説明

異物除去装置

【課題】構成を簡素化することが可能な異物除去装置を提供すること。
【解決手段】ワーク40を装着する容器体10に形成された通気孔14は、通路断面積の総和が排出通路31の通路断面積よりも小さくなっており、吸引ブロワ20による内部空間50の空気の吸引に伴って、通気孔14を介して内部空間50へ流入する空気を高速流としてワーク40の外周面44に吹き付け異物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに付着した異物を気体流によって除去して清浄化する異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、下記特許文献1に開示された異物除去装置がある。この異物除去装置は、作業ケース内のワークスペースにおいてエアガンで圧縮空気をワークに吹き付けて、ワークの表面に付着している異物を除去し、ワークスペース内の異物を排気装置で吸引してワークスペースから排出させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の異物除去装置では、エアガンから吹き出す圧縮空気を生成する生成手段と、異物を吸引して排出する排気装置からなる吸引手段とを必要とするため、装置の構成が複雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、構成を簡素化することが可能な異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
ワークの清浄化されるべき被清浄化面に気体を吹き付けて、被清浄化面に付着した異物を除去する異物除去装置であって、
ワークを装着した際に、被清浄化面が臨む清浄化空間をワークとの間に形成する空間形成部材と、
清浄化空間の気体を排出通路を介して吸引する吸引手段と、
空間形成部材に設けられ、清浄化空間に気体を流入させるための流入路と、を備え、
流入路は、排出通路よりも通路断面積が小さくなっており、
吸引手段による清浄化空間の気体の吸引に伴って、流入路を介して清浄化空間へ流入する気体を被清浄化面に吹き付けることを特徴としている。
【0007】
これによると、吸引手段が排出通路を介して清浄化空間の気体を吸引すると、排出通路よりも通路断面積が小さい流入路を介して清浄化空間へ流入する比較的高速の気体が、ワークの被清浄化面に吹き付けられて異物が除去され、異物は吸引手段に吸引される。したがって、清浄化空間へ流入する気体を高圧に圧縮する手段を必要としない。これにより、装置の構成を簡素化することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、流入路を介して清浄化空間へ流入する気体は外気であることを特徴としている。これによると、空間形成部材に装着される際にワークが触れていた外気をワークの被清浄化面に吹き付けることができる。したがって、ワークの被清浄化面に、ワークとほぼ同一温度の気体を吹き付けることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、流入路は、清浄化空間において気体が旋回流を形成するように設けられていることを特徴としている。これによると、流入路から清浄化空間へ流入した気体を、ワークの被清浄化面の全域に満遍なく吹き付け易い。
【0010】
また、請求項4に記載の発明のように、ワークの被清浄化面は略円筒状の外周面であることが好ましい。
【0011】
また、請求項5に記載の発明のように、ワークの被清浄化面は略円筒状の内周面であってもよく、空間形成部材を、ワークの内周面の内側に突出し内部に流入路が延設された突出ノズル部を有するものとすることで、ワークの内周面に流入路から清浄化空間へ流入した気体を容易に吹き付けることができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明では、被清浄化面は、ワークが他の部材に組み付けられたときに、当該他の部材と接触してシール構造を形成するシール部位であることを特徴としている。これによると、高い清浄度が要求されるシール部位を容易に清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における異物除去装置であるエア洗浄装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】容器体10内の空気の流れを説明するための断面図である。
【図4】ワーク40の使用時の組み付け関係を説明するための断面図である。
【図5】第2の実施形態におけるエア洗浄装置1の要部概略構成を示す模式図である。
【図6】他の実施形態におけるエア洗浄装置1の容器体10の構造を示す横断面図である。
【図7】他の実施形態におけるエア洗浄装置1の容器体10の構造を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における異物除去装置であるエア洗浄装置1の概略構成を示す模式図(一部断面模式図)であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0016】
図1に示すように、エア洗浄装置1は、ワーク40を装着するための容器体10、吸引手段に相当する吸引ブロワ20、および容器体10と吸引ブロワ20とを接続する吸引ダクト30等により構成されている。
【0017】
本実施形態のワーク40は、例えば圧力検出手段である圧力センサであり、内部にセンサ部が収容された本体部41、本体部41の下端から径外方向に突出したフランジ部42、および本体部41の下端面から下方に突出した装着部43等により構成されている。
【0018】
装着部43には、下端面から上方に向かって延び、本体部41内のセンサ部に圧力を伝搬するための圧力伝搬路43aが形成されている。装着部43の外周面44は略円筒形状をなしており、外周面44のうち図示上方部位には雄ねじ部45が形成されている。外周面44のうち雄ねじ部45よりも図示下方部位には、Oリング溝が環状に形成されて溝部内にはOリング46が配設されている。
【0019】
ワーク40が使用される際には、図4に示すように、ワーク40の装着部43が相手側部材140の取り付け孔部に装着される。したがって、相手側部材140の内周面144には、ワーク40の装着部43に対応して、雄ねじ部45が係止するための雌ねじ部145およびOリング46を押圧するためのシール面146が形成されている。
【0020】
図4に示すように、ワーク40が相手側部材140に装着されると、雄ねじ部45と雌ねじ部145とが係止しOリング46によりシール構造が形成される。相手側部材140は、ワーク40が組み付けられる他の部材に相当するものであり、ワーク40の装着部43のOリング46を配設した部位が、他の部材と接触してシール構造を形成するシール部位に相当する。
【0021】
ワーク40は、図4に示すように組み付けられて使用されるものであり、相手側部材140との間に気密性を確保するためには、組み付け前に装着部43の外周面44は清浄化されていることが要求される。装着部43の外周面44は、本実施形態における被清浄化面に相当する。
【0022】
図1に示すように、容器体10は、例えば金属製の筒状体であり、上面部11にワーク40が載置可能となっている。上面部11には上面開口縁部に段部11aが形成されており、上面部11にワーク40を載置する際には段部11aにフランジ部42を嵌め込むと、容器体10に対してワーク40の位置決めがなされるようになっている。
【0023】
容器体10に対してワーク40を位置決めして載置すると、容器体10の内周面12とワーク40の装着部43の外周面44との間には内部空間50が形成される。この内部空間50は、装着部43の外周面44の周方向全域に亘って形成される。内部空間50は、被清浄化面である外周面44が臨む清浄化空間に相当する。そして、容器体10は、ワーク40を装着した際に、外周面44が臨む内部空間50をワーク40との間に形成する空間形成部材に相当する。
【0024】
容器体10の内周面12は、図示上下方向の中間部がテーパ面12aとなっており、上端の開口よりも下端の開口の方が径が小さくなっている。容器体10は、有底筒状体であり、底面部に排気口13が形成されているということもできる。容器体10の下端開口は、内部空間50の空気を排気するための排気口13であり、排気口13には下流側の吸引ブロワ20にまで延びる吸引ダクト30の上流端が接続している。吸引ダクト30内の空気の通路が排出通路31である。
【0025】
容器体10の側面部には、容器体10の内部空間50と容器体10の外部空間とを連通する図1図示左右方向に延びる通気孔14が形成されている。図2に示すように、容器体10は、横断面において外周面が矩形状(本例では正方形状)をなしており、内周面12は円形状をなしている。通気孔14は、容器体10の外周の各面から内周面12の接線方向に延びている。
【0026】
複数の(本例では4つの)通気孔14は、図1に示すように、内方の端部が、内周面12のうちテーパ面12aの略上端部に開口している。通気孔14の内方端部の高さ(図1図示上下方向の位置)は、ワーク40の装着部43の外周面44の略中間部となっている(例えば、雄ねじ部45とOリング46が設けられたシール部との境界付近となっている)。
【0027】
通気孔14は、内部空間50の空気が排気口13から吸引されて排出されたときに、内部空間50に容器体10の外部の空気を流入させる流入路に相当する。複数の通気孔14の通路断面積の総和は、排出口13およびその下流側の排出通路31の通路断面積よりも極めて小さく設定されている。
【0028】
次に、上記構成に基づきエア洗浄装置1の作動について説明する。
【0029】
ワーク40を容器体10の上面部11側から所定位置に載置して吸引ブロワ20を作動すると、吸引ブロワ20による内部空間50の空気の吸引に伴って、通気孔14を介して内部空間50へ外気が流入する。通気孔14の通路断面積の総和は排出通路31の通路断面積よりも小さく設定されているので、通気孔14を通過する空気は高速流となる。
【0030】
通気孔14を通って内部空間50へ流入した空気は、図2に示すように、旋回流となって。ワーク40の外周面44に満遍なく吹き付けられる(外周面44の周方向に沿うように流れつつ吹き付けられる)。
【0031】
図3に示すように、内部空間50へ流入した空気は、旋回しつつ排気口13側へ流れて、外周面44の異物を除去し、異物とともに排気口13から図1に示す排出通路31を介して吸引ブロワ20に吸引される。吸引された空気中の異物は、吸引ブロワ20内に設けられた図示を省略したフィルタ部材に捕捉される。
【0032】
なお、図3は、容器体10内の空気の流れを説明するために、ワーク40等の図示を省略している。
【0033】
吸引ブロワ20は、ワーク40を容器体10に装着する度に作動してもよいが、吸引ブロワ20を連続作動させ、容器体10に装着するワーク40を交換してもよい。ワーク40を容器体10に装着したときには、通気孔14によって高速の空気流れが形成され、ワーク40を容器体10から離脱させたときには、容器体10の上面部11の開口から外気が流入して高速の空気流は形成されない。
【0034】
上述の構成および作動によれば、ワーク40を装着する容器体10に形成された通気孔14は、通路断面積の総和が排出通路31の通路断面積よりも小さくなっており、吸引ブロワ20による内部空間50の空気の吸引に伴って、通気孔14を介して内部空間50へ流入する空気を高速流としてワーク40の外周面44に吹き付け、外周面44に付着していた異物を除去し、異物を吸引ブロワ20で吸引して捕捉することができる。
【0035】
したがって、高圧の空気を圧縮手段等により生成してワーク40の外周面44に吹き付ける必要がなく、装置の構成を簡素化することができる。
【0036】
また、通気孔14を介して内部空間50へ流入する空気を外気としているので、ワーク40の温度と吹き付ける空気の温度とをほぼ同一とすることができる。したがって、ワーク40の外周面44に結露等の不具合を発生させることを抑止できる。
【0037】
また、内部空間50へ通気孔14を介して内周面12の接線方向から空気を導入して、内部空間50において空気が旋回流を形成するようになっている。したがって、ワーク40の外周面44の全域に満遍なく空気を吹き付けることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5に基づいて説明する。
【0039】
本第2の実施形態は、本発明を適用した異物除去装置であるエア洗浄装置1を、前述の第1の実施形態で説明した相手側部材140の内周面144の異物除去に適用した例である。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。また、本実施形態の説明では、相手側部材140がワークに相当するので、以下ワーク140と呼ぶことがある。
【0040】
図5に示すように、本実施形態では、容器体10は、上面部11にワーク140が載置可能となっている。上面部11にワーク140を載置する際には段部11aにワーク140の筒状部の端部を嵌め込むと、容器体10に対してワーク140の位置決めがなされるようになっている。
【0041】
ワーク140の内周面144は、前述のワーク40の装着部43の外周面44に対応して略円筒形状をなしている。
【0042】
容器体10には、ワーク140の内周面144の内側において上方に突出したノズル部111(突出ノズル部に相当)と、ノズル部111の下方の基端部と容器体10の内周面12とを繋ぐ複数の梁部112とが設けられている。
【0043】
本実施形態の通気孔14は、容器体10の外周面から梁部112内およびノズル部111内にまで延設されて、ノズル部111の図示上方の先端部近傍で下流端が開口している。なお、通気孔14は下流端近傍で複数に分岐して下流端は複数の開口を有している。
【0044】
容器体10に対してワーク140を位置決めして載置すると、容器体10のノズル部111とワーク140の内周面144との間に内部空間50が形成される。この内部空間50は、内周面144の周方向全域に亘って形成される。雌ねじ部145およびシール面146(シール部位に相当)を有するワーク140の内周面144が、本実施形態における被清浄化面に相当する。
【0045】
本実施形態の通気孔14の下流端は、図5図示上下方向においてワーク140のシール面146とほぼ同じ位置に開口している。
【0046】
上述の構成によれば、被清浄化面がワーク140の内周面144であっても、内周面の内部に突出し内部に通気孔14が延設されたノズル部111を有する容器体10を用いることで、吸引ブロワ20を作動した際には、ワーク140の内周面144に空気を高速流として吹き付けて、異物を除去することができる。
【0047】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0048】
上記第1の実施形態では、容器体10の内周面12の接線方向から外気を導入し内部空間50に旋回流を形成していたが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように流入路である通気孔114を設けて、内周面12の接線方向以外から外気を導入し内部空間50に旋回流を形成するものであってもよい。また、図7に示すように流入路である通気孔214を設けて、内周面12に直交する方向(図7の例ではワーク外周面44に直交する方向でもある)から外気を導入するものであってもよい。
【0049】
また、第2の実施形態においても、通気孔14を介して内部空間50に流入した空気は、旋回流を形成するものであってもよいし、異物の除去が良好に行われるのであれば旋回流を形成しないものであってもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、流入路は通気孔14であったが、これに限定されるものではない。例えば、容器体10の上面部11に設けた通気溝を流入路としてもかまわない。
【0051】
また、上記各実施形態では、通気孔14を介して内部空間50に外気を吹き出していたが、通気孔14を介して導入されるものは外気でなくてもかまわない。例えば、空調された空気であってもよし、空気以外の気体であってもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、ワーク40は圧力センサであり、ワーク140は圧力センサを取り付ける相手側部材である場合を例に説明したが、ワークはこれらに限定されるものではなく、異物を除去して清浄化することが必要な被清浄化面を有するワークであればよい。
【0053】
また、容器体10を、ワークを装着した際に、被清浄化面が臨む清浄化空間をワークとの間に形成する空間形成部材として説明していたが、これに限定されるものではなく、被清浄化面を有するワークの形状等に応じて、容器体以外の構造体を空間形成部材として採用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 エア洗浄装置(異物除去装置)
10 容器体(空間形成部材)
14、114、214 通気孔(流入路)
20 吸引ブロワ(吸引手段)
30 吸引ダクト
31 排出通路
40 ワーク
44 外周面(被清浄化面)
111 ノズル部(突出ノズル部)
140 相手側部材(第1の実施形態の他の部材、第2の実施形態のワーク)
144 内周面(被清浄化面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの清浄化されるべき被清浄化面に気体を吹き付けて、前記被清浄化面に付着した異物を除去する異物除去装置であって、
前記ワークを装着した際に、前記被清浄化面が臨む清浄化空間を前記ワークとの間に形成する空間形成部材と、
前記清浄化空間の気体を排出通路を介して吸引する吸引手段と、
前記空間形成部材に設けられ、前記清浄化空間に気体を流入させるための流入路と、を備え、
前記流入路は、前記排出通路よりも通路断面積が小さくなっており、
前記吸引手段による前記清浄化空間の気体の吸引に伴って、前記流入路を介して前記清浄化空間へ流入する気体を前記被清浄化面に吹き付けることを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
前記流入路を介して前記清浄化空間へ流入する気体は外気であることを特徴とする請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項3】
前記流入路は、前記清浄化空間において気体が旋回流を形成するように設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記被清浄化面は略円筒状の外周面であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記被清浄化面は略円筒状の内周面であり、
前記空間形成部材は、前記内周面の内側に突出し、内部に前記流入路が延設された突出ノズル部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記被清浄化面は、前記ワークが他の部材に組み付けられたときに、前記他の部材と接触してシール構造を形成するシール部位であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240277(P2011−240277A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115508(P2010−115508)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】