説明

異所性妊娠の同定

【課題】異所性妊娠の誤診等の問題を取り除く又は軽減すること。
【解決手段】本発明は、子宮外(又は異所性)妊娠を同定する方法に関するものであり、子宮外妊娠のマーカーであることが今や知られるに至った特定の分子の存在について試料をスクリーニングすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮外(又は異所性)妊娠を同定する方法に関するものであり、子宮外妊娠のマーカーであることが今や知られるに至った特定の分子の存在について試料をスクリーニングすることを含む。
【背景技術】
【0002】
妊娠の全てのうちのわずかな比率のものが子宮外の位置で起き、別名では異所性妊娠として知られている。英国では年間およそ12,000症例の異所性妊娠がある(1)。
【0003】
子宮外または異所性の妊娠は、免疫学的かつ形態学的に正常な胚が異常に着床した場合に起きる。典型的には、受精した胚の着床は、子宮の外側で起き、これには、卵管内の着床(卵管妊娠)が含まれ得るが、着床は他の位置でも起こる可能性がある。
【0004】
子宮外の着床の素因である病原性事象は依然として不明である。卵管のような異所性部位での胚の着床は、外来病原体に対する正常な宿主免疫応答が破壊された結果のようである。脱落膜化(妊娠と共に起きる子宮内膜の変化)は、妊娠の成功の鍵となる免疫学的要素である。子宮外妊娠に伴って、子宮腔では脱落膜反応があるが、普通、卵管ではそれはない。
【0005】
異所性妊娠の誤診は、結果的に死につながる可能性がある。現在、異所性妊娠は、患者の一般症状(出血及び痛みの存在を特に重視)、ベータ−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の繰り返し(連続)試験、並びに経膣超音波(子宮内妊娠があるかどうかの確定のため)の評価によって診断される。これらの存在は、時間がかかり、国民医療サービスにとって財政的に、及び患者にとって心理的に犠牲が大きい。さらに、それらはしばしば、診断を確定するために、腹腔鏡検査(キーホール手術)についての不要な必要性を生じ、その固有の危険性を伴う(4)。さらに、異所性妊娠全てのうちの半分は、診断されないか、又は誤診されるかのいずれかである。初期の診断が、卵管の完全性の最適な保存(将来の受精能を失わないように)のために、及び生命を脅かす腹部出血の可能性を防ぐために必須である(2)。従って、新しい診断法を確立する重要な意欲がある。
【0006】
プレゲノム時代では、一つずつの科学的なアプローチは、異所性妊娠に血液検査として使用され得るマーカーの解明に成功しなかった(5〜7)(非特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Birkhahn RHら、Ann Emerg Med 2001 38(6):628−32.
【非特許文献2】Wegner NTら、Am J Obstet Gynecol 2001 184(6):1074−6.
【非特許文献3】Develioglu OHら、Brit J Obs Gyn 2002 109(2):121−8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の問題のうちの少なくとも1つを取り除く又は軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、異所性又は子宮外妊娠、特に例えば、卵管妊娠を同定する改善された方法を提供する。具体的には、この方法は、被験体によって提供された試料中の特定の遺伝子及び/又はタンパク質のレベルを同定し、それらの遺伝子及び/又はタンパク質のレベルが異所性妊娠の指標であるかどうかを決定することを必要とする。
【0010】
従って、第1の態様では、本発明は異所性妊娠を同定する方法を提供し、本方法は、
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)試料中の以下の1以上のレベルを同定する工程とを含み、
(i)インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子
(ii)アクチビンB
(iii)システイン−リッチ分泌型タンパク質3(CRISP−3)及び/又は
(iv)カルボキシペプチダーゼ−B1(CPB1)
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である。
【0011】
本明細書で使用されるとき、用語「インヒビン/アクチビンβサブユニット」及び/又は「アクチビンB」は、インヒビン/アクチビンβサブユニットをコードする遺伝子及び/又はそのタンパク質産物(即ち、アクチビンB)のいずれかを指し示すことを意図することが理解されるべきである。さらに、用語「レベル」又は「量」は、遺伝子及び/又はタンパク質発現のレベル又は量に関係すると理解すべきであることが理解されるべきである。
【0012】
さらに、本明細書で使用されるとき、用語「CRISP−3」及び/又は「CPB1」は、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする遺伝子及び/又はそのタンパク質産物(即ち、CRISP−3及び/又はCPB1)のいずれかを指し示すことを意図することが理解されるべきである。CRISP−3は、別名では、28kDaの特異的顆粒タンパク質(SGP28)として知られ得ることに留意することが重要である。それは、精漿、前立腺、膵臓、好中球、唾液、汗及び血液で見出されているが、そのタンパク質の機能についてはほとんど知られておらず、作用の一般的様式も記載されていない(Bjartell Aら Prostate.2006 66(6):591−603;Udby Lら J Androl.2005 26(3):333−42)。CPB1又はカルボキシペプチダーゼB1は、膵臓傷害に関連して研究されてきた(Appelros Sら Gut.1998 42:97−102;Appelros Sら Br J Surg 2001 88:216−7)。それは、炎症応答を刺激すると考えられており、血漿及び尿中に見出されている。
【0013】
異所性妊娠を同定するために、当業者が、被験体によって提供された試料中の、本明細書中に記載された物質(遺伝子及び/又はタンパク質)のいずれか1つのレベルを同定することを選択し得ることが理解されるべきである。あるいは、被験体によって提供された同じ又は多数の異なる試料中の前述の物質のいずれか2以上のレベルを同定してもよい。
【0014】
実施態様の1つでは、被験体によって提供される試料は、例えば、全血、血漿、血清、唾液、汗及び/又は尿を含んでいてもよい。好ましくは、試料は、全血、血清及び/又は血漿を含む。さらに、又は代わりに、試料は、特定の組織に由来する生検、小片又は塗抹標本を含んでいてもよい。例示としては、及び実施態様の1つでは、試料は、子宮脱落膜を含んでいてもよい。さらなる実施態様では、試料は、分泌物又は洗浄物を含んでいてもよい。例えば、試料は、膣又は子宮の分泌物を含んでいてもよい。
【0015】
本発明は、哺乳類の被験体、特にヒトにおける異所性妊娠の同定において特定の適用を有する。
【0016】
本明細書中に記載される方法によって試験される被験体は、最初に、特定の症状を示していてもよく、従って、異所性妊娠を有することが疑われていてもよい。異所性妊娠の指標である症状としては、例えば、軽い/激しい痛み、軽い/激しい膣出血、超音波にて検知できない子宮内妊娠、及び異常なレベルの連続的血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)レベル(例、48時間にわたって倍増しない)が挙げられる。あるいは、被験体は、無症状であってもよく、さらなる実施態様では、被験体は、異所性妊娠を発生するリスクがあってもよく、又はその素因があってもよい。
【0017】
異所性妊娠を有すると同定された被験体では、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体のいずれかにおけるインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現のレベルと比較した場合、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現のレベルが低下することが理解されるべきである。同様に、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体のいずれかに存在するアクチビンBのレベル(例えば、全身性のレベル)と比較した場合、アクチビンBのレベル(特に、全身性のレベル)は低下する。
【0018】
異所性妊娠を有すると同定された被験体では、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体のいずれかに存在するCRISP−3のレベルと比較した場合、CRISP−3のレベルは上昇し得る。さらに、異所性妊娠を有すると同定された被験体におけるCPB1のレベルは、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体のいずれかに存在するCPB1のレベルと比較した場合、低下する。
【0019】
従って、異所性妊娠を同定するために、当業者は、本明細書中に記載される方法のいずれかから得られた結果(即ち、被験体によって提供された試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベル)を、参照又は対照試料中の同じタンパク質及び/又は遺伝子のレベルと、又は参照値と比較してもよい。
【0020】
従って、実施態様の1つでは、本発明は、異所性妊娠を同定する方法を提供し、本方法は、
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)試料中の以下の1以上のレベルを同定する工程と、
(i)インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子
(ii)アクチビンB
(iii)CRISP−3及び/又は
(iv)CPB1
(c)試料中で同定されたインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを、参照試料中で同定されたインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベル、又は参照値と比較する工程とを含み、
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である。
【0021】
「参照試料」は、妊娠していない被験体、又は正常な、即ち、進行中の子宮内妊娠を有する(超音波により子宮腔内に胎児性心臓および胎児性ポール(foetal pole)が見られる)、若しくは不全の子宮内妊娠を有する(子宮腔内に胎児性心臓はないが、胎児性ポールはある)被験体(参照被験体)に由来する試料であるとみなされ得る。好ましくは、参照試料は、被験体に由来する試料と同じ種類の試料であるべきである。例えば、被験体によって提供される試料が血液血漿を含む又はそれからなる場合には、参照試料もそのようにあるべきである。有利なことには、被験体により提供される試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルは、それぞれ異なる参照被験体に由来する多数の参照試料中の同じタンパク質及び/又は遺伝子のレベルと比較されてもよい。
【0022】
参照値は、参照試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを表すとみなされ得る。有利なことには、参照値は、多数の異なる参照被験体に由来する多数の参照試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルの平均値を表してもよい。
【0023】
実施態様の1つでは、被験体によって提供された試料で同定されたインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルはまた、異所性妊娠を有することが把握されている被験体に由来する試料中の同じタンパク質及び/又は遺伝子のレベルと比較されてもよい。このような試料は、別名では、陽性対照として知られ得る。
【0024】
要約すれば、参照試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現レベルよりも低いインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現レベルを示す試料は、子宮外妊娠を有する被験体に由来し得る。参照試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現レベルと同等以上であるインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現のレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有さない被験体に由来し得る。参照試料中に存在するアクチビンBのレベルよりも低いアクチビンBのレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有する被験体に由来し得る。参照試料中に存在するアクチビンBのレベルと同等以上のアクチビンBのレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有さない被験体に由来し得る。
