説明

疎水性正帯電シリカ微粉末、その製造方法ならびにそれを外添剤として添加した静電潜像現像用トナー

【課題】 流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを得るのに適した疎水性正帯電シリカ微粉末を提供し、また、その疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加することによって上記特性を有する静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】 シリカをアミノ基を含有するケイ素化合物とアミノ基を含有しないケイ素化合物とで疎水化処理するとともに、疎水化処理前のシリカのBET比表面積S(m/g)とシリカに対するアミノ基を含有するケイ素化合物の添加量A(質量%)とアミノ基を含有しないケイ素化合物の添加量B(質量%)とに関して、0.10≦(A+B)/S≦0.30、0.5≦A/B≦2.0の関係を持たせて疎水性正帯電シリカ微粉末を構成し、その疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加して静電潜像現像用トナーを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性正帯電シリカ微粉末、その製造方法および上記疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加した静電潜像現像用トナーに関するものである。上記疎水性正帯電シリカ微粉末は、複写機やプリンターなどの複写画像を形成するための静電潜像現像用トナーの外添剤として有用であって、該疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加することにより、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを提供することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターなどにより得られる静電画像の高精細、高画質化への要求が市場で高まっており、トナーの小粒径化が進んでいる。また、トナーの結着樹脂としてポリエステル系樹脂を用いることにより高画質化を達成しようとすることも行われている。
しかし、ポリエステル系樹脂を用いると湿度の影響を受けやすくなり、低湿度下においては帯電量が高くなりすぎて画像欠陥が生じやすくなり、逆に高湿度下においては帯電量が不足して現像性が悪化し、鮮鋭性の高い画像が得られなくなるという問題があった。
【0003】
また、複写機やプリンターなどに組み込まれる感光体として、廃棄の際に環境に優しい有機半導体を使用し、耐久性に優れた負極性有機感光体を使用するケースが増加している。
【0004】
この負極性有機感光体には、負極性コロナ放電を利用した負極性トナーが使用されるが、負極性コロナ放電はオゾンを発生しやすく、そのため、使用環境が悪化されるという問題がある。そこで、使用環境の悪化を防止するという観点から、最近は、正極性トナーを使用した正極性感光体の使用が増加している。
【0005】
また、従来から、トナーに対して流動性付与や帯電性能付与、あるいはクリーニング性向上などの目的で、シリカや酸化チタンなどの無機酸化物粉体を外添することが行われているが、シリカを外添したトナーは、流動性は優れているものの、帯電性能の環境安定性が充分でないという問題があり、また、酸化チタンを外添したトナーは、帯電性能の環境安定性は優れているものの、流動性が充分でないという問題を有している。
【0006】
前記のように、正極性感光体には正極性トナーが使用されるが、正極性トナーとするためには、外添するシリカや酸化チタンなどの無機酸化物粉体も、正帯電性(正極性)であることが必要である。
【0007】
そのため、元来負極性であるシリカを正極性トナーに外添しようとした場合、シリカを正帯電性にする必要があるが、そのような負極性のシリカを正帯電性にする方法としてはアミノシランでシリカ表面を処理する方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかし、この方法による場合、確かに正帯電性のシリカが得られるものの、アミノシランが親水性であるため、湿度に対する耐性が悪く、そのため、帯電性能の環境変化が大きくなり、それによって、帯電性能が低下するという問題があった。
【0009】
そこで、上記のような問題を解消するため、シリカをアミノシランと疎水化剤の両方で処理する方法が提案されている(特許文献2〜4)。
【0010】
しかし、これらの方法による場合は、シリカ表面の疎水性が向上し、湿度に対する耐性も向上するものの、元来のシリカの強い親水性を完全に消し去ることができず、帯電性能の環境安定性が充分でないという問題があった。
【0011】
そのため、シリカ、酸化チタンなどの数種類の外添剤を併用して流動性と帯電性能の環境安定性を調整したり、あるいは、トナー用樹脂の改良などによって流動性と帯電性能の環境安定性を調整しているのが現状であり、そのため、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好な疎水性正帯電シリカの出現が待たれている。
【特許文献1】特公昭53−22447号公報
【特許文献2】特開昭58−216252号公報
【特許文献3】特開平5−97423号公報
