説明

異物検査装置および異物検査方法

【解決課題】検査物品の内容液中に混在し得る異物を、容器外部に付着した汚れ、ゴミ、塵埃、傷等と区別して、より的確に検出できるとともに、歩留りや生産性の良好な異物検査装置および異物検査方法を提供する。
【解決手段】検査物品60を自転させたのちに自転停止させて、検査ユニット10a、10b…で、検査物品60の内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査装置1であって、検査ユニット10a、10b…が、撮像部21と、多数の処理画像を形成する処理画像形成手段25と、任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、合成マスター画像を形成する合成マスター画像形成手段26と、検出用画像抽出手段27と、合成マスター画像と複数の検出用画像とをそれぞれ比較することにより、内容液中の異物の有無を判定する判定手段29と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、検査物品の内容液中に混在し得る異物を、容器外部に付着した汚れ等と区別して検出するための異物検査装置および異物検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、検査物品を自転させ、内容液が流動している状態を撮像して、所定の画像処理および判定処理をおこなうことにより、内容液中に混在し得る異物を検出するようにしたものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−273351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される如くの従来技術は、複数の「検査画像」を比較し、相対位置が変化しない画像成分を容器外部に付着した汚れ等であるとして減算除去するとともに、相対位置が変化する画像成分を内容液中の異物であるとして抽出するものであるため、誤検出が発生し易く、実際の生産現場では歩留りが低くなり過ぎるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、検査物品の内容液中に混在し得る異物を、容器外部に付着した汚れ、ゴミ、塵埃、傷等と区別して、より的確に検出できるとともに、歩留りや生産性の良好な異物検査装置および異物検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異物検査装置は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該検査物品を自転させたのちに自転停止させて、所定の検査ユニットで、該内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査装置であって、該検査ユニットが、自転停止された該検査物品を連続的に撮像する撮像部と、該撮像部による撮像を元に、異物被疑領域を有し得る多数の処理画像を形成する処理画像形成手段と、該多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、異物被疑マスター領域を有し得る合成マスター画像を形成する合成マスター画像形成手段と、該多数の処理画像のうち、該合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出する検出用画像抽出手段と、該合成マスター画像の異物被疑マスター領域と該複数の検出用画像の異物被疑領域とをそれぞれ比較することにより、該内容液中の異物の有無を判定する判定手段と、を備えて構成される。
【0007】
上記異物検査装置は好ましくは、該合成マスター画像の異物被疑マスター領域の位置から洩出するように、該検出用画像の異物被疑領域が存在している場合を、NGパターンとし、該検出用画像の該NGパターンへの該当数にもとづいて、該内容液中の異物の有無が判定されるように構成される。
【0008】
上記異物検査装置は好ましくは、該合成マスター画像における異物被疑マスター領域の認識感度が、該検出用画像における異物被疑領域の認識感度よりも大きくされている。
【0009】
上記異物検査装置は好ましくは、該検査物品を一定間隔で平面視略円環状に支持して搬送する回転ドラムを有するとともに、該検査ユニットが、該回転ドラムに沿って設けられており、該検査ユニットによる判定結果に応じて、該回転ドラムから搬出される該検査物品を、再び該回転ドラムに搬入することのできるリターン手段をさらに備えて構成される。
【0010】
上記異物検査装置は好ましくは、撮像中にある該検査物品を、該撮像部に対して一定姿勢に保持する姿勢保持部をさらに備えて構成される。
【0011】
上記異物検査装置は好ましくは、該撮像部が、該回転ドラムから独立状に固設されており、該検査物品における検査エリアが、該検査物品の搬送に追従して自動設定されるように構成される。
【0012】
