説明

異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置

【課題】ディスクトレイクローズ時の異物の挟み込みを予防することができるディスク装置を提供する。
【解決手段】プーリー6に自身の回転を停止するための回転停止用係止爪61を形成し、フレーム2のディスクトレイ4の搬送口の下部にレバー部材8を取付部82により回動自在に取り付ける。レバー部材8には係合フック81を有しており、ディスクトレイ4の孔部41に異物が挿通されたままディスクトレイ4の搬入動作が行われたとしても、レバー部材8がフレーム2内部に押し込まれることにより、係合フック81と回転停止用係止爪61が係合し、モーター5からの駆動力の伝達機構であるプーリー6の回転を強制的に停止し、ディスクトレイ4のフレーム2内部への搬入を停止することができる。これにより異物がディスクトレイ4とフレーム2に挟み込まれることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクトレイ開閉時に、指などの異物が挟まることを防止する異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスクトレイを備えた記録再生装置は、ディスクトレイを収納するフレームに対して摺動可能にトレイが組付けられており、ディスクトレイは、フレームの内部に取り付けるモーターの駆動力をギア及びプーリーに代表される伝達機構を介して、フレーム内部の記録再生位置と、装置外部のディスク着脱位置との間で、直線的に往復移動可能としている。フレームには、ディスクトレイと共に内部に搬送されるディスクに記憶されるデータを読取って再生を行う、若しくはディスクにデータを書き込むためのピックアップユニット、ディスクを回転させるためのターンテーブルなどの部品により構成するトラバースユニットを備えており、ディスクトレイには、装置内部の記録若しくは再生位置においてクランパと共にディスクを挟持するターンテーブルを挿通させ、加えて前記ピックアップユニットより発せられるレーザ光を前記ディスクの記録面へ照射するために、中央部に孔部が形成されている。この孔部は、ディスクトレイがディスク着脱位置にある際に、ディスクの着脱を容易にする効果もある。
【0003】
ところで、このディスクトレイのフレーム内部への搬送動作は、様々な方法により公開されているが、主に、ディスクトレイ開閉ボタンによる搬送方法や、外部からの押圧力の検知を行い自動的に内部へ搬送する方法や、ディスクトレイがディスク着脱位置に到達してから所定の時間経過後自動的に内部へ搬送する方法が一般的に用いられている。
【0004】
この搬送動作の際に、ディスクトレイに形成される孔部に指などを挿通したままの状態で、誤ってディスクトレイを押してしまったり、所定の時間が経過してしまう場合、ディスクトレイとディスクトレイ搬送口により指を挟んでしまい、怪我を負う危険性があった。この問題を解決するにあたり、特許文献1では、ディスクトレイクローズ時に、警告音やランプの点灯・点滅により報知するといった方法や、ディスクトレイのクローズの速度を、オープン時より遅くする方法を開示している。
【0005】
【特許文献1】特開平11−66703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、警告音を聞き逃してしまったり、ランプの点灯・点滅を見逃してしまった場合には、ディスクトレイの動作を止めることができず、結果指を挟みこんでしまっていた。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、機械的な構造による異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置は、載置されるディスクを内外に搬送する、中央に孔部を有するディスクトレイと、
該ディスクトレイを収納するフレームと、
前記ディスクトレイを内外に搬送するためのモーターと、
該モーターによる駆動力をディスクトレイの搬送力に変換するためのプーリーと、
を備えるディスク装置において、
前記プーリーに回転停止用係止爪を形成し、前記回転停止用係止爪と係合するための係合フックを有するレバー部材を、ディスクの着脱位置における前記ディスクトレイの孔部から臨む箇所に位置決めをし、前記フレームのディスクトレイ搬送用開口部側に回動可能に連結し、前記回転停止用係止爪と前記係合フックの係合により、前記プーリーの動作を強制的に停止することを特徴とする。
【0009】
請求項1の構成によれば、プーリーの上面に回転停止用係止爪を形成し、フレームのディスクトレイ搬送用開口部近傍にレバー部材を連結し、このレバー部材に係合フックを形成し、回転停止用係止爪と係合フックを係合させることで、ディスクトレイの搬送動作の動力源であるプーリーの回転を停止させることができる。
【0010】
請求項2に係る異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置は、請求項1記載の異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置において、前記回転停止用係止爪は、略直方体に形成され、前記プーリーの盤面上に中心から外周方向に向かって放射状に複数設置されることを特徴とする。
【0011】
請求項2の構成によれば、プーリーの盤面上に回転停止用係止爪を放射状に略直方体に形成することにより、係合フックによりプーリーの回転を停止する場合、係合フックと回転停止用係止爪の停止させるための制動力を高めることができ、複数の回転停止用係止爪を形成することで、レバー部材作動時のプーリーの回転数を抑えることができる。
【0012】