【特許文献4】特開平7−187647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決し、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを得るのに適した疎水性正帯電シリカ微粉末を提供し、また、その疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加することによって上記特性を有する静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するため種々研究を重ねた結果、シリカをアミノ基を含有するケイ素化合物(以下、簡略化して、「アミノ基含有ケイ素化合物」という場合がある)とアミノ基を含有しないケイ素化合物(以下、簡略化して、「アミノ基非含有ケイ素化合物」という場合がある)との2種のケイ素化合物で疎水化処理するとともに、疎水化処理前のシリカのBET比表面積とシリカに対する2種のケイ素化合物の添加量に関して、ある特定の関係を満たさせることにより、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを提供することができる疎水性正帯電シリカ微粉末が得られることを見出し、それに基づいて本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、2種のケイ素化合物で疎水化処理された疎水性正帯電シリカ微粉末であって、2種のケイ素化合物のうち1種がアミノ基を含有するケイ素化合物であり、他の1種がアミノ基を含有しないケイ素化合物であって、疎水化処理前のシリカのBET比表面積をS(m/g)とし、このシリカに対するアミノ基を含有するケイ素化合物の添加量をA(質量%)とし、アミノ基を含有しないケイ素化合物の添加量をB(質量%)とするとき、上記S、A、Bに関して、(A+B)/Sの数値(M)が0.10≦M≦0.30で、かつ0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすことを特徴とする疎水性正帯電シリカ微粉末と、その疎水性正帯電シリカ微粉末の製造方法に関するものであり、さらには、その疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加したことを特徴とする静電潜像現像用トナーに関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複写機やプリンターなどの複写画像を形成するための静電潜像現像用トナーの外添剤として有用な疎水性正帯電シリカ微粉末を提供することができる。
【0016】
そして、上記疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加することにより、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを提供することができる。
【0017】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、その代表的用途が静電潜像現像用トナーの外添剤であるが、その流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性能が良好であるという特性を利用して、粉体塗料、樹脂用添加剤などに利用することができる。
【0018】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末が、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好である理由、および、本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加した静電潜像現像用トナーが、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られるようになる理由は、以下の「発明を実施するための最良の形態」の項において、本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末を構成する材料などの説明と共に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、2種のケイ素化合物で疎水化処理されているが、正帯電性を付与するためには、そのうちの1種はアミノ基を含有するケイ素化合物であることが必要である。
【0020】
このアミノ基を含有するケイ素化合物としては、特に特定のものに制約されることなく種々のものを使用できるが、このアミノ基を含有するケイ素化合物としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、アミノ変性シリコーンオイル、第四級アンモニウム塩型シランなどを用いることができる。それらの中でも、正帯電付与能力と流動性との観点から、アミノ基含有シランカップリング剤が特に好ましい。このアミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、それらの中でも、帯電性能の環境安定性の向上効果が優れていることから、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0021】
また、上記アミノ基を含有するケイ素化合物に対して、アミノ基を含有しないケイ素化合物としては、アミノ基を含まず疎水性を発現するものであれば、特に制約を受けることなく種々のものを用いることができるが、帯電性能の環境安定性や流動性の観点から、例えば、アルコキシシラン、シランカップリング剤、シラザン、シリコーンオイル、シリコーンレジンなどが好ましく、特にアルコキシシラン、シリコーンオイル、シリコーンレジンが好ましい。上記アルコキシシランとしては、例えば、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのストレートシリコーンオイルやエポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどが挙げられ、シリコーンレジンとしては、例えば、トリメチルシロキシケイ酸が挙げられる。
【0022】
