説明

異なるプロトコルに準拠するネットワーク間でのシームレスな移行を提供するための方法

【課題】移動体デバイスがネットワーク間を移動する際、バッファリングされた未転送のデータパケットが失われる。これによりデータパケットの移動体デバイスへの送信速度が大幅に低下し、相当な遅延をもたらす。
【解決手段】第1ネットワークから通信プロトコルの異なる第2ネットワークへの移動体デバイスの移行を扱うための方法を提供する。一実施例では、第1ネットワークから移動体デバイスへのデータパケットの転送を終了し、第1ネットワークにおいて未転送データパケットのヘッダを再構築し、第1ネットワークから第2ネットワークに再構築されたデータパケットを送信する。他の実施例では、第2ネットワークにおいてヘッダ圧縮状態をリセットし、第2ネットワークにおいて第1ネットワークが移動体デバイスに未だ転送していない未転送データパケットを受信し、第2ネットワークから移動体デバイスに未転送データパケットを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は概略として、無線ネットワーク及び異なるプロトコルの無線ネットワーク間での移行に関する。
【背景技術】
【0002】
CDMA2000 EVDO及び3GPP LTEは、無線ネットワークに接続された移動体デバイスとのIPデータパケットの伝送をサポートするために無線ネットワークで使用され得る2つの異なるプロトコルである。CDMA2000ネットワークを配備し、CDMA2000ネットワークと通信する移動体デバイスのLTEネットワークへの移行及びその逆を容易にするようにCDMA2000ネットワークを構成しようとするオペレータは多数の相互運用性の問題に直面する。
【0003】
有線インターネットと無線ネットワークの間のデータ伝送速度の差のために、ターゲット(送信先)移動体デバイスがCDMA2000ネットワークでアクティブなとき、ターゲット移動体デバイスのCDMA2000ネットワークで受信されたIPパケットは、ターゲット移動体デバイスがそれらを受信する準備ができるまでバッファリングされる。バッファリングされたデータパケットがターゲット移動体デバイスに転送される前にターゲット移動体デバイスがCDMA2000ネットワークからLTEネットワークに移行した場合、バッファリングされた未転送のデータパケットは失われる。
【0004】
同様に、ターゲット移動体デバイスがLTEでアクティブなときに、ターゲット移動体デバイスのLTEネットワークで受信されたIPパケットは、ターゲット移動体デバイスがそれらを受信する準備ができるまでバッファリングされる。バッファリングされたデータパケットがターゲット移動体デバイスに転送される前にターゲット移動体デバイスがLTEネットワークからCDMA2000ネットワークに移行した場合、バッファリングされた未転送のデータパケットは失われる。
【0005】
CDMA2000又はLTEネットワーク上でデータパケットを受信するターゲット移動体デバイスは1つ以上の他のデバイスとのTCPセッションにかかわっていることがある。TCPプロトコルは、輻輳が検出されるとデータが送信されるレートを制限することによってネットワーク上の輻輳を抑制する輻輳制御アルゴリズムを用いる。ターゲット移動体デバイスがCDMA2000ネットワークからLTEネットワークに、又はLTEネットワークからCDMA2000ネットワークに移行するときにターゲット移動体デバイスが他のデバイスとのTCPセッションにかかわっている場合、TCPアルゴリズムによって1つ以上のパケットの喪失がネットワーク輻輳を示すものとして解釈されることになる。従って、バッファリングされた未転送のデータパケットの喪失は、データパケットがターゲット移動体デバイスに送信される速度の大幅な低下をトリガしてしまい、相当な遅延をもたらすことになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のネットワークから第2のネットワークへの移動体デバイスの移行を扱う方法であって、第1及び第2のネットワークは異なる通信プロトコルに準拠するものであるような方法に関する。
【0007】
一実施例では、第1のネットワークから移動体デバイスへのデータパケットの転送が終了される。第1のネットワークにおいて未転送データパケットのヘッダが再構築され、再構築されたデータパケットが第1のネットワークから第2のネットワークに送信される。他の実施例では、第2のネットワークにおいてヘッダ圧縮状態がリセットされる。第2のネットワークは第1のネットワークから未転送データパケットを受信し、ここで未転送データパケットとは、第1のネットワークが移動体デバイスに未だ転送していないデータパケットである。未転送データパケットが第2のネットワークから移動体デバイスに送信される。
【0008】