請求項3に係る異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置は、請求項1又は2記載の異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置において、前記レバー部材は、付勢手段により、前記回転停止用係止爪と前記係合フックとが係合しない方向へ付勢されることを特徴とする。
【0013】
請求項3の構成によれば、レバー部材をフレーム外部の方向に付勢する付勢手段を有し、通常は回転停止用係止爪と係合フックは係合することがない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る載置されるディスクを内外に搬送する、中央に孔部を有するディスクトレイと、
該ディスクトレイを収納するフレームと、
前記ディスクトレイを内外に搬送するためのモーターと、
該モーターによる駆動力をディスクトレイの搬送力に変換するためのプーリーと、
を備えるディスク装置において、
前記プーリーに回転停止用係止爪を形成し、前記回転停止用係止爪と係合するための係合フックを有するレバー部材を、ディスクの着脱位置における前記ディスクトレイの孔部から臨む箇所に位置決めをし、前記フレームのディスクトレイ搬送用開口部側に回動可能に連結し、前記回転停止用係止爪と前記係合フックの係合により、前記プーリーの動作を強制的に停止するので、ディスク着脱時のディスクトレイの位置で、ディスクトレイの孔部に指などの異物を挿通したままディスクトレイクローズ動作が行われても、レバー部材の係合フックとプーリーの回転停止用係止爪とが係合し、これによりプーリーの回転を停止することができる。即ちディスクトレイとディスクトレイの搬送のための駆動力であるモーターとを一時的に切り離すことができ、異物の挟み込みを防止することができる。
【0015】
請求項2に係る異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置は、請求項1記載の異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置において、前記回転停止用係止爪は、略直方体に形成され、前記プーリーの盤面上に中心から外周方向に向かって放射状に複数設置されるので、レバー部材の係合フックと回転停止用係止爪とが係合する際の当接面を大きくし、より確実にプーリーを停止させることができる。また、複数の回転停止用係止爪を設置することにより、回転停止用係止爪間の距離を縮めることができ、レバー部材が動作してから回転停止用係止爪と係合フックが係合し、プーリーの回転が停止するまでのプーリーの回転数を抑制することができる。即ち、レバー部材が作動した時点からディスクトレイが実際停止するまでの制動距離を短くすることができる。
【0016】
請求項3に係る異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置は、請求項1又は2記載の異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置において、前記レバー部材は、付勢手段により、前記回転停止用係止爪と前記係合フックとが係合しない方向へ付勢されるので、異物の挟み込みが無い場合は、常に回転停止用係止爪と係合フックが係合することがないので、通常の動作時にレバー部材が障害となることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての実施例について、図1から図8を参照して説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反さない範囲で、実施例において説明した以外のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0018】
図1〜図8は、本発明の一実施例を示し、図1は本発明の実施例1におけるディスクを読み取るためのピックアップユニット等を備えるディスク装置の斜視図である。図2は図1に示すディスク装置の上面図である。図3は図1の状態からディスクトレイを取り外した状態のディスク装置を示す斜視図である。図4は図3に示すディスク装置の上面図である。図5は本発明の実施例2におけるディスク装置の斜視図である。図6は図5に示すディスク装置の上面図である。図7は図6の状態からディスクトレイを取り外した状態のディスク装置を示す斜視図である。図8は図7に示すディスク装置の上面図である。
【実施例1】
【0019】
本実施例におけるディスク装置の異物挟み込み防止構造について、図1〜4に基づいて説明する。図1はディスクを読み取るためのピックアップユニット等を備えるディスク装置の斜視図である。1はディスク装置であり、2はディスク装置1の外形を形成するフレームである。21は搬送されるディスクを挟持するためのクランパである。3は図示しないピックアップユニットや後述のターンテーブル等を有するトラバースユニットであり、31はクランパ21と共にディスクを挟持するためのターンテーブルである。4は載置されたディスクの搬入出を行うためのディスクトレイであり下面に図示しないラックギアを有する。41はターンテーブル31や図示しないピックアップユニットから発せられる照射レーザ等を挿通させるための、中央に略U字状に形成される孔部である。5はディスクトレイ4の搬送動作の駆動力を供給するモーターであり、6はモーター5の供給する回転運動たる駆動力をディスクトレイ4に伝達するためのプーリーであり下面に後述のピニオンを動作させるためのギア部を有している。61は後述の係合フックによりプーリーを停止させるために用いる回転停止用防止爪である。7はモーター5による駆動力をプーリー6へ伝達させるためのベルトである。8はレバー部材であり、ディスクトレイ4のディスク着脱位置における孔部41から臨む位置にあり、ディスクトレイ4の搬入出を遮らないようフレーム前方且つ下方に位置決めされる。81は前述の回転停止用防止爪61と係合することによりプーリー6の回転を停止させるための係止フックであり、82はレバー部材8を回動自在に固定する取付部である。9はレバー部材がフレーム2から常に遠ざかるように付勢するための付勢手段たるスプリングである。10はプーリー6の回転をディスクトレイ4の搬送動作に変換するためのピニオンであり、プーリー6の回転により自身を回転させるためのギア部10aと、自身の回転をディスクトレイ4のラックギアに伝達するためのギア部10bを有する。
