説明

疎水性治療剤の改善された送達のための組成物および方法

【課題】疎水性治療剤の送達のためのトリグリセリドを含まない薬学的組成物の提供。
【解決手段】疎水性治療剤、特に性ホルモンおよびキャリアを含み、該キャリアは、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の組み合わせから形成される薬学的組成物。この組成物は、水溶液で希釈した際に、透明な水性分散物を形成するような量の、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤、この透明な水性分散物内に可溶化された、第一の量の疎水性治療剤、ならびに可溶化されないままであるが分散した、第二の量の疎水性治療剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、薬物送達系に関し、そして特に、疎水性化合物の改善された送達のための薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
疎水性治療剤、すなわち、水溶液中への乏しい溶解度を有する治療用化合物は、このような化合物を患者への効果的な投与のために処方する際に、困難な問題を提示する。十分に設計された処方物は、最低でも、治療有効量の疎水性化合物を、所望の吸収部位に、吸収可能な形態で提供し得なければならない。疎水性治療剤の送達が水性の生理学的環境(例えば、胃液および腸液)との相互作用を必要とする場合には、この最少の機能でさえ、達成することが困難である。このような疎水性治療剤の送達のための薬学的組成物は、水性環境を通ってこの疎水性化合物を運び、同時にこの疎水性化合物を吸収可能な形態に維持し、そして生理学的に有害な溶媒または賦形剤の使用を回避しなければならない。
【0003】
経口送達または非経口送達のために疎水性治療剤を処方するための多数のアプローチが、公知である。1つの周知のアプローチは、界面活性剤ミセルを使用して、治療剤を可溶化および移送する。ミセルとは、特定の条件下で両親媒性である化合物により形成される、コロイド寸法の凝集物である。ミセル、およびミセルを含む薬学的組成物は、広範囲にわたって研究されており、そして文献に詳細に記載される;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版(1985)(この開示はその全体が本明細書中に援用される)を参照のこと。水溶液中で、ミセルは、疎水性治療剤をミセルの炭化水素コア内に収容し得るか、またはミセル壁内の種々の位置で絡み得る。ミセル状処方物は種々の疎水性治療剤を可溶化し得るが、従来のミセル処方物の負荷容量は、治療剤のミセル界面活性剤中への溶解度により制限される。多くの疎水性治療剤について、このような溶解度は、治療有効容量を送達し得る処方物を与えるためにはあまりに低すぎる。
【0004】
別の従来のアプローチは、油(トリグリセリド)中での疎水性治療剤の増加した溶解度を利用する。疎水性治療剤は、水溶液中には難溶であるが、治療有効濃度の治療剤がトリグリセリドベースの溶媒中で調製され得るために十分に親油性であり得る。従って、1つの従来のアプローチは、疎水性治療剤を生物学的に受容可能なトリグリセリド溶媒中(例えば、可消化植物油)で可溶化し、そしてこの油相を水溶液中に分散させることである。この分散物は、乳化剤によって安定化され得、そしてエマルジョン形態で提供され得る。あるいは、この治療剤は、水性分散物がインビボの胃腸の環境で形成される、水を含まない処方物で提供され得る。これらの油ベースの処方物の特性は、トリグリセリド/治療剤コロイド粒子の大きさ、および界面活性添加剤の存在または非存在のような要因によって、決定される。
【0005】
最も単純な形態において、疎水性治療剤を水性環境を通して送達するために適したトリグリセリド含有処方物は、水中油エマルジョンである。このようなエマルジョンは、油相に可溶化された疎水性治療剤を含み、この油相が、界面活性剤の補助によって水性環境に分散される。この界面活性剤は、油ベースの処方物自体の中に存在し得るか、または胃腸系に提供される化合物(例えば、胆汁酸塩であり、これは、インビボ乳化剤として公知である)であり得る。コロイド状油粒子の大きさは、比較的大きく、広い粒子サイズ分布で、数百ナノメートル〜数ミクロンの直径の範囲である。粒子サイズは可視光の波長範囲以上のオーダーであるので、このようなエマルジョンは、エマルジョン投薬形態で調製される場合に、裸眼に対して視覚的に「曇っている」か、または「白濁している」。
【0006】
トリグリセリドベースの薬学的組成物は、いくらかの疎水性治療剤の可溶化および送達において有用であるが、このような組成物は、多数の重要な制限および欠点を提示する。エマルジョンは、熱力学的に不安定であり、そしてコロイド状エマルジョン粒子は、自発的に凝集し、最終的に完全な相分離をもたらす。凝集および相分離の傾向は、貯蔵および取り扱いの問題を提示し、そして最初は適切に調製された薬学的エマルジョンが、最終的な患者への投与の際に、最適ではなくなり、効果的ではなくなり、そして乏しい特徴付け段階となる可能性を増加させる。特徴付けられていない分解は、特に不利である。なぜなら、増加した粒子サイズは、コロイド状粒子の移送および油成分の消化の速度を遅くし、従って、治療剤の吸収の速度および程度を低下させるからである。これらの問題は、患者により受容される有効投薬量に、乏しく特徴付けられ、潜在的に有害な変化をもたらす。さらに、コロイド状エマルジョン粒子サイズの変化はまた、胃腸管の条件(例えば、pH、酵素活性、胆汁成分、および胃の内容物)対して吸収をより感受性にし、そしてこの条件に依存すると考えられる。治療剤の最終的な吸収の速度および程度におけるこのような不確定さは、治療有効投薬量を安全に投与する医学専門家の能力を、激しく低下させる。
【0007】
トリグリセリド含有組成物のさらなる欠点は、この治療剤吸収の、脂肪分解の速度および程度への依存である。コロイド状エマルジョン粒子は、疎水性治療剤を、胃腸管の水性環境を通して移送し得るが、最終的に、トリグリセリドは消化されなければならず、そして治療剤は腸粘膜を通して吸収されるために放出されなければならない。トリグリセリドキャリアは、胆汁酸塩によって乳化され、そして主として膵臓リパーゼによって、加水分解される。しかし、脂肪分解の速度および程度は、適切に制御することが困難であるいくつかの要因に依存する。例えば、胆汁酸塩分泌の量および速度は、トリグリセリドの脂肪分解に影響を与え、そして胆汁酸塩分泌は、胃の内容物、代謝異常、ならびに肝臓、胆管、胆嚢および腸の機能変化とともに変動し得る。膵臓分泌機能が減少した患者(例えば、嚢胞性線維症または慢性膵炎)におけるリパーゼの利用可能性は、望ましくなく低くあり得、遅くかつ不完全なトリグリセリド脂肪分解を生じる。リパーゼの活性は、pH依存性であり、約pH3で脱活性化が起こり、その結果、脂肪分解速度は胃の内容物とともに変動し、そして胃酸分泌過多を有する患者において、不完全であり得る。さらに、薬学的エマルジョンの調製において通常使用される特定の界面活性剤(例えば、ポリエトキシル化ヒマシ油)は、それ自体が、脂肪分解のインヒビターとして作用し得る。最近の研究は、特定の界面活性剤の組合せが、エマルジョン調製の際に可消化油との組合せで使用される場合に、いくつかの通常の薬学的界面活性剤(米国特許第5,645,856号を参照のこと)の脂肪分解阻害効果を実質的に減少させ得ることを示唆するが、このような処方物は依然として、薬学的エマルジョンおよびトリグリセリドベースの処方物の他の欠点を受ける。
【0008】
なお別のアプローチは、「ミクロエマルジョン」の形成に基づく。エマルジョンと同様に、ミクロエマルジョンは、水中油の液体分散物であり、界面活性剤により安定化される。ミクロエマルジョン粒子は、エマルジョンの粒子より小さく、ミクロエマルジョンを本質的に光学的に透明にする。しかし、ミクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、そして従来のエマルジョンの粒子凝集の問題を受けない。ミクロエマルジョンはミセル様粒子であり、本質的にミセルの構造を有するが、ミセル「コア」においては別個の油相を含むと一般に考えられる。これらのミセル様粒子は、しばしば、「膨潤ミセル」と称され、この用語は、ミセル様粒子の、真のミセル状粒子に対する密接な関係を強調する。これらのミセルに対する密接な関係にもかかわらず、ミクロエマルジョンは、薬物送達系において全く異なって機能する。疎水性治療剤の大部分は親油性であり、そして界面活性剤中よりトリグリセリド中への大きな溶解度を有する。その結果、ミクロエマルジョンベースの送達系における疎水性治療剤は、好ましくは、トリグリセリド相中で溶媒和され、これが次に、膨潤ミセル内にカプセル化される。トリグリセリド相への優先的な区画は、匹敵するミセルベースの系におけるより高い負荷容量を生じるが、送達系に脂肪分解依存性およびトリグリセリドの存在に関連する他の欠点を導入することを犠牲にする。さらに、ミクロエマルジョン粒子の、真のミセルに対するより大きなサイズは、より遅い速度の粒子分散、従ってより遅い速度の治療剤の吸収を生じる。
【0009】
従って、従来のミセル処方物の限定を克服するが、トリグリセリド含有処方物の欠点に悩まされない、薬学的組成物に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、疎水性治療剤の改善された送達のための薬学的組成物を提供する。1つの実施形態において、本発明は、疎水性治療剤およびキャリアを含有するトリグリセリドを含まない薬学的組成物を提供する。このキャリアは、シミュレートした胃腸液のような水溶液で希釈した際に、このキャリアが、疎水性治療剤を含有する親水性および疎水性の界面活性剤の透明な水性分散物を形成するような量の、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤を含有する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、親水性界面活性剤、疎水性界面活性剤および疎水性治療剤を含有する、透明水性分散物を提供する。この分散物は、実質的に、トリグリセリドを含まない。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、トリグリセリドを含まない薬学的組成物に関し、この組成物は、水溶液で希釈した際に、透明な水性分散物を形成するような量の、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤、この透明な水性分散物内に可溶化された、第一の量の疎水性治療剤、ならびに可溶化されないままであるが分散した、第二の量の疎水性治療剤を含有する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、本発明の薬学的組成物を患者に投与することによって、疎水性治療剤の吸収の速度および/または程度を増加させる方法に関する。
本発明のこれらの特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からさらに完全に明らかとなるか、または本明細書中以下に記載のような本発明の実施により知られ得る。
【0014】
上記および他の本発明の利点および目的が得られる様式を図示する目的で、上に簡単に記載した本発明のさらに特定の記載が、添付の図面に示す特定の実施形態を参照して、与えられる。これらの図面は、本発明の代表的な実施形態のみを図示するのであり、それによって本発明の範囲を限定するのではないことを理解して、本発明が、添付の図面の使用によって、さらなる具体性および詳細をもって、記載および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、市販の処方物と比較した、本発明の組成物における疎水性治療剤の増大した生体吸収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、従来の処方物(例えば、ミセル処方物、エマルジョン、およびミクロエマルジョン)に特徴的である上記問題を、独自のトリグリセリドを含まない薬学的組成物を提供することによって、克服する。驚くべきことに、本発明者らは、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤の組み合わせを含有する組成物が、治療有効量の疎水性治療剤を、トリグリセリドの使用に頼ることなしに可溶化し得、これによって脂肪分解依存性および従来の処方物の他の欠点を回避することを、見出した。これらの処方物の使用は、疎水性治療剤の吸収の増大した速度および/または程度を生じる。
【0017】
(A.薬学的組成物)
1つの実施形態において、本発明は、キャリアおよび疎水性治療剤を含有する薬学的組成物を提供する。このキャリアは、水溶液で希釈した際に、このキャリアが、疎水性治療剤を含有する親水性および疎水性の界面活性剤の透明な水性分散物を形成するような量の、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤を含有する。このキャリアが実質的にトリグリセリドを含まず、これによって従来のトリグリセリド含有処方物より優れた驚くべき重要な利点を提供することが、本発明の格別の特徴である。
【0018】
(1.界面活性剤)
キャリアは、少なくとも1つの親水性界面活性剤および少なくとも1つの疎水性界面活性剤を含有する。当該分野において周知であるように、用語「親水性」および「疎水性」は、相対的な用語である。界面活性剤として機能するために、化合物は必然的に、極性または荷電した親水性部分、ならびに非極性の疎水性(親油性)部分を含まなければならない。すなわち、界面活性化合物は、両親媒性でなければならない。非イオン性両親媒性化合物の相対的な親水性および疎水性を特徴付けるために通常使用される、実験パラメータは、親水性−親油性バランス(「HLB」値)である。より低いHLB値を有する界面活性剤は、より疎水性であり、そして油中へのより大きな溶解度を有し、一方で、より高いHLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、そして水溶液中へのより大きな溶解度を有する。
【0019】
HLB値を大まかなガイドとして使用して、親水性界面活性剤は、一般に、約10より大きなHLB値を有する化合物であり、そしてHLBスケールが一般的に適用不可能である、アニオン性、カチオン性、または双性イオン性化合物であると、考えられる。同様に、疎水性界面活性剤は、約10未満のHLB値を有する化合物である。
【0020】
界面活性剤のHLB値は、工業的、薬学的および美容エマルジョンの処方を可能にするために一般的に使用される、単なる大まかなガイドであることが、理解されるべきである。いくつかのポリエトキシル化界面活性剤を含む、多くの重要な界面活性剤に関して、HLB値は、HLB値を決定するために選択される実験方法に依存して、約8HLB単位まで異なり得ることが、報告されている(Schott、J.Pharm.Sciences、79(1)、87−88(1990))。同様に、特定のポリプロピレンオキシド含有ブロックコポリマー(PLURONIC(登録商標)界面活性剤、BASF Corp.)に関して、HLB値は、この化合物の真の物理的化学的性質を正確には反映しないかもしれない。最後に、市販の界面活性剤製品は、一般に、純粋な化合物ではなく、化合物の複雑な混合物であり、そして特定の化合物に関して報告されたHLB値は、その化合物が主成分である市販の製品のより正確な特徴であり得る。同じ主要な界面活性剤成分を有する異なる市販の製品は、異なるHLB値を有し得、そして代表的にそうである。さらに、特定量のロット間の変動が、単一の市販の界面活性剤製品に対してさえ、予測される。これらの固有の困難を留意し、そしてHLB値をガイドとして使用して、当業者は、本明細書中に記載のように、本発明において使用するための適切な親水性または疎水性を有する界面活性剤を容易に同定し得る。
【0021】
親水性界面活性剤は、薬学的組成物における使用に適した任意の親水性界面活性剤であり得る。このような界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、または非イオン性であり得るが、非イオン性の親水性界面活性剤が、現在好ましい。上記のように、これらの非イオン性の親水性界面活性剤は、一般に、約10より大きなHLB値を有する。親水性界面活性剤の混合物もまた、本発明の範囲内である。
【0022】
同様に、疎水性界面活性剤は、薬学的組成物における使用に適した任意の疎水性界面活性剤であり得る。一般に、適切な疎水性界面活性剤は、約10未満のHLB値を有する。疎水性界面活性剤の混合物もまた、本発明の範囲内である。
【0023】
特定の疎水性および親水性の界面活性剤の選択は、以下にさらに詳細に議論するように、組成物において使用するべき特定の疎水性治療剤、および選択した治療剤に対して適切な極性の範囲に留意して、なされるべきである。これらの一般的な原理に留意して、非常に広範囲の界面活性剤が、本発明における使用に適している。このような界面活性剤は、以下の表に詳述される、以下の一般的な化学的クラスにグループ化され得る。以下の表に与えられるHLB値は、一般に、対応する市販の製品の製造業者により報告されたHLB値を示す。1より多い市販の製品が列挙される場合には、この表におけるHLB値は、市販の製品の1つに関して報告された値であるか、報告された値の大まかな平均であるか、または本発明者らがより信頼性があると判断した値である。本発明は、以下の表の界面活性剤に限定されないことが、強調されるべきである。この表は、代表的な、しかし排他的ではない、利用可能な界面活性剤の列挙を示す。
【0024】
(1.1.ポリエトキシル化脂肪酸)
ポリエチレングリコール(PEG)自体は、界面活性剤として機能しないが、種々のPEG−脂肪酸エステルは、有用な界面活性特性を有する。PEG−脂肪酸モノエステルのうちでもとりわけ、ラウリン酸、オレイン酸、およびステアリン酸のエステルが、最も有用である。表1の界面活性剤のうちでもとりわけ、好ましい親水性界面活性剤としては、PEG−8ラウレート、PEG−8オレエート、PEG−8ステアレート、PEG−9オレエート、PEG−10ラウレート、PEG−10オレエート、PEG−12ラウレート、PEG−12オレエート、PEG−15オレエート、PEG−20ラウレートおよびPEG−20オレエートが挙げられる。市販のポリエトキシル化脂肪酸モノエステル界面活性剤の例を、表1に示す。
【0025】
【表1−1】

