説明

【課題】防振性、防音性、断熱性に優れた畳を提供する。
【解決手段】畳床1と、この畳床1の上面に添設させた畳表2と、この畳表2と前記畳床1とを一体に保持する畳縁3とを具備する畳Tであって、前記畳床1が、プラスチック中空板40により作られた芯材4と、この芯材4の両面側に配された上下の気泡シート5、6と、上気泡シート5の上面側に配された緩衝用の弾性シート7と、下気泡シート6の下面側に配された床上養生シート8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床上に配され使用される畳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、稲わらを材料として製造した畳床に畳表及び畳縁などを縫いつけた畳が知られているが、近時、これに代えて、畳床にプラスチック中空板等を用いた取り扱いの容易なものも考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、集合住宅や旅館等においては、階上の衝撃や音を階下に伝播することを防止または抑制するために、畳に防振性や防音性、さらに断熱性等が要求されることが少なくない。階上で普通に人が歩くと、足裏から300〜400Nの力が床面にかかり、ドシン、ズシ等の音とともに、小さい振動が生じる。一方、天井構造が脆弱な場合や、階上にいる人の歩き方如何によっては、さらに大きな音や振動になることがある。具体的には、旅館等で仲居が布団や食卓を運ぶ際には、荷物の重みにより通常よりも大きな力が足裏から床面にかかるという事例や、荷物を運ぶ際に後傾姿勢となるため、かかと部分に力が集中してしまうという事例がある。このように通常よりも大きな音や振動は、場合によっては受忍限度を越えてしまい、問題となってしまうこともある。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、木造作りの住宅や旅館等の場合、2階の床板の下に根太や桟などを設けることによって床上の変位を小さくしたり、適当なクッション性や防音性を有する従来の稲わらを材料として製造した畳を敷設する方法も考えられる。また、同一世帯の場合には、階上の者に対して静かにするよう呼びかけるという方法も考えられる。
【0005】
しかしながら、根太や桟などを設けるには、別途大規模な工事が必要で手間がかかるという難点があり、通常の畳はその重量等の点で取り扱いが難しい。さらに、集合住宅や旅館等では、階上と階下で注意できるような人間関係がない場合が多いという事情がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3213691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みて、防振性、防音性、断熱性に優れた畳を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る畳は、畳床と、この畳床の上面に添設させた畳表と、この畳表と前記畳床とを一体に保持する畳縁とを具備するものであって、前記畳床が、プラスチック中空板により作られた芯材と、この芯材の両面側に配された上下の気泡シートと、上気泡シートの上面側に配された緩衝用の弾性シートと、下気泡シートの下面側に配された床上養生シートとを備えたものであることを特徴とする。
【0009】
ここで、「畳表」とは、い草等によって作られた狭義の畳表の他、厚み寸法の小さい発泡ポリスチレンフォームや合成樹脂板等の表面に狭義の畳表を配したいわゆる薄畳をも含む概念である。
【0010】
また、「プラスチック中空板」とは、「プラスチック気泡ボード」、「プラスチック段ボール」、及び「プラスチック折り畳みハニカムボード」、これら全てを包含する概念である。
【0011】
「プラスチック気泡ボード」とは、例えば、ポリプロピレン等の樹脂をダイから溶融した状態で押し出したシートに、多数のキャップ状の突起を真空成形し、このキャップシートの底面と頂面にそれぞれ平坦なバックシート及びライナーシートを融着させて中空構造の板としてなる成形品をいう。また、「プラスチック段ボール」とは、プラスチックの溶融押し出しにより形成された2枚のシートと、それらを連結して平行に走る多数のリブとからなる成形品をいう。また、「プラスチック折り畳みハニカムボード」とは、プラスチックシートに所定ピッチで垂直方向の部分を与え、長手方向に順次折り重ねることによって形作られるハニカム構造を有する成形品をいう。