実施例は移行中の移動体デバイスに対するデータパケット喪失を最小限にすることができ、及び/又は複製データパケットの送信を減らすことができる。
【0009】
本発明の実施例は以下に提供される詳細な説明及び添付図面からより完全に理解されることになる。ここで、同様の要素は同様の参照符号で示され、それらは例示目的のみで与えられるものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はCDMA2000ネットワーク及びLTEネットワークを示す図である。
【図2】図2はCDMA2000ネットワークからLTEネットワークへの移動体デバイスの移行を扱うための方法を示すフローチャートである。
【図3】図3はRNCでデータパケットヘッダを再構築する例を示す図である。
【図4】図4はLTEネットワークからCDMA2000ネットワークへの移動体デバイスの移行を扱うための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の幾つかの実施例を示す添付図面を参照して、本発明の種々の実施例がより完全に記載される。図面では、層及び領域の厚さは明瞭化のために誇張されている。
【0012】
本発明の詳細な実施例がここに開示される。しかし、ここに開示される特定の構造的及び機能的詳細は本発明の実施例を記載するための単なる代表例に過ぎない。一方、本発明は多数の代替形態で具現化することができ、ここに説明する実施例のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0013】
従って、発明の実施例は種々の変形例及び代替形態とすることができるが、その実施例は図面において例示目的で示され、ここに詳細に記載される。また、発明の実施例を開示される特定の形態に限定する意図はなく、逆に、発明の実施例は、本発明の範囲内に入る全ての変形例、均等物及び代替例を包含するものであることが理解されるべきである。明細書及び図面を通じて、同様の符号は同様の要素を意味する。
【0014】
ここでは、第1、第2などの文言は種々の要素を説明するために使用されるが、これらの要素はこれらの文言によって限定されるものではないことが理解されるべきである。これらの文言は1つの要素を他の要素から区別するために使用されるに過ぎない。例えば、本発明の実施例の範囲から離れなることなく、第1の要素は第2の要素と用語付けされてもよいし、同様に、第2の要素は第1の要素と用語付けされてもよい。ここに使用される文言「及び/又は」は関連の列挙された項目の1つ以上のいずれか及び全ての組合せを含む。
【0015】
ある要素が他の要素に「接続される」又は「結合される」というときは、それが他の要素に直接に接続又は結合されてもよいし、介在要素が存在していてもよいことが理解される。逆に、ある要素が他の要素に「直接接続される」又は「直接結合される」というときは、介在要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の文言は同様の態様で解釈されるべきである(例えば、「・・・の間に」に対する「・・・の間に直接」、「・・・に隣接する」に対する「・・・に直接隣接する」等)。
【0016】
ここに使用される専門用語は特定の実施例を説明する目的のみのために使用され、発明の実施例を限定することを意図するものではない。ここに使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数形を同様に含むことが意図されている。さらに、文言「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」は、ここで使用される場合、記載される特徴、完全体、ステップ、動作、要素、及び/又は部材の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、部材、及び/若しくはそれらのグループの存在又は付加を除外するものではないことが理解される。
【0017】
なお、代替実施形態によっては、示される機能/挙動は図面に示す順序外で行われ得ることも理解されるべきである。例えば、連続して示す2つの図は、実際には、関与する機能/挙動によって実質的に同時に実行され、時には逆の順序で実行され得る。
【0018】
ここで使用される用語「移動体(mobile)」は、移動体装置、移動局、移動ユーザ、ユーザ機器(UE)、加入者、ユーザ、リモート局、アクセス端末、受信機等と同義なものとみなされ、以降に時としてそのようなものとして使用され、無線通信ネットワークにおける無線リソースのリモートユーザを記述するものである。用語「基地局」は、基地送受信局(BTS)、ノードB、拡張ノードB、フェムトセル、アクセスポイント等と同義なものとしてみなされ、及び/又はそのようなものとして言及され、ネットワークと1以上のユーザの間のデータ及び/又は音声接続のための無線ベースバンド機能を提供する機器を記述するものである。
