説明

異常リンク推定装置、異常リンク推定方法、プログラムおよび異常リンク推定システム

【課題】異常箇所を推定するためのメモリ量や演算負荷を抑制するための異常リンク推定装置、異常リンク推定方法、プログラムおよび異常リンク推定システムを提供する。
【解決手段】ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するフロー情報収集部と、前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、を備える異常リンク推定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常リンク推定装置、異常リンク推定方法、プログラムおよび異常リンク推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声データや動画データのストリーミングなど、マルチメディアデータをリアルタイムに提供するサービスの増加に伴い、ネットワーク上で大量のデータが高速で通信されるようになってきている。また、リアルタイムの通信のために、RTP(Real Time Prottocol)やRTCP(RTP Control Protocol)のような通信プロトコルが使用されている。
【0003】
しかし、上記のRTPは、パケットロス対策や伝送時間保証などの行われないUDPタイプのプロトコルである。このため、RTPは、少ない遅延でリアルタイムにデータを送信することに向いている反面、通信路上の障害の影響を受け、音声が途切れる、画像が乱れるなど、ユーザに対するサービス品質が低下しやすいという問題がある。
【0004】
したがって、IPネットワークにおいて動画像のストリーミングやテレビ会議のような品質が重視されるサービスを実施する上で、ユーザに対して提供する通信サービスの品質を管理し、品質劣化などの異常に対して異常箇所の特定と対策を行うことが重要になってきている。
【0005】
この点に関し、ある事業者が管理している内部ネットワーク内のユーザと外部ネットワークに存在するサーバや端末との間のデータ通信において異常が検出され、異常の原因が外部ネットワークにある場合、外部ネットワークの情報無しには、ネットワークのどの位置で異常が起きたのか調べられないので、原因を推測し保全することが難しいという問題がある。
【0006】
このように、内部ネットワークを含む複数のローカルネットワークに渡る通信が行われるとユーザに対する品質の保証が難しくなるので、異常を検出し、異常発生箇所を特定する仕組みが必要である。
【0007】
そこで、ネットワーク上に観測点を設け、観測点を流れるトラフィックを観測することにより通信品質が劣化した異常フローを検出し、ネットワークのトポロジ情報やルーティング情報などを用いてネットワークの異常発生箇所を検出する方法が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1および非特許文献1には、事前にネットワークのトポロジ情報を収集し、観測点で異常フローが検出された場合、異常フローおよび正常フローの情報に基づいて異常フローが経由するリンクを異常フローごとに整理した品質フロー/経由リンクテーブル(以下、フロー・リンク対応表)を生成し、最小リンク数推定方式と呼ばれる手法により異常リンクを推定する技術が開示されている。なお、本明細書では、ある端末間におけるネットワーク上のデータの流れを1つのフローとして扱う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−238952号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】小林正好他、「フロー品質情報からのネットワーク品質劣化箇所推定方式」、電子情報通信学会技術報告書、TM−2004−107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1および非特許文献1に記載の最小リンク数推定方式は、集合被覆問題(set conver問題)を解くことと等価である。このため、ネットワークの規模が大きくなると(リンク数および異常フロー数が多くなると)、サイズの大きなフロー・リンク対応表を生成して処理するので、計算時間が長くなるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、異常箇所を推定するためのメモリ量や演算負荷を抑制することが可能な、新規かつ改良された異常リンク推定装置、異常リンク推定方法、プログラムおよび異常リンク推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するフロー情報収集部と、前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、を備える異常リンク推定装置が提供される。
【0014】
前記候補リンク収集部は、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクが1つでない場合、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フローの通るリンクから到達可能な候補リンクを収集してもよい。
【0015】
前記ネットワーク上には複数の観測ノードが複数の観測点に配置されており、前記フロー情報収集部は、前記複数の観測ノードから前記フロー情報を収集し、前記計数部、前記候補リンク収集部、および前記異常リンク推定部は、前記複数の観測点の各々に接続するリンクに関して処理を行ってもよい。
【0016】
前記計数部は、前記異常フローと少なくとも一方の端末が共通する正常フローが観測されている場合、当該端末側のリンクの異常フロー重複度から、当該端末から出ている異常フローの重複度を減算してもよい。
【0017】
前記ネットワークは、1の観測点から他の観測点を経由せずに到達可能な端末までのリンクを含む内部ネットワーク、および、前記1の観測点から前記他の観測点までのリンクを含む外部ネットワークからなり、前記ネットワークには、前記外部ネットワークを経由する外部フロー、および前記内部ネットワーク内で前記外部ネットワークを経由しない内部フローが流れ、前記計数部は、内部フローのうちで異常のある内部異常フローと少なくとも一方の端末が共通する正常フローが観測されている場合、前記1の観測点に接続する当該端末側のリンクの内部異常フローの重複度から、当該端末から出ている内部異常フローの数を減算してもよい。
【0018】
前記計数部は、外部フローのうちで異常のある外部異常フローと少なくとも一方の端末が共通する正常フローが観測されている場合、前記正常フローが経由するリンクのうちで、
前記1の観測点に接続する前記外部異常フローの他側の端末側のリンク以外のリンクの異常フロー重複度から、共通する端末から出ている外部異常フローの数を減算してもよい。
【0019】