【0020】
ディスクトレイ4のフレーム2内部への搬送動作は、駆動力となるモーター5の回転をベルト7を介してプーリー6に伝達し、プーリー6が下面に有する図示しないギア部を通じてピニオン10を回転させ、ピニオン10の回転をディスクトレイ4の下面に形成されるラックギアを介することで行われる。
【0021】
本実施例において、プーリー6には自身の回転を停止するための回転停止用係止爪61が形成される。レバー部材8は取付部82により回動自在にフレーム2に取り付けられる。また、レバー部材8には係合フック81が形成され、孔部41に指などの異物が挿通されたままディスクトレイ4の搬入動作が始まった場合に、ディスクトレイ4により異物と共にレバー部材8がフレーム2側に押し込まれ、係合フック81が回転停止用係止爪61に係合し、プーリー6の回転が停止する。ディスクトレイ4の駆動力の伝達機構の内の1つであるプーリー6が停止することで、ディスクトレイ4の搬入動作を停止することができる。レバー部材8はスプリング9によりフレーム2と反対側の方向へ付勢されているため、通常時及び異物が取り除かれた場合はレバー部材8がフレーム2の反対側へと移動し、回転停止用係止爪61と係合フック81との係合が解消され、プーリー6が回転することでディスクトレイ4の搬入動作が再開する。
【0022】
以上のように本実施例によれば、ディスク装置1は、異物が孔部41に挿通したままディスクトレイ4のフレーム2内部への搬入動作が行われても、フレーム2に取り付けられたレバー部材8がフレーム2側へと押し込まれ、レバー部材8に形成される係合フック81が、ディスクトレイ4の搬入動作の駆動力の伝達機構であるプーリー6に形成される回転停止用係止爪61に係合することにより、プーリー6の回転を強制的に停止させることができるので、例えば孔部41に指などを挿通したとしても、怪我を負うに至らず、安全性の向上を図ることができる。また、強制的にプーリー6を停止させたとしても、ベルト7が空転するため、モーター5やプーリー6からの駆動力を伝達するピニオン10のギア部10a、ギア部10b及びディスクトレイ4が備えるラックギアなどの駆動力伝達機構全般に係る負荷を低減させることができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2を図5〜8に基づいて説明する。尚、上記実施例1と同一部分には同一符号を示し、その詳細な説明は省略して詳述する。
【0024】
実施例2では、図5〜8に示すようにレバー部材11を略ヘ字状に形成し、一端に係合フック111を形成し、他端をレバー部材11を回動自在に取り付けるための取付部112とする。これにより、フレーム2の外部に異物と当接するためのレバー部分のみを突出させることができ、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1を示すディスク装置の斜視図である。
【図2】同上、ディスク装置の上面図である。
【図3】同上、ディスクトレイを外した上体のディスク装置の斜視図である。
【図4】同上、ディスクトレイを外した上体のディスク装置の上面図である。
【図5】本発明の実施例2を示すディスク装置の斜視図である。
【図6】同上、ディスク装置の上面図である。
【図7】同上、ディスクトレイを外した上体のディスク装置の斜視図である。
【図8】同上、ディスクトレイを外した上体のディスク装置の上面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ディスク装置
2 フレーム
4 ディスクトレイ
5 モーター
6 プーリー
61 回転停止用係止爪
8、11 レバー部材
81、111 係合フック
82、112 取付部
9 スプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置されるディスクを内外に搬送する、中央に孔部を有するディスクトレイと、
該ディスクトレイを収納するフレームと、
前記ディスクトレイを内外に搬送するためのモーターと、
該モーターによる駆動力をディスクトレイの搬送力に変換するためのプーリーと、
を備えるディスク装置において、
前記プーリーに回転停止用係止爪を形成し、前記回転停止用係止爪と係合するための係合フックを有するレバー部材を、ディスクの着脱位置における前記ディスクトレイの孔部から臨む箇所に位置決めをし、前記フレームのディスクトレイ搬送用開口部側に回動可能に連結し、前記回転停止用係止爪と前記係合フックの係合により、前記プーリーの動作を強制的に停止することを特徴とする異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置。
【請求項2】
前記回転停止用係止爪は、略直方体に形成され、前記プーリーの盤面上に中心から外周方向に向かって放射状に複数設置されることを特徴とする請求項1記載の異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置。
【請求項3】
前記レバー部材は、付勢手段により、前記回転停止用係止爪と前記係合フックとが係合しない方向へ付勢されることを特徴とする請求項1又は2記載の異物挟み込み防止構造を備えたディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate