説明

異方性光拡散フィルム用組成物および異方性光拡散フィルム

【課題】光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムを得ることができる異方性光拡散フィルム用組成物およびそれを光硬化してなる異方性光拡散フィルムを提供する。
【解決手段】(A)成分としての一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含む異方性光拡散フィルム用組成物等であって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性光拡散フィルム用組成物および異方性光拡散フィルムに関する。
特に、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムが得られる異方性光拡散フィルム用組成物、およびそれを光硬化してなる異方性光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置においては、装置内部に設けられた光源(内部光源)から出射された光を利用して、所定画像を認識することが可能である。
しかしながら、近年、携帯電話や車載用テレビ等の普及により、液晶表示画面を室外で見る機会が増加しており、それにともない、内部光源からの光強度が外光に負けてしまい、所定画面を視認しにくくなるという問題が生じている。
また、携帯電話等のモバイル用途においては、液晶表示装置の内部光源による消費電力が、全消費電力に対して大きな割合を占めるため、内部光源を多用した場合、バッテリーの持続時間が短くなってしまうという問題が生じている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決すべく、光源の一部として外光を利用する反射型液晶表示装置が開発されている。
かかる反射型液晶表示装置であれば、光源の一部として外光を利用することから、外光が強い程、鮮明な画像を認識することができるとともに、内部光源の電力消費についても、効果的に抑えることができる。
【0004】
また、このような反射型液晶表示装置において、外光を効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その外光を光源の一部として有効に利用すべく、効率的に光拡散するための異方性光拡散フィルムを備えることが提案されている(例えば、特許文献1)。
より具体的に説明すると、特許文献1には、図10(a)〜(b)に示すように、上基板1103と下基板1107との間に液晶層1105を挟んでなる液晶セルと、下基板1107の側に設けられた光反射板1110と、液晶層1105と光反射板1110との間に設けられた光制御板(異方性光拡散フィルム)1108とを有した液晶装置(1112)が開示されている。
そして、所定角度で入射する光を選択的に散乱させるとともに所定角度以外の角度で入射する光を透過させるための光制御板1108が設けてあり、かかる光制御板1108は、所定角度で入射する光を選択的に散乱する方向を光制御板1108の表面に投影した散乱軸方向1121が、液晶セル面内でほぼ6時方向の方角となるように液晶セルに配置されている。
【0005】
また、反射型液晶表示装置に使用される異方性光拡散フィルムとしては、様々な態様が知られているが、特に、フィルム面方向に、細長い板状の高屈折率領域と、細長い板状の低屈折率領域とを、交互に平行配置することにより、フィルム内に、光方向を制御したり、光分散性を調節したりすることができる、ルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムが広く使用されている(例えば、特許文献2〜4)。
【0006】
すなわち、特許文献2には、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を複数種含む膜状組成物に特定方向から紫外線を照射して、該組成物を硬化させて得られ、特定角度範囲の入射光のみを選択的に散乱する光制御膜(異方性光拡散フィルム)において、該組成物に含まれる少なくとも1種の化合物が、複数の芳香環と1つの重合性炭素−炭素二重結合とを分子内に有する化合物であることを特徴とする光制御膜が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有するフルオレン系化合物(A)、該フルオレン系化合物(A)と屈折率が異なるカチオン重合性化合物(B)、および光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする光硬化性組成物およびそれを硬化させてなる光制御膜が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、少なくとも、(A)一般式(7)で表わされるビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、(B)構造単位中にエチレン性の不飽和結合を少なくとも1個以上含むラジカル重合性を有する化合物と、(D)化学放射線によってラジカル種を発生する光重合開始剤と、(E)熱によってカチオン種を発生する熱重合開始剤からなる異方性光拡散フィルム用組成物およびそれを用いて製造された異方性光拡散フィルムが開示されている。より具体的には、常温において、(B)ラジカル重合性を有する化合物の屈折率が(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいは臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂および(C)分子内に少なくとも一つのカチオン重合性基を有した化合物よりも低いことを特徴とする異方性光拡散フィルム用組成物およびそれを用いて製造された異方性光拡散フィルムが開示されている。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(7)中、Rは水素原子あるいは臭素原子を示しており、繰り返し数pは自然数を示している。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許3480260号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−350290号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2008−239757号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特許3829601号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された異方性光拡散フィルムは、光の透過と拡散における入射角度依存性が乏しいばかりか、光拡散入射角度領域も狭いために、反射型液晶表示装置において、外光を効率的に利用することが困難であった。
また、複数の異方性光拡散フィルムを積層し、光拡散入射角度領域の幅を広げる試みもなされているものの、画像の鮮明度が低下したり、虹彩色(モアレ現象)が現れたり、更には、経済的に不利であるという問題が見られた。
【0013】
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、特定の構造を有するビフェニル化合物と、重量平均分子量が所定の範囲内の値である重合性化合物と、を所定の割合で配合した後、光硬化することにより、良好な入射角度依存性を有する異方性光拡散フィルムを得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムが得られる異方性光拡散フィルム用組成物、およびそれを光硬化してなる異方性光拡散フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、(A)成分としての下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含む異方性光拡散フィルム用組成物であって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする異方性光拡散フィルム用組成物が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0017】
【化3】