上記2種のケイ素化合物のシリカに対する添加量(処理量)は、帯電性能の環境安定性を満足させる観点から、以下の関係を満たすことが必要である。
【0023】
すなわち、疎水化処理前のシリカのBET比表面積をS(m/g)とし、このシリカに対するアミノ基を含有するケイ素化合物の添加量をA(質量%)(シリカ100質量部に対してアミノ基を含有するケイ素化合物がA質量部)とし、アミノ基を含有しないケイ素化合物の添加量をB(質量%)(シリカ100質量部に対してアミノ基を含有しないケイ素化合物がB質量部)とするとき、上記S、A、Bに関して、(A+B)/Sの数値(M)が0.10≦M≦0.30であり、かつ、0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすことが必要であり、特に0.10≦M≦0.22で、かつ、A/B=1.0であることが好ましい。
【0024】
上記数値(M)は、シリカ表面に対する2種のケイ素化合物の被覆度合いであり、M<0.10の場合には、ケイ素化合物の被覆度が不足していて、帯電性能の環境安定性が悪くなる。また、M>0.30の場合には、ケイ素化合物の被覆度としては充分であるが、逆に被覆過剰となり、ケイ素化合物同士が結合して自己縮合物が生じやすくなるため、疎水化処理が不均一になりやすい。そのため、帯電性能の環境安定性が悪化したり、シリカの凝集力が強くなって流動性が低下するなどの問題がある。
【0025】
本発明では、さらに、上記A、Bに関して、0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすことが必要である。このA/Bはシリカを被覆するアミノ基を含有するケイ素化合物とアミノ基を含有しないケイ素化合物との比率を示し、A/B<0.5の場合は、アミノ基を含まないケイ素化合物の強い負帯電性がシリカ表面上で支配的になり、帯電量が少ない正帯電になるか、あるいは、逆に負帯電を示すことになる場合もある。また、A/B>2.0の場合は、正帯電シリカが得られるものの、湿度の影響を受けやすくなり、帯電性能の環境安定性が悪くなる。この原因はアミノ基を含有するケイ素化合物のアミノ基がシリカ表面上で支配的になり、親水性が増加(疎水性が低下)するためであると推測される。
【0026】
本発明の疎水性正極帯電シリカ微粉末を構成するにあたって使用するシリカは、特に制約されることなく、湿式法、気相法のいずれで製造されたものも使用することができる。ただし、トナー用外添剤に使用すること、および、優れた流動性を確保する観点から、シリカの平均一次粒子径は5〜100nmであることが好ましい。シリカの平均一次粒子径が5nmより小さいものは、製造自体が困難であり、100nmより大きいものは、流動性が充分でないからである。ここで、シリカの平均一次粒子径はBET比表面積測定値より求めた球相当換算径である。上記平均一次粒子径を求めるためのBET比表面積の測定は、窒素ガスの吸着量からBET一点法にて比表面積を求めることによって行われる。その際の測定条件は以下の通りである。
測定装置:マルチソーブ16型(湯浅アイオニクス社製)
脱気温度:150℃、脱気時間:20分、吸着ガス:窒素
【0027】
そして、本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、その特性が次の要件を満たしていることが好ましい。つまり、粉体濡れ性試験器におけるメタノール疎水化度分布測定において、780nmの波長を有する透過光で測定した透過率(%)が低下し始めたメタノール濃度(%)をC(開始点)とし、透過率(%)が最大限低下したメタノール濃度(%)をD(終点)とするとき、D−Cの値(ΔE)が1≦ΔE≦20となることである。このΔEは疎水化処理の均一性を示しており、ΔEが小さいほど、疎水化処理の均一度が高く、この疎水化処理の均一度が高いほど、帯電性能の環境安定性が優れ、また、流動性も高くなる。
【0028】
上記メタノール疎水化度分布測定は、粉体濡れ性試験器として「WET−100P(レスカ社製)」を用いて、次のように行われる。
まず、250mlのトールビーカーに純水70mlを入れ、測定試料0.08gを水面上に浮かべる。マグネチックスターラーにより300rpmで攪拌しながら、定量ポンプでメタノールを2.6ml/minで滴下し、この溶液の透過率を780nmの波長光で測定する。透過率(%)が低下し始めたメタノール濃度(%)C(開始点)と、透過率(%)が最大限低下したメタノール濃度(%)D(終点)とを読み取り、そのDからCを引くことにより、ΔEを求める。
【0029】
また、本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、フェライトとの混合における摩擦帯電量(Q)が、+50(μC/g)≦Q≦+1000(μC/g)であることが好ましい。
Q<+50の場合には、トナーに適正な帯電量を付与できない場合があり、また、Q>+1000の場合には、トナーの帯電量が高くなりすぎ、トナーの帯電量の制御が難しくなる場合が生じるからである。
【0030】
このフェライトとの混合における摩擦帯電量(Q)は、一般にブローオフ帯電量と呼ばれるもので、その測定方法は、後記の実施例の項で説明する。
【0031】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、湿式法、乾式法、いずれでも製造できるが、処理の均一性の点からは、湿式法が好ましい。また、2種のケイ素化合物で疎水化処理する工程において、疎水化処理が湿式法で行われ、かつ、アミノ基を含有するケイ素化合物を先にシリカと接触させ、その後から、アミノ基を含有しないケイ素化合物を接触させる方が、帯電性能の環境安定性を向上させることができるのでより好ましい。この理由は、現在のところ必ずしも明確ではないが、アミノ基を含有するケイ素化合物はシリカに対して反応性が良く、先に接触させた方が疎水化処理の均一性が高まること、および、親水性のアミノ基がシリカ表面の最外層に露出することを防止することができるからではないかと推察される。
