説明

異種完全二重特異性及び/または三重特異性抗体を用いたexvivo免疫化の方法

【課題】新たなヒトにおける悪性疾患の治療法、特に抗腫瘍免疫系治療法の提供。
【解決手段】以下の工程:a)自己腫瘍細胞を単離すること;b)再注入に引き続くそれの生存を避けるために、該腫瘍細胞を処理すること;c)該処理された腫瘍細胞を、以下の性質を示す完全な異種の二重特異性及び/三重特異性抗体とインキュベートすること:α-T細胞に結合する;β-腫瘍細胞上の少なくとも一つの抗原と結合する;γ-Fc受容体ポジティブ細胞と(二重特異性抗体の場合には)そのFc部分で、または(三重特異性抗体の場合には)第三の特異性で結合すること;を含むヒト及び動物のex vivoでの免疫化法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種で完全な二重特異性抗体及び/または三重特異性抗体を用いたex vivo免疫化の方法に関し、同様に腫瘍性疾患の予防及び治療における、そして特に抗腫瘍免疫の誘導における上記方法の産物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年間に成し遂げられた化学療法及び放射線療法における進歩にもかかわらず、例えば進んだ乳ガンといったヒトにおける悪性の疾患は未だ非常に好ましくない予測しか可能でない。一般的に該疾患は治癒することは不可能である。それゆえ新たな治療ストラテジーを開発する必要がある。この観点においては、腫瘍を拒絶する患者の免疫系を誘導するために用いられる免疫治療アプローチに大きな期待が置かれている。腫瘍関連性抗原が腫瘍細胞上に存在し、特に免疫系がこれらの抗原をよく認識でき悪性細胞を攻撃できることはよく知られている。しかしながら腫瘍はそれらが免疫応答を避けることを可能にする様々なストラテジーを発展させている。該細胞は例えば腫瘍関連性抗原の不十分な提示によって、及び/または一般的に存在する腫瘍特異的T細胞の不十分な活性化によってこれを成し遂げている。
【0003】
年当たり約43,000の新たなケースと共に、乳ガンはドイツにおける女性のガンの統計の最大の位置を占めている。診断時にリンパ節障害に苦しんでいる女性の3分の1より小さい数のみが、再発なく10年間生存する。
【0004】
現在までのところ、乳ガンに向けられた免疫治療的アプローチは、BCGまたはレバミソールによる治療のような非特異的刺激に対する方法に制限されており、そしてIL-2を用いたLAK細胞及びNK細胞の使用に制限されている(3,4)。しかしながら用いられる免疫治療のタイプは生命の延長に対していかなる証拠も提供していない;BCGによる治療はかえって不都合であるとする証明さえ存在する(3)。細胞の非特異的活性化は他のタイプの腫瘍においても大変効果的であるため、特異的免疫応答の誘導に向けた試みが為されている。
【0005】
例えばT細胞再偏向性二重特異性抗体が腫瘍の治療において用いられた。これらの抗体はその結合腕の一つでT細胞受容体複合体を結合し、他の腕で腫瘍細胞上の腫瘍関連性抗原を結合する。結果として生じたT細胞の活性化及び腫瘍細胞の場所的近接化は、それぞれアポトーシスの誘導によってまたはTNF-αあるいはパーフォリンのようなサイトカインによって腫瘍細胞の破壊を導く。
【0006】
公知の技術において腫瘍治療で用いられる抗体は、直接的に患者内に注入されていた。このタイプの方法はいくつかの以下の欠点を示す:
−それは高投与量の抗体を必要とする;
−ひどい副作用が生じる可能性がある;
−その腫瘍結合腕によって、抗体はin vivoでの適用の間通常組織にも結合する可能性がある。
【非特許文献1】Haagen等, Interaction of human monocyte Fcγ receptors with rat IgG2b, J.Immunolog., 1995, 154: 1852-1860
【非特許文献2】Gast G.C.,Haagen I.-A.,van Houten A.A.,Klein S.,Duits A.J.,de Wager R.A.,Vroom T.M.,Clark M.R.,J.Phillips,van Dijk A.J.G.,de Lau W.B.M.,Bast B.J.E.G. CD8 T-cell activation after intravenous administration of CE3 X CD19 bispecific antibody in patients with non-Hodgkin lymphoma. Cancer Immunol.,Immunother. 40: 390, 1995
【非特許文献3】Tenny,C.,Jacobs,S.,Stoller,R.,Earle,M.,及びKirkwood,J. Adoptive cellular immunotherapy with high-dose chemotherapy and autologous bone marrow rescue (ABMR) for recurrent breast cancer (meeting abstract). Proc Annu.Meet.Am.Soc.Clin.Oncol; 11: A88, 1992 ISSN: 0736-7589. CO: PKAODO-7589 CO, 1993.
【非特許文献4】Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group, Systemic treatment of early breast cancer by hormonal, cytotoxic or immune therapy - 133 randomised trials involving 31 000 recurrences and 24 000 deaths among 75 000 women. Part II Lancet 339: 71-85, 1992
【非特許文献5】Guo等, Effective tumor vaccines generated by in vitro modification of tumor cells with cytokins and bispecific monoclonal antibodies. Nature Medicine 3: 451, 1997
【非特許文献6】Lindhofer等, Preferential species-restricted heavy-light chain pairing in rat-mouse quadromas: Implications for a single step purification of bispecific antibodies, J.Immunology 1995, 155:219