前記計数部は、前記1の観測点および前記他の観測点を経由する外部正常フローが観測されている場合、前記1の観測点に接続する前記他の観測点側のリンクの異常フロー重複度から、前記1の観測点および前記他の観測点を経由する異常フローの数を減算してもよい。
【0020】
前記異常リンク推定部は、前記候補リンク収集部により収集された前記候補リンク、および前記候補リンクを通過する異常フローおよび正常フローの対応表を作成し、前記対応表から、正常フローの通過する候補リンクを削除し、残った候補リンクの各々を通る異常フローの数に基づいて前記異常リンクを推定してもよい。
【0021】
前記異常リンク推定部は、対応表に異常フローの通過数が最大の候補リンクが存在し、かつ、当該候補リンクの異常フローの通過数が、前記複数の観測点に接続する全リンクの異常フロー重複度のうちで2番目に大きな値以上である場合、当該候補リンクを前記異常リンクとして推定してもよい。
【0022】
前記観測ノードは、前記ネットワークのゲートウェイ部分の観測点に配置されてもよい。
【0023】
前記異常リンク推定装置は、2以上の観測点を通過する異常フローを収集する異常フロー収集部と、前記2以上の観測点の各々を通過する異常フローの総数を比較する異常フロー数比較部と、をさらに備え、候補リンク収集部は、異常フローの総数が少ない方の観測点から異常フローの総数が多い方の観測点への接続リンクから到達可能なリンクを候補リンクとしてさらに収集し、異常フローの総数が少ない方の観測点から前記接続リンク以外のリンクを経由して到達可能なリンクを候補リンクから除外してもよい。
【0024】
前記計数部は、前記観測点に接続する同一のリンクを通過する複数の異常フローは重複して計数しなくてもよい。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するステップと、前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数するステップと、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定するステップと、異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集するステップと、前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定するステップと、を含む異常リンク推定方法が提供される。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するフロー情報収集部と、前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードと、前記観測ノードにおいて観測された端末間のフロー情報が提供される異常リンク推定装置と、からなる異常リンク推定システムであって、前記異常リンク推定装置は、前記観測ノードから前記ロー情報を収集するフロー情報収集部と、前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、を備える異常リンク推定システムが提供される。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、異常箇所を推定するためのメモリ量や演算負荷を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態による異常リンク推定システムの構成を示した説明図である。
【図2】観測ノードの構成を示した機能ブロック図である。
【図3】ネットワークを流れる内部異常フローおよび外部異常フローの具体例を示した説明図である。
【図4】ネットワークを流れる内部正常フローおよび外部正常フローの具体例を示した説明図である。
【図5】観測ノードが異常リンク推定装置に送信するフロー情報を示した説明図である。
【図6】観測ノードが異常リンク推定装置に送信するフロー情報を示した説明図である。
【図7】観測ノードが異常リンク推定装置に送信するフロー情報を示した説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による異常リンク推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図9】推定範囲絞り込み部の詳細な構成を示した説明図である。
【図10】異常リンク推定装置の動作を示したフローチャートである。
【図11】各リンクの内部異常フローの重複度を示した説明図である。
【図12】各リンクの外部異常フローの重複度を示した説明図である。
【図13】各リンクの内部異常フローの重複度の減算処理を示した説明図である。
【図14】各リンクの外部異常フローの重複度の減算処理を示した説明図である。
【図15】正常フローの観測点間リンクの外部異常フローの重複度の減算処理を示した説明図である。
【図16】内部異常フローの重複度および外部異常フローの重複度の統合結果を示した説明図である。
【図17】フロー・リンク対応表を示した説明図である。
【図18】フロー・リンク対応表を示した説明図である。
【図19】フロー・リンク対応表を示した説明図である。
【図20】本発明の第2の実施形態による異常リンク推定システムの構成を示した説明図である。
【図21】ネットワークを流れるフローの具体例を示した説明図である。
【図22】観測ノードが異常リンク推定装置に送信するフロー情報を示した説明図である。
【図23】観測ノードが異常リンク推定装置に送信するフロー情報を示した説明図である。
【図24】観測ノードが異常リンク推定装置に送信するフロー情報を示した説明図である。
【図25】本発明の第2の実施形態による異常リンク推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図26】推定範囲絞り込み部の詳細な構成を示した説明図である。
【図27】異常リンク推定装置の動作を示したフローチャートである。
【図28】各リンクの異常フローの重複度を示した説明図である。
【図29】フロー・リンク対応表の具体例を示した説明図である。
【図30】フロー・リンク対応表の具体例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
<第1の実施形態>
(異常リンク推定システムの構成)
図1は、本発明の第1の実施形態による異常リンク推定システム1の構成を示した説明図である。図1に示したように、本発明の第1の実施形態による異常リンク推定システム1は、端末T1〜T9、ルータ(あるいはスイッチ)R1〜R5、観測ノードA1〜A3、および異常リンク推定装置10を含む。端末T1〜T9、ルータR1〜R5、観測ノードA1〜A3、および異常リンク推定装置10は、リンクL1〜L18により接続される。
【0032】
