説明

疎水性オルトチタン酸微粒子及び電子写真用トナー

【課題】疎水性、分散性及び安全性に優れ、電子写真用トナーの外添剤を始めとした各種用途に使用できる、疎水性オルトチタン酸微粒子を提供する。
【解決手段】基体であるオルトチタン酸に対してアルコキシシランを50〜200質量%処理した後、酸で中和し、ろ過、洗浄後、100〜170℃で乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性及び分散性に優れ、塗料、プラスチック、繊維などの紫外線吸収剤や、電子写真用トナーの帯電調整剤、流動化剤に用いられるオルトチタン酸微粒子、及びそれを用いた電子写真用トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンの超微粒子は紫外線カットの目的で化粧品、塗料、インキ、プラスチック、光触媒等に使用される他、電子写真用トナーの帯電調整剤、流動化剤等にも広く使用されている。これらの用途には、分散性の向上や吸湿性の防止のために、表面を疎水化処理された酸化チタンやメタチタン酸が使用されている。
【0003】
従来、ベースとなる微粒子としては、四塩化チタンやチタンアルコキシドの気相酸化により合成された酸化チタンや、硫酸法で脱水焼成された酸化チタン、あるいは硫酸法加水分解反応により合成されたメタチタン酸であり、これらに気相中(特許文献1)あるいは水溶液中や有機溶媒中(特許文献2〜5)でシランカップリング剤の処理を行うものであった。
【0004】
まず、四塩化チタンの気相酸化により合成された酸化チタンや硫酸法で脱水焼成された酸化チタンにシランカップリング剤の処理を行ったものは比較的安価に製造できるが、比表面積が小さく、分散性も劣るものであった。また、チタンアルコキシドの気相酸化により合成された酸化チタンにシランカップリング剤の処理を行ったものは、疎水化度、比表面積が大きく、分散性も良好であるが高価である。また、基体となる酸化チタンがIARC(国際がん研究機関)による「発ガン性のリスク情報のリスト」において、グループ3(人に対する発癌性については分類できない(不明である))からグループ2B(人に対して発癌性があるかもしれない)にランクが変更されたことから、疎水性酸化チタン微粒子に代替できる疎水性微粒子の開発が強く望まれている。
【特許文献1】特開平1−153529号公報
【特許文献2】特開平5−019528号公報
【特許文献3】特開平5−221640号公報
【特許文献4】特開平8−269359号公報
【特許文献5】特開平8−048910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、疎水化度、及び比表面積が高く、分散性の良好な微粒子を比較的容易かつ安価に製造でき、しかも二酸化チタンに代替できる微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは酸化チタンとは物質的に異なるオルトチタン酸、及びその透明性に着目し、高い疎水化度、及び比表面積を有し、コスト面と安全性に優れた微粒子を開発すべく鋭意検討した結果、特定量のアルコキシシランを被覆処理し特定の比表面積を有する疎水性オルトチタン酸微粒子は、本来の透明性を損なうことなく、電子写真用トナーの帯電調整剤や流動化剤を始めとした各種用途に優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の疎水性オルトチタン酸微粒子は、基体であるオルトチタン酸に対してアルコキシシランが50〜200質量%被覆処理され、X線的に回折ピークが認められず、比表面積が100〜300m/gで、かつ2質量%を外添した黒色トナーの測色値L値の上昇ΔLが、外添前の黒色トナーに対し0.8以下であることを特徴とする。
【0008】
また、前記疎水性オルトチタン酸微粒子は、使用するアルコキシシランが、一般式RnSiR'm(R:炭化水素基、R':アルコキシ基、n=1〜3の整数、m=1〜3の整数、n+m=4)で表すことができ、前記アルコキシシランの炭化水素基Rの炭素数が3〜10であることが好ましい。
【0009】
また、前記疎水性オルトチタン酸微粒子は、疎水化度が30〜75%であり、かつ、鉄粉に対する摩擦帯電量が−100〜−30μC/gであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の疎水性オルトチタン酸微粒子は、電子写真用トナーに好適に使用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高価であるチタンアルコキシドを使用せず、また、四塩化チタンの気相法や硫酸法で得られる従来の酸化チタンより高比表面積である微粒子を製造することができ、また、疎水性及び比表面積が高く、発癌性や毒性の問題もないので、電子写真用トナーを始めとした種々の分野に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(オルトチタン酸)
