力に応じて行う。このときユーザーUと保守員Mは同一人の場合もある。また、このアプリケーション(ユーザーI/F)101は、ユーザーU及び保守員Mとアプリケーション(同期再生処理)102の間にも位置し、ユーザーUが選択した動画情報(動画IDなど)の通知を行う。このため上記した入力装置11と出力装置12が備えられている。
【0047】
ここで、アプリケーション(同期再生処理)102はメインとなる処理で、アプリケーション(ユーザーI/F)101から処理開始要求を受け付けると、指定された動画データを記憶媒体104から取得する。
【0048】
そして、取得した動画データは、このアプリケーション(同期再生処理)102において、再生すべき先頭位置が各設定値に従って決定され、準備・実行・停止の各制御指令としてアプリケーション(映像・音声再生)103に転送される。
【0049】
このアプリケーション(映像・音声再生)103は、高解像度デコーダ(デコーダ2、3)を再生動作させるための処理で、アプリケーション(同期再生処理)102から準備・実行・停止の各制御指令が転送されると、ここで高解像度デコーダは、この制御指令に従って順に準備状態から再生動作状態にされ、停止処理されることになる。
【0050】
そして、このときに指示された制御が実行されると、結果がアプリケーション(同期再生処理)102に通知され、更に再生中の現在のデコーダ2、3のタイムコードTCについても通知され、出力装置12に表示される。
【0051】
ここで、図4は、以上の処理の流れをイメージ化したものであり、図5は、図4のユーザーUによる処理をユースケース1として示したもので、図6は、図4の保守員Mによる処理をユースケース2として示したものである。
【0052】
そして、まず、図5のユースケース1は、ユーザーUの操作により開始され、動画データを読み込み、再生に必要な先頭位置に移動して再生を行う。
【0053】
このときのユーザーUの操作とは、オペレータなどの人員による操作だけをイメージするのではなく、コンピュータ制御により放送スケジュールに従って操作が行われる場合も含まれ、一般的には、これが主流である。
【0054】
また、図6のユースケース2は、保守員Mの操作により開始され、稼働系と待機系の同期再生に必要なディレイ値Dの指定(変更を含む)を行う。
【0055】
次に、この実施形態に係る番組再生システムの動作について説明する。
【0056】
ここで、この実施形態における同期再生処理は、送出制御装置10のアプリケーション(同期再生処理)102による高解像度デコーダ(デコーダ2、3)の再生動作により得られるもので、このとき、保守員Mにより設定値として入力され、磁気媒体104に保持されているディレイ値Dが用いられる。
【0057】
そこで、まず、このディレイ値Dについて説明する。
【0058】
既に、図8により説明したように、2台のデコーダ2、3により稼働系(映像A)と待機系(映像B)の映像を再生した場合、たとえ同じ時点t1で映像取得を開始させたとしても、映像Aの映像再生開始時点t2と映像Bの映像再生開始時点t3の間に時間差Δtが生じ、図8(b)に示すように、画像のズレとして現れる。
【0059】
この時間差Δtは、上記した外部要因によりアトランダムに決まるので、正確な予測はできない。
【0060】
しかし、ここで映像取得が完了するまでの平均的な時間Tmeanについては、テスト動作などから、かなりの確度で予測が可能である。
【0061】
そこで、この実施形態においては、放送スケジュールに従ってシステムを運用する際、保守員Mは、準備処理として、まず、上記した平均的な時間Tmeanを予測し、それを映像のタイムコードによる時間に換算した値TCmean とする。例えば1倍速の場合、60フレーム/秒の映像ならタイムコードは1/60秒毎に1ずつ増減するので、1/60秒がタイムコード1に換算される。
【0062】
そして、このTCmean に所望のマージン時間分mを加算し、それをディレイ値D(D=TCmean+m)とした上で入力装置11から入力し、図6のユースケース2に示されているように、アプリケーション(ユーザーI/F)101を介して磁気媒体104に保持させ、準備処理を終了する。
【0063】
従って、この後、いつでもシステムの運用に入ることができることになる。
【0064】