【0025】
例示としては、参照試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現レベルと比べた場合、試験した試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現の量における約1%の低下が、子宮外妊娠を示してもよい。好ましくは、試験した試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現の量における約2%、さらに好ましくは約5%、一層さらに好ましくは約10%の低下が、子宮外妊娠を示してもよい。他の場合には、少なくとも約15%〜約100%の低下が子宮外妊娠の指標である。
【0026】
参照試料中に存在するアクチビンBのレベルと比べた場合、試験した試料中のアクチビンBの量における約1%の低下が、子宮外妊娠を示してもよい。好ましくは、試験した試料中のアクチビンBの量における約2%、さらに好ましくは約5%、一層さらに好ましくは約10%、尚一層好ましくは約20%の低下が、子宮外妊娠を示してもよい。他の場合には、アクチビンBの量における少なくとも約30%〜約100%の低下が、子宮外妊娠の指標である。
【0027】
参照試料中に存在するCRISP−3のレベルより高いCRISP−3のレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有する被験体に由来し得る。参照試料中に存在するCRISP−3のレベルと同等以下であるCRISP−3のレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有さない被験体に由来し得る。参照試料中に存在するCBP1のレベルより低いCBP−1のレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有する被験体に由来し得る。参照試料中に存在するCBP1のレベルと同等以上であるCBP−1のレベルを示す試料は、子宮外妊娠を有さない被験体に由来し得る。
【0028】
例示としては、参照試料中に存在するCRISP−3のレベルと比べた場合、試験した試料中のCRISP−3の量における約1%の増加が、子宮外妊娠を示してもよい。好ましくは、試験した試料中のCRISP−3の量における約10%、さらに好ましくは約100%、一層さらに好ましくは約1000%の増加が、子宮外妊娠を示してもよい。典型的には、少なくとも約10%〜約1000%の増加が、子宮外妊娠の指標である。
【0029】
参照試料中に存在するCPB1のレベルと比べた場合、試験した試料中のCPB1の量における約1%の低下が、子宮外妊娠を示してもよい。好ましくは、試験した試料中のCRISP−3の量における約10%、さらに好ましくは約100%、一層さらに好ましくは約1000%、尚一層さらに好ましくは約3000%の低下が、子宮外妊娠を示してもよい。
【0030】
当業者は、上記で列記されたもののような試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のようなタンパク質及び/又は遺伝子のレベルの同定に使用され得る技術に精通しているであろう。
【0031】
実施態様の1つでは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤を利用する、免疫学的技術のような技術によって同定されてもよい。そのような方法は特に、特定のタンパク質のレベルを同定するために適する。
【0032】
実施態様の1つでは、本発明は、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の基材への会合、相互作用、結合及び/又は固定を可能にする条件下で、試験されるべき試料に、前記基材(又はその一部)を接触させる工程を含む方法を提供してもよい。
【0033】
好適な基材としては、例えば、ガラス、ニトロセルロース、紙、アガロース及び/又はプラスチックが挙げることができる。例えば、プラスチック材料のような基材はマイクロタイタープレートの形態を取ってもよい。当業者は、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1からなる群のうちの2以上のレベルを試料中で同定すべき場合、1以上の基材を使用してもよいことを理解するであろう。例えば、物質の前述の群の2つのレベルを同定すべき場合、2つの基材を使用してもよく、検出される各物質につき1つを使用してもよい。
【0034】
あるいは、試験されるべき試料に接触される基材は、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤を含んでいてもよい。好ましくは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤は、基材(又はその少なくとも一部)に結合される。好適な結合剤には、例えば、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得るモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のような抗体(又はその抗原結合断片)、オリゴヌクレオチド及び/又はその他の種類のペプチド又は低分子が挙げられてもよい。この定義は、本明細書中で言及されるあらゆる種類の結合剤に適用されることが理解されるべきである。従って、基材(又はその一部)は、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤と、試料中に存在する任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1との間の結合又は相互作用を可能にする条件下で、試験されるべき試料に接触されてもよい。
【0035】
基材に結合した任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1、又はインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤は、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得るさらなる剤(本明細書では以降、「一次結合剤」と呼ぶ)の使用によって検出されてもよい。さらに、又は代わりに、一次結合剤は、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1と基材との複合体、あるいはインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1と、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る前述の剤とを含む複合体に対して、親和性を有してもよく、又は結合してもよい。
【0036】
一次結合剤は、その検出を可能にする部分(本明細書では以降、「検出可能部分」と呼ぶ)に結合し得る。例えば、一次剤は、比色化学発光反応を介してレベルを伝え得る酵素に結合し得る。そのような結合される酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼ(AKP)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、又は代わりに、一次結合剤は、例えば、FITC、ローダミン又はテキサスレッドのような蛍光体(特にオリゴヌクレオチドの標識に有用)のような蛍光分子に結合し得る。結合剤に結合してもよいその他の種類の分子には、放射性標識部分が挙げられる。
【0037】
あるいは、基材に結合した任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1、あるいはインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤は、一次結合剤に対して親和性を有する、なおさらなる結合剤(本明細書では以降、「二次結合剤」と呼ぶ)によって検出されてもよい。好ましくは、二次結合剤は、検出可能部分に結合される。
【0038】
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1に結合した一次結合剤(又はそれに結合した二次結合剤)の量は、試験された試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを表し得る。
【0039】
実施態様の1つでは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを同定する前述の方法は、「浸漬スティック(dip−stick)」試験の形態を取ってもよく、その際、1以上の基材(又はその一部)が、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の基材又はそれに結合した若しくは固定された結合剤への結合を可能にする条件下で、試験されるべき1以上の試料に接触される。
【0040】
さらなる実施態様では、方法は、例えば、酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)のような免疫学的アッセイの形態を取ってもよい。ELISAは、「捕捉」ELISAの形態を取ってもよく、その際、試験されるべき試料が、基材に接触され、そして試料中に存在する任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1が、基材に結合された又は固定された(インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る)結合剤によって、「補足される」又は結合される。あるいは、試料は、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1と基材との間で「直接」結合を可能にする条件下で、基材に接触されてもよい。
【0041】
上記のELISA法のそれぞれが、「直接」のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の検出工程、又は「間接」の同定工程を含んでいてもよい。そのような工程を利用するELISAは、「直接」ELISA又は「間接」ELISAとして知られてもよい。
【0042】
「直接」ELISAには、試料中に存在する任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の基材及び/又はそれに結合した結合剤への結合を可能にする条件下で、試験されるべき試料を基材に接触させることが含まれてもよい。任意のブロッキング工程の後、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤(すなわち、一次結合剤)を手段として、結合させたインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を検出してもよい。好ましくは、一次結合剤は、検出可能部分に結合させる。
【0043】
「間接」ELISAは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を一次結合剤と接触させた後、一次結合剤に親和性又は特異性を持つさらなる結合剤(二次結合剤)を用いるさらなる工程を含んでいてもよい。好ましくは、二次結合剤は、検出可能部分に結合させてもよい。
【0044】
試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを同定するために使用してもよいその他の免疫学的技術には、例えば、免疫組織化学が挙げられ、その際、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1と、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1との間での結合を可能にする条件下で、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る抗体のような結合剤を、試料、好ましくは組織試料と接触させる。典型的には、試料を結合剤と接触させるのに先立って、例えば、トリトンX100のような界面活性剤で試料を処理する。そのような技術は、「直接」免疫組織化学染色と呼ばれ得る。
【0045】
あるいは、試験されるべき試料を、間接免疫組織化学染色プロトコルに供してもよく、その際、試料を、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の結合剤に接触させた後、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1結合剤に特異性がある、親和性がある又はそれを結合し得るさらなる結合剤(二次結合剤)を用いて、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1と結合剤との複合体を検出する。