本発明でいうオルトチタン酸とは、主成分の化学式がTi(OH)で示され、酸化チタンやメタチタン酸と比較すると、後出の図1に示したようにX線的に回折ピークが認められないものをいう。また、700℃よりも高い温度で焼成すると、ルチル型酸化チタンを生成する特徴も併せ持つ。さらに、各種の安全性に関連した法規制では、IARCの対象外であり、日本の化審法(1−730(チタン酸))、米国のTSCA(20338−08−3(Titanium hydroxide))、並びに欧州のEINECS(243−744−3(Tetrahydroxytitanium))に登録されている。
【0013】
(疎水性オルトチタン酸微粒子)
本発明で重要なのは、疎水性オルトチタン酸が、基体であるオルトチタン酸に対してアルコキシシランが50〜200質量%、好ましくは80〜180質量%、さらに好ましくは100〜150質量%被覆処理されたものであり、比表面積が100〜300m/g、好ましくは、120〜250m/g、さらに好ましくは150〜200m/g、かつ2質量%を外添した黒色トナーの測色値L値の上昇ΔLが、外添前の黒色トナーに対し0.8以下であることである。
【0014】
(アルコキシシラン被覆処理量及び比表面積)
アルコキシシランの被覆処理量が50質量%未満であると疎水化度が低くなり好ましくない。また、200質量%を超えると凝集が起こってしまい比表面積も100m/g未満となるため好ましくない。
【0015】
(透明性)
本発明の疎水性オルトチタン酸微粒子は、後述する所定の割合で黒色トナーに2質量%を外添したとき、その測色値L値の上昇ΔLが、外添前の黒色トナーに対し0.8以下である。当該範囲であることで、微粒子粉体の透明性が高く、未外添トナー本来の色を汚染しないという効果を奏する。
【0016】
(疎水化度及び摩擦帯電量)
本発明の疎水性オルトチタン酸微粒子の疎水化度は30〜75%が好ましく、かつ、鉄粉に対する摩擦帯電量が−100〜−30μC/gであることが好ましい。当該範囲であることで負帯電性トナーに適した外添剤として使用できる。疎水化度が30%未満であると水分を吸着しやすくなって好ましくなく、また、75%を超えるとアルコキシシランの処理量が多くなって凝集が強くなるため好ましくない。
【0017】
(疎水性オルトチタン酸微粒子の製造方法)
本発明の疎水性オルトチタン酸微粒子は代表的には、基体であるオルトチタン酸に対してアルコキシシランを50〜200重量%処理した後、酸で中和し、ろ過、洗浄後、100〜170℃で乾燥することにより得られる。
【0018】
(オルトチタン酸微粒子の製造方法)
本発明の疎水性オルトチタン酸微粒子の基体となるオルトチタン酸は、四塩化チタンに氷冷した水を加えて加水分解する方法や、四塩化チタンまたは硫酸チタンの冷水溶液をアルカリで中和する方法で得られる。この時のアルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、アンモニア等が使用できるが、中和時の液温は30℃以下に保つことが必要である。30℃よりも高くなるとメタチタン酸を生成するため好ましくない。粒子形態は不定形であり、電子顕微鏡写真による一次粒径が0.01〜0.1μmのものであれば良い。
【0019】
(オルトチタン酸微粒子の疎水化方法)
本発明者らは前記のオルトチタン酸微粒子に疎水化処理を施すために、基体となるオルトチタン酸微粒子を乾燥した粉末を粉砕・分散することで単分散化をはかり、水系でアルコキシシランを処理する方法を検討したが、この方法では、オルトチタン酸の乾燥時に強い凝集を起こした。そのため、疎水性にすることはできたが、比表面積が小さく、分散性が劣り、従来からある超微粒子酸化チタンと大差ないものであり、且つ結晶構造は、二酸化チタンに属するものであった。そこで、この問題を解決するため検討を続けた結果、オルトチタン酸をスラリーの状態でアルコキシシランを添加し被覆処理を行うことにより、含水物であるオルトチタン酸であるにもかかわらず、固液分離し、乾燥した粉末は高い疎水化度及び比表面積を有しており乾燥後も非凝集性を維持した分散性の良好な微粒子であった。しかも黒トナーに2質量%を外添しても、黒色度を損なわないことが分かった。
【0020】
被覆処理するアルコキシシランについて述べると、炭化水素基Rの炭素の数が3〜10のものが好ましい。炭素数が1若しくは2のものは分子鎖長が短いため疎水化度が低くなり、また乾燥時に粒子間が十分に離れないため凝集が起こり分散性が低下するので好ましくない。一方、炭素数が11以上のものは分子鎖長が長過ぎて分子鎖が絡み凝集を起こすとともに、比表面積の低下が大きく好ましくない。また、疎水化度を上げるためには、ポリジメチルシロキサン等シリコーンオイルのエマルジョンやチタネート系のカップリング剤も有効であるが、分子鎖が長いため、同様の理由で好ましくない。なお、アルコキシシランは2種以上を併用して用いることもでき、添加するアルコキシシランは、純水または純水にアルコールを加えた液中で予め加水分解を行った溶液を用いることで、被覆処理を迅速に行うことができる。