【0019】
アーキテクチャ
図1は実施例によるCDMA2000プロトコルに準拠するネットワーク110及びLTEプロトコルに準拠するネットワーク120を示す。
【0020】
図1を参照すると、CDMA2000ネットワーク110はパケットデータサービングノード(PDSN)111、無線ネットワークコントローラ(RNC)112、複数の基地局又は基地送受信局(BTS)114〜116及び複数の移動体デバイス117〜119、102を含む。CDMA2000ネットワーク110は複数のRNC及びPDSNを有し得るが、明瞭化のために各々の1つのみを示す。PDSN111はプロキシモバイルIPインターフェイスを介して公衆データネットワーク(PDN)101と接続される。RNC112はPDSN111に接続され、BTS114〜116はRNC112に接続され、移動体デバイス117〜119、102は各々BTS114〜116との無線通信状態にある。RNC112はバッファ113を含む。PDSN111は、HRPD SGW又はHSGW(高速パケットデータサービスゲートウェイ)ともいわれる。ネットワーク110はCDMA2000ネットワークとして示しているが、ネットワーク110はCDMA2000プロトコルに限定されない。
【0021】
図1を再度参照すると、LTEネットワーク120はアクセスゲートウェイ121、複数の基地局即ちエンハンスト−ノードB(enB)122〜123、及び複数の移動体デバイス126〜127、103を含む。アクセスゲートウェイ121はGTP及び/又はモバイルIPプロトコルを介してPDN101と接続される。LTEネットワーク120は複数のアクセスゲートウェイを含み得るが、明瞭化のために1つのみを示す。eNB122〜123はアクセスゲートウェイ121に接続される。複数の移動体デバイス126〜127、103がeNB122〜123と無線通信状態にある。アクセスゲートウェイ121は、明瞭化のために図1から省かれている移動性管理エンドポイント(MME)及びサービングゲートウェイ(SGW)を含み得る。eNBはバッファ124〜125を含む。
【0022】
図1に示すように、RNC112及びアクセスゲートウェイ121はインターフェイス160を介して互いに直接接続されている。
【0023】
CDMA2000ネットワーク動作
図1に示す構成を持つCDMA2000ネットワークの通常の動作において、PDN101は、例えば、ターゲット(送信先)移動体デバイス102に宛てられたデータパケットを受信する。ターゲット移動体デバイス102は、CDMA2000ネットワーク110と通信状態にある複数の移動体デバイス117〜119、102のうちの1つである。PDN101はデータパケットをPDSN111に送信する。PDSN111はデータパケットをRNC112に転送する。RNC112は、ターゲット移動体デバイス102がデータパケットを受信する用意ができるまで、データパケットをバッファ113に格納することができる。ターゲット移動体デバイス102がデータパケットを受信する用意ができると、RNC112はデータパケットを、ターゲット移動体デバイス102に対応付けられたBTSであるBTS116に転送する。データパケットはインターネットプロトコル(IP)パケットであってもよいし、ヘッダを有していてもよい。
【0024】
CDMA2000ネットワーク110は、ロバストヘッダ圧縮(RoHC)又は他の任意の周知のヘッダ圧縮等のヘッダ圧縮を実施することができる。CDMA2000ネットワーク110は、ヘッダ圧縮を用いて、パケットヘッダの一部だけを送信することによって、PDSN111から移動体デバイスに送信されているデータパケットのヘッダのサイズを小さくすることができる。CDMA2000ネットワーク110においてPDSN111からターゲット移動体デバイス102に送信されているパケットに対してヘッダ圧縮を使用するために、PDSN111は圧縮ディクショナリを確立するとともにターゲット移動体デバイス102は脱圧縮ディクショナリを確立する。圧縮及び脱圧縮ディクショナリは送信及び受信されているデータパケットのヘッダの静的部分を記憶する。PDSN111からターゲット移動体デバイス102に送信されている全パケットの1以上を費やして圧縮及び脱圧縮ディクショナリを確立することができる。
【0025】
圧縮及び脱圧縮ディクショナリが確立されると、PDSN111は圧縮ディクショナリを用いてパケットヘッダを圧縮し(即ち、パケットヘッダの静的部分を取り除き)、圧縮されたヘッダを持つデータパケットをターゲット移動体デバイス102に送信する。ターゲット移動体デバイス102は、移動体デバイスでの処理のために、脱圧縮ディクショナリを用いてデータパケットの圧縮されたヘッダを脱圧縮する(即ち、パケットヘッダの静的部分を再挿入する)。
【0026】