そこで、今度は図5のユースケース1に示されているように、ユーザーUにより、つまりコンピュータの制御又はオペレータの操作により、放送スケジュールに従った再生制御が行われる。
【0065】
このときの動作について、図2のタイミング図により説明する。
【0066】
いま、放送スケジュールにより、或る時点t1で再生すべき映像が指定されたとすると、これを受け、送出制御装置10は、デコーダ2、3に指示し、A系の送出サーバ4とB系の送出サーバ5の双方から、このとき指定された映像の取得を開始させる。
【0067】
これにより時点t1以降、このとき指定された映像の最初のタイムコードからの映像取得がデコーダ2、3の双方により開始され、やがて或る時間経過後に映像取得が完了し、映像再生が可能になる。
【0068】
そして、このとき、図8(a)で説明したように、A系とB系の双方で同時に映像取得が完了し、同時に画像再生が可能になれば何も問題は無く、この場合、送出制御装置10は、A系とB系の双方の映像取得が完了した時点t2から映像Aと映像Bの映像再生を開始させる。
【0069】
この結果、映像Aは稼働系の映像素材として、図示してない放送用の送信システムに供給され、映像Bはバックアップに備え、待機系の映像素材として用意されている状態になり、冗長構成による機能が充分に活かせることになる。
【0070】
しかして、このとき、A系とB系の何れか一方でだけ、例えば図8(b)で説明したように、時点t2ではA系だけ映像取得が完了し、B系では、まだ映像取得が完了せず、継続していたとする。
【0071】
ところで、この場合でも、上記したように、放送システムとしては、放送プログラムに穴を開ける訳にはいかないので、送出制御装置10は、A系とB系の一方でも映像取得が完了したら、その時点t2から、映像取得が先に完了した方の映像、この場合は映像Aを稼働系の映像素材として、図示してない送信システムに供給する。
【0072】
この後、送出制御装置10は、他方の映像、つまり映像Bの画像取得が完了するのを待つ。ここで、映像Bの画像取得が完了時点をt3とすると、この時点t3で、このときの映像AのタイムコードをA系デコーダ2から取得し、タイムコードTCxとする。そして、このタイムコードTCxにディレイ値Dを加算して映像再取得用のタイムコードTCR(=TCx+D)とした上でB系のデコーダ3に指示し、送出サーバ5からの映像Bの映像再取得を、当該映像BのタイムコードTCRから開始させる。
【0073】
このとき、既に映像取得した映像Bについては放置する。
【0074】
また、これと並行して、送出制御装置10は、再生中の画像Aのタイムコードをモニターし、時点t3でのタイムコードTCx以降、それが映像再取得用のタイムコードTCRに等しくなるのを待つ。
【0075】
このとき図2では、この再生中の画像AのタイムコードがタイムコードTCRに等しくなる時点をt5とし、このときの時点t3から時点t5までの期間については、合わせ込み時間nとしている。
【0076】
このとき、映像Bについてみると、この映像Bの映像再取得は時点t3で開始されている。
【0077】
そして、この時点t3から時点t5までの時間はディレイ値D、つまり映像取得が完了するまでの平均的な時間にマージン時間分が加算されたものであり、従って、時点t5になる以前の時点t4において、既に映像Bの映像再取得が完了している確率はかなり高い筈であり、この結果として、この時点t4では映像BのタイムコードTCRからの映像再生が可能になっている確率はかなり高いといえる。
【0078】
そこで、送出制御装置10は、この時点t4では、たとえ映像Bの映像再生が可能になっていた場合でも、ここで映像Bの映像再生に直ちに移行するのは抑えておき、時刻t5になってから映像Bの映像再生を開始させる。
【0079】
そうすると、この時点t5以降、映像BはタイムコードTCRからの映像として映像再生されることになる。
【0080】
このとき稼働系の映像Aについてみると、この時点t5においては、映像AのタイムコードはTCRになっている。
【0081】
従って、この時点t5以降、映像Aと映像Bは、各々のタイムコードが同じ映像として映像再生されていることになる。
【0082】
そこで、この映像Bを待機系とすることにより、バックアップが必要な局面において稼働系から待機系に映像を切り替えたときに画像の連続性に乱れが生じてしまう虞がなく、この結果、この実施形態によれば、冗長構成によるバックアップ機能が充分に活かせることになる。