また、本発明の異物検査装置は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該検査物品を自転させたのちに自転停止させて、該内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査装置であって、自転停止された該検査物品を連続的に撮像する撮像部と、所定の画像検査部と、を備え、該画像検査部が、該撮像部による撮像を元に、異物被疑領域を有し得る多数の処理画像を形成し、該多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、異物被疑マスター領域を有し得る合成マスター画像を形成するとともに、該多数の処理画像のうち、該合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出し、該合成マスター画像の異物被疑マスター領域と該複数の検出用画像の異物被疑領域とをそれぞれ比較することにより、該内容液中の異物の有無を判定するように構成される。
【0013】
また、本発明の異物検査方法は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査方法であって、該内容液中の異物を浮動させる外力を該検査物品に付与したのちに、該検査物品の容器を相対静止させる工程と、該容器が相対静止された検査物品を連続的に撮像して、異物被疑領域を有し得る多数の処理画像を形成する工程と、該多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、異物被疑マスター領域を有し得る合成マスター画像を形成する工程と、該多数の処理画像のうち、該合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出する工程と、該合成マスター画像の異物被疑マスター領域と該複数の検出用画像の異物被疑領域とをそれぞれ比較することにより、該内容液中の異物の有無を判定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記したとおりの構成であるため、検査物品の内容液中に混在し得る異物を、容器外部に付着した汚れ、ゴミ、塵埃、傷等と区別して、より的確に検出できるとともに、歩留りや生産性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る検査装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図2】実施形態に係る検査状況を示す拡大正面図である。
【図3】実施形態に係る検査物品の実像を示す図である。
【図4】実施形態に係る処理画像を示す図である。
【図5】実施形態に係る合成マスター画像の形成状況を示す図である。
【図6】実施形態に係る合成マスター画像と検出用画像との比較状況を示す図である。
【図7】変形例に係る検査装置の一部構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図6を参照して詳細に説明する。図1は実施形態に係る検査装置1の全体構成を示す概略平面図、図2は検査状況を示す拡大正面図である。図3は実施形態に係る検査物品60の実像を示す図である。図4〜図6は実施形態に係る検査手順を説明するものであり、図4は処理画像([No.1]〜[No.12])を示す図、図5は合成マスター画像Gの形成状況を示す図、図6は合成マスター画像Gと検出用画像Gとの比較状況を示す図である。
【0017】
図1に示すように、異物検査装置1は主として、回転ドラム3と、搬入手段4および搬出手段5と、所定の検査ユニット10a〜10dと、を備えて構成される。
検査物品60は、図2〜図3に示すように、円筒状の胴体部に先端部が窄まって連成される公知形状のアンプル容器62に、薬剤等の内容液63が充填されたものである。本実施形態では、アンプル容器62および内容液63は何れも、無色または着色された透明または半透明をなす。検査物品60は、先端部を上方にした鉛直状態で搬送されている。
【0018】
回転ドラム3は、図1〜図2に示すように、検査物品60を等間隔一列で周縁部に載置する下円盤31と、下円盤31の上方に離間して設けられ、検査物品60の鉛直状態を保つ上円盤32と、を備えており、検査物品60を平面視略円環状に支持して水平搬送する。下円盤31および上円盤32は主軸33に固着され、一定の回転方向R3に連続回転している。
【0019】
回転ドラム3では、図2に示すように、上下一対のホルダ35が各検査物品60に装着される。ホルダ35は、所定の下ロッド36および上ロッド37に連結されるとともに、図示しないベアリング等を介して下円盤31および上円盤32にそれぞれ挿嵌されている。下ロッド36の適宜箇所に、後述する自転手段11が作用することで、各検査物品60が、ホルダ35と一体に、自身の軸廻りを回転(自転)自在となっている。上ロッド37の上端には、図示しないカム機構等がさらに連結されており、適時のタイミングで上ロッド37が昇降し、これに伴ってホルダ35が検査物品60に着脱される。
【0020】