【0032】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、均一な疎水化処理がなされており、温度や湿度などの環境変化に対する安定性が高く、従って、帯電性能の環境安定性が優れている。また、適度な正帯電性能を有し、流動性も優れていて、静電潜像現像用トナーの外添剤として最適なものといえる。
【0033】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加する静電潜像現像用トナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、2成分トナーのいずれでもよく、トナーの構成成分に関しては既知のものを任意に使用することができる。
【0034】
本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末の静電潜像現像用トナーへの添加量は、トナー樹脂に対して0.1〜3質量%(トナー樹脂100質量部に対して疎水性正帯電シリカ微粉末の添加量が0.1〜3質量部)が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。疎水性正帯電シリカ微粉末の添加量が0.1質量%より少ない場合は、静電潜像現像用トナーの帯電性能の環境安定性の向上効果が充分に得られず、また、3質量%より多い場合は、トナーからの遊離粒子が増加する傾向がある。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下に挙げる実施例は単に例示のために記すものであって、本発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【0036】
実施例1
平均一次粒子径16nmのシリカ(BET比表面積130m/g:日本アエロジル社製#130)100gをトルエン600gに分散し、そのシリカに対し、14質量%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノ基を含有するケイ素化合物)を添加した後、15分間分散混合してシリカと接触させ、その後、シリカに対し、14質量%のトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(アミノ基を含有しないケイ素化合物)を添加した後、15分間分散混合してシリカと接触させた。その分散液を減圧蒸留、乾燥、解砕して、疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。この疎水性正帯電シリカ微粉末を製造するにあたって用いたシリカのBET比表面積および平均一次粒子径、アミノ基を含有するケイ素化合物の添加量A(質量%)、アミノ基を含有しないケイ素化合物の添加量B(質量%)、(A+B)/Sの数値(M)、A/Bの値を後記の表1に示す、ただし、表1には、スペース上の関係で、シリカの「BET比表面積」は単に「比表面積」と簡略化して表示し、また、シリカの「平均一次粒子径」は単に「粒子径」と簡略化して表示し、「アミノ基を含有するケイ素化合物」は「アミノ基含有ケイ素化合物」と簡略化して表示し、「アミノ基を含有しないケイ素化合物」は「アミノ基非含有ケイ素化合物」と簡略化して表示する。また、表1には、以後に示す実施例2〜10および比較例1〜4のそれらについても示すが、その表示の仕方は実施例1の場合と同様である。
【0037】
実施例2
実施例1で用いた平均一次粒子径16nmのシリカに代えて、平均一次粒子径12nmのシリカ(BET比表面積200m/g:日本アエロジル社製#200)を用い、3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から10質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、オクチルトリエトキシシランを10重量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0038】
実施例3
実施例1におけるトリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、トリメチルシロキシケイ酸を14質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0039】
実施例4
実施例1におけるトリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、ジメチルポリシロキサンを14質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0040】
実施例5
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から7質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、オクチルトリエトキシシランを14質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0041】
実施例6
実施例1におけるトリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、トリメチルシロキシケイ酸を7質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0042】
実施例7
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から7質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、ジメチルポリシロキサンを7質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0043】