PDSN111はターゲット移動体デバイス102に脱圧縮ディクショナリをリセットするよう指示する。例えば、ターゲット移動体デバイス102及びPDSN111がそれぞれ脱圧縮及び圧縮ディクショナリを確立したとき、PDSN111は圧縮されていないヘッダを持つデータパケットをターゲット移動体デバイス102に送信することができる。ターゲット移動体デバイス102は圧縮されていないデータパケットを、その脱圧縮ディクショナリをリセットするための表示として解釈することができる。
【0027】
LTEネットワーク動作
図1に示す構成を持つLTEネットワークの通常の動作において、PDN101は、例えば、ターゲット(送信先)移動体デバイス103に宛てられたデータパケットを受信する。ターゲット移動体デバイス103は、LTEネットワーク120と通信状態にある複数の移動体デバイスのうちの1つである。PDN101はデータパケットをアクセスゲートウェイ121に送信する。アクセスゲートウェイ121はデータパケットを、ターゲット移動体デバイス10に対応付けられたeNBであるeNB123に送信する。LTE動作に対するヘッダ圧縮はeNBにおいて実行される。
【0028】
CDMA2000からLTEへの移行の取り扱い
第1のネットワークから第2のネットワークへの移動体の移行を扱うための方法を、図1においてターゲット移動体デバイス102がCDMA2000ネットワーク110からLTEネットワーク120に移行するのを参照して説明する。しかし、本実施例は移動体102又は図1のアーキテクチャへの適用に限定されないことが理解されるはずである。
【0029】
図1を参照すると、CDMA2000ネットワーク110上でBTS116と通信してきたターゲット移動体デバイス102はLTEネットワーク120に移行してeNB122と通信し始める。当業者であれば、CDMA2000ネットワーク110からLTEネットワーク120への移動体102の移行が、移動体とCDMA2000ネットワーク110及びLTEネットワーク120の少なくとも1つのネットワーク要素との間のシグナリングを含む任意の周知技術に従って開始され得ることを理解するはずである。
【0030】
図2は実施例による、CDMA2000プロトコルに準拠するネットワークからLTEプロトコルに準拠するネットワークへの移行を扱う方法を示すフローチャートである。ステップS205において、例えばPDSN111及び移動体デバイス102で通常記憶されている圧縮及び脱圧縮ディクショナリに加えて、受信データパケットについての脱圧縮情報(例えば、脱圧縮ディクショナリ)もCDMA2000ネットワークにおけるRNC112で記憶される。即ち、RNC112は、PDSN111から移動体デバイスに送信されたデータパケットに関係する脱圧縮情報を記憶するように構成される。
【0031】
図1を参照すると、PDSN111からターゲット移動体デバイス102に送信された各データパケットはまずRNC112を通過した。RNC112は、PDSN111からターゲット移動体デバイス102に送信されたデータパケットを用いて、例えば、脱圧縮ディクショナリをターゲット移動体デバイス102と同じ態様で編集するように構成される。
【0032】
移動体デバイス102がCDMA2000ネットワーク110からLTEネットワーク120に移行すると、RNC112は、PDSN111から移行している移動体デバイス102に送信されたデータパケットから収集された脱圧縮情報を用いて、RNC112でバッファ113に格納されるとともに移行中の移動体デバイス102へ宛てられた未転送のデータパケットのパケットヘッダを再構築することができる。
【0033】
図3はRNCで脱圧縮ディクショナリを構築する一例を示す図である。図3を参照すると、PDSN111はデータパケットP1、P2及びP3をターゲット移動体デバイス102に送信する。PDSN111はデータパケットP1、P2及びP3に基づいて圧縮ディクショナリ311を確立する。ターゲット移動体102はデータパケットP1、P2及びP3に基づいて脱圧縮ディクショナリ313を確立する。RNC112はPDSN111からターゲット移動体102に送信された各パケットを受信する。RNC112は脱圧縮ディクショナリ312を確立し、それは脱圧縮ディクショナリ313と同一であってもよい。ここで、RNC112は、PDSN111からターゲット移動体102に送信されたデータパケットを脱圧縮する能力を有する。
【0034】
図2を参照すると、ステップS210において、移動体デバイス102へのバッファリングされたパケットの転送は、移動体デバイス102がLTEネットワーク120に移行した結果として終了される。ターゲット移動体102がeNB122との無線通信を開始すると、BTS116との無線通信は終了する。BTS116とターゲット移動体102の間の無線チャネルはもはや存在しないので、バッファリングされたパケットはもはやBTS116を介してターゲット移動体102に転送され得ない。