搬入手段4は、図1に示すR41、R42の向きにそれぞれ水平回転(かつ回転ドラム3と同期)する仕込みスターホイール41、供給スターホイール42からなり、供給フィーダー45から順次供給される検査物品60を回転ドラム3へ搬入している。一方で、搬出手段5は、図1に示すR51、R52、R53の向きにそれぞれ水平回転(かつ回転ドラム3と同期)する振分けスターホイール51、良品取出しスターホイール52、不良品取出しスターホイール53からなり、検査を終えた検査物品60を回転ドラム3から搬出している。
【0021】
検査ユニット10a〜10dは、図1に示すように、上記回転ドラム3の回転方向R3に沿って配設される。検査ユニット10a〜10dにはそれぞれ、自転手段11および停止手段15と、姿勢保持手段16と、が回転ドラム3(下円盤31下方)の外周に臨むようにして付設されている。
【0022】
自転手段11は、図1に示すように、モータ12およびローラ13と、これらに掛回されて下ロッド36に当接可能なベルト14と、から構成される。自転手段11は、下ロッド36およびホルダ35に数千rpm程度の大きな回転力を生じせしめ、検査物品60を高速で自転させる。停止手段15は、例えば摩擦式のブレーキ部材からなり、下ロッド36に適宜作用して、高速自転中の検査物品60を急停止させる。一方、姿勢保持手段16は、上記自転手段11と同様、モータ17、ローラ18、ベルト19によって構成されるが、下ロッド36およびホルダ35に所定の僅かな回転力を生じせしめるように調整されている。
【0023】
検査ユニット10a〜10dは、図1に示すように、上記停止手段15によって自転停止された検査物品60を撮像する撮像部21と、撮像部21に接続される所定の画像検査部23と、をそれぞれ備える。
【0024】
撮像部21は例えばCCDカメラからなり、図1に示すように、検査物品60を回転ドラム3の外方から撮像する。撮像部21は、回転ドラム3の半径方向に配置されるが、検査物品60を挟んで撮像部21の反対側(回転ドラム3内)には、検査物品60および撮像部21に向け可視光を水平方向に照射する照明部22が適宜設けられる。撮像部21および照明部22は、回転ドラム3の回転からは縁切りされ、それぞれ独立状に固設されている。照明部22としては、例えば白色LED光源に拡散板、偏光フィルタ等を組み合わせたものが用いられる。撮像部21は、検査物品60を透過した可視光を受光し、回転ドラム3によって搬送されている各検査物品60を連続的に多数回、透視撮像する(図2等参照)。
【0025】
上記姿勢保持手段16は、この撮像部21によって撮像中の検査物品60を、撮像部21に対して一定姿勢に保持する働きをなす。検査物品60がカメラ視野70(図2参照)内を回転方向R3に移動するにしたがって、撮像部21と各検査物品60とのなす中心角が変化し、撮像の瞬間ごとの検査物品60の投影に微妙なズレが生じ得るが、姿勢保持手段16が検査物品60をゆっくりと回転(自転)させてこれを矯正するため、撮像部21が常に決まった投影面で各検査物品60の静止画を撮像できるようになっている。
【0026】
画像検査部23は、図1に示すように、処理画像形成手段25と、合成マスター画像形成手段26と、検出用画像抽出手段27と、画像比較手段28と、判定手段29と、を備えて構成される(図1では、検査ユニット10aにのみこれらの構成を示してあるが、検査ユニット10b〜10dについても同様)。
処理画像形成手段25は、上記撮像部21による撮像を元に、各検査物品60につき多数の処理画像を形成し、合成マスター画像形成手段26は、これら多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を所定の演算により合成して、合成マスター画像を形成する。
【0027】
また、検出用画像抽出手段27は、上記多数の処理画像のうち、合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出し、画像比較手段28を介して、合成マスター画像とこれら複数の検出用画像とをそれぞれ比較することにより、判定手段29が、各検査物品60における内容液63中の異物66(図3参照)の有無を判定する。
【0028】
なお、図示は省略するが、検査ユニット10a〜10dは、メモリ等の記憶手段、CPU等の演算処理手段や制御手段、モニタ・ディスプレイ等の表示手段、タッチパネル・キーパッド・キーボード等の入力手段、各種インターフェース、電源ポート、所定のプログラムその他の必要なハードウェアおよびソフトウェアを適宜備えている。
【0029】
上記の如く構成される異物検査装置1を用いた具体的な検査方法について説明する。この実施形態では、図3に示すように、アンプル容器62外部に僅かな汚れ等65が付着し、内容液63中に微小な異物66が混在している検査物品60を例に挙げる。「異物」とは、内容液63の充填過程等でアンプル容器62内に混入し得る、例えば繊維・ガラス・プラスチック・木・紙片、虫、塵埃等である。なお、各検査ユニット10a〜10dでは何れも、同様の要領で検査がおこなわれている。
【0030】