【非特許文献7】Bruggemann等, A MATCHED SET OF RAT/MOUSE CHIMERIC ANTIBODIES: Identification and Biological Properties of RAT H CHAIN CONSTANT REGIONS μ,γ1,γ2a,γ2b,ε,and α1, J. Immunology 1989, 142:3145
【非特許文献8】Routledge等, A humanized monovalent CD3 antibody which can activate homologous complement, Eur. J. Immunology 1991, 21:2717
【非特許文献9】Greenwood等, Structural motifs involved in humen IgG antibody effector functions, Eur. J. Immunology 1993, 23:1098
【非特許文献10】Kardinal等, Genetic atability of gene targeted immunoglobolin loci. I. Heavy chain isotype exchange induced by a universal gene replacement vector, J. Immunology 1996, 89:309
【非特許文献11】Kardinal等, Integration vectors for antibody chimerization by homologous recombination in hybridoma cells, Eur. J. Immunology 1995, 25:792
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新たなヒトにおける悪性疾患の治療法、特に抗腫瘍免疫系を成し遂げることを目標としたものを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にしたがってこの目的は請求項1により詳細に特性指摘されている方法によって成し遂げられる。本方法の好ましい実施態様は従属請求項から明白になる。
【0009】
本発明の方法の最終産物は抗体を含む腫瘍細胞調製物である。この腫瘍細胞調製物を抗腫瘍免疫性を誘導することによって腫瘍性疾患の予防及び治療において用いる。
【0010】
本発明の方法を用いることによって、自己腫瘍細胞が異種二重特異性及び/または三重特異性抗体を用いて治療され、本方法によって得られた腫瘍細胞調製物はその自己腫瘍細胞が得られている患者または動物内に再注入されるために用いられる。
【0011】
さらに本発明は腫瘍性疾患の予防及び治療における、特に抗腫瘍免疫系および特に好ましくは長期的免疫系の達成における本発明にしたがって提供される方法及び腫瘍細胞調製物の使用に関する。
【0012】
本発明、特に実施例2において提供される実験により、長期継続腫瘍免疫性が提供されることが示される。マウスにおいて実施された実験の結果は、ヒトにも移し替えることが可能である。数年という長期的免疫性が本発明を用いることによって提供され得ることが期待される。本発明に記述されているような腫瘍細胞は、一つ以上のミューテーションによってその通常機能を欠失し、またはその通常機能が変化している全ての細胞である。これらのミューテーションのため、腫瘍細胞は非コントロール方式で増殖可能である。
【0013】
本発明にしたがった腫瘍免疫性は、自己腫瘍の長期的または永続的でさえある破壊及び/またはコントロールが達成される方法のような、自己腫瘍に対する生物の体の免疫系を活性化することによって定義される。
【0014】
本発明にしたがって、上記与えられた定義の下にある全ての種類の腫瘍は、本方法によって治療され得る。特に上皮腫瘍、腺ガン、結腸ガン、乳ガン、卵巣ガン、肺、喉、鼻及び耳の各ガンが治療され得る。さらに好ましくは白血病及びリンパ球のような非上皮腫瘍、及び肝腫瘍のようなウイルス誘発性の腫瘍が治療され得る。
【0015】
本発明にしたがって、異種完全二重特異性抗体及び/または三重特異性抗体が用いられる。これらの抗体は患者から前もって得られる腫瘍細胞(自己腫瘍細胞)を用いてex vivoで接触される。引き続く再注入において腫瘍細胞の生存を防止するため、腫瘍細胞は抗体と接触する前に放射線照射のような本質的に既知である方法において処理される。放射線照射に引き続いて腫瘍細胞は完全異種二重特異性抗体及び/または三重特異性抗体と共にインキュベートされる。本発明にしたがって、全ての抗体が用いられるわけではなく、完全である、すなわち機能的Fc部分を持つ抗体のみが使用され、それらは天然において異種である、すなわち異なるクラス(サブクラスコンビネーション、断片もまた)及び/または起源(種)の免疫グロブリンH鎖より成るような抗体でなければならない。
【0016】
これらの完全異種二重特異性及び/または三重特異性抗体は、以下の性質をさらに持つように選択されるであろう:
α−T細胞に結合すること;
β−少なくとも一つの腫瘍細胞上の抗原に結合すること;
γ−そのFc部分(二重特異性抗体の場合)によって、または第三の特異性(三重特異性抗体の場合)によって、Fc受容体ポジティブ細胞に結合すること;
【0017】
本発明の特に好ましい実施態様としては、完全異種二重特異性及び/または三重特異性抗体をFc受容体ポジティブ細胞を活性化し、それによってサイトカイン及び/または共刺激抗原の発現を誘導または増大することができるように選択する。上記抗体を含むように得られた腫瘍細胞調製物はさらなる再注入のために調製されたものである。それは例えば再注入に適した装置に移される。
【0018】
三重特異性抗体の場合、Fc受容体ポジティブ細胞への結合は好ましくはFc受容体ポジティブ細胞のFc受容体を介して、またはFc受容体ポジティブ細胞(抗原提示細胞)上のマンノース受容体のような他の抗原を介しても生じる。
【0019】
本発明の方法及びここで記述されている抗体の使用だけが、腫瘍細胞が以前に得られている患者内への抗体の再注入後に抗腫瘍免疫系の発展を確実にする。好ましくは再注入は原始的腫瘍の治療の後の患者で、好ましくは最小の残余の疾患(MRD)の場合の患者で実施される。ほとんど残余の腫瘍細胞を持たないが再発の高い危険をもつ患者においては、本発明にしたがって提供される方法の使用は特に効果的であろう。
【0020】
本発明の方法を用いることによって、公知の技術から知られており以下により詳細に記述されている欠点を避けることが可能である。
【0021】
本発明にしたがって有用な異種二重特異性抗体及び/または三重特異性抗体はある意味では本質的に既知のものであるが、別の意味ではそれらは本出願において初めて記述されるものである。bsabに対する例としては、乳ガンのような上皮腫瘍で用いられる抗CD3 x 抗epcam抗体が存在する。