【0018】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0019】
すなわち、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むとともに、(B)成分の重量平均分子量を所定の範囲内の値としていることから、それぞれの成分の重合速度(例えば、光ラジカル重合速度)に所定の差を生じさせ、(A)成分と、(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、両成分同士が均一に共重合することを抑制し、両成分同士の共重合性が低下するものと推定される。
よって、光硬化させた際に、(A)成分の硬化物および(B)成分の硬化物が交互に延在配置され、フィルム面方向に、細長い板状の高屈折率領域と、細長い板状の低屈折率領域とが、交互に平行配置されてなるルーバー構造を効率よく形成することができる。
したがって、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物であれば、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムを得ることができる。
なお、本発明において「フィルム面方向」とは、膜厚方向をz軸とした場合におけるx−y平面方向を意味するものとする。
また、本発明において、「光拡散入射角度領域」とは、異方性光拡散フィルムに対して、点光源からの入射光の角度を変化させた場合に、拡散光を出光するのに対応する入射光の角度範囲を意味する。かかる光拡散入射角度領域の詳細については、後述する。
また、「良好な入射角度依存性」とは、入射光の光拡散が生じるフィルムに対する入射角度領域(光拡散入射角度領域)と、光拡散が生じないその他の入射角度領域との間の区別が、明確に制御されていることを意味する。
さらに、本発明における「異方性」の意味についても、後述する。
【0020】
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を構成するにあたり、一般式(1)において、R2〜R9のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが好ましい。
このように構成することにより、光硬化させる前の段階において、(A)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止できる。これにより、光硬化の段階において、(A)成分および(B)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができる。
【0021】
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を構成するにあたり、(A)成分の重量平均分子量を200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、両成分の共重合性をより効果的に低下させ、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができる。
【0022】
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を構成するにあたり、(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができる。
なお、ここでいう(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分の屈折率を意味する。
【0023】
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を構成するにあたり、(B)成分が、ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このように構成することにより、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができる。
【0024】
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を構成するにあたり、(B)成分の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができる。
なお、ここでいう(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(B)成分の屈折率を意味する。
【0025】
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を構成するにあたり、上述した(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.01以上の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、光の透過と拡散において、より良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域がさらに広い異方性光拡散フィルムを得ることができる。
なお、ここでいう(A)成分および(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分および(B)成分の屈折率を意味する。
【0026】
また、本発明の(C)成分として、光重合開始剤を含むとともに、その含有量を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量%)に対し、0.2〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、異方性光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に所定のルーバー構造を形成することができる。
【0027】
また、本発明の別の態様は、異方性光拡散フィルム用組成物に対し活性エネルギー線を照射してなる異方性光拡散フィルムであって、異方性光拡散フィルム用組成物が、(A)成分としての下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含むとともに、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする異方性光拡散フィルムである。
【0028】
【化4】

【0029】
(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0030】
【化5】

【0031】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0032】
すなわち、本発明の異方性光拡散フィルムであれば、所定の異方性光拡散フィルム用組成物を光硬化してなることから、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムとすることができる。
【0033】
また、本発明の異方性光拡散フィルムを構成するにあたり、膜厚を100〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、異方性光拡散フィルムを積層することなく、単層のままで反射型液晶表示装置等に適用した場合であっても、効率的に外光を光源として利用することができ、かつ、表示される画像の鮮明度が低下したり、虹彩色が現れたりするといった問題の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1(a)〜(b)は、異方性光拡散フィルムにおけるルーバー構造の概略を説明するために供する図である。
【図2】図2は、異方性光拡散フィルムにおける入射角度依存性および異方性を説明するために供する図である。
【図3】図3(a)〜(b)は、異方性光拡散フィルムにおける入射角度依存性を説明するために供する別の図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、入射角および拡散光の開き角度を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、異方性光拡散フィルムの製造方法を説明するために供する概念図である。
【図6】図6(a)〜(b)は、光硬化工程を説明するために供する図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、本発明の異方性光拡散フィルムにおけるルーバー構造の態様を説明するために供する図である。
【図8】図8は、反射型液晶表示装置における本発明の異方性光拡散フィルムの適用例を説明するために供する図である。
【図9】図9は、実施例1、3および4の異方性光拡散フィルムに対する入射角と、拡散光の開き角度との関係を示す図である。
【図10】図10(a)〜(b)は、従来の異方性光拡散フィルムを用いた反射型液晶表示装置を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、(A)成分としての一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含む異方性光拡散フィルム用組成物であって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする異方性光拡散フィルム用組成物である。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0036】
1.異方性光拡散フィルムの基本原理
最初に、図面を用いて、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を光硬化させて得られる異方性光拡散フィルム(以下、単に異方性光拡散フィルムと称する。)の基本原理について説明する。
まず、図1(a)には、異方性光拡散フィルム10の上面図(平面図)が示してあり、図1(b)には、図1(a)に示す異方性光拡散フィルム10を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向から眺めた場合の異方性光拡散フィルム10の断面図が示してある。
かかる図1(a)の平面図に示すように、異方性光拡散フィルム10は、フィルム面方向において、(A)成分に由来した相対的に屈折率が高いライン状の板状領域12と、(B)成分に由来した相対的に屈折率の低いライン状の板状領域14と、が交互に平行配置されたルーバー構造13を備えている。
また、図1(b)の断面図に示すように、(A)成分に由来した高屈折率の板状領域12と、(B)成分に由来した低屈折率の板状領域14は、それぞれ所定厚さを有しており、異方性光拡散フィルム10の垂直方向においても、交互に平行配置された状態を保持している。
【0037】
これにより、図2に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が異方性光拡散フィルム10によって拡散されることになると推定される。
すなわち、図1(b)に示すように、異方性光拡散フィルム10に対する入射光の入射角が、ルーバー構造13の境界面13´に対し、実質的に平行に近い所定の範囲内の角度、すなわち、光拡散入射角度領域内の角度である場合には、入射光(52、54)は、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12内を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が異方性光拡散フィルム10によって拡散されることになると推定される(52´、54´)。
なお、光拡散入射角度領域は、異方性光拡散フィルムにおけるルーバー構造の屈折率差や傾斜角等によって、その異方性光拡散フィルムごとに決定される角度領域である。
また、ルーバー構造内の高屈折率の板状領域12内における入射光の方向変化は、高屈折率の板状領域12内の屈折率勾配により、図1に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型の場合のほか、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
一方、異方性光拡散フィルム10に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、入射光56は、異方性光拡散フィルム10によって拡散されることなく、そのまま透過するものと推定される(56´)。
以上の機構により、ルーバー構造(12、14)を備えた異方性光拡散フィルム10は、例えば、図2に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
また、図2に示すように、ルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムは、入射光の入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、その入射角が異なる場合であっても、出光面側においてほぼ同様の光拡散をさせることができる。
したがって、ルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムは、光を所定箇所に集中させる集光作用も有すると言うことができる。
なお、本発明において、「異方性」とは、例えば、図2における拡散された光(52´、54´)のように、光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって異なってくる性質を意味する。
より具体的には、本発明の異方性光拡散フィルム10の場合、主に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面内において、フィルム10の面内方向に沿って延在するルーバー構造の方向とは垂直の方向に光が拡散され、拡散光の広がりの形状は略楕円状になる(52´、54´)。
【0038】
また、図3(a)を用いて、異方性光拡散フィルムに対する入射光の入射角と、異方性光拡散フィルムによって拡散された拡散光の開き角度との関係を説明する。
すなわち、図3(a)には、横軸に異方性光拡散フィルムに対する入射光の入射角(°)を採り、縦軸に異方性光拡散フィルムによって拡散された拡散光の開き角度(°)を採ってなる特性曲線が示してある。
なお、図4(a)〜(c)に示すように、入射角θ1とは、異方性光拡散フィルム10に対して垂直に入射する角度を0°とした場合の角度(°)を意味する。
より具体的には、上述したように、異方性光拡散に寄与する入射光の成分は、主にフィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分であることから、本発明において入射光の「入射角θ1」と言った場合、フィルム面方向に延びるルーバー構造の向きに垂直な成分の入射角を意味するものとする。また、このとき、入射角θ1は、異方性光拡散フィルムの入射側表面の法線に対する角度を0°とした場合の角度(°)を意味するものとする。
また、拡散光の開き角度θ2とは、文字通り拡散光の開き角度(°)を意味する。
また、拡散光の開き角度が大きい程、そのときの入射角にて入射した光が異方性光拡散フィルムによって有効に拡散したことを意味する。
逆に、拡散光の開き角度が小さい程、そのときの入射角にて入射した光が異方性光拡散フィルムをそのまま透過し、拡散しなかったことを意味する。
かかる拡散光の開き角度の具体的な測定方法については、実施例において記載する。
【0039】
かかる特性曲線から理解されるように、異方性光拡散フィルムであれば、入射角の違いによって、光の透過と拡散の度合いが大きく異なり、光拡散入射角度領域と、それ以外の入射角度領域とを、明確に分離することができる。
一方、入射角度依存性を有さないフィルムの場合、図3(b)に示すように、入射角の変化が光の透過と拡散の度合いに対して明確な影響を与えることがなく、光拡散入射角度領域を認定することができない。
なお、本発明においては、図3(a)に示すように、光拡散入射角度領域と、それ以外の入射角度領域との差が明確であり、かつ、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルム、およびそれを得ることができる異方性光拡散フィルム用組成物を得ることを目的としている。
【0040】
2.(A)成分:ビフェニル化合物
(1)種類
本発明の異方性光拡散フィルム用組成物は、(A)成分として、下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を含むことを特徴とする。
【0041】
【化6】