搬入手段4を介して回転ドラム3で搬送される検査物品60は、各検査ユニット10a〜10dにおいて、上記のとおり、自転手段11による高速自転と停止手段15による自転停止とを間欠して繰り返す。すなわち、自転手段11が、内容液63中の異物66を浮動させる外力を検査物品60に付与したのちに、停止手段15が、アンプル容器62を回転ドラム3に対して相対静止させるが、各撮像部21はこの直後の状態をそれぞれ撮像している。
【0031】
撮像部21から画像検査部23に入力される信号はデジタルデータ化され、処理画像形成手段25によって処理画像が形成される。処理画像は好ましくは、設定した二値化レベルにて二値化処理を施して得られるモノクロ(白黒)の二値画像である。各画素の明暗に応じて多階調で表現されたグレースケールの濃淡画像やカラーの多値画像を処理画像として用いてもよい。二値画像を採用する場合には、データ量を小さくして検査速度を高速にできる。
【0032】
図4には処理画像の一例を示している。この実施形態では、各検査物品60がカメラ視野70内で1ピッチd(図2参照)だけ搬送移動される間に連続的に12回撮像され、処理画像形成手段25によって、各検査物品60につき[No.1]〜[No.12]のような12枚の処理画像が形成されるようになっている。図4に示すように、検査物品60の汚れ等65や異物66は、処理画像中で例えば黒色画素として認識され、異物被疑領域77を構成している。
【0033】
図2に示すように、カメラ視野70内の各検査物品60には、所定の検査エリア72が設定され、この検査エリア72を基準にして上記処理画像[No.1]〜[No.12]が形成される。図2中の73は、検査物品60におけるアンプル容器62の管壁・管底および内容液63の液面を検知する検知手段である。カメラ視野70内で、各検査物品60は回転方向R3に沿って搬送移動されているが、この検知手段73を介して、各検査物品60にそれぞれの検査エリア72が電気的に追従し、検査エリア72の位置およびサイズが自動設定されるようになっている。
なお、本実施形態では、図2に示すように、カメラ視野70内に最大3本の検査物品60が収められ、各検査物品60が2ピッチ(=d×2)搬送移動される間に、それぞれ2セット分の検査を可能にしてある。
【0034】
処理画像[No.1]〜[No.12]が形成されると、合成マスター画像形成手段26によって、合成マスター画像Gが形成される。合成マスター画像Gは、処理画像[No.1]〜[No.12]から任意に選ばれる複数の処理画像を、対応する各画素の論理和演算(OR演算;例えば、黒色画素を1、白色画素を0として、1+1→1、1+0→1、0+0→0とする)により合成して得られる。
図5には合成マスター画像Gの形成状況の一例を示している。この実施形態では、[No.1][No.4][No.7][No.11]の処理画像が用いられる。図5に示すように、これら処理画像[No.1][No.4][No.7][No.11]の異物被疑領域77が合成され、合成マスター画像G中には、異物被疑マスター領域79が構成される。合成マスター画像Gの形成に際しては、常時定まったNo.の処理画像が選ばれるようにしてもよいし、検査物品60ごとランダムなNo.の処理画像が選ばれるようにすることもできる。
【0035】
次いで、検出用画像抽出手段27によって、処理画像[No.1]〜[No.12]のうち、合成マスター画像Gの形成に用いられなかったものが検出用画像Gとして抽出される。
この実施形態では、図6に示すように、[No.2][No.3][No.5][No.6][No.8][No.9][No.10][No.12]の処理画像が検出用画像Gとして抽出される。このように合成マスター画像Gの形成に用いられなかった残りの処理画像の全てを検出用画像Gとして抽出する他に、残りの処理画像の中から一定数の処理画像を検出用画像Gとして抽出するようにしてもよい。
【0036】
画像比較手段28を介して、上記した合成マスター画像Gと検出用画像Gとが比較され、判定手段29によって、検査物品60における内容液63中の異物66の有無が判定される。より具体的には、合成マスター画像Gにおける異物被疑マスター領域76の位置と検出用画像Gにおける各異物被疑領域77の位置が、例えば座標系に変換して記憶されており、これらの比較にもとづいて、所定の判定処理がおこなわれる。
【0037】
図6には、合成マスター画像Gと検出用画像Gとの比較状況の一例を示している。図6中の「個別判定」は、表1の判定基準にもとづいている。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すとおり、この実施形態では、以下のようなパターンの何れに該当するかによって、検出用画像Gごとに「個別判定」(「OK」or「NG」)がおこなわれている。
「パターン1」:合成マスター画像Gの異物被疑マスター領域79の位置と一致するように、検出用画像Gの異物被疑領域77が存在している(完全一致)
「パターン2」:合成マスター画像Gの異物被疑マスター領域79の位置に含まれるように、検出用画像Gの異物被疑領域77が存在している(包含)
「パターン3」:合成マスター画像Gの異物被疑マスター領域79の位置から洩出するように、検出用画像Gの異物被疑領域77が存在している(洩出、はみ出し)