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一のアルファベットの後に異なる符号を付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じて観測ノードA1、A2およびA3のように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一アルファベットのみを付する。例えば、観測ノードA1、A2およびA3を特に区別する必要が無い場合には、観測ノードAと称する。
【0033】
観測ノードAは、ネットワーク上の観測点に配置されており、観測点を通過するトラフィックを観測し、観測により得られたフロー情報を異常リンク推定装置10に送信する。この観測ノードAは、AS(Autonomous System)やISP(Internet Service Provider)のような小規模ネットワークのゲートウェイ部分に配置されてもよい。
【0034】
ここで、ある観測ノードAに着目した時に、当該観測ノードAの観測点から他の観測点を経由せずに到達可能な端末までのリンクを内部ネットワークと称し、当該観測点から他の観測点までのリンク、および他の観測点を経由して到達可能な端末までのリンクを外部ネットワークと称する。本実施形態においては図1に示したように観測ノードA1の観測点に着目し、観測ノードA1の観測点から他の観測点を経由せずに到達可能な端末までのリンクL1〜L3、L11〜L15(およびルータR1〜R3)を内部ネットワークと称し、他のリンクを外部ネットワークと称する。
【0035】
また、本実施形態においては、内部ネットワークのみを流れる端末間のデータフローを内部フローと称し、外部ネットワークを経由する端末間のデータフローを外部フローと称する。
【0036】
異常リンク推定装置10は、観測ノードA1〜A3からフロー情報を収集し、収集したフロー情報に基づいてネットワーク上の異常リンクを推定する。詳細については後述するが、本実施形態による異常リンク推定装置10は、推定範囲を絞り込んだ後に異常リンクを推定するので、異常リンクを推定するためのメモリ量や演算負荷を抑制することが可能である。
【0037】
なお、図1においては異常リンク推定装置10がルータR1に接続されている例を示しているが、異常リンク推定装置10の配置位置はかかる例に限定されない。また、図1においては異常リンク推定装置10を独立の構成として示しているが、異常リンク推定装置10の機能は、観測ノードA、ルータR、または端末Tなどの他のノードに実装されてもよい。
【0038】
(観測ノードの構成)
以上、図1を参照して本発明の第1の実施形態による異常リンク推定システム1の全体構成を説明した。続いて、図2〜図7を参照し、本発明の第1の実施形態による観測ノードAの構成を説明する。
【0039】
図2は、観測ノードAの構成を示した機能ブロック図である。図2に示したように、観測ノードAは、異常フロー検出部62と、フロー情報記憶部64と、フロー情報送信部66と、を備える。
【0040】
異常フロー検出部62は、ネットワークを流れるフローを観測し、品質劣化した異常フローを検出する。例えば、異常フロー検出部62は、フローのパケット損失率、送信遅延および遅延揺らぎなどの値を統計し、統計値が閾値を上回るか否かに応じて異常フローを検出してもよい。また、異常フロー検出部62は、ITU−T勧告のG.107に従ってR値と呼ばれる評価指標を用いて異常フローを検出してもよい。
【0041】
フロー情報記憶部64は、異常フロー検出部62で任意の一定期間に観測された異常フローのフロー情報、および正常フローのフロー情報を記憶する。フロー情報は、端末などがネットワークを介してあるサービスを利用している時に通信する一連のトラフィックを識別することができればよい。例えば、フロー情報は、フロータイプ(異常フローor正常フロー)、送信元アドレス、送信先アドレス、プロトコルタイプ、送信元ポート番号、宛先ポート番号を含んでもよいし、さらに、入力インタフェースとサービスタイプを含んでもよい。
【0042】
フロー情報送信部66は、フロー情報記憶部64に記憶されたフロー情報を異常リンク推定装置10に送信する。なお、フロー情報送信部66は、ネットワークを介してフロー情報を送信してもよいし、専用回線を介してフロー情報を送信してもよい。
【0043】
ここで、図3〜図7を参照し、各観測ノードA1〜A3から異常リンク推定装置10に送信されるフロー情報の具体例を説明する。
【0044】
図3は、ネットワークを流れる内部異常フローおよび外部異常フローの具体例を示した説明図である。図4は、ネットワークを流れる内部正常フローおよび外部正常フローの具体例を示した説明図である。図3および図4に示したように、ネットワークを内部異常フローF1およびF2、外部異常フローF4、F5およびF9、内部正常フローF3およびF6、外部正常フローF7およびF8が流れている場合、観測ノードA1〜A3は、図5〜図7に示すフロー情報を異常リンク推定装置10に送信する。
【0045】
図5は、観測ノードA1が異常リンク推定装置10に送信するフロー情報を示した説明図である。図5に示したように、観測ノードA1は、観測点を通過するフローF1〜F9を観測し、フローF1〜F9の情報を異常リンク推定装置10に送信する。なお、フロータイプ「1」は異常フローを示し、「0」は正常フローを示す。また、図5〜図7においては便宜上IPアドレスとして端末の識別番号を示しているが、実際には、「192.168.0.8」のようなアドレスが記載される。また、各行がどのフローを表わすかを分かり易くするためにフロー番号の項目を設けているが、この項目は設けなくてもよい。
【0046】
図6は、観測ノードA2が異常リンク推定装置10に送信するフロー情報を示した説明図である。図6に示したように、観測ノードA2は、観測点を通過するフローF4、F5およびF8を観測し、フローF4、F5およびF8の情報を異常リンク推定装置10に送信する。
【0047】
図7は、観測ノードA3が異常リンク推定装置10に送信するフロー情報を示した説明図である。図7に示したように、観測ノードA3は、観測点を通過するフローF7およびF9を観測し、フローF7およびF9の情報を異常リンク推定装置10に送信する。
【0048】
(異常リンク推定装置の構成)
以上、図2〜図7を参照して観測ノードの構成を説明した。続いて、図8および図9を参照し、本発明の第1の実施形態による異常リンク推定装置10の構成を説明する。
【0049】
図8は、本発明の第1の実施形態による異常リンク推定装置10の構成を示した機能ブロック図である。図8に示したように、異常リンク推定装置10は、フロー情報収集部110と、フロー情報記憶部120と、トポロジ/ルーティング情報収集部130と、トポロジ/ルーティング情報記憶部140と、絞り込み規則蓄積部150と、推定範囲絞り込み部160と、絞り込み情報記憶部170と、異常リンク推定部180と、出力部190と、を備える。
【0050】
フロー情報収集部110は、各観測ノードA1〜A3から送信されるフロー情報を収集する。