【0042】
(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0043】
【化7】

【0044】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0045】
この理由は、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むことにより、(A)成分の重合速度を、(B)成分の重合速度よりも速くして、これらの成分間における重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができると推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A)成分に由来した板状領域および(B)成分に由来した板状領域が交互に延在した、所謂、ルーバー構造を効率よく形成することができる。
また、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むことにより、(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させているものと推定され、ルーバー構造をさらに効率よく形成することができる。
さらに、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むことにより、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むことにより、後述する(B)成分の特性と相まって、屈折率の異なる板状領域が交互に延在したルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを効率的に得ることができる。
よって、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムを得ることができる。
【0046】
また、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭素数が4を超えた値となると、(A)成分の重合速度が低下したり、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率が低くなり過ぎたりして、異方性光拡散フィルムにおける所定のルーバー構造を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるR1〜R10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜3の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
また、一般式(1)におけるR1〜R10の中で選択される置換基が、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子以外の置換基、すなわち、ハロゲンを含まない置換基であることが好ましい。
この理由は、異方性光拡散フィルムを焼却等する際に、ダイオキシンが発生することを防止して、環境保護の観点から好ましいためである。
なお、従来のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムにおいては、所定のルーバー構造を得るにあたり、モノマー成分を高屈折率化する目的で、モノマー成分においてハロゲン置換が行われることが一般的であった。
この点、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物であれば、ハロゲン置換を行わない場合であっても、高い屈折率とすることができる。
したがって、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物を光硬化してなる異方性光拡散フィルムであれば、ハロゲンを含まない場合であっても、良好な入射角度依存性を発揮することができる。
【0048】
また、一般式(1)におけるR2〜R9のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが好ましい。
この理由は、一般式(2)で表わされる置換基の位置を、ビフェニル環におけるR1およびR10以外の位置とすることにより、光硬化させる前の段階において、(A)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止できる。
これにより、光硬化の段階において、(A)成分および(B)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
さらに、同様の観点から、一般式(1)におけるR3、R5、R6およびR8のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが特に好ましい。
【0049】
また、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、通常1〜10の整数とする。
この理由は、繰り返し数mが10を超えた値となると、重合部位と、ビフェニル環とをつなぐオキシアルキレン鎖が長くなりすぎて、重合部位における(A)成分同士の重合を阻害する場合があるためである。
したがって、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、1〜4の整数とすることがより好ましく、1〜2の整数とすることが特に好ましい。
なお、同様の観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、通常1〜4の整数とする。
また、重合部位である重合性炭素−炭素二重結合の位置が、ビフェニル環に対して近すぎて、ビフェニル環が立体障害となり、(A)成分の重合速度が低下する場合をも考慮すると、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、2〜4の整数とすることがより好ましく、2〜3の整数とすることが特に好ましい。
【0050】
また、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物の具体例としては、下記式(3)〜(4)で表わされる化合物を好ましく挙げることができる。
【0051】
【化8】