【0046】
熟練者は、直接及び間接双方の免疫組織化学技術において、結合剤又は二次結合剤を検出可能部分に結合させてもよいことを理解するであろう。好ましくは、結合剤又は二次結合剤は、比色化学発光反応を介して、結合した結合剤又は二次結合剤のレベルを伝えることが可能である部分に結合される。
【0047】
試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを同定するために、免疫組織化学染色の結果を、参照試料で実施した免疫組織化学染色の結果と比較してもよい。例示としては、参照試料よりも結合したインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子結合剤(又は二次結合剤)が少ないことを示す試料は、異所性妊娠の被験体によって提供されたものであってもよい。参照試料よりも結合したアクチビンB結合剤(又は二次結合剤)が少ないことを示す試料は、異所性妊娠の被験体によって提供されたものであってもよい。参照試料よりも結合したCRISP−3結合剤(又は二次結合剤)が多いことを示す試料は、異所性妊娠の被験体によって提供されたものであってもよい。参照試料よりも結合したCBP1結合剤(又は二次結合剤)が少ないことを示す試料は、異所性妊娠を有さない被験体によって提供されたものであってもよい。
【0048】
参照試料で同定された結合剤(又は二次結合剤)の量と同等以上であるインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子結合剤(又は二次結合剤)の量を示す試料は、異所性妊娠を有さない被験体に由来したものであってもよい。参照試料で同定された結合剤(又は二次結合剤)の量と同等以上であるアクチビンB結合剤(又は二次結合剤)の量を示す試料は、異所性妊娠を有さない被験体に由来したものであってもよい。参照試料で同定された結合剤(又は二次結合剤)の量と同等以下であるCRISP−3結合剤(又は二次結合剤)の量を示す試料は、異所性妊娠を有さない被験体に由来したものであってもよい。参照試料で同定された結合剤(又は二次結合剤)の量と同等以上であるCBP1結合剤(又は二次結合剤)の量を示す試料は、異所性妊娠を有さない被験体に由来したものであってもよい。
【0049】
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤の使用を活用するその他の技術には、例えば、ウエスタンブロット又はドットブロットのような技術が挙げられる。ウエスタンブロットには、例えば、試料のタンパク様成分及び/又は核酸成分のような成分を分離又は分解するために、試料を電気泳動に供することが含まれる。次いで分解された成分を、例えば、ニトロセルロースのような基材上に移してもよい。試料中に存在する任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を同定するために、試料中に存在する任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1と、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤との間の結合を可能にする条件下で、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る結合剤に基材を接触させてもよい。
【0050】
有利なことには、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る剤を、検出可能部分に結合させてもよい。
【0051】
あるいは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1を結合し得る結合剤に親和性を有するさらなる結合剤に基材を接触させてもよい。有利なことには、さらなる結合剤を、検出可能部分に結合させてもよい。
【0052】
ドットブロットの場合、試料中に存在する任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1が基材上に結合されるように、又は基材上に固定されるように、試料又はその一部を、基材に接触させてもよい。結合された又は固定された任意のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の同定は、上述のように行われてもよい。
【0053】
前述の技術のいずれにおいても、検出される一次又は二次の結合剤の量は、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の量を表すか、又はそれに比例する。
【0054】
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを同定するために使用してもよいその他の技術には、例えば、リアルタイムPCR(別名では定量的PCRとして知られる)のようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく技術が挙げられる。そのような技術を用いて、特定の核酸配列が試料中に存在するのかどうか、及びその核酸の発現のレベルを決定してもよい。この場合、リアルタイムPCRを用いて、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子の核酸配列、又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする核酸配列が試料中に存在するのかどうか、及びそれらの核酸配列の発現のレベルを決定してもよい。典型的には、及び特定の核酸配列の発現のレベルを定量するために、逆転写酵素PCRを用いて、関連するmRNAを相補的DNA(cDNA)に逆転写してもよい。好ましくは、逆転写酵素のプロトコルは、目的のmRNA配列を特異的に増幅するように設計されたプライマーを使用してもよい。その後、PCRを用いて、逆転写によって生成されたcDNAを増幅してもよい。
【0055】
典型的には、特定の配列と特異的にハイブリダイゼーションを行うように設計されたプライマーを用いてcDNAを増幅し、PCRに使用されるヌクレオチドを、蛍光化合物又は放射性標識された化合物で標識してもよい。
【0056】
当業者は、PCRの間に生成されたDNAの量を定量することを可能にする標識ヌクレオチドを用いる技術に精通するであろう。手短には、及び例示としては、標識され増幅された核酸の量を、PCRサイクル中に取り込まれた標識ヌクレオチドの量をモニターすることによって決定してもよい。
【0057】
好ましくは、得られた結果を、参照試料から得られた結果と比較してもよい。
【0058】
本明細書で記載されるPCRに基づく技術のさらなる情報は、例えば、PCR Primer(Carl W.Dieffenbach & Gabriela S.Dveksler編による、実験室マニュアル(第2版)、Cold Spring Harbour Laboratory Press)、及びMolecular Cloning(Joseph Sambrook & David Russellによる実験室マニュアル、Cold Spring Harbour Laboratory Press)に見出され得る。
【0059】
試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを決定するために使用してもよいその他の技術には、例えば、ノザンブロット法及び/又はサザンブロット法が挙げられる。ノザンブロットを用いて試料中に存在する特定のmRNAの量を決定し得るので、それを用いて、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする核酸の量を決定してもよい。簡単に言えば、当業者に既知の技術を用いて試料からmRNAを抽出し、電気泳動に供してもよい。次いで、目的のmRNA(この場合、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子に由来するmRNA又はアクチビンBタンパク質をコードするmRNA)にハイブリッドする(すなわち、それに相補的である)ように設計された核酸プローブを用いて試料中に存在する特定のmRNAを検出し、その量を定量してもよい。有利なことには、得られた結果を、参照試料から得られた結果と比較してもよい。
【0060】
同様に、サザンブロットを用いて、試料中の任意の所定のDNA配列の存在及び量を検出してもよく、それを用いて、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子の配列、及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする核酸配列を検出してもよい。簡単に言えば、試料から核酸を抽出し、断片化プロトコルに供し、電気泳動によって分離し、核酸プローブによって特定配列の存在について探査してもよい。この場合、核酸プローブは、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子の核酸配列、及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする核酸の配列とハイブリダイゼーションしてもよい(すなわち相補的)。有利なことには、得られた結果を、参照試料から得られた結果と比較してもよい。
【0061】
追加的に、又は交換的に、試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルは、マイクロアレイ解析の手段によって同定されてもよい。そのような方法には、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子に由来する核酸及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする核酸を含むDNAのマイクロアレイの使用が含まれる。試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1のレベルを同定するために、当業者は、試料から核酸、好ましくはmRNAを抽出し、逆転写酵素PCRのような増幅プロトコルにそれを供し、cDNAを生成してもよい。好ましくは、特定のmRNA配列(この場合、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子の配列及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする配列)に特異的なプライマーを使用してもよい。
【0062】
増幅された(インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする遺伝子)cDNAは、必要に応じて、標識ヌクレオチド(上述のような)の存在下で、さらなる増幅工程に供されてもよい。その後、マイクロアレイのDNAとの結合を可能にする条件下にて、必要に応じて標識され、増幅されたcDNAを、マイクロアレイと接触させてもよい。このように、試験された試料中に存在するインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現レベル及び/又はアクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1をコードする遺伝子発現レベルを同定することが可能であってもよい。有利なことには、得られた結果を、参照試料から得られた結果と比較してもよい。
【0063】
上述の技術に関するさらなる情報は、例えば、PCR Primer(Carl W.Dieffenbach & Gabriela S.Dveksler編による、実験室マニュアル(第2版)、Cold Spring Harbour Laboratory Press)、及びMolecular Cloning(Joseph Sambrook & David Russellによる実験室マニュアル、Cold Spring Harbour Laboratory Press)に見出され得る。
【0064】
実施態様の1つでは、異所性妊娠を同定するさらに信頼できる方法を提供するために、本発明によって提供される方法を、既存の診断法と組み合わせてもよい。例えば、本方法を、連続hCGアッセイ、超音波法及び/又は腹腔鏡検査と組み合わせてもよい。
【0065】
当業者は、本明細書で記載される方法が多数のアッセイを提供し、そのそれぞれが異所性妊娠を同定し、及び/又は診断するために使用されてもよいことを十分に理解するであろう。任意の所定のアッセイがインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1からなる群より選択される1つの物質のレベルの同定を含んでいてもよい一方で、ユーザーは、前述の物質の2以上のレベルの同定を含むアッセイを実施したいと考え得ることが理解されるべきである。当業者は、2以上の前述の物質(すなわち、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1)のレベルを同定するアッセイが異所性妊娠をさらに迅速及び/又は正確に同定及び/又は診断し得る方法を提供し得ることを十分に理解するであろう。