【0026】
【表1−2】

【0027】
【表1−3】

【0028】
(1.2.PEG−脂肪酸ジエステル)
ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルもまた、本発明の組成物における界面活性剤としての使用に適する。表2の界面活性剤のうちでもとりわけ、好ましい親水性界面活性剤としては、PEG−20ジラウレート、PEG−20ジオレエート、PEG−20ジステアレート、PEG−32ジラウレートおよびPEG−32ジオレエートが挙げられる。代表的なPEG−脂肪酸ジエステルを、表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
(1.3 PEG−脂肪酸モノエステルおよびジエステル混合物)
一般に、2以上の市販の界面活性剤製品の混合物を含む、界面活性剤の混合物もまた、本発明において使用される。いくつかのPEG−脂肪酸エステルは、混合物またはモノエステルおよびジエステルとして市販されている。代表的な界面活性剤混合物を、表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
(1.4 ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル)
適切なPEGグリコール脂肪酸エステルを、表4に示す。表中の界面活性剤の中で、好ましい親水性界面活性剤は、PEG−20グリセリルラウレート、PEG−30グリセリルラウレート、PEG−40グリセリルラウレート、PEG−20グリセリルオレアート、およびPEG−30グリセリルオレアートである。
【0033】
【表4】

【0034】
(1.5 アルコール−油エステル交換生成物)
疎水性または親水性の異なる程度の多数の界面活性剤が、種々の天然油および/または硬化油とアルコールまたはポリアルコールとの反応によって調整され得る。最も一般的に、使用される油は、ヒマシ油または硬化ヒマシ油、あるいは、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、パーム核油、杏仁油、またはアーモンド油のような食用植物油である。好ましい、アルコールとしては、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、およびペンタエリスリトールが挙げられる。これらのアルコール−油エステル交換界面活性剤の中で、好ましい親水性界面活性剤は、PEG−35ヒマシ油(Incrocas−35)、PEG−40硬化ヒマシ油(Cremophor RH40)、PEG−25トリオレアート(TAGAT(登録商標)TO)、PEG−60コーングリセリド(Crovol M70)、PEG−60アーモンド油(Crovol A70)、PEG−40パーム核油(Crovol PK70)、PEG−50ヒマシ油(Emalex C−50)、PEG−50硬化ヒマシ油(Emalex HC−50)、PEG−8カプリル(caprylic)/カプリン(capric)グリセリド(Labrasol)、およびPEG−6カプリル/カプリングリセリド(Softigen767)である。好ましい、このクラスの疎水性界面活性剤としては、PEG−5硬化ヒマシ油、PEG−7硬化ヒマシ油、PEG−9硬化ヒマシ油、PEG−6トウモロコシ油(Labrafil(登録商標)M 2125 CS)、PEG−6アーモンド油(Labrafil(登録商標)M 1966CS)、PEG−6杏仁油(Labrafil(登録商標)M 1944 CS)、PEG−6オリーブ油(Labrafil(登録商標)M 1980 CS)、PEG−6ピーナッツ油(Labrafil(登録商標)M 1969 CS)、PEG−6硬化パーム核油(Labrafil(登録商標)M 2130 BS)、PEG−6パーム核油(Labrafil(登録商標)M 2130 CS)、PEG−6トリオレイン(Labrafil(登録商標)M 2735 CS)、PEG−8トウモロコシ油(Labrafil(登録商標)WL 2609 BS)、PEG−20コーングリセリド(Crovol M40)、およびPEG−20アーモンドグリセリド(Crovol A40)が挙げられる。後者の2つの界面活性剤は、10のHLB値を有すると報告されており、この値は、一般に、親水性界面活性剤と疎水性界面活性剤との間のほぼ境界線であると考えられる。本発明の目的のために、これらの2つの界面活性剤は、疎水性であると考えられる。本発明における使用に適した、このクラスの代表的な界面活性剤を、表5に示す。
【0035】
【表5−1】

【0036】
【表5−2】

【0037】
【表5−3】

【0038】
この界面活性剤のカテゴリー中の油としてはまた、油溶性ビタミン(例えば、ビタミンA,D,E,Kなど)が挙げられる。従って、これらのビタミン(例えば、トコフェリルPEG−1000スクシナート(TPGS;Eastmanから入手可能))の誘導体はまた、適切な界面活性剤である。
【0039】
(1.6 ポリグリセル化(polyglycerized)脂肪酸)
脂肪酸のポリグリセロールエステルもまた、本発明の適切な界面活性剤である。ポリグリセリル脂肪酸エステルの中で、好ましい疎水性界面活性剤としては、ポリグリセリルオレアート(Plurol Oleique)、ポリグリセリル−2ジオレアート(Nikkol DGDO)、およびポリグリセリル−10トリオレアートが挙げられる。好ましい親水性界面活性剤としては、ポリグリセリル−10ラウレート(Nikkol Decaglyn 1−L)、ポリグリセリル−10オレアート(Nikkol Decaglyn 1−O)、およびポリグリセリル−10モノ,ジオレアート(Caprol(登録商標)PEG 860)が挙げられる。ポリグリセリルポリリシノレート(Polymuls)もまた、好ましい親水性および疎水性界面活性剤である。適切なポリグリセリルエステルの例を、表6に示す。
【0040】
【表6】

【0041】
(1.7 プロピレングリコール脂肪酸エステル)
プロピレングリコールと脂肪酸とのエステルは、本発明での使用のために適した界面活性剤である。この界面活性剤のクラスの中で、好ましい疎水性界面活性剤としては、プロリレングリコールモノラウレート(Lauroglycol FCC)、プロピレングリコールリシノレート(Propymuls)、プロピレングリコールモノオレアート(Myverol P−O6)、プロピレングリコールジカプリレート(dicaprylate)/ジカプラート(dicaprate)(Captex(登録商標)200)、およびプロピレングリコールじオクタノエート(Captex(登録商標)800)が挙げられる。このクラスの界面活性剤の例を、表7に示す。
【0042】
【表7】

【0043】
(1.8 プロピレングリコールエステル−グリセロールエステルの混合物)
一般に、界面活性剤の混合物もまた、本発明での使用に適している。特に、プロピレングリコール脂肪酸エステルとグリセロール脂肪酸エステルの混合物が、適しており、そして市販されている。1つの好ましい混合物は、プロピレングリコールとグリセロールのオレイン酸エステル(Arlacel 186)から構成される。これらの界面活性剤の例を、表8に示す。
【0044】
【表8】

【0045】
(1.9 モノグリセリドおよびジグリセリド)
界面活性剤の特に重要なクラスは、モノグリセリドおよびジグリセリドのクラスである。これらの界面活性剤は、一般に、疎水性である。このクラスの化合物において、好ましい疎水性界面活性剤としては、グリセリルモノオレアート(Peceol)、グリセリルリシノレート、グリセリルラウレート、グリセリルジラウレート(Capmul(登録商標)GDL)、グリセリルジオレアート(Capmul(登録商標)GDO)、グリセリルモノ/ジオレアート(Capmul(登録商標)GMO−K)、グリセリルカプリレート/カプラート(Capmul (登録商標)MCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(Imwitor(登録商標)988)、およびモノおよびジアセチル化モノグリセリド(Myvacet(登録商標)9−45)が挙げられる。これらの界面活性剤の例を、表9に示す。
【0046】
【表9−1】