【0012】
このようなものであれば、弾性シート及び芯材の上下に配された気泡シートの緩衝作用によって、従来のものよりも防振性、防音性及び断熱性に優れた畳を提供することができる。
【0013】
気泡シートの破損を抑制または防止するためには、前記芯材と弾性シートとの間及び前記芯材と床上養生シートとの間にそれぞれ気泡シートが存在しない領域を形成し、それらの領域に前記気泡シートに過大な加重が作用することを防止するための補強層を備えているものが好ましい。
【0014】
前記畳縁としては、前記畳表と畳床とを分離可能に保持し得るものが好ましい。
【0015】
前記上気泡シートの気泡は、前記下気泡シートの気泡よりも小さく設定されているものが好ましい。
【0016】
前記プラスチック中空板の具体的な一例としては、多数のキャップ状の突起を有するキャップシートと、このキャップシートを挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート及びライナーシートとを備えた3層状のものが挙げられる。
【0017】
前記気泡シートの具体的な一例としては、少なくとも多数の気泡形成用突起を有してなるキャップフィルムと、このキャップフィルムの突起開放側に添着したバックフィルムとを備えているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のような構成であるから、防音性に加えて防振性、断熱性に優れた畳を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる畳を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
この畳Tは、床B上に敷き詰めて配置されるものであって、通常の畳と同様の面積を有するものである。具体的には、この畳Tは、図1に示すように、畳床1と、この畳床1の上面に添設させた畳表2と、この畳表2と前記畳床1とを一体に保持する畳縁3とを具備するものである。なお、この実施形態では、床B上に配される畳床1の空気層を保護するために、前記床B上をサンダ掛けしている。本実施形態では、例えば鉄筋コンクリートのスラブ躯体の上に床Bが5cm程度浮かせて設けられる二重床構造としている。
【0022】
畳床1は、プラスチック中空板40により作られた芯材4と、この芯材4の両面側に配された上下の気泡シート5、6と、上気泡シート5の上面側に配された緩衝用の弾性シート7と、下気泡シート6の下面側に配された床上養生シート8とを備えたものである。畳床1の厚み寸法は、例えば40mm程度に設定されている。
【0023】
芯材4は、剛性を有した板状のもので、合成樹脂、例えばポリプロピレン製の中空板40により作られている。この芯材4は、多数のキャップ状の突起を有するキャップシート41と、このキャップシート41を挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート42及びライナーシート43とを備えた3層状のものである。換言すれば、この芯材4は、3層構造をなす気泡ボードと称される構造のもので、前記キャップシート41と、このキャップシート41の一面側に添設されるバックシート42と、前記キャップシート41の他面側に添設されるライナーシート43とを備えてなる。この芯材4は、製造工程において適宜の寸法に裁断され、端部は開放されている。芯材4の厚み寸法は、例えば10mm程度に設定されている。
【0024】
前記芯材4の上面側に添設された上側の気泡シート5は、柔軟性を有した中空シート状のもので、合成樹脂、例えばポリエチレンにより作られている。この上側の気泡シート5は、多数の気泡形成用突起を有してなるキャップフィルム51と、このキャップフィルム51の突起開放側に添着したバックフィルム52とを備えた2層状のものであり、前記バックフィルム52側を前記プラスチック中空板40のライナーシート43に添設させている。換言すれば、この気泡シート5は、キャップフィルム51及びバックフィルム52からなる2層構造を有する従来品と同様であり、材料としては、常用のポリエチレンをはじめ、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロンそのほか他種類のプラスチックが使用できる。キャップフィルム51は、多数の円柱形状の突起を有している。バックフィルム52は、凹凸を有しない平坦なものであり、前記キャップフィルム51の突起開放側に添着されることにより、多数の密閉された気泡50が形成される。この気泡50は、形状が低い円柱形状であって、寸法は直径が10〜50mm程度、好ましくは15〜20mm程度、高さが5〜30mm程度、好ましくは8〜10mm程度である。また、この気泡50の配置は、流れ方向には千鳥状になっているが、巾方向には直線上に並んでいる。