【0066】
上記に加えて、インヒビンαサブユニットの発現レベルにおける変化も異所性妊娠の指標であり得ることが理解されるべきである。従って、本明細書中に記載される方法及び手順のそれぞれはインヒビンαのレベルとも関係し、異所性妊娠の場合、そのレベルは、低下したレベル(対照、又は上述のような参照試料との比較)で検出されてもよい。さらに、インヒビンαのレベルの同定を含む方法は、例えば、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3及び/又はCPB1の同定に関する、本明細書で記載される方法のいずれか又は全てと組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。
【0067】
本発明者らはまた、天然の抗菌ペプチドである分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)及びエラフィンのレベルが異所性妊娠又は卵管妊娠の被験体で上昇することを発見した。従って、本明細書中に記載される方法及び/又は技術のいずれかは、被験体によって提供される試料中のSLPI及び/又はエラフィンのレベルを同定することを含む異所性妊娠を同定する方法を包含する(又はそれに関して必要とされる)ようにさらに拡大されてもよく、その際、試料中のSLPI及び/又はエラフィンのレベルは、異所性妊娠の指標である。当業者は、被験体から得られた試料中のタンパク質を同定するために好適な、本明細書中に記載される技術のいずれか(例えば、免疫学的技術及び/又はPCRに基づいた技術)を用いてSLPI及び/又はエラフィンのレベルを同定してもよいことを十分に理解するであろう。さらに、SLPI及び/又はエラフィンのレベルの同定を含む方法は、例えば、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3、CPB1及び/又はインヒビンαの同定に関する、本明細書で記載される方法のいずれか又は全てと組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。
【0068】
上記に加えて、本発明者らは、異所性妊娠又は卵管妊娠の被験体でプロラクチンのレベルが低下することに気付いた。従って、本明細書中に記載される方法及び/又は技術のいずれかは、被験体によって提供される試料中のプロラクチンのレベルを同定することを含む異所性妊娠を同定する方法を包含する(又はそれに関して必要とされる)ようにさらに拡大されてもよく、その際、試料中のプロラクチンのレベルは、異所性妊娠の指標である。当業者は、被験体から得られた試料中のタンパク質を同定するために好適な、本明細書中に記載される技術のいずれか(例えば、免疫学的技術及び/又はPCRに基づいた技術)を用いてプロラクチンのレベルを同定してもよいことを十分に理解するであろう。さらに、プロラクチンのレベルの同定を含む方法は、例えば、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI及び/又はエラフィンの同定に関する、本明細書で記載される方法のいずれか又は全てと組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。
【0069】
例示としては、及び実施態様の1つでは、異所性妊娠を同定する方法は、被験体由来の1以上の試料を提供し、前記試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンの1以上のレベルを同定する工程を含んでいてもよい。
【0070】
上記に加えて、及び本明細書で言及された物質(遺伝子及びタンパク質)のレベルが妊娠、特に異常な妊娠に関連付けられるという事実を考慮すると、本明細書に記載された方法のいずれかを用いて妊娠及び/又は異常な妊娠を同定する及び/又は診断することが可能であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】子宮脱落膜におけるインヒビン/アクチビンサブユニットmRNAの発現:a)βBサブユニットは、差示的に発現する(p<0.001、ANOVA)。流産の外科的処置(Misc)(p<0.01、ANOVA)及び外科的妊娠中絶(TOP)(p<0.01、ANOVA)を受けている女性のものと比べた場合、卵管異所性妊娠(異所性)の女性ではそれは低下している。b)これらの群でβAの発現には差異はなかった(ANOVA)。c)αサブユニットは、群で差示的に発現し(p<0.05、ANOVA)、流産よりも異所性妊娠で発現は低かった(p<0.05、ANOVA)。
【図2】インヒビン/アクチビンのαサブユニットとβAサブユニットについての免疫組織化学:a)妊娠顆粒膜黄体細胞(GLC)における局在(茶色)及び周辺の間質(St)における非染色を示す陽性対照としての、αサブユニットについて免疫染色されたヒト黄体。b)間質(S)におけるより明るい染色を伴う、脱落膜化した組織(G)の子宮内膜腺におけるαサブユニットについての染色。c)近隣の卵胞膜細胞(tc)における弱い染色を伴う、顆粒膜細胞(gc)における顕著な染色(茶色)を示す陽性対照としての、βBサブユニットについて免疫染色されたヒト卵胞。d)幾らかの腺(G)及び間質(S)局在を示す脱落膜におけるβBサブユニットについての染色。e)腺上皮(G)における細胞質染色及び間質細胞(S)における最小染色を示す卵管異所性妊娠の女性からの脱落膜βBサブユニットの局在。f)間質細胞(S)におけるより強い免疫染色の証拠を伴う、腺における同様の発現パターンを示す流産の外科的処置を受けている女性からの子宮脱落膜。g)腺上皮(G)及び間質細胞(S)の双方でのβB免疫局在を示すTOPを受けている女性からの子宮脱落膜。腺(G)又は間質(S)における特異的な免疫染色を示さない(g)の陰性対照部分。スケール・バー=50μm(100μmであるc)を除く)。
【図3】インビトロにおける子宮内膜間質細胞の脱落膜化の間のインヒビン/アクチビンのサブユニットmRNAの発現。a)βBの発現は、脱落膜化の間に増加した(p<0.05)(ANOVA、ピアソン相関)。b)αサブユニットの発現も増加した(p<0.05)が、顕著な程度ではない(ANOVA、ピアソン相関)。c)βAサブユニットの発現には差異はなかった(ANOVA、ピアソン相関)。T1=0時間、T2=24時間、T3=48時間、T4=72時間、T5=96時間、T6=120時間。
【図4】インビボにおける子宮内膜の脱落膜化の程度の形態学的評価。a)流産の外科的処置(Misc)、妊娠中絶(TOP)及び卵管異所性妊娠(異所性)から回収した子宮内膜における腺上皮の分泌変化及び間質の脱落膜化のレベルのスコア化。b)生検脱落膜化の形態学的程度の分類(+、+/−、−)は、異所性妊娠の子宮内膜があまり脱落膜化されないことを示した(p<0.05、カイ2乗)。c)脱落膜化のレベル(−、+/−、+)と脱落膜のインヒビン/アクチビンβB発現との間の相関(p=0.0005、スピアマン相関)。
【図5】脱落膜化の鍵となるマーカーの発現。a)IGFBP1の発現は、群間で異なっていた(p<0.005、クラスカル・ウォリス)。流産(Misc)(p<0.01、クラスカル・ウォリス)又は妊娠中絶(TOP)(p<0.05、クラスカル・ウォリス)と比べた場合、それは、卵管異所性妊娠(異所性)でさらに低かった。b)プロラクチンの発現も、群間で異なる(p<0.01、クラスカル・ウォリス)。妊娠中絶と比べた場合、それは、異所性妊娠でさらに低かった(p<0.05、クラスカル・ウォリス)。
【図6】血清アクチビンB及びプロゲステロン濃度。a)流産(Misc)及び妊娠中絶(TOP)と比べた場合、血清アクチビンBは、卵管異所性妊娠(異所性)で最も低い(p=0.001、ANOVA)。b)血清アクチビンBは、子宮内妊娠(IUP)より卵管妊娠(EP)のほうが低い(p<0.005、t−検定)。c)アクチビンBと脱落膜化の程度(+、+/−、−)との間に相関がある(p=0.005、スピアマン相関)。d)血清プロゲステロンは、流産で最も低い(p<0.05、クラスカル・ウォリス)。e)子宮内妊娠を卵管妊娠と比べた場合、プロゲステロン濃度に差異はなかった(t−検定)。f)脱落膜化の程度と血清プロゲステロンの濃度との間に相関はなかった(スピアマン相関)。
【図7】子宮内(STOP及び流産)妊娠、並びに子宮外(卵管)妊娠の女性からの子宮脱落膜におけるCRISP−3(図7a)及びCPB1(図7b)のレベルを実証する定量的RT−PCR。
【図8】卵管妊娠の子宮脱落膜におけるCRISP3についての免疫組織化学。腺上皮及び分泌物における最も強い発現。
【図9】外科的妊娠中絶(STOP)、流産の外科的処置及び異所性妊娠の外科的処置を受けている女性からの子宮脱落膜における相対的SLPI(A)及びエラフィン(B)mRNA発現のグラフによる表示。
【図10】異所性妊娠の外科的処置、流産の外科的処置、及び外科的妊娠中絶(STOP)を受けている女性からの子宮脱落膜における免疫組織化学によって実証されたSLPI及びエラフィンタンパク質の発現。異所性妊娠の外科的処置(A及びB)及び流産の外科的処置(C)を受けている女性からの子宮脱落膜の白血球(L)及び上皮腺(G)におけるSLPIタンパク質の発現。異所性妊娠の外科的処置(D)、流産の外科的処置(E)、及び外科的妊娠中絶(F)を受けている女性の脱落膜の白血球(L)集団におけるエラフィンタンパク質の発現。上皮腺における膜性エラフィンタンパク質の発現(M)は、Dでも見られる。SLPI及びエラフィンの陰性対照は、それぞれG及びHに示される(双方とも、異所性妊娠の外科的処置を受けている女性からの子宮脱落膜)。スケール・バー=50μm。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、添付の図面を参照して詳細に記載されているであろう。
【実施例】
【0073】
実施例1
材料及び方法
組織の収集
この研究の倫理的な認可を、ロウジアン(Lothian)研究倫理委員会から得て、試料を収集する前に全患者から文書でのインフォームドコンセントを得た。外科的妊娠中絶(TOP、n=8、第1群、平均妊娠期間58.7日)、胎性喪失(embryonic missed)流産の外科的処置(n=6、第2群、平均妊娠期間57.7日)及び卵管妊娠の外科的処置(n=11、第3群、平均妊娠期間58.1日)を受けている女性(年齢18〜45歳)から、妊娠三期のうちの第1期の脱落膜化した子宮内膜を得た。卵管異所性妊娠の外科的処置を受けた如何なる女性も、血流力学的ショックを実際に示さず、診断に先立って連続血清ベータ−HCG及び超音波モニタリングを全て必要とした。脱落膜化した子宮内膜及び栄養膜は、第1群及び第2群から吸引掻爬術によって得た。脱落膜化した子宮内膜を、第3群から吸引子宮内膜生検(Pipelle(登録商標)、クランリー、ユーロサージカル社、英国)によって得た。脱落膜化した子宮内膜を、顕微鏡下で栄養膜から単離した。脱落膜化した子宮内膜を、(a)4℃にて一晩RNAlater(登録商標)(アンビオン、テキサス、米国)中に浸漬し、次いで−70℃で瞬間凍結し、(b)4℃にて一晩、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、70%エタノール中で保存し、ヘマトキシリン及びエオシン並びに免疫組織化学で染色するためにワックス包埋した。栄養膜の存在は、形態学的に、及び既報(14)のようにサイトケラチンについての免疫組織化学染色の使用により除外した。子宮内膜試料を、定期的な月経周期(28〜35日)を有し、かつ妊娠していない女性(18〜45歳)から、良性の婦人科状態についての子宮摘出により得た(15)。子宮内膜試料を室温で回収し、RPMI(ライフテクノロジーズ、米国)中で実験室に移し、以下に記載されるように子宮内膜間質細胞の単離のために処理した。
【0074】
RNAの抽出
製造元のプロトコル(キアゲン、ウエストサセックス、英国)で詳説されたように全RNAを脱落膜化した子宮内膜から抽出した。アジレント・バイオアナライザを用いて、抽出したRNAの濃度及び品質を評価した。品質管理のための全試料を標準化し、RNA完全性番号(RIN)を割り当てた。7.5の平均RIN値が得られた場合、RNAは良好な品質であるとみなした(16)。
【0075】
マイクロアレイ解析