【0047】
【表9−2】

【0048】
(1.10ステロールおよびステロール誘導体)
ステロールおよびステロールの誘導体は、本発明における使用に適した界面活性剤である。これらの界面活性剤は、親水性または疎水性であり得る。好ましい誘導体としては、ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。このクラスにおいて、好ましい疎水性界面活性剤は、コレステロールである。このクラスにおいて、好ましい疎水性界面活性剤は、PEG−24コレステロールエーテル(Solulan C−24)である。このクラスの界面活性剤の例を、表10に示す。
【0049】
【表10】

【0050】
(1.11ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル)
種々のPEG−ソルビタン脂肪酸エステルが、本発明において界面活性剤としての使用に利用可能あり、かつ適切である。一般に、これらの界面活性剤は、親水性であるが、このクラスのいくつかの疎水性界面活性剤が、使用され得る。PEG−ソルビタン脂肪酸エステルの中で、好ましい親水性界面活性剤としては、PEG−20ソルビタンモノラウレート(Tween−20)、PEG−20ソルビタンパルミテート(Tween−40)、PEG−20ソルビタンモノステアラート(Tween−60)、およびPEG−20ソルビタンモノオレアート(Tween−80)が挙げられる。これらの界面活性剤の例を、表11に示す。
【0051】
【表11】

【0052】
(1.12.ポリエチレングリコールアルキルエーテル)
ポリエチレングリコールとアルキルアルコールのエーテルは、本発明における使用のために適した界面活性剤である。好ましい疎水性エーテルとしては、PEG−3オレイルエーテル(Volpo3)およびPEG−4ラウリルエーテル(Brij30)が挙げられる。これらの界面活性剤の例を、表12に示す。
【0053】
【表12】

【0054】
(1.13 糖エステル)
糖のエステルは、本発明での使用に適した界面活性剤である。このクラスにおいて、好ましい親水性界面活性剤としては、スクロースモノパルミテートおよびスクロースモノラウレートが挙げられる。このような糖の例を、表13に示す。
【0055】
【表13】

【0056】
(1.14 ポリエチレングリコールアルキルフェノール)
いくつかの親水性PEG−アルキルフェノール界面活性剤が、本発明での使用に利用可能であり、かつ適切である。これらの界面活性剤を、表14に示す。
【0057】
【表14】

【0058】
(1.15 ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)
POE−POPブロックコポリマーは、ポリマー界面活性剤の独特なクラスである。十分に定義された割合および状態の親水性POEおよび疎水性POP部分を有する、この界面活性剤の独特のクラスにおいて、本発明での使用に適切な広範の界面活性剤が提供される。これらの界面活性剤は、種々の登録商標で市販されており、これらには、Synperonic PEseries(シリーズ)(ICI);Pluronic(登録商標)series(BASF)、Emkalyx、Lutrol(BASF)、Supronic、Monolan、Pluracare、およびPlurodacが挙げられる。これらのポリマーの一般名は、「ポロキサマー(poloxamer)」(CAS9003−11−6)である。これらのポリマーは以下の式:
HO(C24O)a(C36O)b(C24O)a
を有し、ここで、「a」および「b」は、それぞれ、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンの単位数を意味する。
【0059】
好ましい、このクラスの親水性界面活性剤としては、Poloxamers 108,188,217,238,288,338,および407が挙げられる。好ましい、このクラスの疎水性界面活性剤としては、Poloxamers 124,182,183,212,331,および335が挙げられる。
【0060】
このクラスの適切な界面活性剤の例を、表15に示す。この化合物は、幅広く市販されているので、市販供給源は、表に記載していない。これらの化合物を、対応する「a」および「b」の値を用いた一般名で記載する。
【0061】
【表15】

【0062】
(1.16.ソルビタン脂肪酸エステル)
脂肪酸のソルビタンエステルは、本発明での使用に適した界面活性剤である。これらのエステルの中で、好ましい疎水性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート(Arlacel 20)、ソルビタンモノパルミテート(Span−40)、ソルビタンモノオレアート(Span−80)、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラートが挙げられる。これらの界面活性剤の例を、表16に示す。
【0063】
【表16】

【0064】
(1.17.低級アルコール脂肪酸エステル)
低級アルコール(C2〜C4)と脂肪酸(C8〜C18)とのエステルは、本発明における使用に適した界面活性剤である。これらのエステルの中で、好ましい疎水性界面活性剤は、エチルオレアート(Crodamol EO)、イソプロピルミリステート(Crodamol IPM)、およびイソプロピルパルミテート(Crodamol IPP)が挙げられる。これらの界面活性剤の例を、表17に示す。
【0065】
【表17】

【0066】
(1.18.イオン性界面活性剤)
イオン性界面活性剤(カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤を含む)は、本発明における使用のための適切な親水性界面活性剤である。好ましいアニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩および胆汁酸塩が挙げられる。特に、好ましいイオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム、コール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムが挙げられる。このような界面活性剤の例は、以下の表18に示される。簡潔さのために、代表的な対イオンがこの表における項目に示される。しかし、任意の生物受容性の対イオンが使用され得ることは、当業者によって明らかである。例えば、脂肪酸はナトリウム塩として示されているが、他のカチオン対イオン(例えば、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウム)もまた使用され得る。代表的な非イオン性界面活性剤と異なり、これらのイオン性界面活性剤は、市販の(独自の)混合物ではなく、純粋化合物として一般的に入手可能である。これらの化合物は、種々の商業的業者(例えば、Aldrich、Sigmaなど)から容易に入手可能であり、商業的供給元は、一般的にこの表には列挙されていない。
【0067】
【表18−1】