【0083】
しかも、この実施形態の場合、時点t2以降は映像Aが稼働系の映像として供給されているので、上記した映像Bの映像再取得に際しても放送システムとしての運用が阻害される虞はなく、確実な運用が保証されることになる。
【0084】
ところで、この場合、上記したように、他方の映像、例えば映像Bの画像再取得がディレイ値Dよりも前に完了する確率が高いとはいっても、そうでない確率が0ではない以上、画像再取得を開始した後、時間がディレイ値Dを越えても画像再取得が完了せず、画像再取得が失敗してしまう場合がある。
【0085】
しかし、この実施形態の場合、時点t2以降は映像Aが稼働系の映像として供給されているので、上記した映像Bの映像再取得に際しても放送システムとしての運用に直ちに支障を来す訳ではない。
【0086】
そこで、画像再取得に失敗した場合、送出制御装置10は、このときの画像再取得に失敗した時点を図2の時点t3に置き換え、この時点から再び上記した画像再取得動作を開始させ、映像Aと同じタイムコードから映像Bの映像再生が得られるように制御する。
【0087】
そして、この画像再取得動作の繰り返しは、送出制御装置10により、映像Bの映像再生が正しく得られるまで、必用に応じて複数回、実行される。
【0088】
このときの合わせ込み時間nの時間値は、主としてシステムの性能により決まるが、通常、数秒から数十秒の比較的短時間である。
【0089】
従って、画像再取得動作を繰り返したとしても、冗長構成によるバックアップ機能に影響する虞は少ないといえるが、制御処理としては限度があるので、複数回、例えは3回繰り返しても失敗したら、このときの映像素材については冗長構成によるバックアップ機能は諦め、画像再取得動作を終了させるようにする。
【0090】
ところで、以上の説明は、映像Bが映像Aよりも遅れた場合であるが、反対に映像Aが映像Bよりも遅れた場合には、映像Bを稼働系とし、映像Aについて画像再取得動作を行わせるように制御してやればよい。
【0091】
以上のように、この実施形態によれば、稼働系と待機系の切り替えに際しても、常に稼働系と待機系とで同期した映像素材が得られ、この結果、冗長構成による番組再生システムとしての機能を、放送プログラムの連続性に乱れを伴うことなく、常に確実に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、テレビ局で業務用として運用される番組再生システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 送出制御装置(従来技術)
2 A系のデコーダ
3 B系のデコーダ
4 送出サーバ(A系)
5 送出サーバ(B系)
10 送出制御装置(本発明の実施形態)
11 入力装置(ユーザーインターフェース用のマウスやキーボード
などの入力装置)
12 出力装置(モニタ用の表示手段を備えた出力装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2系統のデコーダとサーバを備え、前記少なくとも2系統のサーバの各々に記憶保持された複数の映像素材を少なくとも2系統のデコーダの各々から所望の順序で取り出すことにより、少なくとも2系統の映像素材を所望のプログラム構成された映像素材として同時に再生する方式の番組再生システムにおいて、
前記少なくとも2系統のデコーダの各々による映像取得を同時に開始させ、映像取得完了後、映像再生させる制御部と、
前記少なくとも2系統のデコーダの中の何れかのデコーダの映像取得だけが完了した場合、他のデコーダによる映像取得が完了した時点で当該他のデコーダによる映像再取得を開始させ、前記一方のデコーダによる映像取得が完了した時点から予め設定した合わせ込み時間が経過した時点で、前記他のデコーダにより映像再取得された映像を映像再生させる制御部とが設けられていることを特徴とする番組再生システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227613(P2012−227613A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91366(P2011−91366)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】