「パターン4」:合成マスター画像Gの異物被疑マスター領域79、検出用画像Gの異物被疑領域77が存在していない
【0040】
検査物品60のアンプル容器62外部に付着した汚れ等65は、各処理画像[No.1]〜[No.12]において相対的に同じ位置に現れるが、内容液63中に混在する異物66は、自転手段11および停止手段15の作用に伴って生じる慣性力によって内容液63中を浮動するため、各処理画像[No.1]〜[No.12]において相対的に異なった位置に現れる蓋然性が高くなる。少なくとも上記「パターン3」は、内容液63中に異物66が混在している場合を除いて、理論上は起こり得ない。
【0041】
本実施形態では、異物66が混在している可能性のきわめて高い上記「パターン3」をNGパターンとする。そして、「個別判定」における「NG」数、すなわち検出用画像GのNGパターンへの該当数にもとづいて、「判定結果」が出力される。例えば、NGパターンに該当する検出用画像Gが1つでもあると、内容液63中に異物66が混在する可能性が比較的高いことから、「判定結果」を「不良」とできる(図6参照)。これに対して、NGパターンに該当する検出用画像Gが無ければ、内容液63中に異物66が混在する可能性は比較的低いことから、「判定結果」を「良」とできる。「判定結果」を出力するこのようなプロセスは任意に変更可能であり、検出用画像GのNGパターンへの該当数が一定値以上であるか否かの他に、検出用画像GのNGパターンへの該当数と非該当数との多数決や該当数と非該当数との割合等によって「判定結果」を出力するようにしてもよい。
上記の「パターン1」や「パターン2」は、内容液63中に異物66が混在しているものを「個別判定」で「OK」としてしまうリスクを(低確率ながら)有しているが、上記のように複数の検出用画像Gを用い、これらの「個別判定」を総合することで、適切な「判定結果」が担保されるようになっている。
【0042】
特定の処理画像をそのままマスター画像としたり、複数の処理画像間の単純比較により重複部分以外を異物66として検出処理するような場合には、個々の処理画像の精度に大きく依存することとなり、ノイズ成分や分解能等に起因する誤検出が発生し易い。
本実施形態のように、複数の処理画像([No.1][No.4][No.7][No.11])を論理和演算により合成して合成マスター画像Gを形成し、この合成マスター画像Gを比較基準として、上記した如くの判定処理をおこなうことで、個々の処理画像の精度のバラツキ等が吸収され、誤検出が発生し難いものとなる。合成マスター画像Gを形成する処理画像の枚数は適宜設定してよいが、好ましくは2枚以上であり、3枚以上がより好ましい。また、合成マスター画像Gを形成する処理画像の枚数は、少なくも検出用画像Gとして抽出される処理画像の枚数よりも少数とするのがよく、好ましくは2/3程度未満とする。一般には、検出用画像Gとして抽出される処理画像の枚数が増加するほど、誤検出を防止し易く、より適切な「判定結果」を得ることが可能となる。したがって、回転ドラム3の搬送速度や画像検査部23の処理能力等にもよるが、処理画像形成手段25によってなるべく多数の処理画像を用意しておくのが好ましい。
【0043】
なお、合成マスター画像Gと各検出用画像Gとの比較に際しては、合成マスター画像Gにおける異物被疑マスター領域79の認識感度を、各検出用画像Gにおける異物被疑領域77の認識感度よりも大きくしておくのが好ましい。具体的には、例えば、合成マスター画像Gの形成に用いられる処理画像の二値化レベルを、検出用画像Gとして抽出される処理画像の二値化レベルよりも(明側に)高くして、微妙な中間色の同一濃度レベル部分につき、合成マスター画像Gにおける異物被疑マスター領域79の方を、検出用画像Gにおける異物被疑領域77よりも認識され易くしておく。これによれば、比較基準をなす合成マスター画像Gが各検出用画像Gよりも実像に近い精密な画像となり、上記「パターン」設定とも相俟って、歩留りや生産性をさらに良好にできる。
【0044】
このようにして、検査ユニット10a〜10dにより、検査物品60あたり最低計4セットの検査がおこなわれる。検査ユニット10a〜10dの各「判定結果」にもとづく信号が、電磁弁に接続された制御回路(図示せず)等を介して搬出手段5には入力されており、「判定結果」が一定数以上の「良」を含んでいる、あるいは一定数未満の「不良」しか含んでいない場合には、当該検査物品60が良品(60A;異物66が混在しない)として、良品取出しスターホイール52を介して搬出され、「判定結果」が一定数以上の「不良」を含んでいる、あるいは一定数未満の「良」しか含んでいない場合には、当該検査物品60が不良品(60B;異物66が混在する)として、不良品取出しスターホイール53を介して搬出される。この実施形態では、「判定結果」が全て「良」である場合に、良品60Aとして搬出され、「判定結果」に1つでも「不良」がある場合には、不良品60Bとして搬出されるようになっている。なお、良品60Aのうち、汚れ等65が付着したものについては、図示しない後工程によって最終的には排除される。
【0045】
以上説明したとおり、検査装置1によれば、誤検出が発生し難く、検査物品60の内容液63中に混在し得る異物66を、アンプル容器62外部に付着した汚れ等65と区別して、より的確に検出することが可能となる。また、検査物品60の良否(良品60Aであるか不良品60Bであるか)の判定が適切におこなわれ得ることから、歩留りや生産性を良好にでき、実際の生産現場にも導入し易い。
【0046】
また、各撮像部21が、回転ドラム3から独立状に固設されており、検査物品60における検査エリア72が、検査物品60の搬送に追従して自動設定されるようにしたため、撮像部21を検査物品60の回転(公転)に同期移動させるようなもの等に比べて、構造をきわめて簡素化できるとともに、短時間で大量の検査物品60を処理することが可能となる。
【0047】
上記実施形態の変形例を図7に示す。図7は、変形例に係る異物検査装置100の一部構成を示す概略平面図である。上記と共通する構成には同一の符号を付し、検査ユニット10a〜10d、自転手段11、停止手段15、姿勢保持手段16等については図示を省略している。
【0048】
図7に示すように、異物検査装置100は、所定のリターン手段102を備える。リターン手段102は、図7に示すR103、R104の向きに水平回転(かつ仕込みスターホイール41および振分けスターホイール51と同期)するリターン用振分けスターホイール103、リターン用スターホイール104から構成されている。
【0049】
異物検査装置100では、検査ユニット10a〜10dによる各「判定結果」に応じて、電磁弁に接続された制御回路(図示せず)等により搬出手段5およびリターン手段102に信号が入力され、回転ドラム3から搬出される検査物品60を、リターン手段102を介して再び回転ドラム3に搬入し、自動的に再検査できるようになっている。上記信号に基づき、リターン用振分けスターホイール103の各凹壁面に穿設される小穴(図示せず)から圧空を作用させることで、振分けスターホイール51で搬出途中の当該検査物品60が、リターン用スターホイール103へと吸着されている。
【0050】
異物検査装置100では、検査ユニット10a〜10dの「判定結果」に全体の1/4を超える「不良」があれば、リターン手段102は動作せず、当該検査物品60が不良品取出しスターホイール53を介して搬出され、検査ユニット10a〜10dの「判定結果」に全体の1/4以下の「不良」しかない場合に、リターン手段102が動作して、当該検査物品60が再検査されるように設定してある。但し、この設定は任意に変更可能であり、検査ユニット10a、10b…の配設箇所数等によっては、「判定結果」に全体の1/4を超える「不良」がある場合にも、リターン手段102を動作させるようにしてよい。
【0051】
このような異物検査装置100によれば、本来グレーゾーンの検査物品60が、自動的に再検査されるため、検査物品60の良否(良品60Aであるか不良品60Bであるか)の判定が一層適切におこなわれるようになり、さらなる歩留りや生産性の向上が可能となる。
【0052】
以上の実施形態の記述は、本発明をこれに限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正や設計変更等が可能である。
例えば、検査ユニット10a、10b…の配設箇所数や回転ドラム3の大きさ等は、適宜変更することができる。検査精度向上のためには、検査ユニット10a、10b…が少なくとも3箇所、好ましくは4箇所以上に配設されるのがよい。
回転ドラム3に替えて、例えば直線状に検査物品60を搬送するコンベヤ等の他の搬送手段を用いることもできる。撮像部21や照明部22を、反射光方式等による構成としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、検査ユニット10a、10b…で、同一の検査がおこなわれるようにしたが、検査ユニット10a、10b…ごとに処理画像の枚数を変えたり、異なる判定基準にもとづく処理をおこなわせるようにしてもよい。検査ユニット10a、10b…ごとに自転手段11による自転速度等を変えることもできる。
【0054】
また、上記実施形態では、薬剤等が充填されたアンプル容器62を例にして説明したが、本発明はこれに限らず、シリンジやバイアル等の様々な容器および好ましくは或る程度の流動性を有する各種の内容液からなるものが検査物品60として採用される。検査物品60の容器や内容液が不透明等の場合であっても、X線や紫外光、赤外光等を適宜用いることで、本発明の適用が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 検査装置
3 回転ドラム
4 搬入手段
5 搬出手段
10a、10b、10c、10d 検査ユニット
11 自転手段
15 停止手段
16 姿勢保持手段
21 撮像部
23 画像検査部
25 処理画像形成手段
26 合成マスター画像形成手段
27 検出用画像抽出手段
28 画像比較手段
29 判定手段
60 検査物品
62 アンプル容器
63 内容液
65 汚れ等
66 異物
72 検査エリア
77 異物被疑領域