【0025】
前記芯材4の下面側に添設された下側の気泡シート6は、柔軟性を有した中空シート状のもので、合成樹脂、例えばポリエチレンにより作られている。この下側の気泡シート6は、多数の気泡形成用突起を有してなるキャップフィルム61と、このキャップフィルム61の突起開放側に添着したバックフィルム62とを備えた2層状のものであり、前記キャップフィルム61側を前記プラスチック中空板40のバックシート42に添設させている。換言すれば、この気泡シート6は、キャップフィルム61及びバックフィルム62からなる2層構造を有する従来品と同様であり、材料としては、常用のポリエチレンをはじめ、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロンそのほか他種類のプラスチックが使用できる。キャップフィルム61は、多数の円柱形状の突起を有している。バックフィルム62は、凹凸を有しない平坦なものであり、前記キャップフィルム61の突起開放側に添着されることにより、多数の密閉された気泡60が形成される。この気泡60は、形状が低い円柱形状であって、寸法は直径が10〜50mm程度、好ましくは30〜35mm程度、高さが5〜30mm程度、好ましくは10〜13mm程度である。すなわち、前記上側の気泡シート5の気泡50の大きさは、前記下側の気泡シート6の気泡60の大きさよりも小さく設定されている。また、この気泡60の配置は、流れ方向には千鳥状になっているが、巾方向には直線上に並んでいる。
【0026】
前記上側の気泡シート5の上面側、具体的にはキャップフィルム51側に添設された弾性シート7は、上側の気泡シート5に集中加重が作用するのを緩和して保護するためのもので、柔軟性を有した中実シート状をなしている。この弾性シート7は、合成樹脂、例えばウレタンゴムにより作られており、厚みが5mm程度に設定されている。
【0027】
前記下側の気泡シート6の下面側、具体的にはバックフィルム62側に添設された床上養生シート8は、下側の気泡シート6を保護するためのものである。本実施形態においては、この床上養生シート8として、ポリエチレン層と、厚紙と、発泡ポリエチレン層とを積層したものを用いており、例えば、厚みを1.5mm程度に設定してある。
【0028】
前記芯材4と弾性シート7との間及び芯材4と床上養生シート8との間には、それぞれ気泡シート5、6が存在しない領域10を形成している。この領域10は、集中荷重のかかりやすい部分に対応するように位置づけられるもので、例えば、畳Tの縁等に形成されている。その領域10全体に、前記上下の気泡シート5、6に過大な加重が作用することを防止するための補強層9が隙間なく設けられている。
【0029】
補強層9は、例えば芯材4と同じポリプロピレン製の中空板90により作られており、具体的には、多数のキャップ状の突起を有するキャップシート91と、このキャップシート91を挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート92及びライナーシート93とを備えた3層状のものである。補強層9は、保護すべき気泡シート5、6の厚み寸法に対応させたものであり、具体的には、上側の補強層94は、前記上側の気泡シート5の厚み寸法と略同一の厚みを有するものであり、下側の補強層95は、前記下側の気泡シート6の厚み寸法と略同一の厚み寸法を有するものである。すなわち、本実施形態における畳Tは、縁部において、他の部分よりも3倍の厚みを持った中空板90を備えており、剛性を有している。
【0030】
この実施形態における畳表2は、いわゆる薄畳と称される構成のもので、厚み寸法の小さい発泡ポリスチレンフォームや合成樹脂板等の表面に、い草等により作られた狭義の畳表を配したものである。この畳表2は、厚み寸法を15mm〜18mm程度に設定してある。