実施例8
実施例1において用いた平均一次粒子径16nmのシリカに代えて、平均一次粒子径80nmのシリカ(BET比表面積45m/g:東ソーシリカ社製E−743)を用い、3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から4質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、ジメチルポリシロキサンを4質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0044】
実施例9
実施例1において用いた平均一次粒子径16nmのシリカに代えて、平均一次粒子径7nmのシリカ(BET比表面積300m/g:日本アエロジル社製#300)を用い、3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から20重量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、ジメチルポリシロキサンを20質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0045】
実施例10
実施例1における3−アミノプロピルトリエトキシシランに代えて、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを14質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行って疎水性正帯電シリカ微粉末を得た。
【0046】
比較例1
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から20質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランの添加量を14質量%から20質量%に変更した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0047】
比較例2
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から5質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、ジメチルポリシロキサンを5質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0048】
比較例3
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から7質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、オクチルトリエトキシシランを21質量%添加とした以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0049】
比較例4
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を14質量%から21質量%に変更し、トリフルオロプロピルトリメトキシシランに代えて、トリメチルシロキシケイ酸を7質量%添加した以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0050】
前記したように、表1に、これらの実施例1〜10および比較例1〜4において用いたシリカのBET比表面積(S)(表1には「比表面積」で表示)および平均一次粒子径(表1には「粒子径」で表示)、アミノ基を含有するケイ素化合物(表1には「アミノ基含有ケイ素化合物」で表示)の添加量(A)、アミノ基を含有しないケイ素化合物(表1には「アミノ基非含有ケイ素化合物」で表示)の添加量B、Mの値〔(A+B)/Sの値〕およびA/B値を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
試験例:
上記のようにして得られた実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末および比較例1〜4のシリカ微粉末について、メタノール疎水化度分布、ブローオフ帯電量、帯電量の環境安定性を調べ、かつそれら実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末および比較例1〜4のシリカ微粉末を用いて擬似トナーを作製し、その帯電量の環境安定性を調べた。その結果を表2に示す。
【0053】
上記メタノール疎水化度分布、ブローオフ帯電量、帯電量の環境安定性の測定方法および擬似トナーの作製方法、その帯電量の環境安定性の測定方法は以下に示す通りである。
【0054】
メタノール疎水化度分布:
粉体濡れ試験器の「WET−100P(レスカ社製)」を用いて、下記の方法でメタノール疎水化度分布を測定した。
【0055】
まず、250mlのトールビーカーに純水70mlを入れ、測定試料0.08gを水面上に浮かべる。マグネチックスターラーにより300rpmで攪拌しながら、定量ポンプでメタノールを2.6ml/minで滴下し、この溶液の透過率を780nmの波長光で測定し、メタノール疎水化度分布曲線を描写させる。この時、透過率(%)が低下し始めたメタノール濃度(%)C(開始点)と、透過率(%)が最大限低下したメタノール濃度(%)D(終点)とを読み取り、それらの結果から、ΔE(D−Cの数値)を算出する。
【0056】
前記したように、このΔEが小さいほど、疎水化処理の均一度が高く、帯電性能の環境安定性が優れ、また、流動性も高くなる。
【0057】
ブローオフ帯電量:
ブローオフ粉体帯電量測定装置「TB−200(東芝ケミカル社製)」を用いて、下記の方法でブローオフ帯電量〔フェライトとの混合における摩擦帯電量(Q)〕を測定した。