手短には、各試料から4μgの全RNAを用いて、1サイクルcDNA合成キット(アフィメトリクス、英国)を用いて二本鎖のcDNAを生成し、次いでジーンチップ・サンプル・クリーンアップ・モジュール(アフィメトリクス、英国)によって精製した。ビオチン標識cRNAを生じるジーンチップIVT標識キット(アフィメトリクス、英国)を用いたインビトロ転写に、二本鎖cDNAを鋳型として用いた。清浄化及び分光光度分析による定量に続いて、次いで精製されたビオチン化標的cRNAを短い配列に断片化した。ハイブリダイゼーション・カクテルは、真核細胞ハイブリダイゼーション対照でスパイクされた15μgの断片化されたビオチン標識cRNAからなるものであった。その後、80μLのハイブリダイゼーション・カクテルを、試験チップとハイブリダイズさせ、cRNAの完全性をチェックし、システムの正確性を評価した。その後、ヒトHG−U133プラス2.0マイクロアレイ(アフィメトリクス、英国)を、200μLのハイブリダイゼーション・カクテルで直接的にロードし、45℃にて60rpmで回転するジーンチップ・ハイブリダイゼーション・オーブン640(アフィメトリクス、英国)に16時間入れた。ハイブリダイゼーションの後、ジーンチップ流体ステーション450(アフィメトリクス、英国)上でアレイを洗浄し、製造元のプロトコルに従ってジーンチップ・スキャナ3000(アフィメトリクス、英国)を用いて走査した。試料標識処理の品質及び一貫性並びにアレイのハイブリダイゼーションを確実にするために、全26アレイの対照情報を照合し、データ解析の前に見直したところ、全てがアフィメトリクスの推奨に一致することが判った。R統計プログラム環境へのバイオコンダクター(http://www.bioconductor.org)拡張で実施されるロバストマルチアレイ平均アルゴリズム(17)を用いて発現を計算した(18)。ロバストマルチアレイ平均(RMA)は、測定のlog2スケール上で、バックグランドを補正し、かつ変位値をノーマライズした、発現の測定基準(19)を生成する。アレイハイブリダイゼーションの性能をさらに検討するために、R統計プログラム環境へのバイオコンダクターへの拡張にて1つおきで各アレイを比較する散乱プロットを生成した。これらのプロットは、アレイ間の線形分布を裏づけ、低シグナル値から高シグナル値まで動的な連続した範囲の発現値を示した。箱髭図による視覚化によっても、データが匹敵する分布を有し、さらなる解析に十分な品質であることが確認された。データ及びプロトコルは、公にアクセスできるMIAME対応のデータベース「GPX」(www.gti.ed.ac.uk/GPX、アクセス番号GPX−000067.1)からダウンロードして利用できる。RMAによるデータのノーマライゼーションに続いて、64という任意のシグナル強度閾値の値を用いて、データをフィルターにかけ、その後の統計解析で複数の試験誤差に寄与する不変転写物を除いた。試験解析に続いて、厳密な統計的アプローチを活用して、差示的に発現された遺伝子のサブセットを同定した。手短には、t−検定による比較、次いでベンジャミニ・ホックベルグの偽発見検出法を用いた複数試験補正(20)を用いて、子宮内妊娠試料と異所性妊娠試料との間で差示的に発現された遺伝子を同定した。次いで、>2の倍率変化閾値、及び<0.05の補正p値を用いて遺伝子リストを作成した。
【0076】
定量的RT−PCR
RQ1 DNA分解酵素(プロメガ、サウサンプトン、英国)を用いてDNA分解酵素で処理した後、ランダムヘキサマー(アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州)を用いてRNAをcDNAに逆転写した。次いでTaqmanQ−RT−PCRを用いて、プロラクチン及びインスリン様増殖因子結合タンパク質−1(IGFBP1)、並びにインヒビンβAサブユニット(M13436)、インヒビンβBサブユニット(M13437)及びインヒビンαサブユニット(M13144)について、アプライドバイオシステムズが事前に検証した「assay−on−demanad」特異的プライマー及びプローブ(ユーロゲンテック、サウサンプトン、英国)を用いて遺伝子のレベルを測定し(21)、レベルをリボソーム18S内部対照(アプライドバイオシステムズ)に関連付けた。試料は全て2つ一組で扱い、適当な対照組織のcDNAに対する相対的な比較を行った。2−△△Ct法を用いて、mRNAの発現結果を18Sに対してノーマライズし、対照(TOP試料群)と比べた倍率変化として表した。
【0077】
免疫組織化学
手短には、それぞれ英国オックスフォードのオックスフォードブルークス大学のN.Groome教授及び英国エディンバラのMRCヒト生殖科学ユニットのAlan McNeilly教授によって開発され、かつ快く提供された抗体を用いて、インヒビン/アクチビンβサブユニット及びα−インヒビンの免疫局在化を行なった。制御され、かつ容易に反復可能な様式で実験を行うために、Bond−X自動免疫染色機(ビジョンバイオシステムズ、ニューキャッスル、英国)を利用した。子宮脱落膜の5ミクロンのパラフィン切片を作製し、脱ワックス(dewax)し、再水和を行い、Bond−X機に載せる前に、0.01モルの1−1クエン酸緩衝液(pH6.0)にて圧力調理抗原修復に供した。Bond−X自動機におけるこの方法は、特定のポリマーの高い対比プログラムを利用する。スライドを、ペルオキシダーゼで5分間ブロックし、供給された希釈剤で1:500に希釈された一次抗体(46A/Fβ:インヒビンβBサブユニットに対するマウスモノクローナル抗体(22))及びASMR150:α−インヒビンに対するウサギポリクローナル抗体(23))と共に2時間インキュベートし、次いで一次後試薬と共に15分間インキュベートした。抗体の特異性を確認するために、希釈剤のみと共に、又は供給された希釈剤中の一次抗体と同じ濃度に希釈された非特異的免疫グロブリンと共に、対照の切片をインキュベートした。次いでDAB検出に先立って、切片をポリマー試薬と共に15分間インキュベートして検出の感度を高めた。ヘマトキシリンで5分間、切片を対比染色した。次いでスライドを機械から取り出し、脱水し、Pertexを用いて標本にした。
【0078】
子宮内膜間質細胞の単離と培養
37℃にて2時間のコラゲナーゼ/DNA分解酵素(シグマ−アルドリッチ、米国)による消化に子宮内膜組織を供した。消化の後、間質を分散させたが、上皮構造はほとんど無傷のままであった。既報(24)のように、ヒト子宮内膜の間質細胞を、サイズを基準に分離した。既報(Irwinら、1991)のように、2%ウシ胎児血清、ゲンタマイシン、ペニシリン及びストレプトマイシンを伴ったRPMI中で2.4×105個/ウェルの密度にて子宮内膜の間質細胞を6穴の標準培養プレートに入れた。酢酸メドロキシプロゲステロン(10−6M)、エストラジオール(10−7M)及び8−ブロモcAMP(0.1mg/ml)によって24、48、72、96及び120時間、細胞を処理した。RNA抽出のために各時点で細胞を回収した。
【0079】
血清のアッセイ
標準の放射性免疫学的アッセイ(15)を用いて血清のプロゲステロン濃度を測定した。試料のSDS及び熱による予備処理と共にモノクローナル抗体46A/F(捕捉及び検出双方の抗体として)(22)の使用を組み入れるアクチビンBのELISAを用いてアクチビンBの濃度を測定した(Ludlowら、投稿準備中)。血清は希釈せずに試験し、アッセイは、19pg/mLのさらに低い検出限界を有した。
【0080】
切片の分析
子宮内膜の変化の程度に従って、婦人科を専門分科とする病理学者によって、脱落膜化した子宮内膜の試料を盲検的に分類した。Zimmermanらの分類(25)を用いて、腺上皮の分泌変化(非存在/初期、高及び枯渇(exhausted))及び間質の分化(非脱落膜化、脱落膜前、集密的脱落膜変化)をスコア付けした。集密的な間質の脱落膜化を伴った枯渇した腺性変化を持つ試料を全体として脱落膜化(+)として分類し、非存在/初期の分泌変化及び非脱落膜の間質を伴う試料を脱落膜化(−)として分類し、その他の試料を脱落膜化(+/−)として分類した。
【0081】
統計的解析(マイクロアレイの解析以外の全データについて)
データが正常に分布した場合、ボンフェローニ・ペアワイズ比較と共にANOVAによって解析した。2つの群は、t−検定によって解析した。データが正規分布しなかった場合、ダン・ペアワイズ比較と共にクラスカル・ウォリス検定を用いて3つの群を比較した。カイ2乗検定を用いて比率を比較し、スピアマン(ノンパラメトリック)又はピアソン(パラメトリック)の係数を用いて線形の相関を評価した。使用した統計的検定は、本文及び図の説明に提供するが、p<0.05レベルで有意とした。
【0082】
結果
脱落膜化した子宮内膜のマイクロアレイ解析
子宮内妊娠(n=14)と卵管妊娠(n=11)の女性からの脱落膜化した子宮内膜における遺伝子発現の比較は、669の遺伝子が差示的に発現することを明らかにした(FC>±2、p<0.05)。この解析で強調された注目に値する遺伝子の1つは、インヒビン/アクチビンβBサブユニットであった。これは、卵管異所性妊娠の女性の脱落膜化した子宮内膜で2.34の倍率低下で下方調節された。定量的RT−PCRによって、流産(p<0.01)及び妊娠中絶(p<0.01)群(図1a)と比べた場合、卵管妊娠からの脱落膜化した子宮内膜で低下した発現が確認された。
【0083】
脱落膜化した子宮内膜におけるインヒビン/アクチビンのサブユニット
細胞から分泌されるために、βBサブユニットは二量体を形成しなければならない。それはそれ自体と一緒になってアクチビンBを形成し、インヒビンαサブユニットと一緒になってインヒビンBを形成し、アクチビンβAサブユニットと一緒になってアクチビンABを形成するので、α及びβAサブユニットの発現も検討した。βAサブユニットの発現は、同じパターンに従わず(図1b)、群間に有意な差異はなかった。群間におけるインヒビンαサブユニットの発現における変化は、あまり顕著ではなかったが(図1c)、流産に比べて異所性妊娠の脱落膜化した子宮内膜で低かった(p<0.05)。
【0084】
脱落膜化した子宮内膜におけるインヒビンαとβBのサブユニットの局在
脱落膜化した子宮内膜におけるインヒビンのαとβBサブユニットをさらに検討するために、免疫組織化学を用いてそれらを局在させた。これらタンパク質双方に特異的な免疫染色は、脱落膜化した子宮内膜の腺領域及び間質領域で検出することができた(図2a〜d)。しかしながら、患者間での脱落膜間質において染色の変化があり、βBサブユニットについて特に顕著だった(図2eh)。子宮内膜があまり脱落膜化しておらず、さらに増殖性の表現型を有する場合(図2e)、染色は腺性であることが注目された。子宮内膜がさらに分泌性の表現型を有した場合(図2f)、染色は、明るい間質の関与を伴って主として腺性であった。しかしながら、十分に脱落膜化した試料では(図2g)、顕著な間質の免疫染色があった。
【0085】
脱落膜化の間のインヒビンαとβのサブユニットの発現
妊娠初期の子宮内膜の間質区画におけるβBサブユニットの局在は、脱落膜化のレベルと共に変化するという傾向があったので、ヒト子宮内膜の線維芽細胞をインビトロで試験した。インビトロで脱落膜化刺激に曝すと、時間依存様式においてインヒビン/アクチビンβサブユニットの発現が高まった(p<0.05)(図3a)。インビトロにおける間質線維芽細胞の脱落膜化の間、αサブユニットでは有意ではあるが、さほど顕著ではない増加があった(p<0.05)(図3b)ものの、インヒビンβAサブユニットの発現に関して変化はなかった(図3c)。
【0086】
異所性妊娠、流産及び生存妊娠における脱落膜の形態学
βBサブユニットの発現は間質の脱落膜化に関係すると思われ、異所性妊娠の脱落膜化した子宮内膜で低かったので、組織の正体に対して盲検化した子宮内膜病理の専門家によってヘマトキシリン及びエオシン染色切片にて、各組織試料における腺性及び間質区画の形態を評価した。子宮内妊娠と比べると、腺性区画は、より程度の低い分泌変化を示し(p<0.05)、間質区画は、脱落膜化は少なかった(p<0.05)(図4a)。さらに、子宮内膜の脱落膜化の全体的なレベルは、TOPや流産よりも異所性妊娠で低かった(p<0.05)(図4b)。形態学的な脱落膜化の全体的な程度に基づいて試料を階層化した場合(図4c)、インヒビンβBサブユニット発現との明瞭な相関もあった(p=0.0005)。
【0087】
妊娠初期の脱落膜化した子宮内膜における脱落膜化のその他のマーカーの発現
これらの検討は、異所性妊娠の子宮内膜では脱落膜化があまり進行しないことを示唆したので、脱落膜化に関与することが分かっている遺伝子発現も組織試料にて検討した。IGFBP1(図5a)の発現は、流産(p<0.01)及び妊娠中絶(p<0.05)のそれと比較した場合、異所性妊娠の脱落膜で低下していた。プロラクチン(図5b)の発現も、妊娠中絶(p<0.05)のそれと比較した場合、異所性妊娠の脱落膜で低下していた。
【0088】
血清アクチビンB濃度
インヒビン/アクチビンβBサブユニットの脱落膜での発現の変化を全身性に検出することができるかどうかを判定するために、血清のアクチビンB濃度を試験した。アクチビンBの濃度は、プロゲステロン(p<0.05)と同様に、分析した群間で異なっていた(p=0.001)(図6a)。しかしながら、アクチビンBは、血清プロゲステロン濃度(図6e)とは異なって、生存子宮内妊娠(図6d)よりも異所性妊娠の女性の血清で低かった(p<0.01)。さらに、血清アクチビンBと脱落膜化の程度との間に明瞭な相関があったが(p=0.005)、これは、プロゲステロンを分析した場合見られなかった(図6f)。
【0089】
考察