【0068】
【表18−2】

【0069】
【表18−3】

【0070】
(1.19 界面活性剤濃度)
親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤は、水溶液で希釈する際に、キャリアが、疎水性治療剤を含む、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤の透明な水性分散液を形成するような量で、本発明の薬学的組成物中に存在する。親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤の相対量は、得られる分散液の性質を観察することによって容易に決定される;すなわち、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の相対量が適切な範囲内にある場合、得られる水性分散液は、光学的に透明である。疎水性界面活性剤の相対量が多すぎる場合、得られる分散液は、目に見えて「濁って」おり、通常の乳濁液または多相系に似ている。目に見えて濁っている溶液は、いくつかの適用のために潜在的に有用であり得るが、このような系は、上記のような従来の先行技術の処方物と同様の、多くの不利益を受ける。
【0071】
任意の親水性界面活性剤−疎水性界面活性剤対の適切な相対濃度を決定する便利な方法は、以下の通りである。親水性界面活性剤の都合のよい実用的な量を提供し、そして既知量の疎水性界面活性剤を加える。所望の場合、穏やかな加熱を用いて、界面活性剤を攪拌し、均一な混合物を形成する。得られた混合物を、精製水で希釈して、水性分散液を調製する。任意の希釈の量を選択し得るが、都合のよい希釈度は、インビボで予測される範囲内の希釈度である、約10〜250倍希釈である。次いで、この水性分散液を、光学的透明性について定性的に評価する。この手順は、加える疎水性界面活性剤の相対量における漸増する変化と共に繰り返され、所定の界面活性剤対について存在し得る疎水性界面活性剤の最大相対量を決定し得る。
【0072】
あるいは、水性分散液の光学的透明性は、混濁度評価のための標準的定量的技術を用いて測定され得る。混濁度を測定するための1つの都合の良い手順は、例えば、UV可視分光光度計を使用して、溶液を透過する所定の波長の光の量を測定することである。この手段を用いると、光学的透明性は高い透過度に対応する。なぜなら、より濁った溶液は、より多くの入射光を散乱し、低い透過度測定を生じるからである。この手順が使用される場合、界面活性剤混合物はそれ自身選択された波長の光を吸収しないことを確実にするように注意を払わなければならない。なぜなら、任意の真の吸収は、必ず透過光の量を減少させ、そして定量的な混濁度値を誤って増加させるからである。選択された波長での発色団の非存在下で、10倍の希釈度での適切な分散液は、約0.3未満、好ましくは約0.2未満、そしてより好ましくは約0.1未満の見かけ上の吸光度を有するべきである。100倍の希釈度での適切な分散液は、約0.1未満、好ましくは約0.05未満、そしてより好ましくは約0.01未満の見かけ上の吸光度を有するべきである。
【0073】
光学的透明性および水性境界層を通るキャリアの拡散率を決定する第3の方法は、懸濁液を構成する粒子のサイズを定量的に測定することである。これらの測定は、市販の粒子サイズ分析計(例えば、Santa Barbara,CAのParticle Size Systems,Inc.から入手可能な、Nicomp粒子サイズ分析計など)により行われ得る。この手段を用いて、本発明に従う透明な水性分散液は、可視光の波長よりもずっと小さい平均粒子サイズを有するが、過剰な相対量の疎水性界面活性剤を含有する分散液は、非常に大きい平均粒子サイズを有する、より複雑な粒子サイズ分布を有する。平均粒子サイズが約100nm未満、好ましくは約50nm未満、より好ましくは約30nm未満、そしてなおより好ましくは約20nm未満であることが望ましい。粒子サイズ分布が単一モードであることもまた好ましい。本明細書中の実施例においてより詳細に示されるように、望ましくなく大きな相対量の疎水性界面活性剤を有する分散液は、代表的に、二モード粒子サイズ分布を示し、このような分布は、小さい粒子サイズ成分(代表的には、約30nm未満)および大きい粒子サイズ成分(代表的には、100nm以上のオーダーである)を有する。これらの粒子サイズは、疎水性治療剤の非存在下での、水溶液中のキャリヤ粒子に対して適切であることが強調されるべきである。疎水性治療剤の存在は、平均粒子サイズの増加を生じ得ることが予想される。
【0074】
所望の場合、光学的透明性または粒子サイズを決定する他の方法が使用され得る。このような方法は、当業者に周知である。
任意のまたはすべての利用可能な方法が、得られる水性分散液が、必要な光学的透明性を有することを確実にするために使用され得ることが強調されるべきでる。しかし、簡便さのために、本発明者らは、単純な定性的手順;すなわち、単純な可視観察を使用することを好む。しかし、より十分に本発明の実行を示すために、本明細書中の実施例において、上記の3つの方法すべてが、分散液の透明性を評価するために使用される。
【0075】
上記の性質を有する任意の水性分散液が、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の特定の相対量に関わらず、本発明の範囲内にあることが理解されるべきであるが、疎水性界面活性剤の量は、一般的に、親水性界面活性剤の量に基づいて約200重量%未満であり、そしてより詳細には、約1%〜200%の範囲内であることが予想される。さらに、本明細書中の実施例において報告される観察に基づき、疎水性界面活性剤の量は、一般的に、親水性界面活性剤の量に基づき、約100%未満、そしてより詳細には約5重量%〜約100重量%または約10重量%〜約100重量%の範囲内であることが予想される。いくつかの特定の界面活性剤の組み合わせについては、疎水性界面活性剤の量が、親水性界面活性剤の量に基づいて、約60重量%よりも多い場合に、濁った溶液を生じる。これらの界面活性剤についての好ましい範囲は、約1%〜約60%、好ましくは約5%〜約60%、そしてより好ましくは約10%〜約60%である。以下に記載されるような任意の賦形剤の添加は、使用され得る疎水性界面活性剤の最大相対量をさらに増加させ得る。
【0076】
当業者に周知の他の要件は、特定の割合の疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の選択をさらに提供する。これらの要件としては、界面活性剤の生物受容性の程度、および提供されるべき疎水性治療剤の所望の用量が挙げられる。いくつかの場合、本発明に従う薬学的組成物において実際に使用される疎水性界面活性剤の量は、使用され得る最大量よりも少なく、そしてこのような組成物もまた本発明の範囲内であることは明らかであるべきである。
【0077】
(2.疎水性治療剤)
本発明の薬学的組成物における使用のための適切な疎水性治療剤は、特に限定されない。なぜなら、キャリアが意外にも可溶化し得、そして広範な種々の疎水性治療剤を送達し得るからである。疎水性治療剤は、水溶性がほとんどないかまたは全くない化合物である。本発明において使用可能な疎水性治療剤の固有の水溶性(すなわち、非イオン形態の水溶性)は、約1重量%未満であり、そして代表的には約0.1重量%または0.01重量%未満である。このような治療剤は、動物(特に、哺乳動物)に投与される場合に、治療的価値または他の価値を有する任意の薬剤(例えば、薬物、栄養分、および化粧品(美容用薬品(cosmeceuticals))であり得る。本発明は、水性分散液の形態におけるその価値を特に参照して記載されるが、本発明はそのように限定されないことが理解されるべきである。従って、例えば、局所的投与または経皮的投与によってそれらの治療的価値または他の価値を誘導する、疎水性薬物、栄養分または化粧品は、やはり本発明における使用のために適切であると考えられる。
【0078】
本発明の薬学的組成物において使用され得る疎水性治療剤の、特定の非限定的な例としては、以下の代表的な化合物、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩、異性体、エステル、エーテルおよび他の誘導体が挙げられる。
【0079】
鎮痛薬および抗炎症薬:例えば、アロキシプリン、オーラノフィン、アザプロパゾン、ベノリラート、カプサイシン、セレコキシブ(selecoxib)、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、レフルノミド、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ロフェコキシブ(rofecoxib)、スリンダク、テトラヒドラカンナビノール、トラマドールおよびトロメタミン;
駆虫剤:例えば、アルベンダゾール、ベフェニウムヒドロキシナフトエート、カンベンダゾール、ジクロロフェン、イベルメクチン、メベンダゾール、オキサムニキン、オクスフェンダゾール(oxfendazole)、オキサンテルエンボネート、プラジカンテル、ピランテルエンボネートおよびチアベンダゾール;
抗不整脈薬:例えば、アミオダロンHCl、ジソピラミド、酢酸フレカイニドおよび硫酸キニジン;
抗喘息薬:例えば、ジロイトン、ザフィルルカスト(zafirulukast)、硫酸テルブタリン、モンテルカスト(montelukast)、およびアルブテロール;
抗菌剤:例えば、アラトロフロキサシン、アジスロマイシン、バクロフェン、ベネタミンペニシリン、シノキサシン、シプロフロキサシンHCl、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロサイクリン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、フラゾリドン、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、イミペネム、レボフロキサシン、ロレフロキサシン(lorefloxacin)、モキシフロキサシン(moxifloxacin)HCl、ナリジクス酸、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、スパルフロキサシン、スピラマイシン、スルファベンズアミド、スルファドキシン(sulphadoxine)、スルファメラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリム、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、およびバンコマイシン;
抗ウイルス薬:例えば、アバカビル(abacavir)、アンプレナビル(amprenavir)、デラビルジン(delavirdine)、エファビレンズ(efavirenz)、インディナビル(indinavir)、ラミブジン(lamivusine)、ネルフィナビル(nelfinavir)、ネビラピン(nevirapine)、リトナビル(ritonavir)、サキナビル、およびスタブジン(stavudine);
抗凝血薬:例えば、シロスタゾール、クロピドグレル、ジクマロール、ジピリダモール、ニクマロン、オプレルベキン(oprelvekin)、フェニンジオン、チクロピジン、およびチロフィバン(tirofiban);
抗うつ薬:例えば、アモキサピン、ビュープロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、フルオキセチンHCl、マプロチリンHCl、ミアンセリンHCl、ノルトリプチンHCl、パロキセチンHCl、セルトラリンHCl、トラゾドンHCl、トリミプラミンマレート、およびベンラファキシンHCl;
抗糖尿病薬:例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グリメプリド、ミグリトール、ピオグリタゾン、レパグリニド(repaglinide)、ロジグリタゾン(rosiglitazone)、トラザミド、トルブタミドおよびトログリタゾン(troglitazone);
抗てんかん薬:例えば、ベクラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、エトトイン、フェルバメート、ホスフェニトインナトリウム、ラモトリジン、メトイン、メトスクシミド、メチルフェノバルビトン、オクスカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、フェノバルビトン、フェニトイン、フェンスクシミド、プリミドン、スルチアム、チアガビン(tiagabine)HCl、トピラマート、バルプロ酸、およびビガバトリン;
抗真菌薬:例えば、アンホテリシン、ブテナフィンHCl、硫酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、硫酸エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ニスタチン、硫酸スルコナゾール、オキシコナゾール、テルビナフィンHCl、テルコナゾール、チオコナゾールおよびウンデセン酸;
抗痛風薬:例えば、アロプリノール、プロベネシドおよびスルフィンピラゾン;
血圧降下薬:例えば、アムロジピン、ベニジピン、ベネゼプリル(benezepril)、カンデサルタン(candesartan)、カプトプリル、ダロジピン(darodipine)、ジリタゼム(dilitazem)HCl、ジアゾキシド、ドキサゾシンHCl、エナラプリル、エポサルタン(eposartan)、ロサルタンメシレート、フェロジピン、フェノールドパム、ホシノプリル、酢酸グアナベンズ、イルベサルタン(irbesartan)、イスラジピン、リシノプリル、ミノキシジル、ニカルジピンHCl、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、フェノキシベンザミンHCl、プラゾシンHCl、キナプリル、レセルピン、テラゾシンHCl、テルミサルタン(telmisartan)、およびバルサルタン(valsartan);
抗マラリア薬:例えば、アモジアキン、クロロキン、クロルプログアニルHCl、ハロファントリンHCl、メフロキンHCl、プログアニルHCl、ピリメタミンおよび硫酸キニーネ;
抗偏頭痛薬:例えば、ジヒドロエルゴタミンメシレート、酒石酸エロゴタミン、フロバトリプタン(frovatriptan)、マレイン酸メチセルジド、ナラトリプタン(naratriptan)HCl、マレイン酸ピゾチフェン、安息香酸リザトリプタン(rizatriptan)、コハク酸スマトリプタン、およびゾルミトリプタン(zolmitriptan);
抗ムスカリン薬:例えば、アトロピン、ベンツヘキソールHCl、ビペリデン、エトプロパジンHCl、ヒヨスチアミン、臭化メペンゾレート、オキシフェンサイクリミンHClおよびトロピカミド;
抗悪性腫瘍薬および免疫抑制薬:例えば、アミノグルテチミド、アムサクリン、アザチオプリン、ビカルタミド(bicalutamide)、ビサントレン(bisanthrene)、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン(capecitabine)、クロランブシル、シクロスポリン、ダカルバジン、エリプチシン、エストラムスチン、エトポシド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モフェティルマイコフェノレート(mofetil mycophenolate)、ニルタミド、パクリタキセル、プロカルバジンHCl、シロリマス(sirolimus)、タクロリムス、クエン酸タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン(testlactone)、トポテカン(topotecan)HCl、およびクエン酸トレミフェン;
抗原虫薬:例えば、アトバクオン(atovaquone)、ベンズニダゾール、クリオキノール、デコキナート、ジヨードヒドロキシキノリン、ジロキサニドフロエート、ジニトルミド、フラゾリドン、メトロニダゾール、ニモラゾール、ニトロフラゾン、オルニダゾールおよびチニダゾール;
抗甲状腺薬:例えば、カルビマゾール、パラカルシトール(paracalcitol)、およびプロピルチオウラシル;
鎮咳薬:例えば、ベンゾナテート;
抗不安薬、鎮静薬、催眠薬および神経弛緩薬:例えば、アルプラゾラム、アミロバルビトン、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマル、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロナゼパム、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルナニソン(flunanisone)、フルニトラゼパム、トリフルオプロマジン、フルフェンチキソールデカノエート、フルフェナジンデカノエート、フルラゼパム、ガバペンチン、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メソリダジン(mesoridazine)、メタカロン、メチルフェニデート、ミダゾラム、モリンドン、ニトラゼパム、オランザピン、オキサゼパム、ペントバルビツール、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジン、プソイドエフェドリン、クエチアピン(quetiapine)、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾルピデム、およびゾピクロン;
β遮断薬:例えば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロールおよびプロプラノロール;
強心薬:例えば、アムリノン、ジギトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトサイドCおよびメジゴキシン;
副腎皮質ステロイド:例えば、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾンアセテート、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾンアセテート、フルニソリド、フルオコルトロン、フルチカゾンプロピオネート、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロン;
利尿薬:例えば、アセタゾラミド、アミロリド、ベンドロフルメチアジド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フルセミド、メトラゾン、スピロノラクトンおよびトリアムテレン;
パーキンソン病薬:例えば、ブロモクリプチンメシレート、リスリドマレート、プラミペキソール、ロピニロールHCl、およびトルカポン(tolcapone);
胃腸薬:例えば、ビサコジル、シメチジン、シサプリド、ジフェノキシレートHCl、ドンペリドン、ファモチジン、ランソプラゾール(lanosprazole)、ロペラミド、メサラジン、ニザチジン、オメプラゾール、オンダンセトロンHCl、ラベプラゾール(rabeprazole)ナトリウム、ラニチジンHClおよびスルファサラジン;
ヒスタミンH−レセプターアンタゴニスト:例えば、アクリバスチン、アステミゾール、クロフェニラミン、シンナリジン、セトリジン(cetrizine)、クレマスチンフマレート、シクリジン、シプロヘプタジンHCl、デキスクロフェニラミン、ジメンヒドリネート、フェキソフェナジン、フルナリジンHCl、ロラタジン、メクリジンHCl、オキサトミド、およびテルフェナジン;
角質溶解剤、例えば、アセトレチン(acetretin)、カルシプロトリエン(calciprotriene)、カルシフェジオール、カルシトリオール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、エトレチナート、レチノイド、タルグレチン、およびタザロテン;
脂質調節剤、例えば、アトルバスタチン、ベザフィルラート、セリバスタチン(cerivastatin)、クリノフィブラート、クロフィブラート、フルバスタチン、ゲムフィブロジル、プラバスタチン、プロブコール、およびシンバスタチン;
筋弛緩薬、例えば、ダントロレンナトリウム、チザニジンHCl;
ニトレートおよび他の抗狭心症薬剤、例えば、アミルニトレート、グリセロールトリニトレート、ソルビドジニトレート、ソルビドモノニトレート、およびペンタエリスリトールテトラニトレート;
栄養剤、例えば、カルシトリオール、カロチン、ジヒドロタキステロール、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、フィトナジオン(phytonodione)、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンK。
【0080】
オピオイド鎮痛薬、例えば、コデイン、デキトロプロポキシフェン、ジアモルフィン(diamorphine)、ジヒドロコデイン、フェンタニル、メプタジノール、メタドン、モルヒネ、ナルブフェン、およびペンタゾシン;
性ホルモン、例えば、クエン酸クロミフェン、酢酸コルチゾン、ダナゾール、デヒドロエピアンドロステロン、エチニルエストラジオール、フィナステライド(finasteride)、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール(megesterol acetate)、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、オエストラジオール(oestradiol)、結合体化ストロゲン、プロゲステロン、リメキソロン(rimexolone)、スタノゾロール、スチベストロール(stiboestrol)、テストステロンおよびチボロン(tibolone);
興奮薬、例えば、アンフェタミン、デキサンフェタミン、デクスフェンフルラミン(dexfenfluramine)、フェンフルラミンおよびマチンドール;
ならびに、他のもの、例えば、ベカプラミン(becaplamin)、ドネペジルHCl(donepezil HCl)、L−スリロキシン(L−thryroxine)、メトキサレン、ベルテポルフィン(nerteporfin)、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、ラロキシフェンHCl(raloxifene HCl)、シブトラミンHCl(sibutramine HCl)、クエン酸シルデナフィル(sildenafil cirate)、タクリン、タムスロシンHCl(tamsulosin HCl)、およびトルテロジン(tolterodine)。
【0081】
好ましい疎水性治療剤としては、クエン酸シルデナフィル、アムロジピン、トラマドール、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、オキサプロジン、ナブメトロン、イブプロフェン、タルベナフィン(terbenafine)、イトラコナゾール、ジロイトン、ザファルカスト(zafirlukast)、シサプリド、フェノフィブラート、チザニジン、ニザチジン、フェキソフェナジン(fexofenadine)、ロラタジン、ファモチジン、パリカルシトール(paricalcitol)、アトバクオン(atovaquone)、ナブメトン、テトラヒドロカンナビノール、酢酸メゲステロール、レパグリニド(repaglinide)、プロゲステロン、リメキソロン、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス(sirolimus)、テニポシド、パクリタキセル、擬エフェドリン、トログリタゾン(troglitazone)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、フェナステリド(fenasteride)、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ならびにその薬学的に受容可能な塩、異性体および誘導体が挙げられる。特に好ましい疎水性治療剤は、プロゲステロンおよびシクロスポリンである。