【0035】
ステップS215において、未送信のバッファリングされたパケットのヘッダがRNC112によって再構築される。CDMA2000ネットワーク110でバッファリングされターゲット移動体デバイス102に未だ転送されていないデータパケットがRNC112のバッファ113に格納される。これらのデータパケットは圧縮されたヘッダを有し得る。ターゲット移動体デバイス102に宛てられるバッファリングされた未転送のデータパケットは、移動体デバイス102が脱圧縮を行うのと同様の態様でRNC112によって脱圧縮される。即ち、バッファリングされた未転送のデータパケットは、ステップS205において、RNC112に記憶された脱圧縮情報を用いてRNC112で脱圧縮される。
【0036】
CDMA2000ネットワーク110はパケットヘッダ圧縮を用いるが、LTEネットワークは圧縮されたデータパケットヘッダを脱圧縮するのに必要な脱圧縮情報を有さないため、データパケットをLTEネットワークに送信する前にデータパケットヘッダを脱圧縮することが必要である。従って、未転送パケットが、圧縮パケットヘッダを脱圧縮せずにCDMA2000ネットワーク110からLTEネットワーク120に送信される場合、LTEネットワークは未転送パケットの圧縮ヘッダを解釈することができないことになる。結果として、LTEネットワーク120はパケットを移行中の移動体デバイス102に配信することができず、データパケットは失われることになる。
【0037】
図2を参照すると、ステップS220において、未送信でかつ再構築されたデータパケットがRNC112からインターフェイス160を介してLTEネットワーク120のアクセスゲートウェイ121に直接送信される。未転送データパケットのパケットヘッダが再構築されるので、再構築されたデータパケットは完全なIPパケットとしてLTEネットワーク120に直接送信され、LTEネットワーク120がPDN101から受信されたデータパケットを処理するように、LTEネットワーク120はデータパケットを処理することができる。
【0038】
図2を参照すると、ステップS225において、LTEネットワーク120はインターフェイス103を介して受信されたデータパケットを移動体デバイス102に送信する。図1を参照すると、アクセスゲートウェイ121はデータパケットを、その後そのデータパケットをターゲット移動体102に送信するeNB122に送信する。
【0039】
LTEからCDMA2000への移行の取り扱い
LTEネットワーク120からCDMA2000ネットワーク110へ移行するターゲット移動体103を参照して、第1のネットワークから第2のネットワークへの移動体デバイスの移行を扱うための方法を説明する。
【0040】
図4は実施例による、LTEプロトコルに準拠するネットワークからCDMA2000プロトコルに準拠するネットワークへの移動体デバイスの移行を扱う方法を示すフローチャートである。LTEネットワーク103におけるeNB123と通信してきたターゲット移動体デバイス103がCDMA2000ネットワーク110のBTS116へ移行することについて、本実施例を図1を参照して説明する。しかし、本実施例は移動体103又は図1のアーキテクチャへの適用に限定されないことが理解されるはずである。
【0041】
当業者であれば、LTEネットワーク120からCDMA2000ネットワーク110への移動体103の移行が、移動体とCDMA2000ネットワーク110及びLTEネットワーク120の少なくとも1つのネットワーク要素との間のシグナリングを含む任意の周知技術に従って開始され得ることを認識するはずである。
【0042】
図4を参照すると、ステップS505において、LTEネットワーク120によって移動体デバイス103に未だ送信されていないパケットがCDMA2000ネットワーク110に送信される。LTEネットワーク120において記憶されても移行中のターゲット移動体デバイス103に未だ転送されていないデータパケットはeNB123のバッファ125に格納される。ターゲット移動体デバイス103がLTEネットワーク120からCDMA2000ネットワーク110に移行した後、eNB123は未転送のデータパケットをアクセスゲートウェイ121に送信する。アクセスゲートウェイ121は未転送のデータパケットを、RNC112とアクセスゲートウェイ121の間のインターフェイス160を介して、CDMA2000ネットワーク110におけるRNC112に直接送信する。
【0043】