【0052】
【化9】

【0053】
(2)重量平均分子量
また、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の重量平均分子量を、200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の重量平均分子量、および後述する(B)成分としての重合性化合物における重量平均分子量を、それぞれ所定の範囲とすることにより、両成分の共重合性をより効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A)成分に由来した板状領域および(B)成分に由来した板状領域が交互に延在したルーバー構造を、より効率的に形成することができる。
すなわち、(A)成分の重量平均分子量が200未満の値となると、ビフェニル環の位置と重合性炭素−炭素二重結合の位置が近くなりすぎて、立体障害により重合速度が低下して、(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなる場合があるためである。一方、(A)成分の重量平均分子量が2,500を超えた値となると、(B)成分との分子量の差が小さくなり、(A)成分の重合速度が低下して(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなるものと推定され、その結果、ルーバー構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の重量平均分子量を、240〜1,500の範囲内の値とすることがより好ましく、260〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(A)成分の重量平均分子量は、分子の組成と、構成原子の原子量から得られる計算値から求めることができる。
また、(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することもできる。
また、(A)成分は、分子構造や重量平均分子量が異なる2種類以上を併用してもよいが、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを抑制する観点からは、1種類のみを用いることが好ましい。
すなわち、(A)成分における(B)成分に対する相溶性が低い場合、例えば、(A)成分がハロゲン系化合物等の場合、(A)成分を(B)成分に相溶させるための第3成分として、他の(A)成分(例えば、非ハロゲン系化合物等)を併用する場合がある。
しかしながら、この場合、かかる第3成分の影響により、(A)成分に由来した屈折率の高い板状領域における屈折率がばらついたり、低下し易くなったりすることがある。
その結果、(B)成分に由来した屈折率の低い板状領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下し易くなったりする場合がある。
したがって、(B)成分との相溶性を有する高屈折率なモノマー成分を選択し、それを単独の(A)成分として用いることが好ましい。
なお、例えば、(A)成分としての式(3)で表わされるビフェニル化合物であれば、低粘度であることから、(B)成分との相溶性を有するため、単独の(A)成分として使用することができる。
【0054】
(3)屈折率
また、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(B)成分との相溶が困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の屈折率を、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.59の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分の屈折率を意味する。
また、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0055】
(4)含有量
また、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の含有量を、後述する(B)成分としての重合性化合物100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、(A)成分の含有量をかかる範囲内の値とすることにより、(B)成分との混合性を維持しつつも、光照射した場合には、両成分が共重合することを効果的に防ぎ、所定のルーバー構造を効率的に形成することができるためである。
すなわち、(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の幅が、(B)成分に由来した板状領域の幅と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、異方性光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーの長さが不十分になり、光拡散性を示さなくなる場合があるためである。一方、(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が多くなって、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の幅が、(B)成分に由来した板状領域の幅と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、異方性光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーの長さが不十分になり、光拡散性を示さなくなる場合があるためである。
したがって、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の含有量を、(B)成分としての重合性化合物100重量部に対して、40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0056】
3.(B)成分:重合性化合物
(1)種類
(B)成分としての重合性化合物は、カチオン重合性、アニオン重合性およびラジカル重合性のいずれの重合性化合物であってもよいが、(A)成分と同じ重合系を利用でき、後述する(C)成分も共用でき、取り扱いが容易となることから、ラジカル重合性の重合性化合物とすることが好ましい。
また、かかるラジカル重合性の重合性化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特に、ウレタン(メタ)アクリレートとすることが好ましい。
この理由は、ウレタン(メタ)アクリレートであれば、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
したがって、以下においては、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートについて、主に説明する。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
【0057】
まず、ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成される。
このうち、(a)成分であるイソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等を挙げることができる。
【0058】
また、上述した中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが、特に好ましい。
この理由は、脂環式ポリイソシアナートであれば、脂肪族ポリイソシアナートと比較して、立体配座等の関係で各イソシアナート基の反応速度に差を設けやすいためである。
これにより、(a)成分が(b)成分とのみ反応したり、(a)成分が(c)成分とのみ反応したりすることを抑制して、(a)成分を、(b)成分および(c)成分と確実に反応させることができ、余分な副生成物の発生を防止することができる。
その結果、異方性光拡散フィルムにおける(B)成分に由来した板状領域、すなわち、低屈折率の板状領域における屈折率のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0059】
また、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分としての重合性化合物と、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物との相溶性を所定の範囲に低下させて、ルーバー構造をより効率よく形成することができる。
さらに、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分としての重合性化合物の屈折率を小さくすることができることから、(A)成分としての特定の構造を有するビフェニル化合物の屈折率との差を大きくし、異方性に優れたルーバー構造をさらに効率よく形成することができる。
また、このような脂環式ポリイソシアナートの中でも、イソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
この理由は、脂環式ジイソシアナートであれば、(b)成分および(c)成分と定量的に反応し、単一の(B)成分を得ることができるためである。
このような脂環式ジイソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート(IPDI)であることが、特に好ましく挙げることができる。
この理由は、2つのイソシアナート基の反応性に有効な差異を設けることができるためである。
【0060】
また、ウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(b)成分であるポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが、特に好ましい。
この理由は、ポリプロピレングリコールであれば、粘度が低いことから無溶剤で取り扱うことができるためである。
また、ポリプロピレングリコールであれば、(B)成分を硬化させた際に、当該硬化物における良好なソフトセグメントとなり、異方性光拡散フィルムのハンドリング性や実装性を、効果的に向上させることができるためである。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、主に、(b)成分の重量平均分子量により調節することができる。ここで、(b)成分の重量平均分子量は、通常、2,300〜19,500であり、好ましくは4,300〜14,300であり、特に好ましくは6,300〜12,300である。
【0061】
また、ウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(c)成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、所定のルーバー構造をより効率的に形成する観点から、特に、ヒドロキシアルキルメタクリレートであることがより好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
【0062】
また、(a)〜(c)成分によるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って実施することができる。
このとき(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(b)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(a)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに2つの(a)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(c)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
したがって、(a)〜(c)成分の配合割合を、モル比にて(a)成分:(b)成分:(c)成分=1〜3:1:1〜3の割合とすることがより好ましく、2:1:2の割合とすることがさらに好ましい。
【0063】
(2)重量平均分子量
また、(B)成分としての重合性化合物の重量平均分子量を、3,000〜20,000の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、(B)成分としての重合性化合物の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるためである。
その結果、光硬化させた際に、(A)成分に由来した板状領域および(B)成分に由来した板状領域が交互に延在したルーバー構造を効率よく形成することができる。
すなわち、(B)成分の重量平均分子量が3,000未満の値となると、(B)成分の重合速度が速くなって、(A)成分の重合速度に近くなり、(A)成分との共重合が生じ易くなる結果、ルーバー構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の重量平均分子量が20,000を超えた値となると、(A)成分および(B)成分に由来した板状領域が交互に延在したルーバー構造を形成することが困難になったり、(A)成分との相溶性が過度に低下して、塗布段階で(A)成分が析出する場合があるためである。
したがって、(B)成分としての重合性化合物の重量平均分子量を、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがより好ましく、7,000〜13,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
また、(B)成分は、分子構造や重量平均分子量が異なる2種以上を併用してもよいが、ルーバー構造における(B)成分に由来した板状領域の屈折率のばらつきを抑制する観点からは、1種類のみを用いることが好ましい。
すなわち、(B)成分を複数用いた場合、(B)成分に由来した屈折率の低い板状領域における屈折率がばらついたり、高くなったりして、(A)成分に由来した屈折率の高い板状領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下する場合があるためである。
【0064】
(3)屈折率
また、(B)成分としての重合性化合物の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、より容易に調節して、所定のルーバー構造を備えた異方性光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(A)成分との相溶性が極端に悪化し、ルーバー構造を形成することができないおそれがあるためである。一方、(B)成分の屈折率が1.5を超えた値となると、(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分としての重合性化合物の屈折率を、1.45〜1.49の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.48の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(B)成分の屈折率を意味する。
また、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0065】
また、上述した(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を所定の範囲内の値とすることにより、光の透過と拡散において、より良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域がさらに広い異方性光拡散フィルムを得ることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がルーバー構造内で全反射する角度域が狭くなることから、拡散光の開き角度が過度に狭くなる場合があるためである。一方、かかる屈折率の差が過度に大きな値となると、(A)成分と(B)成分の相溶性が悪化しすぎて、ルーバー構造を形成できないおそれがあるためである。
したがって、(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.05〜0.5の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう(A)成分および(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分および(B)成分の屈折率を意味する。
【0066】
(4)含有量
また、(B)成分としての重合性化合物の含有量を、異方性光拡散フィルム用組成物の全体量100重量%に対して、20〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の含有量が20重量%未満の値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が少なくなって、ルーバー構造における(B)成分に由来した板状領域の幅が、(A)成分に由来した板状領域の幅と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、異方性光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーの長さが不十分になる場合があるためである。一方、(B)成分の含有量が80重量%を超えた値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が多くなって、ルーバー構造における(B)成分に由来した板状領域の幅が、(A)成分に由来した板状領域の幅と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するルーバー構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、異方性光拡散フィルムの厚さ方向におけるルーバーの長さが不十分になる場合があるためである。
したがって、(B)成分としての重合性化合物の含有量を、異方性光拡散フィルム用組成物の全体量100重量%に対して、30〜70重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜60重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0067】
4.光重合開始剤
また、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物においては、所望により、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光重合開始剤を含有させることにより、異方性光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に所定のルーバー構造を形成することができるためである。
ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
【0068】
かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、光重合開始剤を含有させる場合の含有量としては、(A)成分および(B)成分の合計量100重量%に対し、0.2〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0069】
5.その他の添加剤
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、その他の添加剤を添加することができる。
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、その他の添加剤の含有量は、一般に、(A)成分および(B)成分の合計量100重量%に対して、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、異方性光拡散フィルム用組成物に対し活性エネルギー線を照射してなる異方性光拡散フィルムであって、異方性光拡散フィルム用組成物が、(A)成分としての一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含むとともに、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする異方性光拡散フィルムである。
以下、本発明の第2の実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心に、図5を参照しつつ、具体的に説明する。
【0071】
1.製造方法
以下、本発明の異方性光拡散フィルムの製造方法について説明するが、本発明にかかる異方性光拡散フィルムは、言うまでもなく、以下の製造方法により限定されるものではない。
【0072】
(1)異方性光拡散フィルム用組成物の準備工程
異方性光拡散フィルム用組成物の準備工程は、(A)成分および(B)成分を含む所定の異方性光拡散フィルム用組成物を準備する工程である。
より具体的には、(A)成分および(B)成分を40〜80℃の高温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
また、これと同時に、混合液に対し、所望により(C)成分等その他の添加剤を添加した後、見かけ上均一になるまで撹拌しつつ、所望の粘度になるように、必要に応じて希釈溶剤をさらに加えることにより、異方性光拡散フィルム用組成物の溶液を得ることが好ましい。
なお、各成分の詳細および配合割合等については、第1の実施形態において記載した通りであるため、省略する。
【0073】
(2)塗布工程
塗布工程は、図5(a)に示すように、準備した異方性光拡散フィルム用組成物を、工程シート2に対して塗布して塗布層1を形成する工程である。
工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。
このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。
【0074】
また、工程シートに対しては、光硬化後に、得られた異方性光拡散フィルムを工程シートから剥離し易くするために、工程シートにおける異方性光拡散フィルム用組成物の塗布面側に、剥離層を設けることが好ましい。
かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
なお、工程シートの厚さは、通常、25〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0075】
また、工程シート上に異方性光拡散フィルム用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
なお、このとき、塗布層の厚さを、100〜700μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0076】
(3)光硬化工程
光硬化工程は、異方性光拡散フィルム用組成物の塗布層を光硬化させて、塗布層を異方性光拡散フィルムとする工程である。
すなわち、図5(b)に示すように、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、照射角度の制御された直接光のみからなる活性エネルギー線50を照射する。
より具体的には、例えば、図6(a)に示すように、線状の紫外線ランプ25に集光用のコールドミラー22が設けられた紫外線照射装置20(例えば、市販品であれば、アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX等)に、熱線カットフィルター21および遮光板23を配置することにより、照射角度の制御された直接光のみからなる活性エネルギー線50を取り出し、工程シート2の上に形成された塗布層1に対し、照射する。
なお、線状の紫外線ランプは、塗布層1を有する工程シート2の長手方向と直行する方向を基準(0°)として、通常−80〜80°の範囲内の値、好ましくは−50〜50°の範囲内の値、特に好ましくは−30〜30°の範囲内の値になるように設置される。
このとき、照射光の照射角度としては、図6(b)に示すように、塗布層1の表面の法線に対する角度を0°とした場合の照射角度θ3を、通常、−80〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照射角度θ3が−80〜80°の範囲外の値となると、塗布層1の表面での反射等の影響が大きくなって、十分なルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
また、照射角度θ3は、1〜80°の幅(照射角度幅)θ3´を有していることが好ましい。
この理由は、かかる照射角度幅θ3´が1°未満の値となると、ルーバー構造の間隔が狭くなり過ぎて、異方性光拡散フィルムを得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる照射角度幅θ3´が80°を超えた値となると、照射光が分散し過ぎて、ルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。
従って、照射角度θ3の照射角度幅θ3´を2〜45°の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、線状光源を用いることにより、線状光源の軸方向から見た場合には実質的に平行光であり、線状光源の軸方向とは垂直な方向から見た場合には非平行な照射光を照射することができる。
【0077】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、紫外線を用いることが好ましい。
この理由は、電子線の場合、重合速度が非常に速いため、重合過程で(A)成分と(B)成分が十分に相分離できず、ルーバー構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、可視光等と比較した場合、紫外線の方が、その照射により硬化する紫外線硬化樹脂や、使用可能な光開始剤のバリエーションが豊富であることから、(A)成分および(B)成分の選択の幅を広げることができるためである。
また、紫外線の照射条件としては、照射時のピーク照度が0.1〜50mW/cm2の範囲内の値となるようにし、かつ、塗布層が十分に硬化する積算光量となるように行うことが好ましい。
なお、塗布層が十分に硬化する積算光量となるように、多段階で紫外線を照射することも好ましい。
また、工程シート上に形成された塗布層を、0.1〜10m/分の速度にて移動させて、紫外線照射装置による紫外線照射部分を通過させることが好ましい。
この理由は、かかる速度が0.1m/分未満の値となると、量産性が過度に低下する場合があるためである。一方、かかる速度が10m/分を超えた値となると、塗布層の硬化、言い換えれば、ルーバー構造の形成よりも速く、塗布層に対する紫外線の入射角度が膜厚方向に沿って大きく変化してしまい、ルーバー構造の形成が不十分になる場合があるためである。
したがって、工程シート上に形成された塗布層を、0.2〜5m/分の範囲内の速度にて移動させて、紫外線照射装置による紫外線照射部分を通過させることがより好ましく、0.5〜3m/分の範囲内の速度にて通過させることがさらに好ましい。
なお、図5(c)に示すように、光硬化工程後の異方性光拡散フィルム10は、工程シート2を剥離することによって、最終的に使用可能な状態となる。
【0078】
2.膜厚
また、異方性光拡散フィルムの膜厚を100〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、異方性光拡散フィルムの膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、異方性光拡散フィルムを積層することなく、単層のままで反射型液晶表示装置等に適用した場合であっても、効率的に外光を光源として利用することができ、かつ、表示される画像の鮮明度が低下したり、虹彩色が現れたりするといった問題の発生を防止することができるためである。
すなわち、かかる膜厚が100μm未満の値となると、フィルム内に形成される膜厚方向におけるルーバー構造の長さが過度に短くなって、ルーバー構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる膜厚が500μmを超えた値となると、照射光を長時間照射することになるため、生産性が過度に低下したり、照射光が、初期に形成されたルーバー構造によって拡散してしまい、所望のルーバー構造を形成することが困難になったりする場合があるためである。
したがって、異方性光拡散フィルムの膜厚を130〜300μmの範囲内の値とすることがより好ましく、150〜250μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0079】
3.ルーバー構造
また、図7(a)〜(c)に示すように、本発明の異方性光拡散フィルム10は、(A)成分に由来した板状領域12と、(B)成分に由来した板状領域14とが交互に延在したルーバー構造を備えるが、(A)成分に由来した板状領域12および(B)成分に由来した板状領域14のそれぞれの幅(S1、S2)を、0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる幅が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる幅が15μmを超えた値となると、逆に、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分に由来した板状領域12および(B)成分に由来した板状領域14のそれぞれの幅(S1、S2)を、0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0080】
また、ルーバー構造における初期傾斜角θ4を、0〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる初期傾斜角θ4が80°を超えた値となると、入射角度依存性を示すことが困難になる場合があるためである。
したがって、ルーバー構造における初期傾斜角θ4を0〜50°の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、初期傾斜角θ4とは、図7に示すとおり入射光照射側のフィルム面の法線とルーバーとの為す角度のうち狭い側の角度をいう。
より具体的には、初期傾斜角θ4は、フィルム面方向に沿って延びるルーバー構造に対して垂直な面でフィルムを切断した場合において測定されるフィルム面の法線に対する角度を0°とした場合の板状領域の傾斜角(°)を意味する。
また、図7に示す通り、板状領域が右側に傾いているときの傾斜角を基準とし、板状領域が左側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
さらに、本実施形態の異方性光拡散フィルム10は、図7(a)に示すように膜厚方向全体にルーバー構造(膜厚方向長さL1)が形成されていても良いし、図7(b)に示すようにフィルム10の上端部分、下端部分の少なくともいずれか一方にルーバー構造未形成部分(膜厚方向長さL2)を有していてもよい。
【0081】
また、ルーバー構造における膜厚方向の長さL1は、異方性光拡散フィルム10の膜厚にもよるが、一般に、50〜500μmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる長さが50μm未満の値となると、ルーバー構造内を直進してしまう入射光が増加し、十分な入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる長さが500μmを超えた値となると、ルーバー構造内を通過する間に、光の反射や吸収等の損失が生じる場合があるためである。
したがって、ルーバー構造における膜厚方向L1の長さを、130〜300μmの範囲内の値とすることがより好ましく、150〜250μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、ルーバー構造が形成されない上下端部分の幅L2は、異方性光拡散フィルム10の膜厚にもよるが、一般に、0〜200μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜100μmの範囲内の値であることが好ましく、0〜50μmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
また、図7(c)に示すように、ルーバー構造が屈曲していることも好ましい。
この理由は、ルーバー構造が屈曲していることにより、ルーバー構造内を直進してしまう入射光を減少させて、光拡散の均一性を向上させることができるためである。
なお、このような屈曲したルーバー構造は、異方性光拡散フィルム用組成物の光硬化を行う際に、照射光の照射角度を変化させながら光を照射することによって得ることができるが、(A)成分および(B)成分の種類にも大きく依存する。
【0082】
また、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率を1.5〜1.7の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分に由来した板状領域の屈折率が1.5未満の値となると、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の異方性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分に由来した板状領域の屈折率が1.7を超えた値となると、(B)成分との相溶性が過度に低くなる場合があるためである。
したがって、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率を1.52〜1.65の範囲内の値とすることがより好ましく、1.55〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0083】
また、ルーバー構造における(B)成分に由来した板状領域の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分に由来した板状領域の屈折率が1.4未満の値となると、得られる異方性光拡散フィルムの剛性を低下させる場合があるためである。一方、(B)成分に由来した板状領域の屈折率が1.5を超えた値となると、(A)成分に由来した板状領域の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の異方性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、ルーバー構造における(B)成分に由来した板状領域の屈折率を1.42〜1.48の範囲内の値とすることがより好ましく、1.44〜1.46の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0084】
また、本実施形態の異方性光拡散フィルムにおいては、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がルーバー構造内で全反射する角度域が狭くなることから、拡散光の開き角度が過度に狭くなる場合があるためである。
したがって、ルーバー構造における(A)成分に由来した板状領域の屈折率と、(B)成分に由来した板状領域の屈折率との差を、0.03以上の値とすることがより好ましい。
なお、屈折率の差は大きい程好ましいが、0.1程度が上限であると考えられる。
【0085】
4.用途
また、図8に示すように、本発明の異方性光拡散フィルムを、反射型液晶表示装置100に用いることが好ましい。
この理由は、本発明の異方性光拡散フィルムであれば、外光を効率的に透過させて液晶表示装置の内部に取り込み、かつ、その光を光源として利用できるように、効率的に拡散させることができるためである。
したがって、本発明の異方性光拡散フィルムは、ガラス板(104、108)および液晶106、並びに、鏡面反射板107等からなる液晶セル110の上面、あるいは下面に配置して、反射型液晶表示装置100における光拡散板103として使用することが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0087】
[実施例1]
1.(B)成分の合成
容器内に、(b)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(a)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、および(c)成分としての2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法に従って重合させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
【0088】
なお、PPGおよびポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定したポリスチレン換算値である。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
【0089】
2.異方性光拡散フィルム用組成物の調製
次いで、得られた(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、(A)成分としての下記式(3)で表わされる重量平均分子量268のo−フェニルフェノキシエチルアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−LEN−10)100重量部と、(C)成分としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン10重量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、異方性光拡散フィルム用組成物を得た。
ここで、(A)成分および(B)成分の屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ(株)製、品名:アッベ屈折計DR−M2、光源:Na光源、波長:589nm)により、JIS K0062に準じて測定した。
なお、以下において、式(3)で表わされる化合物をビフェニル−1と称する場合がある。
【0090】
【化10】