本研究は、同様の妊娠期間の卵管異所性妊娠と子宮内妊娠における脱落膜化した子宮内膜の機能に差異があることを実証する。我々は、インヒビン/アクチビンβサブユニットの発現が子宮内膜の脱落膜化の程度に関係し、卵管異所性妊娠で低下することを示した。さらに、この差異を全身的に評価することができた。血清アクチビンBは卵管異所性妊娠で低下し、血清濃度は形態学的な脱落膜化の程度と相関し、その差異は、血清プロゲステロン濃度で見られるものより顕著であった。局所で産生された増殖因子が子宮内膜の発生に主な役割を有することは明らかである(26)。実際、形質転換増殖因子−βスーパーファミリーのメンバーは、子宮内膜で豊富に発現している。インヒビン/アクチビンのα、βA及びβBのサブユニットは、月経周期の全体にわたって子宮内膜に発現し、かつ妊娠初期の脱落膜に発現することが以前示されている(27)。それらの機能は、月経後のリモデリングや組織の修復を促進することであるという感触が得られている(27)。しかしながら、それらの発現は妊娠初期で高められるので、それらは、妊娠に対する子宮内膜の応答において役割を有する可能性がある(28)。アクチビン自体が子宮内膜の機能に影響を及ぼし得ることに疑いはない。アクチビンの受容体は子宮内膜の間質細胞に存在し(29)、その発現は脱落膜化の間に高まる(30)。実際、アクチビンAによる子宮内膜の間質細胞の処理は、脱落膜化を促進し、プロラクチンのような脱落膜のマーカーの発現を促進したが(31)、ホリスタチンによる処理は脱落膜の応答を有意に遅らせた(31、32)。アクチビンAとインヒビンAは、間質マトリクスメタロプロテイナーゼの発現を差示的に調節し、このことが、着床及び胎児と母体の相互作用に関連するリモデリングにおけるアクチビンのシグナル伝達のための役割を示唆することも示されている(30、33)。脱落膜化を促進する役割を有することと同様に、アクチビンサブユニットの発現自体が脱落膜化の間に高まる(27、34)。この調節は明らかではないが、インビボでは、着床している栄養膜とのダイアログであると思われる。胚盤胞が付着する間、脱落膜内でインヒビン/アクチビンβAの発現の局在が変化することは、パラクリン調節を示唆している(35)。従って、アクチビンが子宮内膜機能のマーカーとして機能し得、子宮内妊娠で差示的に調節され得ることは驚くべきことではない。以前の報告はほとんどβAサブユニットの発現に関するものであり、脱落膜化におけるアクチビンAの鍵となる役割を示唆しているけれども、それは、本研究で差示的に発現されたβBサブユニットだった。脱落膜化した子宮内膜におけるβBの発現は以前報告されたが(27)、アクチビンBの役割、調節及び効果は未だに評価されていない。確かに、本研究では、子宮内膜βBサブユニットの発現と血清アクチビンBの双方が子宮内膜の脱落膜化の程度と高く相関する。近隣の栄養膜細胞によってそれが直接影響を受けるかどうかは分かっていない。卵管異所性妊娠では、プロゲステロンの分泌は維持されるが、栄養膜と脱落膜化された子宮内膜との直接的な物理的相互作用はない。我々は、対照的に、子宮内妊娠では、栄養膜の相互作用が子宮内膜の機能に影響するので、脱落膜マーカーは卵管異所性妊娠の診断に有用であるという仮説を立てた。以前評価されたマーカーは、異所性着床(血清クレアチンキナーゼ(15))、hCG動態のマーカーとしての黄体機能(血清プロゲステロン(36))又は双方のマーカー(血清VEGF(37))に集中していた。これらの試験は異所性妊娠の診断において特定の臨床的用途があることが証明されていない。異所性妊娠のマーカーとしてのアクチビンとインヒビンの概念は新しいものではない。初期の研究では、インヒビンAと遊離で循環するProαCインヒビンが検討され、卵管異所性妊娠を鑑別しないことが判った(11)。最近の研究は、アクチビンA自体が異所性妊娠のマーカーとして機能し得ることを示唆している(38)。血清アクチビンAは異所性妊娠で低かった(38)。異所性妊娠と黄体の双方がβBサブユニットではなくβAサブユニットを発現する(39、40)ので、アクチビンAの供給源は明らかではない。アクチビンBの供給源が脱落膜であるというのはありそうなことだと思われ、これが、脱落膜化と異所性妊娠の補助的マーカーとして機能することができるかどうかは将来の研究で評価されるべきである。血清アクチビンの低い濃度と関連した、卵管異所性妊娠の女性の脱落膜化した子宮内膜でのインヒビン/アクチビンβの低い発現の実証は、臨床的に重要である。脱落膜化におけるアクチビンBの役割と調節を取り扱って、この過程における栄養膜とプロゲステロンの役割をさらに分析すべきである。さらに、異所性妊娠の診断における脱落膜評価又はアクチビンBの測定の役割をさらに検討すべきである。我々は、子宮の脱落膜化と関連する分泌性タンパク質に着目することによって卵管妊娠のさらに可能性のある生体マーカーを発見し得ると考えている。
【0090】
参考文献
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【0130】
実施例2
材料及び方法
この研究の倫理的な認可は、ロウジアン研究倫理委員会から得た(04/S1103/20)。試料を収集する前に全患者から文書でのインフォームドコンセントを得た。外科的妊娠中絶(STOP、n=8、第1群)、流産の外科的処置(n=6、第2群)及び卵管妊娠の外科的処置(n=11、第3群)を受けている女性(年齢18〜45歳)から子宮の脱落膜を得た。脱落膜及び栄養膜は、第1群及び第2群から吸引掻爬術によって得た。脱落膜は、Pipelle(登録商標)子宮内膜生検によって第3群から得た。顕微鏡下で栄養膜から脱落膜を単離した。脱落膜生検を、RNAlater(商標)(アンビオン、テキサス、米国)中に4℃にて一晩浸漬し、次いで−70℃で瞬間凍結した。製造元のプロトコル(キアゲン、ウエストサセックス、英国)で詳説されたように全RNAを脱落膜生検から抽出した。
【0131】
RNA QC
全RNAは、アジレント2100バイオアナライザにてRNA6000ナノチップ上で確認された品質だった。非常に高い品質のRNA(RIN>7.5)調製物のみをマイクロアレイスクリーニングのために検討した。RNAの濃度は、ナノドロップ分光光度計(ナノドロップテクノロジーズ、米国)にて分光光度解析によって確認した。
【0132】
マイクロアレイ解析
手短には、各試料からの4μgの全RNAを用いて、1サイクルのcDNA合成キット(アフィメトリクス、英国)を用いて二本鎖のcDNAを生成し、次いでジーンチップ・・サンプル・クリーンアップ・モジュール(アフィメトリクス、英国)によって精製した。ビオチン標識cRNAを生じるジーンチップIVT標識キット(アフィメトリクス、英国)を用いたインビトロの転写に、二本鎖cDNAを鋳型として用いた。清浄化及び分光光度分析による定量に続いて、次いで精製されたビオチン化標的cRNAを短い配列に断片化した。ハイブリダイゼーション・カクテルは、真核細胞ハイブリダイゼーション対照でスパイクされた15μgの断片化されたビオチン標識cRNAからなるものであった。先ず、80μLのハイブリダイゼーション・カクテルを試験チップとハイブリダイゼーションさせ、cRNAの完全性をチェックし、システムの信憑性を評価した。その後、ヒトHG−U133プラス2.0マイクロアレイ(アフィメトリクス、英国)を、200μLのハイブリダイゼーション・カクテル溶液で直接的にロードし、45℃にて60rpmで回転するジーンチップ・ハイブリダイゼーション・オーブン640(アフィメトリクス、英国)に16時間入れた。ハイブリダイゼーションの後、ジーンチップ流体ステーション450(アフィメトリクス、英国)でアレイを洗浄し、製造元のプロトコルに従ってジーンチップ・スキャナ3000(アフィメトリクス、英国)を用いて走査した。
【0133】
試料標識処理の品質及び一貫性並びにアレイのハイブリダイゼーションを確実にするために、全25アレイの対照情報を照合し、データ解析の前に見直したところ、全てがアフィメトリクスの推奨に一致することが判った。
【0134】
R統計プログラム環境へのバイオコンダクター(http://www.bioconductor.org)拡張で実施されるロバストマルチアレイ平均アルゴリズム(8)を用いて発現を計算した(9)。ロバストマルチアレイ平均(RMA)は、測定のlog2スケール上で、バックグランドを補正し、かつ変位値をノーマライズした、発現の測定基準(10)を生成する。アレイハイブリダイゼーションの性能をさらに検討するために、R統計プログラム環境へのバイオコンダクターへの拡張にて1つおきで各アレイを比較する散乱プロットを生成した。これらのプロットはアレイ間の線形分布を裏づけ、低シグナル値から高シグナル値まで動的に連続した範囲の発現を示した。箱髭図による視覚化によっても、データが匹敵する分布を有し、さらなる解析に十分な品質であることが確認された(オンラインで利用可能な補充データを参照のこと)。
【0135】
データ及びプロトコルは、公にアクセスできるMIAME対応のデータベース「GPX」(www.gti.ed.ac.uk/GPX、アクセス番号GPX−000067.1)からダウンロードして利用できる。
【0136】
RMAによるデータのノーマライゼーションに続いて、64という任意のシグナル強度閾値の値を用いて、データをフィルターにかけ、その後の統計的解析で複数の試験誤差に寄与する不変転写物を除き、すなわち、試料アレイの50%(12アレイ)で64未満の強度の絶対値を示した場合に、その転写物をさらなる解析から除いた。
【0137】
試験的解析に続いて、厳密な統計的アプローチを活用して、子宮内の試料と子宮外の試料の間での発現レベルという点で有意差があった遺伝子を同定した。経験ベイズ試験の形態で推定試験をデータに適用した。このあと、ベンジャミニ・ホックベルグの偽発見検出法を用いた複数試験補正を行った(11)。次いで、>1.5の倍率変化閾値、及び<0.05の補正p値を用いて遺伝子リストを創った。
【0138】
この統計的解析の結果及び遺伝子リストの妥当性を確認するために、最大の倍率変化があった遺伝子のうち2つの定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q−RT−PCR)を行った。製造元の指示書に従ってアプライドバイオシステムズのRTキット(アプライドバイオシステムズ、チェシャー、英国)を用いてRNAを逆転写した。次いでTaqmanQ−RT−PCRを用いて、アプライドバイオシステムズが事前に検証した「assay−on−demand」20X Taqmanプライマー及びプローブ、並びに標準的な反応ミックス(RNAローディングのための内部標準としてのリボソーム18Sプライマー及びプローブを含む)を用いて遺伝子レベルを測定した。標準条件を用いてABIプリズム7900にて試料を解析した。2−△△Ct法を用いてmRNAの発現結果を18Sに対してノーマライズし、対照(STOP試料群、n=8)と比べた倍率変化として表した。次いで、一方向分散分析(ANOVA)及び最小有意差事後多重比較を用いて発現における差異が有意であるかどうかを決定した(SPSS社、シカゴ、イリノイ州)。
【0139】
標準的な免疫組織化学プロトコルも用いて、各患者群からのパラフィン包埋脱落膜における遺伝子のうちの1つについてタンパク質の発現を試験した。
【0140】
結果
試験的解析に続いて、経験ベイズ法によって向上させた一般線形モデルを用いて、子宮内(第2群及び第3群の組合せにおいてn=14)試料と子宮外(第1群、n=11)試料との間での統計的に有意な差示的発現について試験した。平均倍率変化(FC)を計算し、ベンジャミニ・ホックベルグの偽発見検出法を用いた多重試験についてp値を調整した。異所性妊娠群において1061個の遺伝子が差示的に発現される(FC>1.5、調整されたp値<0.05)ことが見出された。具体的には、2つの遺伝子が可能性のある生体マーカーとして同定された:子宮内の群と比較して子宮外の群では、システイン−リッチ分泌型タンパク質3(CRISP3)は、9.13倍増加し(p=0.005)、カルボキシペプチダーゼB1(CPB1)は、26.52倍減少した(p=0.005)。このことはRT−PCTによって確認された(図1を参照のこと)。CRISP3タンパク質の発現はまた、各患者群の脱落膜の腺及びマクロファージにおける免疫組織化学によって実証された(図2を参照のこと)。免疫組織化学のレベルでは、CRISP3の分布に差異はなかった。
【0141】
考察
子宮外着床の我々の理解を進めることと同様に、異所性妊娠の被験体において過剰発現又は過少発現される、例えば、CRISP3及びCPB1のような遺伝子産物の検出は、臨床的に非常に重要である。それは、子宮脱落膜等の試料を単に調べることによって、診断が不確定である初期妊娠不全の任意の被験体における異所性妊娠を診断する手段を臨床病理医に提供する。例えば、血液、血清、血漿及び/又は子宮脱落膜のような試料は、容易に得ることができ、例えば、子宮脱落膜の試料は、患者を全身麻酔に供することなく、子宮からの生検によって得られ得る。さらに、これは、入院や侵襲的検査を回避する可能性を患者に提供する。そのような遺伝子の同定はまた、異所性妊娠のための信頼できる血液検査を開発する可能性を提供する。これは、異所性妊娠の診断に現在必要とされている高価かつ時間がかかる検査の数を減らすであろう。
【0142】
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【0153】
実施例3