図4を参照すると、ステップS510において、CDMA2000ネットワーク110でヘッダ圧縮状態がリセットされる。未転送データパケットがLTEネットワーク120から到着するとき、PDSN111及びターゲット移動体デバイス103はそれぞれ圧縮及び脱圧縮ディクショナリを既に確立している場合もある。例えば、移行中のターゲット移動体デバイス103が、CDMA2000ネットワーク110に進入すると直ちにCDMA2000ネットワーク110からパケットを受信し始めた場合である。PDSN111及びターゲット移動体デバイス103はこれらのデータパケットに基づいて圧縮及び脱圧縮ディクショナリを既に確立していることができる。さらに、ターゲット移動体デバイス103はCDMA2000ネットワーク110に以前に接続していた場合もある。従って、PDSN111及びターゲット移動体デバイス103は、ターゲット移動体デバイス103のCDMA2000ネットワーク110に対する以前の接続中に圧縮及び脱圧縮ディクショナリを確立していた場合がある。
【0044】
RNC112でLTEネットワーク110から受信された未転送のデータパケットが移動体デバイス103に転送されるとき、移動体デバイス103はその脱圧縮ディクショナリを、移動体デバイス103が受信する未転送データパケットに基づいて更新する。しかし、PDSN111は、RNC112からターゲット移動体デバイス103に送信される未転送データパケットを見ることはない。従って、PDSN111における圧縮ディクショナリはターゲット移動体デバイス103における脱圧縮ディクショナリとは非同期となり得る。
【0045】
PDSN111における圧縮ディクショナリ及びターゲット移動体103における脱圧縮ディクショナリが非同期のままである場合、PDSN111からターゲット移動体デバイス103にその後送信されるデータパケットは非同期なディクショナリに基づいて圧縮されることになる。ターゲット移動体デバイス103は、更新された圧縮ディクショナリを用いてこれらの後続送信データパケットを適切に脱圧縮することができない。ターゲット移動体103において実行されるエラーチェック手順は、不適切に脱圧縮されたデータパケットを壊れたデータパケットと解釈してそれらを廃棄することができる。従って、データパケットは失われる。データパケットの喪失を回避するために、実施例によると、移動体デバイス103がCDMA2000ネットワーク110からLTEネットワーク120に移行するとき、RNC112はポイント−トゥ−ポイントプロトコル(PPP)メッセージをPDSN111に送信し、PDSN111にそのヘッダ状態をリセットするよう指示する。
【0046】
PDSN111にヘッダ圧縮状態をリセットするよう指示するPPPメッセージは、RNC112が未転送パケットをLTEネットワーク120から受信した後にRNC112によってPDSN111に送信されるものとして記述されるが、RNC112は、未転送パケットを移動体デバイス103に送信する前に圧縮状態リセットメッセージをPDSN111に送信することができる。RNC112はまた、未転送パケットをターゲット移動体デバイス103に送信するのと同時に圧縮状態リセットメッセージをPDSN111に送信することができる。RNC112は、ターゲット移動体デバイス103がCDMA2000ネットワーク110に進入するとすぐに圧縮状態リセットメッセージを送信することができる。RNC112はまた、ターゲット移動体デバイス103がCDMA2000ネットワーク110を離れると、ターゲット移動体デバイス103がCDMA2000ネットワーク110に戻るという予測において、圧縮状態リセットメッセージをPDSN111に送信することができる。
【0047】
図4を参照すると、ステップS515において、未送信パケットがCDMA2000ネットワーク110から移動体デバイス103に送信される。図1を参照すると、RNC112は未転送データパケットを、その後未転送データパケットをターゲット移動体デバイス103に送信するBTS116に転送する。未転送データパケットは完全な非圧縮IPパケットである。
【0048】
第1のネットワークから第2のネットワークへの移動体デバイスの移行を扱うための実施例による方法によって、元のネットワークでバッファリングされかつ移行の時点で未だ移動体デバイスに送信されていないデータパケットの喪失を最小限にしつつも、移動体デバイスがCDMA2000ネットワークとLTEネットワークの間を行き来することが可能となる。その移行はまた、CDMA2000及びLTEネットワーク双方に送信される複製データパケットを要することなく達成される。
【0049】
こうして本発明が記載されたが、同じものが多数のやり方で変更できることは明らかなはずである。このようなバリエーションは本発明から離れたものとしてみなされず、全てのそのような変形例は本発明の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワーク(110)から第2のネットワーク(120)への移動体デバイス(102)の移行を扱う方法であって、
前記第1のネットワーク(110)から前記移動体デバイス(102)へのデータパケットの転送を終了するステップ、