【0082】
疎水性治療剤およびそれらの治療剤クラスのこの列挙は、単に例示にすぎないことが理解されるべきである。実際、本発明の組成物の特定の特徴、および驚くべき利点は、機能的クラスに関わりなく、広範な疎水性治療剤を可溶化し、そして送達する本発明の組成物の能力である。もちろん、疎水性治療剤の混合物もまた、所望されるならば使用され得る。
【0083】
(3.可溶化剤)
所望ならば、本発明の薬学的処方物は、キャリアシステム中での疎水性治療剤の溶解度を増強するために、必要に応じて、さらなる化合物を含み得る。「可溶化剤」と呼ばれる、このような化合物の例には、以下が挙げられる;
アルコールおよびポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール(transcutol)、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびその誘導体;
ポリエチレングリコールのエーテル(約220〜約6000の平均分子量を有する)、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール(glycofurol)、Tetraglycolの商品名でBASFから市販される)、またはメトキシPEG(Union Carbide);
アミド、例えば、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−ピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドン;
エステル、例えば、プロピオン酸エチル、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルブチルシトレート、トリエチルシトレート、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ε−カプロラクトンおよびその異性体、δ−バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトンおよびその異性体;
ならびに他の当該分野で公知の可溶化剤、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI (ICI))、N−メチルピロリドン(Pharmasolve (ISP))、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名TrascutolでGattefosseから入手可能)および水。
【0084】
可溶化剤の混合物もまた、本発明の範囲内である。示されたものを除いて、これらの化合物は、標準的な販売元から容易に入手可能である。
好ましい可溶化剤には、以下が挙げられる:トリアセチン、トリエチルシトレート、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200−600、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビド。特に好ましい可溶化剤としては、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG−400、グリコフロールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物に導入され得る可溶化剤の量は、特に制限されない。もちろん、このような組成物が、患者に最終的に投与される場合、所定の可溶化剤の量は、生体適合可能な量に制限され、これは、当業者によって容易に決定される。いくつかの場合において、疎水性治療剤の量を最大にするために、生体適合可能な量にものすごく近い可溶化剤の量を含むことが有利であり得、過剰の可溶化剤が、従来の技術(例えば、蒸留または蒸発)を使用して組成物を患者に提供する前に、除去される。従って、存在するならば、可溶化剤が、界面活性剤の量に基づいて、50重量%、100重量%、200重量%または約400重量%までの濃度で、存在し得る。所望ならば、非常に少量の可溶化剤(例えば、25%、10%、5%、1%またはそれ未満)がまた使用され得る。典型的に、可溶化剤は、約1重量%〜約100重量%、より典型的に、約5%〜25重量%の量で存在する。
【0086】
(4.他の添加物)
従来薬学的組成物において使用される他の添加物が含まれ得、そして、これらの添加物は、当該分野で周知である。このような添加物には、抗酸化剤、保存剤、キレート剤、粘度調節剤、調圧剤(tonicifier)、香料、着色料、臭気剤、オパシフィアー、懸濁化剤、バインダー、およびそれらの混合物が挙げられる。このような添加剤の量は、所望の特定の特性に従って、当業者によって容易に決定され得る。
【0087】
(5.投薬形態)
本発明の薬学的組成物は、溶液プレ濃縮物(すなわち、上記のような組成物)の形態で提供され得、そして投与の前に、ドリンクの形態で、またはインビボで分散されるかのいずれかで、水で分散されることが意図される。あるいは、この組成物は、希釈されたプレ濃縮物(すなわち、水性分散系)、半固体分散系または固体分散系の形態で提供され得る。所望ならば、この組成物は、硬質または軟質ゼラチンカプセル、デンプンカプセル、あるいは、腸溶性カプセルにカプセル化され得る。用語「腸溶性カプセル」は、本明細書中で使用される場合、酸に耐久性のあるコーティング(すなわち、酸耐久性腸溶性コーティング)でコートされたカプセルを意味する。可溶化剤は、典型的に、疎水性治療剤の溶解性を増強するために使用され、それらはまた、この組成物を、硬質または軟質ゼラチンカプセルでのカプセル化について、より適切にし得る。従って、上記のような可溶化剤の使用は、薬学的組成物のカプセル投薬形態において特に好ましい。存在するならば、これらの可溶化剤は、この組成物に、所望の溶解性増強またはカプセル化特性を与えるのに十分な量で添加されるべきである。
【0088】
経口投与に特に適した処方物が、現在のところ好まれるが、本発明の処方物はまた、トリグリセロールのないクリーム、ローション、軟膏、坐薬、ジェルなどの形態で、局所的、経皮的、眼、肺、腟、直腸、経粘膜的または腸管外投与のために処方され得る。このような処方物が所望されるならば、他の添加物(当該分野で周知のもの)が含まれ、所望の一貫性および他の特性を処方物に付与し得る。本発明の組成物はまた、スプレーまたはエアロゾルとして処方され得る。特に、この組成物は、噴霧可能な溶液として処方され得、そしてこのような処方物は、多粒子キャリア(例えば、ビード)をコートするための噴霧に特に有用である。このような多粒子キャリアは、当該分野において周知である。
【0089】
(6.薬学的組成物の調製)
本発明の薬学的組成物は、当業者に周知の従来の方法によって調製され得る。もちろん、特定の調製方法は、最終的な投薬形態に依存する。実質的に水のない投薬形態に対して、すなわち、組成物が、水系における後の分散系のために、プレ濃縮された形態で提供される場合、この組成物は、成分の単純混合によって調製され、プレ濃縮物を形成する。所望ならば、この混合プロセスは、穏やかに加熱することによって補助され得る。水性分散系の形態における組成物に対して、プレ濃縮形態が調製され、次いで、適切な量の精製された水が添加される。穏やかに混合すると、透明な水性分散系が形成される。任意の水溶性添加剤が含まれる場合、所望されるように、これらは、プレ濃縮物の一部分として最初に添加され得るか、または、透明な水性分散系に後に添加され得る。
【0090】
別の実施形態において、本発明は、多相分散系を含む。この実施形態において、薬学的組成物は、キャリアおよびさらなる量の非可溶化疎水性治療剤を含み、このキャリアは、水溶液との混合の際に、透明な水性分散系を形成する。従って、本発明のこれらの組成物を記述するために本明細書中で使用される用語「多相」は、水溶液と混合される場合、透明な水相および特定の分散相を形成する組成物を意味する。このキャリアは、上記される通りであり、そして先に記載された、界面活性剤、疎水性治療剤、可溶化剤および添加剤にいずれかを含み得る。さらなる量の疎水性治療剤が、組成物に含まれる。このさらなる量は、キャリアによって可溶化されず、そして水系との混合の際に、個別の分散相として存在する。このさらなる量は、必要に応じて、ミリングされた形態か、微粉にされた形態か、または沈澱された形態である。従って、希釈の際に、この組成物は、2つの相を含む:第1の可溶化された量の疎水性治療剤を含む親水性および疎水性の界面活性剤の透明な水性分散系、ならびにその中に分散された第2の非可溶化量の疎水性治療剤。得られた多相分散系は、疎水性治療剤が完全に分散した分散系の視覚的な清澄性は有していないが、非可溶化相の存在のために、曇っているように見えることが強調されるべきである。このような処方物は、例えば、疎水性治療剤の所望の投薬が、本発明のキャリアに可溶化され得る薬剤を越える場合に、有用であり得る。処方物はまた、上記のような添加物を含み得る。
【0091】
当業者は、疎水性治療剤が水性の分散においてよりもプレ濃縮キャリア中でより高い溶解度を有し得、その結果、見かけの視覚的な清澄さを有するが水性分散におけるその溶解度より多くの量の疎水性治療剤を含む、不安定な過飽和した溶液が形成され得ることを理解する。このような過飽和溶液もまた、清澄な水性分散(最初に形成されたような)として特徴付けられるか、または多相溶液(準安定な状態が崩壊する場合に予測されるような)として特徴付けられるかに関わらず、本発明の範囲内にある。
【0092】
多相処方物は、上記に記載された方法によって調製され得る。プレ濃縮物は、所望の場合、穏やかな加熱の補助を伴って、成分の単純な混合によって調製される。疎水性治療剤を2つの部分に分けて考えることは便利であり、第1の可溶性部分は、キャリアによって可溶化され、希釈に際して清澄な水性分散中に含まれ、そして第2の非可溶性部分は、溶解しないままで残っている。最終的な投薬形態が非水性である場合、疎水性治療剤の第1の部分および第2の部分は、両方ともプレ濃縮混合物中に含まれる。最終的な投薬形態が水性である場合、その組成物は、同じ様式で、そして水系における希釈に際して調製され得、その組成物は、上記のような2つの層を形成し、疎水性治療剤の第2の非可溶性部分は、水系において分散または懸濁され、そして疎水性治療剤の第1の可溶性部分は、混合した界面活性剤キャリア中で溶解される。あるいは、最終的な投薬形態が水性である場合、第1の、疎水性治療剤の可溶性の部分のみを含むプレ濃縮物が調製され得る。次いで、このプレ濃縮物は水系中で希釈されて、清澄な水分散を形成し得る。これに、疎水性治療剤の第2の非可溶性部分が添加されて、多相水性組成物を形成する。
【0093】
本発明の薬学的組成物に含まれる疎水性治療剤の量は、処方者によって所望される任意の量であり得、所望のキャリア系において可溶化または懸濁され得る最大量までである。一般的に、疎水性治療剤の量は、薬学的組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%〜約60重量%である。以下に記載するように、本発明の別の局面において、過剰の疎水性治療剤もまた、多相分散において添加され得る。
【0094】
(B.改善された送達の方法)
別の局面において、本発明は、本明細書中に記載される薬学的組成物の投薬形態を動物に投与することによって動物における疎水性治療剤の送達を改善する方法に関する。好ましくはその動物は哺乳動物であり、そしてより好ましくはヒトである。本発明の薬学的組成物が動物に投与された場合、そこに含まれる疎水性治療剤が、従来的な薬学的組成物におけるよりも迅速に吸収され得ることが見出された。従って、この局面において、本発明は、本明細書中に記載される薬学的組成物における疎水性治療剤を動物に投与する工程によって、疎水性治療剤の生体吸収の速度および/または程度を増加させる方法に関する。
【0095】
(C.薬学的組成物の特徴付け)
本発明の薬学的組成物の希釈に際して形成される分散は、以下の特徴を有する:
迅速な形成:水性溶液を用いる希釈に際して、キャリアは清澄な分散を非常に迅速に形成する;すなわち、清澄な分散は瞬間的に形成されるようである。
【0096】
視覚的な清澄さ:分散は、本質的に、裸眼に対して視覚的に清澄であり、そして不均一さの容易に観察可能な徴候(例えば、濁り度または曇り度)を示さない。より定量的には、本発明の薬学的組成物の分散は、非常に小さな粒子サイズの単一様式の分散を示す。本明細書中の実施例においてより完全に記載されるように、代表的には、20nm以下の平均直径;10倍希釈で約0.3未満の吸光度(代表的には約0.1未満);および100倍希釈で約0.1未満の吸光度(代表的には約0.01未満)である。本明細書中に記載される組成物の多相実施形態において、水性キャリア分散段階の視覚的な清澄さは、分散した粒子の非可溶性疎水性治療剤によってぼやけることが理解されるべきである。
【0097】
希釈の頑健さ:分散は、驚くべきことに水性溶液中で希釈に対して安定である。生理学的液体を模倣する水性溶液(例えば、酵素を含まない疑似胃液(SGF)および酵素を含まない疑似腸液(SIF))を含む。疎水性治療剤は、少なくとも吸収のために適切な時間の間、可溶性のままである。
【0098】
トリグリセリドを含まない:薬学的組成物が実質的にトリグリセリドを含まないということは、本発明の特定の特徴である。本明細書中で使用される場合、用語「トリグリセリド」とは、C6〜約C25脂肪酸のグリセロールトリエステルを意味する。トリグリセリドの可溶性能力に頼る従来的な化合物(例えば、オイルベースの溶液、エマルジョン、およびマイクロエマルジョン)とは違って、本発明の組成物は、驚くべきことに、実質的にトリグリセリドを含まない界面活性剤の組み合わせを用いて疎水性治療剤を溶解する。
【0099】
本明細書中で使用される場合、用語「実質的にトリグリセリドを含まない」とは、仮にあったとしても、界面活性剤混合物中でマイナーな成分または不純物としてのみ、トリグリセリドを含む組成物を意味する。市販の界面活性剤は、しばしば化合物の複雑な混合物であることは当該分野で周知である。例えば、1つの好ましい界面活性剤はCapmul(登録商標)GMO−Kであり、これは、広範に使用される、グリセリルモノオレアートおよびグリセリルジオレアートの混合物である。しかし、複雑な生成物混合物を分離する際の困難さのために、Capmul(登録商標)GMO−Kの代表的なロットは、製造者の分析証明書に報告されているように、以下の分布のグリセリルエステルを、グリセリルエステルの全重量に基づく重量パーセントで含む:
パルミチン酸 3.3%
ステアリン酸 4.0%
オレイン酸 81.0%
リノール酸 9.7%
リノレン酸 0.3%
さらに、界面活性剤混合物は、報告された特定のロットにおいて、0.10%の水および0.95%の遊離のエステル化されていないグリセロールを含む。これらの特定のパーセンテージは、ロットによって変化することが同様に予想され、そして市販の界面活性剤生成物が、特定の主要な成分および特定の製造業者に関わらず、一般に類似の変動性を有することが予想される。従って、本発明は、意図された成分としてトリグリセリドを含む界面活性剤を含まない。確かに、このような界面活性剤は一般的ではない。なぜなら、トリグリセリドそれ自体は界面活性剤の特性を有さないからである。しかし、本発明は、不純物としてまたは未反応の開始物質として少量のトリグリセリドを含む界面活性剤生成物の使用を除外しないことが理解されるべきである。本発明における使用のために適切な市販の混合物は、意図していない成分として5重量%までの多くのトリグリセリドを含み得ることが予想される。従って、「実質的にトリグリセリドを含まない」とは、添加したトリグリセリドを含まないことを意味すること、および5%未満、好ましくは実質的に0%のトリグリセリド不純物を含むこととして理解されるべきである。
【0100】
理論に束縛されることを望まず、本発明の組成物によって形成される透明な水性分散液の観察された特性は、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の混合ミセルの形成と一貫しており、そしてその形成によって最も良く説明され、疎水性治療剤がそのミセルによって可溶化されると考えられる。これらの分散体は、分散された粒子の正確な微視的物理的形態に関わらず、本明細書中に記載される特性によって特徴付けられる。それにも関わらず、本発明をより十分に説明するために、そして予期されなかった重要な利点を例示するために、以下の議論が、正しいと考えられる理論的原理と一貫した用語で提供される。
【0101】
疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤が水溶液中で混合ミセルを形成することが考えられる。このモデルにおいて、各ミセルは、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤の両方の分子(またはイオン)から構成される。疎水性治療剤の詳細な三次元構造、その極性部分の分布、存在する場合、局所領域での分極率、および他の分子特異的かつ複雑な因子に依存して、疎水性治療剤は、ミセルの任意の部分(例えば、外側付近のより親水性領域、内側付近のより疎水性領域、またはそれらの間の種々の地点)に分布され得る。さらに、ミセルがそれらの成分分子と動力学的に平衡して存在することが公知であり、この平衡は疎水性治療剤の動力学的再分布を含むことが期待される。
【0102】
上で議論されるように、トリグリセリド含有処方物は、そこに含まれる疎水性治療剤の生体吸収が、トリグリセリド成分の酵素的分解(脂肪分解)に依存するという不利益を受ける。しかし、本発明の薬学的組成物は、実質的にトリグリセリドが無く、生体吸収のための、疎水性治療剤の放出を可能にする脂肪分解に依存しない。この疎水性治療剤は、溶液中の自由化合物と可溶化された化合物との間の動力学的平衡にあり、従って迅速な放出を促進する。
【0103】
本発明の独特の薬学的組成物は、以下に挙げられる多くの重要な予期せぬ利点を提供する:
効率的輸送:本発明の水性分散体中の粒子サイズは、ベシクル相、エマルジョン相またはミクロエマルジョン相の特徴的な大きな粒子より、はるかに小さく、代表的には、20nm未満であり、そして粒子サイズ分布は、単一様式で狭い。この減少された、より均一なサイズは、腸管水性境界層および吸収性のブラシ(brush)境界膜を通るより効率的な薬物輸送を可能にする。吸収性部位へのより効率的な輸送は、疎水性治療剤の改良され、より一貫した吸収を導く。
【0104】
脂肪分解に対する非依存性:トリグリセリド成分の欠如は、吸収性部位への疎水性治療剤の効果的な提供のために、脂肪分解に依存しない、および脂肪分解の割合および程度に影響をおよぼす多くのあまり特徴づけされていない因子に依存しない、薬学的組成物を提供する。このような因子として、脂肪分解を阻害し得る組成物成分の存在;リパーゼの産生を制限する患者の状態(例えば、膵臓リパーゼ分泌疾患);および脂肪分解の胃のpHへの依存性、内因性カルシウム濃度、およびコリパーゼ(co−lipase)または他の消化酵素の存在が挙げられる。脂肪分解依存性の欠如は、脂肪分解プロセスによって引き起こされる投与と吸収との間の任意の遅延時間を受けない輸送をさらに提供し、治療作用のより迅速な開始およびより優れた生体性能(bioperformance)特性を可能にする。さらに、本発明の薬学的組成物は、他の方法で、それらの潜在的脂肪分解阻害効果に起因して回避され得るかまたは制限され得る疎水性界面活性剤を使用し得る。
【0105】
胆汁および食事脂肪含量に対する非依存性:胆汁酸塩ミセルに対する潜在的な高い可溶化のために、本組成物は、内因性胆汁および胆汁関連患者の疾患状態、および食事脂肪含量にあまり依存しない。これらの利点は、食事投与制限に従わない患者によって引き起こされる食事依存吸収問題を克服する。
【0106】
優れた可溶化:本発明の組成物に使用される界面活性剤の組み合わせは、従来のミセル処方物より優れた装填容量を可能にする。さらに、使用される界面活性剤の特定の組み合わせは、治療剤の極性分布により密接に適合させるために、特異的な疎水性治療剤について最適化され得、さらなる向上された可溶化を生じる。
【0107】
より早い溶解および放出:本発明の疎水性の希釈に対するロバストネス(robustness)により、疎水性治療剤は可溶化されたままであり、従って、吸収に関する時間枠内での治療剤の沈澱の問題に苦しまない。さらに、治療剤は、小さな粒子キャリア中に存在し、エマルジョンキャリア中の捕捉によって希釈速度が制限されない。これらの因子は、水相中への脂質可溶化された薬物の貧分配(poor partitioning)に関連する障害(大きなエマルジョン小滴表面積、および高い界面移動抵抗)を回避し、臨界分配工程の迅速な完了を可能にする。
【0108】
一貫性能:本発明の水性分散体は、吸収に関する時間の間、熱力学的に安定であり、そして予想通りに再生され得、それによってバイオアベイラビティーの可変性(狭い治療係数を有する治療剤についての特に重要な利点)を制限する。
【0109】
効率的な放出:本発明の組成物は、疎水性治療剤が、吸収部位への輸送のために可溶化されるが、吸収に対してすぐに有効であることを補助する成分を含有して、設計され、より効率的な輸送および放出を提供する。
【0110】
胃排出遅延傾向に乏しい:トリグリセリド含有処方物と異なり、本組成物は、胃排出遅延傾向に乏しく、より早い吸収を生じる、さらに、本発明の分散体中の粒子は、胃腸経路内での所望されない保持の傾向に乏しい。
【0111】
小さなサイズ:水性分散体における小さなサイズのために、本発明の薬学的組成物は、水性境界相を通る疎水性治療剤のより早い輸送を可能にする。
本発明のこれらの利点および他の利点、ならびに好ましい実施形態の局面は、以下の実施例により十分に例示される。
【実施例】
【0112】
(実施例)
(実施例1:組成物の調製)
疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤の単純なプレ濃縮物を以下のように調製した。予め決定された重量の親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤を一緒に撹拌し、均一混合物を形成した。混和性に乏しい界面活性剤の組み合わせについて、この混合物は、均一混合物の形成を補助するために穏やかに加熱され得る。予め決定された量の選択された疎水性治療剤を加え、可溶化するまで撹拌した。必要に応じて、可溶化剤または添加剤は、単純な混合によって含まれる。
【0113】
プレ濃縮物の水性分散体を形成するために、予め決定された量の精製水、緩衝溶液、または水性擬態生理学的溶液をプレ濃縮物に加え、得られた混合物を撹拌し、透明な水性分散体を形成する。
【0114】
(実施例2:透明な水性分散体を与える界面活性剤の組み合わせ)
実施例1の方法に従って、透明な水性分散体を与える界面活性剤を調製した。7種の親水性界面活性剤および16種の疎水性界面活性剤を使用して、本発明における使用に適したおよそ100個の透明な水性分散体を作製した。簡潔さのために、これらの組成物に疎水性治療剤は含まれなかった。なぜなら、疎水性治療剤の存在は、透明な水性の性質の組成物に実質的に影響を及ぼさないと考えられるからである。同じ理由のために、これらの組成物は、追加の可溶化剤および他の添加剤を含まなかった。
【0115】
各々の界面活性剤の組み合わせについて、複数の溶液を調製し、所定の量の親水性治療剤を有する透明な水性分散体を与える疎水性治療剤のおおよその最大量を決定した。従って、1グラムの親水性界面活性剤について、予め決定された量の疎水性剤を使用して10倍の水性分散体を調製した。この分散体が光学的に透明に見える場合、より多くの量の疎水性界面活性剤を使用して、実施例1に従って、新しい分散体を調製した。同様に、この分散体が曇って見える場合、より少ない量の疎水性界面活性剤を使用して新しい分散体を調製した。この結果を表19に示す。
【0116】
(表19:透明な分散体を与える界面活性剤の組み合わせ)
【0117】
【表19−1】