炎症の間、免疫の多数のメディエータやエフェクターが動員されて解決を助けるが、活発又は長引く応答は、結果的に組織に損傷を生じ得る。なかでも、そのような組織の損傷に関与するメディエータは、生来の免疫応答の一部として機能するプロテアーゼである(Dallegri及びOttonello 1997)。宿主の応答には、プロテアーゼの作用に対抗し、それにより宿主組織への結果的な損傷を防ぐための、例えば、抗菌物質、分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)及びエラフィンのような、多数の重要な抗プロテアーゼの産生が挙げられる(Sallenaveら 1994;Sallenave 2000;Schalkwijkら 1999)。SLPIは、好中球エラスターゼ、トリプシン及びカテプシンGを含む多数のプロテアーゼを阻害する一方で、エラフィンは、調節性好中球エラスターゼとプロテイナーゼ3に限定されるようである(Thompson及びOhlsson,1986、Wiedowら 1991、Sallenave及びRyle 1991)。
【0154】
SLPI及びエラフィンは、女性の生殖器の至る箇所で発現されている(Kingら 2000、Kingら 2003b)。ヒトの子宮内膜上皮は、周期の分泌期の間においてSLPIを発現し、子宮内膜における好中球は、月経の間におけるエラフィンの特に豊富な供給源である(Kingら 2003a)。SLPI及びエラフィンの発現はまた、子宮頚部及び脱落膜化した子宮内膜において実証されている(Helmigら 1995、Pfundtら 1996、Kingら 2000、Kingら 2003a)。月経周期の間のSLPI及びエラフィンの発現は、組織のリモデリング及び「創傷」治癒における役割を示し得る(van Bergenら 1996;Wingensら 1998;Ashcroftら 2000;Zhuら 2002;Angelovら 2004)。他の女性の生殖器に共通して、卵管の形態は、エストロゲン及びプロゲステロンの影響下で周期的な変化を受け(SuIzら 1998)、SLPI及びエラフィンの発現は、卵管から子宮内膜にかけて同様の一時的な発現パターンを有することが示されている(Dalgettyら 2006)。
【0155】
しかしながら、卵管着床の背景で起きるSLPI及びエラフィンの発現の変化は、実証されていない。2つの着床部位の解剖学的な差異によって卵管部位と子宮内部位を直接比較するのは難しい。しかしながら、子宮内妊娠への子宮内膜の応答に類似して、卵管での妊娠に伴って、普通は卵管ではなく子宮腔で脱落膜反応がある(Stock 1991)。子宮内膜の上皮及び間質の脱落膜化は、着床が上手く行く鍵となる免疫学的要素である(Christianら 2002)。子宮の脱落膜は、生来の免疫の白血球、例えば、CD56+ナチュラルキラー(uNK)細胞、マクロファージ及び肥満細胞を含む(Bulmerら 1988;King及びLoke 1991;Hunt 1994;Clark 1995;Marxら 1999)。従って、我々は、進行中の子宮内妊娠(外科的妊娠中絶を受けている女性)、不全の子宮内妊娠(流産の女性)及び卵管妊娠の女性の子宮脱落膜におけるSLPI及びエラフィンの発現を比較した。定量的RT−PCR及び免疫組織化学を用いて、それぞれmRNA及びタンパク質の発現を実証した。
【0156】
材料及び方法
組織の収集
この研究の倫理的な認可は、ロウジアン研究倫理委員会から得た(04/S1103/20)。試料を収集する前に全患者から文書でのインフォームドコンセントを得た。外科的妊娠中絶(STOP、n=7、第1群)、胎性喪失流産の外科的処置(n=6、第2群)及び卵管妊娠の外科的処置(n=10、第3群)を受けている女性(年齢18〜45歳)から子宮脱落膜及び血清の試料を得た。卵管異所性妊娠の外科的処置を受けた女性で血流力学ショックを実際に示したものはなく、診断に先立って、全て連続血清ベータ−HCG及び超音波モニタリングを必要とした。脱落膜及び栄養膜は、第1群及び第2群から吸引掻爬術によって得た。脱落膜は、Pipelle(登録商標)子宮内膜生検によって第3群から得た。顕微鏡下で栄養膜から脱落膜を単離した。脱落膜生検を、(a)RNAlater(登録商標)(アンビオン、テキサス、米国)中に4℃にて一晩浸漬し、次いで−70℃で瞬間凍結し、(b)10%の中性緩衝ホルマリンで4℃にて一晩固定し、70%エタノール中で保存し、免疫組織化学用にワックス包埋した。血清試料は、プロゲステロンのレベルの分析用に保存した。
【0157】
PCRによるクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)の検出
製造元のプロトコル(キアゲン、ウエストサセックス、英国)で詳説されたように脱落膜生検からDNAを抽出した。PCRプロトコルは、社内のプラスミドベースの方法を用いた。
【0158】
定量的リアルタイムPCR
製造元のプロトコル(キアゲン、ウエストサセックス、英国)で詳説されたように全RNAを脱落膜生検から抽出した。アジレント・バイオアナライザを用いて、抽出したRNAの濃度及び品質を評価した。品質管理のための全試料を標準化し、RNA完全性番号(RIN)を割り当てた。7.5の平均RIN値が得られた場合、RNAは、良好な品質であるとみなした(Schroederら 2006)。定量的リアルタイムPCRによってSLPI及びエラフィンのレベルを決定した。この技術は、存在するRNAの量について対照とするリボゾーム18Sのレベルに対する、存在するSLPI及びエラフィンのmRNAの量に関する。RT及びPCRの詳細は、ほかに完全に詳説されている(Kingら 2000)。使用したエラフィンとSLPIのプライマーとプローブは、PRIMERエクスプレス・ソフトウエア(PEバイオシステムズ、フォスターシティ、米国)を用いて我々の研究室で以前設計された(Kingら 2000及び2003)。エラフィンのプライマー及びプローブは、以下のとおりであった:正方向プライマー5’−TGGCTCCTGCCCCATTATC−3’、逆方向プライマー5’−CAGTATCTTTCAAGCAGCGGTTAG−3’、プローブ5’−ATCCGGTGCGCCATGTTGAATCC−3’。SLPIのプライマー及びプローブは、以下のとおりであった:正方向プライマー5’−GCATCAAATGCCTGGATCCT−3’、逆方向プライマー5’−GCATCAAACATTGGCCATAAGTC−3’、プローブ5’−TGACACCCCAAACCCAACAAGGAGG−3’。アッセイ内のPCR測定の変動は、6回の反復物から計算した。逆転写工程の変動性は、1つのRNA試料を8回逆転写することによって決定した。次いで8個のcDNA試料を1回のPCRの実行に含め、(SDに対する)変動性を計算した。ゲノムDNAの混入の可能性は、DNA分解酵素処理によって及びRNA試料(逆転写していない)におけるβ−アクチンのレベルの測定によって除外した。各臨床群からの試料の相対平均値を記録し、ANOVAによって、次いでチューキー事後(Tukey posthoc)分析によって解析した。
【0159】
エラフィンの免疫組織化学
キシレンにて組織切片を脱ワックスし、漸減勾配のアルコールによって再水和した。室温にて10分間、蒸留水中の2%過酸化水素(シグマアルドリッチ、プール、英国)によって非特異的な内因性のペルオキシダーゼ活性をブロックした。希釈した正常ヤギ血清(リン酸緩衝生理食塩水中20%v/v)(ダイアグノスティックス・スコットランド、エディンバラ、英国)を全組織切片に室温にて20分間適用した。交互に5分間、リン酸緩衝生理食塩水にて洗浄して、アビジン−ビオチンとタンパク質のブロックをそれぞれ室温にて20分間、組織切片にさらに適用した。次いで、抗体希釈剤(ダコ、イーリー、英国)で1:700に希釈したウサギ抗エラフィンポリクローナル抗体(Sallenaveら 1994)と共に4℃にて一晩、切片をインキュベートした。陰性対照の切片では、適当な同等のIg濃度のウサギIgG(RIgG:ベクターラボラトリーズ、ピーターバラ、英国)によって一次抗体を置き換えた。ビオチン化ヤギ抗ウサギ(ベクター)と共に切片をインキュベートし、次いでアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ検出系(ベクター;双方共室温にて30分間インキュベートした)に供した。ペルオキシダーゼの基質であるジアミノベンジジンを用いて陽性の免疫染色を同定した。ハリスヘマトキシリン(パイオニア・リサーチ・ケミカルズ、コールチェスター、英国)によって切片を対比染色し、漸増勾配のアルコールで脱水し、キシレンからPertexにて標本にした(セル−パス、ヘメル・ヘムステッド、英国)。
【0160】
SLPIの免疫組織化学
使用した方法は、以下の例外を伴って、エラフィンの免疫組織化学プロトコルと同一であった。非免疫ブロックは、希釈したウマ血清(ベクター)によって室温にて20分間行った。一次抗体は、抗体希釈剤(ダコ)で1:20に希釈したマウス抗SLPI(ハイカルト・バイオテクノロジー、ウーデン、オランダ)であった。陰性対照は、等モル濃度のマウスIgG(MIgG)と共にインキュベートし、二次抗体は、ビオチン化ウマ抗マウスIg(ベクター)であった。
【0161】
結果
血清プロゲステロンのレベル
各患者について血清プロゲステロンのレベルを分析した。クラスカル・ウォリス、次いでダン事後(Dunn’s posthoc)分析を用いて各群間で実証された統計的な有意差はなかった(表1を参照のこと)。
【0162】
【表1】

【0163】
栄養膜からの脱落膜の分離
サイトケラチンについてのヘマトキシリンとエオシンによる染色及び免疫組織化学は、生理食塩水中における顕微鏡下での分離による栄養膜からの脱落膜の明瞭な単離を実証した。試料の炎症の状態も判定した−壊死の存在、及びリンパ球と多形性浸潤について各試料を試験した。これらの特徴は様々な程度で存在したが、明白な統計的差異はなかった(データは示さず)。染色された組織切片は全て、熟練した組織病理学者が試験した。
【0164】
クラミジアの血清学
クラミジア・トラコマティス感染について脱落膜生検全てをスクリーニングしたところ、陰性であることが分かった。
【0165】
子宮内及び子宮外の妊娠に由来する子宮脱落膜におけるSLPI及びエラフィンのmRNAの発現
各臨床群の子宮脱落膜においてSLPI及びエラフィンのmRNAを検出した。SLPIのmRNAの相対的な発現は、STOP(4.8 +/− 1.45)及び流産の外科的処置(5.09 +/− 2.22)を受けている女性の脱落膜と比べると卵管妊娠(12.37 +/− 2.66)の女性の子宮脱落膜の方が高かった(表1、図9A)。記録されたデータのANOVA解析によって、卵管妊娠群と流産群との間の統計的な有意差(全体でp<0.0185、チューキー事後分析p<0.05)が実証された。エラフィンのmRNAの発現も流産(9.00 +/− 2.53)及び外科的妊娠中絶(4.6 +/− 1.38)を受けている女性と比べると卵管妊娠(73.57 +/− 35.29)の女性の脱落膜の方が高かった(表1、図9B)。しかしながら、この所見は、ANOVA又は正常のデータ又は記録されたデータのノンパラメトリック統計的解析を用いても有意ではなかった。これは、卵管妊娠群の発現の高い変動性に起因した。エラフィンについてのその相対的なmRNAの値が、その他の試料の平均値の標準偏差の2倍より大きかったので、2つの試料(1つは、STOPを受けている患者由来、及び1つは、妊娠三期のうちの第1期の流産の患者由来)を解析から除外した。
【0166】
子宮内及び子宮外の妊娠に由来する子宮脱落膜におけるエラフィン及びSLPIのタンパク質の免疫組織化学的な局在
免疫組織化学によって子宮脱落膜中のエラフィン及びSLPIのタンパク質の発現及び分布を実証した(図10A〜F)。臨床群のいずれにおいてもエラフィン及びSLPIのタンパク質の発現パターンに明白な差異はなかった。SLPIタンパク質の発現は、上皮(図10A及び図10Bを参照のこと)及び脱落膜の白血球(図10Cを参照のこと)で実証された。SLPIタンパク質の発現は上皮腺の細胞質で特に強かった(図10Bを参照のこと)。エラフィンタンパク質の発現は脱落膜の白血球集団に限定された(図10E及び図10Fを参照のこと)。しかしながら、場合によっては、上皮腺における膜性エラフィンタンパク質の発現の証拠があった(図10D)。エラフィン及びSLPIの免疫発現に関する陰性対照は、陽性染色の証拠を示さなかった(それぞれ図10G及び図10H)。染色された組織切片全てにて、熟練した病理学者によって定性的分析が行われた。乏しい再現性と、免疫組織化学のスコア化についての観察者間の合意のために定量的分析は行わなかった(Taylor 1994)。
【0167】
考察
我々の知る限り、我々は、子宮内妊娠のものと比べた、卵管妊娠の女性から集めた子宮脱落膜における天然の抗菌ペプチド(SLPI及びエラフィン)の遺伝子発現の新規の差異を報告する。この研究はまた、SLPIのmRNAの発現が不全の子宮内妊娠(流産)と比べて卵管妊娠の女性の子宮脱落膜で有意に高い(p<0.05)ことを実証する。以前の研究では、特に白血球集団に着目して子宮脱落膜の細胞性組成のみを比較し、子宮外妊娠と子宮内妊娠との間に明白な区別を見出さなかった(Bulmerら 1987;Stewart−Akersら 1997)。