【0058】
測定サンプル0.4gとフェライト96gをポリプロピレン製の容器に量り取り、2軸のローター上で100rpmの回転速度で15分間回転させた後、その混合物0.05gを500メッシュの金網上に量り取り、下記条件でブローオフ帯電量を測定する。
窒素ブロー圧:0.5kg/cm
ブロー時間:20秒
なお、測定サンプルはそれぞれ3水準の環境下(L/L、M/M、H/H)で12時間暴露後に測定した。
表2中のL/L、M/M、H/Hの温・湿度(相対湿度)はそれぞれ次の通りである。
L/L:10℃、20%
M/M: 20℃、50%
H/H:30℃、80%
【0059】
帯電量の環境安定性:
上記L/L、M/M、H/Hにおけるブローオフ帯電量の測定値から以下の通り算出する。
環境安定性(F)={(L/L−H/H)/(M/M)}×100 (%)
この数値が小さいほど帯電性能の環境安定性が良好といえる。
【0060】
擬似トナーの作製:
スチレンアクリル系トナー樹脂「ハイマーSB305(三洋化成工業社製)」をジェット気流式の粉砕機で粉砕、分級してトナー樹脂を作製した。そのトナー樹脂100質量部に対し、実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末および比較例1〜4のシリカ微粉末をそれぞれ別々に1質量%ずつ添加して擬似トナーを作製した。
【0061】
この擬似トナーの帯電量の環境安定性(F’)を前記した実施例1〜10の疎水性正帯電性シリカ微粉末などの帯電量の環境安定性(F)と同様の方法により求めた。
【0062】
上記のようにして測定ないし算出したメタノール疎水化度分布、ブローオフ帯電量、帯電量の環境安定性、擬似トナーの帯電量の環境安定性を表2に示すが、表2にはスペース上の関係で、「メタノール疎水化度分布」を簡略化して「疎水化度分布」で表示し、「帯電量の環境安定性」を簡略化して「環境安定性」のみで表示する。
【0063】
【表2】

※:(F)={(L/L−H/H)/(M/M)}×100 (%)
【0064】
表2に示すように、実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末は、帯電量の環境安定性(F)の数値が、比較例1〜4のシリカ微粉末に比べて小さく、帯電性能の環境安定性が優れていることを示していた。
【0065】
また、実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末は、表面処理の均一性の指標となるメタノール疎水化度分布測定におけるΔEの数値でも、比較例1〜4のシリカに比べて小さく、表面処理の均一性が高いことを示していた。一方、擬似トナーを作製した場合においても、実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末を用いたトナーは、比較例1〜4のシリカ微粉末を用いたトナーに比べて、帯電量の環境安定性(F’)が小さく、実施例1〜10の疎水性正帯電シリカ微粉末がトナーにおける帯電性能の環境安定性の向上に寄与することが明らかであった。
【0066】
上記のように、本発明の疎水性正帯電シリカ微粉末は、複写機やプリンターなどの複写画像を形成するための静電潜像現像用トナーの外添剤として有用であって、該疎水性正帯電シリカ微粉末を外添剤として添加することにより、流動性が優れ、かつ帯電性能の環境安定性が良好で、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種のケイ素化合物で疎水化処理された疎水性正帯電シリカ微粉末であって、2種のケイ素化合物のうち1種がアミノ基を含有するケイ素化合物であり、他の1種がアミノ基を含有しないケイ素化合物であって、疎水化処理前のシリカのBET比表面積をS(m/g)とし、このシリカに対するアミノ基を含有するケイ素化合物の添加量をA(質量%)とし、アミノ基を含有しないケイ素化合物の添加量をB(質量%)とするとき、上記S、A、Bに関して、(A+B)/Sの数値(M)が0.10≦M≦0.30で、かつ0.5≦A/B≦2.0の関係を満たすことを特徴とする疎水性正帯電シリカ微粉末。
【請求項2】
アミノ基含有ケイ素化合物が、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1記載の疎水性正帯電シリカ微粉末。
【請求項3】
疎水化処理前のシリカの平均一次粒子径が、5〜100nmであることを特徴とする請求項1記載の疎水性正帯電シリカ微粉末。
【請求項4】
粉体濡れ性試験器におけるメタノール疎水化度分布測定において、780nmの波長光で測定した透過率(%)が低下し始めたメタノール濃度(%)をC(開始点)とし、透過率(%)が最大限低下したメタノール濃度(%)をD(終点)とするとき、D−Cの数値(ΔE)が、1≦ΔE≦20であることを特徴とする請求項1記載の疎水性正帯電シリカ微粉末。
【請求項5】
フェライトとの混合における摩擦帯電量(Q)が、+50(μC/g)≦Q≦+1000(μC/g)であることを特徴とする請求項1記載の疎水性正帯電シリカ微粉末。
【請求項6】
2種のケイ素化合物で疎水化処理する工程において、疎水化処理が湿式法で行われ、かつ、アミノ基を含有するケイ素化合物を先にシリカと接触させることを特徴とする請求項1記載の疎水性正帯電シリカ微粉末の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の疎水性正帯電シリカ微粉末を、外添剤として添加したことを特徴とする静電潜像現像用トナー。

【公開番号】特開2006−290712(P2006−290712A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117688(P2005−117688)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】