【0118】
【表19−2】

【0119】
*この組み合わせは試験されなかった。
表中の各エントリは、許容できる光学透明度を与える、100gの親水性界面活性剤あたりの疎水性界面活性剤のおおよその最大グラム数を表す。表中の数は、例示にすぎず、可溶化剤、共界面活性剤(co−surfactant)、および他の添加剤による界面活性剤系のさらなる最適化が、さらに高い数字を与えることが予想される。
【0120】
(実施例3:界面活性剤を含有する組成物)
透明な水性分散体を与える相対量の疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤に与える可溶化剤の効果を研究するために、8種の異なる疎水性界面活性剤および4種の異なる可溶化剤と共に、親水性界面活性剤としてPEG−40水素化ヒマシ油(CremophorRH40)を含有する組成物について、実施例2の手順を繰り返した。各々の場合において、可溶化剤の量を、2種の界面活性剤の総重量を基準に20重量%で一定に保持した。この結果を表20に示す。実施例2のように、表中の数字は、透明な水性分散体を与える、100gの親水性界面活性剤あたりの疎水性界面活性剤のおおよその最大グラム数を表す。便利さのために、表19(可溶化剤が存在しない)の対応するエントリを表20で「なし」と記したカラムに再生した。
【0121】
(表20:疎水性界面活性剤の量に与える可溶化剤の効果)
【0122】
【表20】