【0022】
本発明にしたがって、2の方法のバリエーションが区別可能である:
1. 短期的インキュベーション、及び
2. 長期的インキュベーション。
【0023】
短期的インキュベーションは自己腫瘍を完全な異種二重特異性及び/または三重特異性抗体に10分から5時間の期間、または10分から3時間、またはさらに好ましくは15分から2時間の期間、さらに好ましくは15分から1時間の期間インキュベーションすることをいう。そしてこの方法で抗体とチャージされた腫瘍細胞を再注入のため調製する。
【0024】
長期的インキュベーションは自己腫瘍細胞を抗体とチャージするために、約10分から5時間、好ましくは15分から2時間、そしてさらに好ましくは15分から1時間インキュベーションすることをいう。続いて患者の血液細胞、好ましくは末梢血液の単核細胞(PBMC=peripheral blood mononucleated cell)を加え、そしてそれからこの混合物を1から14日、好ましくは3から10日そしてより好ましくは6から10日といった長期的な期間インキュベートする。代わりに処置のもう一つの方法は自己腫瘍細胞を直接的に二重特異性抗体及び/または三重特異性抗体と、そして患者の血液細胞と接触させることである。この方法では、腫瘍に対するたくさんの免疫細胞を「入れ知恵する」("priming")することがex vivoで成し遂げられる。その後これらの細胞を患者内に再注入する。長期的インキュベーションはまた抗体の内面化と分解を導く。
【0025】
予備的なin vitroでの結果は、記述された方法で前処理された免疫細胞はさらに二重特異性及び/または三重特異性抗体の添加なく腫瘍細胞を破壊できる(実施例1参照)。
【0026】
長期的インキュベーションと同様に短期的インキュベーションでは、T細胞は腫瘍細胞上に固定化された二重特異性及び/または三重特異性抗体によって腫瘍細胞へ再偏向される;同時に二重特異性及び/または三重特異性抗体のFc部分に対するFc受容体ポジティブ細胞の結合が再注入後生じる。これは(それぞれT細胞または腫瘍細胞上に)固定化された完全な二重特異性抗体のFc部分に対する結合によって、Fc受容体ポジティブ細胞の活性化を導く。
【0027】
免疫化の成功を増大するために、短期的インキュベーション法または長期的インキュベーション法のそれぞれにしたがった抗体を用いて処理された腫瘍細胞を、一度だけでなく適宜に数度患者に投与することが可能である。
【0028】
腫瘍細胞上では細胞内プロセッシングマシネリー(プロテアソーム複合体)と同様にMHC1の上流調節が、腫瘍細胞にすぐ近接したサイトカイン(INF-γ及びTNF-αのような)の放出のため生じる。T細胞の二重特異性抗体介在性活性化及びアクセサリー細胞のため、サイトカインが放出される(図1及び3参照)。すなわち完全なbsabによって腫瘍細胞が破壊され食作用を受けるだけではなく、その抗腫瘍免疫系もまた増大される。
【0029】
bsabによるFc受容体ポジティブ細胞の活性化は、それぞれbasbのサブクラスまたはサブクラスコンビネーションに依存する。in vitroでの実験に示されるように、例えばマウスIgG2a/ラットIgG2bのサブクラスコンビネーションのbsabは、Fc受容体ポジティブ細胞に結合できるが(1)、これらの細胞を比較可能に活性化することは明らかにできない(2)。
【0030】
完全なbsabは結合腕の一つ(例えばCD3またはCD2に対する)を介してT細胞に結合し活性化することが同時にできるが、bsabのFc部分に結合したFc受容体ポジティブ細胞由来の共刺激シグナルは、T細胞に伝達されるであろう。すなわちbsabの一つの結合腕を介したT細胞活性化と、T細胞へのFc受容体ポジティブ細胞由来の共刺激シグナルの同時に生じる伝達の組み合わせだけが、効果的なT細胞活性化を引き起こす(図1A)。腫瘍細胞で不十分に活性化されアネルギー性である腫瘍特異的T細胞は、本発明のex vivoでの前処理にしたがって再活性化もされるであろう(図1B)。
【0031】
抗腫瘍免疫系の誘導におけるさらなる重要な面は、食作用、プロセッシング及びbsabにより向けられ活性化されるアクセサリー細胞(単球/マクロファージ、樹状細胞、及びNK-「ナチュラルキラー」-細胞)による腫瘍構成成分の提示の可能性である。この抗原提示の古典的なメカニズムにより、CD8ポジティブ細胞と同様に腫瘍特異的CD4細胞が生産され得る。さらに腫瘍特異的CD4細胞は、T-B細胞共作用の流れにおいて体液性の免疫応答の誘導で重要な役割を演じる。
【0032】
二重特異性及び三重特異性抗体は、一つの結合腕によってT細胞のT細胞受容体複合体と結合でき、第二の結合腕によって腫瘍細胞上の腫瘍関連性抗原と結合できる。それによってそれらはサイトカインを放出することによってまたはアポトーシス介在性メカニズムによって腫瘍細胞を破壊するT細胞を活性化する。さらに二重特異性抗体によるその活性化の流れの中で、それはT細胞がその受容体を介して腫瘍特異的抗原を認識することを明らかに可能にし、それによって長期継続免疫化が始まる(図1B)。この点では二重特異性または三重特異性抗体の完全なFc部分は、単球/マクロファージ及び樹状細胞のようなアクセサリー細胞への結合を介在し、これらの細胞がそれら自身細胞毒性になり及び/または同時にT細胞に対する重要な共刺激シグナルを伝達することを誘導するという点で特に重要である(図1B)。この方法でT細胞応答が、ある程度は未知の腫瘍特異的ペプチドに対しても誘導されることが可能なように思われる。
【0033】
二重特異性及び/または三重特異性抗体によって腫瘍細胞に対してアネルギー化し得る腫瘍特異的T細胞の再偏向、及び二重特異性または三重特異性抗体のFc部分に結合したアクセサリー細胞による該T細胞の同時に起きる共刺激化は、細胞毒性T細胞(CTL)のアネルギーを逆転するように機能するであろう。すなわち完全な異種二重特異性及び/または三重特異性抗体を用いて、腫瘍に対して患者内に存在するT細胞寛容が中和され得、それによって長期継続腫瘍免疫系が誘導され得る。
【0034】
最後の面は、同系の腫瘍及び完全なbsabを用いた処理に引き続いて長期継続抗腫瘍免疫系を誘導したマウスを用いた実験からの予備的なin vivoでのデータによって支持される。これらの実験において、第一の腫瘍注射の後bsabを用いて成功して処理され得た14の動物のうち全部の14が、第一の注射の後144日でのもう一回の腫瘍注射をbsabのさらなる投与なしで生き残った(実施例2参照)。
【0035】