【0031】
この畳表2と前記畳床1とを畳縁3によって結合させ、一体化している。
【0032】
畳縁3は、前記畳表2と畳床1とを分離可能に保持し得るもので、布やナイロン等を主体として作られたものである。この畳縁3は、上縁部31を畳表2の縁部上面に止着するとともに、下縁部32を畳床1の縁部下面に図示しない面ファスナ等を介して着脱可能に取り付けている。
【0033】
以上に述べたように、本実施形態に係る畳Tは、畳床1と、この畳床1の上面に添設させた畳表2と、この畳表2と前記畳床1とを一体に保持する畳縁3とを具備する畳Tであって、前記畳床1が、プラスチック中空板40により作られた芯材4と、この芯材4の両面側に配された上下の気泡シート5、6と、上気泡シート5の上面側に配された緩衝用の弾性シート7と、下気泡シート6の下面側に配された床上養生シート8とを備えたものであるので、ウレタンゴム製の弾性シート7と芯材4の上下に配された気泡シート5、6の緩衝作用によって、従来のものよりも防振性及び防音性に優れた畳Tを提供することができる。すなわち、この畳Tは、木造家屋等の階上音が階下に伝播し、階下の天井の振動や壁などの側路伝播による振動が騒音に変化する前に、振動(または騒音)を吸収するような空気層を有する気泡シート5、6とウレタンゴム層を有する弾性シート7を主体として構成してある。そのため、この畳Tが敷設されている部屋よりも階下や斜め階下への振動(または騒音)の伝播を阻止または抑制することができる。
【0034】
比較例として、畳床1を全てウレタンゴム層とした場合には、階下への振動(または騒音)伝播は少しはましになるものの、ウレタンゴムの強い反発力により畳の縁部に力が加わった際に、畳表の表面高さを一定に保つことが難しいという問題がある。一方、畳表の表面高さを一定に保つべく畳床1を全てスタイロフォーム等の発泡スチロールによって形成した場合には、弾力性がなくなってしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態の畳Tによれば、気泡シート5、6の気泡50、60によりキャップフィルム51、61と気泡50、60中の空気の弾性により、荷重がかかった場合に、なめらかに反発する適度なばね作用を得ることができるとともに、畳表2の表面高さを略一定に保つことができる。
【0035】
さらに、気泡シート5、6の空気層が2重に配されているので、断熱性にも優れている。すなわち、本実施形態で示したような鉄筋コンクリート造の床Bであると、コンクリート面が室内温度よりも低い場合が多く、このような上に畳を敷いても畳を介してそのコンクリート面の冷たさが伝達されてしまうため、床暖房を設置していることが多い。ところが、本実施形態の畳Tによれば、このようなコンクリート面の他、震災時などの冬場の体育館等、床の温度が低温である場合であっても、従来の畳に比べて気泡シート5、6による断熱性を有しているので、畳T上に居る人には冷たさが及びにくく、保温効果が得られる。
【0036】
また、芯材4を中空板で形成しているので、芯材としてベニヤ板を使う場合に比べて、軽量化が図れ、さらに、気泡シート5、6の気泡50、60を破損しかねないとげ等の心配も必要なくなる。
【0037】
また、前記芯材4と弾性シート7との間に上側の気泡シート5が存在しない領域10を形成し、その領域10に前記気泡シート5に過大な加重が作用することを防止するための上側の補強層94を備えているとともに、前記芯材4と床上養生シート8との間に下側の気泡シート6が存在しない領域10を形成し、その領域10に前記気泡シート6に過大な加重が作用することを防止するための下側の補強層95を備えているので、集中荷重によって気泡50、60の破損の生じやすい気泡シート5、6を保護することができる。したがって、気泡シート5、6を用いた場合であっても、比較的長期間の使用に耐えることができる。また、本実施形態においては、プラスチック中空板90によって前記補強層94、95を形成しているので、これら補強層94、95が配されている部分においても、防音性を高めることができるとともに、とげ等によって気泡シート5、6の気泡50、60が破損してしまうおそれもない。
【0038】