【0123】
*この組み合わせは試験されなかった。
表中のデータから明らかなように、使用され得る相対量の疎水性界面活性剤に与える加えられた可溶化剤の効果は、かなり変化した。幾つかの界面活性剤の組み合わせの場合、加えられた界面活性剤は、疎水性界面活性剤(例えば、Span20、Imwitor988)の量に与える劇的な効果を有する。他の系において、この効果は、中程度(Arlacel 186、Peceol)であるか、または無視できる(Crodamol EO、Myvacet 9−45)。Span 80のある場合では、可溶化剤の存在は、実際に、使用され得る疎水性界面活性剤の量を減少する。
【0124】
(実施例4:可溶化剤を含有する組成物)
実施例3を繰り返し、ここで、単一の疎水性界面活性剤(Arlacel 186)および3種の異なる親水性界面活性剤を選択し、エタノールまたはトリアセチン(triacetin)(2種の界面活性剤の総重量を基準に、20重量%)のいずれかを添加した。これらの結果を表21に示す、表19の対応するエントリ(可溶化剤が存在しない)は、参照として表21に含まれる。
【0125】
(表21:疎水性界面活性剤の量に与える可溶化剤の効果)
【0126】
【表21】

【0127】
各々の場合において、相対量の疎水性界面活性剤における中程度の増加(20%)が観察された。
(実施例5:可溶化剤濃度の効果)
以下の相違点を有するが、実施例3を繰り返した。単一の親水性界面活性剤(Cremophor RH−40)および疎水性界面活性剤(Arlacel 186)を選択し、増加した可溶化剤濃度の効果を調べた。実施例3(表20)の20%濃度で試験した4種の可溶化剤+追加の可溶化剤(プロピレングリコール)の各々について、組成物を、界面活性剤のペアの総重量に基づき、50重量%の可溶化剤濃度で試験した。前の実施例の各々のように、表22の数字は、透明な水性分散体を与える最大の疎水性界面活性剤濃度を表す。表22中の「0」カラムは、表19(可溶化剤無し)に示される数字を再生し、「20%」カラムは表20中の数字を再生し、プロピレングリコールについての値もまた供給されることに注意すること。
【0128】
(表22:疎水性界面活性剤の量に与える可溶化剤濃度の効果)
【0129】
【表22】

【0130】
*Arlacel 186(疎水性)−Cremophor RH−40(親水性)界面活性剤のペアについて
表が示すように、可溶化剤の量の増加は、透明な水性分散体中に存在し得る疎水性界面活性剤の量に与える小〜中程度の効果を有する。このデータは、透明な水性分散体中を形成するために、界面活性剤系の能力に与える有害な影響なしに、非常に多くの量の可溶化剤が使用され得ることを同等に示すことが、評価されるべきである。
【0131】
(実施例6:高い可溶化剤濃度および可溶化剤混合物の効果)
同じ界面活性剤のペアを使用するが、界面活性剤の総重量に基づいて80%濃度の可溶化剤を用いて、実施例5を繰り返した。この80%可溶化剤は、PEG−400、またはPEG−400と3種のアルコールもしくはポリオールのうちの1つとの混合物であった。この結果を表23に示し、表中の数字は、前の実施例と同じ意味を有する。
【0132】
(表23:高い可溶化剤濃度および可溶化剤混合物*
【0133】
【表23】

【0134】
*Arlacel 186(疎水性)−Cremophor RH−40(親水性)界面活性剤のペアについて
非常に高い濃度の可溶化剤、および可溶化剤の混合物が、本発明の透明な水性分散体において効率的に使用され得ることが、表中のデータから明らかである。
【0135】
(実施例7−12:平均粒子サイズ)
本発明の透明な水性分散体をより定量的に特徴付けするために、本発明の幾つかの組成物について、粒子サイズを測定した。簡潔さのために、疎水性の治療剤の非存在下で、分散されたキャリアについて測定を行った。この実施例において、処方物を実施例1のように調製し、希釈して10倍または100倍の水性分散体を形成した。生じる分散体の各々は、肉眼で光学的に透明であることを観察した。平均粒子サイズは、Nicomp Particle Size Analyzer(Particle Size System,Inc.,Santa Barbara,CA)を用いて測定した。これらの測定の結果を表24に示す。
【0136】
(表24:平均粒子サイズ)
【0137】
【表24】

【0138】
*100gの親水性界面活性剤あたり疎水性界面活性剤のグラム数
**標準偏差
データを示すように、本発明の組成物は、視覚的な曇りを伴わずに、透明な水性分散体を生成する。粒子サイズ分布は、約6〜約15nmの平均直径を有する、非常に小さな粒子を示す。この分布は、単一形式であり、約20%の標準偏差を有し、非常に小さな粒子の高度に均一な分布を示す。本発明は任意の特定の理論的枠組みによって制限されないが、この粒子サイズ分布は、ミセル構造の粒子の溶液と一貫している。
【0139】
(比較例C1〜C5:透明な水性分散を形成しない組成物の光学的透明度および粒子サイズ)
本発明の透明な水性分散と比較するために、幾らかの組成物(透明な水性分散を形成するための適切な濃度より高い濃度の疎水性界面活性剤を有する)を、調製した。これらの組成物は、成分を秤量し、そして穏やかな昇温とともに、十分に混合することにより調製した。次いで、これらの組成物を、10倍に希釈し、分散を形成させ、そしてこれらの分散系を、実施例7に記載される粒子径測定に供した。結果を、表25に示す。本発明の組成物と直接的に比較するために、実施例7、9、10、11、および12を、対応する比較組成物の隣に示す。
【0140】
【表25】

【0141】
表に示される組成物に加えて、Tween80およびPlurol Oleique CC497、Tween80およびPeceol、ならびにTween80およびCapmul MCMを含有する組成物を、100gの親水性界面活性剤あたり67gの疎水性界面活性剤の界面活性剤比で調製した。粒子径を、これらの組成物について測定しなかったが、各々が、乳状のまたは濁った水性分散を形成すると観測した。
【0142】
データが示すように、過剰量の疎水性界面活性剤形態を有する組成物は、乳状または濁った溶液を形成するが、一方で本発明の組成物は、透明な溶液を形成する。さらに、乳状溶液の粒子径分布は、対応する透明な溶液の単一モード溶液と対照的に、二モードである。これらの二モード粒子径分布は、約12〜約27nmの小さな平均粒子径を有する第1モードおよび200nmより大きい粒子径までの粒子径を有する第2モードを示す。従って、過剰の疎水性界面活性剤を有する組成物は、不均質(多重相)で、非透明な分散系であり、2つの別々の径範囲の粒子の複雑な二モード分布を有する。対照的に、本発明の組成物は、均質(単一相)で、透明な分散系であり、非常に小さな粒子径の単一モードの分布を有する。
【0143】
(実施例13〜42:光学的透明度の分光学的特徴付け)
本発明の水性分散の光学的透明度を、分光学的に測定した。組成物を実施例1に従って調製し、そして10倍および100倍の溶液まで希釈した。測定した特定の組成物はまた、溶解剤を含み、本発明の好ましい局面をさらに例示する。さらに、幾らかの組成物は、本発明に従う組成物を例示し、ここで、親水性界面活性剤(実施例20および27)または疎水性界面活性剤(実施例41および42)のいずれかそれ本体は、界面活性剤の混合物である。
【0144】
各溶液の吸光度を、400.2nmで測定し、精製した水を基準に用い、そして結果を表26に示す。
【0145】
【表26−1】

【0146】
【表26−2】

【0147】
【表26−3】

【0148】
【表26−4】

【0149】
理想的に、透明な水性分散は、非常に高い透過率を有するべきであり、大きな粒子による光の散乱をほとんど示さない。吸光度および透過率は、簡単な式
A=−log T
によって、関連づけられて、ここで、Aは吸光度であり、そしてTは、10進法として示される透過率である。従って、本発明の好ましい溶液は、小さな吸光度を有する。上述されるように、正確な吸光度の非存在下(溶液中の発色団に起因する)で、本発明の適切な透明の水性分散は、10倍の希釈液にて約0.3未満の吸光度を有するべきである。
【0150】
表26中のデータは、30の溶液を示し、このうち22の溶液は、10倍の希釈液にて約0.3未満の吸光度を有する。これらの溶液のうちの3つは、0.2と0.3との間の吸光度を有し、5つは、0.1と0.2との間の吸光度を有し、そして14は、0.1未満の吸光度を有する。従って、溶液の大部分について、吸光度により、光学的透明度の適切な測定が得られる。
【0151】
0.3より大きい吸光度を有する溶液は、外観検査により受容可能な光学的透明度を有すると観測されるので、本発明の使用のためになお適切であり得る。これらの比較的高吸光度の溶液について、光学的透明度の単一の分光学的測定は、不適切であり、そして他の方法(例えば、外観観測および粒子径)は、光学的透明度を評価することに対してより良好に適す。例として、実施例37(0.440の吸光度を示す)は、表19中に示される40という値より十分低い、27の界面活性剤の比を有し、そして透明な溶液であると観測される。この同一の組成物(さらなる溶解剤を伴なわない)は、28の界面活性剤の比にて実施例9中に示され、平均粒子径12.4nmの、単一モードの、狭い粒子径分布を有する。直接の粒子径測定および吸光度測定は、光学的透明度を評価する異なる方法であり、そして透明度を定量化するための代替の基準を提供することが、理解されるべきである。しかし、光学的透明度の、単純な定性的外観観測が、本発明の使用のために適切な透明度の十分な測定であると考えられている。なぜなら、特に、本発明の範囲外の組成物は、定量的測定に依存しないで、顕著でかつ間違えない混濁度(cloudiness)を示すからである(例えば、比較例1を参照のこと)。
【0152】
(比較例C6〜C12:透明な水性分散を形成しない組成物の分光学的特徴付け)
本発明の透明な水性分散系に対する比較のために、乳状または混濁であると観測される組成物を、実施例13〜42のように、吸光によって特徴付けした。入手可能な場合、実施例13〜42からの比較可能な溶液についての結果を、比較するために再び生成する。所与の界面活性剤の組合せが、実施例13〜42中に(異なる溶解剤の濃度で)1回以上示される場合、最低の溶解剤濃度を有する組成物を、選択し、より直接的な比較を容易にする。結果を、表27中に示す。
【0153】
【表27】

【0154】
表中のデータは、本発明の透明な水性分散が、過剰な疎水性界面活性剤濃度を有する化合物と非常に異なる吸光挙動を示し、少なくとも10倍、そして幾らかの場合においては、100倍以上低下した明らかな吸光度(散乱損失を通して)を有するとおいことを、実証する。
【0155】
(実施例43および44:多機能性疎水性の治療剤の溶解性)
本発明の薬学的組成物における、代表的な多機能性疎水性治療剤(シクロスポリン)の増強された溶解性を、従来の「フラスコを振る」方法を用いて測定した。治療剤を含まない組成物を調製し、そして実施例1のように10倍および100倍に希釈した。次いで、この溶液に、過剰のシクロスポリンを与え、そして撹拌してシクロスポリンが、溶解された相と溶解されてない分散相との間の平衡分配を達成することを可能にした。次いで、溶解したシクロスポリンの濃度を、標準的なHPLC技術を用いて決定し、シクロスポリンの定量的検出のために最適化した。結果を、表28中に示す。
【0156】
【表28】

【0157】
この実施例は、本発明の薬学的組成物における疎水性治療剤の溶解性が劇的に増強したことを実証する。
(比較例C13〜C16:多機能性疎水性治療剤の溶解性)
比較のために、実施例43〜44の溶解性実験を、4つの標準的水性溶液について実行した。第1の比較溶液は、添加剤を有さない精製された水だった。次に、標準的な擬似腸液(SIF)を使用して、疎水性治療剤が遭遇するインビボ条件を模擬実験した。第3の溶液を、擬似腸液およびさらなるアリコートの20mMのタウロコール酸ナトリウム(胆汁酸塩)を用いて調製した;この溶液を、表29中にSIFBと命名する。最後に、第4の溶液を、擬似腸液、20mMのタウロコール酸ナトリウムおよび5mMのレシチンを用いて調製した;この溶液を、SIFBLと命名する。20mMの胆汁酸塩および5mMのレシチンの濃度は、消化管において遭遇するこれらの化合物の代表的な平均濃度であると、考えられる。以前の実施例のように、これらの比較溶液を、フラスコを振る方法を用いてシクロスポリンと平衡化し、そしてHPLCにより分析した。これらの測定の結果を、表29中に提示する。
【0158】
【表29】