【0021】
アルコキシシランを添加するときは、好ましくはpH1.5以下若しくはpH7以上、さらに好ましくはpH0.8〜1若しくはpH8〜9で行う。pHを上記範囲にすることによって、オルトチタン酸の凝集を抑制できるとともに、アルコキシシランの被覆処理を均一に促進できる。また、撹拌保持した後、酸若しくはアルカリを用いて好ましくはpH4〜8、さらに好ましくは5〜7になるように中和を行う。又、反応中のスラリーの温度は、好ましくは20〜50℃、さらに好ましくは30〜40℃に加温する。
【0022】
アルコキシシランは、一般式 RnSiR'm(Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、グリドキシ基、メルカプト基、メタクリル基を含む炭化水素基、nは1〜3の整数、R'はアルコキシ基、mは1〜3の整数、n+m=4)で表されるものであり、例えば、プロピルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、炭化水素基Rの炭素の数が3〜10のものが好ましい。
【0023】
アルコキシシランの被覆量は基体のオルトチタン酸に対して、50〜200質量%、好ましくは80〜180質量%、さらに好ましくは100〜150質量%である。前述したように、50質量%未満であると疎水化度が低くなり好ましくない。また、200質量%を超えると凝集が起こってしまい比表面積も100m/g未満となるため好ましくない。
【0024】
中和に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等を使用することができ、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等があが、オルトチタン酸の分散が良い状態で被覆するには、塩酸、硝酸、酢酸、水酸化ナトリウム、及びアンモニアが好ましい。
【0025】
水洗後の乾燥温度は100℃〜170℃、好ましくは110℃〜150℃である。100℃より低くなると乾燥効率が悪く、また、疎水化度が低くなる。170℃より高くなると、炭化水素基の熱分解が起り、変色と疎水化度の低下が起こる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は単に例示のために記すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0027】
[オルトチタン酸微粒子の製造]
160g/Lの炭酸ナトリウム5Lを攪拌しながら、液温を30℃以下に保ったまま、pHを8.0に保持するように200g/Lの硫酸チタンの冷水溶液を徐々に加えて中和反応を行い、オルトチタン酸を得た。硫酸チタンの冷水溶液の使用量は1Lであった。得られたオルトチタン酸を、ろ過、水洗した後、洗浄ケーキに水を加え再びスラリーとした。
【0028】
[実施例1]
オルトチタン酸として100g分のスラリーを分取し、5mol/L水酸化ナトリウムを加え、スラリーpH8.0、かつ、35℃に加温保持し撹拌しながら、i−ブチルトリメトキシシラン加水分解溶液200g(i−ブチルトリメトキシシランとして100質量%)を添加し4時間撹拌保持後、6mol/L塩酸を加えpH6.5まで中和し、ろ過、水洗を行った。
【0029】
ろ過、水洗済ケーキは170℃で乾燥した後、ジェット方式による微粉砕機で微粉砕し、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0030】
[実施例2]
実施例1において、i−ブチルトリメトキシシラン加水分解溶液200gをi−ブチルトリメトキシシラン加水分解溶液300g(i−ブチルトリメトキシシランとして150質量%)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0031】
[実施例3]
実施例2において、中和pHを5.5としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0032】
[実施例4]
実施例3において、乾燥温度170℃を130℃としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0033】
[実施例5]
実施例1において、i−ブチルトリメトキシシラン加水分解溶液を添加する際のスラリーpHを9.0とし、中和pHを5.5、乾燥温度を130℃としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0034】
[実施例6]
実施例5において、i−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)を添加する際のスラリーpHを1.0としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0035】