【0168】
卵管妊娠群と子宮内妊娠群との間の脱落膜の最も明白な差異は栄養膜の非存在である。我々の知る限り、栄養膜のシグナルによってSLPI及びエラフィンの発現が調節されることを示唆する公表されたデータはない。そうは言うものの、機能的ゲノミクスのアプローチを用いた最近のインビトロの研究では、炎症誘発性サイトカイン及び細胞の有意な誘導を起こすことによって、栄養膜からのコンディショナル培地が脱落膜の局所免疫の環境を変化させ、胚の着床を促進することが示された(Hessら 2007)。このことは、我々の研究で認められた変化について、興味深い潜在的メカニズムを提供する。
【0169】
あるいは、子宮の環境が本当に卵管の環境を反映するのであれば、子宮脱落膜におけるSLPIの異常な発現は、単に子宮外着床の結末であるのかもしれない。卵管では、正常な卵管上皮が上行性の病原体を認識し、かつ応答する能力を有する一方で、上皮バリアを破壊し得る不要な炎症状態を同時に回避することが必須である。外来の病原体は、例えば、膜性Toll様受容体(TLR)のような、卵管細胞に存在するパターン認識受容体によって認識される(Darvilleら 2003;Pioliら 2004)。結合は、シグナル伝達のカスケードを開始させ、NF−κBの活性化並びにそれに続く炎症誘発性及び免疫調節性のサイトカイン、ケモカイン及び同時刺激性分子(例えば、IL−1、TNF)の産生をもたらす(Bowieら 2000)。NF−κBは、これらの炎症性分子を上方調節することを介して間接的にSLPIの発現を高めるのかもしれない(Bingleら 2001;Kingら 2002)。卵管着床部位の周辺には急性炎症の証拠がないことがしばしばある(Kutluayら 1994)。異所性妊娠では、胚の着床の間のSLPIの卵管での発現は、プロテアーゼの作用を阻害することによって、炎症応答及びその後の初期の卵管損傷を軽減するのかもしれない。SLPIは、肺気腫及び肺線維症のモデルで組織の損傷を軽減することが示されており、研究によって、ヘリコバクター・ピロリを持つ患者の胃粘膜におけるSLPIのレベルの低下が胃炎を誘発することが示された(Hritzら 2006;Mitsuhashiら 1996;Mulliganetら 1993;Rudolphusら 1993;Wexら 2004a;Wexら 2004b;Wexら 2006)。異所性着床の事象におけるSLPIレベルの上昇が、急性炎症の所見を欠くことを説明するために役立つのかもしれない。
【0170】
しかしながら、SLPIの異常な発現は、卵管妊娠の結末ではなく、卵管妊娠の素因であり得る可能性がある。英国で最も一般的な性的に伝染する感染細菌である、クラミジア・トラコマティスは、卵管妊娠の主要なリスク因子であることが分かっている(Farquhar 2005、Cassellら 2006)。それでもやはり、クラミジア感染が卵管損傷の主な原因の1つであることが示唆されている(Odlandら 1993)が、クラミジア感染から卵管妊娠をもたらす病原性事象は不明である。インビトロの研究によって、クラミジアが子宮頚部上皮及び栄養膜にてSLPIの発現を誘導することが実証された(Wheelhouseら、投稿準備中)。クラミジアが上記のシグナル伝達カスケードを経由してNF−κBを介して作用すること、並びに持続又は反復した感染が子宮及び卵管におけるSLPIの異常な発現を引き起こし、卵管着床への感受性をもたらすことが可能性としてある。しかしながら、我々の研究で試験した検体はいずれもクラミジア感染では陽性ではなかった。
【0171】
子宮内妊娠と比べて異所性妊娠の女性でSLPIのmRNA発現パターンが変化していることを実証したことは、胚の着床についての我々の現在の知識にさらに寄与する。免疫組織化学によってエラフィン及びSLPIのタンパク質の発現の分布パターンには明白な差異がないことが実証されたが、我々は、この技術を用いて分泌型タンパク質を正確に測定する困難さを認め、さらなる定量的なタンパク質の分析及び機能的な研究が必要であることを承知している。
【0172】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現及び/又はアクチビンBのレベルを同定する工程とを含み、
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現及び/又はアクチビンBの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項2】
試料中のCRISP−3のレベルを同定する工程をさらに含み、CRISP−3の該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料中のCPB1のレベルを同定する工程をさらに含み、CPB1の該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中のCRISP−3のレベルを同定する工程とを含み、
CRISP−3の該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項5】
試料中のCPB1のレベルを同定する工程をさらに含み、CPB1の該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中のCPB1のレベルを同定する工程とを含み、
CPB1の該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項7】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中のインヒビンαのレベルを同定する工程とを含み、
インヒビンαの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項8】
試料中のインヒビンαのレベルを同定する工程をさらに含み、インヒビンαの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項1〜6記載の方法。
【請求項9】
参照試料又は対照試料と比べた、試料中のアクチビンの量における約1%、2%、5%、10%、20%、30%〜100%の低下が、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中の分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)のレベルを同定する工程とを含み、
SLPIの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項11】
試料中のSLPIのレベルを同定する工程をさらに含み、SLPIの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項1〜9記載の方法。
【請求項12】
参照試料又は対照試料と比べた、試料中に存在するSLPIのレベルにおける約1、2、3、4、5、10、20、30又は40倍の上昇が、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項10及び11記載の方法。
【請求項13】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中のエラフィンのレベルを同定する工程とを含み、
エラフィンの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項14】
試料中のエラフィンのレベルを同定する工程をさらに含み、エラフィンの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項1〜12記載の方法。
【請求項15】
参照試料又は対照試料と比べた、試料中に存在するエラフィンのレベルにおける約1、2、3、4、5、10、20、30又は40倍の上昇が、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項13及び14記載の方法。
【請求項16】
異所性妊娠を同定する方法であって、該方法が
(a)被験体由来の試料を提供する工程と、
(b)該試料中のプロラクチンのレベルを同定する工程とを含み、
プロラクチンの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、方法。
【請求項17】
試料中のプロラクチンのレベルを同定する工程をさらに含み、プロラクチンの該レベルが、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項1〜15記載の方法。
【請求項18】
参照試料又は対照試料と比べた、試料中のプロラクチンの量における約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、80又は100%の低下が、異所性妊娠に関連付けられる、又は異所性妊娠の指標である、請求項15及び16記載の方法。
【請求項19】
被験体によって提供される試料が、全血、血漿、血清、唾液、汗、尿、及び組織又は分泌物の生検/小片/交換物/洗浄物からなる群より選択される1以上の試料を含む、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項20】
試料が子宮脱落膜を含む、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項21】
異所性妊娠が、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体に由来する試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現及び/又はアクチビンBのレベルと比較した、試料中のインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現及び/又はアクチビンBのレベルの低下によって同定される、請求項1〜3、8、9、11、12、14及び15記載の方法。
【請求項22】
異所性妊娠が、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体に由来する試料中に存在するCRISP−3のレベルと比較した、試料中のCRISP−3のレベルの上昇によって同定される、請求項2〜5、8、9、11、12、14及び15記載の方法。
【請求項23】
異所性妊娠が、妊娠していない被験体又は正常な子宮内妊娠の被験体に由来する試料中に存在するCPB1のレベルと比較した、試料中のCPB1のレベルの上昇によって同定される、請求項3、5又は6、8、9、11、12、14及び15記載の方法。
【請求項24】
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンを結合し得る剤を利用する技術によって、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンのレベルが同定される、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項25】
インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンを結合し得る剤を利用する技術が免疫学的技術である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
免疫学的技術が、ELISA、免疫組織化学、ウエスタンブロット及びドットブロットからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用する技術によって、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンのレベルが同定される、請求項1〜23記載の方法。
【請求項28】
ノザンブロット及び/又はサザンブロットによって、iインヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンのレベルが同定される、請求項1〜23記載の方法。
【請求項29】
マイクロアレイ解析によって、インヒビン/アクチビンβサブユニット遺伝子発現、アクチビンB、CRISP−3、CPB1、インヒビンα、SLPI、エラフィン及び/又はプロラクチンのレベルが同定される、請求項1〜23記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【公表番号】特表2010−531991(P2010−531991A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514121(P2010−514121)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002282
【国際公開番号】WO2009/004340
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(505066349)ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・エディンバラ (6)
【Fターム(参考)】