【0159】
表が示すように、本発明の組成物における、多機能性疎水性治療剤の溶解性は、水溶液および消化管水溶液における溶解性よりさらに大きい。
(実施例45〜49:親油性疎水性治療剤の溶解性)
本発明の薬学的組成物における、代表的な親油性疎水性治療剤(プロゲステロン)の増強された溶解性を、実施例43〜44に記載されるように測定した。結果を表30に示す。
【0160】
【表30】

【0161】
この実施例は、本発明の薬学的組成物における疎水性治療剤の劇的に増強された溶解性を実証する。
(比較例C17〜C20:親油性疎水性治療剤の溶解性)
比較のために、比較例C13〜C16の溶解性実験を、シクロスポリンの代わりにプロゲステロンを用いて、繰り返した。これらの測定結果を表31中に提示する。
【0162】
【表31】

【0163】
表が示すように、本発明の組成物における、親油性疎水性治療剤の溶解性は、水溶液および消化管水溶液のおけるその溶解性よりさらに大きい。
(実施例50〜57:多機能性疎水性治療剤を含む組成物の水性希釈安定性)
本発明に従う組成物を、治療剤として代表的な多機能性疎水性治療剤であるシクロスポリンを用いて調製した。この組成物を、この成分を表32に列挙されるオーダーで添加することを除いて、実施例1に記載のように調製した。予定の濃度を、精製水で100倍に希釈し、外観観測を、希釈のあと即座に行った。次いで、この溶液を、6時間放置し、希釈安定性を評価し、次いで、溶液中のシクロスポリン濃度を、薬物特異的HPLCアッセイを用いて測定した。この結果を、表32中に示す。
【0164】
【表32】

【0165】
表中のデータは、多量の多機能性疎水性治療剤が、本発明の組成物中で可溶化され、透明な水性分散を生成し得ることを示す。これらの分散は、放置の際の不安的効果(例えば、疎水性治療剤の沈殿または粒子の凝集)を示さない。
【0166】
(実施例58〜74:親油性疎水性治療剤を含む組成物の水性希釈安定性)
本発明に従う組成物を、治療剤として代表的な親油性疎水性治療剤であるプロゲステロンを用いて調製した。この組成物を、実施例50〜57のように調製および分析し、そして結果を、表33中に示す。
【0167】
【表33−1】

【0168】
【表33−2】

【0169】
【表33−3】

【0170】
表中のデータは、親油性疎水性治療剤が、本発明の組成物中で溶解され、透明な水性分散を生成し得ることを示す。これらの分散は、放置の際の不安的効果(例えば、疎水性治療剤の沈殿または粒子の凝集)を示さない。
【0171】
(実施例75:生物吸収の増強)
研究を、本発明の透明な水性分散が、その中に含まれる疎水性治療剤の生物吸収の速度が増大することを容易にすることを確立するために、実施した。本研究は、腸間膜静脈のカニューレ挿入と共に、潅流腸環を有するラットモデルを使用した。この独自の方法論は、任意の全身性代謝障害のない「本当の」吸収能の評価を可能にした。
【0172】
シクロスポリン疎水性治療剤を含む、本発明の代表的予定の濃度を、使用した。この組成物は、以下の処方を有した:
シクロスポリン 0.140g
Cremophor RH−40 0.41g
Arlacel 186 0.29g
タウロコール酸ナトリウム 0.26g
プロピレングリコール 0.46g。
【0173】
この実験について、予定の濃度を、精製水よりもむしろ等張性の水性HEPES緩衝液を用いて希釈した。生じた溶液を、放射活性添加物(active)でスパイクし、そして公知の長さおよび径の単離された回腸管腔を通して、潅流させた。管腔側面からの放射活性の欠損および他の側面からの腸間膜血における放射活性の出現を、吸収の指標としてモニターした。
【0174】
実験の詳細:
若い成人(275〜300g)雄のSprague Dawleyラットを使用した。手順は、Winneら、「In vivo studies of mucosal−serosal transfer in rat jejunum」、Naunyn−Schmeideberg’s Arch.Pharmacol.,329,70(1985)に報告された手順と一致した。
【0175】
頸静脈のカニューレ挿入:動物を、ハロタン気化器(Vapomatic,A.M.Bickford,Inc.,NY)を介して98%酸素中の2%ハロタンを用いて麻酔した。頸静脈の開口部を、21ゲージ針で作製し、そしてポリエチレンチューブに接続されたシラスティックチューブの4cmの断片からなる頸静脈カニューレを、頸静脈中に挿入し、そしてシアノアクリレート接着剤で固定した。ドナーのラットについては、約20mLの血液を、ヘパリン(1,000ユニット)の存在下で新しく収集し、そして収集した血液を、血液サンプルを補充するために、実験のラットの中の頸静脈を通して0.2mL/分の速度で注入した。
【0176】
腸のカニューレ挿入:動物を、麻酔した後、その体温を、加熱パッドを用いて37℃に維持した。垂直方向の正中切開(約3cm)を、皮膚を通して作製し、小腸を曝した。回腸の約6〜10cmの断片が、位置しを確認した。電子焼灼を用いて、小さな切開を、断片の末端で作製し、そして管腔の内容物を、37℃に維持した生理食塩水でフラッシュした。2つの1.5cmの切り目入りのTeflon(登録商標)チューブを、各切開で腸管腔に挿入し、そして4−0シルクを用いて締め付けた。温暖な等張性緩衝液を、50mLのシリンジを用いて腸を通過させた。これらのTeflon(登録商標)カニューレを、シリンジポンプを用いて、単離された腸断片を通って薬物溶液を灌流させるために使用した。
【0177】
腸管脈静脈カニューレ挿入:次いで、生じた単離された腸間膜カスケード細静脈からの血を排出する腸管脈静脈に、24ゲージIVカテーテルを用いてカニューレ挿入し、そして4−0シルク縫合糸を用いて所定の場所に固定した。次いで、このカニューレを、25cm長のポリエチレンチューブに接続し、ここで、この血液を、動物レベルの下で保持したバイアル中に収集した。血液サンプルを、60分にわたって連続的に収集した。頸静脈を介する血液の注入を、血液損失を補充するために、開始した。次いで、動物を、実験が完了した後、フェノバルビタールの致死的な注入により殺した。
【0178】
実験を、薬物キャリアとして本発明の組成物を用いて2回実施し、そして比較のために市販のシクロスポリンマイクロエマルジョン処方(NeOral(登録商標))を用いて2回実施した。各処方について、2つの試行の結果を、平均した。結果を、図1中にグラフで提示する。
【0179】
図1は、本発明の薬学的組成物(黒四角)および市販のシクロスポリン処方物(黒丸)について、60分の経過にわたって、時間の関数として腸間膜血中の累積の放射活性(μCi/cm2μCi)を示す。図が示すように、疎水性治療剤の生物吸収は、最初の測定点で市販の処方物の生物吸収を超えており、そして測定間隔の経過にわたって市販の処方物に比較して増大し続ける。最終の測定点(60分)で、本発明の組成物からの疎水性治療剤の生物吸収は、市販の処方物の生物吸収をほぼ100%超える。
【0180】
本発明は、その精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の特異的な形態で具体化され得る。記載された実施形態は、すべての点において例示としてのみ考慮されるべきであり、制限されない。従って、本発明の範囲は、前述の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲に示される。特許請求の範囲の等価物の意義および範囲内におけるすべての変更は、それらの範囲内にあるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、以下:
(a)キャリアであって、以下:
(i)少なくとも1つの親水性界面活性剤
(ii)少なくとも1つの疎水性界面活性剤
を含むキャリア;
(b)第1量の性ホルモンであって、前記第1量の性ホルモンは、前記キャリア中で溶解されている、性ホルモン;および
(c)第2量の性ホルモンであって、前記第2量の性ホルモンは、前記キャリア中で溶解されていないが、前記キャリア中に分散されている、性ホルモン
を含み、ここで前記組成物は、実質的にトリグリセリドを含まない、薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで前記疎水性界面活性剤が、前記親水性界面活性剤の量に対して約200重量%未満の量で存在する、薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで前記親水性界面活性剤が、約10以上のHLB値を有する少なくとも1つの親水性界面活性剤または親水性界面活性剤の混合物を含む、薬学的組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の薬学的組成物であって、前記親水性界面活性剤が、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;ポリオキシエチレンステロール;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン硬化植物油;脂肪酸、グリセリド、植物油、硬化植物油およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとポリオールとの反応生成物;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;イオン性親水性界面活性剤;脂肪酸塩;胆汁塩;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の薬学的組成物であって、ここで前記親水性界面活性剤がPEG−10ラウレート、PEG−12ラウレート、PEG−20ラウレート、PEG−32ラウレート、PEG−32ジラウレート、PEG−12オレアート、PEG−15オレアート、PEG−20オレアート、PEG−20ジオレアート、PEG−32オレアート、PEG−200オレアート、PEG−400オレアート、PEG−15ステアラート、PEG−32ジステアラート、PEG−40ステアラート、PEG−100ステアラート、PEG−20ジラウレート、PEG−25グリセリルトリオレアート、PEG−32ジオレアート、PEG−20グリセリルラウレート、PEG−30グリセリルラウレート、PEG−20グリセリルステアラート、PEG−20グリセリルオレアート、PEG−30グリセリルオレアート、PEG−30グリセリルラウレート、PEG−40グリセリルラウレート、PEG−40パーム核油、PEG−50硬化ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40硬化ヒマシ油、PEG−60硬化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、PEG−6カプラート/カプリレートグリセリド、PEG−8カプラート/カプリレートグリセリド、ポリグリセリル−10ラウレート、PEG−30コレステロール、PEG−25植物ステロール、PEG−30ソヤステロール、PEG−20トリオレアート、PEG−40ソルビタンオレアート、PEG−80ソルビタンラウレート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG−100スクシナート、PEG−24コレステロール、ポリグリセリル−10オレアート、Tween40、Tween60、スクロースモノステアラート、スクロースモノラウレート、スクロースモノパルミテート、PEG10−100ノニルフェノールシリーズ、PEG15−100オクチルフェノールシリーズ、ポロキサマー、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム、コール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウム、またはこれらの混合物である、薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで前記疎水性界面活性剤が、約10未満のHLB値を有する化合物または化合物の混合物である、薬学的組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、ここで前記疎水性界面活性剤が、アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;グリセロール脂肪酸エステル;モノグリセリド;ジグリセリド;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノ/ジグリセリドの乳酸誘導体;プロピレングリコールジグリセリド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;エステル交換した植物油;ステロール;ステロール誘導体;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン硬化植物油;脂肪酸、グリセリド、植物油、硬化植物油およびからなる群の少なくとも1つのメンバーとポリオールとの反応混合物;脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、ここで前記疎水性界面活性剤が、脂肪酸;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;モノおよび/またはジグリセリドの乳酸誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン硬化植物油;脂肪酸、グリセリド、植物油、硬化植物油、およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとポリオールとの反応混合物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、ここで前記疎水性界面活性剤が、グリセリルカプリレート/カプラート;プロピレングリコールモノカプリレート;プロピレングリコールモノラウレート;グリセロールモノリノレアート;およびそれらの混合物からなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項10】
溶解剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記溶解剤が、アルコール、ポリオール、アミド、エステル、プロピレングリコールエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の薬学的組成物であって、ここで前記溶解剤が、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびそれらの異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、エチルプロピオネート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、エチルオレアート、エチルカプリレート、エチルブチレート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトン、2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−ラウリルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ポリビニルピロリドン、グリコフロール、メトキシPEG、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項13】
請求項10に記載の薬学的組成物であって、ここで前記溶解剤が、エタノール、ベンジルアルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の薬学的組成物であって、ここで前記溶解剤が、前記界面活性剤の総重量をベースとして、約400重量%以下の量で、該組成物中に存在する、薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、ここで前記性ホルモンがテストステロンのエステルである、薬学的組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−6931(P2012−6931A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152947(P2011−152947)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2000−600619(P2000−600619)の分割
【原出願日】平成12年1月5日(2000.1.5)
【出願人】(505433002)リポシン・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】