【0051】
フロー情報記憶部120は、フロー情報収集部110により収集されたフロー情報を、送信元の観測ノードが区別できるような形態で一時的に記憶する。
【0052】
トポロジ/ルーティング情報収集部130は、ネットワークからルーティングに関する情報やトポロジ情報を収集する。例えば、トポロジ/ルーティング情報収集部130は、ネットワークを流れるBGPのようのルーティングプロトコルのパケットを収集してもよいし、ルータRからSNMP(Simple Network Management Protocol)などにより情報を収集してもよい。
【0053】
トポロジ/ルーティング情報記憶部140は、トポロジ/ルーティング情報収集部130により収集されたルーティングに関する情報やトポロジ情報を一時的に記憶する。このトポロジ/ルーティング情報記憶部140は、送受信IPアドレスから、2点間の通信時に経由するリンクや、あるルータに接続されているリンクからルーティングによって到達可能なリンクを検索する機能を有してもよい。
【0054】
絞り込み規則蓄積部150は、推定範囲絞り込み部160による絞り込みのための規則を蓄積する。
【0055】
推定範囲絞り込み部160は、フロー情報記憶部120に記憶されたフロー情報、およびトポロジ/ルーティング情報記憶部140に記憶された情報を参照し、異常リンクを推定するための対象範囲をとなる候補リンクを絞り込む。この推定範囲絞り込み部160の詳細な構成は図9を参照して後述する。
【0056】
絞り込み情報記憶部170は、推定範囲絞り込み部160により絞り込まれた候補リンクを記憶する。
【0057】
異常リンク推定部180は、絞り込み情報記憶部170に記憶されている候補リンクと、フロー情報記憶部120に記憶されているフロー情報を用いて異常リンクを推定する。例えば、異常リンク推定部180は、絞り込み情報記憶部170に記憶されている候補リンクに限定して非特許文献1に記載のフロー・リンク対応表を生成し、フロー・リンク対応表から最小リンク数推定方式によって異常リンクを推定してもよい。
【0058】
出力部190は、異常リンク推定部180により推定されたネットワーク上の異常リンクを出力する。
【0059】
(推定範囲絞り込み部の構成)
ここで、図9を参照し、推定範囲絞り込み部160の詳細な構成を説明する。図9は、推定範囲絞り込み部160の詳細な構成を示した説明図である。図9に示したように、推定範囲絞り込み部160は、重複度計数部162、重複度最大リンク判定部166、および候補リンク収集部168を含む。また、重複度計数部162は、異常フロー重複度計数部163、正常リンク重複度減算部164、および観測点間リンク重複度減算部165を含む。これら推定範囲絞り込み部160の構成および異常リンク推定部180は、図10に示すステップ1〜ステップ6を実行することにより異常リンクを推定する。
【0060】
(ステップ1)
異常フロー重複度計数部163は、観測点に接続する各リンクを通過する内部異常フローの数(重複度)、および観測点に接続する各リンクを通過する外部異常フローの数(重複度)を計数する。
【0061】
(ステップ2)
正常リンク重複度減算部164は、以下の2種類のいずれかの正常フローが存在する場合、ステップ1で得られた内部異常フローの重複度、および外部異常フローの重複度の減算を行う。
・異常フローと共通する端末から出ている内部正常フローが存在する場合
正常リンク重複度減算部164は、ステップ1で得られた共通の端末側のリンクの異常フロー重複度から、共通の端末から出ている異常フローの数を減算する。
・異常フローと共通する端末から出ている外部正常フローが存在する場合
正常リンク重複度減算部164は、異常フローの他方の端末の存在する内部ネットワーク側のリンク以外であって、外部正常フローが経由する全ての観測点における外部正常フローが経由するリンクのステップ1で得られた異常フロー重複度から、共通の端末から出ている異常フローの数を減算する。
【0062】
(ステップ3)
外部異常フローと同一の観測点間を通過する外部正常フローが存在する場合、観測点間リンク重複度減算部165は、観測点間のリンクの重複度から、当該観測点間を経由する外部異常フローの数を減算する。
【0063】
(ステップ4)
重複度計数部162は、ステップ2およびステップ3の減算が行われた内部異常フローの重複度、および外部異常フローの重複度を統合(合計)する。
【0064】
(ステップ5)
重複度最大リンク判定部166は、各リンクの統合された異常フロー重複度のうちで、異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する。候補リンク収集部168は、異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由する異常フローが通過する端末側の候補リンクを収集する。異常リンク推定部180は、候補リンク収集部168により収集された候補リンクからなるフロー・リンク対応表を生成し、2番目に大きな異常フロー重複度以上の数の異常フローの通る候補リンクがフロー・リンク対応表に存在する場合、当該候補リンクを異常リンクと推定する。その後、重複度計数部162は、フロー・リンク対応表から異常リンクとして推定した候補リンクを通る異常フローを削除し、重複度最大リンク判定部166により判定されたリンクの異常フロー重複度から異常フローの削除数を減算する。また、異常リンクとして推定した候補リンクを通る異常フローが経由するもう一方の観測点へ繋がるリンクの異常フロー重複度から、異常フローの通過数を減算する。
【0065】
一方、2番目に大きな異常フロー重複度以上の数の異常フローの通る候補リンクがフロー・リンク対応表に存在しない場合、重複度計数部162は、このフロー・リンク対応表で最も多く異常フローが通るリンクの異常フロー通過数を重複度最大リンク判定部166により判定されたリンクの異常フロー重複度から減算する。
【0066】
(ステップ6)
ステップ5の処理を、観測点に接続する全リンクの異常フロー重複度が0になるまで繰り返す。
【0067】
(異常リンク推定装置の具体的な処理)
以上、図9および図10を参照して異常リンクの推定方法の概要を説明した。続いて、図11〜図19を参照し、本実施形態による異常リンク推定装置10の具体的な処理を説明する。なお、以下では、ネットワーク上を図3および図4に示したフローが流れている場合の異常リンク推定装置10の処理を説明する。
【0068】
まず、ステップ1として、異常フロー重複度計数部163は、フロー情報記憶部120に記憶されているフロー情報に基づき、観測点A1に接続するリンクの内部異常フローの重複度を図11に示すように計数する。例えば、リンクL3を通過する内部異常フローは図3に示したように内部異常フローF1およびF2の2つであるので、リンクL3の内部異常フローの重複度は図11に示したように「2」と計数される。
【0069】