さらに、前記畳縁3は、前記畳表2と畳床1とを分離可能に保持し得るものであるので、簡単に畳床1を取り替えることができる。すなわち、気泡シート5、6は、常に上からの荷重を受けていることによる劣化や、突発的に集中荷重を受けることによる衝撃に起因して、気泡50、60部分が収縮したり、割れてしまったりすることがある。そして、この割れた部分が多くなると、畳Tの厚みを一定に保つことが難しくなり、畳T上にいる人に違和感を与えてしまうという不具合が生じる。そのため、これらの劣化や衝撃を受けやすい気泡シート5、6だけを新しいものに差し替えたいという要望がある。また、畳Tを設置する場所に応じて、異なる大きさや特性を有した気泡シート5、6や補強層9に差し替えたいという要望がある。本実施形態のようなものであれば、前記畳表2と畳床1とを分離可能にしているので、上述したような要望に応えることができるとともに、それを面ファスナという比較的簡単な構成で実現することができる。
【0039】
本実施形態では、前記上気泡シート5の気泡50が、前記下気泡シート6の気泡60よりも小さく設定されている。そのため、上からの集中荷重がかかりやすい上側の気泡シート5の気泡50を比較的つぶれにくくすることができる。また、上からの集中荷重を芯材4を介して分散して受ける下側の気泡シート6の気泡60は、衝撃を大きく吸収できるようにしている。すなわち、下側の気泡シート6は、前記芯材4を介して面全体で荷重を受けることができるため、畳表2の上面側の変位量を小さくすることができる。
【0040】
前記中空板40として、多数のキャップ状の突起を有するキャップシート41と、このキャップシート41を挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート42及びライナーシート43とを備えた3層状のものを用いているので、バックシート42及びライナーシート43の間でリブ状に立設したキャップシート41の上下方向部分によって、上からの集中荷重に耐えることができる。さらに、バックシート42及びライナーシート43が平坦なものであるので、前記気泡シート5、6をこのバックシート42またはライナーシート43に平坦に添わせることが容易となる。
【0041】
前記気泡シート5、6として、少なくとも多数の気泡形成用突起を有してなるキャップフィルム51、61と、このキャップフィルム51、61の突起開放側に添着したバックフィルム52、62とを備えた2層状のものを用いているので、上からの集中荷重に対応してキャップフィルム51、61の気泡50、60を比較的変形させやすい。
【0042】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0043】
前記実施形態では畳縁を畳床に面ファスナを介して着脱可能に取り付ける場合について説明したが、両面テープにより取り付けたり、従来のように縫製により取り付けたりする等種々変更が可能である。しかしながら、前記実施形態のような構成にしておけば、畳縁を面ファスナ部分で取り外すことにより、畳表と畳床とを容易に分離することができる。そのため、気泡シートが破損した場合等に容易に取り替えることができ、破損等による不具合に迅速に対応することができる。
【0044】
また、シート状の素材は、上述した気泡シートに限られず、気泡を有しない合成樹脂シートや、合成樹脂製以外のシートも含まれる。気泡シートにあっても、2層構造のもの以外にも、前記キャップフィルムの突起先端側に添着したライナーフィルムをさらに有した3層構造のものであってもよい。しかしながら、前記実施形態のような2層構造のものを用いれば、畳の上方からの荷重に対してキャップフィルムが変形しやすいため、この柔軟性によって防音効果をより高めることができる。
【0045】
また、プラスチック中空板は、バックシート側とライナーシート側を上下反転して用いてもよく、気泡シートは、キャップフィルム側とバックフィルム側を上下反転して用いてもよいのはもちろんである。
【0046】
また、気泡シートの素材として、PET樹脂を用いてもよく、この場合には、本実施形態で示したポリエチレンを用いた場合よりもガスバリア性を良好にすることができる。
【0047】