[実施例7]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100gをi−ブチルトリメトキシシラン70g(70質量%)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0036】
[実施例8]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100gをi−ブチルトリメトキシシラン50g(50質量%)とし、乾燥温度を100℃としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0037】
[実施例9]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100gを、n−プロピルトリメトキシシラン150g(150質量%)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0038】
[実施例10]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)をn−ヘキシルトリメトキシシラン150g(150質量%)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0039】
[実施例11]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)をn−オクチルトリエトキシシラン加水分解溶液262.5g(n−オクチルトリエトキシシランとして150質量%)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0040】
[実施例12]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)をn−デシルトリメトキシシラン加水分解溶液350g(n−デシルトリメトキシシランとして200質量%)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0041】
[実施例13]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)をi−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)とフロロシラン10g(10質量%)の複合処理としたほかは、同例の場合と同様に処理して、目的とする疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0042】
[比較例1]
実施例3において、i−ブチルトリメトキシシラン150g(150質量%)に変えて、ポリジメチルシロキサンエマルジョン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SM−7060)をシリコーンオイルとして50質量%とし、乾燥温度を150℃としたほかは、同例の場合と同様に処理して疎水性オルトチタン酸微粒子を得た。
【0043】
[比較例2]
実施例6において、i−ブチルトリメトキシシラン100g(100質量%)をエチルトリメトキシシラン(Rの炭素数2)としたほかは、同例の場合と同様に処理して、オルトチタン酸微粒子を得た。
【0044】
[比較例3]
実施例1のオルトチタン酸スラリーに5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.5とした後、ろ過、水洗した。110℃で乾燥後、600℃で焼成して得られた親水性二酸化チタン粉末を水もどしし、湿式ボールミルを用いて微粉砕スラリー化を行った。引き続き、この中からTiOとして100g分のスラリーを分取し、撹拌しながら6mol/L塩酸を添加してpHを1.2とした。次いで、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH2.0とし、35℃に加温保持し、撹拌しながらi−ブチルトリメトキシシラン20gを添加し、30分間撹拌保持後5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH6.0まで中和し、ろ過、水洗を行った。
【0045】
ろ過、水洗済ケーキは170℃で乾燥した後ジェット方式による微粉砕機で微粉砕し、疎水性二酸化チタン微粒子を得た。
【0046】
[比較例4]
メタチタン酸スラリーに撹拌しながら5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0として1時間撹拌保持後、6mol/L塩酸にてpH5.5まで中和し、ろ過、水洗を行った。洗浄済ケーキに水を加え再びスラリーとし、撹拌をしながら6mol/L塩酸を加えpH1.2とし2時間撹拌保持し、解膠処理を行った。この解膠スラリーからメタチタン酸として100g分を分取し、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH2.5とし、35℃に加温保持し撹拌しながら、i−ブチルトリメトキシシラン50g(50質量%)を添加し30分間撹拌保持後5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.0まで中和し、ろ過、水洗を行った。