同様に、異常フロー重複度計数部163は、フロー情報記憶部120に記憶されているフロー情報に基づき、観測点A1に接続するリンクの外部異常フローの重複度を図12に示すように計数する。例えば、リンクL4を通過する外部異常フローは図3に示したようにF9の1つであるので、リンクL4の外部異常フローの重複度は図12に示したように「1」と計数される。
【0070】
次に、正常リンク重複度減算部164は、ステップ2として、図4に示したように内部異常フローF2と共通の端末T3から出ている内部正常フローが存在する場合、共通の端末T3側のリンクL2の重複度「1」から異常フローの通過数である「1」を減算する。これにより、内部異常フローのリンクL2の重複度は図13に示したように「0」となる。
【0071】
また、正常リンク重複度減算部164は、図4に示したように外部異常フローF4と共通の端末T3から出ている外部正常フローF7が存在する場合、外部異常フローF4の他側の端末T9側のリンクL5を除くリンクL2の重複度「1」から、異常フローの通過数である「1」を減算する。これにより、外部異常フローのリンクL2の重複度は図14に示したように「0」となる。
【0072】
同様に、外部正常フローF7は、外部異常フローF9と共通の端末T6から出ているので、正常リンク重複度減算部164は、外部異常フローF9の他側の端末T5側のリンクL3を除くリンクL4、L6およびL8の重複度「1」から、異常フローの通過数である「1」を減算する。これにより、外部異常フローのリンクL4、L6およびL8の重複度は図14に示したように「0」となる。
【0073】
さらに、正常リンク重複度減算部164は、図4に示したように、外部異常フローF5と共通の端末T2から出ている内部正常フローF6が存在する場合、共通の端末T2側のリンクL1の重複度「1」から異常フローの通過数である「1」を減算する。これにより、外部異常フローのリンクL1の重複度は図14に示したように「0」となる。
【0074】
続いて、観測点間リンク重複度減算部165は、ステップ3として、図4に示したように観測点A1およびA2を経由する外部正常フローが観測されている場合、観測点A1およびA2間のリンクL5およびL7の外部異常フローの重複度「2」から、同一の観測点A1およびA2を経由する外部異常フロー数である「2」(F4およびF5の2つ)を減算する。これにより、外部異常フローのリンクL5およびL7の重複度は図15に示したように「0」になる。
【0075】
次に、重複度計数部162は、ステップ4として、図13に示した各リンクの内部異常フローの重複度、および図15に示した外部異常フローの重複度を統合(合計)する。これにより、図16に示す統合結果が得られる。
【0076】
その後、ステップ5へ移行する。すなわち、重複度最大リンク判定部166は、図16に示したようにリンクL3が最大の重複度「3」を有するので、リンクL3を重複度が最大のリンクとして判定する。そして、候補リンク収集部168は、リンクL3を異常フローF1、F2およびF9が経由するので、これらのフローがL3を経由する端末までのリンクを候補リンクとして収集する。
【0077】
さらに、異常リンク推定部180は、図17に示したように、候補リンク収集部168により収集された候補リンクからなるフロー・リンク対応表を生成する。そして、異常リンク推定部180は、2番目に大きなL9の重複度「2」以上の数の異常フローの通る候補リンクL15がフロー・リンク対応表に存在するので、L15を異常リンクとして推定する。その後、重複度計数部162は、リンクL3の重複度を「3」から「0」とする。一方、異常フローF1、F2およびF9が通る他のリンクL1、L2、L4、L6およびL8の重複度は既にステップ2およびステップ3で「0」に減算されているので、ここでの重複度の減算は行われない。
【0078】
仮に、図18に示すフロー・リンク対応表が生成された場合、2番目に大きなL9の重複度「2」以上の数の異常フローの通る候補リンクがフロー・リンク対応表に存在しない。この場合、重複度計数部162は、フロー・リンク対応表で最も多く異常フローの通るリンクの異常フロー通過数「1」にリンクL3の重複度を更新する。
【0079】
ここまでで1順目のステップ5が終了し、2順目のステップ5で、残りの全リンクから最も重複度の大きいリンクL9が選択され、同様の処理により、図19に示したフロー・リンク表が生成され、リンクL18が異常リンクとして推定され、L9の重複度が「0」に更新される。これにより、全ての観測点に接続するリンクの異常フロー重複度が「0」となる。
【0080】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、異常リンクを推定するための対象範囲をとなる候補リンクを絞り込み、絞り込まれた候補リンクから例えばフロー・リンク表を用いて異常リンクを推定することができる。したがって、本発明の第1の実施形態によれば、異常リンクを推定するためのメモリ量や演算負荷を抑制することが可能である。
【0081】
<2.第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0082】
(異常リンク推定システムの構成)
図20は、本発明の第2の実施形態による異常リンク推定システム2の構成を示した説明図である。図20に示したように、本発明の第2の実施形態による異常リンク推定システム2は、端末T1〜T22、ルータ(あるいはスイッチ)R1〜R16、観測ノードA1〜A3、および異常リンク推定装置20を含む。端末T1〜T22、ルータR1〜R16、観測ノードA1〜A3、および異常リンク推定装置20は、リンクL1〜L42により接続される。
【0083】
観測ノードAは、ネットワーク上の観測点に配置されており、観測点を通過するトラフィックを観測し、観測により得られたフロー情報を異常リンク推定装置20に送信する。図20に示したように、観測ノードA1、A2およびA3は、例えばルータR3、R10、R6の設置部分に配置される。この観測ノードAの構成は第1の実施形態で説明した通りであるので、詳細な説明を省略する。
【0084】
第2の実施形態による異常リンク推定装置20は、観測ノードA1〜A3からフロー情報を収集し、収集したフロー情報に基づいてネットワーク上の異常リンクを推定する。第2の実施形態による異常リンク推定装置20は、異常リンクを推定するための対象範囲をとなる候補リンクを絞り込み、絞り込まれた候補リンクから例えばフロー・リンク表を用いて異常リンクを推定することが可能である。
【0085】
ここで、図21〜図24を参照し、各観測ノードA1〜A3から異常リンク推定装置20に送信されるフロー情報の具体例を説明する。
【0086】
図21は、ネットワークを流れるフローの具体例を示した説明図である。図21に示したように、ネットワークをフローF1〜F11が流れる場合、観測ノードA1〜A3は、図22〜図24に示すフロー情報を異常リンク推定装置20に送信する。
【0087】