ガスバリア性を向上させるための他の方法としては、気泡シートの気泡部分に二酸化炭素を封入させておくことも考えられる。例えば、このような気泡シートを使用した畳を集合住宅や旅館等に配しておけば、火災が発生した際、気泡が破裂して、キャップフィルム及びバックフィルムの間に予め封入させておいた二酸化炭素が畳の外側へと放出されることとなる。そのため、この二酸化炭素によって自己消火作用が生じ、初期の段階での火災の広がりを抑制することができる。また、上下の気泡シートの気泡が破裂することによって、畳の上面の高さ位置が2枚の気泡シート分、下方に移動することとなる。そのため、この畳の上で就寝していた場合等には、畳の上面側がストンと下方へ落ちるその衝撃で、火災に気が付くことができるという効果も得られる。
【0048】
上下の気泡シートの気泡の大きさは、前記上気泡シートの気泡が、前記下気泡シートの気泡よりも小さく設定されているものに限られず、前記上気泡シートの気泡が、前記下気泡シートの気泡よりも大きく設定されているものや、前記上気泡シートの気泡が、前記下気泡シートの気泡と略同一の大きさに設定されているものであってもよい。
【0049】
また、プラスチック中空板の上下側に配される気泡シートは、それぞれ1枚ずつに限られず、複数枚重ね合わせた状態のものであってもよい。
【0050】
床下の構造については、床下と根太と桟を主体として構成された木造のものや、鉄筋コンクリート造(RC造)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のものであってもよい。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の場合、コンクリート面に防湿シート等の薄いシートを敷設するものや、図1に概略図示したようにスラブ躯体の上に5cm程度浮かせて設けられる二重床構造にした上で、その間に防振ゴム、防振シート、防音シート等を配するもの等種々考えられる。
【0051】
補強層としては、本実施形態で示した中空板の他に、ゴムアスファルトコンパウンドに不織布を芯材として埋め込み、これをシート状に形成したアスファルトシートを用いてもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0053】
T…畳
1…畳床
2…畳表
3…畳縁
4…芯材
40…プラスチック中空板
41…キャップシート
42…バックシート
43…ライナーシート
5、6…気泡シート
50、60…気泡
51、61…キャップフィルム
52、62…バックフィルム
7…緩衝用の弾性シート
8…床上養生シート
9…補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳床と、この畳床の上面に添設させた畳表と、この畳表と前記畳床とを一体に保持する畳縁とを具備する畳であって、
前記畳床が、プラスチック中空板により作られた芯材と、この芯材の両面側に配された上下の気泡シートと、上気泡シートの上面側に配された緩衝用の弾性シートと、下気泡シートの下面側に配された床上養生シートとを備えたものであることを特徴とする畳。
【請求項2】
前記芯材と弾性シートとの間及び芯材と床上養生シートとの間にそれぞれ気泡シートが存在しない領域を形成し、それらの領域に前記気泡シートに過大な加重が作用することを防止するための補強層を備えている請求項1記載の畳。
【請求項3】
前記畳縁が、前記畳表と畳床とを分離可能に保持し得るものである請求項1または2記載の畳。
【請求項4】
前記上気泡シートの気泡が、前記下気泡シートの気泡よりも小さく設定されている請求項1、2または3記載の畳。
【請求項5】
前記プラスチック中空板が、多数のキャップ状の突起を有するキャップシートと、このキャップシートを挟むように底面側及び頂面側に配される平坦なバックシート及びライナーシートとを備えた3層状のものである請求項1、2、3または4記載の畳。
【請求項6】
前記気泡シートが、少なくとも多数の気泡形成用突起を有してなるキャップフィルムと、このキャップフィルムの突起開放側に添着したバックフィルムとを備えている請求項1、2、3、4または5記載の畳。

【図1】
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【公開番号】特開2012−202098(P2012−202098A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67161(P2011−67161)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【出願人】(511078004)株式会社環境工房 (1)
【Fターム(参考)】