二重特異性及び/または三重特異性抗体によるex vivoでの免疫化におけるもう一つの利点は、(i) 起こり得る副作用を最小化すること、(ii) 体の外で腫瘍細胞に対する腫瘍結合腕の結合をコントロールすること、そして(iii) できるだけ二重特異性及び三重特異性抗体を少なく使用することである。主として以下に詳細が記述されているであろう方法には2の異なる方法が存在する。長期的インキュベーションに関する重要な点は、用いられる二重特異性または三重特異性抗体は計画されたインキュベーション期間の間消失し分解されることである。この方法ではこの免疫化は、冗長な薬剤改善工程を避けるであろう。
【0036】
短期的及び長期的インキュベーション法において、腫瘍細胞は抗体と10分から5時間の期間以上、好ましくは3時間まで、さらに好ましくは2時間まで、またさらに好ましくは15分から1時間インキュベートされる。好ましくは該インキュベーションは4℃から25℃の温度で、特に好ましくは4℃から10℃で実施される。該インキュベーションは好ましくは中性のpHを持つバッファー生理食塩水の滅菌環境で実施される。短期的インキュベーションの場合では、患者内への再注入はその後すぐに実施される。長期的インキュベーション法においては、このプレインキュベーションに引き続いて単核末梢血液細胞を加え、さらに1から14日の期間、より好ましくは3から10日、さらに好ましくは6から10日間プレインキュベートされた腫瘍細胞/抗体と共にインキュベートする。好ましくはこのインキュベーションはインキュベーターにおいてGMPコンディション(適切に製造された生産物(Good Manufacturing Production=GMP))の下と同様に滅菌コンディションの下で37℃で実施される。上記記述したように長期的インキュベーションの下では、血液細胞は代わりに適したコンディションの下で腫瘍細胞及び抗体と共にインキュベートされてもよい。
【0037】
上述したインキュベーションコンディションは例示としてのみ意図されている。用いられる腫瘍細胞及び抗体に依存して、他の期間、温度、コンディション等、及び一般的に異なるインキュベーションコンディションもまた用いられ得る。簡単な実験によって、当業者は該コンディションを確立することが可能であろう。
【0038】
プレインキュベーションの間腫瘍細胞は好ましくは107から109細胞の量で、さらに好ましくは約108細胞の量で用いられる。当然当業者は研究室の実験によって測定され得る異なるインキュベーションコンディションを選択できる(例えば細胞数およびインキュベーション期間の変化)。本発明の方法において用いられる二重特異性及び/または三重特異性抗体は、2から100μgの量で、さらに好ましくは5から70μgの量で、特に好ましくは5から50μgの量で加えられる。
【0039】
用いられる自己腫瘍細胞は例えば、腫瘍細胞のさらなる生存を避けるために放射線照射される。例えばガンマ放射線が用いられ、例えば50から100Gyの放射量で用いられる。本発明のもう一つの実施態様では、自己腫瘍細胞は化学的物質によって、例えばそのさらなる生存を避けるためマイトマイシンCによって処理される。
【0040】
本発明にしたがって用いられる抗体は、好ましくはアネルギー状態である腫瘍特異的T細胞を再活性化し得る。さらにそれらは腫瘍反応性相補的結合抗体を誘導でき、それによって体液性免疫応答を誘導できる。
【0041】
結合は好ましくは、CD3,CD2,CD4,CD5,CD6,CD8,CD28,及び/またはCD44を介してT細胞と生じる。Fc受容体ポジティブ細胞は少なくともFcγ受容体I,II,またはIIIを持っている。
【0042】
本発明にしたがって用いられ得る抗体は、単球、マクロファージ、樹状細胞、「ナチュラルキラ」−細胞(NK細胞)及び/またはFcγ受容体1-ポジティブ細胞である活性化好中球に結合できる。
【0043】
本発明にしたがって用いられ得る抗体は、共刺激抗原のようにCD40,CD80,CD86,ICAM-1,及び/またはLFA-3の発現における誘導または増大を導き、及び/またはFc受容体ポジティブ細胞によるサイトカイン分泌を導く。該サイトカインは好ましくはIL-1,IL-2,IL-4,IL-6,IL-8,IL-12,及び/またはTNF-αである。
【0044】
T細胞への結合は好ましくはT細胞のT細胞受容体複合体を介して行われる。
【0045】
本発明にしたがって用いられ得る二重特異性抗体好ましくは:
抗CD3 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD4 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD5 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD6 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD8 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD2 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD28 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD44 x 抗腫瘍関連性抗原抗体である。
【0046】
本発明にしたがって用いられ得る三重特異性抗体好ましくは:
抗CD3 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD4 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD5 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD6 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD8 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD2 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD28 x 抗腫瘍関連性抗原抗体
及び/または抗CD44 x 抗腫瘍関連性抗原抗体である。
【0047】
本発明にしたがって有用な三重特異性抗体は少なくとも、T細胞結合腕、腫瘍細胞結合腕及びFc受容体ポジティブ細胞に結合する結合腕を持つ。言及された結合腕の最後のものは、抗Fc受容体結合腕またはマンノース受容体結合腕であろう。
【0048】
二重特異性抗体は好ましくは異種完全ラット/マウス二重特異性抗体である。
【0049】
本発明にしたがって有用な二重特異性及び三重特異性抗体によって、T細胞は活性化され腫瘍細胞に対して再偏向される。好ましくは用いられるであろう異種完全二重特異性抗体は、一つ以上の以下のイソタイプのコンビネーションから選択される:
ラット-IgG2b/マウス-IgG2a,
ラット-IgG2b/マウス-IgG2b,
ラット-IgG2b/マウス-IgG3;

ラット-IgG2b/ヒト-IgG1,
ラット-IgG2b/ヒト-IgG2,
ラット-IgG2b/ヒト-IgG3[東洋のアロタイプ G3m(st)=プロテインAに結合],
ラット-IgG2b/ヒト-IgG4;

ラット-IgG2b/ラット-IgG2c;

マウス-IgG2a/ヒト-IgG3[白色人種のアロタイプ G3m(b+g)=プロテインAに結合しない、以下ではとして示される]

マウス-IgG2a/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2a/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2a/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ-CH2-CH3]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG2-[ヒンジ-CH2-CH3]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG3-[ヒンジ-CH2-CH3、東洋のアロタイプ]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ-CH2-CH3]

ヒト-IgG1/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG2[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG2[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG2/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG2-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

マウス-IgG2b/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2b/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]
【0050】
本発明にしたがって有用な抗体は好ましくは、モノクローナル、キメラ、組換え、合成、半合成または化学的に修飾された、例えばFv,Fab,scFvまたはF(ab)2断片を持つ完全な抗体である。
【0051】
好ましくはヒト起源の抗体または誘導体または断片、あるいはそれらをヒトへの応用のために適するような方法で改変した抗体(「ヒト化抗体」と呼ばれる)が用いられる(例えばShalaby等,J.Exp.Med.175(1992),217;Mocikat等,Transplantation 57(1994),405)。
【0052】
上記した様々なタイプの抗体及び断片の調製は当業者に明白である。例えば好ましくヒト、ラット、マウス、ウサギまたはヤギといった哺乳動物由来のモノクローナル抗体の調製は、例えばKohler及びMilstein(Nature 256(1975),495)そしてHarlow及びLane(Antibodies,A Laboratory Manual(1988),Cold Spring Harbor)またはGalfe(Meth.Enzymol.73(1981),3)に記述されているようなありきたりの方法を用いて実施され得る。
【0053】
さらに当業者に明白な技術にしたがった組換えDNA法によって、記述されている抗体を調製することが可能である(Kurucz等,J.Immunol.154(1995),4576;Hollinger等,Proc.Natl.Acad.Sc.USA 90(1993),6444)。
【0054】
本方法で用いられる抗体は過度の負担なく当業者によってデザインされ生産され得る。開示されたリファレンスのリスト、特にリファレンス(7)から(11)は、本発明に用いられる二重特異性及び三重特異性抗体を得るための方法を記述する。
【0055】
特にGreenwood等の書類(9)は、適したクローニング法による単一免疫グロブリンドメイン(例えばCH2)の交換を開示する。これらのクローニング法を用いることによって例えば請求項9に記述されている新たな抗体のコンビネーションが提供され得る。例としては以下のものがある:ヒト-(VH-CH1,VL-CL)-ヒトIgG4-(ヒンジ)-ヒトIgG4(CH2のN末端領域)-ヒトIgG3(CH2のC末端領域:>アミノ酸251位)-ヒトIgG3(CH3)。
【0056】
二重特異性抗体:ヒトIgG4/ヒト-(VH-CH1,VL-CL)-ヒトIgG4-(ヒンジ)-ヒトIgG4(CH2のN末端領域)-ヒトIgG3(CH2のC末端領域:>アミノ酸251位)-ヒトIgG3(CH3)の調製のための抗体:ヒトIgG4を用いたコンビネーションは、例えば書類(6)に記述されているような単一細胞融合によって調製される。
【0057】
一方で、二重特異性抗体と呼ばれる2の異なる特異性を持つ抗体の調製は、組換えDNA法を用いて実施され得るが、もう一方ではハイブリッドハイブリドーマ融合法と呼ばれるものによっても実施され得る(例えばMilstein等,Nature 305(1993),537参照)。この方法によって、それぞれ一つの望ましい特異性を持つ抗体を生産するハイブリドーマ細胞系を融合させ、両者の特異性を持つ抗体を生産する組換え細胞系を同定し単離する。
【0058】
本発明に存在する問題は、請求項1に特性指摘される性質と活性を示す限りにおいて、二重特異性及び三重特異性抗体によって解決され得る。以下に示すように2及び3の特異性を持つ抗体の調製は、詳細に記述されている。該二重特異性及び三重特異性抗体を提供することは本分野の範疇に属しており、該調製法を記述している文献は全体として参考としてここで取り込まれる。
【0059】
本発明の基本的な問題に答えるのに適した三重特異性抗体と呼ばれる3の特異性を持つ抗体の調製は、例えば二重特異性抗体のIgGのH鎖の一つにもう一つの特異性を持つ第三の抗原結合部位を接合することによって、例えば「単一鎖可変断片」 (scFv)の形態で実施され得る。scFvは例えばH鎖の一つに以下のリンカーを介して結合される:
-S-S(G4S)n-I リンカー
(S=セリン、G=グリシン、D=アスパラギン酸、I=イソロイシン)。
【0060】
類似して、三重特異性F(ab)2構築物は二重特異性抗体の一つの特異性のH鎖のCH2-CH3領域を、第三の特異性のscFvによって置換することによって調製され、一方で例えば同種組換え等によってコード遺伝子内へのストップコドンの導入によって(「ヒンジ」領域の末端に)、他の特異性のH鎖のCH2-CH3領域は除去される。(図5参照)
【0061】
三重特異性scFv構築物を調製することも可能である。この場合3の異なる特異性を表す3のVH-VL領域を連ねて並べる(図6)。
【0062】
本発明にしたがって、例えば完全な二重特異性抗体が用いられる場合がある。完全な二重特異性抗体は、通常の抗体のように一つの特異性をそれぞれ表す2の抗体半分子(一つの免疫グロブリンH鎖およびL鎖のそれぞれ)の組み合わせで、付加的によく知られたエフェクター機能を示すFc部分を持つものである。好ましくはそれらはクァッドローマ法によって調製される。この調製法は代表的にDE-A-44 19 399に記述されている。この書類は二重特異性抗体の完全な開示の目的で、及び該抗体の定義の観点でも参考として全体として取り込まれる。当然他の調製法もまた、それらが本発明にしたがって必要とされる上述の完全な二重特異性抗体をもたらす範囲で用いられ得る。
【0063】
例えば新しく開発された生産法(6)によって、完全な二重特異性抗体は十分な量で調製され得る。乳ガン細胞上で2の異なる腫瘍関連性抗原(例えばGA-733-2=C215のようなc-erb-B2、ep-cam)に対して2の二重特異性抗体の組み合わせは、たった一つの抗原を発現している腫瘍細胞が認識されないという危険性を最小化する。
【0064】
抗c-erb-B2 x 抗CD64の特異性を持つ二重特異性F(ab')2断片を用いて処理することによって抗腫瘍免疫性を達成することも試みられている。bsF(ab')2断片の主な利点は、用いられる特異性のためにFcγRI+細胞だけが腫瘍に対して再偏向されることである。bsF(ab')2断片は腫瘍を直接的に破壊する能力を持つ一方で、それらはそれら自身では抗腫瘍免疫性を確立することはできない。特異的なT細胞受容体を持つT細胞だけがこの能力を持つ。FcγRI+細胞は、例えば腫瘍構成成分の食作用に引き続く腫瘍特異的ペプチドの提示によって(それぞれMHCIまたはMHCIIを介して)、間接的に腫瘍特異的T細胞を活性化できる一方で、抗腫瘍免疫系の誘導の効力はこの場合それほど高くはない(患者の30%においてのみである)。
【0065】
上述のbsF(ab')2断片と比較してT細胞を再偏向できる完全なbsabのさらなる利点は、以下に記述されている:
1. 完全なbsabでは、Fc受容体ポジティブ細胞に結合でき、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞毒性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity))によって、一方で腫瘍の破壊に直接的に寄与し得、他方で上述したようにT細胞活性化に直接的に寄与し得る。
2. 完全なT細胞再偏向bsabによって、アネルギー性腫瘍特異的T細胞を、本発明にしたがって直接的に腫瘍で再活性化され得る腫瘍細胞に向ける。これは抗CD64 x 抗腫瘍関連性抗原の特異性を持つbsF(ab')2断片を用いて成し遂げられ得ない。
3. 抗CD64 x 抗腫瘍関連性抗原の特異性を持つbsF(ab')2断片は、単に患者の30%で抗腫瘍免疫性を成し遂げることができるのみである一方で、本発明にしたがってT細胞再偏向の完全なbsabを用いたマウスによる実験において、動物の100%における予防が成し遂げられ得た。
【0066】
Fcγ-RIに対するbsabの結合は、最適の抗腫瘍有効性の観点で2の重要な利点を持つ:
(1) Fcγ-ポジティブ細胞は、ADCCを用いて腫瘍細胞を除去することができ(11)、この点ではbsabによって腫瘍細胞に向けられている細胞毒性T細胞の抗腫瘍効果に相互依存的に寄与しているであろう(13)。
(2) Fcγ-RI-ポジティブ細胞(単球/マクロファージ/樹状細胞のような)は、T細胞に対し抗原提示と同様な重要な共刺激シグナルを提供でき、それによってT細胞のアネルギー化を防ぐことができる。さらに図1に示されているように、T細胞のアクセサリー細胞及び腫瘍細胞との完全なbsab介在性相互作用のための望ましい副産物として、腫瘍特異的ペプチド(MHC抗原を介して腫瘍細胞上に提示される)を認識するT細胞受容体を持つ刺激されたT細胞が存在し得る。この場合T細胞の正しい活性化に必要とされる共刺激は、アクセサリー細胞(例えば単球)によって提供されるであろう。この点では直接的T細胞受容体非依存性bsab介在性腫瘍破壊(図1A)を除いた本発明の抗体は、bsabの分解後患者内でパトロールを継続する腫瘍特異的T細胞(図1B)をも活性化し生産するに違いない。すなわち遺伝子治療的アプローチと同様に完全なbsabによって(例えば腫瘍細胞内にB-7のような共刺激抗原の取り込みによって)、患者における腫瘍寛容に打ち勝つことができる。
【0067】
この点ではFcγ-RIの発現は、G-CSF治療に引き続いて各自の細胞で上流調節される。
【0068】
本発明は上記記述され、特に二重特異性抗体の点では以下に記述されるであろう。二重特異性抗体の代わりにもちろん三重特異性抗体も、それらがなされた準備を備える範囲で用いられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
免疫化プロトコール
ex vivoでの免疫化(短期的インキュベーション)
1. 自己腫瘍物質(または同じ腫瘍タイプの自己腫瘍細胞)由来の単一細胞懸濁液(107-109細胞)の調製、及び引き続いてガンマ線照射(50-100Gy)。
2. bsab(5-50μg)の添加、及び4℃で45分のインキュベーション。その後非結合抗体の洗い流し。
3. 細胞混合物の再注入(i.v.)。
【0070】
ex vivoでの免疫化(長期的インキュベーション)
1.自己腫瘍物質(または同じ腫瘍タイプの自己腫瘍細胞)由来の単一細胞懸濁液(107-109細胞)の調製、及び引き続いてガンマ線照射(50-100Gy)。
2. bsab(5-50μg)の添加、45分のインキュベーション。
3. PBMC(108-1010)の添加、[代わりに:T細胞アフェレシス(aphaeresis)から得た1×109細胞]。
4. 5から7日後、例えば自己乳ガン細胞系(MCF-7,MX-1)に対する等量のトランスファーによってT細胞反応性をモニターする。
5. 患者内で4日目から14日目で培養したPBMCの再注入(i.v.)(T細胞アフェレシスの場合:冷凍保存)
省略:PBMC、末梢血液単核細胞;i.v.、静脈内
【0071】
同様のアッセイだが代わりにサイトカインの添加に依存し、ありきたりのbsab(ラットIgG2B x ラットIgG1のサブクラスコンビネーションのbsabによるアクセサリー細胞の活性化のない)を用いて実施されるアッセイにより、動物モデルにおける該ex vivoでの免疫化の主要な有効性が示されている(5)。
【0072】
これと対照的に、ここで開示される方法の利点は、腫瘍細胞に対するT細胞及びアクセサリー細胞(単球/マクロファージ、図)の同時の活性化によって、例えば腫瘍細胞上のMHC1の上流調節に必要とされるサイトカイン(INF-αまたはTNF-αのような)についての「自己満足」("self-sufficiency")に存する。これはここで用いられる完全なbsabの初めで言及された特定のサブクラスコンビネーションによって成し遂げられる。短期的インキュベーションの場合では、これらの工程は患者内で生じる。短期的インキュベーションのさらなる利点は以下の点にある。(i) 別な方法では必要とされる血清含有培地を用いて細胞懸濁液を培養することを避けること。(ii) このためGMP調節にしたがって値段のかかる培養を避けることもできること。(iii) さらに重要な面は適用される抗体の量が有意に少ないため、bsabによる起こり得る副作用をそれぞれ避けるまたは減少することができること。
【0073】
長期的インキュベーションにおける利点は、in vitroでのbsabは数期間後それ自身が消失することである(そしてそれゆえ、この方法は「医薬」としては確立されないが、「医療用具」として確立され得る)。
【実施例】
【0074】
実施例1
自己T細胞による二重特異性抗体介在性の腫瘍細胞の溶解
H-Lac78は下咽頭ガンから確立され、高レベルでepcamを発現している(それ自体FACSデータ)細胞系である。H-Lac78及びボランティアから得た末梢単核細胞(PBMC)を用いて、自己細胞毒性Tリンパ球の生産が検出可能であった。この目的のため、一定量のH-Lac78(2×104)をbsab(抗Epcam × 抗CD3)の存在下(10ng)または不存在下で様々な量のPBMCと共にインキュベートした。7日間後PBMCを除去し、フローサイトメトリーで分析した。同時にH-Lac78腫瘍細胞の数を検出した。T細胞の活性化はクラスターの形成により顕微鏡下で観察可能である;増殖はラジオラベルチミジンの取り込みにより証明されるであろう。残りの腫瘍細胞の検出は、末梢血液細胞では発現されない上皮マーカーepcamによるものと同様に顕微鏡下で実施する。図2に示されるように、H-Lac78細胞はbsabの存在下で完全に溶解された、すなわちepcamポジティブ細胞は7日後のフローサイトメトリーでは検出されなかった。これらのデータは顕微鏡観察によって確認された。対照的にbsabの不存在下ではH-Lac78細胞の融合性の層がウェル内に観察され、epcamポジティブ細胞はFACSにより検出可能であった。
【0075】
トランスファー実験による活性化自己CTLの検出
引き続くトランスファー実験において、それぞれbsabの存在下または不存在下でインキュベートされたPBMCを、bsabの再添加なしで新しいH-Lac78細胞上にトランスファーした。この場合でも腫瘍細胞は溶解したが、以前にbsabにより活性化されているPBMCによってそれは極端であった。H-Lac78の溶解は1のH-Lac78細胞に対して2のPBMCの割合まで24時間以内に完全であった。この結果はインターロイキン-2(IL-2)の外的な添加なく自己CTLが生産されることを示す。IL-2はTリンパ球の活性化に必須であるので、ここで得られたデータはbsab介在性活性化によりIL-2がT細胞自身によって生産されることを示唆する。bsabの添加によるIL-2mRNAの誘導は、その後のRT-PCRにより確認でき、そこではbsabは元のスタート抗体より明らかに優れていた(図3)。IL-2は抗腫瘍有効サイトカインとして記述されているので、この観察はその限りにおいては重要である;しかし適切な濃度におけるIL-2の全身の投与はその毒性のため限界がある。対照的に、IL-2は例えば完全なbsabにより誘導されるので、細胞毒性の危険はIL-2の局所的生産では現れない。またIL-2(及びIL-12)の効果的な誘導はT細胞受容体及びCD28を介してT細胞の刺激を必要とするので、これは完全なbsabによるT細胞活性化におけるFc受容体ポジティブ細胞(CD28,CD80,及びCD86のリガンドという条件で)の重要性を示す。
【0076】
実施例2
二重特異性抗体が長期継続抗腫瘍免疫性を誘導できるかという問題に答えるために、C57BL/6マウスを5×103の同系B16腫瘍細胞を用いて初めに注射した。2日後一群のマウス(18匹)を、クァッドローマ法により調製しT細胞上のCD3と同様に腫瘍細胞上のターゲット構造(ep-cam/C215=腫瘍関連性抗原)を認識する完全bsabを用いて処理した。第二の群(6匹)はbsabのみに含まれる両方の特異性を持つ等モルのFab断片を受け取った。Fabコントロール群の動物の全てが56日以内で死んだまたは犠牲にされねばならなかった一方で、bsabを用いて処理された18の動物のうち14が生き残った。腫瘍細胞の第一の注射の144日後、生き残った14の動物は750 b16腫瘍細胞のもう一つの投与量で注射されたが、この時はbsabの投与はなかった。コントロールとして同数の腫瘍細胞を5の非処理動物に投与した。非処理コントロールグループの最後の動物が腫瘍注射の66日後犠牲にされねばならなかった一方で、bsabで処理された動物の全てが生き残った(モニター期間:第二の腫瘍細胞注射に引き続く120日)。図4A及びBも参照:上述された2の引き続く実験の生存グラフ。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】二重特異性抗体を用いた腫瘍免疫治療におけるアクセサリー細胞の役割。
【図2】フローサイトメトリーによって証明された二重特異性抗体の投与に引き続く腫瘍細胞の破壊。
【図3】完全な二重特異性抗体で可能だが、部分的抗体では不可能なサイトカイン誘導。
【図4】in vivoでの本発明にしたがった方法の効力
【図5】三重特異性F(ab)2抗体。
【図6】三重特異性scFv抗体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a) 自己腫瘍細胞を単離すること;
b) 再注入に引き続くそれの生存を避けるために、該腫瘍細胞を処理すること;
c) 該処理された腫瘍細胞を、以下の性質を示す完全な異種の二重特異性及び/三重特異性抗体とインキュベートすること:
α-T細胞に結合する;
β-腫瘍細胞上の少なくとも一つの抗原と結合する;
γ-Fc受容体ポジティブ細胞と(二重特異性抗体の場合には)そのFc部分で、または(三重特異性抗体の場合には)第三の特異性で結合すること;
を含むヒト及び動物のex vivoでの免疫化法。
【請求項2】
上記抗体が、Fcγ受容体I,II,またはIIIを持つFc受容体ポジティブ細胞に結合できるように選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記抗体が、単球、マクロファージ、樹状細胞、「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)及び/またはFcγ受容体Iポジティブ細胞である活性化された好中球に結合できることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記抗体が腫瘍反応性相補的結合抗体を誘導でき、そのため体液性免疫応答を誘導できることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
上記抗体がCD2,CD3,CD4,CD5,CD6,CD8,CD28及び/またはCD44を介してT細胞と結合するように選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
上記抗体が、そのFc受容体ポジティブ細胞への結合に引き続いて、共刺激抗原としてCD40,CD80,CD86,ICAM-1及び/またはLFA-3の発現、及び/またはFc受容体ポジティブ細胞によるサイトカインの分泌を始めるまたは増大するように選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
上記抗体がサイトカインであるIL-1,IL-2,IL-4,IL-6,IL-8,IL-12の分泌を、及び/またはTNF-αの分泌を増大するように選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
上記二重特異性抗体が抗CD3 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD4 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD5 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD6 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD8 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD2 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD28 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD44 x 抗腫瘍関連性抗原抗体であるように選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
上記二重特異性抗体が以下のイソタイプのコンビネーション:
ラット-IgG2b/マウス-IgG2a,
ラット-IgG2b/マウス-IgG2b,
ラット-IgG2b/マウス-IgG3;

ラット-IgG2b/ヒト-IgG1,
ラット-IgG2b/ヒト-IgG2,
ラット-IgG2b/ヒト-IgG3[東洋のアロタイプ G3m(st)=プロテインAに結合],
ラット-IgG2b/ヒト-IgG4;

ラット-IgG2b/ラット-IgG2c;

マウス-IgG2a/ヒト-IgG3[白色人種のアロタイプ G3m(b+g)=プロテインAに結合しない、以下ではとして示される]

マウス-IgG2a/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2a/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2a/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ-CH2-CH3]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG2-[ヒンジ-CH2-CH3]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG3-[ヒンジ-CH2-CH3、東洋のアロタイプ]

ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ-CH2-CH3]

ヒト-IgG1/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]
ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG2[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG2[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG2/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG2-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3[CH2のC末端領域:>アミノ酸251位]-ヒト-IgG3-[CH3]

マウス-IgG2b/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2b/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3-[CH2-CH3]

マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]

ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4-[CH2]-ヒト-IgG3-[CH3]
の一つ以上から選択されることを特徴とする請求項1から8項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
上記二重特異性抗体が異種ラット/マウス二重特異性抗体から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
上記三重特異性抗体がT細胞結合腕、腫瘍細胞結合腕及びFc受容体ポジティブ細胞に対する結合のための第三の特異性をもつことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
上記三重特異性抗体が抗CD3 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD4 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD5 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD6 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD8 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD2 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD28 x 抗腫瘍関連性抗原抗体、及び/または抗CD44 x 抗腫瘍関連性抗原抗体であるように選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
上記工程c)において、腫瘍細胞を完全な異種二重特異性及び/または三重特異性抗体とインキュベーションした後に、抗体でチャージされた腫瘍細胞を再注入のために調製する(短期的インキュベーション)ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
上記工程c)において、抗体との腫瘍細胞のインキュベーションを末梢血液の単核細胞(PBMC=末梢血液単核細胞)と共に実施する、または抗体との腫瘍細胞のインキュベーションの後単核細胞を加え、そしてインキュベーションを継続する(長期的インキュベーション)ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
上記腫瘍細胞が10分から5時間の期間抗体とインキュベートされることを特徴とする請求項13または14項記載の方法。
【請求項16】
上記腫瘍細胞が15分から120分の期間抗体とインキュベートされることを特徴とする請求項13または14項記載の方法。
【請求項17】
上記単核末梢血液細胞が、腫瘍細胞及び抗体と1から14日間の期間インキュベートされることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項18】
上記単核末梢血液細胞が約108から1010細胞の量で加えられることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項19】
上記腫瘍細胞が107から109細胞の量で加えられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項20】
上記二重特異性及び/または三重特異性抗体が2から100μgの量で加えられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
上記工程bにおける腫瘍細胞の処理が、放射線照射によって実施されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項22】
上記二重特異性及び/または三重特異性抗体がFc受容体ポジティブ細胞を活性化することができ、それによってサイトカインの発現及び/または共刺激抗原が誘導または増大されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項23】
腫瘍性疾患の予防及び治療における請求項1または14記載の調製物を含む腫瘍細胞の使用。
【請求項24】
抗腫瘍免疫性を誘導するための請求項23記載の使用。
【請求項25】
その自己腫瘍細胞が得られている患者または動物内に再注入するための異種二重特異性及び/または三重特異性抗体を用いて治療された自己腫瘍細胞の調製における請求項1記載の方法。
【請求項26】
請求項1または14の方法によって得られた腫瘍細胞調製物を含む製薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−189678(P2008−189678A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64726(P2008−64726)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【分割の表示】特願平10−170389の分割
【原出願日】平成10年6月17日(1998.6.17)
【出願人】(597112966)ゲーエスエフ・フォルスシュングスツェントルム・フューア・ウンベルト・ウント・ゲスウントハイト・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】