図22は、観測ノードA1が異常リンク推定装置20に送信するフロー情報を示した説明図である。図22に示したように、観測ノードA1は、観測点を通過するフローF3〜F6を観測し、フローF3〜F6の情報を異常リンク推定装置20に送信する。
【0088】
図23は、観測ノードA2が異常リンク推定装置20に送信するフロー情報を示した説明図である。図23に示したように、観測ノードA2は、観測点を通過するフローF1、F10およびF11を観測し、フローF1、F10およびF11の情報を異常リンク推定装置20に送信する。
【0089】
図24は、観測ノードA3が異常リンク推定装置20に送信するフロー情報を示した説明図である。図24に示したように、観測ノードA3は、観測点を通過するフローF2、F3およびF7〜F9を観測し、フローF2、F3およびF7〜F9の情報を異常リンク推定装置20に送信する。
【0090】
(異常リンク推定装置の構成)
図25は、本発明の第2の実施形態による異常リンク推定装置20の構成を示した機能ブロック図である。図25に示したように、異常リンク推定装置20は、フロー情報収集部210と、フロー情報記憶部220と、トポロジ/ルーティング情報収集部230と、トポロジ/ルーティング情報記憶部240と、絞り込み規則蓄積部250と、推定範囲絞り込み部260と、絞り込み情報記憶部270と、異常リンク推定部280と、出力部290と、を備える。
【0091】
なお、フロー情報収集部210、フロー情報記憶部220、トポロジ/ルーティング情報収集部230、およびトポロジ/ルーティング情報記憶部240は、第1の実施形態によるフロー情報収集部110、フロー情報記憶部120、トポロジ/ルーティング情報収集部130、およびトポロジ/ルーティング情報記憶部140と実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0092】
絞り込み規則蓄積部250は、推定範囲絞り込み部260による絞り込みのための規則を蓄積する。
【0093】
推定範囲絞り込み部260は、フロー情報記憶部220に記憶されたフロー情報、およびトポロジ/ルーティング情報記憶部40に記憶された情報を参照し、異常リンクを推定するための対象範囲をとなる候補リンクを絞り込む。この推定範囲絞り込み部260の詳細な構成は図26を参照して後述する。
【0094】
絞り込み情報記憶部270は、推定範囲絞り込み部260により絞り込まれた候補リンクを記憶する。
【0095】
異常リンク推定部280は、絞り込み情報記憶部270に記憶されている候補リンクと、フロー情報記憶部220に記憶されているフロー情報を用いて異常リンクを推定する。例えば、異常リンク推定部280は、絞り込み情報記憶部270に記憶されている候補リンクに限定して非特許文献1に記載のフロー・リンク対応表を生成し、フロー・リンク対応表から最小リンク数推定方式によって異常リンクを推定してもよい。
【0096】
出力部290は、異常リンク推定部280により推定されたネットワーク上の異常リンクを出力する。
【0097】
(推定範囲絞り込み部の構成)
ここで、図26を参照し、推定範囲絞り込み部260の詳細な構成を説明する。図26は、推定範囲絞り込み部260の詳細な構成を示した説明図である。図26に示したように、推定範囲絞り込み部260は、異常フロー重複度計数部262、重複度最大リンク判定部264、複数観測点通過異常フロー収集部266、異常フロー数比較部267および候補リンク収集部268を含む。このような推定範囲絞り込み部260および異常リンク推定部280は、図27に示すS310〜S360を実行することにより異常リンクを推定する。
【0098】
まず、異常フロー重複度計数部262が、各観測点に接続するリンクを経由する異常フローの数(重複度)を計数する(S310)。続いて、重複度最大リンク判定部264が、各観測点に接続するリンクのうちで、異常フローの重複度が最大であるリンクを判定する(S320)。
【0099】
そして、候補リンク収集部268は、重複度最大リンク判定部264により判定される重複度が最大であるリンクが1つである場合、ルーティング情報を参照し、重複度最大リンク判定部264により判定されたリンクを経由して到達可能なリンクを候補リンクとして収集する(S330)。一方、候補リンク収集部268は、重複度最大リンク判定部264により判定される重複度が最大であるリンクが1つでない場合、異常フローの通るリンクから到達可能な端末または観測点までの全リンクを候補リンクとして収集する(S330)。候補リンク収集部268により収集された候補リンクは絞り込み情報記憶部270に記憶される。
【0100】
その後、複数観測点間通過異常フロー収集部266が、フロー情報記憶部220に記憶されているフロー情報から、複数の観測点を通過する異常フローを収集する(S340)。
【0101】
続いて、異常フロー数比較部267が、S340において収集された異常フローが通過する2つの観測点において検出された異常フローの総数を比較し、候補リンク収集部268が、比較結果に応じて絞り込み情報記憶部270の候補リンクを追加または削除する(S350)。例えば、候補リンク収集部268は、異常フローの総数が少ない方の観測点から異常フローの総数が多い方の観測点への接続リンクから到達可能なリンクを候補リンクとしてさらに収集し、異常フローの総数が少ない方の観測点から前記接続リンク以外のリンクを経由して到達可能なリンクを候補リンクから除外してもよい。
【0102】
そして、異常リンク推定部280は、絞り込み情報記憶部270に記憶された候補リンクからなるフロー・リンク対応表を生成し、このフロー・リンク対応表に対し最小リンク数推定方式を適用することにより異常リンクを推定する(S360)。
【0103】
(異常リンク推定装置の具体的な処理)
以上、図26および図27を参照して異常リンクの推定方法の概要を説明した。続いて、図28〜図30を参照し、本実施形態による異常リンク推定装置20の具体的な処理を説明する。なお、以下では、ネットワーク上を図21に示したフローが流れている場合の異常リンク推定装置20の処理を説明する。
【0104】
まず、異常フロー重複度計数部262は、トポロジ/ルーティング情報記憶部240を参照し、観測ノードA1による観測点であるルータR3にリンクL3、L4、L10、L11、L12およびL13が接続されていることを認識する。そして、異常フロー重複度計数部262は、この観測点で観測された異常フローをフロー情報記憶部220から収集し、トポロジ/ルーティング情報記憶部240を参照して各異常フローが通るリンクを判定する。図21に示した例では、異常フローF5がリンクL4およびL13を通り、異常フローF6がリンクL11およびL13を通り、異常フローF2がリンクL3とL12を通る。このため、異常フロー重複度計数部262は、図28に示したように、リンクL3、L4、L11およびL12の重複度を「1」、リンクL13の重複度を「2」と計数する(S310)。
【0105】