前記第1のネットワーク(110)に記憶されている、未転送データパケットの圧縮ヘッダを脱圧縮する圧縮ディクショナリ(312)を用いて、前記第1のネットワーク(110)において、前記未転送データパケットのヘッダを再構築するステップ、及び
前記第1のネットワーク(110)から前記第2のネットワーク(120)に前記再構築されたデータパケットを送信するステップであって、前記第2のネットワーク(120)は前記第1のネットワーク(110)とは異なる通信プロトコルに従って動作するものである、ステップを備える方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記第1のネットワーク(110)がCDMA2000プロトコルに準拠するネットワークであり、前記第2のネットワーク(120)がLTEプロトコルに準拠するネットワークである、方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、さらに、
前記第1のネットワーク(110)のコントローラ(112)において、バッファ(113)に前記未転送データパケットを格納するステップを備え、
前記ヘッダを再構築するステップが、前記コントローラ(112)で格納された情報を用いて、前記未転送データパケットの圧縮されたヘッダを脱圧縮することを含む、方法。
【請求項4】
請求項2の方法であって、さらに、
前記第1のネットワーク(110)の無線ネットワークコントローラ(RNC)(112)において、前記脱圧縮ディクショナリ(312)を構築するステップを備え、
前記第2のネットワーク(120)に前記再構築されたデータパケットを送信するステップが、前記RNC(112)から前記再構築されたデータパケットを送信することを含む、方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、前記再構築されたデータパケットを送信することが、前記RNC(112)と前記第2のネットワークのアクセスゲートウェイ(121)の間のチャネル(160)を介したものである、方法。
【請求項6】
第1のネットワーク(120)から第2のネットワーク(110)への移動体デバイス(103)の移行を扱う方法であって、
前記第2のネットワーク(110)における脱圧縮ディクショナリ(311)が前記移動体デバイス(103)における脱圧縮ディクショナリ(313)と同期するように、前記第2のネットワーク(110)において、ヘッダ圧縮状態をリセットするステップ、
前記第2のネットワーク(110)において、前記第1のネットワーク(120)から未転送データパケットを受信するステップであって、前記第2のネットワーク(110)は前記第1のネットワーク(120)とは異なる通信プロトコルに従って動作するものであり、前記未転送データパケットは前記第1のネットワーク(120)が前記移動体デバイス(103)に未だ転送していないデータパケットであるステップ、及び
前記第2のネットワーク(110)から前記移動体デバイス(103)に前記未転送データパケットを送信するステップを備える方法。
【請求項7】
請求項6の方法において、前記第1のネットワーク(120)がLTEプロトコルに準拠するネットワークであり、前記第2のネットワーク(110)がCDMA2000プロトコルに準拠するネットワークである、方法。
【請求項8】
請求項6の方法において、前記第2のネットワーク(110)において前記ヘッダ圧縮状態をリセットするステップが、PPP(ポイント−トゥ−ポイントプロトコル)メッセージを送信することによって実行される、方法。
【請求項9】
請求項6の方法において、前記第2のネットワーク(110)において未転送データパケットを受信するステップが、前記第2のネットワーク(110)の無線ネットワークコントローラ(RNC)(112)において前記未転送データパケットを受信することを含む、方法。
【請求項10】
請求項9の方法において、前記RNC(112)において前記未転送データパケットを受信することが、前記RNC(112)と前記第1のネットワークのアクセスゲートウェイ(121)の間のチャネル(160)を介したものである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217222(P2012−217222A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179992(P2012−179992)
【出願日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【分割の表示】特願2011−512449(P2011−512449)の分割
【原出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】