【0091】
3.異方性光拡散フィルム用組成物の塗布
次いで、得られた異方性光拡散フィルム用組成物を、工程シートとして透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと称する。)に対して、アプリケーターを用いて塗布し、膜厚250μmの塗布層を得た。
【0092】
4.塗布層の光硬化
次いで、図6に示すような線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX)を準備した。
次いで、熱線カットフィルター枠上に遮光板を設置し、塗布層の表面に照射される紫外線が、線状の紫外線ランプの長手方向から見たときの塗布層およびPETからなる積層体の法線方向を0°とした場合に、ランプからの直接の紫外線の照射角度(図6(b)のθ3が0〜10°の範囲(照射角度幅θ3´=10°)となるように設定した。
このとき、塗布層からのランプの高さは290mmとし、ピーク照度は9mW/cm2となるように設定した。
また、遮光板等での反射光が、照射機内部で迷光となり、塗布層の光硬化に影響を及ぼすことを防ぐため、コンベア付近にも遮光板を設け、ランプから直接発せられる紫外線のみが、塗布層に対して照射されるように設定した。
次いで、コンベアにより、塗布層を図6における右方向に、0.2m/分の速度にて移動させながら紫外線を照射し、膜厚が250μmの異方性光拡散フィルムを得た。
なお、異方性光拡散フィルムの膜厚は、定圧厚さ測定器(宝製作所(株)製、テクロック PG−02J)を用いて測定した。
また、該異方性光拡散フィルムの断面を光学デジタル顕微鏡(キーエンス(株)製)により観察したところ、照射光が最初に当たるフィルム面側のルーバー構造の傾斜角(初期傾斜角)が6.5°であり、ルーバー構造の膜厚方向の長さ(図7(b)のL1)は200μmであった。
【0093】
5.評価
(1)測定による入射角度依存性の評価
変角測色計(スガ試験機(株)製、VC−2)を用いて、得られた異方性光拡散フィルムの下方より、当該フィルムに対して、光を入射させた(C光源、視野角2°)。
次いで、異方性光拡散フィルムにより拡散された拡散光の明度(%)を、角度5°ごとに測定した。
次いで、隣接する測定点同士の明度の差が10%未満となる両端の測定点の間の角度範囲を拡散領域とし、当該角度領域の角度幅を、拡散光の開き角度(°)とした。
また、入射光の入射角が0°の場合における拡散領域、当該拡散領域における明度の平均値、並びに、当該平均値と、拡散領域における明度の最大値および最小値との差の絶対値を、それぞれ表1に示す。
【0094】
また、入射光の入射角を連続的に変化させて、それぞれの入射角における拡散光の開き角度を測定し、当該拡散光の開き角度が10°以上であるような入射角度の範囲を、光拡散入射角度領域とした。得られた結果を表1に示す。
なお、拡散光の開き角度の値が大きい程、そのときの入射角にて入射した入射光が異方性光拡散フィルムによって有効に拡散したことを意味する。
逆に、拡散光の開き角度が小さい程、そのときの入射角にて入射した光が異方性光拡散フィルムをそのまま透過し、拡散しなかったことを意味する。
また、実施例1、3および4について、横軸に異方性光拡散フィルムに対する入射角(°)を横軸に採り、拡散光の開き角度(°)を縦軸に採ってなる特性曲線を、それぞれ図9に示す。
なお、例えば、実施例1の場合のように、特性曲線上に拡散光の開き角度が10°のときの測定プロットが存在しない場合には、特性曲線(外挿線)と、拡散光の開き角度=10°の直線との交点における入射角(°)の値から光拡散入射角度領域の値を得た。
【0095】
(2)目視による異方性の評価
(2)−1 光拡散性
5人のパネラーが、異方性光拡散フィルムの正面(拡散方向)から、当該フィルムを介して、その反対側の様子を目視した場合における見え方を、下記基準に沿って評価し、目視による光拡散性の評価とした。得られた結果を、表1に示す。
A:5人中5人が、十分な不透明性を有すると判断した。
B:5人中3〜4人が、十分な不透明性を有すると判断した。
C:5人中3〜5人が、不透明性は劣るものの、不透明性自体は有すると判断した。
D:5人中3〜4人が、不透明性を有さないと判断した。
E:5人中5人が、不透明性を有さないと判断した。
【0096】
(2)−2 光透過性
5人のパネラーが、異方性光拡散フィルムの斜め45°方向(透過方向)から、当該フィルムを介して、その反対側の様子を目視した場合における見え方を、下記基準に沿って評価し、目視による光透過性の評価とした。得られた結果を、表1に示す。
◎:5人中5人が、完全に透明かつ無着色と判断した。
○:5人中3〜4人が、完全に透明かつ無着色と判断した。
△:5人中3〜4人が、白濁もしくは黄色を呈していると判断した。
×:5人中5人が、白濁もしくは黄色を呈していると判断した。
【0097】
[実施例2]
実施例2では、(b)成分を重量平均分子量が実施例1の場合よりも小さいPPGに変更することにより、(B)成分としてのポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量を6,100に変えたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0098】
[実施例3]
実施例3では、(b)成分を重量平均分子量が実施例1の場合よりも大きいPPGに変更することにより、(B)成分としてのポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量を14,500に変えたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0099】
[実施例4]
実施例4では、(A)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対して、60重量部とし、(C)成分の添加量を20重量部としたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0100】
[実施例5]
実施例5では、(A)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対して、150重量部としたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0101】
[実施例6]
実施例6では、(B)成分を合成する際に、(c)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を用い、(C)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対し、20重量部としたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0102】
[実施例7]
実施例7では、異方性光拡散フィルムの膜厚を500μmとしたほかは、実施例6と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0103】
[実施例8]
実施例8では、(C)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対して4重量部に変えるとともに、異方性光拡散フィルムの膜厚を500μmとしたほかは、実施例6と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0104】
[実施例9]
実施例9では、(C)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対して2重量部に変えるとともに、異方性光拡散フィルムの膜厚を500μmとしたほかは、実施例6と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0105】
[実施例10]
実施例10では、(A)成分を下記式(4)で表わされる重量平均分子量312のo−フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレートを用いたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
なお、以下において、式(4)で表わされる化合物をビフェニル−2と称する場合がある。
【0106】
【化11】