続いて、重複度最大リンク判定部264が、観測点であるルータR3に接続するリンクL3、L4、L10、L11、L12およびL13のうちで、異常フローの重複度が最大であるリンクがL13であると判定する(S320)。
【0106】
このため、候補リンク収集部268は、ルータR3からルーティングによってリンクL13を経由して到達可能な端末までの経路上の全リンク、すなわち、L7、L8およびL13をトポロジ/ルーティング情報記憶部240から候補リンクとして収集する(S330)。
【0107】
同様に、観測ノードA2に関し、異常フロー重複度計数部262は、ルータR10を経由する異常フローF10およびF11がリンクL29およびL42を通るので、図28に示したようにリンクL29およびL42の重複度を「2」と計数する。よって、重複度最大リンク判定部264によりL29およびL42の双方が重複度の最大リンクとして判定されるので、候補リンク収集部268は、ルータR10からリンクL29またはL42を経由してルーティングによって到達可能な端末または他の観測点までの全リンク、すなわち、リンクL29〜L42を候補リンクとして収集する。なお、異常フロー重複度計数部262は、同一ペアのリンクを通る異なる異常フローは重複して計数しなくてもよい。例えば、異常フローF10およびF11が通るリンクのペアはL29とL42で同一であるので、L29およびL42の重複度を「1」と計数してもよい。
【0108】
同様に、観測ノードA3に関し、異常フロー重複度計数部262は、ルータR6を経由する異常フローF2およびF3がリンクL15およびL27を通るので、図28に示したようにリンクL15およびL27の重複度を「2」と計数する。よって、重複度最大リンク判定部264によりL15およびL27の双方が重複度の最大リンクとして判定されるので、候補リンク収集部268は、ルータR6からリンクL15またはL27を経由してルーティングによって到達可能な端末または他の観測点までの全リンク、すなわち、リンクL15を経由して到達可能なリンクL1、L2、L7〜L9、L12、およびL14、リンクL27を経由して到達可能なリンクL23およびL24を候補リンクとして収集する。
【0109】
続いて、複数観測点間通過異常フロー収集部266が、観測ノードA1による観測点R3および観測ノードA3による観測点R6を通過する異常フローF3を収集する(S340)。
【0110】
そして、異常フロー数比較部267が、R3において検出された異常フローの総数、およびR6において検出された異常フローの総数を比較する。ここで、R3において検出された異常フローの総数は「3」であり、R6において検出された異常フローの総数は「2」であるので、R6において検出された異常フローの総数の方が少ない。このため、候補リンク収集部268は、R6からR3への接続リンクL15から到達可能な端末および他の観測点までのリンク、すなわち、L1、L2、L7〜L9、L12、L14およびL15を候補リンクとして収集する。一方、候補リンク収集部268は、L17およびL27からルーティングにより到達可能な端末または他の観測点までのリンク、すなわち、既に収集されたリンクL23、L24およびL27は、候補リンクから削除する(S350)。
【0111】
ここまでの処理により、絞り込み情報記憶部270には、候補リンクとしてリンクL1、L2、L7〜L9、L13〜L15、およびL29〜L42が記憶される。
【0112】
次に、異常リンク推定部280が、絞り込み情報記憶部270に記憶されている候補リンクを用い、図29に示すフロー・リンク対応表を生成する。このフロー・リンク対応表において、列が各リンク、行が各異常フロー、各異常フローが通過するリンクを「1」、各異常フローが通過するリンクを「0」と示している。
【0113】
その後、異常リンク推定部280は、図29に示したフロー・リンク対応表から、正常フローの通るリンク、およびどのフローも通らないリンクを削除し、図30に示したフロー・リンク対応表を得る。異常リンク推定部280は、図30に示したフロー・リンク対応表に対して最小リンク数推定方式を適用することにより、図30で四角で囲って示したリンクL13、L15およびL42を異常リンクとして推定することができる。
【0114】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、異常リンクを推定するための対象範囲をとなる候補リンクを絞り込み、絞り込まれた候補リンクから例えばフロー・リンク表を用いて異常リンクを推定することができる。したがって、本発明の第2の実施形態によれば、異常リンクを推定するためのメモリ量、演算負荷およびコストなどを抑制することが可能である。
【0115】
<3.補足>
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0116】
例えば、本明細書の異常リンク推定装置10または20の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、異常リンク推定装置10または20の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0117】
また、異常リンク推定装置10または20に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した異常リンク推定装置10または20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0118】
1、2 異常リンク推定システム
10、20 異常リンク推定装置
62 異常フロー検出部
64 フロー情報記憶部
66 フロー情報送信部
110、210 フロー情報収集部
120、220 フロー情報記憶部
130、230 トポロジ/ルーティング情報収集部
140、240 トポロジ/ルーティング情報記憶部
150、250 絞り込み規則蓄積部
160、260 推定範囲絞り込み部
162 重複度計数部
163、262 異常フロー重複度計数部
164 正常リンク重複度減算部
165 観測点間リンク重複度減算部
166,264 重複度最大リンク判定部
168、268 候補リンク収集部
170、270 絞り込み情報記憶部
180、280 異常リンク推定部
190、290 出力部
266 複数観測点通過異常フロー収集部
267 異常フロー数比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するフロー情報収集部と、
前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、
前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、
前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、
前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、