【0047】
ろ過、水洗済ケーキは170℃で乾燥した後、ジェット方式による微粉砕機で微粉砕し、疎水性メタチタン酸微粒子を得た。
【0048】
以上、実施例1〜13、比較例1〜4で得られた試料の測定結果を表1に示す。なお、これらの測定値は、下記の要領で測定した値である。
【0049】
(比表面積)
MICROMETORICS INSTRUMENT CO.製ジェミニ2360を用い、BET法にて測定した。
【0050】
(疎水化度)
2.5質量%毎のメタノールを含む水溶液を試験管に用意しておき、少量の微粉末を投入し、沈降の有無を確認した。疎水化度としては、沈降無質量%〜沈降有質量%を疎水化度(%)として表示した。なお、疎水性とは疎水化度が少なくとも10%以上のことをいう。
【0051】
(摩擦帯電量)
微粉末と還元鉄粉(パウダーテック社製TSV−100)を混合し、ブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200)にて測定した。
【0052】
(透明性)
黒色トナー50gと微粒子1gを採取し、協立理工(株)製サンプルミルSK−Mを用いて3分間混合した。外添トナー5gを、成形ダイス上に置いたアルミリングに入れ、 成形ダイスごと小型油圧自動プレス機にセットし、プレス成型した。成型した試料をスガ試験機(株)製SMカラーコンピューター MODEL SM−7を用いて測色した。外添前の黒色トナーに対し、測色値L値の上昇ΔLが小さいほど、トナー本来の色を汚染しない、すなわち微粒子粉体の透明性が高いと判断した。
【0053】
(X線回折による同定)
理学電機工業製ローターフレックスRAD−RCにてターゲットCu、50kV×200mAの測定条件で同定を行った。
【0054】
【表1】

*1) 600℃で加熱(焼成)し、オルトチタン酸を二酸化チタンとしたもの。
*2)2質量%を外添した黒色トナーのL値−未外添黒色トナーのL値(12.6)
【0055】
表1の結果より、実施例1〜13により得られた疎水性オルトチタン酸微粒子は、比表面積が100〜300m/gで、疎水化度が30〜75%であって、鉄粉に対する摩擦帯電量が−100〜−30μC/gであり、かつΔLが、外添前の黒色トナーに対し0.8以下であることが分かる。
【0056】
以上より、電子写真用トナー等として有用な疎水性オルトチタン酸微粒子が得られたことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】顔料級のアナターゼ型二酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸を600℃で加熱し、二酸化チタンとしたもの、及びオルトチタン酸のX線回折チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体であるオルトチタン酸に対してアルコキシシランが50〜200質量%被覆処理され、X線的に回折ピークが認められず、比表面積が100〜300m/gで、かつ2質量%を外添した黒色トナーの測色値L値の上昇ΔLが、外添前の黒色トナーに対し0.8以下であることを特徴とする疎水性オルトチタン酸微粒子。
【請求項2】
前記アルコキシシランが、一般式RnSiR'm(R:炭化水素基、R':アルコキシ基、n:1〜3の整数、m:1〜3の整数、n+m=4)で表されることを特徴とする請求項1記載の疎水性オルトチタン酸微粒子。
【請求項3】
前記アルコキシシランの炭化水素基Rの炭素数が3〜10であることを特徴とする請求項2記載の疎水性オルトチタン酸微粒子。
【請求項4】
疎水化度が30〜75%であり、かつ、鉄粉に対する摩擦帯電量が−100〜−30μC/gであることを特徴とする請求項1記載の疎水性オルトチタン酸微粒子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の疎水性オルトチタン酸微粒子を使用したことを特徴とする電子写真用トナー。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−303109(P2008−303109A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151706(P2007−151706)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000109255)チタン工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】