【0107】
[実施例11]
実施例11では、(A)成分をビフェニル1およびビフェニル2の50:50(重量比)の混合物としたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0108】
[比較例1]
比較例1では、(B)成分を2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(重量平均分子量:216)(新中村化学(株)製、NKエステル A−SA)に変え、(C)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対し、20重量部にするとともに、異方性光拡散フィルムの膜厚を500μmとしたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0109】
[比較例2]
比較例2では、(B)成分としてのポリエーテルウレタンメタクリレートを合成する際に、(c)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を用いるとともに、ポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量を740に変え、さらに、異方性光拡散フィルムの膜厚を500μmとしたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0110】
[比較例3]
比較例3では、(A)成分を下記式(5)で表わされるエトキシ化ビスフェノールA型ジアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−BPE−4)に変え、(C)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対し、4重量部としたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0111】
【化12】

【0112】
[比較例4]
比較例4では、(A)成分を下記式(6)で表わされる9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学(株)製、NKエステル A−BPEF)に変え、(C)成分の添加量を、(B)成分100重量部に対し、4重量部としたほかは、実施例1と同様に異方性光拡散フィルム用組成物を調製して、異方性光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた結果を、表1に示す。
【0113】
【化13】

【0114】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0115】
以上、詳述したように、本発明によれば、特定の構造を有するビフェニル環含有化合物と、重量平均分子量が所定の範囲内の値である重合性化合物と、を所定の割合で配合することにより、良好な入射角度依存性を有する異方性光拡散フィルムを得ることができるようになった。
より具体的には、光の透過と拡散において良好な入射角度依存性を有するとともに、光拡散入射角度領域が広い異方性光拡散フィルムを得ることができるようになった。
したがって、本発明の異方性光拡散フィルム用組成物等は、反射型液晶表示装置における光制御膜の他、視野角制御フィルム、視野角拡大フィルム、さらにはプロジェクション用スクリーンにも適用することができ、これらの高品質化に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0116】
1:塗布層、2:工程シート、10:異方性光拡散フィルム、12:(A)成分に由来した比較的屈折率の高い板状領域、14:(B)成分に由来した比較的屈折率の低い板状領域、20:紫外線照射装置、21:熱線カットフィルター、22:コールドミラー、23:遮光板、25:線状の紫外線ランプ、50(52、54、56):入射光(活性エネルギー線)、100:反射型液晶表示装置、101:偏光板、102:位相差板、103:光拡散板、104:ガラス板、105:カラーフィルター、106:液晶、107:鏡面反射板、108:ガラス板、110:液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としての下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含む異方性光拡散フィルム用組成物であって、
前記(A)成分の含有量を、前記(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする異方性光拡散フィルム用組成物。
【化1】


(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【化2】


(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R2〜R9のいずれか一つが、前記一般式(2)で表わされる置換基であることを特徴とする請求項1に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の重量平均分子量を200〜2,500の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の屈折率を1.4〜1.5の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の屈折率と、前記(B)成分の屈折率との差を、0.01以上の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項8】
(C)成分として、光重合開始剤を含むとともに、その含有量を、前記(A)成分および(B)成分の合計量(100重量%)に対し、0.2〜20重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の異方性光拡散フィルム用組成物。
【請求項9】
異方性光拡散フィルム用組成物に対し活性エネルギー線を照射してなる異方性光拡散フィルムであって、
前記異方性光拡散フィルム用組成物が、(A)成分としての下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物と、(B)成分としての重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲内の値である重合性化合物と、を含むとともに、
前記(A)成分の含有量を、前記(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることを特徴とする異方性光拡散フィルム。
【化3】


(一般式(1)中、R1〜R10は、それぞれ独立しており、R1〜R10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【化4】


(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【請求項10】
膜厚を100〜500μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項9に記載の異方性光拡散フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−141591(P2012−141591A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268542(P2011−268542)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】