79 異物被疑マスター領域
合成マスター画像
検出用画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該検査物品を自転させたのちに自転停止させて、所定の検査ユニットで、該内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査装置であって、
該検査ユニットが、
自転停止された該検査物品を連続的に撮像する撮像部と、
該撮像部による撮像を元に、異物被疑領域を有し得る多数の処理画像を形成する処理画像形成手段と、
該多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、異物被疑マスター領域を有し得る合成マスター画像を形成する合成マスター画像形成手段と、
該多数の処理画像のうち、該合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出する検出用画像抽出手段と、
該合成マスター画像の異物被疑マスター領域と該複数の検出用画像の異物被疑領域とをそれぞれ比較することにより、該内容液中の異物の有無を判定する判定手段と、を備えた異物検査装置。
【請求項2】
該合成マスター画像の異物被疑マスター領域の位置から洩出するように、該検出用画像の異物被疑領域が存在している場合を、NGパターンとし、該検出用画像の該NGパターンへの該当数にもとづいて、該内容液中の異物の有無が判定される請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
該合成マスター画像における異物被疑マスター領域の認識感度が、該検出用画像における異物被疑領域の認識感度よりも大きくされている請求項2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
該検査物品を一定間隔で平面視略円環状に支持して搬送する回転ドラムを有するとともに、該検査ユニットが、該回転ドラムに沿って設けられており、
該検査ユニットによる判定結果に応じて、該回転ドラムから搬出される該検査物品を、再び該回転ドラムに搬入することのできるリターン手段をさらに備えた請求項1乃至3の何れかに記載の異物検査装置。
【請求項5】
撮像中にある該検査物品を、該撮像部に対して一定姿勢に保持する姿勢保持手段をさらに備えた請求項4に記載の異物検査装置。
【請求項6】
該撮像部が、該回転ドラムから独立状に固設されており、
該検査物品における検査エリアが、該検査物品の搬送に追従して自動設定されるようになされた請求項5に記載の異物検査装置。
【請求項7】
内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該検査物品を自転させたのちに自転停止させて、該内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査装置であって、
自転停止された該検査物品を連続的に撮像する撮像部と、
所定の画像検査部と、を備え、
該画像検査部が、該撮像部による撮像を元に、異物被疑領域を有し得る多数の処理画像を形成し、該多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、異物被疑マスター領域を有し得る合成マスター画像を形成するとともに、該多数の処理画像のうち、該合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出し、該合成マスター画像の異物被疑マスター領域と該複数の検出用画像の異物被疑領域とをそれぞれ比較することにより、該内容液中の異物の有無を判定するようになされた異物検査装置。
【請求項8】
内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中に混在し得る異物を検出する異物検査方法であって、
該内容液中の異物を浮動させる外力を該検査物品に付与したのちに、該検査物品の容器を相対静止させる工程と、
該容器が相対静止された検査物品を連続的に撮像して、異物被疑領域を有し得る多数の処理画像を形成する工程と、
該多数の処理画像から任意に選ばれる複数の処理画像を論理和演算により合成して、異物被疑マスター領域を有し得る合成マスター画像を形成する工程と、
該多数の処理画像のうち、該合成マスター画像の形成に用いられなかったものを、複数の検出用画像として抽出する工程と、
該合成マスター画像の異物被疑マスター領域と該複数の検出用画像の異物被疑領域とをそれぞれ比較することにより、該内容液中の異物の有無を判定する工程と、を含む異物検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−95107(P2011−95107A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249443(P2009−249443)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000137904)株式会社ミューチュアル (37)
【Fターム(参考)】