を備える、異常リンク推定装置。
【請求項2】
前記候補リンク収集部は、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクが1つでない場合、前記観測点に接続するリンクのうちで異常フローの通るリンクから到達可能な候補リンクを収集する、請求項1に記載の異常リンク推定装置。
【請求項3】
前記ネットワーク上には複数の観測ノードが複数の観測点に配置されており、
前記フロー情報収集部は、前記複数の観測ノードから前記フロー情報を収集し、
前記計数部、前記候補リンク収集部、および前記異常リンク推定部は、前記複数の観測点の各々に接続するリンクに関して処理を行う、請求項1に記載の異常リンク推定装置。
【請求項4】
前記計数部は、前記異常フローと少なくとも一方の端末が共通する正常フローが観測されている場合、当該端末側のリンクの異常フローの重複度から、当該端末から出ている異常フローの重複度を減算する、請求項3に記載の異常リンク推定装置。
【請求項5】
前記ネットワークは、1の観測点から他の観測点を経由せずに到達可能な端末までのリンクを含む内部ネットワーク、および、前記1の観測点から前記他の観測点までのリンクを含む外部ネットワークからなり、
前記ネットワークには、前記外部ネットワークを経由する外部フロー、および前記内部ネットワーク内で前記外部ネットワークを経由しない内部フローが流れ、
前記計数部は、内部フローのうちで異常のある内部異常フローと少なくとも一方の端末が共通する正常フローが観測されている場合、前記1の観測点に接続する当該端末側のリンクの内部異常フローの重複度から、当該端末から出ている内部異常フローの数を減算する、請求項3に記載の異常リンク推定装置。
【請求項6】
前記計数部は、外部フローのうちで異常のある外部異常フローと少なくとも一方の端末が共通する正常フローが観測されている場合、前記正常フローが経由するリンクのうちで、
前記1の観測点に接続する前記外部異常フローの他側の端末側のリンク以外のリンクの異常フロー重複度から、共通する端末から出ている外部異常フローの数を減算する、請求項5に記載の異常リンク推定装置。
【請求項7】
前記計数部は、前記1の観測点および前記他の観測点を経由する外部正常フローが観測されている場合、前記1の観測点に接続する前記他の観測点側のリンクの異常フロー重複度から、前記1の観測点および前記他の観測点を経由する異常フローの数を減算する、請求項6に記載の異常リンク推定装置。
【請求項8】
前記異常リンク推定部は、
前記候補リンク収集部により収集された前記候補リンク、および前記候補リンクを通過する異常フローおよび正常フローの対応表を作成し、
前記対応表から、正常フローの通過する候補リンクを削除し、
残った候補リンクの各々を通る異常フローの数に基づいて前記異常リンクを推定する、請求項7に記載の異常リンク推定装置。
【請求項9】
前記異常リンク推定部は、対応表に異常フローの通過数が最大の候補リンクが存在し、かつ、当該候補リンクの異常フローの通過数が、前記複数の観測点に接続する全リンクの異常フロー重複度のうちで2番目に大きな値以上である場合、当該候補リンクを前記異常リンクとして推定する、請求項8に記載の異常リンク推定装置。
【請求項10】
前記観測ノードは、前記ネットワークのゲートウェイ部分の観測点に配置される、請求項3に記載の異常リンク推定装置。
【請求項11】
前記異常リンク推定装置は、
2以上の観測点を通過する異常フローを収集する異常フロー収集部と、
前記2以上の観測点の各々を通過する異常フローの総数を比較する異常フロー数比較部と、
をさらに備え、
候補リンク収集部は、異常フローの総数が少ない方の観測点から異常フローの総数が多い方の観測点への接続リンクから到達可能なリンクを候補リンクとしてさらに収集し、異常フローの総数が少ない方の観測点から前記接続リンク以外のリンクを経由して到達可能なリンクを候補リンクから除外する、請求項3に記載の異常リンク推定装置。
【請求項12】
前記計数部は、前記観測点に接続する同一のリンクを通過する複数の異常フローは重複して計数しない、請求項11に記載の異常リンク推定装置。
【請求項13】
ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するステップと、
前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数するステップと、
前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定するステップと、
異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集するステップと、
前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定するステップと、
を含む、異常リンク推定方法。
【請求項14】
コンピュータを、
ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードから端末間のフロー情報を収集するフロー情報収集部と、
前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、
前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、
前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、
前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、
として機能させるための、プログラム。
【請求項15】
ネットワーク上の観測点に配置された観測ノードと、前記観測ノードにおいて観測された端末間のフロー情報が提供される異常リンク推定装置と、からなる異常リンク推定システムであって、
前記異常リンク推定装置は、
前記観測ノードから前記ロー情報を収集するフロー情報収集部と、
前記フロー情報に基づき、前記観測点に接続する各リンクを通過している異常フローの重複度を計数する計数部と、
前記観測点に接続するリンクのうちで異常フロー重複度が最大であるリンクを判定する判定部と、
前記判定部により異常フロー重複度が最大であると判定されたリンクを経由してルーティングにより到達可能な候補リンクを収集する候補リンク収集部と、
前記候補リンクから異常の発生している異常リンクを推定する異常リンク推定部と、
を備える、異常リンク推定システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−182739(P2012−182739A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45518(P2011−45518)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】